図1は、本発明の一実施例としての背面投写型画像ディスプレイ装置における、側面から見たときの内部構成を示す断面図である。
図1において、1は透過型スクリーン、7Gは緑の投写型ブラウン管、8Gは投写型ブラウン管7G用の投写レンズ、9Gは投写型ブラウン管7Gと投写レンズ8Gとを結合する結合器、10Gは緑の投写光束、11は投写光束10Gを折り返すための反射鏡、12は筐体である。
本実施例における背面投写型画像ディスプレイ装置では、奥行き寸法が、画面サイズが対角35インチのときには35cm程度と、従来の背面投写型画像ディスプレイ装置に比較してきわめて薄く、14形(ブラウン管の対角寸法が約14インチ)の直視型テレビジョン受像機と同程度の奥行き寸法となっており、設置に必要な占有面積が従来より小面積ですむ特長がある。画面サイズが対角40インチのときには、奥行き寸法は40cm程度となり、19形の直視型テレビジョン受像機と同程度の奥行き寸法となる。
さらに、本実施例における背面投写型画像ディスプレイ装置では、画像のコントラスト、ぼけ、スクリーン画面垂直方向の指向特性、画面周辺部の明るさ、外観の高級感が、従来より改善されている。これらについては後述する。
図2は、図1の背面投写型画像ディスプレイ装置における、正面から見たときの内部構成を示す断面図である。
図2において、7R、7G、7Bはそれぞれ赤、緑、青の投写型ブラウン管、8R、8G、8Bはそれぞれ投写型ブラウン管7R、7G、7B用の投写レンズ、9R、9G、9Bは投写型ブラウン管7R、7G、7Bと、投写レンズ8R、8G、8Bとをそれぞれ結合する結合器、11は投写光束10Gを折り返すための反射鏡、12は筐体である。
本実施例における背面投写型画像ディスプレイ装置では、幅、高さが、画面サイズが対角35インチのときにはそれぞれ75cm程度、105cm程度と、29形(ブラウン管の対角寸法が約14インチ)の直視型テレビジョン受像機と同程度の幅と高さを有している。したがって、一般的な家庭において、従来、29形の直視型テレビジョン受像機を設置していたような場所に、本発明による、より画面サイズの大きい35形の背面投写型テレビジョン受像機を設置すれば、設置面積が小さくなってなおかつ大画面を楽しむことができる効果がある。
図3は、図1の背面投写型画像ディスプレイ装置における投写光学系の一部を所定平面上に展開したときの概略展開図であり、すなわち、緑の投写型ブラウン管7Gから透過型スクリーン1に至る光路において、反射鏡11による光路の折り曲げをなくし、緑用投写レンズ8Gの光出射面の中心点と透過型スクリーン1の画面対角線とを含む平面上に展開したときの展開図である。
図3において、1は透過型スクリーン、7Gは緑の投写型ブラウン管、8Gは緑用投写レンズ、9Gは投写型ブラウン管7Gと投写レンズ8Gとを結合する結合器である。
一般に、投写レンズの射出瞳の中心から画像の対角線を見込む角度は画角と呼ばれ、その2分の1の角度は半画角と呼ばれる。しかしながら、投写レンズの射出瞳は有形のものではなく、仮想的なものであるため、上記の画角を実際に測定することは難しい。
通常、投写レンズの射出瞳は、投写レンズの最も透過型スクリーン側に位置するレンズ素子の光出射面から20ないし30mm程度の距離だけ投写型ブラウン管寄りにあり、その距離は、投写レンズから透過型スクリーンに至る投写距離に比較して非常に小さい。このため、本明細書においては、近似的定義として、図3に示すように、緑用投写レンズ8Gの光出射面の中心点から透過型スクリーン1の画面対角線を見込む角度を画角2ωとし、その2分の1を半画角ωとする。
本実施例における背面投写型画像ディスプレイ装置においては、画面サイズが対角35インチのとき、投写レンズの光出射面から透過型スクリーンまでの投写距離は約560mm、透過型スクリーンの対角寸法は約890mmであり、画角2ωは約77°である。従来の背面投写型画像ディスプレイ装置においては、画角がたとえば56°ないし66°程度と小さいことから、画面サイズ対角40インチで奥行きが60ないし70cm程度となり、奥行きを充分に薄くすることができなかったが、本実施例の背面投写型画像ディスプレイ装置では、投写レンズの焦点距離を短くすることにより、画角を大きくし、奥行きを薄くすることを可能としている。投写レンズの短焦点化については後述する。
なお、画角2ωが90°を超えるあたりから徐々に、背面投写型画像デイスプレイ装置の構成を、投写レンズから透過型スクリーンに至る光路を反射鏡11により折り曲げて図1に示したような構成とすることが難しくなり、おおよそ100°を超えると、そのような構成とすることがついには不可能となり、そのため、背面投写型画像デイスプレイ装置の奥行き寸法を薄くすることができなくなる。
次に、本実施例における背面投写型画像ディスプレイ装置に用いる透過型スクリーンについて説明する。
図4は、図1の背面投写型画像ディスプレイ装置における透過型スクリーン1の要部を示す斜視図である。
図4において、2はフレネルレンズシート、4はレンチキュラーレンズシートである。フレネルレンズシート2、レンチキュラーレンズシート4はそれぞれ端部(図示せず)で相互に固定されている。20、40はそれぞれフレネルレンズシート2、レンチキュラーレンズシート4の基材であり、いずれもほぼ透明な熱可塑性樹脂材料よりなる。
21はフレネルレンズシート2の光入射面であり、スクリーン画面水平方向を長手方向とする横長レンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数並べた形状となっている。22はフレネルレンズシート2の光出射面であり、フレネル凸レンズ形状になっている。
