JP3770036B2 - 電子写真用トナー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真式複写機やプリンター等の画像形成装置においてトナー像を記録紙上に定着する方法としては一般に、ヒートローラやベルト部材による加熱圧着方式が多く採用されている。この方式は比較的コンパクトなシステムでありながら、熱効率がよく、高速定着が可能であるという利点がある。しかし、この方式では、加熱溶融されたトナーは高い圧力でヒートローラに接触するため、記録紙上のトナー像の一部が定着部材に付着してトナー像に欠損が生じ、その定着部材に付着したトナーが次の定着の際、記録紙上に転写されるといういわゆるオフセット現象が問題となっていた。このため、定着部材の表面材料として表面剥離性の優れたフッ素材料やシリコーン材料を用い、更には表面に離型性の良いシリコーンオイルを塗布してオフセットを防止していた。しかし、表面材料の選択だけではオフセットの防止は不十分であり、オイル塗布方式では過剰なオイルが記録紙を汚したり、記録部材に浸透し耐久寿命を低下させる等の問題があった。また、オイル供給・塗布装置を設置するためコストアップになっていた。さらには、オフセットを防止できたとしてもその温度幅(非オフセット温度域)が狭いため、定着温度の変化により再びオフセットが発生するという問題が生じていた。近年複写機やプリンターの高速化、省エネルギー化のため、低温定着化が望まれているが、このオフセットのため十分に成果を上げていないのが実状である。
【0003】
そこで、特開平10-207116号公報では表面に露出するワックスの量とワックスの平均分散粒径を規定したトナーを用い、トナーとしての粉体特性を維持しながらオイルレス定着性能を達成する試みがなされている。特に、ワックスの平均分散粒径は0.1〜2μmである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のトナーはワックスの平均分散粒径が大きく、特に最大粒径はさらに大きいため、得られた画像をオーバーヘッドプロジェクタ(OHP)に適用すると、画像を光がほとんど透過せず、そのOHP透光性に問題が生じていた。特に、オイルレス定着を達成できる多量のワックスを添加したトナーを用いると、OHP透光性の悪化は顕著であった。また、上記トナーではワックスを積極的に表面に露出させるため、ワックス粒子がトナーから脱落しやすく、連続複写したときの耐久性の低下が顕著であった。すなわち、上記トナーを用いて連続複写すると、トナー流動性が悪化して帯電性が低下したり、画像濃度、粒状性およびカブリ等の画質性能の低下が顕著であった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、オフセットが発生しない定着温度幅が比較的広く、OHP透光性に優れ、長期にわたって帯電性および画質に優れたトナーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は少なくとも結着樹脂、着色剤および離型剤を含み、離型剤が粒子中、平均粒径0.1μm以下かつ最大粒径0.4μm以下で分散していることを特徴とする電子写真用トナーに関する。
【0007】
本発明はまた、少なくとも結着樹脂または重合性モノマー、着色剤および離型剤を有機溶剤に溶解・分散してなる油性相を調製する調液工程、
油性相を水性相中に分散して油性相からなる液滴粒子の造粒を行う造粒工程、および
液滴粒子から有機溶剤を除去する脱溶工程または液滴粒子中の重合性モノマーを重合しながら液滴粒子から有機溶剤を除去する重合−脱溶工程を含み、
調液工程、造粒工程、および脱溶工程または重合−脱溶工程を離型剤が溶媒に溶解する温度以上で行うことを特徴とする電子写真用トナーの製造方法に関する。
【0008】
【発明の実施の態様】
