JP3764038B2 - 背部閉じ合せ型の使い捨て外衣 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、背部閉じ合せ型の使い捨て外衣に関する。
【０００２】
【従来の技術】
外衣の一例としては、図５に示すように、前身頃２２と胴周り方向に分かれる第１および第２後身頃２３Ａ，２３Ｂとを有する身頃本体２１と、身頃本体２１の上端部の両側に取り付けられた両袖２５Ａ，２５Ｂとから構成されたものがある。外衣２０には、第１および第２後身頃２３Ａ，２３Ｂの閉じ合わせを保持するための締結部として、それら後身頃２３Ａ，２３Ｂに４条の帯片２４Ａ，２４Ｂ，２４Ｃ，２４Ｄが取り付けられている。外衣２０では、帯片２４Ａが第１後身頃２３Ａの外側部に配置され、帯片２４Ｂが前身頃２２と第１後身頃２３Ａとの境界側部に配置され、帯片２４Ｃが第２後身頃２３Ｂの外側部に配置され、帯片２４Ｄが前身頃２２と第２後身頃２３Ｂとの境界側部に配置され、帯片２４Ａ，２４Ｂ，２４Ｃ，２４Ｄの一端部がそれら側部における上下方向中央部に取り付けられている。
【０００３】
図５の外衣２０を着用するには、第１および第２後身頃２３Ａ，２４Ｂを胴周り方向へ開いて着用者が両腕を両袖２５Ａ，２５Ｂに通し、第２後身頃２３Ｂを閉じて帯片２４Ｃと帯片２４Ｂとを結んだ後、第２後身頃２３Ｂの外側に第１後身頃２３Ａを重ね合わせて帯片２４Ａと帯片２４Ｄとを結ぶ。さらに、第１および第２後身頃２３Ａ，２３Ｂの上端部に取り付けられたメカニカルファスナ２６，２７を係合させて着用者の首周りを締める。連結部として帯片を使用した外衣が、実開平３−４５９１８号公報と特開平６−２０７３０１号公報とに開示されている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
外衣２０では、図６に示すように、それを着用した着用者が腕を前方へ伸ばして肘を曲げたときに、胴周り方向に作用する張力が帯片２４Ａの一端部近傍における部位Ｓ１に集中し、さらに、その張力が部位Ｓ１から矢印で示すように腕の付け根付近の部位Ｓ２をとおって着用者の肩へ向って伝わる。外衣２０では、矢印に沿って作用する張力により、着用者の背における腰上部から肩部にかけて局所的に大きな衣服圧がかかり、外衣２０の着用時に不快な圧迫感がある。ここで、衣服圧とは、外衣２０によって着用者が受ける圧迫力をいう。
【０００５】
本発明の課題は、着用者の背に局所的に大きな衣服圧がかかることを防ぐことができ、不快な圧迫感がない外衣を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決するための本発明の前提は、前身頃と胴周り方向に分かれる第１および第２後身頃とから身頃本体を形成し、前記第１および第２後身頃を胴周り方向へ開いて着用者が両腕を両袖に通し、前記第２後身頃を閉じて該第２後身頃の上下に延びる自由側部を、前記第１後身頃と前記前身頃の各固定側部どうしを固着してなる境界側部に締結した後、前記第２後身頃の外側に前記第１後身頃を重ね合わせて前記第１後身頃の上下に延びる自由側部を、前記第２後身頃と前記前身頃の各固定側部どおしを固着してなる境界側部に締結して着用する背部閉じ合せ型の使い捨て外衣である。
【０００７】
かかる前提において本発明では、前記背部閉じ合せ型の使い捨て外衣が、前記各後身頃の前記自由側部に位置し、前記胴周り方向外方へ凸となる実質的に三角形状を呈する連結部を有し、該連結部が前記第１および第２後身頃の上下方向中央部に位置する頂部と、前記自由側部の上方から前記頂部へ向かって延びる第１斜辺と、前記自由側部の下方から前記頂部へ向かって延びる第２斜辺と、前記第１および第２斜辺を結ぶ底辺とを有し、前記第１後身頃の前記自由側部に位置する一方の前記連結部における前記頂部の内面には、メカニカルファスナのうちのフック部材とループ部材とのいずれか一方からなる第１の係合手段を備え、前記第２後身頃の前記自由側部に位置する他方の前記連結部における前記頂部の外面には、メカニカルファスナのうちのフック部材とループ部材とのいずれか一方からなる第２の係合手段を備え、前記第１後身頃と前記前身頃の前記境界側部近傍の前記前身頃内面における前記境界側部の上下方向中央部には、前記第２の係合手段を構成する前記メカニカルファスナのうちの前記フック部材と前記ループ部材とのいずれか他方からなる第１の被係合域を備え、前記第２後身頃と前記前身頃の前記境界側部近傍の前記前身頃外面における前記境界側部の上下方向中央部には、前記第１の係合手段を構成する前記メカニカルファスナのうちの前記フック部材と前記ループ部材とのいずれか他方からなる第２の被係合域とを備え、前記第１の係合手段が前記第２の被係合域に係脱し、前記第２の係合手段が前記第１の被係合域に係脱することを特徴とする。
