JP3764082B2 - 医療用ガイドワイヤとバルーンカテーテル、ならびに機器用ワイヤロープ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、心臓血管内等にカテーテルを導入する際に用いる医療用ガイドワイヤとバルーンカテーテルならびに機器用ワイヤロープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
血管造影を目的として、極細可撓管体のカテーテルを血管内に挿入したり、または、冠状動脈の閉塞部位の治療に、バルーンカテーテルを血管内に挿入するのに際し、そのカテーテルの挿入を安全確実にするために用いる医療用ガイドワイヤ1A(以下、単にガイドワイヤ1Aという)は下記の機械的性質が必要になる。
【0003】
即ち、(図10参照)可撓性線条体の主線材2を主要部に成す形態を有して曲りくねった複雑な径路の血管30・分岐血管31に先端部3から挿入して病変部へ導くので、柔軟な可撓性と進行方向の荷重に対する垂直荷重性(耐座屈性)が要求され、さらに、体外に位置する後端部4を必要に応じて左右いずれかの方向に回転させながら血管内へ挿入進行させるので、その回転に対する応分の捩り剛性と、後端部4の操作によって血管内の先端部3の方向や位置が操作できるステアリング性を併有する高度の機械的性質が必要にして、特にその先端部3は、血管内挿入の先導部として機能するに足る柔軟性と屈曲変形からの形状復元性が要求される。
【0004】
そこで、以上の必要な機械的性質を付与する構造のものとして(図10(B)参照)形状記憶性に優れて曲げ変形からの復元性が良好な超弾性合金材の「Ni(ニッケル)−Ti(チタン)合金材」の1本の素線Nと、「剛性に富むSUS(ステンレス)材」の2本の素線Sを撚合した形態の特開平10−76014号公報に示される構造のもの、或は特公平6−83726号公報に示される「主線材2を単一材質のNi−Ti合金材または複数のNi−Ti合金材素線のみの撚合線」によって形成した公知例がある。
【0005】
一方、血管狭窄部の治療に用いるバルーンカテーテル40は(図11参照)樹脂製可撓性の細長管体のアウターチューブ42に、同じく可撓性の細長管体のインナーチューブ43をインサートセットした基本構造にして、血管内へ挿入して先端のバルーン部41を病変部に導入留置させるので、そのチューブ体の剛性を向上して血管内挿入進行のステアリング性を向上する為に、アウターチューブ42内にステンレス単線の補強用芯線44がインサートセットされている。
【0006】
他方、道路側端に設けるガードレール用ワイヤロープや危険場所用安全柵ロープ、或は自動車用コントロールケーブル・建物の火災時の排煙用高窓の操作用ロープ等の機器用ワイヤロープは、鋼素線撚合の通常形態のワイヤロープが用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のガイドワイヤ1Aの公知例のうち、Ni−Ti合金材の1本の素線NとSUS材の2本の素線Sから成る前者のものは、機械的性質が異なる異質素線の2本と1本の撚合構成のため、その異質素線の組合せによる機械的性質の一応の補完作用は存在するものの、3本の素線N・Sの接合密着性が不充分にして、主線材2の太径化が避けられず、その上、挿入抵抗に抗して回転させながら血管内挿入するとき、素線N・Sの撚合が緩んでワイヤ径Dの膨径を生じたり、回転抵抗による素線間滑りによるトルクロスを生じて挿入性を阻害する不具合がある。
【0008】
そして、Ni−Ti合金材のみから成る前記後者のものは、Ni−Ti合金材による形状回復性・可撓性は確保できるものの剛性不足になるので、ガイドワイヤとしての耐座屈性・捻回性・ステアリング性等の必要機械的特性に欠ける。
【0009】
一方、前記のバルーンカテーテル40の補強用芯線44はステンレス単線構造のため、血管内を屈曲して進行したときの形状復元性に欠け、血管内の挿入進行の抵抗が大にして挿入・引き抜き操作がしづらいと共に、血管壁の損傷や患者の苦痛をもたらす不具合がある。