本発明のトナーは少なくとも結着樹脂、着色剤および離型剤を含有し、かつ離型剤が粒子中において平均粒径0.1μm以下、好ましくは0.01〜0.085μm、最大粒径0.4μm以下、好ましくは0.05〜0.4μmで分散している。本発明のトナーにおいてはこのように離型剤が微分散しているため、オイルレス定着方式を採用した場合であっても、低温オフセットが改善し、低温定着性が向上するだけでなく、オフセットが発生しない定着温度幅が比較的広くなる。また、一般に不透明な離型剤を用いた場合であっても可視光(波長約0.4μm以上)が透過する割合が増加するため、OHP透光性が向上し、カラー複写機、カラープリンター用トナーとしての使用に適している。さらに離型剤はトナー粒子中に微分散され、離型剤のトナーからの脱落が回避されるため、長期にわたって良好な帯電性および画質性を維持できる。
【0009】
離型剤の平均分散粒径が0.1μmを越えたり、最大粒径が0.4μmを越えると、オフセットが発生し易くなり、非オフセット温度域が狭まる。また、当該トナーを用いて得られた画像をオーバーヘッドプロジェクタ(OHP)に適用すると、画像を可視光がほとんど透過せず、そのOHP透光性が問題となる。さらには、離型剤のトナーからの脱離が顕著になるため、耐久性に問題が生じ、すなわち長期の使用によって帯電性が低下したり、画像濃度、粒状性およびカブリ等の画質性能が低下する。
【0010】
トナー中における離型剤の平均分散粒径および最大粒径は以下のようにして測定することができる。トナーをエポキシ等の樹脂で固化し、ミクロトームにて1000オングストローム程度の厚さにスライスし、透過型電子顕微鏡で観察することにより相分離した離型剤の粒の分散粒径を測定することができる。本発明において平均分散粒径は任意の50個の離型剤粒子の分散粒径から求め、最大粒径は任意の100個の離型剤粒子から求める。
【0011】
本発明のトナーは上記のようなトナーが得られれば、いかなる方法によって製造されてよいが、公知の湿式法において一連の工程を離型剤が溶媒に溶解する温度以上で行うことによって本発明のトナーを有効に得ることができる。すなわち、本発明のトナーは、
(I)少なくとも結着樹脂または重合性モノマー、着色剤および離型剤を有機溶剤に溶解・分散してなる油性相を調製する調液工程、
(II)油性相を水性相中に分散して油性相からなる液滴粒子の造粒を行う造粒工程、および
(III)液滴粒子から有機溶剤を除去する脱溶工程または(IV)液滴粒子中の重合性モノマーを重合しながら液滴粒子から有機溶剤を除去する重合−脱溶工程を含み、
調液工程(I)、造粒工程(II)、および脱溶工程(III)または重合−脱溶工程(IV)を離型剤が溶媒に溶解する温度以上で行うことを特徴とする電子写真用トナーの製造方法によって有効に得ることができる。このように、湿式法において上記工程を離型剤が溶媒に溶解する温度以上で行うことにより、すなわち上記工程を離型剤が溶解された状態で行うことにより、最終の脱溶工程または重合−脱溶工程において離型剤が析出し、このとき同時に、溶解している結着樹脂または生成した結着樹脂の存在により液滴中の粘度が上がるため、離型剤は粗大粒子まで成長したり、凝集することなく、微分散したトナーを得ることができると考えられる。調液工程(I)のみで溶媒中、離型剤が溶解あるいは微分散されていても、造粒工程(II)ならびに脱溶工程(III)または重合−脱溶工程(IV)で、系中の温度が、離型剤が溶媒に溶解する温度より低いと、溶媒に対する離型剤溶解度が低下するため、微分散されていた離型剤は成長して凝集し、また溶解されていた離型剤は析出、成長して凝集し、本発明のトナーを得ることができない。特に、脱溶工程の温度が低いと、溶媒の蒸発に伴い、樹脂はまだ溶解し粘度が低い状態で離型剤は急激に再結晶するため凝集する。
以下、湿式法を採用して本発明のトナーを得る場合について詳しく説明する。
【0012】
本発明のトナーは重合過程を含まない湿式法、または重合過程を含む湿式法、いずれの湿式法においても得ることができる。
【0013】
重合過程を含まない湿式法、例えば、乳化分散造粒法を用いて本発明のトナーを製造する場合、本発明のトナーは、
(I)少なくとも結着樹脂、着色剤および離型剤を有機溶剤に溶解・分散してなる油性相を調製する調液工程、
(II)油性相を水性相中に分散して油性相からなる液滴粒子の造粒を行う造粒工程、および
(III)液滴粒子から有機溶剤を除去する脱溶工程を行うに際して、
