JP3765957B2 - 産業車両の作業機制御方法及び作業機制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォークリフト等の産業車両の作業機制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業車両であるフォークリフトは、車体前部に作業機を備えている。作業機は、チルトシリンダによって車体に対して傾動自在に装着された左右一対のマストと、このマストに沿ってリフトシリンダによって昇降自在に装着されたリフトブラケットと、このリフトブラケットに装着された左右一対のフォークとを有している。
【0003】
図7を用いて、チルトシリンダ3及びリフトシリンダ5による作業機1の駆動の様子を説明する。
オペレータが、作業機1の操作手段であるリフト操作レバー14やチルト操作レバー15を操作することにより、各操作レバー14,15に装着されたポテンショメータ14b,15bから操作信号がコントローラ50に入力される。コントローラ50は、入力されたそれぞれの操作信号に応じて、リフト用比例電磁弁17及びチルト用比例電磁弁18を駆動する出力電流を演算し、各比例電磁弁17,18に出力する。
エンジンまたは電動機(共に図示せず)を動力源として回転する油圧ポンプPから吐出される圧油は、上記出力電流によって駆動される比例電磁弁17,18により制御されてチルトシリンダ3やリフトシリンダ5に供給され、これらのシリンダ3,5を伸縮駆動する。これにより、マスト4は車体前後方向に傾動駆動され、あるいは、リフトブラケット6及びフォーク7は昇降駆動される。
油圧ポンプPと比例電磁弁17,18とを接続する管路には、リリーフ弁19が接続されており、所定設定圧以上の圧油をタンクへドレンする。
【0004】
上述のような比例電磁弁システムの制御においては、一般的に、前記操作手段の急操作による作業機1の起動や停止におけるショックを低減するために、操作手段からの操作信号の時間当たりの変化量が大となっても、比例電磁弁17,18への出力電流の時間当たりの変化量を所定値以下となるように制限している。この出力電流の制限制御について、図8を用いてリフト操作を例に挙げて説明する。
【0005】
オペレータの急なレバー操作により、リフト操作レバー14のポテンショメータ14bからの操作信号が、レバーストロークの中立位置に対応するV0からレバーストロークの所定位置に対応するV1に急に立ち上がった場合、コントローラ50は、操作信号がリフト操作レバー14の中立位置前後での不感帯を脱した時点(図8の点P0)で、リフトシリンダ5の動き出す電流よりやや小さい初期電流A0を出力し始める。出力電流の制限制御を行わなければ、図8にて一点鎖線にて示すように、操作信号がV1に到達した時点でV1に対応する出力電流A1を出力するように変化するが、出力電流の制限制御を行うと、比例電磁弁17への出力電流の時間(制御周期)当たりの変化量が所定値aに制限され、
「制限出力値=前回出力値+a(固定値)」
の関係から図8にて実線にて示すように、出力電流の制限制御を行わない特性より小さな勾配(所定値aに対応する勾配)の出力電流特性となる。そして、制限制御に基づく出力電流が、操作信号V1に対応する目標値である出力電流A1に一致したとき(図8の点P1)に制限制御は解除される。
【0006】
これにより、リフト操作レバー14を急操作しても電磁比例弁17への出力電流の変化率を制限しており、リフトシリンダ5の起動時や停止時の加速や減速が抑えられるのでショックを低減することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば、レバー操作にてレバーフルストローク手前までの早い操作(以後、ハーフ急操作と呼ぶ)を行うと、上記の制限制御により、作業機1はショックなく動き出すが、出力電流が増加して目標値である出力電流A1に一致し制限制御が解除される時点で、それまでの等加速運動の状態から等速運動に移行する。このため、依然としてショックが発生する。
特に、負荷下降時にはこのショックによりハンチングが発生する虞があり、荷崩れを招来する場合もある。
