JP3770736B2 - 流動層型重合装置及びオレフィンの重合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィンの重合を行う流動層型重合装置に係り、オレフィン重合体を連続的に長期間安定してかつ合理的に製造しうる流動層型重合装置に関する。また、当該流動層型重合装置を用いたオレフィンの重合方法に関する。
【0002】
尚、本明細書中で使用される「重合」及び「重合体」なる用語は、それぞれ、「単独重合」並びに「共重合」、及び「単独重合体」並びに「共重合体」を含む意味で用いられる。
【0003】
【従来の技術】
オレフィン重合体は、例えば、ポリエチレンまたはエチレンとα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等に代表される。これらオレフィン重合体は、フィルム成形用材料等として広く利用されている。
【0004】
このようなオレフィン重合体は、チーグラーナッタ型触媒またはメタロセン型触媒等の高活性触媒を用いて製造されることが一般的である。
このような高活性触媒を用いる場合は、重合操作が最も簡単なことから、通常、オレフィン重合を気相で行う方法が採用されていることが多い。そして、かかる気相重合においては、重合を円滑に行うために、図8に示すようにガス分散板71を設けた流動層型重合器70が多用されている。
【0005】
かかる気相重合は、オレフィン若しくはオレフィン含有ガスを、コンプレッサまたはブロワー73により導入管72を経て重合器下部70a(ガス室と呼称されることも有る)に導入し、次に多数の孔が形成されているガス分散板71により均一に分散させて重合器内を上昇させ、ガス分散板71の上側の流動層域70bで触媒粒子と接触させながら流動させて重合を行うというものである。
【0006】
この場合、触媒粒子表面にオレフィン重合体が形成され、流動層域70bには、触媒粒子とオレフィン重合体とから成る固体粒子が浮遊しており、重合体を粒子状で得ることができる。
【0007】
そして、流動層域70bで重合したオレフィン重合体は、排出ライン75から外部へ排出される。
一方、この流動層域70bで重合したオレフィン重合体の粒子は、流動層域70bの上部に飛散する。そこで、粒子の飛散を防止するために、流動層型重合器70の上部の断面積を大きくして流動ガスの速度を減速する減速域70cを設けている。
【0008】
そして、未重合ガスは、減速域70cの上部から取り出され、冷却水やブライン等を用いた熱交換装置77で冷却された後、再度、コンプレッサー又はブロワー73により流動層型重合器70の下部70aに送られて循環使用されるようになっている。
【0009】
ところで、上述した気相重合を行うための流動層型重合器70を、長期間にわたって稼働させると、下記に示す不具合が生じる。
すなわち、(1)流動層域70bでの固体粒子の分散が不均一であると、固体粒子が流動層型重合器70の内壁に付着して重合してしまう(この場合、付着部分の除熱が不充分となり、局部的に付着した部分の温度が上昇する)。
【0010】
(2)また、オレフィン重合体の粒子同士が融着して成長し塊状やシート状になり、これらが流動層型重合器70の内部の所定箇所に沈殿したり、滞留する(この場合、沈澱部分の温度が低下する)。
【0011】
(3)さらに、急激な反応が部分的に発生した場合、重合器70の内部で、ホットスポットを形成し、それが又新たなシート状ポリマーや塊状ポリマーとなって重合器70の運転に対する不安定要素となる。なお、重合が短時間に急激に行われると、重合器70の内部温度が急上昇するため、異常な速度での重合が行われていることを推定することができる。
【0012】
これらの不具合を監視する手段として、従来は、流動層型重合器70の流動層域70bに2個の温度測定装置78a、78bを挿入するとともに、減速域70cに1個の温度測定装置78cを挿入して、流動層型重合器70の内部の温度を測定していた。そして、これら温度測定装置78a,78b,78cが測定した温度の上昇または下降等の異常が認められる場合、流動層型重合器70の運転条件を変更して重合の安定化を図っていた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、流動層型重合器70の内部温度を測定するために、温度測定装置78a、78b、78cをこの流動層型重合器70の内部に挿入して配置すると、温度測定装置78a、78b、78cの温度計の突起部分がガス対流の障害となり、更に内挿した温度測定装置78a、78b、78cに、ポリマー粒子が付着して成長し、シート状ポリマーや塊状ポリマーの発生源になり、分散不良の原因となりがちであった。
【0014】
すなわち、温度測定装置78a、78b、78cを流動層型重合器70の内部に多数配置すると、ガス導入域70aに流入した流動ガスをガス分散板71により均一に分散させて、流動層域70bに流入させ固体粒子を流動させたにもかかわらず、温度計近傍で固体粒子が滞留して除熱が不充分となり、塊状となって流動層型重合器の内壁に付着したり、オレフィンの粒子同士が融着する度合いが増加するという問題が生じてしまう。
【0015】
したがって、かかる温度計は、流動ガスの分散の不均一の原因になりがちであり、流動層の不安定化の原因となりがちであるから、重合器内部、特に流動層内部に設けることは好ましくなく、必要最小限(通常1個)に止めなければならなかった。
【0016】
しかしながら、流動層域70b内では、触媒粒子とオレフィン重合体とから成る固体粒子が浮遊しており、その温度変化が存在し、また、ホットスポットの発生個所は一定せず、その発生位置も逐次変化している。従って、従来のように温度測定装置78a、78b、78cを配置しただけでは、流動層型重合器70の内部温度を正確に検出し、これに基づいて流動層型重合器70の運転条件を綿密にコントロールすることは困難であった。
【0017】
以上から、前述の通り種々の原因により、従来の測定方法では、ホットスポットの発生時点、個所を迅速かつ適切に測定することは困難であり、従って、長期間安定して運転を継続することが困難となりがちである。