調液工程(I)、造粒工程(II)、および脱溶工程(III)を、離型剤が溶媒に溶解する温度以上で行うことにより得ることができる。
【0014】
具体的にはまず、少なくとも結着樹脂、着色剤および離型剤を有機溶剤に溶解・分散してなる油性相を調製する(調液工程(I))。本発明において油性相は離型剤が溶媒(有機溶剤)に溶解する温度以上で調製され、当該油性相中、離型剤は溶解されている。油性相の調製に際しては、結果的に離型剤が溶解された油性相が調製されればよく、例えば、所定の温度を有する有機溶剤に上記トナー成分を添加し、混合・撹拌してもよいし、または常温の有機溶剤に上記トナー成分を添加し、所定温度に加熱しながら混合・撹拌してもよい。
【0015】
本発明において使用可能な離型剤としては、加温によって有機溶剤に溶解できるものであれば特に制限されず、トナーの分野で公知の離型剤、例えば、合成ワックス、天然ワックスおよびロウ類等が使用可能である。これらの離型剤の中でも、耐オフセット性改良の観点から、有機溶剤に常温以上90℃以下の温度で溶解する離型剤を使用することが好ましい。具体的には使用される溶媒に対して常温以上90℃以下、好ましくは25〜60℃のいずれかの温度で3.5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上の濃度(離型剤/(離型剤+溶媒))で溶解するような離型剤を用いることが好ましい。また、トナー耐熱性および低温定着性の観点からは、融点が60〜120℃であることが好ましい。
【0016】
具体的には合成ワックスとして、例えば、合成炭化水素のフィッシャートロプシュ、ポリエチレン、ポリプロピレン等のワックス、その変性ワックスとしてモンタン、パラフィン、マイクロクリスタリン等のワックス、エステル、脂肪酸、酸アミド、ケトン等のワックス等が挙げられる。また、天然ワックスとして、例えば、植物系のカルナウバ、キャンデリラ、ライス等のワックス、ホホバ油等が挙げられる。その他動物系および鉱物系のワックスも使用可能である。特に融点および有機溶剤に対する溶解度の点でエステル、モンタン、ケトン等の合成ワックス、カルナウバ等の天然ワックスが本発明に適している。
【0017】
離型剤の添加量は、トナーの耐熱性および耐ストレス性ならびに帯電性能の観点から、結着樹脂100重量部に対し3〜30重量部、好ましくは10〜25重量部が好適である。従来ではオイルレス定着を達成できる程度の量のワックスを添加すると、OHP透光性が悪化していたが、本発明においては上記のようにワックスを比較的多く添加してもそのような問題は生じない。
【0018】
本発明において使用可能な有機溶剤としては、離型剤を溶解できる公知の有機溶剤であれば特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒が挙げられる。これらの有機溶剤は単独でまたは2種以上混合して用いてよい。これらの溶剤は後述の造粒工程での造粒に悪影響を及ぼさない範囲で油性相中50〜95重量%の割合で使用される。
【0019】
離型剤としてエステルワックスまたはカルナバワックスを用いる場合、有機溶剤としてトルエンを用いることが好ましい。
【0020】
油性相が調製される温度は離型剤が有機溶剤に溶解できれば特に制限されず、使用される離型剤と有機溶剤の種類に依存して適宜選択される。当該温度をあまり高く設定しても製造効率の観点から好ましくないため、通常、常温以上90℃以下、好ましくは25〜80℃の範囲内で設定される。例えば、離型剤としてエステルワックスまたはカルナバワックスを用い、有機溶剤としてトルエンを用いる場合、35〜70℃、好ましくは40〜60℃が望ましい。
【0021】
