JP3763405B2 - スペクトル測定用試料保持体、分光光度計、およびスペクトル測定方法 - Google Patents

スペクトル測定用試料保持体、分光光度計、およびスペクトル測定方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定波長の光を試料に照射してその吸収スペクトルを得ることにより、試料の分子構造を解析する際に、該試料を保持する試料保持体、およびこれを用いた分光光度計に関するものであり、特に、化学反応の進行過程で、たとえば、試料の近赤外および赤外吸収スペクトルやラマンスペクトルを測定するために用いられる試料保持体および分光光度計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
物質に種々の光を照射すると、吸収スペクトルや散乱光のスペクトル等が得られる。従来より、物質の分子構造を解析する目的で、上記吸収スペクトルや散乱スペクトル等を測定して利用するスペクトル分析法が実用化されている。
【0003】
たとえば、ある分子に赤外線を照射し、その波長を連続的に変化させていくと、分子の固有振動と同じ周波数の赤外線が吸収され、分子構造に応じた近赤外および赤外吸収スペクトル(以下、適宜、赤外スペクトルと略す)が得られる。このように、試料に赤外線を照射して得られる赤外スペクトルを測定することにより、試料の分子構造を解析することを赤外吸収スペクトル法という。
【0004】
また、物質に光を通すと入射光と等しい周波数を有する強い弾性散乱光と、入射光の周波数からわずかに周波数のずれた、非常に弱い非弾性散乱光とが散乱される。このうち、上記非弾性散乱光には、物質中の振動する原子やイオンによって散乱されるラマン散乱光が含まれる。このように、試料に光(特にレーザー光)を照射して得られるラマン散乱光のスペクトル(以下、適宜、ラマンスペクトルと略す)を測定することにより、試料の分子構造を解析することをラマン吸収スペクトル法という。
【0005】
これらスペクトル分析法では、解析対象となる物質を測定用の試料に調製するが、この試料に対して光を照射してスペクトルを測定する際には、通常、大気圧・室温の条件下(常温・常圧条件下)で実施される。
【0006】
しかしながら、たとえば、赤外吸収スペクトル法のひとつである加熱拡散反射法のように、試料に熱を加えながら赤外スペクトルを測定するような技術も知られている(たとえば、『実験化学講座6 分光1 第4版』、社団法人日本化学会著・丸善・平成3(1991)年7月25日発行、第230〜237頁等)。
【0007】
上記加熱拡散反射法では、拡散反射装置(DRS)という赤外分光光度計を、試料として、測定対象の物質(固体)と臭化カリウム(KBr)とを均等に混ぜた粉末状のものを用いる。そして、粉末状の試料に赤外光を入射させることで、該赤外光が、そのもぐりこむ深さを異ならせて反射と屈折(透過)とを繰り返しつつ、結果的に、あらゆる方向へ反射される拡散反射現象が生じるため、これを利用して、効率良く赤外スペクトルを測定するようになっている。
【0008】
加熱拡散反射法でも、常温・常圧条件下での測定が一般的であるが、たとえば、触媒の分野では、表面吸着化学種の分析に利用するために、真空・加熱条件下で赤外スペクトルを測定する場合がある。この場合は、DRSのスペクトル測定室に、通常の測定用セルとは異なる真空加熱型の測定用セルが用いられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したスペクトル分析法では、上記のように、加熱拡散反射法では、固体の試料を加熱しながらスペクトルを測定する技術は知られているものの、測定対象となる試料が液体である場合に、該液状試料を加熱しながら反応状態のスペクトルを測定するような技術はほとんど知られていない。
【0010】
たとえば、各種有機化合物やポリマー(重合体)の合成等では、各種溶媒に原料となる化合物やモノマーを加えて合成を実施する液相条件が採用されることが多い。ここで、新規な化合物やポリマーの合成に際しては、その合成の過程を解析することが非常に重要であるが、このような液相での合成過程で、経時的に近赤外および赤外スペクトルを測定することは、実質的には困難となっている。
【0011】
つまり、従来の分光光度計では、上述したように、常温・常圧条件下で試料からスペクトルを測定することを想定しているため、液状試料に安定した条件で熱を加えるような使用法は想定されていない。また、試料への加熱温度によっては、分光光度計に対しても熱が加えられるおそれがあるため、上記のように、液状試料を加熱しながらスペクトルを測定するような用途では、精密機械である分光光度計に悪影響を与える。
【0012】
また、液相での合成過程で経時的にかつ正確な近赤外および赤外スペクトルを測定するためには、小スケールでの測定となる。それゆえ、試料に当てる照射光を微妙に調整する必要性があり、正確なスペクトル測定を妨げるような問題が生じる可能性がある。
【0013】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、液状試料を安定した条件で加熱しながら、しかも正確にスペクトルを測定することができる、分光光度計用の試料保持体と、該試料保持体を用いた分光光度計を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかるスペクトル測定用試料保持体は、上記の課題を解決するために、分光光度計の測定室に設置可能となっており、液状試料を、光照射手段から出射される照射光を導入可能とした状態で保持するとともに、該液状試料の加熱を可能とするスペクトル測定用試料保持体であって、さらに、上記測定室に設置された場合に、上記液状試料に照射光を導入する光導入路が設けられ、該光導入路の配置位置が上記照射光の進行経路に対して平行となる位置であるとともに、上記進行経路に対する該