JP3768603B2 - アーク溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアーク溶接法に関し、特に、固定管方式において溶接ビード形状を均一化するためのアーク溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
化学プラント配管、建築設備配管工事では、配管の接合法として配管と配管、配管と継手を直接接続する突き合わせ溶接法、ソケットを介した隅肉溶接法、フランジを配管に隅肉溶接した後のフランジ同士のボルト接続法が広く用いられている。
ここで使用する溶接法としては、旧来、被覆アーク溶接法が主流であったが最近はガスメタルアーク溶接法に変わりつつある。このアーク溶接法は、溶接トーチ先端からシールドガスを流しながら消耗性電極式ガスシールドアーク溶接(GMA溶接)とも呼ばれるように、溶加材自らが電極となって母材との間に発生したアーク熱により溶融して溶接部に溶着金属として移行していく溶接法である。
この溶接法は溶加材としてワイヤが用いられるため、ワイヤがなくなるまで長時間連続溶接が可能である。
溶接作業は、作業性、溶接品質の安定性確保の上からあらかじめ専用工場や現場内の仮説工場内で、さらに溶接法としては溶接姿勢が下向きのまま溶接できるように配管を回転させる回転管方式が一般的である。
【0003】
一方で、現場で配管を固定した状態で、溶接トーチを配管の周上を移動させて溶接する固定管溶接法も不可欠である。
この固定管溶接は、時計位置で11時から1時付近での溶接姿勢である下向き姿勢、1時から5時付近の立向き下進、5時から7時付近での上向き姿勢、7時から11時付近までの立向き上進の4姿勢の組み合わせからなり、溶接ビード形状、溶込み深さなどを全周にわたって均一にするために重力、溶融金属の粘性などを考慮した溶接条件を、それぞれの姿勢ごとに設定する必要がある。
【0004】
溶接作業を熟練溶接士が行う場合は、溶接姿勢の変化に対応して連続的に溶接方法を変化させていくことも可能であるが、自動溶接で行うときは上述した4姿勢によりさらに細かい区分(以下レベルという)に区切って溶接条件を設定する必要性も生じる。
非消耗性電極を用いる不活性ガスアーク溶接法(TIG溶接)では溶接速度が比較的遅いため、レベルごとの細かい溶接条件設定による固定管溶接が可能であり、専用の配管自動溶接機が商品化されている。一方、ガスメタルアーク溶接法の場合も、固定管専用の配管自動溶接機自体は既に商品化されており、パルス溶接法、半周ごとの振り分け溶接法などの溶接法も提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ガスメタルアーク溶接法はTIG溶接法よりも溶接速度が速く、さらには電極自体が常に溶融していくため通常考えられる溶接速度、溶接電流、パルス電流値、パルス幅などの溶接パラメータの設定だけではたとえ精度、応答性を良くしても溶接ビード形状、溶込み深さの制御は非常に難しい。
特に多く発生する不具合としては
▲1▼上向き姿勢で多量の溶着金属が溶接部にとどまらずに重力により滴下してしまう。さらに滴下した溶着金属が溶接トーチのノズルに付着し、シールドガスの流れが不均一になったり、ワイヤ送給が滞る。
▲2▼立向き上進、下進で溶着金属が溶接トーチ直下の溶融池後方、または前方に流れてしまう。
【0006】
したがって、従来のガスメタルアーク溶接法を固定管方式に適用すると、アーク溶接で形成されるビードが不均一となりやすく、応力集中が生じて所望の強度が得られないという問題があった。