41はレンチキュラーレンズシート4の光入射面であり、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする第一の縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に連続して複数並べた形状となっている。42はレンチキュラーレンズシート4の光出射面であり、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする第二の縦長レンチキュラーレンズを光入射面41の第一の縦長レンチキュラーレンズにほぼ対向してスクリーン画面水平方向に連続して複数並べた形状となっている。さらに第二のレンチキュラーレンズ相互間の境界部分には、凸形突起部43が設けられ、その上に有限幅の光吸収帯16が設けられている。
本実施例が、図26に示した従来の透過型スクリーンと相違する点は、図4に示すように、フレネルレンズシート2の光入射面21に横長レンチキュラーレンズを設けた点、フレネルレンズシート2のシート厚さがレンチキュラーレンズシート4と同程度の厚さに薄くなった点、レンチキュラーレンズシート4の基材40の中に光拡散材の微粒子が分散されていない点、さらに、レンチキュラーレンズシート4の光入射面41の第一の縦長レンチキュラーレンズと光出射面42の第二の縦長レンチキュラーレンズの形状が従来のそれと異なる点の4点にある。
これらのうち、レンチキュラーレンズシート4の基材40の中に光拡散材が分散されていないという点は、背面投写型画像ディスプレイ装置の画像のコントラストの向上と、画像のぼけの低減に効果がある。また、フレネルレンズシート2のシート厚さが薄いという点は、同じく画像のぼけの低減に効果がある。
フレネルレンズシート2の光入射面21の横長レンチキュラーレンズ、及び、レンチキュラーレンズシート4の光入射面41の第一の縦長レンチキュラーレンズと光出射面42の第二の縦長レンチキュラーレンズについては、新規のレンズ形状の設計により、透過型スクリーンとしての指向特性を、裾の広い指向特性とすることができる。詳細については後述する。
次に、図4に示した透過型スクリーン1を構成するフレネルレンズシート2、レンチキュラーレンズシート4について、まず、フレネルレンズシート2から詳細に説明する。
フレネルレンズシート2の光出射面22に設けられているフレネル凸レンズは、従来の透過型スクリーンのフレネルレンズシートの場合と同様に、光入射面21全体に入射する赤、緑、青の投写画像光の光束を、それぞれの色ごとにほぼ平行な光束に変換し、レンチキュラーレンズシート4に入射させる機能を有している。以下、これについて説明する。
図5は、図1の背面投写型画像ディスプレイ装置における投写光学系を水平面上に展開したときの概略展開図である。
図5において、1は透過型スクリーン、7R、7G、7Bはそれぞれ赤、緑、青の投写型ブラウン管、8R、8G、8Bはそれぞれ投写型ブラウン管7R、7G、7B用の投写レンズ、10R、10G、10Bはそれぞれ赤、緑、青の投写光束、13R、13G、13Bはそれぞれ投写レンズ8R、8G、8Bの光軸であり、透過型スクリーン1の中心付近の一点S0において、光軸集中角θで交わっている。図1においては、投写光束10Gを折り返すための反射鏡11が背面投写型画像ディスプレイ装置の構成要素として描かれているが、図5ではこの反射鏡11を省略した展開図となっている。
図5において、投写光束10R、10G、10Bは広がりながら透過型スクリーン1に入射している。これに伴い、透過型スクリーン1上の画像の各画素においては、特定の1色、たとえば赤の光線について見ると、各画素の主光線は平行ではなく、透過型スクリーン1の中心画素の主光線に対し互いに遠ざかる方向で透過型スクリーン1に入射する。このとき、透過型スクリーン1上の各画素については、それぞれの画素の主光線の方向が最も光の強度が強い方向となるため、一定位置にいる観視者にとっては、画像の一部分のみ明るく、その周囲は非常に暗く見えることになる。
これに対し、透過型スクリーン1において、フレネルレンズシート2は、従来の透過型スクリーンのフレネルレンズシートの場合と同様に、光入射面21全体に入射する画像光の光束が、赤、緑、青の色ごとにほぼ平行光束となるように、光出射面22のフレネル凸レンズにより変換し、レンチキュラーレンズシート4に入射させる機能を有しており、透過型スクリーン1上の画面の明るさの分布を改善できる効果がある。
ただし、このとき、前述のように、図5において、緑の光軸13Gは、赤の光軸13R、青の光軸13Bと光軸集中角θで交わっている。これに伴い、透過型スクリーン1上の各画素においては、赤、緑、青の各主光線は互いに異なる角度でフレネルレンズシート2に入射し、異なる角度でフレネルレンズシート2から出射する。このため、赤、緑、青の光線のレンチキュラーレンズシート4への入射角も互いに異なる角度となる。
赤、緑、青の各色の投写光束がレンチキュラーレンズシート4によりスクリーン画面水平方向に拡散されるとき、各画素ごとに各色の主光線の方向が最も明るい方向となるため、観視者が画像を見る水平方向の位置によって、赤、緑、青の3原色の色のバランスが変化し、画像の色が変化して見える。この現象は「カラーシフト」と呼ばれている。
一方、フレネルレンズシート2の光入射面21には、スクリーン画面水平方向を長手方向とする横長レンチキュラーレンズが設けられている。この横長レンチキュラーレンズは、入射光束をスクリーン画面垂直方向に拡散する機能を有している。
図6は、図4の透過型スクリーン1の垂直断面を示す断面図である。
図6において、14は入射光束である。その他、図4と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
図6に示すように、入射光束14は、光入射面21の横長レンチキュラーレンズから入射するとき、同じ走査線、または同じ画素であっても、光入射面21への入射位置の違いにより入射角が違ってくるため、異なる角度に屈折し、スクリーン画面垂直方向に拡散する。
次に、レンチキュラーレンズシート4について説明する。
図4において、レンチキュラーレンズシート4の光入射面41に設けられている第一の縦長レンチキュラーレンズは、フレネルレンズシート2から出射した投写画像光の光束を、各画素ごとにスクリーン画面水平方向に拡散させ、画像観視側に出射させる機能を有している。