光導入路の相対的な位置を変化させる光導入路位置調整手段と、上記光導入路が設けられている保持ブロックと、上記保持ブロックと上記光導入路位置調整手段との間に設けられ、上記保持ブロックの周囲を覆うように設けられた断熱カバーを備えた断熱手段と、上記液体試料の温度を測定する温度センサーと、上記温度センサーで測定された温度に基づいて、上記加熱手段による加熱温度を制御する温度コントローラーとを備え、上記保持ブロックには、上記液体試料の入った測定用容器を保持する複数の試料保持孔と、上記加熱手段を設置するための複数のヒーター用孔とが形成され、上記試料保持孔は、上記ヒーター用孔を中心として等間隔となる位置に形成されていることを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、光導入路位置調整手段によって、照射光の進行経路に対する光導入路の相対的な位置を変化させることで、光照射手段から出射される照射光を確実に試料に導くことができる。そのため、加熱状態で安定して保持される液状試料から、スペクトルを即時的かつ経時的に検出することがより一層確実になる。その結果、特に、各種有機化合物やポリマー(重合体)の合成の過程で、スペクトルを測定することができる。
【0016】
本発明にかかるスペクトル測定用試料保持体は、上記構成に加えて、少なくとも上記保持ブロックと上記光導入路位置調整手段との間に設けられる断熱手段とを備えていることを特徴としている。
【0017】
上記構成によれば、少なくとも、液状試料を加熱する保持ブロックと、光導入位置調整手段とが、断熱手段によって断熱されている。そのため、保持ブロックが有する熱を光導入路位置調整手段や分光光度計に伝達することを抑制または防止することができる。そのため、精密機械である光導入路位置調整手段や分光光度計に悪影響が及ぼされることがなくなる。
【0018】
本発明にかかるスペクトル測定用試料保持体は、上記構成に加えて、上記断熱手段は、上記保持ブロックの周囲を覆うように設けられた断熱カバーを備えていることを特徴としている。
【0019】
本発明にかかるスペクトル測定用試料保持体は、上記液体試料の温度を測定する温度センサーと、上記温度センサーで測定された温度に基づいて、上記加熱手段による加熱温度を制御する温度コントローラーとを備えたことを特徴としている。
【0020】
本発明にかかるスペクトル測定用試料保持体は、上記構成に加えて、上記保持ブロックは、回転可能な円柱状の形状を有するとともに、上記試料保持孔は、該円柱の中心部を取り囲むように形成されていることを特徴としている。
【0021】
本発明にかかるスペクトル測定用試料保持体は、上記構成に加えて、上記保持ブロックは、回転可能な円柱状の形状を有するとともに、上記試料保持孔は、該円柱の中心部を取り囲むように4箇所十字状に形成されており、上記ヒーター用孔は、2箇所の試料保持孔の間に位置するように、2箇所形成されていることを特徴としている。
【0022】
本発明にかかるスペクトル測定用試料保持体は、上記構成に加えて、上記保持ブロックは、アルミニウム製のアルミブロックであることを特徴としている。
【0023】
本発明にかかるスペクトル測定用試料保持体は、上記構成に加えて、上記測定用容器は、NMR用サンプリングチューブであることを特徴としている。
【0024】
また、本発明にかかる分光光度計は、上記の課題を解決するために、直線状に対向配置される光照射手段および光検出手段と、これらに挟持されるように配置される測定室と、該測定室に設置可能となっており液状試料を保持する試料保持体とを備えている分光光度計において、上記試料保持体には、液状試料に照射光を導入する光導入路が設けられ、該光導入路の配置位置が上記照射光の進行経路に対して平行となる位置であるとともに、さらに該試料保持体は、上記液状試料を加熱可能とする加熱手段と、上記進行経路に対する該光導入路の相対的な位置を、進行経路に沿ったX方向およびX方向に直行するY方向の少なくとも一方の方向に変化させ得る光導入路位置調整手段と上記光導入路が設けられている保持ブロックと、上記保持ブロックと上記光導入路位置調整手段との間に設けられ、上記保持ブロックの周囲を覆うように設けられた断熱カバーを備えた断熱手段と、上記液体試料の温度を測定する温度センサーと、上記温度センサーで測定された温度に基づいて 、上記加熱手段による加熱温度を制御する温度コントローラーとを備え、上記保持ブロックには、上記液体試料の入った測定用容器を保持する複数の試料保持孔と、上記加熱手段を設置するための複数のヒーター用孔とが形成され、上記試料保持孔は、上記ヒーター用孔を中心として等間隔となる位置に形成されていることを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、加熱手段によって液状試料を加熱しながら、光導入路および光導入路位置調整手段によって、光照射手段から出射される照射光を確実に液状試料に導くことができる。特に、光導入路位置調整手段が、光導入路の位置をX方向またはY方向の少なくとも一方に調整可能としているので、より一層正確な位置調整ができる。そのため、加熱状態で安定して保持される液状試料から、スペクトルを即時的かつ経時的に検出することがより一層確実になる。その結果、特に、各種有機化合物やポリマー(重合体)の合成の過程で、スペクトルを測定することができる。
【0026】
また、本発明にかかるスペクトル測定方法は、上記の課題を解決するために、上述のスペクトル測定用試料保持体を用いて、液状試料における化学反応をスペクトル解析することを特徴としている。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について、図1ないし図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