【0008】
ハーフ急操作時は、上記の制限制御により、比例電磁弁17のスプールは出力電流の増加に対応して所定速度で移動し、出力電流が点P1にて一定となってもすぐには停止せず、オーバランしてから出力電流A1に対応する位置S1に停止する(図8)。このスプールのオーバランにより、リフトシリンダ5への作動油流量の急変動がおこり、これがショックの原因となる。
【0009】
一般的に、レバーのフルストローク操作時には、比例電磁弁のスプールは機構的ストロークエンドに到達して弁の開度が全開となっているので、上述した制限制御の解除時に発生するスプールのオーバランは発生しない。しかし、レバーのフルストローク操作時において弁の開度が全開とならない仕様のシステムにおいては、フルストローク操作時においてもスプールのオーバランが発生する。
また、レバー中立位置からフル側(加速側)への操作時について述べたが、減速側へのハーフ急操作(例えば、フル位置から中立手前までの急操作)においても、出力電流が目標電流に一致し制限制御が解除された時点で、同様にスプールのオーバランが発生しショックを引き起こす。この中立側へのスプールのオーバランでは、ひどいときにはスプールが閉じるところまでオーバランすることがあり、ショックも大きくなる。
さらに、機種や仕様により、操作レバーのノブなどにスイッチを設けて油圧シリンダなどのアクチュエータをスイッチ操作にて操作する場合があり、この場合においても、操作手段であるスイッチからの操作信号(この場合オン信号)に対し比例電磁弁への出力電流特性に制限をかけて出力するが、出力電流が目標電流に一致し制限制御が解除される時点で、同様にスプールのオーバランが発生しショックを引き起こす。
【0010】
ショックの原因である比例電磁弁のスプールのオーバランを防止する方法として、比例電磁弁への出力電流の時間当たりの変化量を更に小さく制限する方法では、ショックが発生しない程度に変化量を小さく設定すると、応答性や加速性が悪くなり、操作性に問題が生じる。
また、図8で示した制限された出力電流にフィルタをかけて出力する方法もあるが、ショックが発生しない程度の時定数を設定すると、同じく応答遅れが発生する。出力の制限制御により既に加速時の遅れが発生しているので、更なる応答遅れは操作性にとって大きな問題となる。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、比例電磁弁への出力電流に対し制限制御を行う産業車両の作業機制御方法又は作業機制御装置において、比例電磁弁への出力電流の制限が解除されるときのショックを防止できる、応答性のよい産業車両の作業機制御方法又は作業機制御装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、作業機操作用のレバーの操作量に応じた操作信号を出力する操作手段からの操作信号に応じた作業機駆動用の比例電磁弁の目標電流を算出すると共に、目標電流に基づいて比例電磁弁への出力電流の時間当たりの変化量を所定値以下となるように制限する産業車両の作業機制御方法において、出力電流と目標電流との偏差が所定偏差以下になったとき出力電流の時間当たりの変化量を前記所定値よりも更に小さく制限することを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、作業機操作用のレバーの操作量に応じた操作信号を出力する操作手段と、作業機駆動用の比例電磁弁と、操作手段からの操作信号に応じた比例電磁弁の目標電流を算出すると共に目標電流に基づいて比例電磁弁への出力電流の時間当たりの変化量を所定値以下となるように制限して出力する制御器とを有する産業車両の作業機制御装置において、制御器は、出力電流と目標電流との偏差が所定偏差以下になったとき出力電流の時間当たりの変化量を前記所定値よりも更に小さく制限して出力することを特徴とする。
【0014】
