JP3770606B2 - 下糸必要量演算機能を備えたミシン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は下糸必要量演算機能を備えたミシン、特に刺繍縫い等の縫い目の形成に対して、糸の太さや被縫製物(布地)の厚み、固さ等の諸条件によって模様要素毎に下糸必要量を補正して演算できるようにした下糸必要量演算機能を備えたミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ミシンの記憶手段に複数の刺繍模様のデータを記憶させておき、該模様の中から1つの模様を選んで、または複数の模様を選んでこれらを組合わせ、上糸と下糸とにより刺繍模様を布上に形成するようにしたミシンが知られている。
このようなミシンにおいては、近年、記憶手段の容量の増大と共に、多くの針数を必要とする複雑な模様が該記憶手段に格納されるようになり、このような模様を縫い上げるために、多くの上糸と下糸が必要になってきている。
【0003】
一般に、模様の縫製中に下糸がなくなると、模様形成の途中で下糸を交換して縫製を続行することになる。この時には、模様データを逆読みして縫い直しをする必要が生じ、煩雑な作業を強いられる。また、刺繍縫いを均一な縫い上がりに仕上げることは、実際上極めて難しくなる。
【0004】
そこで、従来、ミシンに装着されている下糸保持手段に残っている下糸の残量を検出し、この残量が予定量以下になった時に警告を発することにより、下糸残量の不足を報知するようにしたミシンが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した従来のミシンにおいては、単に下糸の残量の絶対量のみを検出し、これが所定量以下になった時に警告を発するものであり、現在縫製中の模様の針数と関連付けて警告を発するものではなかった。
【0006】
また、下糸の消費量は模様の針数以外に、糸の太さおよび被縫製物の厚み、固さ等の条件に依存するが、これらについては何らの配慮もされていなかった。
【0007】
本発明の目的は、前記した従来技術の問題点を解決することを課題とし、模様を縫うのに必要な下糸必要量を針数ばかりでなく、糸の太さ、被縫製物の厚み、固さ等の諸条件を考慮に入れて予測することができる下糸必要量演算機能を備えたミシンを提供することにある。
また、他の目的は、実際の下糸残量が前記補正された下糸必要量より少なくなった場合に、警告表示できるようにした模様縫いミシンを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するため、下糸必要量演算機能を備えた模様縫いミシンとして、上糸と下糸により模様縫い目を形成する模様縫いミシンにおいて、布の種類、糸の種類等の諸条件の入力により決定された修正係数に基づく修正を加えて、選択された模様要素の下糸必要量を求める手段と、該模様要素の実際の下糸消費量と下糸必要量とから下糸必要量の補正係数を求める手段とを具備し、同じ条件で縫製を続ける時に、前記補正係数により、前記下糸必要量を補正し、下糸を交換したときには、前記諸条件の入力ステップに戻ることを特徴とする構成を採用する。
【0009】
別実施形態として、上糸と下糸により模様縫い目を形成する模様縫いミシンにおいて、布の種類、糸の種類等の諸条件の入力により決定された修正係数に基づく修正を加えて、選択された模様要素の下糸必要量を求める手段と、該模様要素の実際の下糸消費量と下糸必要量とから下糸必要量の補正係数を求める手段と、下糸残量と下糸必要量を比較する下糸量比較手段とを具備し、同じ条件で縫製を続ける時に、前記補正係数により、前記下糸必要量を補正するとともに、下糸残量と補正演算された下糸必要量とを比較し、その結果によって下糸残量の不足を報知し、下糸を交換したときには、前記諸条件の入力ステップに戻ることを特徴とする構成を採用する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の下糸必要量演算機能を備えたミシンのハード構成を示すブロック図である。
【0011】
図において、1は予め設定されている複数個の模様データを記憶する模様データ記憶手段である。模様データ記憶手段1は、例えばアルファベットのA,B,C,……、数字の1,2,3,4,……、図形、絵図等各種の模様要素、或いは模様パターンの模様データを多数記憶している。
【0012】
2は模様選択手段、3は該模様選択手段2によって、前記模様データ記憶手段1の中から1個ないしは複数個選択された模様要素毎に、選択された順序で模様データが記憶される選択模様記憶手段である。また、複数個の模様要素を選択した時、図示されていない編集操作手段により、選択された模様要素の順序を任意に変えてもよい。
【0013】
4は布の種類、糸の種類等の諸条件によって異なる修正係数により、下糸必要量を演算するプログラムが記憶されている下糸必要量演算プログラム記憶手段である。
【0014】
5は予め記憶されている模様の表示データが記憶されている表示データ記憶手段である。6は下糸保持手段(ボビンなど)に巻回された下糸の残量を検出する下糸残量検出手段である。ここで、該下糸残量検出手段6は、公知のものが幾つか知られているが、例えば、特開平1−126996号公報に開示されている「ミシンの下糸残量検出装置」を用いることができる。