【0018】
本発明は、前記事項に鑑みて創案されたものであり、温度計にポリマー粒子を付着させることなく、ホットスポットの発生個所に応じて温度計を配置し、温度計の測定結果に基づいて自動的にあるいは手動的に運転条件の変更を行い、長期間に亘って安定してオレフィンの気相重合を行うことができる流動層型重合装置を提供することを課題とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の流動層型重合装置は、オレフィンを含有する流動ガスを用いて、固体触媒成分及び重合体を流動させつつオレフィンを重合させる流動層を有する流動層型重合器と、前記流動層型重合器の頂端から流出する未反応オレフィン含有ガスを前記流動層型重合器に循環させるとともに前記未反応オレフィン含有ガスの循環速度を調節する設備と、新たなオレフィンを前記流動層型重合器に供給するとともに前記オレフィンの供給量を調節する原料供給設備と、前記固体状触媒を前記流動層型重合器に供給するとともに前記固体状触媒の供給量を調節する触媒供給設備とを備えた流動層型重合装置において、前記流動層型重合器の外壁面に、測定位置の異なる複数の温度検出器を配置し、これら複数の温度検出器から測定位置毎に温度を測定する温度測定装置と、前記測定位置毎の温度の目標値をあらかじめ格納し、前記温度の目標値と測定した温度とを比較演算し、目標に合致させるように重合に関わる条件を変更して制御する制御装置とを備えたとを特徴とする(請求項1に対応)。なお、温度検出器の分解能は、その重合器における安定運転を維持するのに十分な分解能であればよいが通常その分解能は±0.2℃以内である。
【0020】
また、前記流動層型重合装置において、
前記流動層型重合器の外壁面に、測定位置の異なる複数の温度検出器を配置し、これら複数の温度検出器から測定位置毎に温度を測定する温度測定装置と、前記温度測定装置が測定した測定結果により、重合に関わる条件を変更する手動調節装置とを備えるように構成してもよい(請求項2に対応)。
この構成によれば、オペレータが前記表示装置で測定温度の経時変化を見ながら、前記循環速度、前記オレフィンの供給量、および個体状触媒の供給量を各々手動で調節することで、重合に関わる条件を変更することができる。
【0021】
また、本発明の流動層型重合装置における前記温度測定装置は、前記温度検出器を前記流動層型重合器の壁面に沿って高さおよび方位を変えて配置するように構成してもよい(請求項3に対応)。
【0022】
そして、本発明者等は、重合器内分散板の高さから測定して重合器の流動層域の直径の 0.1〜1.5 倍の位置(高さ)で、ホットスポットが発生しやすいことを見いだした。したがって、少なくとも1つの温度検出器がこの高さに配置されていることが好ましい。さらに、配置される高さは、重合器内分散板の高さから測定して流動層域の直径の 0.4〜1.2 倍の高さがより好ましい。重合器の流動層域の直径が、高さによって異なる時は、その最大値と最小値の和の2分の1を直径とする。
また、温度検出器は、重合器の外気温度や外気温度の変動によって、温度測定が影響を受けないことが好ましく、温度検出器の周囲は、グラスウールまたはロックウールなどの断熱材で覆われている。この断熱材の大きさは、重合器の置かれている環境によって適宜決められる。
【0023】
また、温度検出器として、シース(鞘)の先端に熱電対が埋め込まれた熱電温度計を用いている。そして、このシースの先端は、重合器の外周部に接するように配置しても、あるいは、測定精度に影響が無い範囲で外壁から離れた位置に配置してもよい。
【0024】
この構成によれば、重合器の内壁に突起物を設けずに、重合器の内壁を隔てて重合器内部の温度を測定できる。また、温度検出器にポリマー粒子を付着させることなく、ホットスポットの発生個所に応じて温度検出器を配置し、温度検出器の測定結果に基づいて自動的に運転条件の変更を行うことができる。
【0025】
また、本発明の流動層型重合装置において、前記重合に関わる条件を、前記流動層型重合器に流入するオレフィンの供給量および循環速度とするように構成してもよく(請求項4に対応)、前記流動層型重合器に供給する前記固体触媒の供給量とするように構成してもよい(請求項5に対応)。
【0026】
更に、本発明の流動層型重合装置において、前記流動層型重合器は触媒失活成分の供給口を有し、前記重合に関わる条件を、前記流動層型重合器に触媒失活成分の供給とするように構成してもよい(請求項6に対応)。
【0027】
また更に、本発明の流動層型重合装置において、前記重合に関わる条件を、前記流動層型重合器の内部の前記流動ガスの組成とするように構成してもよい(請求項7に対応)。
【0028】
また更に、本発明の流動層型重合装置は、前記温度測定装置で測定した温度を表示する表示装置を備えるように構成してもよい(請求項8に対応)。
この構成によれば、表示装置の測定温度を見ることによって、流動層型重合装置の運転状態を知ることができる。
また更に、本発明の流動層型重合装置は、前記重合に関わる条件を、前記流動層の流動層高とするように構成してもよい(請求項9に対応)。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る流動層型重合装置を図面に基づき説明する。
まず、本発明の実施の形態に係る流動層型重合装置を構成する流動層型重合器、触媒供給設備、循環設備、原料供給設備、失活成分供給設備、オレフィン重合体取出設備、温度測定装置、および制御装置を逐次説明する。
【0030】
[流動層型重合器]
この流動層型重合器(以下、重合器という)1は、図1および図2に示すように、上部に大径部を有する段付の円筒状の槽である。この重合器1には、槽内部の下方位に槽の底部を塞ぐようにガス分散板9が配設されている。
そして、この重合器1の槽内部は、ガス分散板9の下位にガス導入域(ガス室ともいう)1aが形成され、ガス分散板9の上位に流動層域(反応系)1bが形成されている。更に、この流動層域1bの上位であって槽の大径部には、減速域1cが形成されている。
【0031】