結着樹脂としては、上記有機溶剤に溶解可能な樹脂が使用可能であり、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフォン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などの、公知の各種の樹脂を1種または2種以上使用することが可能である。本発明においては、離型剤のさらなる微分散、溶媒に対する溶解性、トナー定着性能、透光性、耐熱性の観点から、ポリエステル系樹脂を用いることが好ましく、ポリエステル系樹脂を用いる場合、数平均分子量(Mn)が2000〜8000、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が5〜20、およびガラス転移点が55〜70℃のポリエステル樹脂を用いることがより好ましい。このようなポリエステル樹脂は上記有機溶剤により溶解しやすく、また、離型剤を添加しても、OHP透光性がより有効に維持されながら、耐低・高温オフセット性および定着性能が有効に向上するためである。また、トナーとして必要な耐熱性および耐ストレス性も有効に維持される。
【0022】
本発明においては離型剤としてエステルワックスまたはカルナバワックスを用いる場合、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いることが好ましい。離型剤と結着樹脂との相溶性が良好なため、離型剤の微分散がより有効に達成され、また樹脂とワックスの屈折率が近いため透光性がより向上するからである。
【0023】
着色剤としては特に制限されず、従来からトナーの着色剤として使用されている公知の顔料・染料が使用可能である。
黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライト、マグネタイトなどがある。
黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ベンジジンイエローG、などがある。
橙色顔料としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、パラゾロンオレンジ、バルカンオレンジなどがある。
赤色顔料としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6Bなどがある。
【0024】
青色顔料としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアルブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーなどがある。
体質顔料としては、例えば、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどがある。
これらの着色剤は、単独あるいは複数組み合せて用いることができるが、通常、上記結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部使用することが望ましい。
【0025】
油性相には荷電制御剤が溶解または微分散されていてもよい。荷電制御剤(CCA)としては、上記の有機溶剤に溶解あるいは微分散できるものであれば全て適用できる。負荷電制御剤としては、例えば、含金属錯塩ボントロンE81、E84(オリエント化学社製)、LR147(日本カーリット社製)、チオインジゴ系顔料、カリックスアレーン系化合物ボントロンE89(オリエント化学社製)、含フッ素化合物コピーチャージNX VP434(ヘキスト社製)、FT-310(ネオス社製)等が挙げられる。正荷電制御剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩P-51(オリエント化学社製)、コピーチャージPX VP435(ヘキスト社製)などが挙げられる。カラートナー用としては色調を損なうことのない透明色から白色の摩擦帯電により正または負の荷電を与え得る物質がよい。これらを1種あるいは2種以上用いてもよい。荷電制御剤の添加量は特に制限されないが、結着樹脂100重量部に対して0.1〜4重量部、好ましくは0.5〜2重量部が好適である。
【0026】
次いで、得られた油性相を水性相中に分散して油性相からなる液滴粒子の造粒を行う(造粒工程(II))。すなわち、水性相中に油性相からなる液状粒子が分散された分散系(O/Wエマルジョン)を調製する。本発明において造粒は、液滴中に溶解されている離型剤が析出しない程度の温度で行われ、すなわち離型剤が溶媒(有機溶剤)に溶解する温度以上で行われる。通常、造粒は調液工程の温度を維持しながら行われる。そのため、分散時においては油性相および水性相をそれぞれ所定温度に制御した後で、これらを混合し、分散・造粒することが好ましい。