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、固定管方式において、溶着金属の溶け落ち現象を起こさずに、均一な溶接ビード形状、溶込み深さが得られ、かつ制御方法が簡便なガスメタルアーク溶接法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のアーク溶接方法では、先端から不活性ガスを吹き出しつつ母材との間に消耗式電極によりアークを発生させて溶加する溶接トーチを、固定された母材上に位置決めして母材の溶接を行うアーク溶接方法において、溶接トーチを断続移動させ、溶接トーチ停止時にはアークを発生させ、溶接トーチ移動時にはアークを完全に切る操作を繰り返し、
アーク発生時に溶接トーチ直下の母材上に形成される溶融池が間隔をおいて形成され、かつ各溶融池の溶接トーチ移動方向の長さの1/4以上が直前に形成された溶融池と重なるように、溶接トーチの1回当たりの移動距離を設定する。
あるいは、先端から不活性ガスを吹き出しつつ母材との間に消耗式電極によりアークを発生させて溶加する溶接トーチを、固定された母材上に位置決めして母材の溶接を行うアーク溶接方法において、溶接トーチを連続移動させつつ、アーク発生とアーク完全停止とを断続的に繰り返す操作を行い、アーク発生時に溶接トーチ直下の母材上に形成される溶融池が間隔をおいて形成され、かつ各溶融池の溶接トーチ移動方向の長さの1/4以上が直前に形成された溶融池と重なるように、アークの発生と完全停止との時間を設定する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のアーク溶接方法は、溶接トーチを移動させながら、アーク電流を発生させる操作と、アーク電流を完全に切る操作を繰り返しながらアーク溶接を行うものであり、特にアーク電流を停止させるとき、電流を完全に停止させる点で、従来のパルス溶接法と構成を異にしている。
図1は本発明のガスメタルアーク溶接法を好適に実施するための装置の概略を示したものである。
この溶接装置1は、溶接点2での溶接を行う溶接トーチ3およびこの溶接トーチを移動させるためのトーチ移動機構4を備えた溶接部5と、溶接部5にワイヤ6を供給するためのワイヤ供給部7と、溶接部5にシールドガスを供給するためのガス供給部8と、溶接点2にアークを発生させるための溶接電源9と、溶接部5、ワイヤ供給部7、ガス供給部8、および溶接電源9に接続されてこれらを制御するための制御装置10から概略構成されている。
【0009】
すなわち上記制御装置10は、溶接部5のトーチ移動機構4、溶接電源9、ガス供給部8、ワイヤ供給部7の各スイッチに接続されて、これらのスイッチを予めプログラムされた通りに精密にON/OFFできるようになっている。
さらに動作プログラムを変更して各種のワークにフレキシブルに対応可能な教示・再生型の溶接装置とすることもできる。すなわち溶接線と各位置でのトーチ角度、溶接ワイヤの突き出し長さ、溶接条件(溶接電流、アーク電圧)などを予め教示しておけば自動的に精度良く再生できるような構成とする事もできる。
【0010】
上記構成の溶接装置を用いて、本発明の溶接方法を実施するにあたっては、溶接トーチを移動させながら、アーク電流を発生させる操作と、アーク電流を完全に切る操作を繰り返しながらアーク溶接を行うように制御回路にプログラムする。ここで溶接トーチの移動は断続移動あるいは連続移動のいずれでもよく、例えば、図2に示すように、一定間隔で、トーチ移動とDC溶接電源を断続的に交互に作動させ、溶接アーク発生とトーチ移動を交互に繰り返すように制御回路にプログラムしてもよいし、あるいは図3に示すように、トーチを連続的に移動させつつ、溶接アーク発生と溶接アーク停止を交互に繰り返すように制御回路にプログラムしてもよい。
そして溶接電源が作動している間に、シールドガス供給、ワイヤ供給を連動して行うようにプログラムすることが好ましい。
【0011】
次に、上記溶接部5の一実施例を示した図4および図5を用いて、さらに本発明を詳細に説明する。
図4において、溶接部5は、溶接部5全体を被溶接管11に取り付けるための基体12と、溶接トーチ3を母材11の周囲に回転させるための回転体13と、回転体13を回転させるためのモータ14と、回転体13に取り付けられて溶接トーチ3を支持する支持軸15と、溶接点2での溶接を行う溶接トーチ3から概略構成されている。