また、このガス分散板9の平面部には、ガス導入域1aから流動層域1bへ通過するオレフィンあるいはオレフィン含有ガスを均一に分散するための多数の孔が穿設されている。
【0032】
また、この流動層域1bの槽側壁には、触媒供給設備8から固体触媒等を供給する供給用配管21が接続されている。さらに、この流動層域1bの槽側壁には、流動層域1bで生成されたオレフィン重合体を槽の外部へ取り出す取出用配管26が接続されている。さらに、この流動層域1bの槽側壁には、流動層高測定装置H1が設置されている。なお、この流動層高測定装置H1は、層内で生成されたオレフィン重合体の高さ(流動層高)を測定するものである。
【0033】
そして、重合器1の頂壁(頂端)には、循環設備7のガス循環用配管18が接続され、ガス循環用配管18の他端は後述する供給用配管24を介して重合器1の底壁(底端)に接続されている。
【0034】
また、重合器1の底壁には、失活成分供給設備5から失活成分(例えば、一酸化炭素)を供給する供給用配管25が接続され、また、原料供給設備4から原料(例えばオレフィン)を供給する供給用配管24が接続されている。そして、原料を供給する供給用配管24は、ガス循環用配管18の他端と接続している。
なお、流動層域1b内には、流動層域1b内の流動ガスを機械的に撹拌するイカリ型撹拌機、スクリュウ型撹拌機等各種の型式の撹拌機が設けられる場合もある。
【0035】
[触媒供給設備]
触媒供給設備8は、図2に示すように、固体触媒8aを供給する供給用配管21と、供給用配管21を経て固体触媒8aを重合器1へ圧送するブロワーB3と、固体触媒8aの流入圧力を測定する圧力測定装置P1とを備えている。
そして、触媒供給設備8は、固体触媒8aを重合器1へ供給するばかりではなく、必要に応じて不活性ガスや不活性溶媒を固体触媒8aと共に供給し、場合によっては重合原料を固体触媒8aと共に供給する。
【0036】
[循環設備]
この循環設備7は、図2に示すように、重合器1の頂壁より取り出した未重合の流動ガス(循環ガス)を重合器1の底壁まで循環させるガス循環用配管18と、
この循環ガスを冷却させる冷却用熱交換器71と、この循環ガスを重合器1のガス導入域1aへ循環させるために圧送するブロワーB2と、循環ガスの流速を測定する流速測定装置S1と、を備えている。
そして、この冷却用熱交換器71とブロワーB2と流速測定装置S1とはガス循環用配管18によって接続されている。
【0037】
[原料供給設備]
この原料供給設備4は、原料のオレフィン4aを重合器1のガス導入域1aへ圧送するブロワーB1と、オレフィンの流量を測定する流量測定装置F1と、を備えている。そして、このブロワーB1と流量測定装置F1とは供給用配管24によって接続されている。
【0038】
[失活成分供給設備]
この失活成分供給設備5は、必要に応じて失活成分(例えば、一酸化炭素)5aを重合器1のガス導入域1aへ圧送するブロワーB4と、一酸化炭素の流量を測定する流量測定装置F2とを備えている。そして、このブロワーB4と流量測定装置F2とは供給用配管25によって接続されている。なお、失活成分は、一般に、一酸化炭素の他、二酸化炭素、酸素、水等をいう。
【0039】
[オレフィン重合体取出設備]
このオレフィン重合体取出設備10は、生成されたオレフィン重合体を層の外部へ圧送するブロワーB5と、オレフィン重合体の流動層高を測定する流動層高測定装置H1と、を備えている。そして、このブロワーB5とは取出用配管26によって接続されている。
【0040】
[流動層型重合器による重合]
次に、この重合器1による重合(あるいは共重合)について説明する。
重合器1に対して、循環設備7のガス循環用配管18から循環ガスが、また、原料供給設備4の供給用配管24からオレフィン及び水素(すなわち原料)4aがガス導入域1aに供給される。更に、必要に応じて失活成分供給設備5の供給用配管25から一酸化炭素5aが適宜ガス導入域1aに供給される。
【0041】
そして、ガス導入域1a内の前記原料(また、必要に応じて失活成分)はガス分散板9の孔を通過することによって均一に分散され、循環設備7のブロワーB2により均一な流動状態が保持できるような流量で流動層域1bへ供給される。
また、この流動層域1bには、触媒供給設備8の供給用配管21から固体触媒8aが供給される。なお、触媒供給設備8からは、固体触媒とともに有機金属化合物、あるいは必要に応じて電子供与体が流動層域1bに供給される。
【0042】
そして、流動層域1bでは、オレフィン含有ガスと固体触媒8aが流動状態で単独重合または共重合し、重合体が生成される。
生成された重合体は、取出用配管26を介してブロワーB5によって圧送され、流動層域1bから外部の次工程の設備へ排出される。
【0043】
一方、流動層域1bで未重合となった流動ガスは、流動層域(槽の小径部)1bから槽の大径部側(減速域1c)に流入し、流動層域1bに比して断面積が大きくなった分だけ流動化ガスの流動速度を減速する。そして、流動化ガスの流動速度を減速することによって、粒子状の重合体が重合器1の上部へ飛散するのを防ぐ。
【0044】
次に、流動速度を減速した流動ガスは、重合器1の頂壁からガス循環用配管18を介して循環設備7へ排出される。
そして、循環装置7へ排出された未重合ガス(循環ガス)は、ガス循環用配管18の途中に設けられた冷却用熱交換器71で冷却されて重合熱が除去される。重合熱が除去された未重合ガスは、ガス循環用配管18からブロワーB2に戻り、再度、ブロワーB2により圧送されて重合器1のガス導入域1aへ供給される。
【0045】
そして、ガス導入域1aに導入された未重合ガスは、原料供給設備4から新たに供給されるオレフィンとともにガス分散板9を通って流動層域1bに流れ込み、流動しながら重合が行われ、生成された重合体は、取出用配管26を介して流動層域1bから外部の次工程の設備へ排出される。
【0046】
[温度測定装置]
次に、温度測定装置2を説明する。
この温度測定装置2は、温度を直接検出する温度検出器(例えば、熱電温度計)と、この熱電温度計で測定した温度を測定位置毎に制御装置3に通知する温度測定部2aと、を備えている。