【０００８】
【０００９】
【発明の実施の形態】
添付の図面を参照して、本発明に係る背部閉じ合せ型の使い捨て外衣の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【００１０】
図１，２は、前身頃３の側から見た外衣１の斜視図と、図１の外衣１の展開平面図とであり、図３は、着用状態を示す外衣１の斜視図である。図１では、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂを胴周り方向へ開き、一方の袖６Ａを前身頃３の側に倒伏させた状態で示す。なお、前身頃３や第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂ、連結部５Ａ，５Ｂにおける内面とは、外衣１を着用した着用者に対向する面をいい、外面とは、着用者に非対向の面をいう。
【００１１】
外衣１は、身頃本体２と、身頃本体２の上端部の両側に取り付けられた両袖６Ａ，６Ｂとから構成されている。外衣１では、それを着用すると、身頃本体２の上端部に襟刳りが環状に連なり、身頃本体２の裾周りも環状に連なる。身頃本体２は、それぞれ別体の、前身頃３と、胴周り方向に分かれる第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂとから形成されている。
【００１２】
前身頃３は、上下に延びる固定側部３ａと、胴周り方向へ延びる上下端部３ｃ，３ｄとを有する。前身頃３の上端部３ｃには、その略中央を下端部３ｄの方向へ凸となるように弧を画く襟刳り３ｅが延び、襟刳り３ｅから固定側部３ａヘ向って袖刳り３ｆ各々が直状に延びている。前身頃３の固定側部３ａにおける上下方向中央部には、第１および第２の被係合域となる矩形のループ部材８Ａ，８Ｂが配置されており、第１の被係合域である一方のループ部材８Ａが前身頃３の内面に取り付けられ、第２の被係合域である他方のループ部材８Ｂが前身頃３の外面に取り付けられている。
【００１３】
第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂは、上下に延びる固定側部４ａおよび自由側部４ｂと、胴周り方向へ延びる上下端部４ｃ，４ｄとを有する。それら後身頃４Ａ，４Ｂの上端部４ｃには、その略中央から自由側部４ｂヘ向い、下端部４ｄの方向へ凸となるように弧を画く襟刳り４ｅが延び、その略中央から固定側部４ａへ向って袖刳り４ｆが直状に延びている。
【００１４】
第１後身頃４Ａの上端部４ｃの内面には、襟刳り４ｅに沿ってフック部材９が取り付けられている。第２後身頃４Ｂの上端部４ｃの外面には、襟刳り４ｅに沿ってループ部材１０が取り付けられている。第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂの自由側部４ｂには、それら後身頃４Ａ，４Ｂの閉じ合わせを保つための一対の連結部５Ａ，５Ｂが取り付けられている。
【００１５】
連結部５Ａ，５Ｂは、実質的に三角形を呈し、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂとは別体のシート部材から形成されている。連結部５Ａ，５Ｂは、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂの自由側部４ｂにつながって胴周り方向外方へ凸となって延びている。連結部５Ａ，５Ｂは、後身頃４Ａ，４Ｂの上下方向中央部に位置する頂部５ａと、自由側部４ｂの上方から頂部５ａへ向って延びる第１斜辺５ｂと、自由側部４ｂの下方から頂部５ａへ向って延びる第２斜辺５ｃと、自由側部４ｂと並行して後身頃４Ａ，４Ｂの上端部４ｃと下端部４ｄとの間を上下に延びる底辺５ｄとを有する。
【００１６】