第1又は第2の発明によると、操作手段からの操作信号の時間当たりの変化量が大となっても、比例電磁弁への実際の出力電流の時間当たりの変化量を所定値以下となるように制限する際に、比例電磁弁への出力電流が、操作信号に応じた目標電流に一致する手前で目標電流との偏差が所定偏差以下になると、出力電流の変化量が減少するため、比例電磁弁のスプールは更に減速して目標位置に停止することができる。また、前記偏差が所定偏差以下となるまでは、比例電磁弁への出力電流の変化量は作業機の起動や停止におけるショックを防止する程度の変化量に制限されているだけなので、従来と同程度の良好な応答性が確保できる。これにより、スプールのオーバランが防止でき、レバーを急操作しても制限制御の解除時の作業機のショックを防止でき、応答性のよい作業機制御方法及び作業機制御装置を得ることができる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、制御器は、出力電流と目標電流との偏差が所定偏差以下になったとき出力電流の時間当たりの変化量を偏差に応じて制限して出力することを特徴とする。
【0016】
第3の発明によると、第2の発明の作用に加え、比例電磁弁への出力電流と目標電流との偏差が所定偏差以下になると、出力電流はその単位時間あたりの変化量が偏差の減少と共に徐々に小さくなり目標電流に一致するので、比例電磁弁のスプールを滑らかに目標位置に停止させることができる。
これにより、第2の発明の効果に加え、作業機をより滑らかに動作させてショックを確実に防止することができる。
【0017】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、積載した負荷の大きさに応じた負荷圧を検出し、検出信号を制御器に出力する圧力センサを備えると共に、制御器はさらに、出力電流と目標電流との偏差が所定偏差以下になったときの出力電流の時間当たりの変化量を、圧力センサにより検出される負荷圧に応じて制限して出力することを特徴とする。
【0018】
第4の発明によると、第2の発明の作用に加え、比例電磁弁への出力電流と目標電流との偏差が所定偏差以下になると、出力電流はその単位時間あたりの変化量を負荷圧に応じて可変となる特性とすることにより、積載の有無などにより異なる負荷圧に対して作業機の駆動速度の変化量を同様に制御することができる。これにより、第2の発明の効果に加え、全ての負荷に対して発生するショックを同様に抑えることができる。
【0019】
第5の発明は、第2又は第3の発明において、積載した負荷の大きさに応じた負荷圧を検出し、検出信号を制御器に出力する圧力センサを備えると共に、制御器はさらに、前記所定偏差を、圧力センサにより検出される負荷圧に応じて変更することを特徴とする。
【0020】
第5の発明によると、第2の発明の作用に加え、出力電流の単位時間あたりの変化量を所定値よりも更に小さく制限するか否かの閾値である所定偏差を負荷圧に応じて可変となる特性とすることにより、積載の有無などにより異なる負荷圧に対して作業機の駆動速度の変化量を同様に制御することができる。
これにより、第2の発明の効果に加え、全ての負荷に対して発生するショックを同様に抑えることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態について詳細に説明する。産業車両であるフォークリフトは、車体前部に作業機を備えている。作業機は、チルトシリンダによって車体に対して傾動自在に装着された左右一対のマストと、このマストに沿ってリフトシリンダによって昇降自在に装着されたリフトブラケットと、このリフトブラケットに装着された左右一対のフォークとを有している。
【0022】
図1は、本発明に係る実施形態の作業機1の駆動に関する概略構成図である。作業機1の操作手段であるリフト操作レバー14及びチルト操作レバー15はそれぞれ、オペレータにより操作されるレバー14a,15aと、レバー14a,15aの操作量に応じた操作信号を出力するポテンショメータ14b,15bとを有している。
オペレータが、リフト操作レバー14やチルト操作レバー15を操作することにより、各操作レバー14,15のポテンショメータ14b,15bから操作信号がコントローラ10に入力される。コントローラ10は、入力されたそれぞれの操作信号に応じて、リフト用比例電磁弁17及びチルト用比例電磁弁18を駆動する出力電流を演算し、各比例電磁弁17,18に出力する。