本発明にかかるスペクトル測定用試料保持体の具体的な一例としては、図1(a)に模式的に示すように、柱状の保持ブロック11と該保持ブロック11の下方に設けられる光導入孔位置合わせ機構(光導入路位置調整手段)12とを有する試料保持体10を挙げることができる。また、本発明にかかる分光光度計の一例としては、上記試料保持体10を備えた構成を挙げることができる。
【0029】
上記試料保持体10は、上記保持ブロック11および光導入孔位置合わせ機構12以外に、図1(a)・(b)に模式的に示すように、下方断熱部13、断熱カバー14、ヒーター15、温度センサー16等を備えている。勿論、他の構成や部材が備えられていてもよい。
【0030】
上記保持ブロック11には、上下方向に沿って形成され、液状試料40の入った試料チューブ(測定用容器)30を内部に安定して保持可能とする試料保持孔111が設けられているとともに、該試料保持孔111に略直交するように、光導入孔(光導入路)112が設けられている。
【0031】
本実施の形態における分光光度計は、図1(a)に模式的に示すように、直線状に対向配置される光照射部21および光検出部22と、これらの間に挟持されるように配置される測定室23とを少なくとも備えており、この測定室23内に、上記試料保持体10が設置される。このとき、図1(a)に示すように、試料保持体10に設けられている光導入孔112は、照射光の進行経路L、すなわち光照射部21から出射され光検出部22に達するまでの直線経路と略一致するような位置に配置されることになる。
【0032】
上記保持ブロック11は、試料保持孔111内に液状試料40(すなわち液状試料40を入れた試料チューブ30)を安定して保持した状態で、ヒーター15によって全体が加熱されることにより、試料チューブ30内の液状試料40を加熱するようになっている。したがって、その材質としては、熱伝導性が良いものが選択される。たとえば、本実施の形態では、アルミニウムや銅などの金属で形成されることが好ましく、より好ましくはアルミニウム製のアルミブロックである。保持ブロック11がアルミブロックである場合、単に熱伝導性が高いだけでなく、銅等に比較して軽量であるため、測定室23に試料保持体10を設置したり取り外したりする場合の取扱性を高めることができるため好ましい。
【0033】
上記保持ブロック11の形状としても特に限定されるものではないが、光照射部21からの照射光を確実かつ効率的に液状試料40に照射できるとともに、液状試料40からの照射光を確実かつ効率的に光検出部22で検出できるような形状となっていれば特に限定されるものではない。本実施の形態では、図1(b)および図2に示すように、円柱状の形状を有する保持ブロック11が非常に好ましく用いられる。
【0034】
この円柱状の保持ブロック11では、図2の上図に示すように、円柱の中心部を取り囲むように、上記試料保持孔111が4箇所十字状に形成されているとともに、2つの試料保持孔111の間に位置するように、ヒーター15を設置するヒーター用孔113が2箇所形成されている。勿論、試料保持孔111やヒーター用孔113の形成箇所の数や形成位置についてはこれに限定されるものではないが、少なくとも試料保持孔111については、2箇所以上形成されることが好ましく、その形成箇所は、ヒーター用孔113から見て等距離となる位置であることが好ましい。
【0035】
試料保持孔111が2箇所以上形成されており、ヒーター用孔113から見て等距離となっていれば、実際にスペクトルを測定する試料と比較対象(コントロール)の試料との双方を、同一の条件で加熱しながら保持することができるため好ましい。
【0036】
また、保持ブロック11が円柱状になっていると、ヒーター15からの熱を複数の試料保持孔111に均等に伝達させやすくなる。さらに、保持ブロック11を回転させるだけで、測定対象となる試料チューブ30を容易に切り替えることができる。たとえば、図2中の矢印Bで示す位置が、光照射部21から照射光が出射される位置(進行経路Lに対応する位置)であるとすると、保持ブロック11を回転させるだけで、4箇所の試料保持孔111に保持されている試料チューブ30を容易に矢印Bの位置に移動させることが可能となる。
【0037】
図2に示すように、本実施の形態における保持ブロック11の下方は、十字形状に突出する十字底部114となっている。この十字底部114は、上記4箇所の試料保持孔111の位置に合わせて、該試料保持孔111を残すように下方の4箇所を扇状に切り欠くことによって、十字状の凸部となっている。
【0038】
このように、保持ブロック11の下方側が十字底部114となっていれば、図2の下図に示すように、十字状に突出する部分の壁面に、光導入孔112が露出していることになる。そのため、図2の上図に示すように、光導入孔112は、保持ブロック11全体を貫通させる必要がなく、十字底部114の突出する部分のみを貫通するだけでよくなる。それゆえ、光導入孔112を短くすることが可能となり、後述する光導入孔位置合わせ機構12による位置合わせの精度を高めることができる。
【0039】
また、光導入孔112は、上下方向(縦方向)に形成される試料保持孔111に対して、水平方向(横方向)に形成されているが、上記十字底部114を貫通するように形成されているということは、光導入孔112は試料保持孔111の下方で交差することになる。試料保持孔111の下方に光導入孔112が交差していれば、試料保持孔111に保持される試料チューブ30内に分注される液状試料40の量(体積)が比較的少なくても、該液状試料40からスペクトルを測定することが可能になるので好ましい。
【0040】
なお、保持ブロック11の底部側の構造は、上記十字底部114に限定されるものではなく、比較的光導入孔112の距離を短くできるような構成であればよい。
【0041】
