JP3767443B2 - 荷電粒子線装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は荷電粒子線装置に係り、特に、薄片化した試料のX線分析を高精度に行うのに好適な荷電粒子線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
走査電子顕微鏡に代表される荷電粒子線装置では、細く収束された荷電粒子線を試料上で走査して試料から所望の情報(例えば試料像)を得る。このような荷電粒子線装置は、試料に照射した電子線により励起されたX線を分析して、試料の元素を同定する目的にも用いられる。走査電子顕微鏡による通常のX線分析は、バルク状の試料に電子線を照射し、励起したX線を検出するものであるが、照射電子がバルク試料の内部で散乱するために、X線発生領域が拡大して分析の空間分解能が悪くなる。これを避けるために、薄片化した試料に電子線を照射してX線発生領域の拡散を防止する方法が知られている。この場合、照射した電子線が薄片化試料を透過して、試料内部ではほとんど散乱しないめに、分析領域の空間分解能が改善するが、バルク試料に比較するとX線の発生量が大幅に低減する。
【0003】
電子線の強度は、一般に、図2に示すように、中央のピーク(メインビーム81)に対して、その周辺に、強度は低いが広いテール(ビームテール82)を有している。このビームテールの主原因のひとつが絞りの開口から入り込む散乱電子である。これを図3により説明する。走査電子顕微鏡の絞り装置は、通常、閉じ込められた絞り室空間200に配置される。対物レンズ絞り8に照射された電子線(絞り照射ビーム400)は、その一部が開口を透過してメインビーム401になるが、残りの大部分は開口の外側に照射される。このとき、開口の外側に照射された電子は後方散乱して、封じ込められた空間内を飛び交うことになる。こうして、封じ込められた空間内部で多重散乱を繰り返した電子(散乱電子102)は、再び、絞りの開口を透過して試料に照射される。絞りの開口を透過した散乱電子は、収束性が悪いために、メインビームの周辺に大きなビームテールを形成する。
【0004】
図4のように、薄片化試料のX線分析において、分析点近傍にバルク領域が存在すると、この領域にビームテールが照射されることになる。ビームテールの強度は主ビームの強度に比較して、数10分の1から数100分の1程度と低いが、バルク部からのX線103発生量が薄片化領域のX線(分析点のX線104)発生量よりもはるかに大きいため、ビームテールで発生したX線強度が、分析点から発生するX線強度に対して無視できなくなる。この結果、分析点以外から発生する特性X線が検出され、元素分析の信頼性を損なう問題がある。従来は、バルク部に接近していない薄片化部分のX線分析を行うことで、ビームテールの影響を避けていた。
【0005】
一方、X線分析における定量性を維持するには、プローブ電流の管理が必要となる。通常、この目的のために、対物レンズ絞りの下部に電流検出手段(ファラディカップ)を配置し、電流を測定するときには、ファラディカップを光軸上に移動して電流を測定していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、通常のX線分析では、薄片化領域の分析点が常にバルク部分から十分離れているかどうかを判断できないため、得られた結果に分析点以外の情報が混在する可能性を完全に否定することができない問題があった。
【0007】
また、プローブ電流を測定するためのファラディカップを光軸上に移動する場合、ファラディカップを光軸上に正確に移動させるには、絞りより電子源側のユニットを取り外して、ファラディカップの位置を目視で確認する作業や、あるいは、プローブ電流をモニタしながらファラディカップのセンタリングを行う必要があった。また、一度ファラディカップの位置を調整しても、万一、光軸のシフトが起こると、ファラディカップの位置ずれにより正確な電流検出ができなくなる問題があった。
【0008】
