JP3770508B2 - 薬液注入装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボーリング孔にパッカを挿入してシールし、その下方に薬液を注入して地盤改良する薬液注入工法で用いられる薬液注入装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
地盤改良のために薬液注入工法を施工する場合、先ず、地盤改良が必要な軟弱地盤を掘削してボーリング孔を穿孔する。所定の深さまで掘削したら、例えば中長結型硬化剤を注入するが、その際にボーリング孔から地表側へ薬剤が流出しない様にシールする必要がある。
【0003】
しかしながら、軟弱地盤は容易に変形するので、パッカをかけることは不可能である、と言われている。そのため、先ず、瞬結型硬化剤を注入してボーリング孔の近傍を瞬間的に固結させ、以て、中長結型硬化剤が地表側へ流出することを防止していた。
【0004】
ここで、上記の技術においては、瞬結型硬化剤が交じると中長型硬化剤も瞬時に固結するので、両者が混合しないように作業するための管理が非常に複雑で且つ面倒であった。また、上記の技術では下方から上方に移動する「ステップアップ」方式の作業をせざるを得ないが、その様な作業は上方から下方に移動する 「ステップダウン」方式の作業に比較して、作業効率が非常に悪い。
【0005】
そこで、本出願人は特開平6−173243号公報において、作業容易な「ステップダウン」方式で施工可能な薬液注入工法及びそれに用いられる装置を提案している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開平6−173243号公報で開示されている薬液注入工法及び装置は、非常に有用なものである。しかし、本出願人の絶え間ない研究の結果、次の様な問題が存在することが判明した。
【0007】
先ず、パッカが半径方向に膨張する際には、軸方向すなわちボーリング孔の長手方向には収縮する。しかし、特開平6−173243号公報の技術では、その様な長手方向の収縮には何等考慮していない。従って、パッカを(半径方向へ)膨張して薬液を注入した際に、注入装置先端の薬液注入箇所は、パッカの軸方向の収縮分だけ、所定深度よりも浅い箇所に位置してしまう。従って、その様な (パッカの軸方向の)収縮に対処する必要が存在する。
しかし、その様な収縮に対処するための従来の各種機構では、パッカに接続されて先端部に存在する削孔手段に回転トルクを伝達することが困難であり、最悪の場合、可撓性材料で構成されたパッカが破壊されてしまう。
【0008】
また、パッカを(半径方向に)膨張して薬液を注入した後、さらに下方の領域に薬液を注入するためには、パッカを収縮する必要がある。しかし、パッカが半径方向に十分に収縮せず、その一部が半径方向外方に突出している場合には、当該突出している部分がボーリング孔の内壁面と擦れ合い、破損してしまうという問題が存在する。
【0009】
さらに、軟弱地盤であっても、薬液をシールし易い地盤とシールし難い地盤とが存在する。シールし難い地盤であれば、複数(例えば3個)のパッカを設けてボーリング孔のシールを十分に行わなければならない。しかし、シールし易い地盤に施工するに際しては、複数のパッカを設ける必要性は必ずしも存在しない。換言すれば、施工地盤のシール性に応答して、使用するポッカの数を自在に設定出来るのが好ましいが、従来は、その様な装置は存在しなかった。
【0010】
さらに、複数のパッカを用いる場合において、パッカを掛けた領域よりも上方に存在する所謂「ゆるみ領域」を固定するためには、包絡線とボーリング孔中心線とが為す角度が大きいことが好ましく、その角度を大きくするためには、上方のパッカの膨張率が下方のパッカの膨張率よりも大きいことが望ましい。しかし、従来、その様なパッカは存在しなかった。
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、パッカの軸方向の収縮に対処することが出来て、回転トルクを確実に伝達することが出来て、パッカがボーリング孔の内壁面と擦れ合って破損することが防止され、更に種々の地盤に対応することが出来て、しかもパッカ上方の所謂「ゆるみ領域」を好適に固定することが出来る様な薬液注入装置の提供を目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の薬液注入装置は、ボーリング孔にパッカを挿入してシールし、その下方に薬液を注入して地盤改良する薬液注入工法で用いられる薬液注入装置において、パッカエレメントを有し、該パッカエレメントに内周が六角形状に形成された端部を有する筒状のスライド部を設け、そのスライド部の端部と相互にスライド可能に係合する軸を設け、該軸は前記パッカの内側を貫通してパッカの先端部に設けられた削孔手段に連結され、且つ、該軸の係合部が断面六角形状に形成されていることを特徴としている。
【0013】
係る構成を具備する本発明の薬液注入装置によれば、パッカエレメントに内周が六角形状に形成された端部を有する筒状のスライド部を設け、そのスライド部の端部と相互にスライド可能に係合する軸を設けているので、パッカが半径方向に膨張して、軸方向に収縮しても、当該スライド部において前記スライド部と係合する前記軸とが軸方向収縮分だけスライドするので、注入装置先端の薬液注入箇所の位置(深度)は当該軸方向の収縮によっては変化しない。そのため、薬液注入箇所の位置(深度)は、設定した通りとなる。また、前記スライド部は内周が六角形状に形成されており、且つ、前記軸の係合部が断面六角形状に形成されているので、前記スライド部と軸とが相互にスライドしても、回転トルクは六角形の部材同士の係合によって確実に伝達されるのである。
