JP3769194B2 - 複合材サンドイッチ構造体及びその補修方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空機に用いる複合材サンドイッチ構造体及びその補修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より航空機の機体構造材としては、一般的に図11に示すようにノーメックス、アルミ、GFRP等より成るハニカムコア20を、2枚の複合材面板21で挾み、フィルム接着材22を介在して接着結合したサンドイッチ構造体23が使用されている。一部には、ハニカムコア20の代りに、ポリメタクリルイミド発泡材をコアとするサンドイッチ構造体も使用されている。これらサンドイッチ構造体は、航空機の動翼類(補助翼、フラップ、昇降舵、方向舵、スポイラー等)やカバー類の二次構造材に主として使用されていて、機体構造重量に占める割合は多くはないが、機体表面積については広い範囲を占めている。それだけに、外部の異物や、雹、地上支援車両との衝突による損傷を受ける機会が多い。サンドイッチ構造体は、極めて軽く、弱い構造体であることから、前記の損傷によって大きな被害を受けることが多かった。
【0003】
損傷を受けたサンドイッチ構造体は、機体表面側の複合材面板の損傷部位を切り取り、内部のハニカムコアを除去した上で、新しいコアを挿入し、面板を貼り付ける。これらの作業は手間と時間がかかる上、完成検査も費用のかかる超音波探傷機による確認が必要であった。また、損傷を受けた面板の修理は、修理後の性能を保証するために、新規製造時と同じ素材及び、成形方法及び/又は接着方法を用いる必要がある。ところが、航空機に使用するサンドイッチ構造体の製造においては、ほぼ例外無く加圧硬化方法が用いられている為、機体から部品を完全に取り外し、ホットプレスやオートクレーブ装置等の加熱加圧装置で補修硬化及び接着を実施する必要があった。これらの作業は手間と時間がかかる上、補修用の治工具も多額の費用をかけて用意する必要があった。
【0004】
従来のサンドイッチ構造体は、上述した問題点の外、以下に述べるような数多くの問題点があった。
(1) サンドイッチ構造体は、オートクレーブ中での成形中にハニカムのセル以外の部分は加圧されないので、図11のA部拡大図である図12に示すように複合材面板21内に気泡24が残留して強度が低く、航空機の繰り返し使用中に樹脂層25に微小亀裂26が発生することが多い。
(2) 航空機が地上と成層圏を往復する間に、大きな気圧と気温の変動(1気圧、プラス40℃から1/10気圧、マイナス54℃への変化)を受け、複合材面板21に生じた亀裂26を経由して外気がハニカムコア20の内部に出入りする。
(3) 外部からハニカムコア20の内部に侵入した大気の中に含まれていた湿気が、航空機の上昇による気圧・気温の低下によりハニカムコア20の内部で凝結し、水滴27として残留する。この過程の繰り返しによりハニカムコア20の内部に次第に水分が蓄積され、機体構造重量が増大する。ボーイング747クラスの大型旅客機では数100Kgにも達することがあるといわれている。
(4) このハニカムコア20の内部の水分は高空で凍結し、ハニカムコア20と複合材面板21の接着結合を破壊して面板剥離を発生させる。その結果、構造強度が低下し、飛行安全性が損なわれるという大きな問題が発生する。
(5) これらの問題により、複合材サンドイッチ構造体は軽量で高剛性であるという理由で、従来の航空機では機体構造材として多用されていたものが、徐々に金属構造体に置換されつつあるのが現状である。
(6) 上記の不具合を修理しようとすると、ハニカムコア20を除去し、新しい複合材面板21をオートクレーブで接着する必要があったが、非常に難しかった。また、費用も高くつくものであった。
【0005】
