JP3771378B2 - 蒸気弁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば蒸気タービンなどに設置され、蒸気の遮断あるいは蒸気流量の制御に用いられる蒸気弁に係わり、特に弁ケーシングの内部に蒸気の流れを遮断する蒸気止め弁と蒸気の流量を調整する蒸気加減弁とを備え、前記蒸気加減弁に蒸気加減弁の始動時に上下流圧力をバランスさせるバランス室を備えている蒸気弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来一般に採用されているこの種のバランス室を備えている蒸気弁は、弁全閉時において弁体が冷却するに従い、そのバランス室内に滞留する蒸気がドレン化する為、弁体に設けられたバランス穴から排出するか、または子弁付きの弁においては、同ドレンは子弁の開と同時に下流側へ排出させるようにしているのが普通である。
【0003】
従来採用されている蒸気弁の一例として、このバランス室を有する組合せ蒸気弁の構造を図7に示す。この蒸気弁は、蒸気タービントリップ時のタービンへの流入蒸気を遮断する蒸気止め弁1と、蒸気流量を制御する蒸気加減弁2を一つの弁ケーシング3に収納したものである。タービンをリセットすると蒸気止め弁1は全開し、蒸気加減弁2を開閉させることにより蒸気流量の制御が行われる。
【0004】
蒸気加減弁2の開閉作動は、弁棒4を介して油圧シリンダ機構などで駆動される。この駆動力F1は、弁の1次側5の圧力P1と2次側6の圧力P2との差圧に打ち勝つ力が必要であり、一般的に弁の開き始めが最大となる。蒸気圧力による弁閉方向力は、蒸気圧力と弁の受圧面積の乗算により求められる為、蒸気加減弁2と弁ケーシング3に設けられたスリーブ7とで構成されたバランス室8が設けられ、また蒸気加減弁2に複数のバランス穴9を設けることにより、このバランス室8内の圧力P3と蒸気加減弁2の2次側6の圧力P2をほぼ等しくして、弁の1次側5の圧力P1の受圧面積を小さくし弁を開する際の駆動力の低減を実現している。
【0005】
なお、この種の蒸気弁に関連するものとしては、例えば特開平6−294304号公報あるいは特開平6−173611号公報などが挙げられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前述した構造の蒸気弁においては、蒸気加減弁2とスリーブ7とのギャップGを介してバランス室8に流入する蒸気が弁体に設けられた複数のバランス穴9を通過して2次側6に流れるため完全な蒸気遮断は難しく、一般には図2に示されているような部分に使用されている。すなわち、ボイラ11からの発生蒸気を高圧タービン12に供給し、高圧タービン12で仕事をした蒸気を再熱器13を介して中圧タービン14に供給するプラントにおいて、高圧タービン12の入口に設けられた蒸気加減弁15が蒸気を完全に遮断し、その下流で中圧タービン14への入口蒸気を一時的に遮断するインターセプト弁16の様な、上流側で完全に遮断が行われる系統構成にて使用されている。
【0007】
一方、蒸気弁にバランス室を設け、弁開駆動力を低減するとともに2次側への蒸気流れを遮断する為に設けられたのが、図4の様な子弁付きの弁構造である。弁閉時には子弁17が全閉することにより完全な蒸気遮断が行われる。弁開時には、図4(b)の様に最初に受圧面積が小さく駆動力の小さい子弁17を開して、バランス室8の圧力P3と弁2次側の圧力P2をほぼ同等とする。
【0008】
次にバランス室8内の圧力P3が低下したところで弁2を開する為、その駆動力はバランス室8の面積分だけ1次側の蒸気圧力P1の受圧面積が減少していることから小さくすることができる。
【0009】
ただし本構造では、図5に示す様に弁を開状態から急速に閉する際、縮小されたバランス室8が急激に拡張される為、弁2とスリーブ7とのギャップGが小さい場合バランス室8が密室となり、バランス室8の容積V1が容積V2に増加して、バランス室8内部の蒸気が膨張させられ急激な圧力低下が生じることになる。
【0010】
