JP3770375B2 - ポリベンザゾール繊維 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は産業用資材として好適な表面構造が緻密なポリベンザゾール繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリベンザゾール繊維は現在市販されているスーパー繊維の代表であるポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維の2倍以上の強度と弾性率をもち、次世代スーパー繊維として期待されている。
【0003】
ポリベンザゾール重合体のポリ燐酸溶液から繊維を製造することは公知であり、例えば紡糸条件については米国特許5296185号、米国特許5385702号、水洗乾燥方法についてはW094/04726号、さらに熱処理方法については米国特許5296185号にそれぞれ技術開示がなされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記従来の製造法によるポリベンザゾール繊維は、米国特許5296185号に記載されたような350℃以上の熱処理をしてもおおむね平衡水分率は0.6%以上である。これは繊維の吸湿を極度に嫌う分野、例えばシリコンチップ実装用の高性能高密度電子回路基板用途等に応用する上で障害となっている。
しかしながらポリベンザゾール繊維は重合溶液から溶剤を除去することにより製造されるためにボイドの発生は不可避であり、かかるボイドの存在が吸水性を高くする要因でもあった。一方、繊維中のボイド径が25Å以下のポリベンザゾ−ル繊維は多数提案されているが(例えば特開平6−240653号公報、特開平6−245675号公報及び特開平6−234555号公報、等)、かかる繊維を製造することはコスト面、等の工業的生産を考慮すると容易になし得ることではない。更にボイドが非常に微細なため、一旦ここに入り込んだ水が抜けにくい状態にあり、吸湿性低減の障害となっていた。
よって吸水性の極めて低いポリベンザゾール繊維を生産することができていないのが現実である。
【0005】
そこで本発明者らは、有機繊維材料として極度に低い吸水性を有するポリベンザゾール繊維を容易に製造する技術を開発すべく鋭意研究した。
【0006】
繊維の究極物性を実現する手段としては、いわゆるラダーポリマーなどの剛直ポリマーが考えられてきたが、こうした剛直なポリマーは可撓性が無く、有機繊維としてのしなやかさや加工性を持たせるためには、直線上のポリマーであることが重要な条件である。
【0007】
S.G.WierschkeらがMaterial Research Society Symposium Proceedings Vol.134, p.313 (1989年)に示したように、直線状のポリマーで最も高い理論弾性率を持つのはシス型のポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールである。この結果は田代らによっても確認され(Macromolecules vol. 24, p.3706(1991年))、ポリベンザゾールのなかでも、シス型のポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールが475GPaの結晶弾性率を持ち(P. GalenらMaterial Research Society Symposium Proceedings Vol. 134, p.329 (1989年))、究極の一次構造を持つと考えられた。従って究極の弾性率を得るためには、ポリマーとしてポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールを素材とするのが理論的な帰結である。
【0008】
該ポリマーの繊維化は米国特許5296185号、米国特許5385702号に記載された方法で行われ、熱処理方法は米国特許5296185号に提案がなされている方法で行われるが、かかる方法で得られるヤーンの平衡水分率は0.6%以上である。従ってこれらの方法の改良について研究の必要性を痛感し鋭意研究の結果、繊維中のボイド径が25.5Å以上であっても次に示す方法により所期の物性を工業的に容易に達成出来ることを見いだした。
【0009】
【課題を解決するための手段】