【0027】
造粒に際しては、油性相を水性相に添加し、乳化させ、油性相を水性相中に分散してもよいし、または水性相を油性相に添加し、転相乳化させ、油性相を水性相中に分散してもよい。
【0028】
水性相は水に、所望により分散剤および/または分散助剤等の添加剤を添加してなる。分散剤としては水性相中で親水性コロイドとなるものが好ましく、特にゼラチン、アラビアゴム、寒天、セルローズ誘導体、合成高分子(例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩等)、難溶性無機塩(例えばリン酸カルシウム)、親水性シリカ等が挙げられる。分散助剤として通常界面活性剤が用いられ、アポニン等の天然界面活性剤、アルキレンオキサイド系、グリセリン系あるいはグリシドール系等のノニオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、硫酸エステル基、リン酸エステル基等の酸性基含有のアニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0029】
水性相中における分散剤および分散助剤の濃度は特に制限されず、一般に、それぞれ1〜10重量%、0.001〜1重量%が好適である。
【0030】
油性相の水性相への分散に際しては、得られるトナー粒子が所望粒径になるよう、油性相の液状粒子の径を撹拌によって制御することが好ましい。油性相と水性相との混合体積比(油性相/水性相)は、乳化安定性を考慮して1/1〜1/4の間で選択できる。
【0031】
油性相からなる液滴粒子を造粒した後は、当該液滴粒子から有機溶剤を除去する(脱溶工程(III))。脱溶は、系中温度の低下に伴う有機溶剤の離型剤溶解度の低下によって離型剤が析出することがない程度の温度で行われればよく、通常、離型剤が溶媒(有機溶剤)に溶解する温度以上で行われ、好ましくは調液工程の温度を維持しながら長時間かけて行われる。このように系中温度の低下(溶解度の低下)による離型剤の析出を回避しながら脱溶を行うことにより、溶剤除去による離型剤の析出のみが起こり、同時に液滴粒子中において脱溶による粘度上昇が起こるため、トナー中において析出された離型剤微粒子は成長または凝集することなく微分散できると考えられる。
【0032】
本発明においては脱溶工程を長時間かけて行うことが好ましい。離型剤がより有効に微分散できるためである。有機溶剤、離型剤、樹脂の各種類で異なるため限定できない。
【0033】
有機溶剤の除去が完了した後は、冷却後、ろ過/水洗を数回繰り返し行い、乾燥・解砕を行い、本発明のトナーを得ることができる。
【0034】
また、本発明のトナーは、重合過程を含む湿式法、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、シード重合法、界面重合法等を採用して得ることもできる。以下、重合過程を含む湿式法を採用して本発明のトナーを得る場合について説明するが、特記しない限り、上記の重合過程を含まない湿式法を採用する場合と同様とする。なお、重合過程を含む湿式法においては重合性モノマーも「溶媒」として作用するため、「溶媒」は「有機溶剤と重合性モノマーとの混合溶媒」を意味するものとする。また、添加量については「結着樹脂100重量部」を「重合性モノマー100重量部」に読み替えて適用するものとする。
【0035】
重合過程を含む湿式法、特に懸濁重合法を用いて本発明のトナーを製造する場合、本発明のトナーは、
(I)少なくとも重合性モノマー、着色剤および離型剤を有機溶剤に溶解・分散してなる油性相を調製する調液工程、
(II)油性相を水性相中に分散して油性相からなる液滴粒子の造粒を行う造粒工程、および
(IV)液滴粒子中の重合性モノマーを重合しながら液滴粒子から有機溶剤を除去する重合−脱溶工程を行うに際して、
調液工程(I)、造粒工程(II)、および重合−脱溶工程(IV)を、離型剤が溶媒に溶解する温度以上で行うことにより得ることができる。
【0036】
