JP3767758B2 - 切替え遮断器の位相制御システム - Google Patents

切替え遮断器の位相制御システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電圧、周波数、位相角の異なる複数の電源から電力が供給されるき電線において、各電源間の切替えを電源切替え区間(中セクション)への列車の進入あるいは通過に合わせて所定の電源電圧位相で行う切替え遮断器の位相制御システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8の(A)は例えば新版新幹線(社団法人 日本鉄道運転協会、新幹線運転研究会編 昭和59年10月1日発行)に示された新幹線の電化設備のき電用変電所主回路を示す図である。図において、1は図示しない交流電源を受電用遮断器2の電源側に接続する受電用断路器、3は受電用遮断器2の負荷側に一次巻線が接続され、二次巻線が二次側遮断器4に接続された変圧器である。
【0003】
5A,5Bは二次側遮断器4を通して下り線における上り方面、下り方面の各き電線7a,7b(き電線7aを第1き電線、き線7bを第2き電線とする)に電源を接続するき電用遮断器、7cはセクション8a,8bを挟む第1き電線7aと第2き電線7b間に設けられた中セクション、6Aはセクション8aを挟む第1き電線7aと中セクション7c間に接続された第1の切替え遮断器、6Bはセクション8bを挟む第2き電線7bと中セクション7c間に接続された第2の切替え遮断器である。
尚、上り線においても下り線と同様なき電用変電所主回路が設けられている。
【0004】
次に、列車Tが中セクション7cを通過時における第1及び第2切替え遮断器6A,6Bの動作を図9(A)、(B)および図10を用いて説明する。図9(A)は列車Tが中セクション7cへ進入時の状態を示す図8(A)の略式図である。また、図9(B)は列車Tが中セクション7cを通過後の状態を示す図8(A)の略式図である。
【0005】
図10は第1き電線7aと第2き電線7bのそれぞれに電力を供給する電源Aと電源Bにおける電圧Va,Vbの位相関係と、切替え遮断器6A,6Bの切替え時における中セクション電圧Vnの変化を示すオシログラフによる交流電圧形図である。
【0006】
列車Tが上り線における下り方面で中セクション7cに進入していない時、第1の切替え遮断器6Aの開閉素子は遮断、第2の切替え遮断器6Bの開閉素子は投入の状態で列車Tを待ち受けている。そして、図9の(A)に示すように列車Tが中セクション7cに進入すると、図示しない列車検出装置により列車あり信号が、図8の(B)に示すように制御盤20へ出力される。その結果、制御盤20は遮断信号を第2の切替え遮断器6Bに出力する。その結果、第2の切替え遮断器6Bは列車あり信号発生よりT1後に電源Bを遮断動作する。下り方面の電源Bを遮断した後、0.3秒(T2)後に制御盤20より投入信号が第1の切替え遮断器6Aに出力されると、上り方面の電源Aは投入される。
【0007】
列車Tが中セクション7cを通過して上り線上り方面に進み、中セクション7を抜けた後は、図9の(B)のように同じく図示しない列車検出装置より列車なし信号が制御盤20に出力されると、第1の切替え遮断器6AはT1後に遮断動作し、上り方面の電源Aを遮断する。上り方面の電源Aが遮断された後、0.3秒(T2)後に制御盤20より投入信号が第2の切替え遮断器6Bに出力されると下り方面の電源Bは投入される。そして、次の列車待ちの状態に復帰する。
【0008】
制御盤20は、図10の(B)のブロック図に示すように、列車Tが中セクション7cに入った時に列車検出装置10よりスタ−ト信号として列車Tあり信号が、そして列車Tが中セクション7cを通過した時には列車なし信号が入力されると、盤内のリレ−やタイマ−を作動させて設定時間(T1,T2)後に第1、第2の切替え遮断器6A,6Bに遮断/投入信号を出力する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来の切替え遮断器の制御装置は以上のように構成されているため、第1及び第2の切替え遮断器間の開閉シーケンス動作は制御盤による単純なタイマ制御のみであり、電源波形の1サイクルに対してはランダムの位相で第1及び第2の切替え遮断器の投入、遮断を行っていた。
【0010】