ポリベンザゾールの平衡水分率の更なる低下の為には繊維表面構造の緻密化が必要である。即ち、本発明は繊維表面の平均自乗粗さが20nm以下であることを特徴とするポリベンザゾール繊維、更に好ましくは繊維表面の結晶配向角が1.3度以下であることを特徴とするポリベンザゾール繊維、平衡水分率が0.6%以下であることを特徴とする繊維又は摩耗試験における破断までのサイクルが5200回以上であることを特徴とするポリベンザゾール繊維である。
【0010】
ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)とポリ燐酸からなるドープを紡糸口金から紡出する。これ以後凝固、中和、水洗、乾燥、張力下の熱処理を経て製造される。平衡水分率を低く抑える手段として繊維を構成するポリマーの表面部分の結晶構造を緻密化高配向化する方法がある。本発明において、この目的のためにポリベンザゾール繊維表面の結晶構造を緻密に変化せしめることに成功し且つ吸水率を極度に低く抑えたポリベンザゾール繊維を工業的に得た。
【0011】
かかる繊維の表面結晶構造は、繊維表面の平均自乗粗さが20nm以下であることを特徴とするか、更に好ましくは、繊維表面の結晶配向角が1.3度以下であるか、平衡水分率が0.6%以下であることを特徴とする繊維又は摩耗試験における破断までのサイクルが5200回以上であることを特徴とするポリベンザゾール繊維である。従って本発明はかかる技術的背景によりこれまでの技術的困難を克服し、特異な結晶配向を実現させることにより平衡水分率を限りなくゼロに近づけたポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を提供し、その工業的生産を可能にするものである。
【0012】
上記の構造的特徴を発現せしめるため、本発明のポイントは以下に示す手法により実現できる。即ち、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなるポリマーのドープを紡糸口金から非凝固性の気体中に押し出して得られた紡出糸を凝固浴中に導入してドープ糸条が含有する燐酸を抽出した後、中和、水洗、乾燥、熱処理を行うが、繊維を一定張力下に500℃以上で熱処理する事で繊維表面が緻密化したポリベンザゾールを得ることを見いだした。
【0013】
以下、更に本発明を詳述する。本発明におけるポリベンザゾール繊維とは、PBOホモポリマー、及び実質的に85%以上のPBO成分を含みポリベンザゾール(PBZ)類とのランダム、シーケンシャルあるいはブロック共重合ポリマーをいう。ここでポリベンザゾール(PBZ)ポリマーは、例えばWolf等の「Liquid Crystalline Polymer Compositions, Process and Products」米国特許第4703103号(1987年10月27日)、「Liquid Crystalline Polymer Compositions, Process and Products」米国特許第4533692号(1985年8月6日)、「Liquid Crystalline Poly(2,6-Benzothiazole) Compositions, Process and Products」米国特許第4533724号(1985年8月6日)、「Liquid Crystalline Polymer Compositions, Process and Products」米国特許第4533693号(1985年8月6日)、Eversの「Thermooxidative-ly Stable Articulated p-Benzobisoxazole and p-Benzobisoxazole Polymers」米国特許第4539567号(1982年11月16日)、Tsaiらの「Method for making Heterocyclic Block Copolymer」米国特許第4578432号(1986年3月25日)、等に記載されている。
【0014】
PBZポリマーに含まれる構造単位としては、好ましくはライオトロピック液晶ポリマーから選択される。モノマー単位は構造式(a)〜(h)に記載されているモノマー単位から成り、更に好ましくは、本質的に構造式(a)〜(c)から選択されたモノマー単位から成る。
【0015】
【化1】
Figure 0003770375
【0016】
【化2】
Figure 0003770375
【0017】
実質的にPBOから成るポリマーのドープを形成するための好適溶媒としては、クレゾールやそのポリマーを溶解し得る非酸化性の酸が含まれる。好適な酸溶媒の例としては、ポリ燐酸、メタンスルフォン酸及び高濃度の硫酸或いはそれ等の混合物があげられる。更に適する溶媒は、ポリ燐酸及びメタンスルフォン酸である。また最も適する溶媒は、ポリ燐酸である。