図1に示す試料保持体10では、保持ブロック11に、ヒーター15および温度センサー16が一体化されて形成されているように模式的に記載されているが、これは説明の便宜上のものであり、勿論、一体化されていてもよいが、本発明にかかる試料保持体10はこれに限定されるものではない。たとえば、図2に示すように、ヒーター15をヒーター用孔113に投入することで、保持ブロック11に設けるようになっていてもよい。同様に、温度センサー16については、図示しない温度センサー用孔を形成してそこに投入することで保持ブロック11に設けるようになっていてもよいが、好ましくは、上記4箇所形成されている試料保持孔111内に投入されることで保持ブロック11に設けられる。このようにすれば、加熱されている液状試料40に近い条件で、温度を測定することが可能になる。
【0042】
上記ヒーター15としては、具体的には特に限定されるものではなく、液状試料40を加熱可能とするヒーターあるいは熱媒であればよいが、好ましくは、本実施の形態のように、保持ブロック11全体を加熱することで、液状試料40を間接的に加熱するようなものであることが好ましい。これによって、ヒーター15で直接加熱するよりも、液状試料40をより安定した条件で加熱することができる。上記ヒーター15の具体的な構成としては、たとえば、一般に投げ込みヒーターと呼ばれる従来公知の構成のものを好適に用いることができる。あるいは、保持ブロック11の周囲に配管を設け、配管内に熱媒を流動させることで加熱する手法も挙げられる。上記温度センサー16としても、特に限定されるものではなく、従来公知の各種温度計やセンサー類を用いることができる。
【0043】
上記ヒーター15および温度センサー16は、図1(a)に示すように、温度コントローラー17に電気的に接続されている。この温度コントローラー17は、温度センサー16で測定された温度に基づいて、ヒーター15による加熱温度を調整・制御できるようになっていれば、その構成は特に限定されるものではない。また、この温度コントローラー17は、分光光度計本体に一体化されていてもよいし、試料保持体10に含まれる構成となっていてもよいし、試料保持体10からも分光光度計本体からも独立したオプション構成となっていてもよい。
【0044】
なお、本発明におけるヒーター15による加熱温度については、特に限定されるものではないが、上記のように、後述する実施例のように、アクリル酸メチル等のモノマーをポリマー化するなどの用途であれば、上限を200℃程度にしておけばよい。この程度までの加熱が可能であれば、十分ポリマー化を進行させることができる。また、あまり加熱温度が高くなりすぎると、下方断熱部13等の断熱手段を用いても、分光光度計本体や、光導入孔位置合わせ機構12に熱による悪影響を与えることがあるため、好ましくない。
【0045】
本発明にかかる試料保持体10が備える光導入孔位置合わせ機構12としては、その具体的な構成は特に限定されるものではないが、図3に示すように、光照射部21から出射される上記進行経路Lに対する、上記光導入孔112の相対的な位置を、進行経路Lに沿ったX方向および該X方向に直行するY方向の少なくとも一方の方向に変化させ得る2次元位置調整手段であることが好ましい。
【0046】
具体的には、図3の下図に示すように、本実施の形態にかかる光導入孔位置合わせ機構12では、設置固定台121と、この設置台121上にX−Y方向に移動可能に設けられる移動台122とを備えているとともに、図3の上図にも示すように、上記移動台122をX方向に移動させるX方向操作部123と、同じく移動台122をY方向に移動させるY方向操作部124と、移動台122のX方向の位置を決定した後に固定するX方向位置固定ネジ部125と、移動台122のY方向の位置を決定した後に固定するY方向位置固定ネジ部126とを備えている。
【0047】
設置固定台121・移動台122の具体的な構成については特に限定されるものではない。通常、図3に示すように、測定室23の形状に合わせて双方ともに正方形状となっていればよい。
【0048】
上記X方向操作部123・Y方向操作部124の具体的な構成についても特に限定されるものではなく、進行経路Lに対して上記光導入孔112の位置を正確に合わせることができるようになっていればよい。本実施の形態では、図3に示すように、移動台122におけるX方向またはY方向に対応する各辺に設けられるマイクロメーター様の構成を用いている。このような構成であれば、移動台122上に設けられる保持ブロック11の位置、すなわち光導入孔112の位置を正確かつ精密に合わせることができる。
【0049】
また、上記X方向位置固定ネジ部125・Y方向位置固定ネジ部126の具体的な構成についても特に限定されるものではなく、図3に示すように、移動台122の側面に設けられるボルト状(またはネジ状)の構成を用いている。
【0050】
本発明にかかる試料保持体10または分光光度計においては、図1(a)・(b)に示すように、上記保持ブロック11と上記光導入孔位置合わせ機構12との間に、下方断熱部13が設けられることが好ましく、さらに、図4に示すように、保持ブロック11の周囲を覆うように断熱カバー14が設けられていることがより好ましい。
【0051】
保持ブロック11と光導入位置合わせ機構12との間に、下方断熱部13が設けられていることによって、保持ブロック11と光導入位置合わせ機構12とが断熱されている。そのため、液状試料40を加熱するための熱、すなわち保持ブロック11が有する熱が、光導入孔位置合わせ機構12や、測定室23、引いては分光光度計に伝達することを抑制または防止することができる。
【0052】
また、保持ブロック11の周囲を覆うように断熱カバー14が設けられていると、保持ブロック11からの熱を測定室23に放散することを抑制または防止することができる。そのため、上記下方断熱部13と同様に、測定室23、引いては分光光度計に伝達することを抑制または防止することができる。それゆえ、ヒーター15による加熱効率の低下を回避して、ヒーター15にかかる負荷を低減することができる。また、上記放熱の防止だけでなく、保持ブロック11が外気より影響を受けることもないので、液状試料40の温度の低下・不安定化を防止することができる。
