JP3761201B2 - イオントフォレーシス用デバイス - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はイオントフォレーシス用デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
イオン性薬剤の経皮吸収を促進する効果的な局所投薬方法として、イオントフォレーシス(イオントフォレーゼ)は近時益々注目されつつある(グラス ジェイエムら.,インターナショナル ジャーナル オブ ダーマトロジィ(Glass JM et al., Int. J. Dermatol.)19 519(1980);ルッソ ジェイ.,アメリカン ジャーナル オブ ホスピタル ファーマシィ(Russo J., Am. J. Hosp. Pharm.)37 843(1980);ガンガロサ エルピーら.,ジャーナル オブ ファーマコロジカル エクスペリメント アンド セラピー(Gangarosa LPet al., J. Pharmacol. Exp. Ther. )212 377(1980);クワンビィエスら.,ジャーナル オブ インフェクショナル デシーズ(Kwon BS et al., J. Infect. Dis.)140 1014(1979);ヒル ジェイエムら.,アニュアル オブ ニューヨークアカデミイ オブ サイエンス(Hill JM et al., Ann. NY.Acad. Sci.)284 604(1977);タンネバウム エム.,フィジカル セラピー(Tannebaum M., Phys. Ther. )60 792(1980)及びアール・エッチ・ガイ編 アドバンスト・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(R.H.Guy Advanced Drug Delivery Reviews)9(1992)119−607、等々)。これら先行技術に於けるイオントフォレーシスは、通常、持続平流発生装置又は断続平流発生装置の出力端子と、薬液含浸脱脂綿等で金属板等の導体を被覆して成る関導子及び類似構成の不関導子とを連結してなされるものであるため、その実施はかなり煩雑であり、投薬方法として極めて有効なものであるもに拘わらず、その普及は限定されざるを得ないものであったが、近時、脱分極機能を有するパルス出力手段を投薬用電気出力として用いることによって火傷のない経皮投薬が実施できることが開示されるに至った(特開昭60年第156475号公報)。しかしながら、電気出力と投薬効率の関係等、様々な面で解明されていない部分も未だ存在している。
【0003】
【課題を解決するための手段】
上記に鑑み本発明者らは、鋭意研究の結果、周波数約1KHz〜100KHz、デューティ比が55〜85%の範囲における特定不感域パルスを生成するためのパルス生成手段及び前記パルス生成手段の生成するパルスに基づいて形成された治療パルスの休止期間中に治療パルス出力端子間を脱分極するための脱分極手段を有するイオントフォレーシス用デバイスによって、驚くべきことに、患者は痛み、不快な刺激又は、刺激自体を感じることなく、しかも生体通電の為の電流量を飛躍的に増加させ、効率の良い経皮投薬の実現に至った。
【0004】
パルス生成手段が出力するパルス周波数は、約1KHz〜100KHzの範囲に設定されるものである。これ以外の範囲では、例えば、約1KHz以下では、低周波治療器が利用する周波数帯であり、生体が感じやすい周波数帯となってしまうので、投薬には不向きである。又、100KHz以上では、回路自体のエネルギー消費や各部の発熱等による損失抵抗の増加等が著しくなる為、好ましくない。
パルス生成手段が出力するパルスのデューティ比は55〜85%の範囲に於ける特定不感域に設定される。この値では、パルスが直流に近づいた状態であるにも拘わらず、患者自身は痛みや不快な刺激を全然感じることがない。この不感域以外のデューティ比では、直流を使用した場合と同様、ジリジリとした痛みや不快な感じを受け、投薬が行える状態に至らない。直流によるイオントフォレーシスは、従来から検討されてきた手段であるが、低電圧であっても火傷や痛みが発生するため実用性の低い手段である。しかしその一方で生体に流す実効電流量が大きいことが一因となって、投薬効率が良いという点も報告されている。