【0018】
溶媒中のポリマー濃度は好ましくは少なくとも約7重量%であり、更に好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは14重量%である。最大濃度は、例えばポリマーの溶解性やドープ粘度といった実際上の取り扱い性により限定される。それらの限界要因のために、ポリマー濃度は20重量%を越えることはない。
【0019】
好適なポリマーやコポリマーあるいはドープは公知の手法により合成される。例えばWolfe等の米国特許第4533693号(1985年8月6日)、Sybert等の米国特許第4772678号(1988年9月20日)、Harrisの米国特許第4847350号(1989年7月11日)に記載される方法で合成される。実質的にPBOから成るポリマーはGregory等の米国特許第5089591号(1992年2月18日)によると、脱水性の酸溶媒中での比較的高温、高剪断条件下において高い反応速度での高分子量化が可能である。
【0020】
この様にして重合されるドープは紡糸部に供給され、紡糸口金から通常100℃以上の温度で吐出される。口金細孔の配列は通常円周状、格子状に複数個配列されるが、その他の配列であっても良い。口金細孔数は特に限定されないが、紡糸口金面における紡糸細孔の配列は、吐出糸条間の融着などが発生しないような孔密度を保つ必要がある。
【0021】
紡出糸条は十分な延伸比(SDR)を得るため、米国特許第5296185号に記載されたように十分な長さのドローゾーン長が必要で、かつ比較的高温度(ドープの固化温度以上で紡糸温度以下)の整流された冷却風で均一に冷却されることが望ましい。ドローゾーンの長さ(L)は非凝固性の気体中で固化が完了する長さが必要であり大雑把には単孔吐出量(Q)によって決定される。良好な繊維物性を得るにはドローゾーンの取り出し応力がポリマー換算で(ポリマーのみに応力がかかるとして)2g/d以上が必要である。
【0022】
ドローゾーンで延伸された糸条は次に抽出(凝固)浴に導かれる。紡糸張力が高いため、抽出浴の乱れなどに対する配慮は必要でなく如何なる形式の抽出浴でも良い。例えばファンネル型、水槽型、アスピレータ型あるいは滝型などが使用出来る。抽出液は燐酸水溶液や水が望ましい。最終的に抽出浴において糸条が含有する燐酸を99.0%以上、好ましくは99.5%以上抽出する。本発明における抽出媒体として用いられる液体に特に限定はないが好ましくはポリベンザゾールに対して実質的に相溶性を有しない水、メタノール、エタノール、アセトン、エチレングリコール等である。また抽出(凝固)浴を多段に分離し燐酸水溶液の濃度を順次薄くし最終的に水で水洗しても良い。さらに該繊維束を水酸化ナトリウム水溶液などで中和し、水洗することが望ましい。
【0023】
本発明でとくに重要な、繊維表面構造を緻密に変化させる方法について述べる。吸湿を防ぐためには、繊維表面の高結晶配向の実現が重要な因子となる。このために、抽出過程において繊維ドープの凝固速度を遅くして繊維の内外層で構造に変化をつけることが肝要である。凝固速度を遅くする方法としては、凝固液の燐酸水溶液濃度を濃くしたり、浴温度を低くしたり、非水系の凝固剤を選択することが有効である。最適な燐酸水溶液濃度は50%以上80%未満、望ましくは55%以上70%未満、最も望ましくは60%以上65%未満である。濃度が高い方が効果は大きいが必要以上に濃いと繊維強度が低下し好ましくない。凝固浴温度については大略5℃以下であれば何度であっても良いが、あまり温度を下げすぎても浴のまわりに露が発生するため製造機械運転上好ましくない。好ましくは4℃からー30℃さらに好ましくは0℃からー15℃の温度範囲である。非水系の凝固剤を選択する場合は、エタノール、メタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、エチレングリコールなどのグリコール類など、水と親和性のある有機溶剤が好ましい。勿論複数の上記非水系凝固剤や水を混合して使っても良い。
こののち繊維を乾燥させ更に熱処理工程を通す。乾燥温度は繊維強度の低下をもたらさない温度とし、具体的には150℃以上400℃以下、好ましくは200℃以上300℃以下、更に好ましくは220℃以上270℃以下とする。熱処理温度については、400℃以上700℃以下、好ましくは500℃以上680℃以下、更に好ましくは550℃以上630℃以下とする。