【0010】
そして、前記の機器用ワイヤロープは「弾性伸びによる衝撃吸収力」や「形状回復性」に劣るので、例えば安全柵ロープの場合には自動車等による衝撃力の吸収緩和性に欠け、前記例示のコントロールケーブルのインナーワイヤのワイヤロープを調車・ガイド部材に巻き掛けて使用する場合は、その巻ぐせが残留してアウターケーシングとの摺動性を阻害して、ワイヤロープの操作性を損う不具合がある。
【0011】
本発明は、以上の従来技術の難点を解消する「Ni−Ti合金材を構成要素に成す医療用ガイドワイヤ」と、この医療用ガイドワイヤと主要構成要件を共通に成し、かつ、ワイヤロープ体として同一の技術分野に属する「補強用芯線を用いたバルーンカテーテル」と「機器用ワイヤロープ」を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以上の技術課題を解決する本発明は「可撓性線条体の主線材を主要部に成す医療用ガイドワイヤにおいて、該主線材または該主線材の先端部に嵌装するコイルばねのコイル線材が、少なくとも1本のNi(ニッケル)−Ti(チタン)合金材の超弾性金属素線と、該超弾性金属素線よりも延伸性に優れる異質の単数または複数の金属素線の撚合線にして、かつ、該撚合線の外径を塑性変形縮径した強制縮径撚合線と成し、該強制縮径撚合線が、相対的に延伸性が劣る該超弾性金属素線を、延伸性の優れる金属素線が凹曲面で抱着する形態と成って一体化係止させた構造」と、
【0013】
「可撓性細長チューブ体に補強用金属芯線をインサートしたバルーンカテーテルにおいて、該補強用金属芯線が、少なくとも1本のNi−Ti合金材の超弾性金属素線と、該超弾性金属素線よりも延伸性に優れる異質の単数または複数の金属素線の撚合線にして、かつ、該撚合線の外径を塑性変形縮径した強制縮径撚合線と成し、該強制縮径撚合線が相対的に延伸性が劣る該超弾性金属素線を、延伸性の優れる金属素線が凹曲面で抱着する形態となって一体化係止させた構造を特徴とするバルーンカテーテル」と、
【0014】
「金属素線群を撚合した機器用ワイヤロープにおいて、該金属素線群が、少なくとも1本のNi−Ti合金材の超弾性金属素線と、該超弾性金属素線よりも延伸性に優れる異質の単数または複数の金属素線の撚合線にして、かつ、該撚合線の外径を塑性変形縮径した強制縮径撚合線と成し、該強制縮径撚合線が、相対的に延伸性が劣る該超弾性金属素線を、延伸性の優れる金属素線が凹曲面で抱着する形態となって一体化係止させた構造を特徴とする機器用ワイヤロープ」が特徴である。
【0015】
即ち、前記構成の「医療用ガイドワイヤの主線材・コイル線材」は、Ni−Ti合金材の超弾性金属素線と該Ni−Ti合金材以外のステンレス材金属素線等の異質2種の素線を撚合して可撓性のワイヤロープ形態の母線に成し、しかるのち該母線を「ダイス引き抜き加工」または「スエージング加工」によって塑性変形縮径して、該塑性変形縮径による圧縮残留応力を付与して線材の優れた剛的性質と、超弾性金属素線の存在による「屈曲変形させた後の良好な形状回復性」を併有させる思想を特徴としている。
【0016】
そして、前記構成のバルーンカテーテルの補強用芯線と機器用ワイヤロープは、同じくNi−Ti合金材の超弾性金属素線と、該Ni−Ti合金材素線以外の異質金属素線の混成撚合線にすることによって、応分の剛性と形状回復性・衝撃吸収性等を併存付与させる思想から成るものである。
【0017】
そして、本発明の医療用ガイドワイヤの前記の強制縮径撚合線構成は、主線材の全部または一部、および主線材を樹脂被覆で包み込んだ形態・コイルばね線状体の主線材から成る等の公知のすべての形態の医療用ガイドワイヤに適用する。
【0018】
そして、激しく屈曲した細い血管へ先導挿入する主線材の先端部の挿入進行性を特段に向上させる技術意図によって、前記Ni−Ti合金素線を特公平6−83726号公報等に示される公知の「伸びの増加によっても荷重が実質的に一定する荷重一定部」が不存在の加工硬化型Ni−Ti合金線に材質限定する態様を採択する。
