JP3766519B2 - チタン合金 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明の合金は、チタンよりも低融点で融点付近の融液がチタン材とよくなじみ、外科医療に使用される人工関節や歯科治療に使用される人工歯根等のような、生体へ埋め込まれる金属製インプラントのうち、それらがチタン及びチタン合金である場合の接合補修または部材とりつけ接合に用いて特にその効果を奏するチタン合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インプラントに用いる金属または合金は生体の体液へ溶出した場合、その元素によっては、何らかの疾患を引きおこすか、その誘引になることが懸念され、溶出元素と疾患の種類との関係について多くの研究がなされて来た。いっぽう材料面からは擬似体液中で時間との関係でイオン溶出量の少ないものが先ず選ばれ動物実験等により安全性の検討がなされて来た。
これらの結果、チタンおよび或種のチタン合金等が選ばれ、インプラント材へ適用されることが多くなって来た。しかるに、チタンはインプラント材への加工に難点を残しており、とくに歯科用の義床やブリッヂを遠心鋳造や加圧鋳造によってつくる際には、チタンの鋳造性が悪いため、その細部構造に鋳造欠陥を生じやすく、歩留りの低いことを克服して、所期のものが得られるまで試作をくり返す必要があった。また、人工関節の1部では、骨への固定効果を上げる方法のひとつとしてスクリューネジどめに代わるか、または補う形でのペグを設けることがあり、その場合、形状的に機械加工上の制約があって十分な形のペグを設けにくく、人工関節そのものを生体骨へ接着するボーンセメント等の他の固定補助手段が必要であった。
【0003】
これらの製作において、金属的に接合できれば、形状設計上極めて有効であるが、接合用合金の開発には生体有害性から、使用できる元素に制約があること、およびチタンは多くの他の元素と金属間化合物を形成し、ろう接材としての湯流れを阻害する場合が多く、本発明が目的とする生体インプラントに適用できるろう接用チタン合金は、未だ開発されていない。もし、一般の工業材料で行われているように母材と同質のチタン及びチタン合金をフィラーメタルとして溶接しようとすると、本発明が目的としている生体用材料では、母材が小物であるため、プラズマやレーザーのような集中熱源を使ったとしても母材の溶け落ちは避けられないので、溶接は、なされていないのが現状である。
また、チタンまたはチタン合金以外のCo合金やNi合金の歯科用金属材料では、金、銀、パラジウム等の合金が接合用材料として用いられているが、今後は生体アレルギーなどを考慮してチタン及びチタン合金への転換がはかられており、接合用合金についてもチタンを主成分とした合金の開発が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
生体用金属部材において、接合を適用したい部分には薄肉厚かまたは小物があり、複雑な形状を有するので、接合の際の入熱量は低く抑えないと母材の溶け落ちを生ずるか、形状の変形をもたらすものである。このため母材より融点の低い接合用合金で、チタン系母材とのなじみが良く、とくにろう接法に使う場合は狭い間隙にも流入しやすい液体物性を備えていることが必要である。
合金化元素としては、その多くは長時間生体内へ挿入されるので微量溶出した場合癌の誘引になることが懸念されているNi、Zn、CdおよびPbは避けたい元素である。また、チタンよりそれほど融点が低くない元素をチタンへの合金化添加元素として選ぶにおいても、それらとの共晶点はあまり低くないものが多く、且つ、チタンとの金属間化合物等により、融点付近での液体のひろがりに不十分なものが多い。この場合でもクロムやバナジウムは、アレルギー性が高いので、今のところ避けたい元素である。以上のとおり、本目的に適用できるチタンへの添加合金元素の選択には極めて狭い制約がつけられる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
チタン及びチタン合金からなる生体挿入材の接合用チタン合金として本発明は質量でMnを3〜15%、Agを5〜30%含み、残りはTiより成る事を特徴とするチタン合金である。また、他の態様として質量でMnを3〜15%、Agを5〜30%含み、さらにCo1〜5%、Si0.1〜1.5%を含み、且つCo+Siを5.1以下に制限し、残りはTiより成る事を特徴とするチタン合金である。これらの合金はチタンが基材であるため、通常の耐火材によってつくられた溶解炉を使用すると炉材構成元素の混入があるので、真空または不活性ガス雰囲気のもとでカルシアルツボを使用するか、またはこれらの雰囲気中で水冷銅容器によるハース溶解等によりつくり得るものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
【作用】