基体12は、溶接点2の近傍の被溶接管11上に締着して取り付けられるようになっており、馬蹄形状の案内部16が設けられている。案内部16はその外周に沿って上記回転体13を摺動させるためのもので、被溶接管11に合わせて適当なサイズの部材を選択できるようになっている。
【0012】
基体12上部には溶接トーチ3の位置および動作を制御しつつ駆動させるためのモータ14が設けられている。このモータ14としては、精密なフィードバック制御が可能なサーボモータを好適に用いることができる。そしてサーボモータの回転駆動力がギア17を介して、回転体13に伝えられるようになっている。
回転体13は、ギア17を介して回転駆動力を与えられると上記案内部16の外周を摺動するようになっており、さらに回転が進んで、案内部16の開口部分18(図2において配管下方)に達したとき、開口部分18を橋架するようにしてさらに回転が進むようになっており、その結果、回転体13は被溶接管11全周にわたって回転可能になっている。
回転体13には溶接トーチ3を支持する支持軸15が取り付けられている。支持軸に設けられた関節部19が、溶接トーチ3を支持しつつ、溶接トーチ3の先端を所望の突き出し位置および角度に保持できるようになっている。また関節部19にアクチュエータを設けて、サーボモータと連動させて突き出し位置および角度をフィードバック制御する構造とすることもできる。
このように構成された溶接部5は、被溶接管11全周にわたる広範な動作領域を有するので、水平固定された管の、隅肉溶接、突き合わせ溶接、ボルト溶接など種々の溶接が可能である。
【0013】
上記ガス供給部8は、図1に示すように、アルゴンガス、ヘリウムガス、炭酸ガス、またはこれらの混合ガスなどの不活性ガスを貯留するボンベ20、ボンベ20からのガス流量を調節するための流量計減圧弁21、上記不活性ガスをシールドガスとして溶接部5へ供給するガス供給管22、ガス供給を制御装置10の制御下にON/OFFするためのガス電磁弁23によって概略構成されている。
また、上記ワイヤ供給部7は、送給モータ24と、その送給モータ24によって駆動する送給ロール25と、ワイヤを巻回するためのスプール26を備えている。
【0014】
図5は溶接トーチ3の構造の一例を示したものである。この溶接トーチ3は、略円筒状で、その先端部にシールドガスを吹き出すノズル27と、ノズル27の内部中心でノズル27から先方に突出したワイヤ電極28とが設けられている。
上記ワイヤ電極28は、上記ワイヤ送給部7によって、スプール24から溶接点2に供給されるようになっており、上記ノズル27の後端部に接続されたガス供給管22から送り込まれたアルゴンガス、ヘリウムガス、炭酸ガス、またはこれらの混合ガスなどの不活性ガスが、ノズル27から溶接点2に向けて吹き出すようになっている。
上記溶接電源9には、その陽極側にワイヤ電極28、陰極側に母材11が接続されており、ワイヤ電極28と溶接する母材11との間に溶接に充分なアークを発生させるようになっている。
【0015】
次に上記構成の溶接装置を用いて、本発明の溶接法を実施する方法について説明する。
まず、図2に示すように、一定間隔で、トーチ移動とDC溶接電源を断続的に交互に作動させ、溶接アーク発生とトーチ移動を交互に繰り返すように制御回路にプログラムしてアーク溶接を行う例について説明する。
ここで溶接電源が作動している間に、シールドガス供給、ワイヤ供給を連動して行うようにプログラムすることが好ましい。
【0016】
このようにプログラムされた制御装置により、溶接装置は以下のように作動する。溶接開始時に制御装置10を作動させると、トーチ移動機構4がONとなり、関節部19によって、溶接トーチ3の先端部が母材の外周の溶接開始点(以下時計位置12時という)で停止する。溶接トーチの先端部の位置は機械的に直結されたエンコーダ(位置検出器)によって電気信号に変換され、常に制御装置の制御回路(CPU)にフィードバックされている。