【0019】
【作用】
以上の本発明の医療用ガイドワイヤの主線材・コイル線材は形状回復性能を有するNi−Ti合金材の素線と該Ni−Ti合金材以外の異質金属素線との撚合から成るので、その異質金属素線の材質を任意に選択することによって「形状回復性に優れ、かつ、抗張力・曲げ剛性・耐座屈性・耐捻回性」等の必要な機械的性質を高度に付与することができる。
【0020】
そして、異質2種素線撚合の母線を塑性変形縮径加工して成るので、2本の素線のうちの延伸性に優れる素線が、相対的に延伸性が劣る他の金属素線を凹曲面で抱着する形態となって一体化係止するので、血管内挿入時の回転操作による捻回外力では、その一体化形態は容易に崩れるおそれはなく2本の素線間の接合圧接面の相対滑りは「医療用ガイドワイヤの実用上」では発生し難い。従って、血管内挿入時の回転操作のトルクロスがなく、その上、該相対滑りによる素線ほぐれの線径膨大化も発生しないので、特段に良好な血管内操作性が確保できる。
【0021】
さらに、前記の塑性変形縮径の要件を有するので、その塑性変形に基づく残留応力が大にして線材としての機械的剛性が向上するので、同一剛性を確保する為の線径の一段の細径化が可能にして、医療用ガイドワイヤの細径化が促進できる。
【0022】
そして、加工硬化型Ni−Ti合金線に材質限定した前記態様のものは、下記の特有作用がある。即ち、高度の可撓性・屈曲性が不可欠にして可及的細径サイズが必須要件の主線材の先端部は、大なる使用時応力を生ずるので、撚合線を構成するNi−Ti合金線が表1(B)に示す「荷重が一定のもとで歪が進行するプラトー部Lが存在する応力歪特性」のものでは、破断防止のために線径サイズの下限が限定される。しかし、表1(A)に示す加工硬化型のNi−Ti合金線は「応力と歪が概ね比例して、前記のプラトー部Lが不存在の応力歪特性」を有するので、一定の伸びに対する破断強度が「プラトー部L存在のもの」より増大する。従って、同一の応力条件における前記先端部の線径は、プラトー部L存在のNi−Ti合金線より一段の細径化が可能になる。
【0023】
【表1】
【0024】
そして、前記構成のバルーンカテーテルの補強用芯線と機器用ワイヤロープはNi−Ti合金素線とステンレス材素線等の複合材質の素線群からなるので、用途に適する剛性・形状回復性を併有させることができる。そして、前記構成の機器用ワイヤロープのNi−Ti合金線を前記プラトー部Lが存在する「応力歪特性」の態様にすると、ワイヤロープが受ける衝撃的抗張力を「プラトー部Lの特性による伸び」によって吸収するので、優れた衝撃吸収能が付与できる。
【0025】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の医療用ガイドワイヤ1(以下、単にガイドワイヤ1という)の1実施例を図1を参照して説明する。即ち、可撓性細長線の主線材2を主要部に成すと共に、その主線材2の先端部3を細径にしてコイルばね5を嵌装し、その先端部3以外の部分を一様径の露出線にして後端部分を「血管挿入時に体外に出して操作する後端部4」と成す通常形態のガイドワイヤにおいて、この主線材2は以下の構成を有している。
【0026】
即ち、主線材2は同一の直径D1を有する円形断面線のNi−Ti合金線の1本の超弾性金属素線N(以下、単に素線Nという)と、SUS材(ステンレス材)の1本の金属素線S(以下、単に素線Sという)を撚合した撚合線の母線6を、ダイス引き抜き加工またはスエージング加工によって直径D2に塑性変形縮径した強制縮径撚合線Wから成る構造を有し、その塑性変形縮径後に素線N・Sの接合谷部7が外周にスパイラル状に現れた形状を有している。なお、この実施例のものはD1=0.3粍、D2=約0.35粍、母線6の素線N・Sのスパイラルピッチ=約2.0粍である。