このような問題を解決する為に、ハニカムコアを発泡プラスチックに置き換えたサンドイッチ構造体も提案された。この場合には発泡コアが独立気泡のものを選択すれば、コア内部に湿気が侵入しないという利点がある。これは、従来のハニカムコアサンドイッチ構造体の改良となる魅力的な提案であった。しかし、この場合、複合材面板の加工条件である高温(180℃)高圧(2気圧以上)に耐える耐熱耐圧性と、衝撃損傷に耐える高靱性を満足するものとして、ポリメタクリルイミド発泡材が使用された。しかし、このポリメタクリルイミド・コアにも以下のような問題点があった。
(1) 吸湿により、強度が大幅に低下する。
(2) 運用中の吸湿による変形、体積収縮が生じ、これらに基づく面板との剥離が発生した。
(3) 面板との接合強度が低く、工具や雹による損傷で容易に面板の剥離が発生した。
(4) 吸湿により成形温度が低下する為、脱湿処理が必要で、また乾燥状態で保管しなければならず、使用に際しては極めて短時間に成形完了する必要があった。
(5) このような乾燥・保管・成形時の処理は、費用と手間を必要とするものであった。
【0006】
さらに、上記のポリメタクリルイミド発泡材をコアとするサンドイッチ構造体の欠点を改良する為、ポリエーテルイミド発泡材が検討された。ポリエーテルイミド樹脂は、吸湿量自体が小さいばかりでなく、ポリメタクリルイミドのような吸湿による性能低下現象が無い為、脱湿処理等の作業も全く不要であった。一方、強度的にはほぼポリメタクリルイミド発泡材と同じなので、サンドイッチ構造体用のコアとして適している。しかしながら、このポリエーテルイミド発泡材には、以下に述べるような製造・成形における問題点があった。
(1) 複合材面板を成形する為の硬化温度・圧力条件(180℃、3気圧)に発泡コアが耐えられない。
(2) 発泡コアの成形時の強度を向上させるには、コア密度を上げなければならず、重量増加になった。(100Kg/m3〜200Kg/m3)
(3) 硬化温度を120℃まで低下させると、コア成形は容易になるが、一次構造用複合材面板の成形は不良になり、一次構造用として成立しなかった。せいぜいカバー程度の二次構造用として、及び軽飛行機・ヘリコプター・グライダーに適用される程度であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上述べた従来の複合材サンドイッチ構造体の問題点を解決すべくなされたもので、コア内に湿気の侵入が無くて耐久性が高く、強靱で傷が付きづらく、修理が容易であり、しかも軽量で安価な複合材サンドイッチ構造体及びその補修方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の複合材サンドイッチ構造体は、密度50Kg/m3〜80Kg/m3のポリエーテルイミド樹脂の発泡材のコアが、流動制御されたエポキシ樹脂を重量比で45%含有した炭素繊維強化複合材料の面板で狹まれた複合材サンドイッチ構造体であって、炭素繊維強化複合材料の面板の外表面とコアに接する内面の部分を炭素繊維布製の複合材シートとし、それら内外表面部分の複合材シートに狹まれた部分を一方向材又は織り布のシートとしたものであることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の複合材サンドイッチ構造体の補修方法は、密度50Kg/m3〜80Kg/m3のポリエーテルイミド樹脂の発泡材のコアが、流動制御されたエポキシ樹脂を重量比で45%含有した炭素繊維強化複合材料の面板で狹まれた複合材サンドイッチ構造体の損傷発生後の局所修理部における損傷部面板及び損傷部コアを切り取り、損傷部コアを切り取った部分にその形状に合わせて加工した新しいコアを接着し、損傷部面板を切り取った部分に前記面板と同じ樹脂を用いた補修追加積層用の未硬化炭素繊維強化エポキシプリプレグを当てた上可撓型の加熱ヒーターブランケットを載せ、さらにプラスチックバックを介して真空吸引することにより加圧及び加熱し、補修追加積層用の未硬化炭素繊維強化エポキシプリプレグを成形硬化することを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の複合材サンドイッチ構造体及びその補修方法の実施形態を説明する。