この第一の縦長レンチキュラーレンズは、楕円形状に近い非球面の断面形状を有する柱面の一部を複数連続して配置した形状である。前述のフレネルレンズシート2の光入射面21の横長レンチキュラーレンズの場合と同様に、入射光束は、第一の縦長レンチキュラーレンズへ入射するとき、同じ走査線、または同じ画素であっても、光入射面41への入射位置の違いにより入射角が違ってくるため、異なる角度に屈折し、光出射面42に設けられている第二の縦長レンチキュラーレンズのレンズ面の前後の近傍でほぼ集束したのち、スクリーン画面水平方向に拡散する。
レンチキュラーレンズシート4の光出射面42に設けられている第二の縦長レンチキュラーレンズは、第一の縦長レンチキュラーレンズの断面形状とほぼ対称な断面形状を有する柱面となっている。この第二の縦長レンチキュラーレンズは、赤、緑、青の入射光束に対し、これらの各色の出射光束の指向特性を相互にほぼ平行にする機能を有しており、後述のカラーシフトを大幅に低減することができる効果がある。
一方、第一の縦長レンチキュラーレンズへの入射光束は、第二の縦長レンチキュラーレンズ付近で一旦集束するため、光出射面42においては、光束の通らない部分がある。このため、その部分付近には凸形突起部43を設け、その上には有限幅の光吸収帯16を設けている。この光吸収帯16は、照明光などの外光が入射した場合、その外光の一部を反射せず吸収する機能を有している。
また、本実施例においては、前述のように、フレネルレンズシート2の光入射面21に設けられた横長レンチキュラーレンズによって、スクリーン画面垂直方向の光の拡散を行う構成としているので、レンチキュラーレンズシート4の基材40の中には、従来の透過型スクリーンのレンチキュラーレンズシートの場合と異なって、光拡散材の微粒子が分散されていない。これによって画像のコントラストが良好になり、さらに、画像のぼけが低減できる。詳細について以下に述べる。
図6に示したように、フレネルレンズシート2のシート厚さは、レンチキュラーレンズシート4のシート厚さと同程度の厚さであり、したがって、フレネルレンズシート2の光入射面21の横長レンチキュラーレンズと、レンチキュラーレンズシート4の光入射面41の縦長レンチキュラーレンズとは、相互に近接するような配置となっている。
このとき、フレネルレンズシート2への入射光束14は、光入射面21の横長レンチキュラーレンズによりスクリーン画面垂直方向に拡散されたのち、ただちにレンチキュラーレンズシート4の光入射面41の縦長レンチキュラーレンズにおいてスクリーン画面水平方向に拡散される。すなわち、入射光束14のスクリーン画面水平方向の光拡散の開始点とスクリーン画面垂直方向の光拡散の開始点とが近接している。
さらに、前述のように、図26に示した従来の透過型スクリーン1では、レンチキュラーレンズシート4の基材40中に光拡散材が微粒子として分散されているために、レンチキュラーレンズシート4の光入射面41への入射光線が光出射面42に至る前に光拡散材により散乱されてフレアや迷光を生じていたのに対し、図4の透過型スクリーンでは、レンチキュラーレンズシート4の基材40中に光拡散材を含まないため、レンチキュラーレンズシート4の光入射面41への入射光線が光出射面42に至る前に光拡散材により散乱されてフレアや迷光を生じることがない。この結果、画像観視側から見たときの入射光束14に対する出射光束のスクリーン画面垂直方向の幅dは、概ねフレネルレンズシート2の光出射面22上に現れる光束の幅で認識され、図27に示した従来の透過型スクリーンによる光束の幅dより小さくなり、画像がぼやけることがない。
また一方、上記のように、図4の透過型スクリーンでは、レンチキュラーレンズシート4の光入射面41への入射光線が光出射面42に至る前に光拡散材により散乱されてフレアや迷光を生じることがないため、従来の透過型スクリーンに比較して画像のコントラスト、及び明るさが向上する。さらに、照明光などの外光があるとき、光出射面42に入射した外光が光拡散材により散乱されたりすることもないので、従来の透過型スクリーンに比較して飛躍的に画像のコントラストが向上し、明るい場所でも、きれがよく、見やすい画像となる。
次に、透過型スクリーン1の指向特性について説明する。
図26に示した従来の透過型スクリーン1のレンチキュラーレンズシート4においては、前述のように、投写画像光は、スクリーン画面垂直方向には、レンチキュラーレンズシート4の基材40中に分散されている光拡散材によって拡散され、裾を引いた指向特性となっていた。また、スクリーン画面水平方向には、光入射面41の第一の縦長レンチキュラーレンズにより拡散されるほか、光拡散材の微粒子によっても、わずかながらさらに拡散され、裾を引いた指向特性となっていた。
これに対し、図4の透過型スクリーン1のレンチキュラーレンズシート4の基材40の中には、前述のように、光拡散材が分散されていないため、フレネルレンズシート2の光入射面21の横長レンチキュラーレンズ、及びレンチキュラーレンズシート4の光入射面41の第一の縦長レンチキュラーレンズ、光出射面の42の第二の縦長レンチキュラーレンズの形状を、それぞれ単純な円柱状や楕円柱状にすると、スクリーン画面垂直方向、またはスクリーン画面水平方向の指向特性において、裾を引かずカットオフを生じ、この結果、ある角度範囲を超えると、投写画像光がなくなり、観視者には画像が見えなくなってしまう。
このため、本実施例においては、横長レンチキュラーレンズ、及び第一の縦長レンチキュラーレンズ、第二の縦長レンチキュラーレンズの形状を、光拡散材がなくても裾を引くような広い指向特性が得られるような非球面形状にしておく必要がある。その具体例を以下に説明する。
図7は、一般的なレンズの非球面形状を定義するための座標系を示す説明図である。