【0024】
本発明にかかる繊維は、繊維表面の平均自乗粗さが20nm以下、好ましくは16nm以下、更に好ましくは10nm以下、繊維表面の結晶配向角が1.3度以下、好ましくは1.1度以下、更に好ましくは0.9度以下、平衡水分率が0.6%以下、好ましくは0.55%以下、更に好ましくは0.5%以下、摩耗試験における破断までのサイクルが5200回以上、好ましくは5600回以上、更に好ましくは6000回以上、ボイド径が25.5Å以上、好ましくは30Å以上150Å未満、更に好ましくは35Å以上90Å未満である。尚、本特許に於いて用いた回折点の指数付けはFratiniら(Material Research Society Symposium Proceedings Vol. 134, p.431 (1989年))により提案されている結晶模型に従う。
【0025】
繊維表面の平均自乗粗さRmsは原子間力顕微鏡(AFM)を用いて評価する。AFMはSeiko Instruments(SII)社製のSPI3800N-SPA300を使用する。探針はバネ定数2N/m、長さ450μm・幅60μm・厚さ4μmのSi製矩形型カンチレバーSII社からSi-DF3)を用いた。スキャナーは100μmスキャナーを観察モードはDFMモードを採用する。走査は速度0.5 Hz 、走査方向は繊維軸に平行とし、大気中摂氏20度相対湿度65%の条件で測定する。測定に供する繊維は、エタノールとnヘキサンの混合液で洗浄、乾燥後用いた。観察視野範囲は一片5μm四方の正方形領域とし、観察後付属のソフトウエアの三次元傾斜補正等を施し平面化処理を行う。繊維の曲率の存在により画像を平面化した時に生じる歪みを考慮するため、中心部の3μm四方の正方形領域のみの平均自乗粗さRmsを付属のソフトウエアを用いて補正の後算出する。測定例を図1に示す。観察はランダムに10点以上の場所で行い、それぞれのRmsを求め、平均値を算出した。尚Rmsは式1を用いて表現することが出来る。
【0026】
Rms =[ (1/N) Σ(Z i − Z 0 ) 2 ] 0.5 式1
ここでZiは各測定点での高さ、Z0は測定個所全体にわたっての平均の高さ、Nは測定点数を表す。
【0027】
図1の(1)図は5μm2領域の測定例、(2)図は(1)図中に白線示した一次元領域(繊維軸に平行方向)の粗さ(高さ)を距離の関数として表現してある。
【0028】
繊維表面の結晶配向角は電子顕微鏡(例えばPhillipsTEM-430、JEOL JEM-2010)を用いて繊維表面から引き剥がした薄片を高分解能観察することにより解析評価する。まず、ガラスプレート上に酢酸イソアミルで稀釈したコロジオン溶液を薄くのばして広げた上に繊維単糸を数本並べる。コロジオンの溶媒が蒸発して固化するのを待って繊維をガラスプレート上から引き剥がす。この時引き剥がした跡(コロジオンの膜上)には繊維から引き剥がされた繊維表面の薄片が付着している様子が実体顕微鏡によって確認することが出来る。この部分を3mm角程度剃刀などを用いてコロジオンの膜ごと切り出し、電子顕微鏡観察用の日新EM社製マイクログリッド又はAgar Scientific 社製 holey carbon film上にポリベンザゾール繊維表面薄片のついている面をうつぶせにして並べる。ふた付のペトリ皿に移し酢酸イソアミル蒸気との共存下に数時間放置し、繊維薄片をマイクログリッドに十分固着させる。その後マイクログリッドが浸るくらいまで酢酸イソアミルを追加し、一昼夜放置しコロジオン膜を流しさった後乾燥させる。高分解能観察のため電子顕微鏡は200,000倍以上で非点収差の補正を行った後用いた。試料繊維薄片の受ける電子線からのダメージを最小限に抑えるため、一視野撮影に要する露光時間は5秒以内、非点収差の補正も含めた合計の照射時間は電子線を受けたときの繊維の寿命(十分な解像度を有する電子線回折パターンが観測できる持続時間)の35%以内になるよう抑えた。高分解能電子顕微鏡(格子)像の記録はコダックSO−163ネガフィルムをコダックD−19現像液を稀釈ぜずに用いて現像するか若しくはイメージングプレートシステム(例えば、JEOL PixsysTEM)を用いて行う。撮影した格子像は印画紙に焼き付ける。(200)格子がほぼ繊維軸と平衡方向に走っている様子が観察される。隣同士の2個の結晶がもつ(200)格子軸がなす角φを結晶配向角と定義する。図2に観察した格子像と結晶配向角の評価例を示す。100個以上の結晶の組を観察、平均して該結晶配向角を評価する。