また、この熱電温度計の分解能は、その重合器における安定運転を維持するのに十分な分解能であればよいが通常その分解能は±0.2℃以内である。
そして、この熱電温度計は重合器1の外壁面等に沿って高さあるいは方位を変えて配置されている。また、この熱電温度計は循環設備7にも配置されている。
【0047】
図3は重合器1及び循環設備7における熱電温度計の側面配置図である。
熱電温度計は、図3の側面配置図に示すように、重合器1の底壁面から頂壁面にかけて所定の高さ毎に数段(例えば、8段)に亘って配置されている。すなわち、熱電温度計は、底壁より所定間隔毎に、T11(1段目)、T12(2段目)、T13(3段目)、T14(4段目)、T15(5段目)、T16(6段目)、T17(7段目)、及びT18(8段目)の順で重合器1の外壁面に配置されている。なお、これら熱電温度計(T11、T12、T13、T14、T15、T16、T17、及びT18)は、各段毎に4個ずつ等間隔で重合器1の壁面に配置されている。
【0048】
また、これら各段毎の熱電温度計とは別に、各供給口や各排出口の近傍にも、熱電温度計T1,T2が重合器1の外壁面に配置されている。
また、重合器1の外壁面以外の、循環設備7にも熱電温度計が配置されている。すなわち、冷却熱交換器71の入口および出口のガス循環用配管18の外周面に、熱電温度計T3,T4が配置されている。また、ブロワーB2と重合器1底壁の供給口との間のガス循環用配管18の外周面に、熱電温度計T5が配置されている。
【0049】
図4は重合器1における熱電温度計の平面配置図である。
熱電温度計(T11、T12、T13、T14、T15、T16、T17、及びT18)は、各段毎に4個ずつ等間隔で重合器1の外壁面に配置されている。すなわち、各段毎に4個ずつ、A方向(0°の方向)、B方向(90°の方向)、C方向(180°の方向)およびD方向(270°の方向)の4方向に、複数の熱電温度計が重合器1に配置されている。
【0050】
ところで、流動層域1bでホットスポットが発生しやすい位置(高さ)が実験により解ってきた。それは、重合器1内に設けられたガス分散板9の位置(高さ)から測定して重合器1の流動層域1bの直径の 0.1〜1.5 倍の高さの範囲である。
そこで、複数の熱電温度計のうち少なくとも1つは、重合器1内に設けられたガス分散板9の位置(高さ)から測定して重合器1の流動層域1bの直径の 0.1〜1.5 倍の高さに取り付けることが好ましい。さらには、直径の 0.4〜1.2 倍の高さに取り付けることがより好ましい。なお、流動層域1bの直径が高さによって異なる時は、その直径の最大値と最小値の和の2分の1を平均直径として高さを算出する。
【0051】
本発明の実施の形態では、熱電温度計T11を重合器1の直径の0.5の位置に、熱電温度計T12を重合器1の直径の1.0の位置に配置している。
【0052】
次に、この熱電温度計が重合器1の外壁表面にどのように固定されているかを図5を用いて説明する。なお、この熱電温度計は、図5(a)に示すように、シース(鞘)42の先端に熱電対40が埋め込まれた熱電温度計を用いているものとして説明する。また、シース42に埋め込まれた熱電対40は、リード線41を介して、温度測定部2a(図1参照)と接続している。
そして、熱電温度計のシース42の先端部分(図5(a)参照)は、重合器1の外壁表面に沿って接触し、溶接42aにより固定されている。なお、シース42の先端接触部分の長さは、熱電対40が重合器1の内壁を隔てて重合器1内部の温度を外壁から測定できるだけの接触部分があればよい。
【0053】
なお、外壁表面に熱電温度計を固定する別の方法として、図5(b)あるいは図5(c)に示す方法を用いてもよい。
すなわち、図5(b)の方法は、重合器1の外壁表面の測定位置に、ボルト用雌ネジ孔43aを有するスタンド43を、予め溶接43bにより取り付けておき、このスタンド43の雌ネジ孔43aにボルト44を螺合し、この螺合したボルト44の先端44aでシース42の先端部分を外壁表面に押さえつけて固定したものである。
また、図5(c)の方法は、外壁面にシース42の先端部が嵌入可能な窪み1dを測定位置に予め穿設しておき、その窪み1dに、シース42の先端部を嵌入して埋め込み固定したものである。その窪み1dは、重合器内壁まで貫通せずに、かつ重合器1の強度等設備の安全性に影響を与えない範囲で、外壁面に穿設されたものである。
【0054】
さらに、この本発明の熱電温度計は、重合器1の外壁面に接触した状態で配置されたものに限定されるものではなく、外壁面に沿って配置されたものであれば、測定精度に影響が無い範囲で、外壁から離れた位置に配置されたものであってもよい。
以上述べたように、本発明の熱電温度計は、重合器1の内壁より突出して設けるのではなく、重合器1の外壁面に沿って配置して測定するものである。
【0055】
また、この熱電温度計は、その周囲を断熱材で覆われている。これは、測定温度が、重合器1の外気温度や外気温度の変動に影響を受けないようにするためである。この断熱材の材質として、グラスウールまたはロックウールなどの一般的な材質が用いられる。また、この断熱材の大きさは、重合器1の置かれている環境によって適宜決められる。
【0056】
これら熱電温度計は、図1に示すように、リード線21で接続する温度測定部2aを介して入出力インターフェース15と接続している。そして、この温度測定部2aは、熱電温度計で測定した温度を測定位置毎に制御装置3に通知する。
【0057】
[制御装置]
制御装置3としてのパーソナルコンピュータ(以下、PCという)は、図1に示すように、温度測定装置2、循環設備7、原料供給設備4、触媒失活成分供給設備5、触媒供給設備8、およびオレフィン重合体取出設備10と、入出力インターフェース15を介して接続している。また、PC3は、入出力インターフェース15を介して表示装置80、入力装置12、補助記憶装置13、および印字装置としてのプリンタ14と接続している。
【0058】
なお、入力装置12には、キーボード、OCR、OMR、バーコードリーダ、ディジタイザ、イメージスキャナ、音声認識装置等が含まれる。また、補助記憶装置13には、CD−ROM、MO、FD等が含まれる。また、この制御装置3はDCSにも替えられる。