図7において、レンズの光軸方向をZ軸とし、光束の進む方向を正の方向とする。Z軸に垂直な半径方向の軸をr軸とし、Z軸からの径方向距離をrとする。このとき、レンズの面形状Z(r)を数1で定義する。
数1において、RDは曲率半径を表し、CC、AE、AF、AG、AHは非球面係数である。数1ではrの10次の項までしか示していないが、これに限定されるわけではなく、12次以上の偶数次の項についても同様に設定してもよい。そのような場合にも、光軸に対して対称なレンズ面を得ることができる。
表1に、本実施例におけるフレネルレンズシート2の光入射面21の横長レンチキュラーレンズと光出射面22のフレネルレンズの形状の一具体例として、数1における曲率半径と非球面係数の各値を示す。
図8は、表1により得られた横長レンチキュラーレンズの形状を示す断面図である。
図9は、表1により得られた横長レンチキュラーレンズの形状を用いた場合の、透過型スクリーン1のスクリーン画面垂直方向の指向特性(垂直指向特性)を示す特性図である。
図9に示すように、スクリーン画面垂直方向には、画面正面方向から上下に±68°まで画像が観視できる。また、画面正面方向の輝度に対し、輝度が50%となる方向は、画面正面方向から上下に±10°の方向であり、実用上充分な性能を得ている。
表2に、本実施例におけるレンチキュラーレンズシート4の光入射面41の第一の縦長レンチキュラーレンズと光出射面42の第二の縦長レンチキュラーレンズの形状の一具体例として、数1における曲率半径と非球面係数の各値を示す。
図10は、表2により得られた第一の縦長レンチキュラーレンズと第二の縦長レンチキュラーレンズの形状を示す断面図である。
図11は、表2により得られた第一の縦長レンチキュラーレンズと第二の縦長レンチキュラーレンズの形状を用いた場合の、透過型スクリーン1のスクリーン画面水平方向の指向特性(水平指向特性)を示す特性図である。
図11に示すように、スクリーン画面水平方向には、画面正面方向から左右に±67°まで画像が観視できる。また、画面正面方向の輝度に対し、輝度が50%となる方向は、画面正面方向から左右に±42°の方向であり、実用上充分な性能を得ている。
上記の透過型スクリーン1においては、フレネルレンズシート2、レンチキュラーレンズシート4のいずれも光拡散材を含有せず、無色透明となっている構成としたが、画像のコントラストをさらに向上するためには、レンチキュラーレンズシート4を半透明に着色する構成とするのが好ましい。
この場合、画像発生源側から画像観視側に至る投写画像光は、レンチキュラーレンズシート4を1回だけ透過するため、光量がレンチキュラーレンズシート4の透過率に比例して減衰するのに対し、照明光などの外光が透過型スクリーン1で反射されて画像観視側に至るときは、レンチキュラーレンズシート4の最も画像観視側の面となる光出射面42で反射される光を除き、レンチキュラーレンズシート4を少なくとも1往復通るため、光量がレンチキュラーレンズシート4の透過率の2乗に比例して減衰する。これにより、投写画像光より外光の方が、多く吸収されて損失光の比率が大きくなり、照明光などの外光があるときの画像のコントラストが向上する効果がある。
以上述べたように、図4の透過型スクリーン1においては、レンチキュラーレンズシート4の基材40の中の光拡散材をなくし、フレネルレンズシート2のシート厚さをレンチキュラーレンズシート4と同程度に薄くすることにより、画像のコントラストを向上でき、また、画像のぼけを低減でき、さらに、画像の明るさを向上させると同時に、スクリーン画面垂直方向の指向特性を拡大できる効果がある。
次に、背面投写型画像ディスプレイ装置の外観の高級感と透過型スクリーン1との関係について述べる。
図12は、透過型スクリーン1のレンチキュラーレンズシート4の光吸収帯16における外光の反射強度の分布を従来技術と本発明とで比較して示した概念図であり、図12(a)は図26に示した従来の背面投写型画像ディスプレイ装置における透過型スクリーン1について、図12(b)は図4に示した本実施例における透過型スクリーン1について、それぞれ示している。
前述のように、図26に示した従来の背面投写型画像ディスプレイ装置における透過型スクリーン1においては、レンチキュラーレンズシート4の光出射面42の隣り合うレンチキュラーレンズ相互の間には、凸形突起部43が設けられ、この凸形突起部43上に光吸収帯(ブラックストライプ)16が、艶消し黒色の着色材層として積層されている。また、レンチキュラーレンズシート4は光拡散材を有している。このため、透過型スクリーン1の画像観視側の表面が、第二の縦長レンチキュラーレンズ面、光吸収帯16とも光の正反射がなく、拡散反射のみとなる。ただし、照明光などの外光60があるとき、外光60の半分程度は光吸収帯16に入射し、光吸収帯16への入射光は、図12(a)に示したように、ごく一部が拡散反射されるほかは、ほとんどが光吸収帯16に吸収される。このため、画像を何も映出していないときには、光沢がなく全体に墨を塗ったような艶消しの薄い黒色に見え、背面投写型画像ディスプレイ装置の外観の高級感を落している。
これに対し、図4に示した本実施例における透過型スクリーン1においては、レンチキュラーレンズシート4は光拡散材を有していないことから、第二の縦長レンチキュラーレンズ面を鏡面仕上げとし、さらに光吸収帯16を艶のある黒色の着色材層として積層すれば、透過型スクリーン1の観視側表面において外光60が反射するときに、図12(b)に光吸収帯16における例として示したように、正反射成分61を生じて光沢がつき、背面投写型画像ディスプレイ装置の外観の高級感が増す効果がある。
次に、本実施例における背面投写型画像ディスプレイ装置に用いる投写レンズについて説明する。
図13は、図1の背面投写型画像ディスプレイ装置における投写型ブラウン管と投写レンズの結合部の断面を示す断面図である。
図13において、7Gは緑の投写型ブラウン管、8Gは投写型ブラウン管7G用の投写レンズ、9Gは投写型ブラウン管7Gと投写レンズ8Gを結合する結合器、18はレンズ鏡筒、81、82、83、84、85は投写レンズ8Gのそれぞれ第一、第二、第三、第四、第五のレンズ素子である。