第1及び第2の切替え遮断器の投入、遮断動作を図10に従って説明すると、電源A及び電源Bは電圧Va,Vb間には位相差があり、この図10では位相差90°で示している。この位相差状態で列車Tが中セクション7cに進入すると、制御盤20に列車Tあり信号が伝達され、制御盤20から第2の切替え遮断器6Bを開放するための遮断信号が出力されてT1後に第2の切替え遮断器6Bが開放して列車電流(モータの負荷電流)を遮断する。
【0011】
そして第1の切替え遮断器6AをT2(約0.3秒)後に投入することになるが、電流遮断後も中セクション7cには列車Tのモータが発電機となりき電線に逆電圧を供給することになるため、第1の切替え遮断器6Aの投入はこの残留電圧がある中で電源Aを投入しなければならない。しかし第1の切替え遮断器6Aの投入指令は電源Aの電圧位相に対してランダムに発せられると共に、列車Tから供給される残留電圧は列車Tの運行状態により異なっている。従って、切替え遮断器6Aの投入の際に発生する過電圧は大きくバラついて制御することはできなかった。
【0012】
一方、列車Tが中セクション7cを抜けて、列車なし信号により復帰動作として第1の切替え遮断器6AをT1後に遮断し、第2の切替え遮断器6BをT2(0.3秒)後に投入を行う場合は、第1の切替え遮断器6Aが遮断する電流は浮遊容量による微小電流(I1=0.2A程度)である。そのため、第1の切替え遮断器6Aの接点が開くと同時に電流が遮断され、中セクション7cに残留する電圧は第1の切替え遮断器6Aの開極位相で決定される。
【0013】
しかし、制御盤20から出力される第1、第2の切替え遮断器6A,6Bの遮断信号、投入信号の出力制御は、電圧波形の位相に関係なくランダム制御である。そのため、中セクション7cの残留電圧は第1の切替え遮断器6Aの開極位相により、+最大から−最大まで変化して残留していた。
【0014】
そして第2の切替え遮断器6Bは、残留電圧が+最大から−最大に変化して残留する電圧の中で、しかもランダム位相で投入されるので列車Tが進入してきた時と同じように、発生する過電圧は大きく変化して制御することが困難であった。
【0015】
このように第1、第2の切替え遮断器6A,6Bが開閉した際に発生する過電圧は、列車Tに搭載されている機器や地上の変電所に設置されている機器の絶縁を脅かし好ましくない。例えば、第1の切替え遮断器6Aの投入により、電源Aに接続される機器には中セクション7cの残留電圧Vnと電源Aの電圧値で決定された高周波のサ−ジ性の過電圧が印加される。
【0016】
又、位相差の異なる電源を切り離している切替え遮断器には、電源の差分差(第1の切替え遮断器6Aが投入した時に第2の切替え遮断器6Bの極間にはVb−Va、第2の切替え遮断器6Bが投入した時、第1の切替え遮断器6Aの極間にはVa−Vb))と高周波のサ−ジ性の電圧が印加される。このような過電圧の発生レベルは、第1、第2の切替え遮断器6A、6Bがランダムに開閉しているため制御できず、非常に低い確率であるが過電圧が発生する。その結果、使用している機器の絶縁耐力が低下していた場合には機器の絶縁破壊が生じ、機器の損傷につながる。
【0017】
更に、切替え遮断器にとっては、電源を切り離している側の切替え遮断器が過電圧により閃絡し短絡事故を引き起こす可能性がある。そして、短絡事故が発生した場合、列車の運行に支障がないか線路及び設備の点検を行わなければならず、線路及び設備の保全業務に人力と時間を費やす必要があった。
【0018】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、過電圧を制御するために第1、第2の切替え遮断器の開閉動作を、これら切替え遮断器に対応する電源電圧波形の位相と同期させる制御信号を出力する切替え遮断器の位相制御システムを得ることを目的としている。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る切替え遮断器の位相制御システムは、電路における電源切替え区間に第1の電源と第2の電源を交互に切替えて電力を供給する第1および第2の電源切替え手段と、前記電源切替え区間に対する印加電源を前記第1の電源と第2の電源の間で切替えるとき、これら電源の投入位置または遮断位置と各電源電圧波形とを同期させて切替え信号を前記第1および第2の電源切替え手段に出力する切替え信号出力手段とを備え、切替え信号出力手段は、電源投入側の第1あるいは第2の電源切替え手段に電圧を印加する前記第1あるいは第2の電源の電源電圧と前記電源切替え区間における残留電圧との差分を検出する差分検出手段を有して、前記差分のゼロ付近で投入する様前記第1および第2の電源切替え手段に前記切替え信号を出力し、各電源電圧波形と非同期で切替え信号を出力する第2の切替え信号出力手段を備え、この第2の切替え信号出力手段よりの切替え信号を時間差をおいて切替え信号出力手段よりの切替え信号と並列に第1および第2の電源切替え手段に出力するものである。