これに伴い、弁の2次側圧力P2とバランス室8内の圧力P3とが同等あるいは逆転し、弁の閉動作を妨げる可能性が有る。そこで図6に示す通り、スリーブ7に単数あるいは複数のチャンバ穴18を設け、弁急速閉時におけるバランス室8内部の蒸気の膨張を低減する方法がとられる。ただし、本チャンバ穴18の面積を大きくすると、子弁17を開いた際のバランス室8の圧力低下効果が小さくなる為、弁駆動力低減には不利な方向となる。
【0011】
一方、子弁17の設置により弁の2次側への蒸気遮断は実現できるが、逆に弁全閉時にバランス室8内で滞留した蒸気がドレン19となり蓄積する構造となる。従来より弁2が全閉している際のドレンは弁ケーシング3に設けたドレン系統20により排出する方法が取られるが、弁本体2が可動である為、破線で示す様な子弁17のドレンを排出する系統21を設けることができなかった。
【0012】
バランス室8内にドレンが蓄積すると、子弁17を開いた際下流側へドレンが飛散することになる。また、長期停止や長期保管を実施する際には、本ドレンにより弁体に錆が発生するあるいは腐食が発生する恐れがあった。
【0013】
本発明はこれに鑑みなされたもので、その目的とするところは、バランス室を構成する弁本体が可動であっても、構成を簡単にしてバランス室内における蒸気のドレン化を充分防止することができ、弁体の錆の発生や腐食が発生することのないこの種の蒸気弁を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、蒸気の流れを遮断あるいは蒸気の流量を調整する蒸気加減弁に蒸気加減弁の始動時に上下流圧力をバランスさせるバランス室を備えている蒸気弁において、前記バランス室の底近傍部の側壁に、蒸気流路を設け所期の目的を達成するようにしたものである。
【0015】
また、蒸気の流れを遮断する或るいは蒸気止め弁と蒸気の流量を調整する蒸気加減弁に蒸気加減弁の始動時に上下流圧力をバランスさせるバランス室を備えている蒸気弁において、前記バランス室の底近傍部に、バランス室内と前記弁ケーシングのドレン系とを連通する蒸気流路を設けるようにしたものである。
【0016】
また本発明は、蒸気の流れを遮断する或るいは蒸気止め弁と蒸気の流量を調整する蒸気加減弁に蒸気加減弁の始動時に上下流圧力をバランスさせるバランス室を備えている蒸気弁において、前記バランス室の側壁の下方部に、バランス室内と前記弁ケーシングのドレン系とを連通する蒸気流路を設けるようにしたものである。
【0017】
またこの場合、前記蒸気流路を、前記バランス室の側壁に設けた貫通孔で形成するようにしたものである。また、前記貫通孔を前記バランス室の周壁に等間隔に複数個設けるようにしたものである。
【0018】
すなわちこのように形成された蒸気弁であると、バランス室の底近傍部に、バランス室内と弁ケーシングのドレン系とを連通する蒸気流路が設けられることから、この蒸気流路を介して弁急速閉時におけるバランス室内蒸気の膨張による圧力低下は防止され、かつバランス室内に蒸気が滞留しドレン化することも防止され、したがって弁体の錆や腐食の発生を防止することができるのである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下図示した実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。図1にはその蒸気弁が断面で示されている。2が蒸気加減弁の弁体であり、3が弁ケーシング、4が弁棒、8がバランス室である。このバランス室は、蒸気加減弁の上部に設けられている有底筒体2aと、弁ケーシングの内壁に設けられているスリーブ7との嵌合により形成され、かつ有底筒体2aの底部分には圧力バランス穴が設けられている。また、前記有底筒体の筒部で、かつ底部に近い部分,すなわちバランス室8の底近傍部には、このバランス室内と弁ケーシング3のドレン系20とを連通する蒸気流路,すなわちバランスドレン穴(筒部を貫通する貫通穴)22が設けられている。
【0020】
これにより弁急速閉時におけるバランス室8内蒸気の膨張による圧力低下を防止するとともに、バランス室8から弁ケーシングに設けられたドレン系統20まで通ずる流路として、バランス室8に蒸気が滞留しドレン化することを防止している。また弁開時のタービン内部へのドレン流入を防止することが可能となる。