上記不感域を示すデューティ比は、導子を構成する電極素材等によって若干の変動がある。例えば、主に炭素、チタンを電極として使用した場合の不感域は、デユーテイ比75〜80%の間、Ag/AgClを電極として使用した場合の不感域は、デユーテイ比60〜75%の間に各々存在する。
更に、この不感域は個体によっても若干変動する可能性があるから、デューティ比調整手段を更に設けることも有用である。
【0005】
本発明で示す脱分極手段とは、特開昭60年第156475号公報で示され るものが代表的であってパルス間隔間パルス休止間で皮膚とのインターフェースを形成する導子対に接続される出力端子間を電気的に短絡させる回路を供えたもの等が例示される。
【0006】
【実施例】
(1)はパルス出力手段であり、自励型のマルチバイブレータ等よりなり、上述した様に周波数1(KHz)〜100(KHz)のパルスを出力する。パルス出力手段(1)は周波数調整等の機能を有する場合もある。
(2)はデューティ調整手段であり、単安定マルチバイブレータ等よりなり、入力パルスに対しデューティ調整を行ない所望の不感域デューティ比を有するパルスを出力する。又、デューティ調整手段(2)は、デューティ比を調整する為の入力、又は動作の開始停止を行う為の入力を行う入力手段(3)が付加されている。入力手段(3)は、手動型回転式ボリューム、手動型プッシュ式ボリューム、あるいはアルゴリズム化された自動可変式ボリューム、スイッチ等々を有する。尚、入力手段(3)は、不感域のデューティ比が一定の値とした場合は無くてもよい。 (4)は脱分極手段であり、パルス出力の休止時期に出力端間を短絡する機能を有している。出力端間を短絡させる手段としては、互いにチャネル構成の異なるスイッチング素子2つを相補的に接続したものや、トーテムポール型出力スイッチング回路等々が例示される。くわしくは、特公平2年45461号公報に記載されている。更に電流、電圧又は電力を供えたパルスに変換する動作を共有したものであってもよい。
(5)は出力端であり、生体皮膚表面との接触インターフェースを司る導子と接続する。導子は、関導子と不関導子とに分かれ、その何れか一方、又は両方に薬物を含むものである。
【0007】
次に動作を図を参照して説明する。
パルス出力手段(1)は図2(1)に示す様なパルスを出力する。入力手段(3)は、不感域に適合したデューティ比を示す信号を出力する。デューティ可変手段(2)はこの信号に従い、パルス幅(T)を調整したパルス(図2(2))を出力する。
デューティ可変手段(2)が出力した図2(2)で示すパルスは脱分極手段(4)で、所望の電流、電圧、電力を有するパルスに変換され、出力端(5)に出力する。尚、脱分極手段(4)から出力されるパルスは、図2(3)に示す様に周波数、デューティ比は入力パルスと変わらず、パルス振幅が増幅された状態となっている。又、図1ではパルス出力手段(1)と、デューティ可変手段(2)は別々に記載したが、デューティ可変型非安定マルチバイブレータ等の1つの回路で置き換えることも可能である。
【0008】
次に図2の実施例について図3を参照して詳細に説明する。
図3は、マイクロコンピュータと脱分極手段とを組合わせたものである。
(6)はマイクロコンピュータであり、プログラムを内蔵し、4ビット、8ビット等の処理能力を有し、これらの性能は、投薬態様の複雑さ、種類等によって適宜選択される。
(7)は電池であって、1.5V〜3Vのコイン型、ボタン型の1次、乃至2次電池、又は、通常の単三、006P乾電池等よりなる。
(4)は、脱分極手段であり図1と同一の構成を有するが、ここで具体的な回路の一例を示した。(41)はPチャネルFET、(42)はNチャネルFETである。各々のFETのゲートは、マイクロコンピュータ(6)の出力と接続されるが、必要に応じFET駆動回路が付加される場合もある。その他の構成部は、図1と同一であるので同じ番号を付し説明を省略した。