【0020】
請求項2の発明に係る切替え遮断器の位相制御システムは、電路における電源切替え区間に第1の電源と第2の電源を交互に切替えて電力を供給する第1および第2の電源切替え手段と、前記電源切替え区間に対する印加電源を前記第1の電源と第2の電源の間で切替えるとき、これら電源の投入位置または遮断位置と各電源電圧波形とを同期させて切替え信号を前記第1および第2の電源切替え手段に出力する切替え信号出力手段とを備え、切替え信号出力手段は、電源遮断側の第1あるいは第2の電源切替え手段に電圧を印加する前記第1あるいは第2の電源の電源電圧と前記電源切替え区間における残留電圧との差分を検出する差分検出手段を有して、前記差分のゼロ付近で遮断する様前記第1および第2の電源切替え手段に前記切替え信号を出力し、各電源電圧波形と非同期で切替え信号を出力する第2の切替え信号出力手段を備え、この第2の切替え信号出力手段よりの切替え信号を時間差をおいて切替え信号出力手段よりの切替え信号と並列に第1および第2の電源切替え手段に出力するものである。
【0022】
請求項の発明に係る切替え遮断器の位相制御システムは、請求項1において切替え信号出力手段は、電源電圧波形の最小値と最大値間の位相角のずれを位相角幅としたとき、第1あるいは第2の電源切替え手段の投入または遮断位置を前記位相角幅の±50%以内に制御するものである。
【0023】
請求項4の発明に係る切替え遮断器の位相制御システムは、電路における電源切替え区間に第1の電源と第2の電源を交互に切替えて供給する第1および第2の電源切替え手段と、前記第1あるいは第2の電源の電圧と電源切替え区間における電圧との電位差が0となる時点を検出する零電圧検出手段と、電位差零検出時に切替える様信号を前記第1および第2の電源切替え手段に出力する切替え信号出力手段とを備え、各電源電圧波形と非同期で切替え信号を出力する第2の切替え信号出力手段を備え、この第2の切替え信号出力手段よりの切替え信号を時間差をおいて切替え信号出力手段よりの切替え信号と並列に第1および第2の電源切替え手段に出力するものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下この発明の一実施の形態を図について説明する。図1は本実施の形態による切替え遮断器の位相制御システムの構成図である。図において、10はスタート信号発生部であり、このスタート信号発生部10は列車線路沿いに配置された図示しない列車検出装置より中セクション7への列車進入信号、或いは列車通過信号を受けて列車有り/なし信号をスタート信号として出力する。
【0026】
20はスタート信号を受けて従来装置と同様に設定時間後に第1/第2の切替え遮断器6A,6Bに対する遮断信号、投入信号を出力する制御盤、30はPT(計器用変圧器)等で検出した電源電圧Va,Vbにおいて電圧波形が例えばゼロクロス(電圧零)した時に電圧信号を同期信号として出力する同期信号発生部、40は位相制御装置であり、この位相制御装置40はスタート信号と同期信号が入力されたならば、電圧零付近で第1あるいは第2の切替え遮断器6A,6Bを遮断あるいは投入するように制御盤20からの遮断信号あるいは投入信号を図示しない接点を通して出力制御する。
尚、スタート信号発生部10、同期信号発生部30により切替え信号出力手段を、第1及び第2の切替え遮断器6A,6Bにより第1及び第2の電源切替え手段を構成する。
【0027】
このように本システムは、位相制御装置40を制御盤10と第1、第2の切替え遮断器6A,6Bとの間に直列に接続して構成されている。即ち、制御盤10より出力された遮断信号あるいは投入信号は、位相制御装置40による位相制御に基づく時間調整で第1あるいは第2の切替え遮断器6A,6Bに出力される。
【0028】
図1は列車Tが中セクション7cから下り線上り方面へ抜けていく状態を示す図であるが、この状態における位相制御装置40の動作を図2を用いて説明する。まず列車Tが中セクション7c抜けると、スタート信号発生部10よりスタ−ト信号として列車なし信号が制御盤20及び位相制御装置40に入力される。そして制御盤20からは従来通り第1の切替え遮断器6Aへの遮断信号が出力される。しかし、この時点では位相制御装置40が動作していないため、遮断信号は第1の切替え遮断器6Aに入力されない。