先ず、複合材サンドイッチ構造体の概要を、図1によって説明すると、1はポリエーテルイミド樹脂の発泡材コアで、この発泡材コア1を、流動制御されたエポキシ樹脂を重量比で約45%程度含有した炭素繊維強化複合材料の面板2にて挟んで、複合材サンドイッチ構造体3を構成している。この複合材サンドイッチ構造体3は、成形時に板状の発泡材コア1が全面にわたって面板2を支持するので、面板2は均一且つ気泡無しに成形できる。このため面板2の内部に湿気の流入経路が生じ難い。また、発泡材コア1自体が微細な独立気泡セル1aでできている為、例え面板2を通じて湿気が侵入してきても、発泡材コア1の内部には殆んど侵透していかない。従って、図11によって説明した従来のハニカムサンドイッチ構造体の問題点を解決できる。
【0011】
図2に、本発明の複合材サンドイッチ構造体3におけるポリエーテルイミド発泡材コア1と、従来のポリメタクリルイミド発泡材コアの吸湿特性を示す。このグラフで判るように、従来のポリメタクリルイミド発泡材コアは、吸湿絶対値が大きく、時間を増やせばまだまだ吸湿する。ポリメタクリルイミド発泡材は吸湿に伴って機械的特性が低下したり、寸法変化したりするという弱点を持っている為、吸湿の絶対量が大きいことが大きな問題となっている。然るに、本発明におけるポリエーテルイミド発泡材コア1は、吸湿絶対値が小さく、且つ時間と共に頭打ちになっている。ポリエーテルイミド発泡材1は吸湿しても機械的特性はあまり低下しないと言われている上、吸湿の絶対量が小さい為、従来のポリメタクリルイミド発泡材における問題点を解決できる。
【0012】
ポリエーテルイミド発泡材は、前述のような優れた特性を有するが、エポキシ樹脂を35%から40%程度含有する通常の複合材面板を成形するための硬化温度・圧力条件(180度、3気圧)に対しては耐えられず、図3の写真の成形結果に示すようにポリエーテルイミド発泡材コアのサンドイッチ構造体は潰れてしまう。また、ポリエーテルイミド発泡材コアを圧壊させないよう、コアの重量を増すことによってコア自体の強度を増すと、成形時には有効であるが、その完成品の使用時には必要以上の強度であって結果的に無駄な重量増加を招く。したがって、このようなサンドイッチ構造体の製造において、使用時に最適な強度を有するコア密度50Kg/m3〜80Kg/m3のポリエーテルイミド発泡材コアを使用するには、成形時の圧力を低下せしめるしか手段がない。ところが圧力を3気圧から1気圧に小さくしてオートクレーブ成形すると、図4の断面組織写真の成形結果に示すようにエポキシ樹脂40%を含有した従来の炭素繊維強化複合材料の面板に多数の気泡が含まれてしまう。エポキシ樹脂を35%から40%程度含有する通常の複合材面板は、もともと高い比強度をねらって繊維体積含有率を上げる為に、樹脂の量を少なくしているものであるが、樹脂の量が少ない故に、加圧して押え込まないと積層面に樹脂が十分に行き渡らず、弾性率の高い炭素繊維の残留応力等による変形等もあって気泡が多く発生する。従って、航空機の一次構造材としては不適当である。
【0013】
本発明の複合材サンドイッチ構造体3における面板2は、エポキシ樹脂を重量比で45%含有した炭素繊維強化複合材料で、この材料は、従来の炭素繊維強化樹脂プリプレグの樹脂重量含有率と繊維目付けの関係を示す図5で判るように従来の概念では樹脂量が不必要に多いと考えられる領域Fにおける極めて異例のものである。そして、上記材料は、エポキシ樹脂の流動性を制御したもので、流動性を制御しない従来の材料とは図6に示すように粘性変化特性が異なる。前述の理由で、低い圧力で気泡の無い成形することをねらい、単に樹脂量を多くしただけでは、加熱開始時に低粘度化した樹脂が流出してしまい、気泡を無くす効果が得られず、流出した樹脂が成形治具や副資材、配管等にこびりつくなど却って問題が多くなる。