JP3766068B2 - 蒸留酒の熟成容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、泡盛などの蒸留酒を熟成する場合に用いる蒸留酒の熟成容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、泡盛などの蒸留酒を熟成する方法として、甕壷式に熟成させる方法が知られている。この方法では、熟成期間が互いに異なる蒸留酒ごとに、別個に甕壷(容器)を設けている。そして、その甕壷ごとに継ぎ足しの際などに蒸留酒を適度に混ぜることで、よりよく熟成できることが知られている。以下では、図8を参照しつつ、この従来の蒸留酒の熟成方法について説明する。
【0003】
図8において、熟成期間が長い順に、1番手(親酒)、2番手、3番手、4番手、5番手の甕壷がある。熟成が十分行われたとして、1番手から所定の分量の蒸留酒を取り出した場合には、その所定分量の蒸留酒を2番手から1番手の酒甕に継ぎ足す。その結果、2番手の酒甕に不足が生じるので、蒸留酒を3番手から2番手の酒甕に継ぎ足す。以下同様にして、4番手から3番手、5番手から4番手と蒸留酒を継ぎ足し、5番手には、蒸留酒(新酒)を継ぎ足す。
【0004】
このように、蒸留酒の熟成においては、熟成の度合い(期間)に応じて甕壷を用意することで、熟成の度合いの異なる蒸留酒を互いに分離することを基本の構成とし、熟成の度合いが同じ1つの甕壷内の蒸留酒に熟成の度合いが少しだけ小さい(熟成期間が少しだけ短い)直前の甕壷から少量の蒸留酒を継ぎ足すことで、熟成の度合いが少しだけ異なる蒸留酒同士を適度に混ぜることが重要である。
【0005】
なお、上記した蒸留酒の熟成方法については、下記文献1などを始めとする多数の文献に記載されている。
【0006】
【文献1】
「あわもり−その歴史と文化−」沖縄県立博物館の会
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の蒸留酒の熟成方法では、2番手から1番手、・・・、5番手から4番手、新酒から5番手、という具合に蒸留酒を継ぎ足すため、注意深く作業を行ったとしても、作業者が、例えば3番手から1番手に誤って継ぎ足す可能性が常にあり、安全性、信頼性の面で不十分なものであった。このような煩雑さは、別個に用意した複数の容器(甕壷)の役割を1つの容器で兼ねることができれば、解決できるものである。
【0008】
本発明の課題は、1つの容器で蒸留酒の熟成が可能な容器を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、下記のような構成を採用した。
すなわち、本発明の一態様によれば、本発明の蒸留酒の熟成容器は、蒸留酒の入口と出口とが設けられた蒸留酒の熟成を行うための容器において、該容器内を分離すると共に、該容器内を前記蒸留酒が移動するための口がそれぞれ開けられた複数の分離壁を備え、前記複数の分離壁の口の少なくとも1つは、前記入口に近い側から前記入口に遠い側に対しては開き、前記入口に遠い側から前記入口に近い側に対しては開かない弁が設けられていることを特徴とする蒸留酒の熟成容器である。
【0010】
ここで、前記熟成容器は、その内部を複数の分離壁により区切られており、その分離壁の口の少なくとも1つは、前記入口に近い側から前記入口に遠い側に対しては開き、前記入口に遠い側から前記入口に近い側に対しては開かない弁が設けられている。この弁の数に応じて容器内は複数槽に分離されるので、1つの容器にして、従来例の複数の容器(上記1番手〜5番手)の役割を兼ねることができ、1つの容器で蒸留酒の熟成が可能な容器が提供できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の蒸留酒の熟成容器(以下、単に容器という)を示す斜視図である。
【0012】
図1において、容器10は、蒸留酒の入口11と、蒸留酒の出口(蛇口)12と、また、図からは定かでないが、容器10内を複数(n+1個、図では7個)の区分「1」「2」・・・「7」に分離する複数(n個、図では6個)の分離壁13−1、13−2、・・・、13−6とを備えて構成される。なお、図中の容器表面の斜線は分離壁の設けられる位置を示している。また、必要に応じて、容器10とその容器10を載置する床との間に支持部材14を設けることもできる。なお、容器10の材質としては、ステンレス鋼、木材、陶器などの各種材質を用いることができる。
【0013】
図2は、図1の容器を図1の矢印α方向から見た側断面図であり、蒸留酒が容器内を移動して熟成する様子を説明する図である。