第一のレンズ素子81は、投写型ブラウン管7G側が凸面でかつ透過型スクリーン側が凹面となる凹レンズとなっており、このレンズ素子81と投写型ブラウン管7Gとの間の空間に液体冷媒17が封入されている。投写型ブラウン管7Gの液体冷媒17に接する部分は通常ガラスからなり、レンズ素子81はガラス、またはプラスチックからなり、液体冷媒17としてはエチレングリコール、水、グリセリンなど、もしくはこれらの混合液が用いられる。
レンズ素子83は、投写レンズ8G全体の拡大作用のうちの主たる拡大作用を分担しており、材料としては温度変動と湿度変動に対して変形が少ない観点からガラスを用いるのが好ましいが、これに限定されるものではない。このレンズ素子83の直径をなるべく大きくし、投写レンズの実効F値がたとえば1.2程度となるように設計することにより、背面投写型画像ディスプレイ装置の画像の明るさを明るくすることができる。
レンズ素子82、84、85は主として収差補正作用を有しており、材料としてはガラス、プラスチックのいずれでもよい。ただし、レンズ素子84は、光の波長の変化に対して屈折率が変化する特性(分散)が、他のレンズ素子の材料と異なる材料を用いて、色収差補正を行うものとする。たとえば、レンズ素子83としては分散が小さくアッベ数の大きい材料のガラスを用い、レンズ素子81、82、85としてはメタクリル樹脂などの分散が小さくアッベ数の大きい材料を用い、レンズ素子84としてはポリカーボネート樹脂もしくはスチロール樹脂などの分散が大きくアッベ数の小さい材料を用いればよい。このとき、レンズ素子82、84、85をそれぞれ両面とも非球面として設計することにより、きわめてフォーカス特性がよく、画像のぼけの少ない投写レンズが実現できる。
上記のレンズ素子のうち、レンズ素子82の直径をなるべく大きくすれば、背面投写型画像ディスプレイ装置の画像の画面周辺部の明るさを明るくすることができる。
一方、前述のように、背面投写型画像ディスプレイ装置の奥行き寸法を薄くするために、投写光学系の画角を大きくするには、投写レンズ8Gの焦点距離を短くするようなレンズ設計が必須である。そのためには、投写レンズの全長を短くし、たとえば、投写型ブラウン管7Gの蛍光面における対角4.5インチ程度の画面を透過型スクリーン上で画面サイズ35インチ程度に拡大投写するような場合、投写型ブラウン管7Gの蛍光面から投写レンズ8Gのレンズ素子85の光出射面までの距離が130mm程度とするのが好ましい。
さて、液体冷媒17は、投写型ブラウン管7Gが発生した熱を、対流熱伝達により効率よく放熱する機能を有するとともに、画像のコントラスト向上のために有効であることが従来から知られている。
すなわち、液体冷媒17がなく、投写型ブラウン管7Gとレンズ素子81との間に単に空気があるに過ぎない場合は、投写型ブラウン管7Gから出射しレンズ素子81に至る画像光の一部が、投写型ブラウン管7Gと液体冷媒17との境界面、及び液体冷媒17とレンズ素子81との境界面における光の反射損失により、投写光学系内の迷光となり、この迷光が背面投写型画像ディスプレイ装置の投写光学系内、もしくは筐体内を往来した末に透過型スクリーンに至ると、画像のコントラストとして良好なコントラストは得られない。
これに対し、液体冷媒17がある場合は、投写型ブラウン管7G、液体冷媒17、レンズ素子81の屈折率がいずれも1.5前後の近い値となるため、投写型ブラウン管7Gから出射しレンズ素子81に至る画像光は、投写型ブラウン管7Gと液体冷媒17との境界面、及び液体冷媒17とレンズ素子81との境界面における光の反射損失がきわめて少なく、良好な画像のコントラストが得られる。このとき、投写レンズ8Gの光軸上において、投写型ブラウン管7Gと液体冷媒17との境界面から、液体冷媒17とレンズ素子81との境界面に至る距離を長くとることにより、画像のコントラストの向上に効果がある。たとえば、投写型ブラウン管7Gの蛍光面における対角4.5インチ程度の画面を透過型スクリーン上で画面サイズ35インチ程度に拡大投写するような場合、投写レンズ8G全体の直径が115mm、投写型ブラウン管7Gの蛍光面から投写レンズ8Gのレンズ素子85の光出射面までの距離が130mm程度のとき、おおよそ9mm以上の距離とするのが好ましい。
また、投写レンズ8Gを構成する各レンズ素子の表面に誘電体多層膜からなる反射防止膜を成膜したり、前記の結合器9Gの内面を艶消しの黒色に着色したり、レンズ鏡筒18の内面を同じく艶消しの黒色に着色したりすることが、いずれも画像のコントラスト向上のために有効であることが従来から知られており、図13に示した投写レンズ8G、結合器9Gについてもこれらの処理をするのが好ましい。
なお、投写型ブラウン管7Gの蛍光面は、図13では投写レンズ8G側に凹面をなしているが、平面であってもよい。
次に、本実施例における背面投写型画像ディスプレイ装置に用いる反射鏡について説明する。
図14は、背面投写型画像ディスプレイ装置における反射鏡11の断面を本発明と従来技術とで比較して示した断面図であり、図14(a)は図1に示した本実施例における反射鏡11の断面を、図14(b)は従来の背面投写型画像ディスプレイ装置における反射鏡11の断面を、それぞれ示している。
ここで、図14(a)に示す反射鏡11は、反射鏡11の基材の表面のうち、投写レンズ8G及び透過型スクリーン1に対向する側の表面上に光反射性光学薄膜を成膜された構成の反射鏡であり、図14(b)に示す反射鏡11は、反射鏡11の基材の表面のうち、投写レンズ8G及び透過型スクリーン1に対向する側の反対側の表面上に光反射性光学薄膜を成膜された構成の反射鏡である。
図14(a)及び図14(b)において、11Bは反射鏡11の基材であり、通常はガラス板よりなる。また、14′は入射光線、19は光反射性光学薄膜である。