本発明のチタン基合金は不活性ガス雰囲気の下でチタン及びチタン合金母材上での湯流れと融液のひろがりを考慮して融点を1900K以下とし、さらに接合用合金として硬さについてはHV300以下にすることを合金設計上のひとつの目安とした。その結果得られた本発明は、請求項1において合金化元素としてMnおよびAgを選んだ。これらはいづれもTiとの合金において比較的低温度までβ相領域を有する組成域をもっており、脆化を避け得るものである。Mnはその量が増えるにしたがい硬化するが、本発明の上限値である15%以下では硬化の程度は小さい。また、Mnは少量の添加でも融点を下げるものであり、本発明合金では3%以上で効果がある。Agは本発明の合金系において他元素の存在下においても、その量によって硬化する傾向はみられず、むしろ融液の母材へのなじみを良くし、その量は5%以上において効果がある。融点について言えば、Agは若干の低融点化をもたらすものである。したがって、Ag量は上限を本発明の請求範囲の上限値である30%以上にすることも可能であるが、実用接合作業の中で生ずる表面の酸化色が母材のそれと変ることからその上限値を30%にした。
【0007】
請求項2は請求項1の他にさらにCoおよびSiを特定の量添加するものである。これらの元素を添加することによっていづれも硬化が大きくその量的傾向はSi量の段階に応じCo添加量に対する硬化の傾向が変わってくる。Si量が低いときはCo量の増加に対する硬化の程度は小さい。このためSiの量は上限を1.5%に制限し、且つCo5%以下においてCo+Siの量は5.1%以下にすることでSi量の高い方ではCoの過剰添加を行わないものである。
CoおよびSiは硬化傾向がある反面、融点の低下には極めて有効な元素であり、Coについては、本発明に至る過程で26%までの添加は、その量が増加するにしたがって融点はなお低下する傾向であった。Siについても8%付近まで融点は下がることがわかった。そして、その低融点化の効果はCoで1%以上、Siで0.1%以上にみられた。しかし硬化が大きいため夫々上限を5%および1.5%とし、且つその範囲の中でCo+Siの量を5.1%以下にするものである。
【0008】
【実施例】
アルゴンガス雰囲気の下で、水冷銅容器を用いてくり返しアーク溶解してインゴットをつくった。それらの各試料について硬さ測定ののち、熱分析装置により一定加熱速度の下で溶融完了温度を求めた。これらの結果を表1に例示する。 また、各試料の5×5×5mmの立方体を切り出し、鏡面研磨したTiの平面板の上に置き、管状炉を使ってアルゴン雰囲気のもとで1900Kに3.6ksの時間保持したあとの各合金の溶着形状を観察し、母材Tiとのなじみ、表面の平滑性およびシュリンケージの形態を観察した本発明の合金は、いづれも良好なひろがりをもっており、表面は光沢をもって平滑なものでシュリンケージホールもなく凝固われの生じにくいものと判定され、これらの合金系が接合材として適正であることを示した。
【0009】
本発明に含まれるTi−Mn−Ag合金のNo.2および6について、鋳造と圧延により、直径が約3mmの棒に加工し、これらをフィラーメタルとして、直径が6mm、長さ60mmのチタン丸棒をアルゴンガス雰囲気中のグローブボックスの中でTigアーク溶接を行なった。溶接部が母材面と同じになるよう余盛部を削除したのち、引張試験の結果いづれも母材で破断した。また、Ti−Mn−Ag−Co−Si合金のNo.10および13についてはテープ状に加工した。直径6mm、長さ60mmのチタン丸棒2本の断面同志を突き合わせ、この部分を前記合金テープで覆い1473Kで真空加熱しろう接を行なった、接合部の余盛削除後、引張試験の結果、いずれも母材から破断した。
【0010】
【表1】
Figure 0003766519
【0011】
【発明の効果】
チタン及びチタン合金が軽くて生体内の安全性や耐食性にすぐれている事からステンレス鋼やコバルトクロム合金などに代わって人工関節や各種歯科材料に使われはじめた。しかし、チタン系金属は従来使われて来たステンレス鋼やコバルトクロム合金にくらべ鋳造に難点があり、鋳造欠陥が生じ成功率が低いのでくり返し鋳造を試みねばならなかった。
これを溶接によって補修または溶接構造にするため、母材と共金を接合材料として用いることが試みられてきたが、接合作業そのものに多くの熟練を要するものであった。溶接の失敗はすべて母材の溶損であり、これを防止するために、本発明は母材より融点の低い合金を提供し、溶接およびろう接を可能にした。さらに、ガン疾患のおそれありとされた来た合金元素を用いないようにして、生体用材料としての効果を得たものである。これによって人工関節や歯科用材の形状設計に自由度を広げると共に、鋳造欠陥の少ない歯科用鋳造チタン合金としての活用に道を広げる効果がある。

Claims (2)

  1. 質量でMnを3〜15%、Agを5〜30%含み、残りはTiであることを特徴とするチタン合金。
  2. 質量でMnを3〜15%、Agを5〜30%含み、さらにCo1〜5%、Si0.1〜1.5%を含み、且つCo+Siを5.1%以下に制限し、残りはTiより成る事を特徴とするチタン合金。
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