エンジンまたは電動機(共に図示せず)を動力源として回転する油圧ポンプPから吐出される圧油は、上記出力電流によって駆動される比例電磁弁17,18により制御されてチルトシリンダ3やリフトシリンダ5に供給され、これらのシリンダ3,5を伸縮駆動する。これにより、作業機1のマスト4は車体前後方向に傾動駆動され、作業機1のリフトブラケット6及びフォーク7は昇降駆動される。
リフトシリンダ5のボトム側と比例電磁弁17とを接続する管路には、圧力センサ16が接続されており、積載した負荷の大きさに応じた負荷圧信号をコントローラ10に出力する。
油圧ポンプPと比例電磁弁17,18とを接続する管路には、リリーフ弁19が接続されており、所定設定圧以上の圧油をタンクへドレンする。
【0023】
図2及び図3を参照しながら、本発明の第1実施形態の制御装置における制御内容について説明する。
【0024】
オペレータが、作業機1の操作手段の一つであるリフト操作レバー14をハーフ急操作した場合、コントローラ10は、レバー操作量に応じV0からV1に短時間に変化する操作信号を、リフト操作レバー14のポテンショメータ14bから入力する。
コントローラ10は、操作信号がリフト操作レバー14の中立位置前後での不感帯を脱した時点(図2の点P0)で、リフトシリンダ5の動き出す電流よりやや小さい初期電流A0を比例電磁弁17へ出力し始める。この後の出力電流は、出力電流の時間(制御周期)当たりの変化量が所定変数αに制限され、
「制限出力値=前回出力値+α」
の関係の出力電流特性となる。
【0025】
レバー操作後の操作信号値V1に対応する目標電流値A1と前回の出力値との偏差(以後、偏差と呼ぶ)と、制限出力値の単位増加分である所定変数αとの関係を図3に表している。
図3(a)に示すように、偏差が大きいときには所定変数αは、従来同様に作業機1の起動や停止におけるショックを防止する所定値aとなる。出力電流が増加して偏差が所定偏差h以下になると、所定変数αはaよりも小さい所定値bとなる。
【0026】
この所定変数αの変化により、出力電流は、初期電流A0から所定値aに対応する勾配で増加し、偏差が所定偏差hとなった時点(図2の点P2)から、所定値bに対応する勾配で増加して目標電流値A1に達する特性となる。そして、制限制御に基づく出力電流が、目標電流A1に一致したとき(図2の点P3)に制限制御は解除される。
なお、上記においては、所定偏差h以下における所定変数αを、一つの値(所定値b)となる例にて説明したが、これに限定するものではなく、例えば図3(a)に1点鎖線にて示すように、階段状に複数の値となるような特性としてもよい。
【0027】
これにより、操作手段からの操作信号の時間当たりの変化量が大となっても、比例電磁弁への出力電流の時間当たりの変化量を所定値以下になるように制限する作業機制御装置において、比例電磁弁への出力電流が、操作信号に応じた目標電流に一致する手前で目標電流との偏差が所定偏差以下になると、出力電流の変化量が減少するため、比例電磁弁のスプールは更に減速して目標位置に停止することができる。また、前記偏差が所定偏差以下となるまでは、比例電磁弁への出力電流の変化量は作業機の起動や停止におけるショックを防止する程度の変化量に制限されているだけなので、従来と同程度の良好な応答性が確保できる。
このため、スプールのオーバランが防止でき、レバーを急操作しても制限制御の解除時の作業機のショックを防止でき、応答性のよい作業機制御装置を得ることができる。
【0028】
なお、所定偏差h以下における所定変数αは、図3(a)に矢印及び2点鎖線にて示すように、負荷圧に応じて可変となる特性としてもよい。
これは、負荷圧が変わると比例電磁弁の弁差圧が変わるため、バルブ開口面積の変化量が同じでも比例電磁弁の流量の変化量、すなわち作業機の駆動速度の変化量が異なってしまい、負荷圧の大きさに応じて発生するショックの大きさも変わってくるが、所定変数αを負荷圧に応じて可変となる特性とすることにより、積載の有無などにより異なる負荷圧に対して作業機の駆動速度の変化量を同様に制御することができる。これにより、全ての負荷に対して発生するショックを同様に抑えることができる。