図14(b)に示す反射鏡11においては、入射光線14′は反射鏡11の基材11B内で多重反射を起こすことから、反射光が広がってしまい、この結果、背面投写型画像ディスプレイ装置の透過型スクリーン1上で画像のぼけを生じる。
これに対し、図14(a)に示す反射鏡11においては、入射光線14′は反射鏡11の投写レンズ8G及び透過型スクリーン1に対向する側の表面で反射するので、反射光が広がることがなく、透過型スクリーン1上で画像のぼけを生じることがない。
以上の説明から明らかなように、本実施例における背面投写型画像ディスプレイ装置において、図4に示した透過型スクリーン1、図13に示した投写レンズ、図14(a)に示した反射鏡11を用いることにより、画像のコントラストが、照明光などの外光があるときでもきわめて良好で、画像全体が白味を帯びたりすることがなく、また、画像にぼけがなく、スクリーン画面垂直方向の指向特性が広く、画面周辺部の明るさが暗くならないようにすることができ、さらに、装置の奥行き寸法を短くでき、外観に高級感を与えることができる。
なお、図4に示した透過型スクリーン1は、レンチキュラーレンズシート4に光拡散材を有していないため、照明光などの外光が透過型スクリーン1を透過して筐体12内に入り込む場合には、光拡散材で散乱されずに強い指向性で筐体12内を照射すると考えられる。このとき、筐体12内で不要な反射光を生じると、画像のコントラストの低下要因となるので、筐体12内は黒く着色して反射防止を図る必要がある。
上記の背面投写型画像ディスプレイ装置においては、画面中心の画像を最も明るく観視し得る方向を基準方向としたとき、画面中心の輝度が、基準方向に対し水平方向に42°の方向、基準方向に対し水平方向に65°の方向、基準方向に対し垂直方向に10°の方向、基準方向に対し垂直方向に25°の方向の各方向において、それぞれ、前記基準方向における輝度の、50%以上、10%以上、50%以上、10%以上となる指向特性とすることができると同時に、照明光などの外光があるときの画像のコントラスト比として70以上のコントラスト比を得ることができ、さらに、画像の画面周辺部の相対光量として30%以上の相対光量を得ることができる。
次に、本実施例における背面投写型画像ディスプレイ装置の指向特性、画像のコントラスト比、画像の画面周辺部の相対光量、画像のぼけの程度、透過型スクリーンの光沢度の各測定方法について、以下説明する。
なお、これらのうち、透過型スクリーンの光沢度の測定については、日本工業規格「鏡面光沢度測定方法」(JIS Z8741−1983、昭和58年改正)に基づいて行えばよいため、その説明は省略する。
まず、指向特性の測定方法について説明する。
図15は、背面投写型画像ディスプレイ装置のスクリーン画面垂直方向の指向特性(垂直指向特性)を測定するときの、測定対象としての背面投写型画像ディスプレイ装置と、測定器との位置関係を示す説明図である。
図15に示すように、背面投写型画像ディスプレイ装置100は堅固な床面上に正立させる。測定器たる輝度計110は、三脚(図示せず)などの上に、雲台、または垂直方向に回動可能な微動台を介して固定し、背面投写型画像ディスプレイ装置100の透過型スクリーンの画面中心の法線方向から垂直方向に観視角度θをなす方向の、画面中心から距離Dの位置に輝度計110の最外レンズ面が位置するように配置する。
一方、背面投写型画像ディスプレイ装置100においては、指向特性を測定するときの画像パターンとして、画面全面に白を映出した画像パターンを使用する。この画像パターンは、日本工業規格「テレビジョン受信機試験方法」(JISC6101−1988、昭和63年改正)第2章(8)に記載されている全白の試験映像信号による。
指向特性の測定にあたっては、測定対象の画像ディスプレイ装置100のコントラスト調整器と明るさ調整器をいずれも最大に調節して、スクリーン画面中心の明るさを測定するものとする。
上記の配置において、D=3(m)とし、観視角度θを変化させて輝度計110により画面中心の輝度を測定する。輝度計110としては米国フォトリサーチ(Photo Research)社製プリチャード(Pritchard)1980B形分光放射計、もしくはその同等品を用い、視感度フィルタを装着し、視野角1°で測定するものとする。
この場合、上記とは逆に、輝度計110を定位置に固定し、背面投写型画像ディスプレイ装置100をスクリーン画面中心のまわりに回転させることにより、相対的位置関係を上記の測定方法と同じにすることができるので、そのような方法で測定してもかまわない。
なお、必要に応じて、測定対象の背面投写型画像ディスプレイ装置100の赤、緑、青の投写レンズの内の2本に、投写光束を遮蔽する遮蔽板をかぶせ、赤、緑、青の各色ごとに指向特性を測定してもかまわない。
図16は、背面投写型画像ディスプレイ装置のスクリーン画面水平方向の指向特性(水平指向特性)を測定するときの、測定対象としての背面投写型画像ディスプレイ装置と、測定器との位置関係を示す説明図である。
前述のスクリーン画面垂直方向の指向特性の測定との違いは、測定器たる輝度計110の配置位置のみである。すなわち、背面投写型画像ディスプレイ装置100の透過型スクリーンの画面中心の法線方向から水平方向に観視角度θをなす方向の、画面中心から距離Dの位置に輝度計110の最外レンズ面が位置するように配置する。上記の配置において、D=3(m)とし、観視角度θを変化させて輝度計110により画面中心の輝度を測定する。
この場合、上記とは逆に、輝度計110を定位置に固定し、背面投写型画像ディスプレイ装置100をスクリーン画面中心のまわりに回転させることにより、相対的位置関係を上記の測定方法と同じにすることができるので、そのような方法で測定してもかまわない。
その他の測定条件は、スクリーン画面垂直方向の指向特性の測定の場合と同じである。
次に、画像のコントラスト比の測定方法について説明する。図17は、照明下での画像のコントラスト比を測定するときの、測定対象としての背面投写型画像ディスプレイ装置と、測定器と、照明との位置関係を示す説明図である。