図2において、容器10内に蒸留酒が矢印A位置で示す所定量だけ入っている状態で、斜線で示す量に相当する蒸留酒を入口11から矢印a1に沿って継ぎ足した場合、その入口から継ぎ足された蒸留酒に対応して、その継ぎ足された分量に対応する蒸留酒が、出口12から矢印a14に沿って流出できるように、複数の分離壁13−1、・・・、13−6に開けられた口(図では、分離壁には、下部に開けられた口xと上部に開けられた口yとがある。)と、前記蒸留酒の出口12とを配置している。図では、このような配置として、分離壁13−2、13−4、13−6の上部にそれぞれ開けられた口yの高さと出口12の高さとを対応させている。
【0014】
なお、この入口11から継ぎ足された蒸留酒に対応して、容器10内に所定量だけ入っていた蒸留酒には、図の矢印a2〜a13に示すような流れが生じる。そして、その生じた流れに伴い、例えば分離壁13−1、13−3、13−5の下部の口xにそれぞれ設けられた弁15は、その分離壁13−1、13−3、13−5の両側での液体の量の差に起因する水圧の差によって、入口に近い側(区間「1」「3」「5」)から入口に遠い側(区間「2」「4」「6」)へ向かう流れに対しては開き、入口に遠い側(区間「2」「4」「6」)から入口に近い側(区間「1」「3」「5」)に対しては開かないように動作する。
【0015】
そして、この容器10内の弁15の数(図では3つ)に応じて容器10内は複数の槽に分離される。この場合、区間「1」を槽に数えるか否によるが、数えない場合には、3槽(区間「2」+「3」に対応する槽、区間「4」+「5」に対応する槽、区間「6」+「7」に対応する槽)に分離される。
【0016】
図3は、図1の容器を上から見た図であり、(a)は容器上面図を、(b)は容器を上下方向の所定位置で切って見た概念的な断面図を、それぞれ示している(実際には、各分離壁の口は異なる上下方向位置に開けられているので、同一断面内に含まれることはない)。
【0017】
図3(b)に示すように、容器を複数の区分に分離する分離壁には、下部に口x、上部に口yが開けられていて、その下部に口が開けられている分離壁13−1、13−3、13−5と、上部に口が開けられている分離壁13−2、13−4、13−6とが容器10内に交互に配置されている。
【0018】
図4は、図1の容器を図1の矢印β方向から見た断面図であると共に、分離壁を横方向から見た図であり、(a)は下部に口が開けられた分離壁を、(b)は上部に口が開けられた分離壁を、それぞれ示している。
図4(a)に示す分離壁の口xは、上記したように、蒸留酒を一方向にしか通さない弁15が備えられると共に、紙面の下部左側に設けられている。図3の分離壁13−1,13−3,13−5がこのような分離壁に対応する。また、図4(b)に示す分離壁の口yは、紙面の上部右側に設けられている。図3の分離壁13−2,13−4,13−6がこのような分離壁に対応する。
【0019】
そして、図4(a)の下部に口を有する分離壁と、図4(b)の上部に口を有する分離壁とを図3に示すように容器10内に交互に配置する。すなわち、連続する分離壁では、分離壁に設けられた口が一方が上部で、他方が下部となるように相対的に離れた位置となるように配置している。これにより、容器10の入口から蒸留酒が継ぎ足された場合に、その継ぎ足された蒸留酒によって、容器10内の蒸留酒(液体)に生じる流れを、容器10の各区分内の液体のより広い範囲に渡って発生させることができる。なお、図3(b)において、斜線により示される入口11を、その入口11に最も近い分離壁の口xと容器10の左右方向(奥行き方向)の反対側の位置に設けた理由もこの液体の流れを容器10の各区分内でより広い範囲に渡り発生させるためである。
【0020】
また、上記したように、容器10は3槽に分離されるが、継ぎ足された蒸留酒に対応して、各槽の境界に位置する弁15の両端に水圧の差が生じ、その水圧の差をなくすだけの量の蒸留酒が容器10の入口11から見て近くに位置する槽から入口から見て遠くに位置する槽に流れ込む(例えば図2の区間「2」+「3」に対応する槽から区間「4」+「5」に対応する槽へ流れ込む)。これにより、各槽にはその直前の槽から少しだけ蒸留酒が流れ込み、各槽内の蒸留酒が適度に混ざる。
【0021】
なお、容器内の蒸留酒が適度に混ざるように、複数の分離壁の口を相対的に配置するのであれば、上記以外の配置であってもよい。
以下に本発明の別実施形態の蒸留酒の熟成容器について説明する。なお、以下では説明が重複する箇所については、説明を省略する。
【0022】
図5は、本発明の別実施形態の蒸留酒の熟成容器を示す斜視図である。図5において、容器10の上面には、対応する各区分に炭(例えば竹炭)を入れるための複数の入口11−2、・・・、11−7が新たに設けられている。この炭は容器内を殺菌したり、(もしそのようなものがある場合は)蒸留酒に溶け込んでいる有害な成分を吸着させることにより除去したり、自然の旨みを引き出したりする働きがある。なお、入口11−1は、炭の入口と、蒸留酒の入口とを兼ねている。なお、炭に限らず、殺菌用、有害成分除去用、旨み引き出し用の任意の固形物を入口11−1〜11−7を介して容器10内に入れることができる。