【0027】
そして、以上の主線材2を「概ね400〜500℃×30分間」加熱処理して、Ni−Ti合金材の素線Nの「主線材2の直線形状に沿う直線形状記憶処理」が施されている。
【0028】
以上の図1実施例のガイドワイヤ1は前記の作用を奏する。即ち、2本の素線N・Sが撚合した母線6が塑性変形縮径されているので、引き抜き加工による強制縮径のときに延伸性に富むSUS材素線Sが伸延して、(図1(C)参照)相対的延伸性が劣るNi−Ti合金線の素線Nを凹曲面8によって抱着して一体化係止した断面形態を呈する。従って、素線N・Sの相互係止力が大にして、血管内挿入のとき素線N・Sの撚り方向の逆方向に回転させても、素線N・Sの撚り戻し変形がなく、主線材2の径膨大を防止すると共に、その回転による凹曲面8の相対滑りによる回転トルクロスが無く、血管内の挿入進行性が特段に向上する。
【0029】
そして、剛性に富むSUS材の素線Sと形状記憶性による直線復元性に優れる素線Nとの複合から成るので、前記の高度な必要機械的特性を満足すると共に、その塑性変形縮径加工による残留応力に基づく機械的性質の向上によって主線材2の一段の細径化が可能にして血管への挿入性・引き抜き性が向上し、図2に例示する「分岐血管31・蛇行血管30への挿入進行のときの図示点線例示の不良現象」がなく、極めて円滑かつ安全にして迅速にできる特段に良好なステアリング性が確保できる。
【0030】
続いて、図3〜図7を参照して本発明の他の実施例のガイドワイヤを説明する。即ち、2本の異種金属の素線N・Sを撚合した母線6を塑性変形縮径し、しかるのち直線性保持の形状記憶処理した線材から成るものにおいて、図3(A)のものは主線材2が「素線Nが1本、素線Sが2本」合計3本素線の母線6がダイス引き抜き加工された強制縮径撚合線Wに成っている。そして、図3(B)のものは素線N・Sのいずれか一方(図示のものは素線N)が中空線にして、かつ該中空部に「タングステン・プラチナ・金・タンタル」等の放射線不透過材10を充填した構造を有している。この図3(B)実施例のものは放射線投射によって血管内の挿入位置が視認把握できる。
【0031】
次に図4に示すものは先端部3以外の主線材2の主要部分を図1実施例に示す構造にすると共に、先端部3のみを「SUS材製の円錐部11つき先端ピース12」に成し、この先端ピース12を強制縮径撚合線Wから成る主線材2の先端に「ロー付け・接着剤」によって固着したものにして、血管への挿入時に先端部3を曲げ変形するプリシエイプがし易くしてある。そして、図4(C)のものは先端ピース12を「多段状の先薄偏平形状」に成し、先端部3のプリシエイプ性を先端方向へ多段的に大にして、曲率半径が前端方向へ徐変減少する形態を有し血管内への先導挿入性が向上させてある。
【0032】
一方、図5(A)に示すものは先端ピース12のみを図1・図3実施例の強制縮径撚合線Wで形成し、この先端ピース12を全体SUS材の主線材2の先端に固着連結した構造を有している。この図5(A)のものは先端ピース12以外の部分の剛性が大になるので血管治療する患者の固有事情に合せて有効に利用できる。
【0033】
そして、図5(B)のものは主線材2の全体が強制縮径撚合線Wから成るものにおいて、先端部3以外の主線材2の主要部分がSUS材パイプ15にインサートセットされている。この図5(B)のものは血管への挿入剛性が特に大に必要なケースに適する。
【0034】
つぎに、図6(A)に示すものは図1・図3実施例の強制縮径撚合線Wから成る主線材2が造影剤入り樹脂被覆16に包み込まれている。この図6(A)のものは主線材2の外周のスパイラル条の接合谷部7に樹脂分が入り込んでアンカー効果を呈するので、血管壁へのソフトタッチを図る被膜つきガイドワイヤの性能が安定する。
【0035】