【0014】
上述した本発明において、前記スライド部の端部と前記軸との間に、前記パッカを(軸方向へ)伸長する様に付勢する弾性手段(例えば「ばね」)が介装されているのが好ましい。その様に構成すれば、半径方向にパッカを収縮する際に該パッカが(半径方向に)十分収縮せず、その一部が半径方向外方に突出したとしても、前記弾性手段の弾性反撥力により前記パッカが軸方向へ伸長されると、パッカは半径方向に収縮する。従って、パッカの半径方向突出部がボーリング孔と擦れ合って破損することが防止されるのである。
【0015】
本発明の実施に際して、複数のパッカエレメントを接続するのが効果的である。その様にすれば、複数のパッカによるラビリンスシールとしてのシール効果も得られるからである。
【0016】
ここで、施工すべき地盤のシール性が比較的良好な場合には、前記複数のパッカの一部に代えて、円筒状のスペーサを接続するのが好ましい。その様に構成すれば、シールし易い地盤に施工するに際しては、パッカを一部省略して、その部分に前記スペーサを接続することによって、必要な数のパッカのみを使用することが可能となる。その結果、施工地盤のシール性に応答して、使用するポッカの数を自在に設定出来るのである。
【0017】
なお、前記複数のパッカの膨張率が異なっているのが好ましい。そして、その場合には、前記複数のパッカの内、上方に位置するパッカの膨張率が下方に位置するパッカの膨張率よりも大きくなる様に配置されているのが好ましい。その様に構成すれば、包絡線とボーリング孔中心線とが為す角度を大きくして、パッカ上方に存在する所謂「ゆるみ領域」を好適に固定することが出来るのである。
【0018】
なお、前記複数のパッカの膨張率を等しくしても良い。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態を示し、全体を符号1で示す薬液注入装置は、複数(図示の例は3個)のパッカエレメント2とロッド4と掘削手段であるモニタ部8およびスライド部9とで構成されている。
【0020】
そして、ロッド4の端部には圧縮空気を供給する空気室6とロッド4の中空の軸部4aに水や薬液等の液体を供給する液体室7とが設けられ、接続口6a、7aがそれぞれ回転部供給手段の図示を省略して設けられている。更に、軸部4aには先端にビット8aを有するモニタ部8が固着されており、そのモニタ部8のパッカ2側はパイプ状に形成され、先端のパッカエレメント2に接続されたスライド部9が摺動自在に挿入されるよう構成されている。
【0021】
また、スライド部9の端部9aには、図3を参照して、六角形状の孔9bが設けられ、軸部4aの六角部4bと係合して軸部4aとスライド部9とが同一回転するよう構成されるとともに、軸部4aに設けられたばね座4cとスライド部9の端部内側の間にはパッカエレメント2が伸長する方向に付勢するばね10が設けられている。したがって、パッカエレメント2内の空気圧を抜けば、パッカのシール部2aは容易に収縮する。
【0022】
図2は、パッカエレメント2の部分断面図を示し、そのエレメント2は膨張・収縮するシール部2a、シール部に繋がる固定部2bおよびパッカエレメント2を接続する雄ねじを有する接続部2cと雌ねじを有する接続部2dとで構成されている。そして、シール部2aはワイヤ等で補強され多重層に構成された弾性部材、例えばラバー等で構成されており、内側に流体圧、例えば圧縮空気を供給することにより膨張するよう構成されている。
【0023】
以下、作用について説明する。
ボーリング孔の掘削にあたっては、軸部4aがモニタ部8を回転させるのでビット8aにより掘削が可能であり、パッカエレメント2はロッド4と同径であるため、抵抗なしに掘削がきる。所定深さ掘削したら、図4を参照して、圧縮空気を空気室6を介してパッカ2内に供給し、パッカ2を膨張させる。この際、スライド部9がモニタ部8の内側を摺動し、ばね10に抗してパッカ側にスライドするため、パッカ2のシール部2aに同時にばね力以外の軸方向の引っ張り力がかからないので、シール部2aは従来より低い空気圧でも十分にシールすることが出来、耐久性も向上する。
【0024】
ここで、薬液を軸4aを介して注入し、空気圧を抜けば、ばね10によりパッカ2のシール部2aは容易に収縮するので、次の掘削に容易に進行することが出来る。
【0025】
上記の例では、回転力の伝達のために六角形状の孔と軸とを用いているが、これに限定されるものでなく、スプラインでもよく、また、楕円形でもよい。
【0026】
図5および図6は、本発明の別の実施の形態を示し、図5は先端側に2個のパッカ2、2を設け、3番目のパッカに換えてスペーサ12を取り付けたもので、薬液が漏れにくい地盤の場合に適用するもので、パッカを1個節約できる。図6は、更に漏れにくい地盤の場合で、パッカを1個だけとしスペーサ12を2個用いた場合を示している。このようにパッカ2の数量は地盤によって適宜必要な数量を選択して用いればよい。
【0027】
図7は、本発明の他の実施の形態を示し、最上部のパッカ14に膨張率が大であるパッカ14を用いた場合の薬液注入装置21で、非常に軟弱な地盤であって、シール性が悪い場合を示し、下方の2個のパッカからリークした薬液を外径の大きいパッカにより最終的に確実にシールしたいときに用いれば効果がある。