【0029】
位相制御装置40は、電源A及び電源Bの電源電圧波形に基づいて常時入力されている同期信号から、今後の制御の基準点となる同期ポイントの検出を各同期信号毎に行う。同期ポイントの検出は、通常電圧波形が負極性から正極性へ転換し零点を通過する点や、逆方向の零点を通過する点のどちらかに固定するので、同期ポイントの検出点は、スタ−ト信号が入力されても同期信号出力は最悪1サイクル程度ずれる可能性がある。
【0030】
位相制御装置40は,同期ポイント検出点より0.1sec単位で時間設定が行なえ、その設定時間と予め測定された開極時間あるいは投入時間後に制御盤10から第1/第2の切替え遮断器6A/6Bに対する遮断、投入信号の出力制御が可能な装置である。そのため50または60Hzの周波数の電源A/Bの1サイクル周期(60Hzでは1サイクルが16.6ms)から見れば、1サイクル分を166分割した時間精度で遮断、投入信号の出力制御が可能となる。即ち、切替え遮断器によって開極、投入時間に差異があっても、その差異は設定時間の調整により吸収され、電圧零で切替え遮断器の遮断あるいは投入を実行できる。
【0031】
位相制御装置40により電圧零で確実に第1/第2の切替え遮断器6A/6Bの操作を行なうため、位相制御装置40から出力される第1/第2の切替え遮断器6A/6Bの遮断、投入操作出力は、制御盤20から出力される遮断、投入信号出力より時間的に遅れて出力される。即ち、スタート信号により制御盤20より出力されて遮断/投入信号は、位相制御装置40において遮断/投入操作出力によりオン動作した接点(位相制御装置40に内蔵)を通して第1/第2の切替え遮断器6A,6Bに出力される。
【0032】
ここで、位相制御装置40は、スタート信号を入力した後に同期ポイント検出したならば、切替え遮断器の開極時間あるいは投入時間に合わせて遮断或いは投入信号を切替え遮断器に導通させる閉接点の動作時間を設定する。この結果、電源の電圧波形が零クロスする時点で切替え遮断器の開閉素子は開放または閉成し、電圧零に同期して電源を遮断あるいは投入する。
【0033】
第1/第2の切替え遮断器6A/6Bの動作点は、基準とする同期ポイントから位相制御装置40の設定時間と第1/第2の切替え遮断器6A/6Bの開極時間又は投入時間を加えた時間位置となる。
【0034】
図2では最初に遮断する第1の切替え遮断器6Aの遮断位相を電源Aの電圧零とし(即ち中セクション7c電圧零)、0.3秒後に投入する第2の切替え遮断器6Bの投入位相を電源Bの電圧零で行ったものである。この時、開放している第1の切替え遮断器6A極間には電源Aと電源Bの差電圧として−Vaが印加され切替遮断器6Bが投入する電圧は零である為周波数の高いサ−ジ性の電圧は発生しないと考えられる。
【0035】
第1の切替え遮断器6Aの遮断位相を電圧零で固定し、投入側の第2の切替え遮断器6Bの投入位相を変化させると、当然開放側の第1の切替え遮断器6Aに加わる電圧も変化する。例えば図3に示す様にマル1〜マル3の領域を投入位相とした場合には、電源位相差による6A極間電圧は−Va2から+Vb2まで変化すると考えられる。
【0036】
もし電源電圧Va,Vb間の位相差が90°の場合には、最悪の投入位相では開放側の第1の切替え遮断器6Aに加わる電圧は電源電圧の1.4の倍まで上昇する。しかし投入位相を制御すれば、開放側の第1の切替え遮断器6Aに加わる電圧を零に抑制する事が出来る。理論的にはこのように電圧を零にできると考えられる。しかし、第1あるいは第2の切替え遮断器6A,6Bの開閉の際に生じる過電圧は、回路定数により変化する周波数の非常に高いサ−ジ性の電圧も加わり複雑になることが考えられる。
【0037】
そこで、実際に切替え遮断器を使用し位相制御を行い効果を確認した結果を、図4に示す。開放側の第1の切替え遮断器6Aに加わる電圧は、位相制御なしに比べ位相制御を行った場合の方が低下する事が確認された。図4に位相制御有り/無しの場合の開放側の第1の切替え遮断器6Aの極間電圧の比較を示す。第1の切替え遮断器6Aの遮断位相を電圧零付近とし、第2の切替え遮断器6Bの投入位相を0付近とすると第1の切替え遮断器6Aの極間電圧が1/2程度に低下する事が確認された。
【0038】
実施の形態2.