図17に示すように、背面投写型画像ディスプレイ装置100は堅固な床面上に正立させる。測定器たる輝度計110は、三脚などの上に、雲台、または水平方向に回動可能な微動台を介して固定し、背面投写型画像ディスプレイ装置100の透過型スクリーンの画面中心の前方の距離Dの位置に輝度計110の最外レンズ面が位置するように配置する。また、照明120は、スクリーン画面中心の法線方向から上方に角度θをなす方向に一般用直管形白色蛍光灯を配置する。このとき、蛍光灯は、蛍光灯の長手方向が、背面投写型画像ディスプレイ装置100の画面水平方向に平行な方向となるよう、かつ直管形蛍光灯の長手方向中心の真下にスクリーン画面中心の法線があるように配置する。
上記の配置において、D=3(m)、θ=45(°)とし、また、蛍光灯の明るさは、スクリーン画面中心における法線方向の照度Iが、100(lx)となるように調節する。この照度の測定は、(株)トプコン製デジタル照度計IM−3、もしくは、ミノルタカメラ(株)製デジタル照度計T−1またはT−1Hにより行う。輝度計110としては米国フォトリサーチ(Photo Research)社製プリチャード(Pritchard)1980B形分光放射計、もしくはその同等品を用い、視感度フィルタを装着し、視野角1°で測定するものとする。
図18は、背面投写型画像ディスプレイ装置の画像のコントラスト比を測定するための画像パターンの一例を示す説明図である。
この画像パターンは、横幅Wの画面を5等分し、3本の白しまと2本の黒しまを映出したパターンであり、日本工業規格「テレビジョン受信機試験方法」(JISC6101−1971、昭和46年改正)第6章6.1節6.1.3項(2)に記載されている大面積最大コントラストの測定用パターンに基づくものである。
コントラスト比の測定にあたっては、上記の画像パターンの白しまの部分が最も明るくなるように測定対象の画像ディスプレイ装置100のコントラスト調整器を調節し、さらに、黒しまの部分が発光しないように画像ディスプレイ装置100の明るさ調整器を調節したのち、黒しまの中央の点P1、P3、及び白しまの中央の点P2の明るさを、前記の雲台、または微動台により輝度計110を水平方向に回転させて測定するものとする。
点P1、P2、P3の明るさをL1、L2、L3とすると、コントラスト比aは、数2で表される。
次に、画像の画面周辺部の相対光量の測定方法について説明する。
図19は、背面投写型画像ディスプレイ装置の画面周辺部の相対光量を測定するときの、測定対象としての背面投写型画像ディスプレイ装置と、測定器との位置関係を示す説明図である。
図19に示すように、背面投写型画像ディスプレイ装置100は堅固な床面上に正立させる。測定器たる輝度計110は、三脚などの上に、雲台、または水平方向及び垂直方向に回動可能な微動台を介して固定し、背面投写型画像ディスプレイ装置100の透過型スクリーンの画面中心の前方の距離Dの位置に輝度計110の最外レンズ面が位置するように配置する。
上記の配置において、D=3(m)とし、輝度計110により後述の画面上の測定点の輝度を測定する。輝度計110としては米国フォトリサーチ(Photo Research)社製プリチャード(Pritchard)1980B形分光放射計、もしくはその同等品を用い、視感度フィルタを装着し、視野角1°で測定するものとする。
一方、背面投写型画像ディスプレイ装置100においては、画面周辺部の相対光量を測定するときの画像パターンとして、前述の指向特性の測定と同じく、画面全面に白を映出した画像パターンを使用し、測定対象の画像ディスプレイ装置100のコントラスト調整器と明るさ調整器をいずれも最大に調節して測定する。
図20は、背面投写型画像ディスプレイ装置の画面周辺部の相対光量を測定するときの、画面における測定点を示す説明図である。
図20に示すように、スクリーン画面対角方向の相対像高0.9の点Q1、Q2、Q3、Q4と、画面中心点Q0を測定点とする。相対像高とは、画面中心からの距離を、画面対角長の半分を1として規準化した値を言う。上記の測定点Q1、Q2、Q3、Q4の輝度を、前記の雲台、または微動台により輝度計110を水平方向及び垂直方向に回転させて測定し、画面中心点Q0の輝度に対する比率を求めるものとする。
なお、必要に応じて、測定対象の背面投写型画像ディスプレイ装置100の赤、緑、青の投写レンズの内の2本に、投写光束を遮蔽する遮蔽板をかぶせ、赤、緑、青の各色ごとに画面周辺部の相対光量を測定してもかまわない。
次に、画像のぼけの程度の測定方法について説明する。なお、ここでは、画像のぼけの程度を、画像のフォーカス振幅伝達特性(以下、フォーカスMTF〔Modulation Transfer Function〕特性という)として測定する場合について説明する。
測定は、背面投写型画像ディスプレイ装置100の画面上に、緑色の走査線を1本だけ映出し、スクリーン画面上の画面垂直方向の光出力分布を測定し、その結果をフーリエ変換することにより行うものとする。この測定は、投写型ブラウン管、投写レンズ、反射鏡、透過型スクリーンを総合した特性の測定に適する。
図21は、背面投写型画像ディスプレイ装置の画像のフォーカスMTF特性を測定するときの、測定対象としての背面投写型画像ディスプレイ装置と、測定器との位置関係を示す説明図である。
図21に示すように、背面投写型画像ディスプレイ装置100は堅固な床面上に正立させる。測定対象の背面投写型画像ディスプレイ装置100の赤と青の投写レンズには、投写光束を遮蔽する遮蔽板をかぶせ、緑色の走査線を1本だけ映出する。このとき、試験映像信号は白色の走査線を1本だけ映出するような信号とする。測定器たる輝度計110は、大型XYZステージなどの上に、輝度計110のレンズの光軸が透過型スクリーンの法線方向に平行になるように固定し、透過型スクリーンの画像観視側に配置する。