【0028】
図8〜図10に示すように第3の工程(3回)まで掘進した場合、地盤Gが軟弱であっても、下方に移動した場合に最上部のパッカの膨張した場合の直径D1(図10)が、既に掘削されパッカ2により拡大した孔の径D2より大であるので、常に下方のパッカ2、2からリークする薬液が存在しても確実にシールすることが出来る。以下、同様の繰り返しにより掘削が進行できる。
【0029】
なお、パッカの膨張率は補強のためのワイヤの数量や傾斜角、ラバーおよびワイヤの材質等を選択することで最適なものを選択できる。
【0030】
【発明の効果】
本発明の作用効果を以下に列挙する。
(1) パッカが半径方向に膨張する際の軸方向の収縮に対処することが出来る。
(2) 回転トルクを確実に伝達することが出来る。
(3) パッカ収縮に際して、半径方向へ確実に収縮せしめ、ボーリング孔の内壁面と擦れ合って破損することを防止出来る。
(4) 施工地盤のシール性に応答して、使用するパッカの数を調節することが出来る。
(5) パッカ上方の所謂「ゆるみ領域」を確実に固定出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す薬液注入装置の部分断面図。
【図2】図1のパッカエレメントを示す部分断面図。
【図3】図1のA−A断面図。
【図4】図1の装置の作用を説明する図。
【図5】本発明の別の実施の形態を示す図。
【図6】本発明の別の実施の形態の別の例を示す図。
【図7】本発明の他の実施の形態を示す図。
【図8】図7の作用の第1の工程を説明する図。
【図9】図7の作用の第2の工程を説明する図。
【図10】図7の装置で第3の工程まで進行した掘削孔を示す図。
【符号の説明】
1・・・薬液注入装置
2、14・・・パッカエレメント
4・・・ロッド
4a・・・軸部
6・・・空気室
7・・・液体室
8・・・モニタ部
9・・・スライド部
10・・・ばね
12・・・スペーサ
Claims (7)
- ボーリング孔にパッカを挿入してシールし、その下方に薬液を注入して地盤改良する薬液注入工法で用いられる薬液注入装置において、パッカエレメントを有し、該パッカエレメントに内周が六角形状に形成された端部を有する筒状のスライド部を設け、そのスライド部の端部と相互にスライド可能に係合する軸を設け、該軸は前記パッカの内側を貫通してパッカの先端部に設けられた削孔手段に連結され、且つ、該軸の係合部が断面六角形状に形成されていることを特徴とする薬液注入装置。
- 前記スライド部の端部と前記軸との間に、前記パッカを伸長する様に付勢する弾性手段が介装されている請求項1の薬液注入装置。
- 複数のパッカエレメントを接続している請求項1、2のいずれかの薬液注入装置。
- 前記複数のパッカの一部に代えて、円筒状のスペーサを接続した請求項3の薬液注入装置。
- 前記複数のパッカの膨張率が異なっている請求項3の薬液注入装置。
- 前記複数のパッカの内、上方に位置するパッカの膨張率が下方に位置するパッカの膨張率よりも大きくなる様に配置されている請求項5の薬液注入装置。
- 前記複数のパッカの膨張率が等しい請求項3の薬液注入装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP01631097A JP3770508B2 (ja) | 1997-01-30 | 1997-01-30 | 薬液注入装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP01631097A JP3770508B2 (ja) | 1997-01-30 | 1997-01-30 | 薬液注入装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH10212723A JPH10212723A (ja) | 1998-08-11 |
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Family
ID=11912963
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP01631097A Expired - Lifetime JP3770508B2 (ja) | 1997-01-30 | 1997-01-30 | 薬液注入装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3770508B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
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---|---|---|---|---|
JP2013227757A (ja) * | 2012-04-25 | 2013-11-07 | Hara Kogyo Kk | モルタル注入用パッカー |
-
1997
- 1997-01-30 JP JP01631097A patent/JP3770508B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH10212723A (ja) | 1998-08-11 |
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