そして、図6(B)に示すものは先端部3にコイルばね5を嵌装する形態のものにおいて、コイルばね15のコイル線材17が図1実施例の主線材2と同一の強制縮径撚合線Wにしてコイルばね5の円筒形コイル状のストレート形状の形状記憶処理した構造に成っている。この図6(B)の実施例のものは、コイルばね5の形状復元性と剛性を併存させることができるので、図2例示の先端部3による血管挿入性が向上する。そして、図6(C)のものは先端部3を除く主線材2が、強制縮径撚合線Wのコイル線材17から成るコイルばね形態に成っている。
【0036】
一方、図7は先端部3が自由状態においてU字状を呈する公知のアンギオ形態のガイドワイヤ1が示してあり、先端部3を含む主線材2の全体が図1実施例の主線材2と同一の構成に成っている。この図7実施例のものは先端部3の形状回復性に優れるので、先端部3が「反復使用による変形」を生ずることなく所要のU字形態が安定する。
【0037】
以上の各実施例の素線Nの歪応力特性は、表1(A)(B)に示す「プラトー部L存在」「プラトー部L不存在」のいずれでも良く、用途や必要性能に応じて任意に使用される。しかし、先端部3の血管への屈曲先導性の特段の向上を図る技術意図によって、加工硬化型の「プラトー部L不存在」のものに特定限定する形態にすることがある。この材質限定のものは段落0022に示す特有作用がある。
【0038】
なお、本発明の医療用ガイドワイヤは前記の実施例に限定されず、素線Nを複数にしたり素線N・Sの総数を4本以上にすることもあり、前記実施例の組合せ形態も包含されると共に、公知のすべての形態の医療用ガイドワイヤに適用する。そして、前記要件の塑性変形縮径の縮径度は、特に制限するものではなく図1実施例の重度縮径より緩和したものでも良い。そして、母線6を構成する素線N・Sは母線6の「ダイス引き抜き加工・スエージング加工」が可能な範囲の「例えば隋円断面線」でも良い。そして、素線Nと異質の金属素線は素線S以外の鋼線・銅線等であっても良く、図6実施例の樹脂被覆16を設けるものでは、樹脂剤の流動性を良くするために素線Sより熱伝導性に優れる材質にすることがある。
【0039】
続いて、図8を参照して本発明のバルーンカテーテル40の1実施例を説明する。即ち、図11に示す「アウターチューブ42の中空部に補強用芯線44をインナーチューブ43の長手方向に沿えてインサートセット」したものにおいて、この実施例の補強用芯線44は前記実施例のガイドワイヤ1の主線材2と同一構造を有し、Ni−Ti合金材の超弾性金属線の素線NとSUS材金属線の素線Sを撚合した母線がスエージング加工されて塑性変形縮径した強制縮径撚合線Wの構造に成っている。
【0040】
この図8実施例のバルーンカテーテル40は補強用芯線44が剛性と形状回復性を併有するので、前記の医療用ガイドワイヤ1と同様な「良好な血管挿入性と抜き出し性」を有すると共に、屈曲した血管への挿入脱を反復しても、バルーンカテーテル40の正常な形状を安定維持してカテーテル性能が安定する。
【0041】
なお、本発明のバルーンカテーテル40の補強用芯線44は、本発明の医療用ガイドワイヤ1の撚合線と同一形態を適用するものにして、素線Nと組合せる異質素線は前記実施例のSUS材の素線S以外の鋼線・銅線等であっても良く、さらに、若干太径になるものの強制縮径加工しない母線6のままにすることもあり、素線Nの性状は表1に示す「プラトー部Lの存在・不存在」のいずれであっても良い。
【0042】
続いて、図9を参照して本発明の機器用ワイヤロープ20を説明する。即ち(図9(A)参照)自動車用コントロールケーブル・建物火災時の排煙用高窓開閉装置の操作用コントロールケーブル等の機器用ワイヤロープ20において、このワイヤロープ20は図9(C)例示のように4本の素線Sと3本の素線Nの合計7本の素線から成る母線6を7本撚りした「7×7」(図示しない)の公知の複撚り構造にして、前記実施例のガイドワイヤ1の主線材2と同様な形状回復処理が施されている。
【0043】