【0053】
本実施の形態では、保持ブロック11を加熱することで、間接的に液状試料40を加熱することになるが、保持ブロック11から熱が逃げれば、保持ブロック11の温度も下がり、その結果、液状試料40の温度を略一定に維持することができなくなる。しかしながら、保持ブロック11の周囲を断熱カバー14で覆えば、保持ブロック11からの熱の放散を抑制または防止できるため、保持ブロック11の温度を、ヒーター15・温度センサー16・温度コントローラー17によって正確に制御することが可能になる。その結果、液状試料40の温度を略一定に維持することが可能になる。
【0054】
上記下方断熱部13および断熱カバー14は、まとめて保持ブロック11からの熱の放散を抑制または防止する断熱手段となっているが、断熱手段の構成は、これらに限定されるものではない。たとえば、本実施の形態では、下方断熱部13としてフッ素樹脂製の板状部材またはシート状部材が好適に用いられるが、これに代えて、保持ブロック11と光導入孔位置合わせ機構12との間に一定の空間を確保するような間隔保持部材を用いてもよい。
【0055】
さらに、上記下方断熱部13となる断熱手段としては、上記板状部材やシート状部材と間隔保持部材とを組み合わせてもよい。すなわち、フッ素樹脂製の部材で保持ブロック11と光導入孔位置合わせ機構12との間に一定の空間を確保できるようになっていてもよい。さらに、この場合、板状部材やシート状部材に適宜孔を形成し、そこから窒素等の不活性ガスを吹き込んだり、板状部材やシート状部材を二重にして空間を形成し、その間に窒素等の不活性ガスを吹き込んだりすることで、断熱効果を高めてもよい。
【0056】
本発明にかかる試料保持体10または分光光度計においては、図1(b)に示すように、保持ブロック11の側方から試料保持孔111に向かって貫通する温度測定側孔115を形成し、ここから第2温度センサー18を用いて、内部の液状試料40の温度を直接測定するようになっているとより好ましい。なお、第2温度センサー18は、単に液状試料40の温度を測定するだけでもよいが、温度コントローラー17に接続されて、ヒーター15の加熱温度を制御できるようになっていると、液状試料40に対してより正確な温度で加熱ができるため好ましい。
【0057】
本実施の形態では、試料チューブ30(すなわち液状試料40)を保持していない試料保持孔111に対して、温度センサー16を投入して該試料保持孔111内の温度(すなわち保持ブロック11の温度)を測定することで、液状試料40の温度に代えている。しかしながら、液状試料40の発熱等によっては、必ずしも試料保持孔111内の温度と、液状試料40との温度が一致しないことはあり得る。そこで、本実施の形態では、上記温度測定側孔115を形成して、液状試料40の温度を直接測定することが好ましい。
【0058】
ヒーター15による加熱温度と、液状試料40の温度との間には差が生じる可能性があり、特に、後述するように、液状試料40が化学反応を進行している状態であれば、加熱温度と反応温度との間には差が生じ易くなる。そこで、上記第2温度センサー18で液状試料40の温度(反応温度等)を正確にモニターすることで、液状試料40の正確な温度を把握することができる。
【0059】
上記温度測定側孔115から液状試料40の温度を測定するための第2温度センサー18としては、非接触で液状試料40の温度を測定できる構成のものが好ましい。具体的には、たとえば赤外センサー等を挙げることができる。上記試料保持孔111内では、液状試料40は、実際には、試料チューブ30内に分注されているので、直接試料チューブ30内に測定部を投入して内部の温度を測定することは困難となる。そこで、赤外センサーのような非接触方式の第2温度センサー18を用いることが好ましい。また、このように温度測定側孔115から液状試料40の温度を直接測定することで、液状試料40が化学反応を起こしている場合では、該液状試料40の反応温度を測定することもできる。
【0060】
本発明にかかる試料保持体10には、加熱手段だけでなく冷却手段が備えられていてもよい。たとえば、冷却手段としては、特に限定されるものではないが、冷却水等の冷媒を用いて保持ブロック11を冷却する構成(水冷方式)や、冷却ファンを用いて保持ブロック11を冷却する構成(空冷方式)等が挙げられる。ただし、本発明にかかる試料保持体10は、測定室23内に設置できる程度の大きさである必要があるため、冷却手段についてもこの点を考慮する必要がある。たとえば、赤外分光光度計等では、測定室23の面積は20×20cm程度の大きさであるものが多い。それゆえ、試料保持体10に一体化させるのであればコンパクト化できる水冷方式が比較的好ましく、分光光度計に一体化させるのであれば測定室23に空冷方式の冷却手段を設ける例が好ましく挙げられる。
【0061】
上記冷却手段が設けられている場合、加熱手段によって保持ブロック11が過剰に加熱された場合でも迅速に冷却することができる。そのため、液状試料40の温度が設定温度から外れるような事態を回避することが可能になり、温度コントロールの精度をより向上することができる。また、液状試料40によっては、スペクトル測定時に加熱せず冷却するような用途も考えられるが、このような用途にも十分対応することができる。
【0062】
本発明にかかる分光光度計は、上述した試料保持体10を備えるものであるが、測定するスペクトルの種類、すなわち分光光度計そのものの種類については特に限定されるものではない。本実施の形態では、特に近赤外および赤外スペクトルを測定する赤外分光光度計や、ラマンスペクトルを測定するラマン分光光度計を好適に用いることができる。したがって、図1(a)に示す光照射部21としては、赤外分光光度計の場合、赤外光源を含んでいればよく、ラマン分光光度計の場合、各種レーザー光源を含んでいればよい。同様に、光検出部22についても、赤外分光光度計の場合、赤外光を検出できる光センサー類であればよく、ラマン分光光度計の場合、散乱光を検出できる光センサー類であればよい。