連結部５Ａ，５Ｂの頂部５ａには、第１および第２の係合手段となるフック部材１１Ａ，１１Ｂが配置されており、第１の係合手段である一方のフック部材１１Ａが連結部５Ａの内面に取り付けられ、第２の係合手段である他方のフック部材１１Ｂが連結部５Ｂの外面に取り付けられている。連結部５Ａ，５Ｂは、その底辺５ｄ近傍が第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂの自由側部４ｂに固着されている。
【００１７】
両袖６Ａ，６Ｂには、前身頃３の袖刳り３ｆと第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂの袖刳り４ｆとに並行する袖付け６ａが延び、袖付け６ａの間に袖山中央６ｂが延びている。両袖６Ａ，６Ｂは、袖付け６ａから袖口６ｃへ向い先細りの筒状を呈する。両袖６Ａ，６Ｂの袖口６ｃには、それら袖６Ａ，６Ｂの周り方向へ弾性伸縮性を有するカフス７が取り付けられている。
【００１８】
外衣１では、図２に示すように、前身頃３の袖刳り３ｆと両袖６Ａ，６Ｂの袖付け６ａとを一致させ、後身頃４Ａ，４Ｂの袖刳り４ｆと両袖６Ａ，６Ｂの袖付け６ａとを一致させた状態で、袖刳り３ｆ，４ｆと袖付け６ａとが互いに固着されている。外衣１は、図２の状態から、両袖６Ａ，６Ｂを線Ｘによって折曲し、前身頃３と後身頃４Ａ，４Ｂとを重ね合わせる。その後、前身頃３と後身頃４Ａ，４Ｂとをそれら身頃３，４Ａ，４Ｂの固定側部３ａ，４ａにおいて固着し、両袖６Ａ，６Ｂの袖下６ｄを固着するとともに、カフス７の両側部を固着することで、図１の外衣１を得ることができる。なお、前身頃３と後身頃４Ａ，４Ｂの各固定側部３ａ，４ａどうしを固着することでそれらの各固着部は、前身頃３と後身頃４Ａ，４Ｂとを分ける境界側部となる。
【００１９】
外衣１を着用するには、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂを胴周り方向へ開いて着用者が両腕を両袖６Ａ，６Ｂに通し、第２後身頃４Ｂを閉じて連結部５Ｂに取り付けられた第２の係合手段であるフック部材１１Ｂを第１の被係合域であるループ部材８Ａに係合させる。その後、第２後身頃４Ｂの外側に第１後身頃４Ａを重ね合わせ、連結部５Ａに取り付けられた第１の係合手段であるフック部材１１Ａを第２の被係合域であるループ部材８Ｂに係合させる。さらに、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂの上端部４ｃに取り付けられたフック部材９とループ部材１０とを係合させて着用者の首周りを締める。
【００２０】
外衣１は、図３に示すように、外衣１の着用状態において、それを着用した着用者が腕を前方へ伸ばして肘を曲げたとしても、胴周り方向の張力が連結部５Ａ，５Ｂの頂部５ａから底辺５ｄに向って分散する。外衣１では、多数の矢印Ｙ２で示すように、張力が分散して連結部５Ａ，５Ｂから着用者の肩へ伝わるので、従来技術のそれと比較し、着用者の背における腰上部から肩部にかけて局所的に大きな衣服圧がかかることはない。
【００２１】
従来技術における外衣２０と本実施の形態における外衣１との衣服圧を測定した結果を以下に示す。外衣２０では、図６に示すように、帯片２４Ａの一端部近傍における部位Ｓ１の衣服圧が４．５ｇｆ／ｃｍ２、外衣２０を着用した着用者の肩甲骨近傍における部位Ｓ２の衣服圧が３．０ｇｆ／ｃｍ２であった。これに対し、外衣１では、図３に示すように、自由側部４ｂの上下方向中央部近傍における部位Ｓ３の衣服圧が１．０ｇｆ／ｃｍ２、外衣１を着用した着用者の肩甲骨近傍における部位Ｓ４の衣服圧が１．５ｇｆ／ｃｍ２であった。衣服圧は、外衣１，２０の内側にエアーバックを挿入し、エアーバックにかかる圧力を、エアーバックに接続された外部センサで測定するエアーバック方式により測定した。
【００２２】
図４は、他の実施の形態を示す前身頃３の側から見た外衣１の斜視図であり、仮想線は、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂと連結部５Ａ，５Ｂとの境界を示す。図４の外衣１が図１のそれと異なる点は、以下のとおりである。図４の外衣１では、連結部５Ａ，５Ｂが第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂと一体になり、それら後身頃４Ａ，４Ｂとひとつながりになっている。
【００２３】