この機器用ワイヤロープ20はN素線の存在によって形状回復性を有するので、巻き掛け部材23への巻ぐせが残留しない。従って、例えばその巻き掛け姿勢を長期間保持して緊急時のみ作動させる場合、ワイヤロープ20の巻ぐせ残留がないのでアウターケーシング22とインナーワイヤのワイヤロープ20との良好な摺動性が確保され、非常時の排煙用高窓開閉装置の操作性能が安定する。
【0044】
つぎに、本発明の機器用ワイヤロープ20の他の実施例を説明する。即ち、(図9(B)参照)図9(A)実施例のものと同一構造のワイヤロープにして、かつ、素線Nが「表1(B)に示すプラトー部L存在」の性状のものに限定構成した構造を有し、図示例示のように支柱24間に張設して高速道路の側縁に立設したガードレール用等に使用される。
【0045】
この実施例のものは段落0022・0024に示した「プラトー部Lの存在」による衝撃吸収能を有するので、自動車の衝突事故等による大なる衝撃力を吸収し、ワイヤの破断防止と破断防止による事故損傷の拡大が防止できる。
【0046】
そして、この「プラトー部L存在」性状の素線Nを用いたワイヤロープ20は、図示例示以外の使用中の衝撃力を受け易い「船舶の係留ロープ・自動車のアクセルペダル操作用コントロールケーブル・危険場所の安全柵ロープ・釣り糸用ワイヤロープ」等として広範な用途が可能にして、前記の特有作用が享受できると共に、前記コントロールケーブルでは衝撃吸収用のクッション部材が不要になってケーブルシステムが簡素化できる。
【0047】
さらに、前記の高窓排煙装置では装置自体の重量を担持するワイヤロープの急激荷重を緩和するためのワイヤロープ用ブレーキ装置を付設するものの、作動が極めて稀なワイヤロープへの空中異物の付着堆積・巻き掛けによる曲りぐせ・環境温度等によって正常なブレーキ機能・ワイヤロープ機能が低下して、火災時の排煙性能を失うおそれがある。しかし、この排煙装置に「プラトー部L存在」のN素線からなる機器用ワイヤロープ20を用いると、前記の衝撃吸収能・形状回復性によって、その不具合が解消できると共に前記のブレーキ装置を省略してワイヤロープシステムが簡素化できる特有作用がある。
【0048】
なお、この本発明の機器用ワイヤロープ20は、前記例示の撚り構成以外の公知のワイヤロープの素線構成のいずれにも応用すると共に、特に細径化と剛性が必要な場合は「母線6または複撚り後のワイヤ径」を塑性縮径加工して前記の強制縮径撚合線Wの形態にすると共に、その塑性縮径加工はスエージング加工とダイス引き向き加工の2段加工にすることがある。
【0049】
【発明の効果】
以上の説明のとおり、本発明の医療用ガイドワイヤは、剛性・耐座屈性・耐撚り戻し性・可撓性・細径化性等の高度な機械的性質と屈曲変形姿勢からの形状復元性を備えた高品質にして、血管内への挿入・抜き出し性能が特段に良好にして治療時の患者の苦痛を一段と緩和し、当該治療性の一段の向上を図る。
【0050】
そして、本発明の補強用芯線を用いたバルーンカテーテルは屈曲変形して血管内挿入を反復しても、正常な形状を維持してカテーテルの性能安定を図り、本発明の機器用ワイヤロープは、従来物に存在しない形状回復性・衝撃吸収能を備えた高性能ワイヤロープとして多用途に有用に応用できる。以上の諸効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の医療用ガイドワイヤの1実施例を示し、(A)はその全体正面図、(B)は主線材の母線の部分正面図、(C)は主線材の部分正面図
【図2】図1実施例の医療用ガイドワイヤの使用状態の説明図
【図3】本発明の医療用ガイドワイヤの他の実施例の主線材を示し、(A)はその横断面図、(B)はその部分正面図
【図4】本発明の医療用ガイドワイヤの他の実施例の主線材を示し、(A)(B)(C)ともその部分正面図
【図5】本発明の医療用ガイドワイヤの他の実施例の主線材を示し、(A)(B)ともその部分正面図
【図6】本発明の医療用ガイドワイヤの他の実施例の主線材を示し、(A)(B)(C)はその正面図、(D)は(B)(C)のコイル線材の断面図