本発明の目的は、ビームテールを低減して、薄片化試料のX線分析における信頼性を向上させるのとともに、X線分析によく使用されるファラディカップに対して、ファラディカップの位置合わせを容易にするのに好適な荷電粒子線装置の提供にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、対物レンズ絞りの下部に、新たな絞りを設けた。また、対物レンズ絞りと新たに設けた絞りとの間に、炭素やベリリウムで代表されるような軽元素材料で構成される筒状の部材を配置した。この軽元素部材により、対物レンズ絞りの開口を通過した散乱電子が、新たに設けた絞りに衝突して多重散乱を起こすのを防止される。また、新たに設けた絞りとファラディカップを一体構造とし、光軸に対して位置を制御する手段を設けた。これにより、絞りの軸合わせがファラディカップの位置合わせを兼ねることになる。絞りの軸合わせは、ビーム通過の有無で判断できるので、対物レンズ絞りにおける通常の軸合わせと同様、容易に行うことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一例である走査電子顕微鏡の概略構成図である。陰極1と第一陽極2の間には、コンピュータ40で制御される高圧制御電源20により電圧が印加され、所定のエミッション電流で一次電子線4が陰極1から引き出される。陰極1と第二陽極3の間には、コンピュータ40で制御される高圧制御電源20により加速電圧が印加され、陰極1から放出された一次電子線4が加速されて後段のレンズ系に進行する。一次電子線4は、レンズ制御電源21で制御された収束レンズ5で収束され、対物レンズ絞り8で一次電子線の不要な領域が除去された後に、レンズ制御電源22で制御された収束レンズ6、および対物レンズ制御電源23で制御された対物レンズ7により試料10に微小スポットとして収束される。対物レンズ7は、インレンズ方式,アウトレンズ方式、およびシュノーケル方式(セミインレンズ方式)など、種々の形態をとることができる。また、試料に負の電圧を印加して一次電子線を減速させるリターディング方式も可能である。さらに、各々のレンズは、複数の電極で構成される静電型レンズで構成してもよい。
【0012】
一次電子線4は、走査コイル9で試料10上を二次元的に走査される。一次電子線の照射で試料10から発生した二次電子等の二次信号12は、対物レンズ7の上部に進行した後、二次信号分離用の直交電磁界発生装置11により、一次電子と分離されて二次信号検出器13に検出される。二次信号検出器13で検出された信号は、信号増幅器14で増幅された後、画像メモリ25に転送されて像表示装置26に試料像として表示される。
【0013】
走査コイル9と同じ位置に2段の偏向コイル51が配置されており、試料10上における一次電子線4の位置(観察視野)を二次元的に制御できる。
【0014】
ステージ15は、試料を少なくとも一次電子線4と垂直な面内の2方向(X方向,Y方向)に試料10を移動することができる。
【0015】
入力装置42からは、加速電圧の指定やステージコントロール情報などの観察に必要な制御条件や、得られた画像の出力や保存などの情報を指定することができる。
【0016】
なお、図1の説明は制御プロセッサ部が走査電子顕微鏡と一体、或いはそれに準ずるものとして説明したが、無論それに限られることはなく、走査電子顕微鏡鏡体とは別に設けられた制御プロセッサで処理を行っても良い。
【0017】
このような構成の荷電粒子線装置において、対物レンズ絞り8と偏向コイル51との間に、第2絞り61を配置する。
【0018】
第2絞り61の構成を図5,図6,図7,図8により説明する。
【0019】
図5は、本発明の一例である絞り位置での第2絞りの概略構成図である。また、図6は、図5の上視図である。第2絞り板62には、一次電子線4が通過する第2絞り穴63が設けられ、絞り駆動機構66に取付けられる。第2絞り穴63の開口径は、メインビーム401をさえぎらず、かつ散乱電子102をさえぎる必要があるので、対物レンズ絞り8の開口径の5倍以下が適当である。第2絞り穴63の上部には炭素やベリリウムのような軽元素材料で構成される散乱防止筒64を設ける。散乱防止筒64は、できるだけ対物レンズ絞り8に近接して配置するのが望ましい。また第2絞り板62には、第2絞り穴63と距離Lを空けてファラディカップ65を設ける。ファラディカップ65は電流測定端子67に接続する。絞り駆動装置66は、第2絞り板62をX方向,Y方向に移動する機構と距離Lの定量移動機構を具備し、一次電子線4が第2絞り穴63の中心を通過するように調整する光軸調整や、一次電子線4がファラディカップ65に照射されるように切替ることができる。図7はファラディカップ位置での第2絞り概略構成図、図8は図7の上視図である。一次電子線4は、ファラディカップ65に衝突するので、電流測定端子から、ビーム電流の測定ができる。
【0020】
なお、第2絞り穴63とファラディカップ65の位置は入替わってもよい。また、絞り駆動装置66は、直線往復運動によって第2絞り穴63とファラディカップ65を切替えられるようにしているが、距離Lの定量移動が可能な機構を用意すれば、この限りではない。
【0021】
図9は、絞り室で起こる多重散乱の模式図である。絞り室200内で発生した散乱電子102は、第2絞り61により概ねさえぎられる。また、第2絞り61に衝突して乱反射する散乱電子102は、散乱防止筒64にさえぎられ、多重散乱が抑制される。