次に動作を説明する。マイクロコンピュータ(6)は予じめ投薬用電気出力パターンに係るプログラムを記憶しているものとする。入力手段(3)より、スタート信号を手動、自動的に入力する。マイクロコンピュータ(6)は上記プログラムを実行し、例えば、デューティ比75%のパルスを出力する。このパルスは、脱分極出力手段(4)に入力される。マイクロコンピュータ(6)が出力したパルスが、”1”の時、FET(41)がオン、FET(42)がオフし、電池(7)の電気エネルギーが、出力端(5)に出力され、更に導子を介して皮膚に印加される。マイクロコンピュータ(6)が出力したパルスが、”0”の時、FET(41)がオフ、FET(42)がオンし、電池(7)の電気エネルギーの印加が、中止されると同時に、FET(42)がオフするため、出力端(5)間が電気的に短絡状態となって脱分極が行われる。
マイクロコンピュータ(1)は、プログラムによって出力するパルスのパルス周期、パルス幅の設定、パルス間隔の設定、パルス出力の停止開始を自在に行うことができることから、図4で示す様にバリエーションのあるパルス出力を行うことができる。
図4(1)は、75%不感域デューティを有する脱分極パルス(FP)を所定時間連続させた後、デューティ比30%の脱分極パルス(NP)に変化させたものである。75%脱分極パルス(FP)の周波数は例えば5KHz、30%脱分極パルス(NP)の周波数は例えば40KHzである。
図4(2)は、75%デューティを有する脱分極パルス(FP)を所定時間連続させた後、所定時間脱分極出力(SP)を出力し、所定時間30%デューティを有する脱分極パルスを出力する。
図4(3)は、図4(2)で示した75%脱分極パルス(FP)、脱分極出力(SP)、30%脱分極パルス(NP)の組み合わせを変化させたものに更に動作を停止させた状態(DP)を付加させたものである。
尚、図4はあくまで一例であって、このパターンに限定されるものではない。又周波数も1KHz〜100KHzの範囲であれば限定されることはない。この様にバリエーションが与えられることは75%脱分極パルスを用いる場合好都合である。つまり、75%脱分極パルス(FP)の場合、脱分極時間は1パルス周期の1/4にしかならない。脱分極は、経皮周辺にパルス出力によって蓄積された電荷を電気回路上で短絡させるが、その際形成される電気的経路には、抵抗成分が多数存在し、短絡放電中和に時間を要する場合もある。従って脱分極時間が短くなった75%脱分極パルスに於いては、更に脱分極状態あるいは脱分極時間が長い状態で安定した脱分極パルス出力状態を付加形成する必要が生じる場合もあるのである。
但し、マイクロコンピュータは75%脱分極パルスのみを出力する場合も、薬剤の種類、患者の状態等々によって有り得る。
尚、マイクロコンピュータだけが多様なパルスパターンを形成できるというわけではなく、パルスパターンの数等によっては、ワンチップマルチバイブレータの組み合わせやゲートアレイ等の1個のIC化したものであっても充分に適用可能である。又、マイクロコンピュータの出力形態がC−MOSの様な相補性を有しており、且つ、投薬に必要な電流が極小量で良い場合、図3で示した脱分極手段(7)は、この相補性の出力形態自体が兼ねるものとなり、不要となって回路はよりシンプルとなるのである。又、上述した様にゲートアレイでも脱分極回路を収容することが可能である。
【0009】
図1並びに図3の出力端(5)は、皮膚とのインタフェースを形成する関導子、不関導子からなる導子と接続する。導子は、導電性部材よりなる電極と、薬物及び薬物保持層とからなり、必要に応じて、薬物保持層に水分を供給し、安定した導電路を形成する為の水分供給手段、粘着性を持たせる為の粘着部材層が付加される。薬物は、関導子、不関導子のどちらか一方、又は両方に含有、付加されるものであるが、どちらか一方の場合、他方の導子は薬物保持層を構成する必要が無く、例えば、導電性ゲルと電極の積層構成に置き換えてもよい。又、電極を構成する導電性部材としては、可逆性(非分極性)を有するものが好ましく、例えば、銀(Ag)、塩化銀(AgCl)が好適である。導子の具体的な構成例としては特願平5年第174645号、特願平4年第158939号等に示されているものである。
次に、本発明に於いて使用される薬物例を次に示す。
局所麻酔剤
塩酸リドカイン
鎮咳去痰剤
クロモグリク酸ナトリウム、フマール酸ケトチフェン
気管支拡張剤
フマル酸ホルモテロール
鎮痛剤
塩酸ナルブフィン、乳酸ペンタゾシン、ジクロフェナックナトリウム