【0017】
溶接トーチ3停止後、溶接電源がONとなる。これと同時にシールドガス電磁弁23が開き、ワイヤ送給モータ24が作動する。DC溶接電流の量、アーク電圧は予め制御回路にプログラムしておけば、所定時間、所望の量のアークが発生し、母材の溶融が起こる。所定時間経過後、溶接電源9がOFFとなり、アーク発生を停止する。これと同時にシールドガス電磁弁23が閉じ、ワイヤ送給モータ24を停止する。
【0018】
アーク発生停止後、再度トーチ移動機構4がONとなり、モータ14が回転して、溶接線に沿って溶接トーチ3が所定時間移動する。所定時間経過後、モータ14の回転が止まり、溶接トーチ3が所望の位置で停止する。ついで溶接トーチ3を停止させたまま、所望量の溶接電流およびシールドガスを供給され、ワイヤ送給が行われて、再びアークが発生し母材の溶融がおこる。
ここで、母材が溶融して形成される溶融池29の長さの1/4以上が、直前に形成された溶融池29と重なるように、溶接点の間隔を設定することが好ましい。このような間隔で溶接トーチ3の移動を繰り返すことにより、直前に形成された溶融池29が凝固する前につぎの溶融池29が形成されるため、急冷による溶接部の凝固割れを防ぎ好都合である。
したがって、上記制御装置10にプログラムする際に、各々の溶融池がその前後に形成される溶融池と1/4以上の長さが重なるように、溶接トーチ3の1回毎の移動距離(各溶接点の間隔)が設定されることが好ましい。
【0019】
アークが発生して所定時間経過後、溶接電源9がOFFとなりアーク発生が停止する。ついてモータ14が起動し、溶接線に沿って溶接トーチ3が所定時間移動する。
次いで、溶接トーチ3が停止し、再度溶接電流およびシールドガスの供給とワイヤ送給が行われ、アークが発生して、溶接が進行する。以下この操作が繰り返される。
【0020】
こうして溶接トーチ移動とアーク溶接を、完全に分離して交互に行うことにより、溶着金属の溶け落ち現象や、ビード形状の不均一化を起こすことなく、均一な溶接が可能となる。
【0021】
次に図3に示すように、トーチを連続的に移動させ、溶接アーク発生と溶接アーク停止を交互に繰り返すように制御回路にプログラムしてアーク溶接を行う例について説明する。
ここでも溶接電源が作動している間に、シールドガス供給、ワイヤ供給を連動して行うようにプログラムすることが好ましい。
【0022】
このようにプログラムされた制御装置により、溶接装置は以下のように作動する。溶接開始時に制御装置10を作動させると、トーチ移動機構4がONとなり、関節部19によって、溶接トーチ3の先端部が母材の外周の溶接開始点(以下時計位置12時という)の位置に送られる。溶接トーチの先端部の位置は機械的に直結されたエンコーダ(位置検出器)によって電気信号に変換され、常に制御装置の制御回路(CPU)にフィードバックされている。
【0023】
溶接トーチ3が時計位置12時に達した後、溶接電源がONとなり、これと同時にシールドガス電磁弁23が開き、ワイヤ送給モータ24が作動する。一方溶接トーチは溶接線に沿って連続移動を開始する。DC溶接電流の量、アーク電圧は予め制御回路にプログラムしておけば、所定時間、所望の量のアークが発生し、母材の溶融が起こる。所定時間経過後、溶接電源9がOFFとなり、アーク発生を停止する。これと同時にシールドガス電磁弁23が閉じ、ワイヤ送給モータ24を停止する。
【0024】
アーク発生停止も、モータ14が回転して、溶接線に沿って溶接トーチ3は移動している。所定時間経過後、所望量の溶接電流およびシールドガスを供給され、ワイヤ送給が行われて、再びアークが発生し母材の溶融がおこる。