【0059】
そして、PC3は、CPU30とメモリ33とを有している。
このCPU30は、与えられたデータに対して四則演算、論理演算等を行う演算部32と、実行される命令部34のアドレスをもとにメモリ33からCPU30に命令を取り込み、命令の内容を解読し、必要な動作指示を他の装置に対して出す制御部31とを有している。
また、このPC3は、OSによる制御の下にメモリ33または補助記憶装置13に蓄積されているプログラムを起動し、所定のタスクを実行する。このPC3は、複数のタスクを仮想的に且つ同時に並列して実行するマルチタスクを行うこともできる。
【0060】
なお、PC3の機能の一部には、メモリ管理装置の機能が備えられている。すなわち、このメモリ管理装置は、読み出しまたは書き込みを行うためのメモリ33上の論理アドレスを、実際にメモリ33に読み書きする論理ページの番地を示す物理アドレスに変換する機能をも有している。
【0061】
この制御部31は、図1に示すように、重合器1の各機器に対して入力制御命令を出し、メモリ33に対しては、メモリ制御指令を出し、表示装置80等に対しては、出力制御指令を出す。
そして、重合器1の各機器より入力されたコマンドは最初にメモリ33へと転送される。このメモリ33は、命令部34とデータ部35を有し、与えられたコマンドからデータおよび命令を選択するとともに、選択されたデータおよび命令をCPU30の制御部31に転送する。
【0062】
ここで、重合器1および循環設備7に配置された各熱電温度計にて測定され測定温度は、温度測定部2aから測定位置毎に入出力インタフェース15を通じてメモリ33へと転送され、データ部35に測定位置毎に格納される。
【0063】
また、データ部35は、予め重合器1の複数の測定位置毎にそれぞれ重合を安定して行う際の外壁の温度の目標値を格納している。そして、命令部34は、温度の目標値に対して偏差が生じている場合、重合器1を含む各機器に対して所定の制御信号を出力する。ここで、所定の制御信号には、重合器1を含む各機器に流入する固体触媒の流入圧力値、循環ガスの流速値、流動層高、または原料や失活成分の流入流量値を増加あるいは減少させるための制御信号が含まれる。
【0064】
なお、予め設定した温度の目標値は、重合器1および循環設備7での温度変化をある程度考慮して、例えば、許容偏差として±5℃程度の幅を持たせることもできる。また、温度の目標値に対する許容偏差は、重合させるオレフィンを変更する都度入力することもできるが、重合するオレフィンによって決定することができるため、これらの許容偏差を予めメモリ33に格納することもできる。さらに、ガス導入域1a、流動層域1b、減速域1cについてそれぞれ個別に目標値を設定したり、流動層域1b、減速域1cをさらに細分割して目標値を設定して格納することもできる。
【0065】
[制御マップ]
PC3は、固体触媒の流入圧力値、循環ガスの流速値、流動層高、およびオレフィン(原料)や失活成分等の流入流量値に対する、重合器1及び循環設備7の壁面温度との相関関係を予めマップ形式(すなわち制御マップ)で格納している。また、PC3は、固体触媒の流入圧力値、循環ガスの流速値、流動層高、およびオレフィン(原料)や失活成分等の流入流量値を増加させた場合の重合器1の外壁面の温度変化、または、減少させた場合の重合器1の外壁面の温度変化を、その都度格納して制御マップ上の相関関係を変更する学習機能を有している。すなわち、PC3は、予め設定した理想温度に対して実際に行われた循環ガス、オレフィン、失活成分、固体触媒等の注入では、初期設定した温度上昇よりも低い場合、初期設定の温度上昇値を書き換えて実際の温度上昇値とする。そして、これを格納することで、次回の循環ガス、オレフィン、失活成分、固体触媒等を注入する場合や流動層高が変わった場合、この書き換えた温度に基づき制御を行う。
【0066】
次に、各々の制御マップの詳細を説明する。
(触媒用制御マップ)
触媒用制御マップは、Y軸(縦軸)に触媒8aの流入圧力値を取り、X軸(横軸)に温度の変化を取って、触媒8aの流入圧力値に対する外壁面の温度変化の相関関係を予めマップ形式で格納している。例えば、Y軸の触媒8aの流入圧力値を増加させた場合の重合器1の外壁面の温度変化の相関関係、または、減少させた場合の重合器1の外壁面の温度変化の相関関係を格納している。従って、PC3が出力する制御信号は、重合器1に供給される触媒8aの流入圧力値を変更する信号も含まれる。
【0067】
(流動層高用制御マップ)
流動層高用制御マップは、Y軸(縦軸)に流動層高を取り、X軸(横軸)に温度の変化を取って、流動層高に対する外壁面の温度変化の相関関係を予めマップ形式で格納している。例えば、Y軸に流動層高を上げた場合の重合器1の外壁面の温度変化の相関関係、または、下げた場合の重合器1の外壁面の温度変化の相関関係を格納している。従って、PC3が出力する制御信号は、重合器1の流動層高を変更する信号も含まれる。なお、流動層高は、オレフィン重合体を重合器の外に取り出す取出用配管26(図2参照)の途中に設けた制御弁の開閉度を変えて、オレフィン重合体の取り出し量を調整することで、制御することができる。
【0068】
(失活成分用制御マップ)
失活成分用制御マップは、Y軸(縦軸)に失活成分5aの流量値を取り、X軸(横軸)に温度の変化を取って、失活成分5aの流量値に対する外壁面の温度変化の相関関係を予めマップ形式で格納している。例えば、Y軸に失活成分5aの流量値を増加させた場合の重合器1の外壁面の温度変化の相関関係、または、減少させた場合の重合器1の外壁面の温度変化の相関関係を格納している。従って、PC3が出力する制御信号は、重合器1に供給する失活成分の流量値を変更する信号も含まれる。
【0069】
(循環ガス用制御マップおよびオレフィン用制御マップ)