【0015】
7は模様要素の形成に実際に消費された下糸消費量と該模様の下糸必要量から下糸消費量補正係数αを(α=下糸消費量/下糸必要量)求めて記憶する下糸消費量補正係数記憶手段である。8は布の種類、糸の種類等の諸条件による異なる修正係数を、下糸必要量演算プログラム記憶手段4に入力するための諸条件入力操作手段である。
【0016】
9は中央演算装置(以下、CPUという)である。10は、予め記憶されている複数個の模様データ並びに各種データ等を表示する液晶表示手段である。この液晶表示手段10は液晶以外の他の表示手段でもよい。12は後述する下糸量比較手段14で比較された結果によって、下糸残量不足の警告を表示する警告表示手段である。
【0017】
13は縫い模様形成のためのミシン駆動系である。13aは駆動モータを駆動するためのモータ駆動制御手段、13bはミシン針を駆動するための駆動モータである。13cはミシンの縫い点を2方向(例えば、X−Y方向)に動かすステッピングモータを駆動するためのステッピングモータ駆動制御手段、13dはミシンの縫い点を第1の方向(例えば、X方向)に動かすための振幅用ステッピングモータ、13eはミシンの縫い点を第2の方向(例えば、Y方向)に動かす送り用ステッピングモータである。
【0018】
14は前記下糸残量検出手段6が検出した下糸残量と選択された模様に必要な下糸量を比較する下糸量比較手段である。
【0019】
15は前記模様選択手段2によって、選択された模様に関して下糸必要量演算プログラムによって演算された必要な下糸必要量を、模様要素或いは模様パターンに対応させて、記憶される下糸必要量記憶手段である。
【0020】
図3は、模様と模様要素或いは模様パターンの定義を説明する図である。
図示されているように模様30は、前記模様選択手段2で選ばれた模様要素或いは模様パターン(以下単に模様要素という)31,32,33,34の全体の組合せである。
【0021】
次に、本実施形態の制御装置の動作を、図2に示すフローチャートを参照して具体的に説明する。
まず、ステップS1では、前記模様データ記憶手段1に予め記憶されている多数個の模様要素の中から任意に前記模様選択手段2を用いて1個ないしは複数個の模様要素が選択され、該選択された模様が液晶表示手段10に表示される。
【0022】
ステップS2では、前記模様選択手段2に選択された模様を選択模様記憶手段3に記憶する。模様要素が複数個選択された時は、選択された順に記憶されて、選択された模様要素数Lが設定される。ただし、図示されていない編集操作手段により、順序を任意に変えてもよい。ここでは、模様が4個選択されたとして、すなわち選択模様要素数L=4として以後説明する。
ステップS3では、選択模様要素数Nを“1”に初期設定する。
【0023】
ステップS4では、前記諸条件入力操作手段8によって、選択された第1番目の模様要素について、布の種類、糸の種類等の諸条件を入力する。
【0024】
ステップS5では、入力された前記諸条件によって、第1番目の模様要素の修正係数が決定される。
【0025】
ステップS6では、決定した修正係数に基づいて、各模様要素の下糸必要量が前記下糸必要量演算プログラム記憶手段4に記憶されている下糸必要量演算プログラムよって前記CPU9で演算され、標準の下糸必要量が求められる。
すなわち、前記諸条件での下糸必要量が予測される。ここでは、まず、第1番目の模様要素の下糸必要量について演算し、標準の下糸必要量を順次求める。
【0026】
ステップS7では、前記標準の下糸必要量を下糸必要量記憶手段15に記憶する。
ここで、該下糸必要量をYn(n=1,2,3,・・・,n)とする。 第1番目の模様要素の下糸量はY1、n番目の模様要素の下糸量はYnである。
【0027】
ステップS8では、下糸残量検出手段6によって下糸残量Xn(n=1,2,3,・・・,n)が検出される。
ここでは、縫製開始前はX1 、第1番目の模様要素形成後、すなわち第2番目の模様要素形成前はX2 である。
【0028】
ステップS9では、前記下糸残量Xnが該標準下糸必要量Ynより大きいか否かが判断される。Xn>Ynであれば、この判断は肯定となって、ステップS10に進み、一方、Xn<Ynであれば、ステップS20へ進む。
【0029】
いま、第1番目の模様要素について判断がなされ、下糸残量X1 が該模様要素の下糸必要量Y1 より多かったとすると、X1 >Y1 と判断される。
【0030】
ステップS10では、図1のミシン駆動系13を駆動して選択されたN番目の模様要素の刺繍縫いが実行される。
ここでは、第1番目の模様要素の刺繍縫いが実行される。
【0031】
ステップS11では、実際の下糸消費量を検出する。例えば、前記下糸残量検出手段6を用いて、前記下糸残量X1 と第1番目の模様要素の模様形成後の下糸残量X2 との差から、実際の下糸消費量を検出する。
【0032】
ステップS12では、前記した実際の下糸消費量と第1番目の模様要素の下糸必要量から、下糸消費量補正係数αを(α=下糸消費量/下糸必要量)求め、前記下糸消費量補正係数記憶手段7に記憶する。
【0033】
ステップS13では、Nを“1”カウントアップする。ここで、N=2となる。
【0034】