外衣１では、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂの少なくとも一方が連結部５Ａ，５Ｂを有していればよい。また、外衣１では、身頃本体２において前身頃３と第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂとがひとつながりになっていてもよく、身頃本体２に両袖６Ａ，６Ｂが取り付けられていなくてもよい。
【００２４】
身頃本体２と連結部５Ａ，５Ｂを形成するシート部材と両袖６Ａ，６Ｂとには、熱可塑性繊維で形成したスパンレース、ニードルパンチ、メルトブローン、サーマルボンド、スパンポンド、ケミカルボンド、エアースルー、の各製法により製造された不織布、または、不織布と熱可塑性合成樹脂シートとをラミネートした複合シートを使用することができる。
【００２５】
不織布の構成繊維としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、の各繊維、ポリエチレン／ポリプロピレンまたはポリエステルからなる芯鞘型複合繊維またはサイドバイサイド型複合繊維等を使用することができる。
【００２６】
不織布には、開口を形成して透湿性を向上させたもの、不織布にエンボスをかけて凹凸を形成し、クッション性を向上させたものや伸縮性を付与したものを使用することもできる。また、高い耐水性を有するメルトブローン法による不織布を、高い強度を有しかつ柔軟性に富んだスパンボンド法による不織布で挟んだ複合不織布を使用することもできる。
【００２７】
前後身頃３，４Ａ，４Ｂの固着、身頃本体２と両袖６Ａ，６Ｂとの固着、フック部材９，１１Ａ，１１Ｂやループ部材８Ａ，８Ｂ，１０の固着には、ホットメルト系接着剤、または、ソニックシールやヒートシール等の熱による溶着手段を使用することができる。
【００２８】
外衣１は、手術時に医師や看護婦が着用する手術用外衣、患者が着用する患者用外衣、食品を取り扱うときに着用する衛生用外衣として使用することができる。外衣１は、着用者の体型を考慮してあらかじめＳ、Ｍ、Ｌ、ＬＬ等のサイズを用意することができる。外衣１は、滅菌袋に収納された後、エチレンオキシド等の有機気化薬品による滅菌処理、または、電子線や放射線による滅菌処理が行われる。
【００２９】
【発明の効果】
本発明に係る背部閉じ合せ型の使い捨て外衣によれば、連結部が実質的に三角形を呈するので、外衣を着用した着用者が腕を前方へ伸ばして肘を曲げたとしても、胴周り方向に作用する張力が連結部の頂部から底辺に向って分散する。外衣では、張力が分散して連結部から着用者の肩へ向って伝わるので、着用者の背における腰上部から肩部にかけて局所的に大きな衣服圧がかかることはなく、不快な圧迫感がない。
【図面の簡単な説明】
【図１】 前身頃の側から見た使い捨て外衣の斜視図。
【図２】 図１の外衣の展開平面図。
【図３】 着用状態を示す外衣の斜視図。
【図４】 他の実施の形態を示す前身頃の側から見た外衣の斜視図。
【図５】 前身頃の側から見た従来技術の外衣の斜視図。
【図６】 着用状態を示す従来技術の外衣の斜視図。
【符号の説明】
１ 背部閉じ合せ型の使い捨て外衣
２ 身頃本体
３ 前身頃
４Ａ 第１後身頃
４Ｂ 第２後身頃
４ａ 自由側部
５Ａ，５Ｂ 連結部
５ａ 頂部
５ｂ 第１斜辺
５ｃ 第２斜辺
５ｄ 底辺
８Ａ，８Ｂ ループ部材（第１および第２の被係合域）
１１Ａ，１１Ｂ フック部材（第１および第２の係合手段）
【発明の属する技術分野】
本発明は、背部閉じ合せ型の使い捨て外衣に関する。
【０００２】
【従来の技術】
外衣の一例としては、図５に示すように、前身頃２２と胴周り方向に分かれる第１および第２後身頃２３Ａ，２３Ｂとを有する身頃本体２１と、身頃本体２１の上端部の両側に取り付けられた両袖２５Ａ，２５Ｂとから構成されたものがある。外衣２０には、第１および第２後身頃２３Ａ，２３Ｂの閉じ合わせを保持するための締結部として、それら後身頃２３Ａ，２３Ｂに４条の帯片２４Ａ，２４Ｂ，２４Ｃ，２４Ｄが取り付けられている。外衣２０では、帯片２４Ａが第１後身頃２３Ａの外側部に配置され、帯片２４Ｂが前身頃２２と第１後身頃２３Ａとの境界側部に配置され、帯片２４Ｃが第２後身頃２３Ｂの外側部に配置され、帯片２４Ｄが前身頃２２と第２後身頃２３Ｂとの境界側部に配置され、帯片２４Ａ，２４Ｂ，２４Ｃ，２４Ｄの一端部がそれら側部における上下方向中央部に取り付けられている。
【０００３】