【0023】
図6は、図5の容器を図5の矢印α方向から見た側断面図である。図6において、炭は蒸留酒などの液体の透過性を有するシート16−1、・・・、16−7を介してそれぞれ対応する入口11−1、・・・、11−7から容器10内の液体(蒸留酒)に浸かるように吊るされている。
【0024】
図7は、図5の容器を上から見た図であり、(a)は上面図を、(b)は容器を上下方向の所定位置で切って見た概念的な断面図を、それぞれ示している(実際には、各分離壁の口は異なる上下方向位置に開けられているので、同一断面内に含まれることはない)。
【0025】
図7(a)(b)を参照すると、これら複数の入口11−1、・・・、11−7、及びその入口から容器10内に吊るされている炭入りのシート16−1、・・・、16−7は、分離壁の口x、yと容器の左右方向(奥行き方向)の対応する位置に設けられている。
【0026】
なお、以上の説明において、図1や図5を始めとする容器に設けられた入口には、蓋が設けられていなかったが、蓋を設ける構成としてもよい。このように構成すれば、蓋がない場合と比較し、容器内の蒸留酒が蒸発などにより減少することを避けることができる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の蒸留酒の熟成容器は、その内部を複数の分離壁により区切られており、その分離壁の口の少なくとも1つは、前記入口に近い側から前記入口に遠い側に対しては開き、前記入口に遠い側から前記入口に近い側に対しては開かない弁が設けられている。この弁の数に応じて容器内は複数槽に分離されるので、1つの容器にして、複数の容器の役割を兼ねることができ、1つの容器で蒸留酒の熟成が可能な容器が提供できる。
【0028】
また、従来の熟成方法のように、酒甕(容器)自体を作業者が持ち上げるなどして、蒸留酒の継ぎ足しを行う必要がない関係から、本発明の蒸留酒の熟成容器は、従来の酒甕(容器)と比較し、サイズ上の制約を受けずに済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の蒸留酒の熟成容器を示す斜視図である。
【図2】図1の容器の側断面図である。
【図3】図1の容器を上から見た図であり、(a)は容器上面を、(b)は容器を上下方向の所定位置で切って見た概念的な断面を、それぞれ示す図である。
【図4】分離壁を横方向から見た図であり、(a)は下部に口が開けられた分離壁を、(b)は上部に口が開けられた分離壁を、それぞれ示す図である。
【図5】本発明の別実施形態の蒸留酒の熟成容器を示す斜視図である。
【図6】図5の容器の側断面図である。
【図7】図5の容器を上から見た図であり、(a)は上面を、(b)は容器を上下方向の所定位置で切って見た概念的な断面を、それぞれ示す図である。
【図8】従来の蒸留酒の熟成方法を示す図である。
【符号の説明】
10 容器
11 入口
12 出口
13 分離壁
14 支持部材
15 弁
16 シート
Claims (5)
- 蒸留酒の入口と出口とが設けられた蒸留酒の熟成を行うための容器において、
該容器内を分離すると共に、該容器内を前記蒸留酒が移動するための口がそれぞれ開けられた複数の分離壁を備え、
前記複数の分離壁の口の少なくとも1つは、前記入口に近い側から前記入口に遠い側に対しては開き、前記入口に遠い側から前記入口に近い側に対しては開かない弁が設けられていることを特徴とする蒸留酒の熟成容器。 - 前記容器内に蒸留酒が所定量だけ入っている状態で、前記入口から継ぎ足された蒸留酒に対応して、その継ぎ足された分量に対応する蒸留酒が、前記出口から流出できるように、前記複数の分離壁に開けられた口と前記蒸留酒の出口とを配置したことを特徴とする請求項1記載の蒸留酒の熟成容器。
- 前記入口から継ぎ足された蒸留酒に対応して、前記容器内の蒸留酒が適度に混ざるような位置に、前記複数の分離壁の口を相対的に配置したことを特徴とする請求項1記載の蒸留酒の熟成容器。
- 前記複数の分離壁の口を、該分離壁の上部、または下部のいずれかに開けることで、前記入口から蒸留酒が継ぎ足された場合に、前記容器内の蒸留酒が適度に混ざるようにしたことを特徴とする請求項3記載の蒸留酒の熟成容器。
- 前記複数の分離壁の口を、該分離壁の上部と下部とに交互に開けることで、前記入口から蒸留酒が継ぎ足された場合に、前記容器内の蒸留酒が適度に混ざるようにしたことを特徴とする請求項4記載の蒸留酒の熟成容器。
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