【0029】
繊維中心と表面の結晶配向比は繊維を薄く切って作った超薄切片の制限視野電子線回折像を測定することで求める。単繊維を硬化剤を混合したSpurrエポキシレジンで包埋した物を摂氏70度のオーブン中で一夜放置し固化固定する。次にこのレジンブロックをライヘルト社製のウルトラマイクロトームに取り付け、ガラスナイフを用いて包埋した繊維がブロック表面近傍に現れるまで研磨する。次にダイアトーム社製ダイアモンドナイフを用いて超薄切片を作成した後、300メッシュの銅グリッド上に回収し薄くカーボン蒸着を施す。電子顕微鏡内に超薄切片を入れ、繊維の中心と表面の両方を併せ持つ切片を探しだし、表面と中心の両方について制限視野電子線回折像を撮影する。図3に超薄切片の明視野像と電子線回折を測定した部分(直径0.3μm)および測定した電子線回折図形の測定例を示す。像の記録は電顕フィルム(例えばAgfa Scientia EM 23D56、又はコダックSO-163ネガフィルム)かイメージングプレートシステムを用いて記録する。R. J. Youngらの方法(J. Mat. Sci., 24, p5431 (1990))に準拠し、(010)と(‐210)回折点の子午線方向の回折強度プロファイルの拡がりからピークプロファイルの半値幅2θを算出した後、式2を用いて繊維中心の半値幅2θを繊維表面の半値幅2θで除し、繊維表面と中心の結晶配向比を求める。尚、電顕フィルムから回折強度プロファイルを数値化するときは光学的なネガフィルム黒化度読みとり装置(例えば、Joyce-Loebl Chromoscan 3)を用いる。
【0030】
図3の左図は超薄切片の明視野像で、図中の白丸は制限視野電子線回折を測定した領域(直径0.3μm)を、右図は制限視野電子線回折図形を表わす。
【0031】
結晶配向比 = 2θ(繊維中心)/2θ(繊維表面) 式2
【0032】
繊維に含まれる水分率の測定は、繊維を摂氏20度、相対湿度65%の環境下に重量変化が観測されなくなるまで放置した後秤量によって決定する。即ち、繊維の重量を化学天秤を用いて秤量した後該繊維を230℃に調節した電気オーブン中で30分間放置し繊維中の水分をとばした後再度秤量する。平衡水分率は式3に示す式を用いて評価する。
【0033】
平衡水分率=
100 x(平衡に達したときの繊維重量−乾燥後の繊維重量)/乾燥後の繊維重量[%]
【0034】
耐摩耗性の評価はJIS L1095 ‐ 7.10.2に準拠し、破断までのサイクルを数えることで評価した。この時繊維には1.0g/dの張力をかけた。
【0035】
<小角X線散乱の測定方法>ボイド径の評価は小角X線散乱法を用い、下記の方法で行った。測定に供するX線は、(株)リガク製ローターフレックスRU-300を用いて発生させた。ターゲットとして銅対陰極を用い、出力30kV x 30mA のファインフォーカスで運転した。光学系は(株)リガク製点収束カメラを用い、X線はニッケルフィルターを用いて単色化した。検出器は、フジ写真フィルム(株)製イメージングプレート(FDL UR-V)を用いた。試料と検出器間の距離は200mm 乃至350mm の間の適当な距離でよい。空気などからの妨害バックグラウンド散乱を抑えるため、試料と検出器の間は、ヘリウムガスを充填した。露光時間は2時間乃至24時間であった。イメージングプレート上に記録された散乱強度信号の読みとりは、富士写真フィルム(株)製デジタルミクログラフィー(FDL5000) を用いた。得られたデータには、バックグラウンド補正を施した後赤道方向の散乱強度I に対してギニエプロット(バックグラウンド補正後の散乱強度の自然対数ln(I) を散乱ベクトルの2乗k2に対してプロットする)を作成した。ここで散乱ベクトルkはk=(4π/ λ)sinθ、λはX線の波長1.5418Å、θは散乱角2θの半分である。
【0036】
次の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
【実施例】
<実施例1〜11、比較例1〜6>