循環ガス用制御マップは、Y軸(縦軸)に循環ガスの流速値を取り、X軸(横軸)に温度の変化を取って、循環ガスの流速値に対する外壁面の温度変化の相関関係を予めマップ形式で格納している。例えば、Y軸に循環ガスの流速値を増加させた場合の重合器1の外壁面の温度変化の相関関係、または、減少させた場合の重合器1の外壁面の温度変化の相関関係を格納している。また、オレフィン用制御マップは、Y軸(縦軸)にオレフィンの流量値を取り、X軸(横軸)に温度の変化を取って、オレフィン4aの流量値に対する外壁面の温度変化の相関関係を予めマップ形式で格納している。例えば、Y軸にオレフィン4aの流量値を増加させた場合の重合器1の外壁面の温度変化の相関関係、または、減少させた場合の重合器1の外壁面の温度分布変化の相関関係を格納している。
【0070】
ところで、流動ガスのガス線速度は、ガス導入域1aからの吹き込みガスのガス体積、すなわち新たに供給されるオレフィンのガス流(原料の流量値)と、循環設備7から重合器1に供給されるガス流(循環ガスの流速値)と、の総和によって決定される。そこで、流動ガスのガス線速度と重合器1の外壁面温度の相関関係をあらかじめマップの形式で格納しているとともに、ガス線速度を増加させた場合の重合器1の外壁面の温度変化、または、ガス線速度を減少させた場合の重合器1の外壁面の温度変化をその都度格納して、マップ上の相関関係を変更する学習機能を有することもできる。更に、流動ガスの組成と重合器1の外壁面の温度との相関関係をあらかじめマップの形式で格納しているとともに、流動ガスの組成を変更した場合の重合器1の外壁面の温度変化をその都度格納して、マップ上の相関関係を変更する学習機能を有することもできる。
【0071】
ところで、流動ガスの組成は、モノマーまたはコモノマーのオレフィンの組成を変更したり、重合器1に供給される流動ガスの組成を変更することが含まれる。ここで、流動ガスの組成の変更には、モノマーまたはコモノマーのオレフィンの組成を変更したり、窒素雰囲気の分圧を変更することが含まれる。
【0072】
従って、PC3が出力する制御信号は、重合器1に流入する流入ガスの組成やガス線速度を変更する信号も含まれる。ここで、流入ガスの組成の変更には、モノマーまたはコモノマーのオレフィンの組成を変更したり、窒素雰囲気の分圧を変更することが含まれる。
【0073】
[表示装置]
次に、このPC3に入出力インタフェース15を通じて接続した表示装置80について説明する。
この表示装置80は、表示画面81を有する。そして、表示装置80は、PC3の指令や検出温度データに基づき、重合器1及び循環設備7の側面図画像や重合器1の平面図画像を画像処理し、また、測定位置毎に測定温度を表示する画像を処理する。そして、表示装置80は、処理した画像を表示画面81に表示する。
【0074】
[重合器の制御例]
次に、重合器1に対する具体的なプロセス制御の例について説明する。なお、本実施の形態に係る重合装置は、図2に示すように、供給用配管24に設けたブロワーB1を通じて、オレフィンとしてプロピレンを重合器1のガス導入域1aへと供給し、供給されたプロピレンを重合させるものである。ただし、この実施の形態が本発明をプロピレンを重合させるものに限定する趣旨ではない。また、温度測定装置2が測定した重合器1の外壁面の温度は、PC3へと入力されているものとする。
【0075】
(プロピレン供給量制御)
流量測定装置F1が測定したプロピレンの流入流量値(供給量)は、PC3へと入力される。すると、PC3は、温度測定装置2が測定した重合器1の外壁面の温度と目標値との差値を演算する。そして、この差値が許容偏差の範囲を逸脱している場合、PC3は、オレフィン用制御マップに基づいて、温度分布を目標と合致させるように、PC3に接続したブロワーB1の出力を変更してプロピレンの流入流量値(供給量)の増減を図る。
【0076】
(循環ガス流速制御)
流速測定装置S1が測定した循環ガスの流速値(循環速度)は、PC3へと入力される。すると、PC3は、温度測定装置2が測定した重合器1および循環設備7の外壁面の温度と目標値との差値を演算する。そして、この差値が許容偏差の範囲を逸脱している場合、PC3は、循環ガス用制御マップに基づいて、測定した温度を目標と合致させるように、PC3に接続したブロワーB2の出力を変更して循環ガスのガス流速値の増減を図る。
【0077】
(触媒供給量制御)
圧力測定装置P1が測定した固体触媒8aの流入圧力値は、PC3へと入力される。すると、PC3は、温度測定装置2が測定した重合器1の外壁面の温度と目標値との差値を演算する。そして、この差値が許容偏差の範囲を逸脱している場合、PC3は、触媒用制御マップに基づいて、測定した温度を目標と合致させるように、PC3に接続したブロワーB3の出力を変更して固体触媒8aの流入圧力値の増減を図ることによって、固体触媒の供給量の増減を図る。
【0078】
(流動層高制御)
流動層高測定装置H1が測定した流動層高は、PC3へと入力される。すると、PC3は、温度測定装置が測定した重合器1の外壁面の温度と目標値との差値を演算する。そして、この差値が許容偏差の範囲を逸脱している場合、PC3は流動層高制御マップに基づいて、温度の目標と合致させるように、オレフィン重合体をオレフィン重合体を重合器の外に取り出す取出用配管26の途中にあって、PC3に接続した開閉弁の開閉度を大きくしたり小さくしたりして、流動層高を変える。
【0079】
(失活成分供給量制御)
流量測定装置F2が測定した失活成分(例えば、一酸化炭素)の流入流量値は、PC3へと入力される。すると、PC3は、温度測定装置2が測定した重合器1の外壁面の温度と目標値との差値を演算する。そして、この差値が許容偏差の範囲を逸脱している場合、PC3は、失活成分用制御マップに基づいて、測定した温度を目標と合致させるように、PC3に接続したブロワーB4の出力を変更して一酸化炭素の流入流量値(供給量)の増減を図る。この本実施の形態では、失活成分の流入経路を1つ設けているが、これら失活成分の流入経路を複数設けることもできる。たとえば、ガス導入域1a、流動層域1b、減速域1cのそれぞれに失活成分を流入させるために、流入経路をこれらガス導入域1a、流動層域1b、減速域1cに接続することもできる。
【0080】