上記実施の形態では、上り線で列車Tが中セクション7cから抜けて行く動作を説明したが、列車Tが中セクション7cに入ってくる場合には、第2の切替え遮断器6Bが列車Tの電流を遮断しても列車Tに搭載された電動機から逆に電圧が供給されるため、供給電源の位相だけでは第1の切替え遮断器6Aを投入する最適な位相は捕捉できない。
【0039】
そのため、図5のように投入側の第1の切替え遮断器6Aに電圧を印加する電源Aと中セクション7cの残留電圧の差分(Va−Vn)を検出する零電圧検出手段としての差分検出装置50を設けて、差分が0となる付近で第1の切替え遮断器6Aを投入すれば、中セクション7c電圧が変化しても過電圧の抑制を行なうことが出来る。
【0040】
この差分検出装置50による切替え遮断器6Aの投入位相制御は第2の切替え遮断器6Bを投入する場合にも有効である。
【0041】
又、上記実施の形態では電源Aと電源Bの位相差が90°で説明したが、位相角が広がる程、第1/第2の切替え遮断器6A,6Bの遮断位相及び投入位相が変化すると過電圧の変化も大きくなる。例えば、図6に示すように電源電圧の位相差180°であれば最大2倍の差電圧が第1或いは第2の切替え遮断器6A,6Bに印加されることになる。そのため、第1或いは第2の切替え遮断器6A,6Bを位相制御して電圧零で遮断、電圧零で投入をすれば、過電圧は0に抑制できる。
【0042】
実施の形態3.
上記実施の形態1、2に使用した第1/第2の切替え遮断器6A/6Bは機械式開閉器である真空遮断器を使用したため、遮断及び投入位相に2ms程度のバラツキがあり、発生する過電圧も変動した。だが、サイリスタ等の半導体スイッチング素子を使用すれば遮断及び投入位相のバラツキがμ秒程度になるため発生する過電圧も抑制され安定した電源切替え動作を実行できると考えられる。
【0043】
実施の形態4.