ステップS14では、“1”カウントアップされたNが選択模様要素数Lより大きいか否かが判断される。N>Lであれば残存模様要素がないことを示し終了する。N≦LであればステップS15に進む。ここで、N=2,L=4となり、N<Lであるので前記判断は否定となり、ステップS15に進む。
【0035】
ステップS15では、刺繍糸が交換されたか否かが判断される。該刺繍糸が交換されたならば、肯定と判断してステップS4に戻り、再び諸条件の再入力が行われる。これは、細い糸、又は太い糸に変えられる可能性があるからである。前記ステップS4に戻った後は、残存模様要素がなくなるまで前記の処理が繰り返される。該刺繍糸が交換されない時には条件の変更はないので否定と判断されてステップS6に戻る。
【0036】
この時、ステップS6では、すでに、前記ステップS5で決定されている修正係数と、前記下糸必要量記憶手段15から読み出された第2番目の模様要素の下糸必要量と、前記ステップS12で算出された補正係数αとを用いて、前記下糸必要量演算プログラムよって前記CPU9で演算される。
【0037】
以下、前記と同様の動作が繰り返され、N=5となって前記ステップS14の判断が肯定になると前記した処理は終了する。
【0038】
次に、前記ステップS9が否定と判断された時の動作について、説明する。
【0039】
ステップS20では、下糸残量が不足していることを前記下糸残量警告表示手段12に警告表示する。また、同時に図示されていない警告音発生装置によって音による警告等を同時に行ってもよい。
【0040】
ステップS21では、前記警告に従って下糸が交換されたか否かが判断される。該下糸が交換されたならば、ステップS4に戻り、前記した動作が繰り返し実行される。一方、該下糸が交換されなければ、ステップS22に進む。
【0041】
ステップS22では、ミシン縫いの作業が強制的に停止する。
【0042】
なお、前記実施例では、1番目の模様要素により、補正係数を求め下糸必要量を予測したが(前記ステップS12参照)、本発明はこれに限定されず、任意の模様要素によって予測するようにしてもよい。
【0043】
また、本実施例において、選択された模様要素が1個の時は、ステップS9の判断で下糸残量が下糸必要量に対して十分あれば、ステップS10で刺繍縫いを実行した後、停止してそのまま終了してもよい。また、本実施例では、模様の刺繍縫いについて説明したが、その他のミシン縫いでもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上のような説明から明らかなように、本発明によれば、以下のような効果がある。
布の種類、糸の種類等の諸条件を考慮に入れて、模様形成のために必要な標準の必要下糸量を求め、該必要下糸量を実際の下糸消費量から補正しているので、下糸量を一層正確に予測できるようになった。
【0045】
下糸残量の不足を正確に報知できるようになるので、一つの模様要素或いは模様全体の縫いの途中で下糸がなくなるという不具合を防止できる効果がある。
したがって、模様データを逆読みし縫い直しをする必要がなくなり、煩雑な作業を必要とせず、縫い模様の仕上がりがよくなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の下糸必要量演算機能を備えたミシンのハード構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図3】模様と模様要素の説明図である。
【符号の説明】
1 模様データ記憶手段
2 模様選択手段
3 選択模様記憶手段
4 下糸必要量演算プログラム記憶手段
5 表示データ記憶手段
6 下糸残量検出手段
7 下糸消費量補正係数記憶手段
8 諸条件入力操作手段
9 中央演算装置(CPU)
10 液晶表示手段
12 警告表示手段
13 ミシン駆動系
14 下糸量比較手段
15 下糸必要量記憶手段
30 模様
31、32、33、34 模様要素

Claims (2)

  1. 上糸と下糸により模様縫い目を形成する模様縫いミシンにおいて、
    布の種類、糸の種類等の諸条件の入力により決定された修正係数に基づく修正を加えて、選択された模様要素の下糸必要量を求める手段と、
    該模様要素の実際の下糸消費量と下糸必要量とから下糸必要量の補正係数を求める手段とを具備し、
    同じ条件で縫製を続ける時に、前記補正係数により、前記下糸必要量を補正し、下糸を交換したときには、前記諸条件の入力ステップに戻ることを特徴とする下糸必要量補正機能を備えた模様縫いミシン。
  2. 上糸と下糸により模様縫い目を形成する模様縫いミシンにおいて、
    布の種類、糸の種類等の諸条件の入力により決定された修正係数に基づく修正を加えて、選択された模様要素の下糸必要量を求める手段と、
    該模様要素の実際の下糸消費量と下糸必要量とから下糸必要量の補正係数を求める手段と、
    下糸残量と下糸必要量を比較する下糸量比較手段とを具備し、
    同じ条件で縫製を続ける時に、前記補正係数により、前記下糸必要量を補正するとともに、下糸残量と補正演算された下糸必要量とを比較し、その結果によって下糸残量の不足を報知し、下糸を交換したときには、前記諸条件の入力ステップに戻ることを特徴とする下糸必要量補正機能を備えた模様縫いミシン。
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