【0021】
図1(b)は弁体を下側から見た図を示し、例としてバランスドレン穴22を弁体2に対し、水平方向に90度おきに4個所配置したものである。このバランスドレン穴22は、1個所以上設置することで機能を満足するが、子弁17を開いて蒸気を供給する際、蒸気流れを偏らせないように、複数に配置する方が好ましい。また必要以上に大きいあるいは多数の流路を設けることは、弁体の構造的な強度を低下させることのなり、また機械加工上の作業が増加し不利である。
【0022】
本バランスドレン穴22は水平あるいは弁体2の半径方向外側に対して下り勾配に設置することで効果を十分に得ることができるが、逆に弁体2の半径方向外側に対して上り勾配に設置すると、バランスドレン穴22の最外部より下側となる領域では蒸気が滞留し、ドレンが蓄積する可能性がある。
【0023】
図3は、チャンバ穴18を設置した場合を左半分、バランスドレン穴22を設置した場合を右半分とし、子弁17が開いた際の各々の蒸気流れのルートを比較したものである。チャンバ穴18は弁体2が開いても塞がれることのないよう、比較的上部に設置されるため、チャンバ穴18から流入した蒸気はバランス室8内を通過して、最終的に子弁17から排出される。本蒸気の流れるルートの場合、子弁17を開くと弁棒が高速の蒸気流に曝されるため、弁棒4にエロージョンが発生する可能性がある。弁棒4にエロージョンが発生すると、弁棒4と弁ケーシング3との間の間隙が増加し、蒸気リークの増加および弁棒の振動発生の原因となるため、これを防止する必要がある。
【0024】
これに対しバランスドレン穴22を設置した場合、バランスドレン穴22はバランス室8の最低部に設置されるため、バランスドレン穴22から流入した蒸気はバランス室8内を介させず、子弁17から排出される。したがって、前記チャンバ穴18を通した場合と異なり、弁棒4を蒸気流にさらすことを防止することが可能となり、弁棒4のエロージョン発生を低減することができる。
【0025】
図8は、高圧タービン12の入口に設置した蒸気加減弁15である。本弁はボイラ11からの発生蒸気を遮断あるいは制御することを目的とするが、一般的に高圧の蒸気であるためバランス室を設置した構造を採用して駆動力を小さく抑える手段が取られる為、本発明の適用は有効である。
【0026】
また、図9は再熱系統を有する蒸気タービンにおいて、特にタービンバイパス系統23を有する中圧タービン14の入口におけるインターセプト弁16である。本弁も蒸気の制御に加え蒸気遮断が必要であり、しかも比較的弁口径が大きくなることから、前述の蒸気加減弁と同様バランス室構造を用いて駆動力を小さく抑える手段が取られる為、本発明の適用は有効である。
【0027】
図10はコンバインドサイクルプラント等、主蒸気以外に別の蒸気源から追加蒸気を供給する系統24を有する場合にその蒸気を制御あるいは遮断する追加蒸気加減弁25を設置するものである。本系統も一般的に蒸気圧が比較的低い系統として設置されるため、追加蒸気加減弁25の弁口径が大きくなり、バランス形の弁が採用されることが多く、本発明を適用するのに適している。
【0028】
図11から図13は構造の異なる弁に本発明の考えを適用した場合の例である。各々(a)に従来の弁、(b)に本発明の弁を示している。
【0029】
図11の弁は、バランス室26内の蒸気を子弁27の内部に設けた流路28を通して、子弁27を開するとともに下流へ排出する弁構成である。この構成では、子弁27を全閉している状態においてバランス室26内の蒸気がドレン化し、バランス室26内にドレンの蓄積が生じる問題がある。これに本発明を適用し親弁29にバランスドレン穴30を設けると、バランス室26内の蒸気排出能力は低減されるが、バランス室26内のドレン化を防止することが可能となる。
【0030】
図12は親弁31に設けたバランス穴32を子弁33を全開させることにより遮断し、バランス室34内の蒸気を排出する流れ35を得る構成であり、また弁が急閉する際には、子弁33が親弁31より先に閉動作してバランス穴32を開きバランス室34が閉塞することを防止する構成である。本構成においても子弁33が全閉状態にあるとバランス穴32までは、バランス室34にドレンの蓄積が生じる。本構成においても本発明を適用し、親弁31にバランスドレン穴36を設けると、バランス室34内のドレン化を防止することが可能となる。