【0022】
以上により、試料10の分析点には、ビームテールが低減されたメインビーム401が照射されることになり、分析点以外から発生するX線が低減できるので、従来問題となっていたX線分析の信頼性を高めることができる。
【0023】
また、第2絞り61は、第2絞り穴63で光軸調整を行うので、距離Lの定量移動を行うだけでファラディカップに切替えられ、ファラディカップに対する中心位置調整は不要になる。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、試料に照射する荷電粒子ビームのビームテールを低減できるため、特に薄片化試料のX線分析の信頼性を高める効果がある。また、X線分析で必要とされるビーム電流測定手段(ファラディカップ)の位置合わせが容易になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例である走査電子顕微鏡の概略構成図。
【図2】試料に照射されるビーム強度分布の模式図。
【図3】絞り室で起こる多重散乱の模式図。
【図4】薄片化試料のX線分析における散乱電子の影響の説明図。
【図5】本発明の一例である絞り位置の第2絞りの概略構成図。
【図6】図5の上視図。
【図7】ファラディカップ位置の第2絞りの概略構成図。
【図8】図7の上視図。
【図9】絞り室で起こる多重散乱の模式図。
【符号の説明】
1…陰極、2…第一陽極、3…第二陽極、4…一次電子線、5…第一収束レンズ、6…第二収束レンズ、7…対物レンズ、8…対物レンズ絞り、9…走査コイル、10…試料、11…二次信号分離用直交電磁界(EXB)発生器、12…二次信号、13…二次信号用検出器、14…信号増幅器、15…ステージ、20…高圧制御電源、21…第一収束レンズ制御電源、22…第二収束レンズ制御電源、23…対物レンズ制御電源、24…走査コイル制御電源、25…画像メモリ、26…像表示装置、27…画像処理装置、31…電気的視野制御電源、40…コンピュータ、41…記憶装置、42…入力装置、51…電気的視野移動コイル、61…第2絞り、62…第2絞り板、63…第2絞り穴、64…散乱防止筒、65…ファラディカップ、66…絞り駆動装置、67…電流測定端子、81…主ビーム、82…ビームテール、101,102…散乱電子、103…バルクからのX線、104…分析点のX線、105…試料の薄片部、106…試料のバルク部、107…透過電子、200…絞り室空間、400…絞り照射ビーム、401…メインビーム。
Claims (3)
- 荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出される荷電粒子線を収束して試料上で走査する偏向手段を備えた荷電粒子光学系と、前記荷電粒子源と偏向手段との間に配置され、試料に照射する荷電粒子線の収束角を制限する第1の絞りと、当該荷電粒子線の走査によって試料から発生する二次信号粒子を検出する検出手段とを備え、前記二次荷電粒子検出手段の信号により試料像を取得する荷電粒子線装置において、
前記第1の絞りと前記偏向手段との間に配置される第2の絞りと、
前記第1と第2の絞りの間に配置され、軽元素材料で構成される筒状の部材を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。 - 請求項1において、
前記第2の絞りは、荷電粒子線が透過可能な開口と、荷電粒子線の電流を測定する電流測定手段とを備え、前記開口部と当該電流測定手段を前記荷電粒子線の光軸上に移動する移動手段を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。 - 荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出される荷電粒子線を収束して試料上で走査する偏向手段を備えた荷電粒子光学系と、前記荷電粒子源と偏向手段との間に配置され、試料に照射する荷電粒子線の収束角を制限する第1の絞りと、当該荷電粒子線の走査によって試料から発生する二次信号粒子を検出する検出手段とを備え、前記二次荷電粒子検出手段の信号により試料像を取得する荷電粒子線装置において、
前記第1の絞りと前記偏向手段との間に配置される第2の絞りと、
前記第1の絞りと第2の絞りを配置する空間を有する絞り室と、
前記第1と第2の絞りの間に配置され、軽元素材料で構成される筒状の部材を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
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