JP3769193B2 - インクジェット印字方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グリコールエーテル類を主溶剤とする非水系溶媒中に顔料を分散したインクジェットインクを用いる印字方法であって、インクの乾燥性、形成された印字画像の光沢性、印刷適性などが優れたインクジェット印字方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、インクジェット印刷システムでは、インクジェットインクをコンピュターなどからの電気信号に応じてインクの液滴をプリントヘッドあるいはスプレイノズルから高速でインクジェット被記録材料に向けて噴射し、該被記録材料のインク吸収層に所望の画像を形成している。これらのインクジェットインクは、着色剤として染料または顔料を使用して、これらの着色剤を水性ビヒクルに分散したものを使用している。
【0003】
上記の被記録材料のインク吸収層は、一般に、着色剤として染料をベースとしたインクに対応したものが使用されており、染料インキの吸着性、定着性、発色性など、主にオフィスや家庭などでの使用に堪え得る性能を満足する程度であり、耐水性や耐光性に対しては十分な性能を発揮していない。最近、インクジェット印刷システムが、大型の屋外用のポスター、ディスプレイ、公告掲示板などの使用に堪え得るように、顔料をベースとしたインクを用いて耐光性、耐水性、光沢性、画像再現性などに優れた印字画像を形成し得る被記録材料の提供が望まれている。
【0004】
このために、顔料を使用したインクジェットインク用の被記録材料が検討されている。しかしながら、顔料を使用したインクジェットインクは、従来の染料を使用したインクに比べて乾燥が速いために、乾燥を遅く設定している。また、インクを吸収する被記録材料のインク吸収層は、インクの吸収性および定着性を向上するためにインク吸収層の印字面が多孔質層などのマット面になっており、印字画像に要求される十分な光沢が得られない。さらにインク吸収層が、多孔質層などの吸収面になっているため、そのままで使用する場合には、屋外での使用には性能的に問題があり、屋外使用の場合には、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのプラスチックフィルムをラミネート加工することが必要となる。
【0005】
また、従来のインク吸収層を有している被記録材料は、使用するインクジェットインクの種類や、プリンターの種類、印刷条件、要求される印刷適性などによって、該被記録材料を選択しなければならないという問題があり、また、インク吸収層を有せず、被記録材料に直接インクジェットプリントするインクも試みられているが、被記録材料の種類によってインクを選択しなければならないという問題があり、顔料をベースとしたインクジェットインクの乾燥性、印字画像の耐光性、光沢性、画像再現性に優れたインク吸収層を有する被記録材料は提供されていないのが現状である。さらに染料インクのインク吸収層として親水性の吸収性ポリマーを使用したものは、印字画像の耐水性が劣り水滴の付着によって印字画像が不鮮明になるなどの問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、グリコールエーテル類を含む顔料タイプのインクジェットインクを用いる印字方法を提供することである。また、本発明の目的は、上記顔料インクを用いて形成された印字画像が、優れた光沢性、乾燥性、画像再現性などに優れ、かつプラスチックフィルムをラミネート加工しないでも屋外の使用に十分に耐え得るインクジェット印字方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、基材にインク吸収層を形成してなるインクジェット被記録材料に、グリコール類を主溶剤とする非水系溶媒中に顔料を分散したインクジェットインクを用いて印字するインクジェット印字方法において、上記インク吸収層が、アセチル基3〜29.5重量%、ブタノイル基17〜50重量%および水酸基1〜3重量%を含有するセルロースアセテートブチレートからなる(但しインク吸収層が微孔質である場合およびインク吸収層が顔料を含む場合を除く)ことを特徴とするインクジェット印字方法を提供する。
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のセルロースアセテートブチレートを用いて、インク吸収層を形成することにより、グリコールエーテルを含む顔料タイプのインクジェットインクにより印字可能であり、優れたインク乾燥性、画像の光沢性、画像再現性などを有し、かつプラスチックフィルムをラミネート加工しないでも、屋外の使用に十分に耐え得る印字画像が得られる被記録材料が得られることを見出した。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明を主として特徴づけるセルロースアセテートブチレートは、アセチル基3〜29.5重量%、ブタノイル基17〜50重量%および水酸基1〜3重量%を含有するセルロースアセテートブチレートである。好ましくはアセチル基5〜15重量%、ブタノイル基35〜40重量%、水酸基1.5〜2.5重量%のセルロースアセテートブチレートを使用する。
【0010】