輝度計110としては、米国フォトリサーチ(Photo Research)社製プリチャード(Pritchard)1980B形分光放射計を用い、視感度フィルタを装着し、同社製マイクロスキャナー(Microscanner)SC−80A形微小走査装置を取り付け、視野角0.2°で、画面垂直方向に走査しながら光出力分布を測定するものとする。
なお、背面投写型画像ディスプレイ装置100において投写型ブラウン管を除き、投写レンズ、反射鏡、透過型スクリーンだけのフォーカスMTF特性を測定しようとする場合は、画面水平方向を長手方向とするスリット像に対する出力像の画面垂直方向の光出力分布を測定し、その結果をフーリエ変換することにより行うのがよい。
この場合は、投写型ブラウン管に代わって、投写型ブラウン管のフェイスパネルと同形状の擬似フェイスパネルを使用する。擬似フェイスパネルの蛍光面相当面には、蛍光体は塗布せず、ガラス表面に後述の測定用スリットを直接貼り付ける。擬似フェイスパネルの、投写レンズ側と反対の側には、擬似フェイスパネルに近接して緑色の投写型ブラウン管を配置し、画面全体を発光させる。
図22は、背面投写型画像ディスプレイ装置の投写レンズ、反射鏡、透過型スクリーンの総合フォーカスMTF特性を測定するときの、透過型スクリーン面におけるスリット像の位置の例を示す説明図である。
図22に示すように、スリット像130は、画面中心、及び、画面水平方向の相対像高(画面中心からの距離を、画面対角長の半分を1として規準化した値)0.2、0.4、0.6、0.72の各点、画面垂直方向の相対像高0.2、0.4、0.54の各点、画面対角方向の相対像高0.2、0.4、0.6、0.8、0.9の各点に表示されるようにする。このとき、前記の擬似フェイスパネルの蛍光面相当面の対応する位置に、たとえば、0.5mm幅のスリットを貼付する。
各スリット像の画面垂直方向の光分布の測定は、そのスリットの法線方向前方に輝度計110を移動した上で、前述の図21の場合と同様に、前記の微小走査装置により画面垂直方向に走査して測定するものとする。
以上、本実施例における背面投写型画像ディスプレイ装置の指向特性、画像のコントラスト比、画像の画面周辺部の相対光量、画像のぼけの程度、透過型スクリーンの光沢度の各測定方法について説明した。
ところで、本実施例における背面投写型画像ディスプレイ装置に用いる透過型スクリーン1として、図4に示した透過型スクリーン1について先に説明したが、透過型スクリーン1としてはこれに限定されるものではなく、図23または図24に示す透過型スクリーン1を用いても良い。
図23は、図1の背面投写型画像ディスプレイ装置における透過型スクリーン1の他の例の要部を示す斜視図である。
図23において、5は光吸収シート、51、52はそれぞれ光吸収シート5の光入射面、光出射面である。その他、図4と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施例が、図4に示した透過型スクリーン1と相違する点は、図23に示すように、レンチキュラーレンズシート4より画像観視側に、半透明に着色されてなる光吸収シート5が新たに構成要素として加わった点にある。
本実施例においては、図4に示した透過型スクリーン1においてレンチキュラーレンズシート4を半透明に着色する場合と同様に、画像発生源側から画像観視側に至る投写画像光は、光吸収シート5を1回だけ透過するため、光量が光吸収シート5の透過率に比例して減衰するのに対し、照明光などの外光が透過型スクリーン1で反射されて画像観視側に至るときは、光吸収シート5の最も画像観視側の面となる光出射面52で反射される光を除き、光吸収シート5を少なくとも1往復通るため、光量が光吸収シート5の透過率の2乗に比例して減衰する。これにより、投写画像光より外光の方が、多く吸収されて損失光の比率が大きくなり、照明光などの外光があるときの画像のコントラストが向上する効果がある。
図24は、図1の背面投写型画像ディスプレイ装置における透過型スクリーン1の別の例の要部を示す斜視図である。図24において、3は横長レンチキュラーレンズシート、31、32はそれぞれ横長レンチキュラーレンズシート3の光入射面、光出射面である。その他、図4と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施例が、図4に示した透過型スクリーン1と相違する点は、図24に示すように、フレネルレンズシート2の光入射面21が平面になったことと、フレネルレンズシート2とレンチキュラーレンズシート4との間にシート厚さの薄い横長レンチキュラーレンズシート3が透過型スクリーン1の構成要素として加わった点にある。
本実施例の透過型スクリーン1においては、フレネルレンズシート2の光入射面21ではなく、横長レンチキュラーレンズシート3の光入射面31にスクリーン画面水平方向を長手方向とする横長レンチキュラーレンズが設けられている。したがって、スクリーン画面水平方向の光拡散の開始点とスクリーン画面垂直方向の光拡散の開始点とが、図4に示した透過型スクリーン1の場合よりさらに近接しているので、画像のぼけがさらに少なくなる効果がある。
画像のコントラストについては図4に示した透過型スクリーン1の場合と同等の効果があり、特にレンチキュラーレンズシート4を半透明に着色した場合には、良好なコントラストが得られる。
1…透過型スクリーン、2…フレネルレンズシート、3…横長レンチキュラーレンズシート、4…レンチキュラーレンズシート、5…光吸収シート、7R,7G,7B…投写型ブラウン管、8R,8G,8B…投写レンズ、9R、9G、9B…結合器、11…反射鏡、11B…反射鏡の基材、12…筐体、15…光拡散材、16…光吸収帯、17…透明液体冷媒、18…レンズ鏡筒、19…光反射性光学薄膜、20,30,40,50…基材、21,31,41,51…光入射面、22,32,42,52…光出射面、43…凸形突起部、81…第一のレンズ素子、82…第二のレンズ素子、83…第三のレンズ素子、84…第四のレンズ素子、85…第五のレンズ素子。