ここで、母材が溶融して形成される溶融池29の長さの1/4以上が、直前に形成された溶融池29と重なるように、溶接点の間隔を設定することが好ましい。このような間隔で溶接アークのON/OFFを繰り返すことにより、直前に形成された溶融池29が凝固する前につぎの溶融池29が形成されるため、急冷による溶接部の凝固割れを防ぎ好都合である。
したがって、上記制御装置10にプログラムする際に、各々の溶融池がその前後に形成される溶融池と1/4以上の長さが重なるように、溶接アークのON/OFFの時間が設定されることが好ましい。
【0025】
アークが発生して所定時間経過後、溶接電源9がOFFとなりアーク発生が停止する。モータは継続的に回転し続け、溶接トーチ3は、連続的に移動する。
次いで、所定時関経過後、再度溶接電流およびシールドガスの供給とワイヤ送給が行われ、アークが発生して、溶接が進行する。以下、この操作が繰り返される。
【0026】
こうして溶接トーチを連続的に移動させながら、アーク溶接のON/OFFを繰り返すことにより、溶着金属の溶け落ち現象や、ビード形状の不均一化を起こすことなく、均一な溶接が可能となる。
【0027】
以上図1、図3、および図4に示した溶接装置を用いて本発明の溶接法を実施した例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、通常のアーク溶接として用いられているその他のアーク溶接にも適用することができる。
【0028】
【実施例】
(フランジ隅肉溶接)
以下の溶接パターンで、フランジ隅肉溶接を行った。
【0029】
上記実施例1、2および比較例1において、その他の溶接条件は、以下の通りとした。
・配管:SGP管(φ114.3mm、4.5t)
・フランジ:並型(10Kタイプ)
・溶接法:ガスメタルアーク溶接(シールドガス:アルゴン+20%CO2)
・配管位置:水平固定
・溶接開始位置:12時位置
・使用ワイヤ:軟鋼用溶接ワイヤ(φ1.0mm)
【0030】
上記各条件で得られた溶接ビード形状の特徴を、各時計位置における、実際のど厚、ビード幅、ビード凹凸として表した結果を、実施例1について表1、実施例2について表2、比較例1について表3において各々示す。
表1ないし表3において、ビード凹凸は、図6(a)および(b)に示すように、ビード31の両端32,33を結んだ線を基準線34とし、ビード表面の中央35が基準線より高く盛り上がった形状のものを凸ビード(図6(a))、ビード表面の中央36が基準線より低いものを凹ビード(図6(b))とし、基準線からの距離を凸ビードは+、凹ビードは−で表示して示している。また実際のど厚は、隅肉溶接の実際の溶け込み深さを表し、図6(c)または(d)において、溶接点Aとビード表面中央35または36との距離d1またはd2の実測値である。
さらに表1ないし表3に示したビード形状と実際のど厚から、以下に示すように、理論のど厚およびサイズを求めた。
凸ビードの場合は、図6(c)に示すように、基準線を底辺、溶接点Aを頂点として想定される直角二等辺三角形の2つの等辺の長さをサイズとし、同直角二等辺三角形の高さを理論のど厚D1とする。凹ビードの場合は、図6(d)に示すように、ビード表面中央36を通る接線37を底辺、溶接点Aを頂点として想定される直角二等辺三角形の2つの等辺の長さをサイズとし、同直角二等辺三角形の高さを理論のど厚とする。こうして求めた理論のど厚およびサイズを表1ないし表3に併せて示す。
理論のど厚は溶接部の強度計算を行う際のパラメータとなり、この値が平均的に所定の値以上であることが強度上好ましい。サイズは理論のど厚を求めるために必要な数値である。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
なお比較例1では溶接電流が実施例1よりも70A低い150Aとなっているが、これ以上溶接電流を上げると時計位置の5時から9時の付近で溶接金属が溶接部に付着せずに落下してしまう溶け落ち現象が生じてしまうからである。
本発明法では最大電流トーチ停止時に220Aまで上げても溶け落ちが生じず、良好な溶接ビードが得られた。