次に、この重合装置は、ブロワーB1〜B4の出力を自動変更して流出量や流入圧力を調節するものであるが、ブロワーB1〜B4の出力を変更するのではなく、ブロワーB1〜B4の各吐出側の配管に制御弁を設けてこの制御弁の開閉度を変更することで、調節することもできる。
【0081】
[制御動作原理]
次に、PC3が行う制御の動作原理を図6のフローチャートに基づいて説明する。最初に、制御対象となる重合器1のデータ(例えば、圧力値・流速値・流量値)が検索される(ステップS100)。そして、検索されたデータに対応する温度の目標値が読み込まれる(ステップS101)。
【0082】
次に、リアルタイムに測定されている重合器1の温度を表示装置80の表示画面81に表示させるとともに、測定した温度と目標値との比較演算が行われる(ステップS102)。ここで、表示装置80には、測定温度がリアルタイムに表示される(ステップS103)。そして、測定した温度分布と目標値との間に偏差が生じ、この偏差が許容偏差の範囲を逸脱しているか否かを判断し(ステップS104)、許容偏差の範囲内の場合は、現状の運転条件で行う。また、許容偏差の範囲外の場合は、所定の制御信号を出力し(ステップS105)、制御マップに基づき運転条件の変更を行う。
【0083】
次に、運転条件変更後の重合器1の温度を表示させるとともに、再度測定した温度と目標値との比較演算が行われる(ステップS106)。ここで、表示装置80には、運転条件変更後の重合器1の温度がリアルタイムに表示される(ステップS107)。
【0084】
さらに、測定した温度と目標値との偏差が生じ、この偏差が許容偏差の範囲を逸脱しているか否かを判断し(ステップS108)、許容偏差の範囲内の場合は、現状の運転条件で重合を行う。また、許容偏差の範囲外の場合は、所定の制御信号を出力し(ステップS109)、制御マップに基づき運転条件の変更を行う。
【0085】
つぎに、再変更後の重合器1の温度を表示させるとともに、再度測定した温度と目標値との比較演算が行われる(ステップS110)。ここで、表示装置8には、運転条件変更後の温度がリアルタイムに表示される(ステップS111)。このように測定した温度分布が目標値と合致するまで運転条件の変更を繰り返すものである(ステップS112)。
【0086】
[本発明の別の実施の形態]
次に、本発明の別の実施の形態に係る流動層型重合装置を図7に基づき説明する。
なお、前述の実施の形態とこの別の実施の形態との違いは、重合に関わる条件を変更する際に、前述の実施の形態が自動制御で行っているのに対し、この別の実施の形態は、各々の設備の速度や供給量を手動で調節している点だけである。従って、図7において図1と同一符号のものは、前述した本発明の実施の形態の同一符号のものと同一機能を有するものなので、その説明を省略し、前述の実施の形態と異なる部位のみ説明する。ただし、別の実施の形態におけるPC3のデータ部35は、外殻表面の温度分布の目標値や、固体触媒等の流入圧力値、流速値または流量値と外殻表面温度との相関関係、流動層高と外殻表面温度との相関関係を記したマップを格納していない。また、PC3は、重合条件を変更する制御信号を出力しない。
【0087】
別の実施の形態に係る流動層型重合装置を示すブロック図(図7参照)に示すように、手動調節装置90a,90b,90c、90d、90eは、原料供給設備4、循環設備7、触媒供給設備8、失活成分供給設備5、オレフィン重合体取出設備10の各々の出力側配管に配置されている。詳しくは、各設備のブロワー吐出側と重合器1の供給口とを接続する配管に配置されている。
【0088】
そして、この手動調節装置90a,90b,90c、90d、90eは、例えば開閉度が手動により変更可能な制御弁である。
なお、この手動調節装置90a,90b,90c、90d、90eは、各ブロワーの各々の出力を手動で調節可能な装置であってもよい。この場合、手動操作で各ブロワーの出力を変更して流出量や流入圧力や流動層高を調節する。さらに、この手動調節装置90a,90b,90c、90d、90eは、前記制御弁の開閉度や前記ブロワーの出力をオペレータの遠隔操作により調節可能な装置であってもよい。
【0089】
次に、別の実施の形態に係る流動層型重合装置を用いて運転条件を変更する場合の動作を説明する。PC3は、リアルタイムに測定されている重合器1の温度を表示装置80の表示画面81に表示させる。従って、表示装置80には、測定温度が測定位置毎にリアルタイムで表示される。
【0090】
オペレータは、表示された温度を参照し、表示された測定温度と正常運転時の温度との間の偏差を測定位置毎にチェックし、チェックの結果、許容偏差の範囲内の場合は、運転条件の変更は行わない。一方、許容偏差の範囲外の場合、オペレータは、異常のあった測定位置から判断して、手動調節装置(制御弁)90a,90b,90c、90d、90eの何れかを手動操作し、運転条件の変更を行う。例えば、異常のあった測定位置から判断して、原料供給設備4の流量値の変更が必要な場合、オペレータは、制御弁90aの開閉度を手動により変更し、運転条件の変更を行う。同様に、循環設備7の流速値、触媒供給設備8の圧力値、失活成分供給設備5の流量値あるいはオレフィン重合体取出設備10の流動層高のいずれかの変更が必要な場合、オペレータは、それぞれの制御弁の開閉度を手動により変更し、運転条件の変更を行う。
【0091】
次に、オペレータは、運転条件の変更後、表示画面81の温度表示を参照し、測定温度が正常運転時の温度と合致しているかどうかを再度確認する。このように、オペレータが表示装置80で測定温度の経時変化を見ながら、前記循環速度、前記オレフィンの供給量、個体状触媒の供給量、および流動層高を各々手動で調節することで、重合に関わる条件を変更することができる。
【0092】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、温度計にポリマー粒子を付着させることなく、流動層型重合器の外壁面の温度分布をより綿密に測定できるとともに、この測定結果に基づき流動層型重合器の内部で行われている重合状態をより高い精度で推定することができる。また、温度の理想目標値と測定値とを比較演算し、この演算結果に基づいて触媒の供給量または流入速度を変更させる運転条件の変更処理を行い、長期間に亘って安定した重合を行うことができる。さらに、前記外壁面の温度の測定結果に基づいて、触媒の供給量または流入速度を手動で変更させる運転条件の変更処理を行い、長期間に亘って安定した重合を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態に係る流動層型重合装置を示すブロック図