米国特許第4533693号に示される方法によって得られた、30℃のメタンスルホン酸溶液で測定した固有粘度が24.4dL/gのポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール14.0(重量)%と五酸化リン含有率83.17%のポリ燐酸から成る紡糸ドープを紡糸に用いた。ドープは金属網状の濾材を通過させ、次いで2軸から成る混練り装置で混練りと脱泡を行った後、昇圧させ、重合体溶液温度を170℃に保ち、孔数166を有する紡糸口金から170℃で紡出し、温度60℃の冷却風を用いて吐出糸条を冷却した後、さらに自然冷却で40℃まで吐出糸条を冷却した後、凝固浴中に導入した。凝固液及びその温度を変えて繊維を作成した。次に繊維をゴゼットロールに巻き付け一定速度を与えて第2の抽出浴中でイオン交換水で糸条を洗浄した後、0.1規定の水酸化ナトリウム溶液中に浸漬し中和処理を施した。更に水洗浴で水洗した後、巻き取り、80℃の乾燥オーブン中で乾燥し繊維中に含まれる水分率が2.5%になるまで放置した。更に張力5.0g/d、温度600℃の状態で2.4秒間熱処理を行った。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
Figure 0003770375
【0039】
上記表1及び図4より本発明の繊維は従来の繊維に比べて平衡水分率の著しい低下が認められ、物性上、極めて優れていることが理解される。同時に、特異な表面微細構造を有することも認められる。
【0040】
本発明は、以上述べたようにこれまで得られなかった繊維表面が緻密であるという特異な繊維微細構造をもつポリベンザゾール繊維を工業的に容易に製造することができるため、産業用資材として実用性を高め利用分野を拡大する効果が絶大である。即ち、シリコンチップを実装するための高密度高性能回路基板用途はもとより、ケーブル、電線や光ファイバー等のテンションメンバー、ロープ、等の緊張材、ロケットインシュレーション、ロケットケイシング、圧力容器、宇宙服の紐、惑星探査気球、等の航空、宇宙資材、耐弾材等の耐衝撃用部材、手袋等の耐切創用部材、消防服、耐熱フェルト、プラント用ガスケット、耐熱織物、各種シーリング、耐熱クッション、フィルター、等の耐熱耐炎部材、ベルト、タイヤ、靴底、ロープ、ホース、等のゴム補強剤、釣り糸、釣竿、テニスラケット、卓球ラケット、バトミントンラケット、ゴルフシャフト、クラブヘッド、ガット、弦、セイルクロス、ランニングシューズ、マラソンシューズ、スパイクシューズ、スケートシューズ、バスケットボールシューズ、バレーボールシューズ、等の運動靴、競技(走)用自転車及びその車輪、ロードレーサー、ピストレーサー、マウンテンバイク、コンポジットホイール、ディスクホイール、テンションディスク、スポーク、ブレーキワイヤー、変速機ワイヤー、競技(走)用車椅子及びその車輪、プロテクター、レーシングスーツ、スキー、ストック、ヘルメット、落下傘等のスポーツ関係資材、アバンスベルト、クラッチファーシング等の耐摩擦材、各種建築材料用補強剤及びその他ライダースーツ、スピーカーコーン、軽量乳母車、軽量車椅子、軽量介護用ベッド、救命ボート、ライフジャケット、等広範にわたる用途に使用出来る。
【0041】
【発明の効果】
本発明によると、これまで得られなかった繊維表面が緻密であるという特異な繊維微細構造を有するポリベンザゾール繊維を得ることが可能となり、広く産業用資材として有用な材料を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(1)は本発明の繊維を原子間力顕微鏡(AFM)により観察した5μm2領域の写真、(2)は(1)図中に白線示した一次元領域(繊維軸に平行方向)の粗さ(高さ)を距離の関数として表現したもの。
【図2】本発明の繊維表面を電子顕微鏡(例えばPhillipsTEM-430)を用いて観察した格子像と結晶配向角の評価例を示す図。
【図3】左図:本発明の繊維の超薄切片の明視野像で、図中の白丸は制限視野電子線回折を測定した領域(直径0.3μm)を、右図:制限視野電子線回折図形を表わす。

Claims (5)

  1. 繊維表面の平均自乗粗さが20nm以下であることを特徴とするポリベンザゾール繊維。
  2. 繊維表面の結晶配向角が1.3度以下であることを特徴とする請求項1記載のポリベンザゾール繊維。
  3. 平衡水分率が0.6%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリベンザゾール繊維。
  4. 摩耗試験における破断までのサイクルが5200回以上であることを特徴とする請求項1記載のポリベンザゾール繊維。
  5. ボイド径が25.5Å以上のボイドを有することを特徴とする請求項1記載のポリベンザゾール繊維。
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