【0035】
表1から表3に示した実施例1,2と比較例1の各数値を比較するためのグラフを、図7ないし図14に示す。図7ないし図11において、実施例1の結果は◇、実施例2の結果は△、比較例1の結果は■で表示する。
図7に実際のど厚の比較を示す。実施例1,2で得られた溶接ビードにおいて、比較例1に比べて、各時計位置で均一なのど厚が得られている。
図8にビード幅の比較を示す。実施例1,2で得られた溶接ビードのビード幅は、比較例1に比べて、全周にわたって均一に形成されている。
図9にビードの凹凸の比較を示す。実施例1,2で得られた溶接ビードは、6時位置までが1mm程度の凹みとなっているがほぼ同一形状と見ることができる。しかし比較例1で得られた溶接ビードは、全周にわたって凸傾向であり、9時位置では最大値3mmの凸となっており、ビードと配管、またはフランジの境目、即ち止端部での応力集中が懸念される。
【0036】
図10にサイズ、図11に理論のど厚の比較を示す。理論のど厚は溶接部の強度計算を行う際のパラメータとなり、この値が平均的に所定の値以上であることが強度上好ましい。サイズは理論のど厚を求めるために必要な数値である。
実施例1,2では、理論のど厚が全周にわたって5〜6mmの範囲に入っているが、比較例1ではビード形状が悪いために理論のど厚が最大でも3mm程度しかなく上述したように150A以上に溶接電流を上げることもできず、好ましい溶接結果は得られない。
【0037】
図12から図14は、実際のど厚と理論のど厚を比較したもので、比較例1の結果を図12、実施例1の結果を図13、実施例2の結果を図14に示す。これらの図において、実際のど厚を■、理論のど厚を◇で表示する。
図12に示すように比較例1では実際のど厚と理論のど厚との乖離が大きく強度保持に有効なビード形状になっていない。これに対して、図13および図14に示すように実施例1,2では、実際のど厚と理論のど厚はほぼ同じ値であり、強度保持に有効なビード形状となっていることがわかる。
さらに、実施例1においては溶接トーチの1回当たりの移動距離の調整により、また実施例2においてはアーク発生とアーク停止の繰り返し時間の設定により、溶接トーチ直下に形成される溶接池の長さの1/4以上が直前の溶融池と重なる範囲とすれば、直前に形成された溶融池が凝固する前に、次の溶融池が形成されるため、急冷による溶接部の凝固割れは生じないことを浸透探傷検査で確認した。
【0038】
(配管突き合わせ溶接)
以下の溶接パターンで、配管突き合わせ溶接を行った。
【0039】
上記実施例3、4および比較例2において、その他の溶接条件は、以下の通りとした。
・配管:SGP管(φ114.3mm、4.5t)
・開先角度:片側35゜、ルート面1.0mm、ルート間隔 0mm
・配管位置:水平固定
・溶接法:ガスメタルアーク溶接(シールドガス:アルゴン+20%CO2)
・溶接開始位置:12時位置
・使用ワイヤ:軟鋼用溶接ワイヤ(φ1.0mm)
【0040】
上記溶接条件で溶接した溶接ビードについて図15に示すように余盛高さH、ビード幅Wを測定した。その結果を実施例3について表4、実施例4について表5、比較例2について表6に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
表4、表5および表6に示した実施例3、実施例4および比較例2の各数値を比較するためのグラフを図16および図17に示す。図16および図17において、実施例3の値は◇で、実施例4の値は△で、比較例2の値は■で表示している。
図16は、実施例3,4と比較例2の余盛高さの比較を示したものである。実施例3,4で得られた溶接ビードでは、比較例2に比べて、各時計位置で均一な余盛高さが得られている。図17に、実施例3,4と比較例2のビード幅の比較を示す。実施例3,4では、比較例2に比べて、各時計位置で4時半から9時の付近は若干ビード幅が狭くなっているがほぼ均一なビード幅になっていることがわかる。