【0063】
上記光照射部21には、光源から照射光を、光導入孔112を介して保持ブロック11内の液状試料40に照射するための各種光学系が含まれていることが好ましい。同様に、上記光検出部22にも、光導入孔112を介して保持ブロック11内の液状試料40から出射する照射光を、光センサーに導くための各種光学系が含まれていることが好ましい。したがって、本発明にかかる分光光度計では、光導入孔112に沿って照射光の進行経路Lを形成できるようになっていればよく、光源と測定室23と光センサーとが必ずしも一直線となっている必要はない。
【0064】
本発明にかかる試料保持体10または分光光度計を用いたスペクトルの測定においては、液状試料40を加熱(状況によっては冷却)状態で安定して保持しながらスペクトルを即時的かつ経時的に測定することができる。そのため、特に好ましくは、各種有機化合物やポリマー(重合体)の合成前の原料混合物、すなわち、化学反応進行前の物質の混合物を用いることができる。これによって、たとえば各種有機化合物やポリマー(重合体)の合成の過程で、経時的にスペクトルを測定することができる。
【0065】
たとえば、ポリマーの合成においては、溶媒、モノマーおよび触媒等を試料チューブ30に仕込んで液状試料40とし、反応条件に基づいて、試料保持体10で加熱を行う。このとき、経時的にスペクトルを測定すれば、モノマーに特異的なスペクトルのパターンから、ポリマーに特異的なスペクトルのパターンへの変化を経時的に測定することができる。同様に化合物の合成であれば、出発化合物に特異的なスペクトルのパターンから、生成化合物に特異的なスペクトルのパターンへの変化を経時的に測定することができる。その結果、化学反応のメカニズムを解析することができる。
【0066】
より具体的には、後述する実施例で述べるように、たとえばアクリル酸メチルモノマーの赤外スペクトルを測定すると、6100cm-1〜6250cm-1前後にビニル基の炭素・炭素二重結合(C=C−HのC−H)のピークが生じる。アクリル酸メチルの重合が進むと、このピークは徐々に減少していくことになる。そこで、既知のポリアクリル酸メチルと、アクリル酸メチルモノマーとの赤外スペクトルを事前に測定しておき、これを基準として、上記ピークの減少に基づいて反応の進行速度を解析することができる。勿論、ピークの変化から、その他の知見が得られる可能性もあるため、アクリル酸メチルの重合反応のメカニズムの解析が可能となる。
【0067】
従来の分光光度計では、スペクトルを測定しながら、液状試料40に加熱を施すことが難しく、それゆえ、上記のような経時的なスペクトルの測定は通常では困難であったが、本発明では、加熱しながらスペクトルが測定できるので、化学反応の進行過程をスペクトルで解析することが可能になる。そのため、公知の化学反応においても、従来知られていなかった知見を得ることが可能となり、特に、各種化合物の研究開発分野で有効に利用することができる。
【0068】
ここで、本発明では、保持ブロック11にて、液状試料40を加熱しながら保持することになるが、照射光は、光導入孔112を介して液状試料40に照射することになる。しかしながら、測定室23の大きさから見ても、液状試料40の入った試料チューブ30としては小さなものしか用いることができず、また、このような小さな試料チューブ30を安定して加熱・保持するためには、試料保持孔111に交差するように形成される光導入孔112のサイズをあまり大きくすることはできない。
【0069】
本発明では、上記のような小さな照射ターゲット(液状試料40の入った試料チューブ30およびそこに至る光導入孔112)に正確かつ確実に照射光を到達させるために、光導入孔位置合わせ機構12が設けられている。この光導入孔位置合わせ機構12を用いることで、保持ブロック11の位置を変更したような場合でも、照射光の進行経路Lに対する光導入孔112の位置を容易に微調整することができる。そのため、光照射部21から出射される照射光を確実に液状試料40に導くことができる。
【0070】
特に、本実施の形態では、図2に示すような、円柱状で、中心から等距離となる位置に試料保持孔111を複数形成した保持ブロック11が好適に用いられる。このような円柱状の保持ブロック11では、上述したように、これを回転させることで、4つの異なる液状試料40からスペクトルを測定することが可能になる。しかしながら、保持ブロック11の回転に伴って照射光の進行経路Lに対する光導入孔112の位置がずれる場合がある。これに対して、上記光導入孔位置合わせ機構12で光導入孔112の位置を微調整することで、照射光を確実に液状試料40に導き、正確なスペクトルを測定することができる。
【0071】
また、本実施の形態では、図3に示すような、進行経路Lに沿ったX方向およびX方向に直行するY方向の双方に位置合わせができるX−Y軸可動型(二次元位置調整型)の光導入孔位置合わせ手段を用いている。そのため、X方向の調整により液状試料40と照射光の出射部位との距離を調整でき、Y方向の調整により、進行経路Lに対する光導入孔112の相対的な位置を微調整して、照射光が確実に液状試料40に当たるようにすることができる。
【0072】
本発明において用いられる試料チューブ30としては、上述したように、試料保持体10が測定室23内に収納できるサイズである必要があるため、これに合わせた小さいサイズのチューブであることが好ましいが、具体的には、核磁気共鳴分光法(NMR)に用いられるNMR用サンプリングチューブが特に好ましい。NMR用サンプリングチューブであれば、サイズは十分小さく、かつ、NMR測定用に製造されているため、スペクトル測定に悪影響を及ぼすような要素もないという利点がある。