然るに本発明のように流動制御されたエポキシ樹脂を採用し、これを重量比で45%含有する炭素繊維強化複合材料の面板を用いることによって、初めて硬化圧力が約1気圧程度に低くても気泡無しに成形でき、ポリエーテルイミド発泡材コアを用いたサンドイッチ構造体を実現できた。図5で判るようにエポキシ樹脂45%のプリプレグが従来製品化されなかった理由は、樹脂の量が多いことによって、重量が大で、材料コストが増大する為であった。本発明では、コアと面板の接合、及び表面状態の改良の為に樹脂量を増加させているのであって、もし高強度・軽量化をねらう場合にはエポキシ樹脂含有量の低い一方向材プリプレグを織り布材間に挾むようにサンドイッチ面板を構成することによって、前記の成形上の効果を損うことなく、高性能化を図り、軽量化することが可能である。
【0014】
図7は、流動制御されたエポキシ樹脂を重量比で45%含有する炭素繊維強化プリプレグを面板とし、ポリエーテルイミド発泡材をコアとする本発明の複合材サンドイッチ構造体の成形例を示す断面組織写真である。
この複合材サンドイッチ構造体の製造においては、オートクレーブを使用したが、1気圧の低圧成形であるにも拘らず、面板には殆んど気泡が含まれておらず、航空機の一次構造材として適当である。また、面板のエポキシ樹脂がコアのセルにしっかりと浸み込んでおり、面板とコアの結合は完全である。ここで言う1気圧は、プラスチックフィルムで包まれたサンドイッチ構造体の外部から正圧で与えてもよいし、プラスチックバック内部を真空引きして大気圧との差圧で与えてもよい。
【0015】
図8は、上記と同じ構成の本発明のサンドイッチ構造体を硬化炉を用いて真空成形法で成形した例を示す断面組織写真である。このサンドイッチ構造体は、図7のサンドイッチ構造体と同様に良好な品質である。このことから本発明の複合材サンドイッチ構造体は、真空成形法で実現可能であることを実証している。
この真空成形法による本発明のサンドイッチ構造体の製造方法を、図9によって説明すると、ポリエーテルイミド樹脂の発泡材から成るコア1を、流動制御されたエポキシ樹脂を重量比で45%含有した未硬化炭素繊維強化エポキシプリプレグ4から成る面板にて両面から挾み、これを加熱オーブン5内の成形型6上に載せ、その上に離型フィルム7をかぶせ、その上からプラスチックバック8を成形型6上に直接装着したシール材9にてシールして設置し、プラスチックバック8内を真空吸引することにより加圧及び加熱し、前記未硬化炭素繊維強化エポキシプリプレグ4を成形硬化する。尚、10は通気確保用の不織布である。
【0016】
本発明の複合材サンドイッチ構造体の補修方法を図10によって説明すると、流動制御されたエポキシ樹脂を重量比で45%含有した炭素繊維強化複合材料を面板2とし、ポリエーテルイミド樹脂の発泡材をコア1とした複合材サンドイッチ構造体3の損傷発生後の局所修理部Mにおける損傷部面板及び損傷部コアを切り取り、損傷部コアを切り取った部分にその形状に合わせて加工した新しいコア11を接着し、損傷部面板を切り取った部分に面板と同じ樹脂を用いた補修追加積層用の未硬化炭素繊維強化エポキシプリプレグ12を当てた上、可撓性の加熱ヒーターブラケット13を載せ、さらにプラスチックバック8を局所修理部Mの外側の面板2上に直接装着したシール材9にてシールして設置し、プラスチックバック8内を真空吸引することにより加圧及び加熱し、前記未硬化炭素繊維強化エポキシプリプレグ12を成形硬化する。尚、10は通気確保用の不織布である。
【0017】