図５の外衣２０を着用するには、第１および第２後身頃２３Ａ，２４Ｂを胴周り方向へ開いて着用者が両腕を両袖２５Ａ，２５Ｂに通し、第２後身頃２３Ｂを閉じて帯片２４Ｃと帯片２４Ｂとを結んだ後、第２後身頃２３Ｂの外側に第１後身頃２３Ａを重ね合わせて帯片２４Ａと帯片２４Ｄとを結ぶ。さらに、第１および第２後身頃２３Ａ，２３Ｂの上端部に取り付けられたメカニカルファスナ２６，２７を係合させて着用者の首周りを締める。連結部として帯片を使用した外衣が、実開平３−４５９１８号公報と特開平６−２０７３０１号公報とに開示されている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
外衣２０では、図６に示すように、それを着用した着用者が腕を前方へ伸ばして肘を曲げたときに、胴周り方向に作用する張力が帯片２４Ａの一端部近傍における部位Ｓ１に集中し、さらに、その張力が部位Ｓ１から矢印で示すように腕の付け根付近の部位Ｓ２をとおって着用者の肩へ向って伝わる。外衣２０では、矢印に沿って作用する張力により、着用者の背における腰上部から肩部にかけて局所的に大きな衣服圧がかかり、外衣２０の着用時に不快な圧迫感がある。ここで、衣服圧とは、外衣２０によって着用者が受ける圧迫力をいう。
【０００５】
本発明の課題は、着用者の背に局所的に大きな衣服圧がかかることを防ぐことができ、不快な圧迫感がない外衣を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決するための本発明の前提は、前身頃と胴周り方向に分かれる第１および第２後身頃とから身頃本体を形成し、前記第１および第２後身頃を胴周り方向へ開いて着用者が両腕を両袖に通し、前記第２後身頃を閉じて該第２後身頃の上下に延びる自由側部を、前記第１後身頃と前記前身頃の各固定側部どうしを固着してなる境界側部に締結した後、前記第２後身頃の外側に前記第１後身頃を重ね合わせて前記第１後身頃の上下に延びる自由側部を、前記第２後身頃と前記前身頃の各固定側部どおしを固着してなる境界側部に締結して着用する背部閉じ合せ型の使い捨て外衣である。
【０００７】
かかる前提において本発明では、前記背部閉じ合せ型の使い捨て外衣が、前記各後身頃の前記自由側部に位置し、前記胴周り方向外方へ凸となる実質的に三角形状を呈する連結部を有し、該連結部が前記第１および第２後身頃の上下方向中央部に位置する頂部と、前記自由側部の上方から前記頂部へ向かって延びる第１斜辺と、前記自由側部の下方から前記頂部へ向かって延びる第２斜辺と、前記第１および第２斜辺を結ぶ底辺とを有し、前記第１後身頃の前記自由側部に位置する一方の前記連結部における前記頂部の内面には、メカニカルファスナのうちのフック部材とループ部材とのいずれか一方からなる第１の係合手段を備え、前記第２後身頃の前記自由側部に位置する他方の前記連結部における前記頂部の外面には、メカニカルファスナのうちのフック部材とループ部材とのいずれか一方からなる第２の係合手段を備え、前記第１後身頃と前記前身頃の前記境界側部近傍の前記前身頃内面における前記境界側部の上下方向中央部には、前記第２の係合手段を構成する前記メカニカルファスナのうちの前記フック部材と前記ループ部材とのいずれか他方からなる第１の被係合域を備え、前記第２後身頃と前記前身頃の前記境界側部近傍の前記前身頃外面における前記境界側部の上下方向中央部には、前記第１の係合手段を構成する前記メカニカルファスナのうちの前記フック部材と前記ループ部材とのいずれか他方からなる第２の被係合域とを備え、前記第１の係合手段が前記第２の被係合域に係脱し、前記第２の係合手段が前記第１の被係合域に係脱することを特徴とする。
【０００８】
【０００９】
【発明の実施の形態】
添付の図面を参照して、本発明に係る背部閉じ合せ型の使い捨て外衣の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【００１０】
図１，２は、前身頃３の側から見た外衣１の斜視図と、図１の外衣１の展開平面図とであり、図３は、着用状態を示す外衣１の斜視図である。図１では、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂを胴周り方向へ開き、一方の袖６Ａを前身頃３の側に倒伏させた状態で示す。なお、前身頃３や第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂ、連結部５Ａ，５Ｂにおける内面とは、外衣１を着用した着用者に対向する面をいい、外面とは、着用者に非対向の面をいう。