【0073】
勿論、本発明で液状試料40を入れるために用いられる容器は、チューブ状の容器に限定されるものではないが、保持ブロック11に縦孔(試料保持孔111)を形成して該容器を保持する観点から、チューブ状の容器が特に好ましい。フラスコのような形状であれば、チューブ状容器に比べて、試料保持孔111の内壁と容器の外壁との接触面積が減少するため、安定保持や安定加熱ができなくなる恐れがある。
【0074】
以上のように、本発明にかかる試料保持体10および分光光度径では、液状試料40、特に反応前の物質の混合物を加熱しながら保持して、スペクトルを測定することで、上記のように、反応過程でのスペクトル測定が可能になる。その結果、従来では全く分からなかった、in situ でのスペクトル測定とこれに基づく解析が可能になる。それゆえ、公知の化学反応においても、従来知られていなかった知見を得ることが可能となり、特に、各種化合物の研究開発分野で有効に利用することができる。
【0075】
【実施例】
以下、具体的な実施例および図4に基づいて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
〔試料保持体例〕
前記実施の形態で説明した、図1ないし図3に示す構成の試料保持体を備える赤外分光光度計(以下、IR計と略す)を用いて、アクリル酸メチルの重合プロセスについて、赤外スペクトルを測定した。
【0077】
保持ブロックとしては、アルミニウム製で、直径90mm、高さ62mmの円柱状のものを用いた。ヒーター用孔の径は20mm、試料保持孔の径は6mm、十字底部の突出高さは28mm、光導入孔の径は4mmとした。下方断熱部としてはフッ素樹脂製のものを用い、断熱カバーとしてはアルミ製のものを用いた。試料チューブとしては、径5mmのNMR用サンプリングチューブを用いた。
【0078】
ヒーターとしては500Wの出力のものを、温度センサーとしてはCA線を用い、温度コントローラーとしては、東京理工舎製ヒータコントローラまたは富士電機製マイクロコントローラX、形式PTZを用いた。
【0079】
〔測定例〕
事前にアクリル酸メチル(CH2 =CHCOOCH3 )の赤外スペクトルを測定した。その結果を図4(a)に示す。なお、図4(a)では、横軸が波数(単位cm-1)であり、縦軸が吸収強度(単位Abs)である。このスペクトルにおいて、アクリル酸メチルに特異的なビニル基の吸収ピーク(ビニルピークと称する)が6100cm-1〜6250cm-1前後にビニル基の炭素・炭素二重結合(C=C−HのC−H)のピークが生じていることがわかる。
【0080】
その後、アクリル酸メチル10mlに対して、過酸化ベンゾイル0.02gを添加し、窒素で15秒間バブリングして、測定用の液状試料40を調製した。この液状試料40を上記NMR用サンプリングチューブに仕込んだ。一方、IR計の測定室に上記試料保持体を設置し、この試料保持体の試料保持孔に上記NMR用サンプリングチューブをセットした。その後、ヒーターで70℃まで加熱し、赤外スペクトルをマルチスキャンで経時的に測定した。なお、測定波数の範囲はC−Hの倍音吸収の範囲である5800cm-1〜6300cm-1とし、吸収強度測定波数は6170cm-1を用いた。その結果を図4(b)の経時変化のグラフに示す。なお、図4(b)では、横軸が時間(単位分)であり、縦軸が上記ビニルピークの吸収強度である。
【0081】
また、反応前の液状試料40と反応終了後の液状試料40のスペクトルを比較した。その結果を図4(c)に示す。図4(c)では、横軸が波数(単位cm-1)であり、縦軸が吸収強度(単位Abs)である。
【0082】
図4(b)から明らかなように、本発明にかかる試料保持体およびIR計を用いれば、アクリル酸メチルのビニルピークの吸収強度が反応の進行に伴って減少していくことが分かる。それゆえ、この吸収強度の変化から、アクリル酸メチルの重合速度等を解析することが可能となる。
【0083】
また、図4(c)に示すように、反応前では十分な強度のあったビニルピークが反応後にはほぼ完全に消失している。このように、反応前後で明らかに変化する吸収ピークを利用することで、化学反応を赤外スペクトルおよび近赤外スペクトルで解析することが可能になる。
【0084】
【発明の効果】
以上のように、本発明にかかるスペクトル測定用試料保持体および分光光度計は、該試料保持体に、上記液状試料に照射光を導入する光導入路が設けられ、該光導入路が上記照射光の進行経路に対して平行となる位置に形成されるとともに、上記液状試料を加熱可能とする加熱手段と、上記進行経路に対する該光導入路の相対的な位置を、進行経路に沿ったX方向およびX方向に直行するY方向の少なくとも一方の方向に変化させ得る光導入路位置調整手段と、上記光導入路が設けられている保持ブロックと、上記保持ブロックと上記光導入路位置調整手段との間に設けられ、上記保持ブロックの周囲を覆うように設けられた断熱カバーを備えた断熱手段と、上記液体試料の温度を測定する温度センサーと、上記温度センサーで測定された温度に基づいて、上記加熱手段による加熱温度を制御する温度コントローラーとを備え、上記保持ブロックには、上記液体試料の入った測定用容器を保持する複数の試料保持孔と、上記加熱手段を設置するための複数のヒーター用孔とが形成され、上記試料保持孔は、上記ヒーター用孔を中心として等間隔となる位置に形成されている構成である。
【0085】
それゆえ、上記構成では、液状試料を加熱しながら、光導入路および光導入路位置調整手段によって、光照射手段から出射される照射光を確実に液状試料に導くことができる。特に、光導入路位置調整手段が、光導入路の位置をX方向またはY方向の少なくとも一方に調整可能としていれば、より一層正確な位置調整ができる。そのため、加熱状態で安定して保持される液状試料から、スペクトルを即時的かつ経時的に検出することがより一層確実になる。
【0086】