一方、比較例2では、図18に示すように、時計位置5時から9時の付近で溶接金属が付着せずに落下してしまう著しい溶け落ち現象が生じ、さらに時計位置7時から9時の付近で、溶接ビードの止端部に図19に示すような形状のアンダーカット38が生じていた。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、固定管式のガスメタルアーク溶接法における制御が容易となり、溶接全周を1レベル制御、即ち溶接姿勢に拘らず単一条件で良好な溶接が得られる。そして溶接金属の溶け落ち現象またはアンダーカットがおこらず、溶接全周にわたってほぼ均一なビード形状並びに溶け込み深さが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のアーク溶接法を好適に実施するための装置の概略図である。
【図2】 本発明のアーク溶接法における制御装置のプログラムの一実施例を示す図である。
【図3】 本発明のアーク溶接法における制御装置のプログラムの別の実施例を示す図である。
【図4】 本発明のアーク溶接法における、溶接部の一実施例を示す図である。
【図5】 本発明のアーク溶接法における溶接トーチの一実施例を示す図である。
【図6】 隅肉溶接におけるビード形状を示す断面図で、(a)および(c)は凸ビード、(b)および(d)は凹ビードを示している。
【図7】 実施例1,2と比較例1における、実際のど厚の比較を示すグラフである。
【図8】 実施例1,2と比較例1における、ビード幅の比較を示すグラフである。
【図9】 実施例1,2と比較例1における、ビード凹凸の比較を示すグラフである。
【図10】 実施例1,2と比較例1における、サイズの比較を示すグラフである。
【図11】 実施例1,2と比較例1における、理論のど厚の比較を示すグラフである。
【図12】 比較例1における実際のど厚と理論のど厚を比較したグラフである。
【図13】 実施例1における実際のど厚と理論のど厚を比較したグラフである。
【図14】 実施例2における実際のど厚と理論のど厚を比較したグラフである。
【図15】 配管突き合わせ溶接における、ビード形状を示した断面図である。
【図16】 実施例3,4と比較例2の余盛高さの比較を示したグラフである。
【図17】 実施例3,4と比較例2のビード幅の比較を示したグラフである。
【図18】 比較例2におけるビード形状を示した断面図である。
【図19】 比較例2におけるビード形状を示した断面図である。
【符号の説明】
3…溶接トーチ、11…母材、29…溶融池
Claims (2)
- 先端から不活性ガスを吹き出しつつ母材との間に消耗式電極によりアークを発生させて溶加する溶接トーチを、固定された母材上に位置決めして母材の溶接を行うアーク溶接方法において、
溶接トーチを断続移動させ、溶接トーチ停止時にはアークを発生させ、溶接トーチ移動時にはアークを完全に切る操作を繰り返し、
アーク発生時に溶接トーチ直下の母材上に形成される溶融池が間隔をおいて形成され、かつ各溶融池の溶接トーチ移動方向の長さの1/4以上が直前に形成された溶融池と重なるように、溶接トーチの1回当たりの移動距離が設定されることを特徴とするアーク溶接方法。 - 先端から不活性ガスを吹き出しつつ母材との間に消耗式電極によりアークを発生させて溶加する溶接トーチを、固定された母材上に位置決めして母材の溶接を行うアーク溶接方法において、
溶接トーチを連続移動させつつ、アーク発生とアーク完全停止とを断続的に繰り返す操作を行い、
アーク発生時に溶接トーチ直下の母材上に形成される溶融池が間隔をおいて形成され、かつ各溶融池の溶接トーチ移動方向の長さの1/4以上が直前に形成された溶融池と重なるように、アークの発生と完全停止との時間が設定されることを特徴とするアーク溶接方法。
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