具体的にはまず、少なくとも重合性モノマー、着色剤および離型剤を有機溶剤に溶解・分散してなる油性相を調製する(調液工程(I))。重合過程を含む湿式法においては、油性相は離型剤が溶媒、すなわち有機溶剤と重合性モノマーとの混合溶媒に溶解する温度以上で調製され、当該油性相中、離型剤は溶解されている。
【0037】
有機溶剤は、通常、油性相中5重量%以上の割合で使用されるが、使用されなくてもよい。有機溶剤が使用されない場合において、油性相は離型剤が重合性モノマーに溶解する温度以上で調製される。
【0038】
重合性モノマーとしては、前記の結着樹脂を構成でき、かつ疎水性を有すれば特に制限されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂等の原料となるビニル系モノマー等が挙げられる。
【0039】
油性相には重合開始剤が添加されていることが好ましい。重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物系、ハイドロパーオキサイド系、レドックス系等のラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0040】
次いで、得られた油性相を水性相中に分散して油性相からなる液滴粒子の造粒を行う(造粒工程(II))。本発明において造粒は、液滴中に溶解されている離型剤が析出しない程度の温度で行われ、すなわち離型剤が溶媒(有機溶剤と重合性モノマーとの混合溶媒)に溶解する温度以上で行われる。通常、造粒は調液工程の温度を維持しながら行われる。有機溶剤が使用されない場合において、造粒は離型剤が重合性モノマーに溶解する温度以上で行われる。
【0041】
次いで、液滴粒子中の重合性モノマーを重合しながら液滴粒子から有機溶剤を除去する(重合−脱溶工程(IV))。すなわち、当該工程においては、重合を行いながら脱溶を行い、結果として重合終了時において脱溶が完了している。
【0042】
重合−脱溶は、系中温度の低下に伴う離型剤溶解度の低下によって離型剤が析出することがない程度の温度で行われ、すなわち離型剤が溶媒(有機溶剤と重合性モノマーとの混合溶媒)に溶解する温度以上で行われる。有機溶剤が使用されない場合において、重合−脱溶は離型剤が重合性モノマーに溶解する温度以上で行われる。このように系中温度の低下(溶解度の低下)による離型剤の析出を回避しながら重合−脱溶を行うことにより、溶剤の除去と樹脂の生成による離型剤の析出のみが起こり、同時に液滴粒子中において溶剤の除去と樹脂の生成による粘度上昇が起こるため、トナー中において析出された離型剤微粒子は成長または凝集することなく微分散できると考えられる。
【0043】
詳しくは、重合−脱溶工程の温度および時間等の条件は、温度について上記要件を満たす限り、特に制限されないが、前記結着樹脂の説明で記載したMn、Mw/Mnおよびガラス転移点を有する樹脂が得られるような条件とすることが好ましい。
【0044】
本発明においては重合−脱溶工程を長時間かけて行うことが好ましい。離型剤がより有効に微分散できるためである。
【0045】
有機溶剤の除去が完了した後は、冷却後、ろ過/水洗を数回繰り返し行い、乾燥・解砕を行い、本発明のトナーを得ることができる。
【0046】
以上のような製造方法によって製造され得る本発明のトナーは体積平均粒径3〜10μm、好ましくは4〜8μmに制御されていることが望ましい。
【0047】
本発明のトナーは、流動性、帯電性、耐熱性等の向上の観点から、微粒子によって表面処理されることが好ましい。微粒子の材料としては、従来から電子写真の分野でトナーに外添される公知の微粒子材料が使用可能であり、例えば、金属酸化物、金属間化合物、樹脂等が挙げられる。具体例として、金属酸化物としては、例えば、シリカ、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。金属間化合物としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。樹脂としては、例えば、高分子フッ化物、シリコーン化合物、アクリル系樹脂等が挙げられる。上記微粒子の添加量はトナー100重量部に対して0.2〜3重量部が適当である。