この補修方法は、オートクレーブを用いることなく、部品を機体に取り付けたまま適用できるので、従来から行われてきたものと言えるが、通常の航空機部品は、製造時にオートクレーブで加圧成形されるので、修理時に圧力を負荷しない上記補修方法では、修理前の強度と同等な性能を保証することは難しく、荷重を分担する一次構造部品及び一部の二次構造部品には適用できなかった。この為、荷重を分担する部品の修理時には、部品を取り外し、別途用意された修理用の治具にセットした上でオートクレーブで加圧成形するという、高価で手間のかかる修理を実施している。然るに本発明の複合材サンドイッチ構造体3は、真空成形で製造できるので、修理において前記のように真空成形を採用しても製造時と同等の性能が得られることになる。従って、従来では不可能であった一次構造部品も修理可能となり、これまでの高価な修理費の大幅な削減に寄与できる。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明で判るように本発明の複合材サンドイッチ構造体は、ポリエーテルイミド樹脂の発泡材コアが微細な独立気泡セルでできている為、外気がハニカムコアのように内部に出入りすることがない。また、発泡材コア自身が殆んど吸湿しない為、長期的に使用しても水分が内部に蓄積することがない。さらに発泡材コアの内部に水分が無い為、高空で凍結しコアと面板の接着結合を破壊して剥離を発生させるような不具合も発生しない。
【0019】
また、本発明の複合材サンドイッチ構造体は、軽量で強靱である為、損傷が発生しにくく、従来のアルミコアのサンドイッチ構造体のようにコア内部に湿気が侵入し、アルミコアが腐食してしまうという不具合もなく、長期的な耐久性に優れる。そして本発明の複合材サンドイッチ構造体のポリエーテルイミド樹脂の発泡材コアは、複合材面板成形条件である高温に耐える耐熱性と、損傷に耐える高靱性の要求を満足するだけでなく、吸湿による強度低下や吸湿による変形、使用中の剥離もない。
【0020】
然して本発明の複合材サンドイッチ構造体は、その製造において、ポリエーテルイミド樹脂の発泡材コアを、流動制御されたエポキシ樹脂を重量比で45%含有した未硬化炭素繊維強化エポキシプリプレグから成る面板2枚で挾み、これを加熱オーブン内で成形型上にてプラスチックバックを介して真空吸引することにより加圧し、或いは、加熱オートクレーブ内で成形型上にてプラスチックバックを介して1気圧以下の正圧を外部から加圧し、加熱硬化成形するので、面板は発泡材コアにより均一に加圧されて面板に気泡が残留することがない。従って、使用中に面板の樹脂中に微小亀裂が発生することがない。また、本発明の複合材サンドイッチ構造体は、発泡材コアの吸湿絶対値が小さいので、成形温度が低下せず、脱湿処理も不要で、乾燥状態で保管する必要も無く、極めて容易に製造できる。さらに非常に強靱で面板との接合強度が強く、工具や雹による損傷により剥離が発生することがない。
また、上述のように加熱オーブン内で真空成形法により成形、或いは加熱オートクレーブ内で1気圧以下の正圧により成形できるので、発泡材コア自体が加圧されず、コア気泡内部に取り込まれたガス圧力が膨張しようとするので、コアが押し潰されて寸法が収縮することが無い。従って、軽密度コアを使用できるので、非常に軽いサンドイッチ構造体が得られる。特に加熱オーブン内での真空成形は高価な窒素ガスを使用しないので、製造コストを低減できる。その上、加熱オーブンの設備建設費はオートクレーブに比較して約1/10程度の安価なものにできる。また、本発明の複合材サンドイッチ構造体は、炭素繊維強化複合材料の面板を、外表面とコアに接する内面の部分を炭素繊維布製の複合材シートとし、それらの内外表面部分の複合材シートに挾まれた部分を一方向材または織り布のシートとしているので、より高性能、軽量である。
【0021】
本発明の複合材サンドイッチ構造体の補修方法は、複合材サンドイッチ構造体の損傷発生後の局所修理部における損傷部面板及び損傷部コアを切り取り、その部分に新コアを接着し、その上に未硬化炭素繊維強化エポキシプリプレグを当てた上、可撓性の加熱ヒーターブランケットを載せ、さらにプラスチックバックを介して真空吸引することにより加圧及び加熱し、前記未硬化炭素繊維強化エポキシプリプレグを成形硬化するのであるから、複合材サンドイッチ構造体の製造時と同等の性能を確保でき、しかも部品を機体に取り付けたまま極めて容易に修理できる。従って、修理は二次構造部品に限定されることなく、一次構造部品にも適用でき、部品のスクラップ率の低下に寄与できる。