【0031】
図13は子弁37開いてバランス室38内の蒸気を排出し、また急閉時には親弁39に設置したパイロット弁40が開いてバランス室38の閉塞を防止する構成である。本構成もまた子弁37全閉時にはパイロット弁40も全閉であり、バランス室38内での蒸気のドレン化が生じる。これに対し本発明を適用し、親弁39にバランスドレン穴41を設置すると、バランス室38内の蒸気排出能力は低減されるが、バランス室38内のドレン化を防止することが可能となる。
【0032】
以上説明してきたようにこのように形成された蒸気弁を、蒸気タービンへ供給する蒸気を遮断あるいは制御する弁に採用した場合、弁の閉動作がスムーズに行なわれるとともに、バランス室内における蒸気のドレン化を防止することが可能となり、また従来生じていた弁開と同時に2次側にドレンが飛散する現象を防ぐことができ、タービンへのドレン流入を防ぐことができる。また本弁を用いた蒸気タービンの長期停止の間、弁体内部にドレン蓄積が無いため、ドレンによる弁体の錆および腐食の発生も充分防止することができる。
【0033】
さらに従来の蒸気弁においては、子弁を開くと弁棒が高速の蒸気流に曝されるため、弁棒にエロージョンが発生し、弁棒と弁ケーシングとの間の間隙が増加し、蒸気リークの増加および弁棒の振動発生の原因となる恐れがあったが、本発明の蒸気弁であると、弁棒が蒸気流にさらされることはなくなり、弁棒のエロージョン発生を充分低減することができるのである。
【0034】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明によれば、構成簡単にしてバランス室内における蒸気のドレン化を充分防止することができ、弁体の錆の発生や腐食が発生することのないこの種の蒸気弁を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蒸気弁の一実施例を示す要部縦断側面図である。
【図2】蒸気弁が用いられる蒸気タービンの系統図である。
【図3】本発明の蒸気弁の他の実施例を示す要部縦断側面図である。
【図4】子弁付蒸気弁の縦断側面図である。
【図5】蒸気弁のバランス室容積変化を示す断面図である。
【図6】従来のチャンバ穴付蒸気弁の縦断側面図である。
【図7】従来のバランス形蒸気弁の縦断側面図である。
【図8】本発明の蒸気弁が適用される再熱蒸気タービン系統図である。
【図9】本発明の蒸気弁が適用されるタービンバイパス系統付蒸気タービン系統図である。
【図10】本発明の蒸気弁が適用される追加蒸気系統付蒸気タービン系統図である。
【図11】本発明の蒸気弁の他の実施例を従来の蒸気弁とともに示す要部縦断側面図である。
【図12】本発明の蒸気弁の他の実施例を従来の蒸気弁とともに示す要部縦断側面図である。
【図13】本発明の蒸気弁の他の実施例を従来の蒸気弁とともに示す要部縦断側面図である。
【符号の説明】
1…蒸気止め弁、2…蒸気加減弁、3…弁ケーシング、4…弁棒、5…弁1次側、6…弁2次側、7…スリーブ、8…バランス室、9…バランス穴、11…ボイラ、12…高圧タービン、13…再熱器、14…中圧タービン、15…蒸気加減弁、16…インターセプト弁、17…子弁、18…チャンバ穴、19…ドレン、20…ドレン系統、21…子弁ドレン系統、22…バランスドレン穴、23…タービンバイパス系統、24…追加蒸気系統、25…追加蒸気加減弁。

Claims (1)

  1. ドレン系を設けた弁ケーシング内に、蒸気の流れを遮断あるいは蒸気の流量を調整する蒸気加減弁を設け、この蒸気加減弁の始動時に上下流圧力をバランスさせるバランス室を前記ケーシングと蒸気加減弁との間に形成している蒸気弁において、前記バランス室の底部近傍に、前記バランス室内と前記弁ケーシングのドレン系とを連通する蒸気流路を設けたことを特徴とする蒸気弁。
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