JP3763855B2 - 場所打ちライニング工法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、トンネルの場所打ちライニング工法、特に、推進とともに覆工コンクリートを打設する場所打ちライニング工法に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】
従来、トンネルの施工方法として、鋼アーチ支保工によるシールド工法、掘削した断面を吹き付けコンクリートで固めながら堀り進めるNATM工法、及び推進とともに覆工コンクリートを打設する場所打ちライニング工法等が知られている。
【0003】
このうち、場所打ちライニング工法は、ヨーロッパで開発され、昭和56年に日本に導入されたトンネルの施工方法であり、コンクリート打設時に、2kgf/cm2程度の圧力をかけるため、コンクリートが地山と密着して、地山のゆるみを無くすことができ、地盤沈下を最小限にすることが可能となる方法である。
即ち、場所打ちライニング工法は、掘削装置と推進装置からなり、型枠機構を装備したシールド機後部で、直接覆工コンクリートを打設する方法であり、シールド機の推進と同時に、コンクリートを導入管から、地山により異なるが、通常、40〜50cm程度のコンクリート厚になるように設置された巻立てコンクリート型枠の中へ流し込み、連続的に加圧し、打設して覆工するものである。
【0004】
この場所打ちライニング工法で使用されるコンクリートは、例えば、混練後のスランプ値が20cm以上のように、型枠内に十分充填されるだけの流動性が必要であり、しかも、混練後、コンクリートポンプを使用して打設するので、一定時間、その流動性を保持することが必要である。
さらに、シールド機を数百メートル/月程度の割合で前進させるため、例えば、1日圧縮強度が、100kgf/cm2以上と、早期強度の発現性に優れていなければならない。
【0005】
このように、場所打ちライニング工法には、ポンプ圧送が容易な流動性や良好な初期強度の発現性が要求されるが、従来のコンクリートでは、流動性を一定時間保持させると、強度発現が遅れ、施工の能率が著しく悪くなるという課題があった。
【0006】
一方、従来の急硬材や、超速硬セメントを含有したコンクリートを用いた場合は、強度発現性が十分であっても、一定時間流動性を保持することが難しく、コンクリートポンプ内で硬化してしまう場合もあり、特別な混合機を必要とし、実用的ではなかった(特開平 3−88754号公報)。
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、特定のセメント組成物を使用することにより、その混練物の流動性を一定時間保持し、しかも、早期の強度発現が可能で、高強度が得られるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、3CaO・SiO含有量が60重量%以上のセメントを100重量部、無水セッコウを1〜4重量部、硫酸アルミニウムを無水物換算で0.2〜重量部、アルミン酸アルカリ金属塩を0.1〜0.8重量部、及び減水剤からなるセメント組成物を含有するコンクリートを打設し、それをプレスし、硬化後、型枠を移動して打継ぎを行うことを特徴とするトンネルの場所打ちライニング工法である。
【0009】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0010】
本発明で使用するセメントは、3CaO・SiO2含有量が60重量%以上のものであり、3CaO・SiO2含有量が66重量%以上が好ましい。60重量%未満では、十分な初期強度が得られない場合がある。通常は、市販早強ポルトランドセメントが使用可能である。
セメントの粒度は、ブレーン値で3,500〜7,000cm2/gが好ましく、4,000〜5,000cm2/gがより好ましい。3,500cm2/g未満では、十分な初期強度が得られない場合があり、7,000cm2/gを超えると、コンクリートのスランプロスが大きくなる場合がある。
【0011】
本発明で使用する無水セッコウは、無水物であれば、特に限定されるものではなく、天然に産出する天然無水セッコウ、半水セッコウや二水セッコウを熱処理して得られる無水セッコウ、及び工業副産物として発生する無水セッコウ等の使用が可能である。
無水セッコウの粒度は、ブレーン値で2,500cm/g以上が好ましく、4,000cm/g以上がより好ましい。2,500cm/g未満では、長期材令において、未水和の残存セッコウにより膨張破壊が発生するおそれがある。
無水セッコウの使用量は、セメント100重量部に対して、1〜重量部であり、3〜4重量部が好ましい。1重量部未満では初期強度の発現性が悪く、重量部を超えると長期材令において、未水和の残存セッコウにより膨張破壊が発生するおそれがある。