【００１１】
外衣１は、身頃本体２と、身頃本体２の上端部の両側に取り付けられた両袖６Ａ，６Ｂとから構成されている。外衣１では、それを着用すると、身頃本体２の上端部に襟刳りが環状に連なり、身頃本体２の裾周りも環状に連なる。身頃本体２は、それぞれ別体の、前身頃３と、胴周り方向に分かれる第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂとから形成されている。
【００１２】
前身頃３は、上下に延びる固定側部３ａと、胴周り方向へ延びる上下端部３ｃ，３ｄとを有する。前身頃３の上端部３ｃには、その略中央を下端部３ｄの方向へ凸となるように弧を画く襟刳り３ｅが延び、襟刳り３ｅから固定側部３ａヘ向って袖刳り３ｆ各々が直状に延びている。前身頃３の固定側部３ａにおける上下方向中央部には、第１および第２の被係合域となる矩形のループ部材８Ａ，８Ｂが配置されており、第１の被係合域である一方のループ部材８Ａが前身頃３の内面に取り付けられ、第２の被係合域である他方のループ部材８Ｂが前身頃３の外面に取り付けられている。
【００１３】
第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂは、上下に延びる固定側部４ａおよび自由側部４ｂと、胴周り方向へ延びる上下端部４ｃ，４ｄとを有する。それら後身頃４Ａ，４Ｂの上端部４ｃには、その略中央から自由側部４ｂヘ向い、下端部４ｄの方向へ凸となるように弧を画く襟刳り４ｅが延び、その略中央から固定側部４ａへ向って袖刳り４ｆが直状に延びている。
【００１４】
第１後身頃４Ａの上端部４ｃの内面には、襟刳り４ｅに沿ってフック部材９が取り付けられている。第２後身頃４Ｂの上端部４ｃの外面には、襟刳り４ｅに沿ってループ部材１０が取り付けられている。第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂの自由側部４ｂには、それら後身頃４Ａ，４Ｂの閉じ合わせを保つための一対の連結部５Ａ，５Ｂが取り付けられている。
【００１５】
連結部５Ａ，５Ｂは、実質的に三角形を呈し、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂとは別体のシート部材から形成されている。連結部５Ａ，５Ｂは、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂの自由側部４ｂにつながって胴周り方向外方へ凸となって延びている。連結部５Ａ，５Ｂは、後身頃４Ａ，４Ｂの上下方向中央部に位置する頂部５ａと、自由側部４ｂの上方から頂部５ａへ向って延びる第１斜辺５ｂと、自由側部４ｂの下方から頂部５ａへ向って延びる第２斜辺５ｃと、自由側部４ｂと並行して後身頃４Ａ，４Ｂの上端部４ｃと下端部４ｄとの間を上下に延びる底辺５ｄとを有する。
【００１６】
連結部５Ａ，５Ｂの頂部５ａには、第１および第２の係合手段となるフック部材１１Ａ，１１Ｂが配置されており、第１の係合手段である一方のフック部材１１Ａが連結部５Ａの内面に取り付けられ、第２の係合手段である他方のフック部材１１Ｂが連結部５Ｂの外面に取り付けられている。連結部５Ａ，５Ｂは、その底辺５ｄ近傍が第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂの自由側部４ｂに固着されている。
【００１７】
両袖６Ａ，６Ｂには、前身頃３の袖刳り３ｆと第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂの袖刳り４ｆとに並行する袖付け６ａが延び、袖付け６ａの間に袖山中央６ｂが延びている。両袖６Ａ，６Ｂは、袖付け６ａから袖口６ｃへ向い先細りの筒状を呈する。両袖６Ａ，６Ｂの袖口６ｃには、それら袖６Ａ，６Ｂの周り方向へ弾性伸縮性を有するカフス７が取り付けられている。
【００１８】