また、上記実施の形態1、2では位相制御装置40を制御盤20と第1/第2の切替え遮断器6A/6Bの間に直列に接続した。しかし、この場合位相制御装置40の動作に不具合が生じ、位相制御装置40に内蔵された接点が設定された時間通りに閉成しないと制御盤20より遮断、投入信号が遮断時間あるいは投入時間に第1/第2の切替え遮断器6A,6Bに伝わらず、電源A,Bの切替えが不具合が生じることがある。
【0044】
従って、本実施の形態では、図7のように制御盤20と位相制御装置40の図示しない出力接点を並列に接続し、通常は制御盤20よりの遮断、投入指令に先立って、位相制御装置40より交流電圧波形に同期して第1/第2の切替え遮断器6A,6Bに遮断、投入指令を出力する。しかし、位相制御装置40の動作が不能となり、遮断、投入指令の出力が停止しても、制御盤20より遮断、投入信号が出力されるため最低限電源A,Bの切替えを行うことができる。
尚、本発明の主旨を変更しない範囲で制御盤10に対する位相制御装置40の接続を変更しても同様の効果を示す。
また上記実施の形態では制御盤10と位相制御盤40を組み合わせた例で説明したが、切替え遮断器への操作電源を常時位相制御盤40に接続し、位相制御盤40のみの遮断、投入信号で切替え遮断器の操作が可能である。
【0045】
【発明の効果】
この発明によれば、電路における電源切替え区間に第1の電源と第2の電源を交互に切替えて電力を供給する第1および第2の電源切替え手段と、前記電源切替え区間に対する印加電源を前記第1の電源と第2の電源の間で切替えるとき、これら電源の投入位置または遮断位置と各電源電圧波形とを同期させて切替え信号を前記第1および第2の電源切替え手段に出力する切替え信号出力手段とを備えたので、電源電圧波形と同期させ切替え遮断器6A及び6Bの遮断と投入動作を行うので過電圧の発生が最も少なくなり、切替え遮断器の短絡事故を防止すると共に電源に接続される機器への過電圧抑制になるので全体として絶縁破壊による事故を低減することができるという効果がある。また、切替え信号出力手段は、電源投入側の第1あるいは第2の電源切替え手段に電圧を印加する前記第1あるいは第2の電源の電源電圧と前記電源切替え区間における残留電圧との差分を検出する差分検出手段を有して、前記差分のゼロ付近で投入する様前記第1および第2の電源切替え手段に前記切替え信号を出力し、各電源電圧波形と非同期で切替え信号を出力する第2の切替え信号出力手段を備え、この第2の切替え信号出力手段よりの切替え信号を時間差をおいて切替え信号出力手段よりの切替え信号と並列に第1および第2の電源切替え手段に出力するようにしたので、電源投入側の第1あるいは第2の電源切替え手段が過電圧により閃絡して発生する短絡事故を防止することができるという効果がある。
【0046】
この発明によれば、電路における電源切替え区間に第1の電源と第2の電源を交互に切替えて電力を供給する第1および第2の電源切替え手段と、前記電源切替え区間に対する印加電源を前記第1の電源と第2の電源の間で切替えるとき、これら電源の投入位置または遮断位置と各電源電圧波形とを同期させて切替え信号を前記第1および第2の電源切替え手段に出力する切替え信号出力手段とを備え、切替え信号出力手段は、電源遮断側の第1あるいは第2の電源切替え手段に電圧を印加する前記第1あるいは第2の電源の電源電圧と前記電源切替え区間における残留電圧との差分を検出する差分検出手段を有して、前記差分のゼロ付近で遮断する様前記第1および第2の電源切替え手段に前記切替え信号を出力し、各電源電圧波形と非同期で切替え信号を出力する第2の切替え信号出力手段を備え、この第2の切替え信号出力手段よりの切替え信号を時間差をおいて切替え信号出力手段よりの切替え信号と並列に第1および第2の電源切替え手段に出力するようにしたので、電源遮断側の第1あるいは第2の電源切替え手段が過電圧により閃絡して発生する短絡事故を防止することができるという効果がある。
【0048】
この発明によれば、切替え信号出力手段は、電源電圧波形の最小値と最大値間の位相角のずれを位相角幅としたとき、第1あるいは第2の電源切替え手段の投入または遮断位置を前記位相角幅の±50%以内に制御するようにしたので、開放側の電源切替え遮断器に加わる電圧を0に抑制することができるという効果がある。
【0049】
この発明によれば、電路における電源切替え区間に第1の電源と第2の電源を交互に切替えて供給する第1および第2の電源切替え手段と、前記第1あるいは第2の電源の電圧と電源切替え区間における電圧との電位差が0となる時点を検出する電圧検出手段と、電位差時に切替える様信号を前記第1および第2の電源切替え手段に出力する切替え信号出力手段とを備え、各電源電圧波形と非同期で切替え信号を出力する第2の切替え信号出力手段を備え、この第2の切替え信号出力手段よりの切替え信号を時間差をおいて切替え信号出力手段よりの切替え信号と並列に第1および第2の電源切替え手段に出力するので、電源切替え区間の電圧が変化しても過電圧の抑制を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施の形態による切替え遮断器の位相制御システムの構成図である。