強心剤、センタニール、酒石酸フェンタニール、塩酸モルヒネ
塩酸ドパミン
精神神経安定剤
ペルフェナジン、フェノチアジン
抗生物質
セフォテタンニナトリウム、硫酸ジベカシン、硫酸アミカシン、硫酸ネチルマイシン、硫酸シソマイシン
抗悪性腫瘍剤
マドリアマイシン、マイトマイシンC、塩酸ブレオマイシン、レンチナン、ピシバニール、硫酸ビンクリスチン、シスプラチン
循環機能改善剤
クエン酸ニカメタート、塩酸メクロフェノキサート、マレイン酸リスリド、ホパンテン酸カルシウム
通風治療剤
アロプリノール
その他ペプタイド類
LHRH、エンケファリン、エンドルフィン、インターフェロン、インシュリン、カルシトニン、TRH、オキシトシン、リプレシン、バソプレシン、グルカゴン、脳下垂体ホルモン(HGH、HMG、HCG、酢酸デスモプレシン)、卵胞黄体ホルモン、成長ホルモン分泌因子
等などである。
【0010】
実験例
出力電圧6V、12V、周波数5KHzでデューティ可変(9%〜80%)可能な脱分極パルス出力装置及びチタン製シート材にカーボン材を被覆した導電性部材と10%PVAゲルとの積層体を導子(面積22cm2)として使用した。この導子を人体前腕に装着し、 デューティ比を変化させた電気出力を印加した時の皮膚刺激についての感触とピーク電流(Ip)、平均電流(Im)、有効電流(Ie)値について測定した。刺激についての感触は、被験者の判断により、10を1単位として刺激が強くなると数字が大きくなるように設定した。不感の場合は0である。結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0003761201
表1(1)で示すようにデューティ比を上げることにより、有効電流(Ie)が上昇すると同時に被験者も次第に強く刺激を感じる様になるがデューティ比75%、有効電流1.3(mA)で不感状態となった。出力電圧を12Vとして同様のことを行った所、表1の(2)で示すようにデューティ比75%、有効電流1.36(mA)で9(V)の出力電圧の時と同様、被験者は刺激を感じることがなく、やはり不感状態となった。この様に不感状態であるにも拘らず投薬効率に直接影響を与える有効電流が、非常に増加していることが示されている。
【0011】
【発明の効果】
上述した通り、本発明は周波数1KHz〜100KHz、デューティ比を55%〜85%とした脱分極パルスを出力することによって痛みが無い状態あるいは、不感状態で充分な投薬効率を上げることができる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
【図3】本発明の実施例を示す図。
【図2】図1の動作を説明する為の図。
【図4】図3の動作を説明する為の図。
【符号の説明】
1 パルス出力手段
2 デューティ可変手段
3 入力手段
4 脱分極パルス生成手段
5 出力端
6 マイクロコンピュータ

Claims (2)

  1. 周波数約1KHz〜100KHz、デューティ比が60〜75%の不感域パルスであって、前記不感域パルスのパルス間隔に脱分極の状態を形成する不感域脱分極パルスを所定時間継続して出力した後、
    前記不感域脱分極パルスを出力する端子間にデューティ30%、周波数40KHzのパルス出力であって、このパルス出力のパルス間隔で脱分極した状態を形成する脱分極パルスを出力することで形成される治療パルスを出力するパルス出力手段、前記治療パルスを出力するAg/AgClよりなる導電性部材を含む導子を有するイオントフォレーシス用デバイス。
  2. 周波数約1KHz〜100KHz、デューティ比が75〜80%の不感域パルスであって、前記不感域パルスのパルス間隔に脱分極の状態を形成する不感域脱分極パルスを所定時間継続して出力した後、
    前記不感域脱分極パルスを出力する端子間にデューティ30%、周波数40KHzのパルス出力であって、このパルス出力のパルス間隔で脱分極した状態を形成する脱分極パルスを出力することで形成される治療パルスを出力するパルス出力手段、前記治療パルスを出力する炭素、チタンよりなる導電性部材を含む導子を有するイオントフォレーシス用デバイス。
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