【0022】
以上総合すると、本発明は、コア内に湿気の侵入が無くて耐久性が高く、強靱で傷が付きづらく、修理が容易で、しかも軽量で安価な複合材サンドイッチ構造体を実現できる。そして、この複合材サンドイッチ構造体は、航空機の舵面、ドア、エンジンカウリング等の航空機構造部品に広範囲に用いることができ、航空機の経済性向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の複合材サンドイッチ構造体の概要を示す図である。
【図2】 本発明の複合材サンドイッチ構造体におけるポリエーテルイミド発泡材コアと、従来のポリメタクリルイミド発泡材コアの吸湿特性を示すグラフである。
【図3】 流動性の無いポリエーテルイミド発泡材コアのサンドイッチ構造体が成形圧力により潰れた状態を示す写真である。
【図4】 流動性の無いポリエーテルイミド発泡材コアを圧壊させないように1気圧でサンドイッチ構造体を成形した結果を示す断面組織写真である。
【図5】 従来の炭素繊維強化樹脂プリプレグの樹脂重量含有率と繊維目付けの関係を示す図である。
【図6】 エポキシ樹脂の流動性を制御した材料と流動性を制御しない従来の材料との粘性変化特性を示すグラフである。
【図7】 1気圧の低圧成形により得た本発明の複合材サンドイッチ構造体の断面組織写真である。
【図8】 真空成形法で成形した本発明の複合材サンドイッチ構造体の断面組織写真である。
【図9】 真空成形法による本発明の複合材サンドイッチ構造体の製造方法を示す概略断面図である。
【図10】 本発明の複合材サンドイッチ構造体の補修方法を示す概略断面図である。
【図11】 従来のハニカムコアサンドイッチ構造体の概要を示す図である。
【図12】 図11のA部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ポリエーテルイミド樹脂の発泡材コア
2 流動制御されたエポキシ樹脂を重量比で約45%程度含有した炭素繊維強化複合材料の面板
3 複合材サンドイッチ構造体
4 未硬化炭素繊維強化エポキシプリプレグ
5 加熱オーブン
6 成形型
7 離型フィルム
8 プラスチックバック
9 シール材
10 通気確保用の不織布
11 新コア
12 補修追加積層用の未硬化炭素繊維強化エポキシプリブレグ
13 可撓型の加熱ヒーターブランケット
Claims (2)
- 密度50Kg/m3〜80Kg/m3のポリエーテルイミド樹脂の発泡材のコアが、流動制御されたエポキシ樹脂を重量比で45%含有した炭素繊維強化複合材料の面板で狹まれた複合材サンドイッチ構造体であって、炭素繊維強化複合材料の面板の外表面とコアに接する内面の部分を炭素繊維布製の複合材シートとし、それら内外表面部分の複合材シートに狹まれた部分を一方向材又は織り布のシートとしたものであることを特徴とする複合材サンドイッチ構造体。
- 密度50Kg/m3〜80Kg/m3のポリエーテルイミド樹脂の発泡材のコアが、流動制御されたエポキシ樹脂を重量比で45%含有した炭素繊維強化複合材料の面板で狹まれた複合材サンドイッチ構造体の損傷発生後の局所修理部における損傷部面板及び損傷部コアを切り取り、損傷部コアを切り取った部分にその形状に合わせて加工した新しいコアを接着し、損傷部面板を切り取った部分に前記面板と同じ樹脂を用いた補修追加積層用の未硬化炭素繊維強化エポキシプリプレグを当てた上可撓型の加熱ヒーターブランケットを載せ、さらにプラスチックバックを介して真空吸引することにより加圧及び加熱し、補修追加積層用の未硬化炭素繊維強化エポキシプリプレグを成形硬化することを特徴とする複合材サンドイッチ構造体の補修方法。
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