【0029】
例えば、リフト下降時には、作業機1に積載した負荷が大きいほど比例電磁弁の弁差圧が大きくなるため、流量の変化量すなわち作業機の駆動速度の変化量も大きくなり、ショックの発生も大きくなるが、図2に2点鎖線L1にて示すように、出力電流の特性の勾配を小さくする(制限を大きくする)ことにより、作業機の駆動速度の変化量を抑えてショックを抑えることができる。
また、リフト上昇時には、作業機1に積載した負荷が小さいほど比例電磁弁の弁差圧が大きくなるため、リフト下降時とは逆に、負荷が小さいほど制限を大きくすることによりショックを抑えることができる。
【0030】
所定負荷圧に対する所定変数α(出力電流の勾配)は、リフト下降時及びリフト上昇時について、それぞれマップとしてコントローラ10に設定しておいて求めればよい。リフト下降であるかリフト上昇であるかは、リフト操作レバー14のポテンショメータ14bからの操作信号により判断すればよい。
【0031】
また、所定偏差hは、図3(b)に矢印及び2点鎖線にて示すように、負荷圧に応じて可変となる特性としてもよい。
これは、負荷圧が変わると比例電磁弁の弁差圧が変わるため、バルブ開口面積の変化量が同じでも比例電磁弁の流量の変化量、すなわち作業機の駆動速度の変化量が異なってしまい、負荷圧の大きさに応じて発生するショックの大きさも変わってくるが、出力電流の単位時間あたりの変化量を所定値よりも更に小さく制限するか否かの閾値である所定偏差を負荷圧に応じて可変となる特性とすることにより、積載の有無などにより異なる負荷圧に対して作業機の駆動速度の変化量を同様に制御することができる。これにより、全ての負荷に対して発生するショックを同様に抑えることができる。
【0032】
例えば、リフト下降時には、作業機1に積載した負荷が大きいほど比例電磁弁の弁差圧が大きくなるため、流量の変化量すなわち作業機の駆動速度の変化量も大きくなり、ショックの発生も大きくなるが、図2に2点鎖線L2にて示すように、出力電流の特性の勾配を小さく(制限を大きく)するタイミングを早くすることにより、作業機の駆動速度の変化量を抑えてショックを抑えることができる。また、リフト上昇時には、作業機1に積載した負荷が小さいほど比例電磁弁の弁差圧が大きくなるため、リフト下降時とは逆に、負荷が小さいほど制限を大きくするタイミングを早くすることによりショックを抑えることができる。
【0033】
所定負荷圧に対する所定偏差hは、リフト下降時及びリフト上昇時について、それぞれマップとしてコントローラ10に設定しておいて求めればよい。リフト下降であるかリフト上昇であるかは、リフト操作レバー14のポテンショメータ14bからの操作信号により判断すればよい。
【0034】
図4及び図5を参照しながら、本発明の第2実施形態の制御装置における制御内容について説明する。装置の構成は第1実施形態と同じなので、説明を省略する。
【0035】
オペレータが、作業機1の操作手段の一つであるリフト操作レバー14をハーフ急操作した場合、コントローラ10は、レバー操作量に応じV0からV1に短時間に変化する操作信号を、リフト操作レバー14のポテンショメータ14bから入力する。
コントローラ10は、操作信号がリフト操作レバー14の中立位置前後での不感帯を脱した時点(図4の点P0)で、リフトシリンダ5の動き出す電流よりやや小さい初期電流A0を比例電磁弁17へ出力し始める。この後の出力電流は、出力電流の時間(制御周期)当たりの変化量が所定変数αに制限され、
「制限出力値=前回出力値+α」
の関係の出力電流特性となる。
【0036】
レバー操作後の操作信号値V1に対応する目標電流値A1と前回の出力値との偏差と、制限出力値の単位増加分である所定変数αとの関係を図5に表している。
図5(a)に示すように、偏差が大きいときには所定変数αは、従来同様に作業機1の起動や停止におけるショックを防止する所定値aとなる。出力電流が増加して偏差が所定偏差h以下になると、所定変数αは(偏差,α)=(0,0)及び(h,a)を結ぶ単調増加特性で偏差に応じた値となる。