外衣１では、図２に示すように、前身頃３の袖刳り３ｆと両袖６Ａ，６Ｂの袖付け６ａとを一致させ、後身頃４Ａ，４Ｂの袖刳り４ｆと両袖６Ａ，６Ｂの袖付け６ａとを一致させた状態で、袖刳り３ｆ，４ｆと袖付け６ａとが互いに固着されている。外衣１は、図２の状態から、両袖６Ａ，６Ｂを線Ｘによって折曲し、前身頃３と後身頃４Ａ，４Ｂとを重ね合わせる。その後、前身頃３と後身頃４Ａ，４Ｂとをそれら身頃３，４Ａ，４Ｂの固定側部３ａ，４ａにおいて固着し、両袖６Ａ，６Ｂの袖下６ｄを固着するとともに、カフス７の両側部を固着することで、図１の外衣１を得ることができる。なお、前身頃３と後身頃４Ａ，４Ｂの各固定側部３ａ，４ａどうしを固着することでそれらの各固着部は、前身頃３と後身頃４Ａ，４Ｂとを分ける境界側部となる。
【００１９】
外衣１を着用するには、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂを胴周り方向へ開いて着用者が両腕を両袖６Ａ，６Ｂに通し、第２後身頃４Ｂを閉じて連結部５Ｂに取り付けられた第２の係合手段であるフック部材１１Ｂを第１の被係合域であるループ部材８Ａに係合させる。その後、第２後身頃４Ｂの外側に第１後身頃４Ａを重ね合わせ、連結部５Ａに取り付けられた第１の係合手段であるフック部材１１Ａを第２の被係合域であるループ部材８Ｂに係合させる。さらに、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂの上端部４ｃに取り付けられたフック部材９とループ部材１０とを係合させて着用者の首周りを締める。
【００２０】
外衣１は、図３に示すように、外衣１の着用状態において、それを着用した着用者が腕を前方へ伸ばして肘を曲げたとしても、胴周り方向の張力が連結部５Ａ，５Ｂの頂部５ａから底辺５ｄに向って分散する。外衣１では、多数の矢印Ｙ２で示すように、張力が分散して連結部５Ａ，５Ｂから着用者の肩へ伝わるので、従来技術のそれと比較し、着用者の背における腰上部から肩部にかけて局所的に大きな衣服圧がかかることはない。
【００２１】
従来技術における外衣２０と本実施の形態における外衣１との衣服圧を測定した結果を以下に示す。外衣２０では、図６に示すように、帯片２４Ａの一端部近傍における部位Ｓ１の衣服圧が４．５ｇｆ／ｃｍ２、外衣２０を着用した着用者の肩甲骨近傍における部位Ｓ２の衣服圧が３．０ｇｆ／ｃｍ２であった。これに対し、外衣１では、図３に示すように、自由側部４ｂの上下方向中央部近傍における部位Ｓ３の衣服圧が１．０ｇｆ／ｃｍ２、外衣１を着用した着用者の肩甲骨近傍における部位Ｓ４の衣服圧が１．５ｇｆ／ｃｍ２であった。衣服圧は、外衣１，２０の内側にエアーバックを挿入し、エアーバックにかかる圧力を、エアーバックに接続された外部センサで測定するエアーバック方式により測定した。
【００２２】
図４は、他の実施の形態を示す前身頃３の側から見た外衣１の斜視図であり、仮想線は、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂと連結部５Ａ，５Ｂとの境界を示す。図４の外衣１が図１のそれと異なる点は、以下のとおりである。図４の外衣１では、連結部５Ａ，５Ｂが第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂと一体になり、それら後身頃４Ａ，４Ｂとひとつながりになっている。
【００２３】
外衣１では、第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂの少なくとも一方が連結部５Ａ，５Ｂを有していればよい。また、外衣１では、身頃本体２において前身頃３と第１および第２後身頃４Ａ，４Ｂとがひとつながりになっていてもよく、身頃本体２に両袖６Ａ，６Ｂが取り付けられていなくてもよい。
【００２４】
身頃本体２と連結部５Ａ，５Ｂを形成するシート部材と両袖６Ａ，６Ｂとには、熱可塑性繊維で形成したスパンレース、ニードルパンチ、メルトブローン、サーマルボンド、スパンポンド、ケミカルボンド、エアースルー、の各製法により製造された不織布、または、不織布と熱可塑性合成樹脂シートとをラミネートした複合シートを使用することができる。
【００２５】
不織布の構成繊維としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、の各繊維、ポリエチレン／ポリプロピレンまたはポリエステルからなる芯鞘型複合繊維またはサイドバイサイド型複合繊維等を使用することができる。
【００２６】