【0012】
本発明で使用する硫酸アルミニウムは、通常、0〜20モル前後の結合水を有する塩であり、特に限定されるものではなく、いずれの結合水をもつものも使用可能である。
硫酸アルミニウムの使用量は、セメント100重量部に対して、無水物換算で0.2〜重量部であり、1〜2重量部が好ましい。0.2重量部未満では、初期強度の発現性が悪く、重量部を超えると、作業性が悪くなる傾向がある。
【0013】
本発明で使用するアルミン酸アルカリ金属塩は、初期、中期、及び長期強度の発現性を向上させるために不可欠であり、成分的に特に限定されるものではないく、アルミン酸ナトリウムやアルミン酸カリウムの使用が可能であり、そのうち、特に、アルミン酸ナトリウムを使用することが経済的に好ましい。
アルミン酸アルカリ金属塩の使用量は、セメント100重量部に対して、0.1〜0.8重量部であり、0.3〜0.8重量部が好ましい。0.1重量部未満では、十分な強度発現性が得られない場合があり、0.8重量部を超える量では、作業性が悪くなる場合がある。
【0014】
本発明で使用する減水剤は、特に限定されるものではなく、一般に市販される減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、及び流動化剤等が使用可能であるが、これらのうち、高性能減水剤、高性能AE減水剤、及び流動化剤の使用が好ましく、特に、高性能減水剤が、さらに、ポリカルボン酸系の高性能減水剤の使用がより好ましい。
高性能減水剤、高性能AE減水剤、及び流動化剤は、大別してナフタリン系、メラミン系、ポリカルボン酸系、及びアミノスルホン酸系等に大別される。その代表例としては、ナフタリン系として、花王社製商品名「マイティ2000WH」等や、電気化学工業社製商品名「デンカFT-500」や「デンカFT-80」などが挙げられ、メラミン系として、昭和電工社製商品名「メルメントF-10」や日本シーカ社製商品名「シーカメント1000H」などが挙げられ、ポリカルボン酸系として、デンカグレース社製商品名「ダーレックススーパー100PHX」や「ダーレックススーパー200」、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP-8HS」、及び竹本油脂社製商品名「チューポールHP-11」等が挙げられ、アミノスルホン酸系として、藤沢薬品工業社製商品名「パリックFP-100U」等が挙げられる。
その他、日本ゼオン社、神戸材料社、山陽国策パルプ社、福井化学工業社、及び第一工業製薬社等各社より同様の減水剤が市販されている。
減水剤の使用量は、メーカー指定の範囲で十分ではあるが、ナフタリン系やメラミン系の減水剤の場合は、セメント、無水セッコウ、硫酸アルミニウム、及びアルミン酸アルカリ金属塩からなる結合材100重量部に対して、1〜4重量部が好ましく、ポリカルボン酸系やアミノスルホン酸系の減水剤の場合は、1〜3重量部が好ましい。
【0015】
本発明において、水の使用量は、減水剤の種類や使用量により、一義的に決定されるものではないが、通常、水/結合材比で、25〜50重量%が好ましく、30〜40重量%がより好ましい。25重量%未満では、十分な流動性が得られない場合があり、50重量%を越えると十分な強度発現性が得られない場合がある。
【0016】
本発明の各材料を混合する装置としては、既存のいかなる撹拌装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサー、オムニミキサー、V型ミキサー、ヘンシェルミキサー、及びナウターミキサー等の使用が可能である。
また、混合は、それぞれの材料を施工時に混合してもよいし、あらかじめ一部を、あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
【0017】
本発明では、上記各材料の他に、凝結調整剤、AE剤、増粘剤、砂や砂利などの骨材、セメント膨張材、防錆剤、防凍剤、高分子エマルジョン、酸化カルシウムや水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物、硫酸アルカリ金属塩、亜硫酸アルカリ金属塩、及び重亜硫酸アルカリ金属塩等の硫酸塩、ベントナイト等の粘土鉱物、ゼオライト、ハイドロタルサイト、及びハイドロカルマイト等のイオン交換体、無機リン酸塩、並びに、ホウ酸等のうちの一種又は二種以上を本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
【0018】
場所打ちライニング工法に使用されるセメント組成物に要求される物性は、混練直後、スランプ20cm前後に練り上げたコンクリートが、1時間から2時間後でも、スランプ18cm以上を保持できること、混練から6時間後の圧縮強度が10kgf/cm2以上であること、及び24時間後の圧縮強度が100kgf/cm2以上であること全てを満足するものであり、本発明の場所打ちライニング工法に使用されるセメント組成物は、短時間で脱型強度を発現し、これら、要求される物性を満足するものである。