図5(a)においては、所定偏差h以下において、所定変数αは偏差に比例する実線の特性を示しているが、これに限定するものではなく、例えば1点鎖線にて同図に示す特性でも構わない。
【0037】
この所定変数αの変化により、出力電流は、初期電流A0から所定値aに対応する勾配で増加し、偏差が所定偏差hとなった時点(図4の点P2)から、図5(a)に示す偏差に応じた増加分にて増加して目標電流値A1に達する特性となる。そして、制限制御に基づく出力電流が、目標電流A1に一致したとき(図4の点P4)に制限制御は解除される。
【0038】
これにより、第1実施形態の作用に加え、比例電磁弁への出力電流と目標電流との偏差が所定偏差以下になると、出力電流はその単位時間あたりの変化量が偏差の減少と共に徐々に小さくなり目標電流に一致するので、比例電磁弁のスプールを滑らかに目標位置に停止させることができる。
このため、第1実施形態の効果に加え、作業機をより滑らかに動作させてショックを確実に防止することができる作業機制御装置を得ることができる。
【0039】
なお、第1実施形態と同様に、所定偏差h以下における所定変数αは、図5(a)に矢印及び2点鎖線にて示すように、負荷圧に応じて可変となる特性としてもよい。
所定負荷圧に対する所定変数α(出力電流の勾配)は、リフト下降時及びリフト上昇時について、それぞれ偏差と所定変数αとの関係マップを複数の負荷圧についてコントローラ10に設定しておき、補完演算により算出するなどの方法により求めればよい。
【0040】
また、第1実施形態と同様に、所定偏差hは、図5(b)に矢印及び2点鎖線にて示すように、負荷圧に応じて可変となる特性としてもよい。
所定負荷圧に対する所定偏差hは、リフト下降時及びリフト上昇時について、それぞれ偏差と所定変数αとの関係マップを複数の負荷圧についてコントローラ10に設定しておき、補完演算により算出するなどの方法により求めればよい。
【0041】
図6は、比例電磁弁への出力電流に関し、第2実施形態による特性と従来技術による特性との違いを示したグラフである。
2点鎖線のグラフは、レバー急操作による操作信号に基づく指令出力電流で、この指令出力のまま比例電磁弁を駆動すると、作業機の起動や停止においてショックが発生する。
この起動や停止におけるショックを防止するための従来の出力制限による出力電流が1点鎖線のグラフで、この場合は出力電流が目標電流に一致した時点で、スプールのオーバランによるショックが発生する。
このスプールのオーバランによるショックを防止するため、従来の出力制限に更にフィルタをかけた出力電流が破線のグラフで、応答遅れが発生して好ましくない。
【0042】
実線のグラフが、本発明の第2実施形態による出力電流を示しており、出力電流が目標電流に一致するときスプールを滑らかに停止させている。これにより、従来の制限制御において問題であった、スプールのオーバランによる作業機のショックを、応答遅れを抑えて防止することができる。
なお、本実施形態による方法では、操作信号に基づく指令出力の立ち上がり早さや所定偏差hの値によっては、起動時にα<Aが発生し、その分若干の応答遅れが発生する。この応答遅れは、フィルタに比べ問題にならないレベルであるが、この応答遅れを無くすため、上記の「偏差に応じて、比例電磁弁への出力電流の時間当たりの変化量を変える」制御を、起動時に一定時間キャンセルするようにしてもよい。
【0043】
なお、以上説明した実施形態においては、リフト操作レバー14の中立からのハーフ急操作にて説明したが、本発明はこれに限定するものではない。
すなわち、フル側から中立手前までの減速側への急操作に応用してもよいし、チルト操作レバー15の操作に用いても構わない。また、スイッチのオン操作にて、比例電磁弁を半開する出力電流を出す場合(すなわち、操作信号がオンオフによる矩形信号となる場合)にも適用できるのは勿論である。
更に、フォークリフトにて説明したが、比例電磁弁により油圧シリンダにて作業機を制御する装置全般に対して適用することも可能である。