【図2】 流動層型重合器、循環設備、原料供給設備、および触媒供給設備のブロック図
【図3】 流動層型重合器および循環設備における温度検出器の側面配置図
【図4】 流動層型重合器における温度検出器の平面配置図
【図5】 温度検出器を固定した温度測定位置の拡大図
【図6】 制御装置のフローチャート
【図7】 別の実施の形態に係る流動層型重合装置を示すブロック図
【図8】 従来の流動層型重合器のブロック図
【符号の説明】
1…流動層型重合器(重合器)
2…温度測定装置
3…制御装置(PC)
4…原料(オレフィン)供給設備
5…失活成分供給設備
7…循環設備
8…触媒供給設備
10…オレフィン重合体取出設備
80…表示装置
90…手動調節装置
Claims (10)
- オレフィンを含有する流動ガスを用いて、固体触媒成分及び重合体を流動させつつオレフィンを重合させる流動層を有する流動層型重合器と、前記流動層型重合器の頂端から流出する未反応オレフィン含有ガスを前記流動層型重合器に循環させるとともに前記未反応オレフィン含有ガスの循環速度を調節する設備と、新たなオレフィンを前記流動層型重合器に供給するとともに前記オレフィンの供給量を調節する原料供給設備と、前記固体状触媒を前記流動層型重合器に供給するとともに前記固体状触媒の供給量を調節する触媒供給設備とを備えた流動層型重合装置において、
前記流動層型重合器の外壁面に、測定位置の異なる複数の温度検出器を配置し、これら複数の温度検出器から測定位置毎に温度を測定する温度測定装置と、
前記測定位置毎の温度の目標値をあらかじめ格納し、前記温度の目標値と測定した温度とを比較演算し、目標に合致させるように重合に関わる条件を変更して制御する制御装置と
を備えたことを特徴とする流動層型重合装置。 - オレフィンを含有する流動ガスを用いて、固体触媒成分及び重合体を流動させつつオレフィンを重合させる流動層を有する流動層型重合器と、前記流動層型重合器の頂端から流出する未反応オレフィン含有ガスを前記流動層型重合器に循環させるとともに前記未反応オレフィン含有ガスの循環速度を調節する設備と、新たなオレフィンを前記流動層型重合器に供給するとともに前記オレフィンの供給量を調節する原料供給設備と、前記固体状触媒を前記流動層型重合器に供給するとともに前記固体状触媒の供給量を調節する触媒供給設備とを備えた流動層型重合装置において、
前記流動層型重合器の外壁面に、測定位置の異なる複数の温度検出器を配置し、これら複数の温度検出器から測定位置毎に温度を測定する温度測定装置と、
前記温度測定装置が測定した温度の測定結果により、重合に関わる条件を変更する調節装置とを備えたことを特徴とする流動層型重合装置。 - 請求項1又は2のいずれかに記載の温度測定装置は、
前記温度検出器を前記流動層型重合器の外壁面に沿って高さあるいは方位を変えて配置したことを特徴とする流動層型重合装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の流動層型重合装置において、
前記重合に関わる条件を、前記流動層型重合器に流入する前記オレフィンの供給量および前記循環速度とすることを特徴とする流動層型重合装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の流動層型重合装置において、
前記重合に関わる条件を、前記流動層型重合器に供給する前記固体触媒の供給量とすることを特徴とする流動層型重合装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の流動層型重合装置において、
前記流動層型重合器は触媒失活成分の供給口を有し、前記重合に関わる条件を、前記流動層型重合器に触媒失活成分の供給とすることを特徴とする流動層型重合装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の流動層型重合装置において、
前記重合に関わる条件を、前記流動層型重合器の内部の前記流動ガスの組成とすることを特徴とする流動層型重合装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の流動層型重合装置において、
前記制御装置は、前記温度測定装置が測定した温度を表示する表示装置を有することを特徴とする流動層型重合装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の流動層型重合装置において、前記重合に関わる条件
を、前記流動層の流動層高とすることを特徴とする流動層型重合装置。 - オレフィンを含有する流動ガスを用いて、固体触媒成分及び重合体を流動させつつオレフィンを重合させる流動層を有する流動層型重合器と、前記流動層型重合器の頂端から流出する未反応オレフィン含有ガスを前記流動層型重合器に循環させるとともに前記未反応オレフィン含有ガスの循環速度を調節する設備と、新たなオレフィンを前記流動層型重合器に供給するとともに前記オレフィンの供給量を調節する原料供給設備と、前記固体状触媒を前記流動層型重合器に供給するとともに前記固体状触媒の供給量を調節する触媒供給設備とを備えた流動層型重合装置を用いてオレフィンの重合を実施するオレフィンの重合方法において、
前記流動層型重合器の外壁面に、測定位置の異なる複数の温度検出器を配置し、これら複数の温度検出器から測定位置毎に温度を測定する手順と、
前記測定された温度と正常運転時の温度とを比較する手順と、
前記比較結果に基づいて、重合に関わる条件を変更する手順と
を有することを特徴とするオレフィンの重合方法。
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