【0019】
脱型強度は、トンネルの大きさや形状によって異なり、また、使用材料の配合によって異なるため、一義的に限定されることはできないが、型枠を移動してもモルタル又はコンクリートが脱落しない強度、例えば、30kgf/cm2程度以上が好ましい。
打設した本発明のモルタル又はコンクリートは、例えば、6〜12時間程度の短時間で脱型することができ、次のスパンへ型枠を移動することができる。
【0020】
養生は、通常のモルタル又はコンクリートと同様でよく、保温養生等を行うことはさらに好ましい。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0022】
実施例1
表1に示すセメント100重量部、無水セッコウ4重量部、硫酸アルミニウム無水物換算で1重量部、アルミン酸アルカリ塩0.5重量部よりなる結合材を使用し、コンクリート中の単位量を、結合材350kg/m3、水125kg/m3、細骨材832kg/m3、及び粗骨材1,022kg/m3とし、表1に示すように、減水剤を配合したコンクリートを調製し、スランプフローと圧縮強度の測定を行った。結果を表1に併記する。
【0023】
<使用材料>
セメントα:電気化学工業社製早強ポルトランドセメント、3CaO・SiO2含有量66 重量%、ブレーン値4,460cm2/g
セメントβ:電気化学工業社製、早強ポルトランドセメント54重量部と普通ポルトランドセメント46重量部の混合品、3CaO・SiO2含有量60重量%、ブレーン値3,870cm2/g
セメントγ:電気化学工業社製普通ポルトランドセメント、3CaO・SiO2含有量53 重量%、ブレーン値3,340cm2/g
無水セッコウ:天然無水セッコウ、ブレーン値4,120cm2/g
硫酸アルミニウム:水沢化学工業社製粉末硫酸バンド、Al2O317重量%、含水率 43重量%
アルミン酸アルカリ塩:アルミン酸ナトリウム、試薬1級、ブレーン値3,690cm2 /g
減水剤 :デンカグレース社製商品名「ダーレックススーパー200」、ポリカルボン酸系
細骨材 :新潟県姫川産川砂、比重2.63
粗骨材 :新潟県姫川産川砂利、Gmax=20mm、比重2.67
水 :水道水
【0024】
<試験方法>
スランプ :JIS A 1101に準じて混練から120分までのスランプを測定
圧縮強度 :JIS A 1108に準じて測定
【0025】
【表1】
Figure 0003763855
【0026】
表から明らかなように、本発明で記載のセメント組成物を使用すると、流動性の保持が良好で、初期の強度発現性が良好であり、場所打ちライニング工法に用いると有効であることが推察される。
【0027】
実施例2
セメントαを使用し、無水セッコウの粒度を表2に示すように変化し、セメント100重量部に対して、4重量部配合したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0028】
【表2】
Figure 0003763855
【0029】
実施例3
セメントαを使用し、無水セッコウの使用量を表3に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0030】
【表3】
Figure 0003763855
【0031】
実施例4
セメントαを使用し、硫酸アルミニウムの使用量を表4に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0032】
【表4】
Figure 0003763855
【0033】
実施例5
セメントαを使用し、アルミン酸アルカリ金属塩の使用量を表5に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0034】
【表5】
Figure 0003763855
【0035】
【発明の効果】
本発明で記載のセメント組成物を使用することにより、初期の強度発現や流動性の保持が良好なコンクリ−トが得られ、能率の良い場所打ちライニング工法が可能となる。

Claims (1)

  1. 3CaO・SiO含有量が60重量%以上のセメントを100重量部、無水セッコウを1〜重量部、硫酸アルミニウムを無水物換算で0.2〜重量部、アルミン酸アルカリ金属塩を0.1〜0.8重量部、及び減水剤からなるセメント組成物を含有するコンクリートを打設し、それを加圧し、硬化後、型枠を移動して打継ぎを行うことを特徴とするトンネルの場所打ちライニング工法。
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