【0048】
本発明のトナーは比較的多量の離型剤を微分散状態で含有できるため、オイルレス定着方式を採用した複写機において使用しても、本発明の目的を有効に達成できる。
【0049】
また、本発明のトナーは、キャリアと共に使用する二成分現像用トナーとしても、キャリアを使用しない一成分現像用トナーとしても使用することができる。
【0050】
本発明のトナーとともに使用するキャリアとしては、公知のキャリアを使用することができ、例えば、鉄粉、フェライト等の磁性粒子よりなるキャリア、磁性粒子表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコート型キャリア、あるいは結着樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリア等いずれも使用可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
【0051】
【実施例】
(実施例1)
数平均分子量Mnが2800、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が7、Tgが68℃のポリエステル樹脂100gをトルエン360gに溶解後、フタロシアニン顔料5g、荷電制御剤LR147(日本カーリット社製)0.5gとともに2リットルのポリビンにいれ、ウルトラターラックス(IKA社製)で30分混合、分散させた後、融点80℃のエステルワックスHOE-WAX F(クラリアント社製)20gを入れ、50℃に加温・攪拌し、熱によりワックスがトルエン中に溶解された油性相を調製した。次に、ポリアクリル酸ナトリウム3.5重量%水溶液1100g中にアルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム11gを添加して50℃の水性相を調製し、これを50℃に保った油性相中に混合し、混合液を50℃に保持しながらT.Kオートホモミクサー(特殊機化工業社製)で3500rpm、10分攪拌を行い乳化させた。直ちに、50〜55℃の恒温槽中スリーワンモーターで20時間攪拌しトルエンを除去し、冷却後、ろ過/水洗を数回繰り返し行った。洗浄後のトナーケーキをステンレスバットに移し替え、恒温乾燥機にて35℃、48時間、乾燥を行い、ボールミルを用い解砕し、90μmのメッシュでフルイにかけ、平均粒径6.2μmのトナーを得た。透過型電子顕微鏡観察(5万倍)の結果(以下、同様とする)、トナーの粒子内部に平均粒径0.05μm、最大粒径0.23μmのワックス粒子が分散していた。
【0052】
(実施例2)
ワックスとして融点93℃のカルナバ45T-1(日本セイロウ社製)10gを用いたこと以外、実施例1と同様にして、平均粒径が7.5μmのトナーを得た。トナーの粒子内部には平均粒径0.08μm、最大粒径0.37μmのワックス粒子が分散していた。
【0053】
(実施例3)
結着樹脂としてMnが3000、Mw/Mnが9でガラス転移点が60℃のポリエステルを用いたこと以外、実施例1と同様にして平均粒径5.4μmのトナーを得た。トナーの粒子内部には平均粒径0.04μm、最大粒径0.18μmのワックス粒子が分散していた。
【0054】
(比較例1)
ワックスとして融点55℃のn−ヘキサデシルエーテル20gを用いたこと以外、実施例1と同様にして平均粒径が7.0μmのトナーを得た。トナーの粒子内部には平均粒径1.5μm、最大粒径4.8μmのワックス粒子が分散していた。
【0055】
(比較例2)
ワックスとして融点126℃のポリエチレンワックス400P(三井化学社製)2gを用いたこと以外、実施例1と同様にして平均粒径8.6μmのトナーを得た。トナーの粒子内部には平均粒径3.5μm、最大粒径6.2μmのワックス粒子が分散していた。
【0056】
各実施例および比較例で使用したワックスの種類、融点、添加量および濃度と、各温度での各ワックスのトルエンに対する飽和濃度をまとめて表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