ブタノイル基の含有割合が上記上限を越える場合には、インクジェットインクの乾燥性が極端に低下し、インク吸収層に亀裂が発現するという問題があり、一方、ブタノイル基の含有割合が上記下限未満の場合には、インクジェットインクの吸収性に乏しく、画像再現性が低下するという問題がある。上記の如きセルロースアセテートブチレートは、イーストマンコダック社から[CAB−381−2]や[CAB−381−20]などの商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0011】
上記セルロースアセテートブチレートの軟化点は、155〜205℃であり、好ましくは170〜195℃である。融点が上記上限を越える場合は、得られるインク吸収層におけるインクの吸収性の低下により印字画像に問題があり、一方、融点が上記下限未満の場合は、得られるインク吸収層のインクの乾燥性が低下して、インク吸収層にベタツキが発現し、また、印字画像面に亀裂が発現するという問題がある。
【0012】
上記セルロースアセテートブチレートは、単独でも使用できるが、必要に応じてインク吸収層と基材との密着性を考慮して、さらに塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を添加することができる。該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の配合割合は、セルロースアセテートブチレート100重量部に対して10〜15重量部の割合である。該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の配合割合が前記上限を越える場合には、インク吸収層におけるインクの乾燥性、画像再現性などが低下するという問題がある。また、該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、重合度200〜860の範囲で、かつ水酸基価が25KOHmg/g以上、好ましくは30〜60KOHmg/gのものである。
【0013】
本発明の被記録材料の基材としては、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、合成紙、光沢紙など、好ましくは屋外用としてポリ塩化ビニルフィルムが挙げられる。上記基材は必要に応じてインク吸収層の形成面をコロナ処理やプライマー処理して使用することができる。
【0014】
上記基材上にインク吸収層を形成することによって、本発明の被記録材料が得られる。インク吸収層の形成は、前記のセルロースアセテートブチレートをメチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエンなどの有機溶剤に均一に溶解分散し、必要に応じて添加剤を加え、セルロースアセテートブチレートの濃度を10〜20重量%に調整した塗布液を基材面に塗布および乾燥することによって行なわれる。上記添加剤としては、前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体以外に、フッ素系界面活性剤などの界面活性剤、紫外線吸収剤、レベリング剤などの添加剤が挙げられる。
【0015】
上記基材への上記塗布液のコーティングは、公知のコーティング方法、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコート、エアナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スプレーコーター、カーテンコーターなどで行なうことができる。乾燥条件は、上記の基材およびインク吸収層の劣化を誘因しない範囲であれば如何なる条件であってもさしつかえない。インク吸収層の厚みは、5〜25μm(乾燥膜厚)の範囲が好ましい。
【0016】
本発明の被記録材料は、特に非水系の顔料タイプのインクジェットインクによる印字画像の形成に適している。非水系の顔料タイプのインク液媒体としては、グリコールエーテル系が好ましい。グリコールエーテルとして、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、モノプロピレングリコールモノブチルエーテル、モノプロピレングリコールモノエチルエーテル、モノプロピレングリコールモノプロピルエーテル、モノプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノプロピレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジプロピレングリコールモノペンチルエーテルなどのグリコールエーテル類が挙げられる。
【0017】
上記インクの着色剤としては、顔料タイプとして、酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄、群青、紺青、カーボンブラック、コバルトブルー、黄鉛などの無機顔料、アリリド系、アセト酢酸アリリドジスアゾ系、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料、銅フタロシアニンブルー、キナクリドン系、チオインジゴ系、インダスロン系などの有機顔料が挙げられる。また、本発明の被記録材料は、染料タイプのインクジェットインクにも適用できる。該染料タイプの染料としては、アゾ染料、キノリン染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、シアニン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、ニトロ染料、金属錯塩染料などの染料が挙げられる。