【図7】本発明の医療用ガイドワイヤの他の実施例の主線材を示し、(A)はその部分正面図、(B)は主線材の断面図
【図8】本発明のバルーンカテーテルの1実施例の断面図
【図9】本発明の機器用ワイヤロープの1実施例を示し、(A)(B)はその使用状態の説明図、(C)はその断面図
【図10】従来の医療用ガイドワイヤを示し、(A)はその使用状態の説明図、(B)はその断面図
【図11】従来のバルーンカテーテルの構造を示し、(A)はその正面図、(B)はその断面図
【符号の説明】
1 本発明の医療用ガイドワイヤ
1A 従来の医療用ガイドワイヤ
2 主線材
3 先端部
4 後端部
5 コイルばね
6 母線
7 接合谷部
8 凹曲面
10 放射線不透過材
12 先端ピース
16 樹脂被覆
17 コイル線材
20 機器用ワイヤロープ
30 血管
31 分岐血管
40 バルーンカテーテル
42 アウターチューブ
43 インナーチューブ
44 補強用芯線
L プラトー部
N Ni−Ti合金材の素線
S ステンレス材の素線
W 強制縮径撚合線
Claims (9)
- 可撓性線条体の主線材を主要部に成す医療用ガイドワイヤにおいて、該主線材または該主線材の先端部に嵌装するコイルばねのコイル線材が、少なくとも1本のNi(ニッケル)−Ti(チタン)合金材の超弾性金属素線と、該超弾性金属素線よりも延伸性に優れる異質の単数または複数の金属素線の撚合線にして、かつ、該撚合線の外径を塑性変形縮径した強制縮径撚合線と成し、該強制縮径撚合線が、相対的に延伸性が劣る該超弾性金属素線を、延伸性の優れる金属素線が凹曲面で抱着する形態と成って一体化係止させた構造を特徴とする医療用ガイドワイヤ。
- 1本の超弾性金属素線と該超弾性金属素線よりも延伸性に優れる異質の1本の金属素線の強制縮径撚合線から成る請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。
- 超弾性金属素線よりも延伸性に優れる異質の金属素線がステンレス材である請求項1または請求項2に記載の医療用ガイドワイヤ。
- スエージング加工またはダイス引き抜き加工によって強制縮径された強制縮径撚合線から成る請求項1・請求項2・請求項3のいずれかに記載の医療用ガイドワイヤ。
- 超弾性金属素線が、伸びの増加によっても荷重が実質的に一定する荷重一定部が不存在の加工硬化型Ni−Ti金属線である請求項1・請求項2・請求項3・請求項4のいずれかに記載の医療用ガイドワイヤ。
- 主線材に樹脂被覆を設けた請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の医療用ガイドワイヤ。
- 可撓性細長チューブ体に補強用金属芯線をインサートしたバルーンカテーテルにおいて、該補強用金属芯線が、少なくとも1本のNi−Ti合金材の超弾性金属素線と、該超弾性金属素線よりも延伸性に優れる異質の単数または複数の金属素線の撚合線にして、かつ、該撚合線の外径を塑性変形縮径した強制縮径撚合線と成し、該強制縮径撚合線が相対的に延伸性が劣る該超弾性金属素線を、延伸性の優れる金属素線が凹曲面で抱着する形態となって一体化係止させた構造を特徴とするバルーンカテーテル。
- 金属素線群を撚合した機器用ワイヤロープにおいて、該金属素線群が、少なくとも1本のNi−Ti合金材の超弾性金属素線と、該超弾性金属素線よりも延伸性に優れる異質の単数または複数の金属素線の撚合線にして、かつ、該撚合線の外径を塑性変形縮径した強制縮径撚合線と成し、該強制縮径撚合線が、相対的に延伸性が劣る該超弾性金属素線を、延伸性の優れる金属素線が凹曲面で抱着する形態となって一体化係止させた構造を特徴とする機器用ワイヤロープ。
- Ni(ニッケル)−Ti(チタン)合金材の少なくとも1本の超弾性金属素線が、伸びの増加によって荷重が実質的に一定する応力歪特性を有するものである請求項8に記載の機器用ワイヤロープ。
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