上記の実施例および比較例で得られたトナー100重量部にシリカ微粒子R972(日本アエロジル社製)1.2重量部をヘンシェルミキサ(三井金属鉱山社製)で30m/sの速度で3分間表面処理を行った。後述のキャリアとトナー混合比6重量%で混合して2成分非磁性現像剤を得、各現像剤を以下の評価項目について評価した。
【0059】
(非オフセット温度域)
フルカラー複写機CF900(ミノルタ社製)の定着器を改造し、単独で定着温度を可変制御し通紙、定着できるようにした定着テスターを用いた。定着テスターにより複写した後、様々な定着温度で定着させ、ローラ1周後、オフセットしたトナー像がコピー用紙を汚しているかどうかを目視で評価し、汚染のない上限温度と下限温度を測定した。これらの温度幅が広いほど良好である。
【0060】
(透光性)
上記定着テスターを用いて、非オフセット温度域の中心温度で定着させたOHP用紙上のコピー画像をオーバーヘッドプロジェクターEZ-2(富士写真フィルム社製)で目視評価した。
○:透明で色濁りなく良好であった;
×:不透明で実用上使用不可能であった。
【0061】
結果を以下の表に示す。
【表2】
【0062】
各現像剤を用いてCF900(ミノルタ社製)により1万枚複写し、初期と1万枚複写後の現像剤および複写画像について評価した。
(帯電量)
図1の電界分離方式の帯電量測定装置で、現像剤2gをスリーブ2上にまぶし、-2kvをバイアス電源4でスリーブ2に印加し、スリーブ2を1000rpm、1分間回転し、円筒電極1にトナー7を分離した。分離されたトナー重量(g)、トナー分離時に測定用コンデンサ5に流れ込んだ電荷量(μc)より、帯電量(μc/g)を計算した。
【0063】
(画像濃度)
CF900(ミノルタ社製)による最大濃度のベタ複写画像における任意の10点の濃度をマクベス濃度計(マクベス社製)により測定し、これらの平均値xを求めて以下に従って評価した。
○:1.0<x<1.3
△:0.8<x≦1.0または1.3≦x<1.5
×:x≦0.8または1.5≦x
【0064】
(粒状性)
CF900(ミノルタ社製)による複写画像を目視により観察し、粒状性を以下のランク付けに従って評価した。なお、粒状性とは特に低濃度のベタ画像均一性(キメの良悪)をいう。
○:原稿と遜色なく良好であった;
△:原稿に比べ若干劣るが実用上問題なかった;
×:原稿に比べかなり劣り、実用上使用不可であった。
【0065】
(地肌カブリ)
CF900(ミノルタ社製)による複写画像を目視により観察し、地肌カブリを以下のランク付けに従って評価した。なお、地肌カブリとは複写用紙上、本来の画像部以外に、低帯電・逆帯電のトナーが現像、転写されて発生するトナーによる汚れをいう。
○:カブリが見られず良好;
△:カブリがあるものの実用上問題なかった;
×:実用上使用不可であった。
【0066】
結果を以下に示す。
【表3】
【0067】
キャリア
ポリエステル樹脂バイロン200(東洋紡社製)をトルエン、イソプロパノールの混合溶媒に溶解し、平均径40μmの焼成フェライト粉F300(パウダーテック社製)にスピラコータ(岡田精工社製)で塗布、乾燥した。オーブン中140℃、2時間焼成後、解砕、フルイを行い、平均径42μmのポリエステル樹脂コートのフェライトキャリアを調製した。
【図面の簡単な説明】
【図1】 帯電量の測定に用いた帯電量測定装置の概略構成図を示す。
【符号の説明】
1:円筒電極、2:導電性スリーブ、3:磁性ロール、4:バイアス電極、5:測定用コンデンサ、6:現像剤、7:分離トナー。
Claims (1)
- 少なくとも結着樹脂、着色剤および離型剤を有機溶剤に溶解・分散してなる油性相を調製する調液工程、油性相を水性相中に分散して油性相からなる液滴粒子の造粒を行う造粒工程、および液滴粒子から有機溶剤を除去する脱溶工程を含み、調液工程、造粒工程、および脱溶工程を離型剤が溶媒に溶解する温度以上で行うことを特徴とする、少なくとも結着樹脂、着色剤および離型剤を含み、離型剤が粒子中、平均粒径0.1μm以下かつ最大粒径0.4μm以下で分散している電子写真用トナーの製造方法。
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