【図2】 この発明の一実施の形態の切替え遮断器の動作を示すタイムチャ−トと電圧波形図である。
【図3】 この発明の一実施の形態の最適動作位置を示す電圧波形図である。
【図4】 この発明の一実施の形態の効果を示すヒストグラムである。
【図5】 この発明の他の実施の形態による切替え遮断器の位相制御システムの構成図である。
【図6】 この発明の他の実施の形態における最適動作位置を示す電圧波形図である。
【図7】 この発明の他の実施の形態による切替え遮断器の位相制御システムの接続図である。
【図8】 従来のき電用変電所の主回路及び切替え遮断器と制御盤の接続図である。
【図9】 従来の切替え遮断器の回路を説明するための電気系統図である。
【図10】 従来の切替え遮断器の動作を示すタイムチャ−トと電圧波形図である。
【符号の説明】
6A 第1の切替え器、6B 第2の切替え器、7a 第1のき電線、7b 第2のき電線、7c 中セクション、10 スタート信号発生部、20 制御盤、30 同期信号発生部、40 位相制御装置、50 差分検出部。

Claims (4)

  1. 電路における電源切替え区間に第1の電源と第2の電源を交互に切替えて電力を供給する第1および第2の電源切替え手段と、前記電源切替え区間に対する印加電源を前記第1の電源と第2の電源の間で切替えるとき、これら電源の投入位置または遮断位置と各電源電圧波形とを同期させて切替え信号を前記第1および第2の電源切替え手段に出力する切替え信号出力手段とを備え、
    前記切替え信号出力手段は、電源投入側の第1あるいは第2の電源切替え手段に電圧を印加する前記第1あるいは第2の電源の電源電圧と前記電源切替え区間における残留電圧との差分を検出する差分検出手段を有して、前記差分のゼロ付近で投入する様前記第1および第2の電源切替え手段に前記切替え信号を出力し、
    各電源電圧波形と非同期で切替え信号を出力する第2の切替え信号出力手段を備え、この第2の切替え信号出力手段よりの切替え信号を時間差をおいて切替え信号出力手段よりの切替え信号と並列に第1および第2の電源切替え手段に出力する
    ことを特徴とする切替え遮断器の位相制御システム。
  2. 電路における電源切替え区間に第1の電源と第2の電源を交互に切替えて電力を供給する第1および第2の電源切替え手段と、前記電源切替え区間に対する印加電源を前記第1の電源と第2の電源の間で切替えるとき、これら電源の投入位置または遮断位置と各電源電圧波形とを同期させて切替え信号を前記第1および第2の電源切替え手段に出力する切替え信号出力手段とを備え、
    前記切替え信号出力手段は、電源遮断側の第1あるいは第2の電源切替え手段に電圧を印加する前記第1あるいは第2の電源の電源電圧と前記電源切替え区間における残留電圧との差分を検出する差分検出手段を有して、前記差分のゼロ付近で遮断する様前記第1および第2の電源切替え手段に前記切替え信号を出力し、
    各電源電圧波形と非同期で切替え信号を出力する第2の切替え信号出力手段を備え、この第2の切替え信号出力手段よりの切替え信号を時間差をおいて切替え信号出力手段よりの切替え信号と並列に第1および第2の電源切替え手段に出力する
    ことを特徴とする切替え遮断器の位相制御システム。
  3. 切替え信号出力手段は、電源電圧波形の最小値と最大値間の位相角のずれを位相角幅としたとき、第1あるいは第2の電源切替え手段の投入または遮断位置を前記位相角幅の±50%以内に制御することを特徴とする請求項1または2に記載の切替え遮断器の位相制御システム。
  4. 電路における電源切替え区間に第1の電源と第2の電源を交互に切替えて供給する第1および第2の電源切替え手段と、前記第1あるいは第2の電源の電圧と電源切替え区間における電圧との電位差が0となる時点を検出する零電圧検出手段と、電位差零時に切替える様信号を前記第1および第2の電源切替え手段に出力する切替え信号出力手段とを備え
    各電源電圧波形と非同期で切替え信号を出力する第2の切替え信号出力手段を備え、この第2の切替え信号出力手段よりの切替え信号を時間差をおいて切替え信号出力手段よりの切替え信号と並列に第1および第2の電源切替え手段に出力する
    ことを特徴とする切替え遮断器の位相制御システム。
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