【0018】
また、上記インクのバインダーとしては、前記のグリコールエーテル類を含有する溶剤に混合分散できる公知のインクジェット用のインクのバインダーであれば如何なるものでもさしつかえない。該インクのバインダー用樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、繊維素系樹脂などが挙げられ、必要に応じて、可塑剤、分散剤、ワックス、界面活性剤、帯電防止剤、粘度調整剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの公知の添加剤を添加したものも使用することができる。
【0019】
前記の被記録材料への印字は、通常のインクジェットプリンターおよびプロッターを使用して、上記のグリコールエーテル類、着色剤、バインダーおよび添加剤からなる公知のインクジェットインクを使用して、通常のインクジェットプリント印刷条件にて実施することができる。
【0020】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中[部]および[%]とあるのは重量基準である。
<実施例1〜4および比較例1〜5>
下記の成分を均一に混合分散して塗布液(A〜H)を調製し、該塗布液をターポリン(ポリ塩化ビニルシート:厚み0.1mm)の表面に10μmの膜厚(乾燥膜厚)に塗工し、本発明および比較例の被記録材料(A〜H)を調製した。比較例5は公知の被記録材料(I)である。なお、セルロースアセテートブチレート中のアセチル基、ブタノイル基および水酸基は後記表1に示す。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
(比較例4)
塗工液H
・ポリビニルブチラール樹脂 15.0部
・メチルエチルケトン 85.0部
【0029】
(比較例5)
市販の被記録材料(ヒューレットパッカード社製、商品名:HPビニル)
【0030】
上記で得られた各々の被記録材料のインク吸収層に、グリコールエーテルを主溶剤とする非水系のインクを市販のインクジェットプリンター(エプソン社製、MJ−8000C)を使用して印字を行ない、インクの乾燥性、印字画像の光沢性および画像再現性を評価した(解像度720dpi)。
【0031】
(乾燥性)
前記の印刷物の印刷直後の指触乾燥状態を下記の基準にて判定した。
◎:印刷表層部および印刷表層内部の乾燥も良好で、インクのベタツキが無い。
×:印刷表層部および印刷表層内部の乾燥が悪く、インクのベタツキがある。
【0032】
(光沢性)
目視にて、前記の印刷物の光沢状態を下記の基準にて判定した。
◎:印刷面に曇り、白化およびマット化などの発現が無く、光沢がある。
×:印刷面に曇り、白化およびマット化などの発現が有り、光沢が無い。
【0033】
(画像再現性)
目視にて、前記の印刷物の画像再現性を下記の基準で判定した。
◎:印刷面に亀裂、ゆがみなどの発現が認められず、印刷原稿に匹敵する印刷調子の再現性有り。
×:印刷面に亀裂、ゆがみなどの発現が認められ、印刷原稿に匹敵する印刷調子の再現性が無い。
以上の結果を下記表1に示す。
【0034】
【0035】
【発明の効果】
本発明の被記録材料は、従来のグリコールエーテル類を含む顔料タイプの非水系インクジェットインクに対して、乾燥性に優れ、かつ印字画像の光沢性、画像再現性が優れており、さらに印字画像を屋外使用する場合に、プラスチックフィルムをラミネート加工しないでも、十分に耐え得る物性を有している。
Claims (6)
- 基材にインク吸収層を形成してなるインクジェット被記録材料に、グリコール類を主溶剤とする非水系溶媒中に顔料を分散したインクジェットインクを用いて印字するインクジェット印字方法において、上記インク吸収層が、アセチル基3〜29.5重量%、ブタノイル基17〜50重量%および水酸基1〜3重量%を含有するセルロースアセテートブチレートからなる(但しインク吸収層が微孔質である場合およびインク吸収層が顔料を含む場合を除く)ことを特徴とするインクジェット印字方法。
- セルロースアセテートブチレートが、軟化点155〜205℃である請求項1に記載のインクジェット印字方法。
- インク吸収層が、さらに塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有する請求項1または2に記載のインクジェット印字方法。
- 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が、重合度200〜860、水酸基価25KOHmg/g以上の重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット印字方法。
- セルロースアセテートブチレート100重量部に対して、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を10〜15重量部の割合で含有する請求項4に記載のインクジェット印字方法。
- 基材が、塩化ビニル樹脂シートまたは合成紙である請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット印字方法。
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