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、操作手段からの操作信号の時間当たりの変化量が大となっても、比例電磁弁への出力電流の時間当たりの変化量を所定値以下となるように制限する作業機制御装置において、比例電磁弁への出力電流が、操作信号に応じた目標電流に一致する手前で目標電流との偏差が所定偏差以下になると、出力電流の変化量が減少するため、比例電磁弁のスプールは更に減速して目標位置に停止することができる。また、前記偏差が所定偏差以下となるまでは、比例電磁弁への出力電流の変化量は作業機の起動や停止におけるショックを防止する程度の変化量に制限されているだけなので、従来と同程度の良好な応答性が確保できる。
このため、スプールのオーバランが防止でき、レバーを急操作しても制限制御の解除時の作業機のショックを確実に防止でき、応答性のよい作業機制御装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の作業機駆動を説明する図である。
【図2】本発明の第1実施形態の制御を説明する図である。
【図3】本発明の第1実施形態の偏差と所定変数の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施形態の制御を説明する図である。
【図5】本発明の第2実施形態の偏差と所定変数の関係を示すグラフである。
【図6】出力電流の様子を示すグラフである。
【図7】従来技術の作業機駆動を説明する図である。
【図8】従来技術の制御を説明する図である。
【符号の説明】
1…作業機、3…チルトシリンダ、4…マスト、5…リフトシリンダ、6…リフトブラケット、7…フォーク、14…リフト操作レバー、15…チルト操作レバー、16…圧力センサ、17,18…比例電磁弁、14b,15b…ポテンショメータ、10,50…コントローラ。
Claims (5)
- 作業機(4,7)操作用のレバー(14a,15a)の操作量に応じた操作信号を出力する操作手段(14,15)からの操作信号に応じた作業機(4,7)駆動用の比例電磁弁(17,18)の目標電流を算出すると共に、目標電流に基づいて比例電磁弁(17,18)への出力電流の時間当たりの変化量を所定値以下となるように制限する産業車両の作業機制御方法において、
出力電流と目標電流との偏差が所定偏差以下になったとき出力電流の時間当たりの変化量を前記所定値よりも更に小さく制限することを特徴とする産業車両の作業機制御方法。 - 作業機(4,7)操作用のレバー(14a,15a)の操作量に応じた操作信号を出力する操作手段(14,15)と、作業機(4,7)駆動用の比例電磁弁(17,18)と、操作手段(14,15)からの操作信号に応じた比例電磁弁(17,18)の目標電流を算出すると共に目標電流に基づいて比例電磁弁(17,18)への出力電流の時間当たりの変化量を所定値以下となるように制限して出力する制御器(10)とを有する産業車両の作業機制御装置において、
制御器(10)は、出力電流と目標電流との偏差が所定偏差以下になったとき出力電流の時間当たりの変化量を前記所定値よりも更に小さく制限して出力することを特徴とする産業車両の作業機制御装置。 - 請求項2記載の産業車両の作業機制御装置において、
制御器(10)は、出力電流と目標電流との偏差が所定偏差以下になったとき出力電流の時間当たりの変化量を偏差に応じて制限して出力することを特徴とする産業車両の作業機制御装置。 - 請求項2又は3記載の産業車両の作業機制御装置において、積載した負荷の大きさに応じた負荷圧を検出し、検出信号を制御器(10)に出力する圧力センサ(16)を備えると共に、
制御器(10)はさらに、出力電流と目標電流との偏差が所定偏差以下になったときの出力電流の時間当たりの変化量を、圧力センサ(16)により検出される負荷圧に応じて制限して出力することを特徴とする産業車両の作業機制御装置。 - 請求項2又は3記載の産業車両の作業機制御装置において、積載した負荷の大きさに応じた負荷圧を検出し、検出信号を制御器(10)に出力する圧力センサ(16)を備えると共に、
制御器(10)はさらに、前記所定偏差を、圧力センサ(16)により検出される負荷圧に応じて変更することを特徴とする産業車両の作業機制御装置。
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