その結果、従来では全く分からなかったスペクトル測定とこれに基づく解析が可能になる。それゆえ、公知の化学反応においても、従来知られていなかった知見を得ることが可能となり、特に、各種化合物の研究開発分野で有効に利用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は、本発明の実施の一形態にかかる試料保持体の概略構成の一例を示す模式図であり、(b)は、(a)に示す試料保持体が備える保持ブロックの概略構成の一例を示す斜視図である。
【図2】 図1に示す試料保持体が備える保持ブロックの具体的な構成の一例を示す上方からの俯瞰図(上図)および側面図(下図)である。
【図3】 図1に示す試料保持体が備える光導入孔位置合わせ機構の具体的な構成の一例を示す上方からの俯瞰図(上図)および側面図(下図)である。
【図4】 (a)は、本発明の一実施例において、測定対象の試料として用いたアクリル酸メチルの赤外および近赤外吸収スペクトルを示すチャートであり、(b)は、本発明にかかる試料保持体および分光光度計を用いて得られた、アクリル酸メチルに特異的なビニル基のピークの吸光強度の経時的変化を示すグラフであり、(c)は、ポリアクリル酸メチルの吸収スペクトルと、アクリル酸メチルモノマーの吸収スペクトルとを比較したチャートである。
【符号の説明】
10 試料保持体(スペクトル測定用試料保持体)
11 保持ブロック
12 光導入孔位置合わせ機構(光導入路位置調整手段)
13 下方断熱部(断熱手段)
14 断熱カバー(断熱手段)
15 ヒーター(加熱手段)
21 光照射部(光照射手段)
22 光検出部(光検出手段)
23 測定室
40 液状試料
112 光導入孔(光導入路)
L 照射光の進行経路

Claims (7)

  1. 分光光度計の測定室に設置可能となっており、液状試料を、光照射手段から出射される照射光を導入可能とした状態で保持するとともに、該液状試料の加熱を可能とする加熱手段を備えたスペクトル測定用試料保持体であって、
    さらに、上記測定室に設置された場合に、上記液状試料に照射光を導入する光導入路が設けられ、該光導入路の配置位置が上記照射光の進行経路に対して平行となる位置であるとともに、
    上記進行経路に対する該光導入路の相対的な位置を変化させる光導入路位置調整手段と
    上記光導入路が設けられている保持ブロックと、
    上記保持ブロックと上記光導入路位置調整手段との間に設けられ、上記保持ブロックの周囲を覆うように設けられた断熱カバーを備えた断熱手段と、
    上記液体試料の温度を測定する温度センサーと、
    上記温度センサーで測定された温度に基づいて、上記加熱手段による加熱温度を制御する温度コントローラーとを備え、
    上記保持ブロックには、上記液体試料の入った測定用容器を保持する複数の試料保持孔と、上記加熱手段を設置するための複数のヒーター用孔とが形成され、
    上記試料保持孔は、上記ヒーター用孔を中心として等間隔となる位置に形成されていることを特徴とするスペクトル測定用試料保持体。
  2. 上記保持ブロックは、回転可能な円柱状の形状を有するとともに、上記試料保持孔は、該円柱の中心部を取り囲むように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスペクトル測定用試料保持体。
  3. 上記保持ブロックは、回転可能な円柱状の形状を有するとともに、上記試料保持孔は、該円柱の中心部を取り囲むように4箇所十字状に形成されており、
    上記ヒーター用孔は、2箇所の試料保持孔の間に位置するように、2箇所形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスペクトル測定用試料保持体。
  4. 上記保持ブロックは、アルミニウム製のアルミブロックであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のスペクトル測定用試料保持体。
  5. 上記測定用容器は、NMR用サンプリングチューブであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のスペクトル測定用試料保持体。
  6. 直線状に対向配置される光照射手段および光検出手段と、これらに挟持されるように配置される測定室と、該測定室に設置可能となっており液状試料を保持する試料保持体とを備えている分光光度計において、
    上記試料保持体には、上記液状試料に照射光を導入する光導入路が設けられ、該光導入路の配置位置が上記照射光の進行経路に対して平行となる位置であるとともに、
    さらに該試料保持体は、上記液状試料を加熱可能とする加熱手段と、
    上記進行経路に対する該光導入路の相対的な位置を、進行経路に沿ったX方向およびX方向に直行するY方向の少なくとも一方の方向に変化させ得る光導入路位置調整手段と、
    上記光導入路が設けられている保持ブロックと、
    上記保持ブロックと上記光導入路位置調整手段との間に設けられ、上記保持ブロックの周囲を覆うように設けられた断熱カバーを備えた断熱手段と、
    上記液体試料の温度を測定する温度センサーと、
    上記温度センサーで測定された温度に基づいて、上記加熱手段による加熱温度を制御する温度コントローラーとを備え、
    上記保持ブロックには、上記液体試料の入った測定用容器を保持する複数の試料保持孔と、上記加熱手段を設置するための複数のヒーター用孔とが形成され、
    上記試料保持孔は、上記ヒーター用孔を中心として等間隔となる位置に形成されていることを特徴とする分光光度計。
  7. 請求項1〜5の何れか1項に記載のスペクトル測定用試料保持体を用いて、
    液状試料における化学反応をスペクトル解析することを特徴とするスペクトル測定方法。
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