不織布には、開口を形成して透湿性を向上させたもの、不織布にエンボスをかけて凹凸を形成し、クッション性を向上させたものや伸縮性を付与したものを使用することもできる。また、高い耐水性を有するメルトブローン法による不織布を、高い強度を有しかつ柔軟性に富んだスパンボンド法による不織布で挟んだ複合不織布を使用することもできる。
【００２７】
前後身頃３，４Ａ，４Ｂの固着、身頃本体２と両袖６Ａ，６Ｂとの固着、フック部材９，１１Ａ，１１Ｂやループ部材８Ａ，８Ｂ，１０の固着には、ホットメルト系接着剤、または、ソニックシールやヒートシール等の熱による溶着手段を使用することができる。
【００２８】
外衣１は、手術時に医師や看護婦が着用する手術用外衣、患者が着用する患者用外衣、食品を取り扱うときに着用する衛生用外衣として使用することができる。外衣１は、着用者の体型を考慮してあらかじめＳ、Ｍ、Ｌ、ＬＬ等のサイズを用意することができる。外衣１は、滅菌袋に収納された後、エチレンオキシド等の有機気化薬品による滅菌処理、または、電子線や放射線による滅菌処理が行われる。
【００２９】
【発明の効果】
本発明に係る背部閉じ合せ型の使い捨て外衣によれば、連結部が実質的に三角形を呈するので、外衣を着用した着用者が腕を前方へ伸ばして肘を曲げたとしても、胴周り方向に作用する張力が連結部の頂部から底辺に向って分散する。外衣では、張力が分散して連結部から着用者の肩へ向って伝わるので、着用者の背における腰上部から肩部にかけて局所的に大きな衣服圧がかかることはなく、不快な圧迫感がない。
【図面の簡単な説明】
【図１】 前身頃の側から見た使い捨て外衣の斜視図。
【図２】 図１の外衣の展開平面図。
【図３】 着用状態を示す外衣の斜視図。
【図４】 他の実施の形態を示す前身頃の側から見た外衣の斜視図。
【図５】 前身頃の側から見た従来技術の外衣の斜視図。
【図６】 着用状態を示す従来技術の外衣の斜視図。
【符号の説明】
１ 背部閉じ合せ型の使い捨て外衣
２ 身頃本体
３ 前身頃
４Ａ 第１後身頃
４Ｂ 第２後身頃
４ａ 自由側部
５Ａ，５Ｂ 連結部
５ａ 頂部
５ｂ 第１斜辺
５ｃ 第２斜辺
５ｄ 底辺
８Ａ，８Ｂ ループ部材（第１および第２の被係合域）
１１Ａ，１１Ｂ フック部材（第１および第２の係合手段）
Claims (1)
- 前身頃と胴周り方向に分かれる第１および第２後身頃とから身頃本体を形成し、前記第１および第２後身頃を胴周り方向へ開いて着用者が両腕を両袖に通し、前記第２後身頃を閉じて該第２後身頃の上下に延びる自由側部を、前記第１後身頃と前記前身頃の各固定側部どうしを固着してなる境界側部に締結した後、前記第２後身頃の外側に前記第１後身頃を重ね合わせて前記第１後身頃の上下に延びる自由側部を、前記第２後身頃と前記前身頃の各固定側部どうしを固着してなる境界側部に締結して着用する背部閉じ合せ型の使い捨て外衣において、
前記背部閉じ合せ型の使い捨て外衣が、前記各後身頃の前記自由側部に位置し、前記胴周り方向外方へ凸となる実質的に三角形状を呈する連結部を有し、該連結部が前記第１および第２後身頃の上下方向中央部に位置する頂部と、前記自由側部の上方から前記頂部へ向かって延びる第１斜辺と、前記自由側部の下方から前記頂部へ向かって延びる第２斜辺と、前記第１および第２斜辺を結ぶ底辺とを有し、
前記第１後身頃の前記自由側部に位置する一方の前記連結部における前記頂部の内面には、メカニカルファスナのうちのフック部材とループ部材とのいずれか一方からなる第１の係合手段を備え、前記第２後身頃の前記自由側部に位置する他方の前記連結部における前記頂部の外面には、メカニカルファスナのうちのフック部材とループ部材とのいずれか一方からなる第２の係合手段を備え、前記第１後身頃と前記前身頃の前記境界側部近傍の前記前身頃内面における前記境界側部の上下方向中央部には、前記第２の係合手段を構成する前記メカニカルファスナのうちの前記フック部材と前記ループ部材とのいずれか他方からなる第１の被係合域を備え、前記第２後身頃と前記前身頃の前記境界側部近傍の前記前身頃外面における前記境界側部の上下方向中央部には、前記第１の係合手段を構成する前記メカニカルファスナのうちの前記フック部材と前記ループ部材とのいずれか他方からなる第２の被係合域とを備え、
前記第１の係合手段が前記第２の被係合域に係脱し、前記第２の係合手段が前記第１の被係合域に係脱することを特徴とする前記外衣。
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