JP3758964B2 - 鋼板コンクリート構造梁及びそれを有する建設物、並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板コンクリート構造梁、及び鋼板コンクリート構造梁を有する建設物に関し、また、それらを製造するための製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼板コンクリート構造(SC構造)、即ち、2枚の鋼板の間にコンクリートを充填した構造は、コンクリート打設時の型枠が不要であるため、鉄筋コンクリート(RC構造)に比べて工期が短いという利点がある。更に、鋼板コンクリート構造は、鉄筋コンクリート構造よりも力学的特性が優れているという利点もある。なお、本明細書では、曲げモーメント、及び/又は、面外方向の剪断力を受ける鋼板コンクリート構造物を「鋼板コンクリート構造梁」と呼ぶ。
【0003】
鋼板コンクリート構造梁の従来の強度計算では、例えば、梁に曲げモーメントが作用した時の降伏荷重を以下のように計算していた。
図10を参照して、鋼板コンクリート構造梁の従来の強度計算法について説明する。図10(a)は鋼板コンクリート構造梁の正面図であり、図10(b)は側面図である。鋼板コンクリート構造梁10は、下側鋼板2と、上側鋼板4と、それらを連結する複数のウェブ部材6と、上側鋼板と下側鋼板との間に充填されたコンクリート8とを有する。鋼板コンクリート構造梁10の諸元を、長さL、高さH、幅B、下側鋼板の厚さt1、上側鋼板の厚さt2、コンクリートの弾性係数EC、上側及び下側鋼板の弾性係数ES、弾性係数比n=ES/ECと、定める。
【0004】
図11に、鋼板コンクリート構造梁10に曲げモーメントが作用した場合の歪εの分布の一例を示す。ここで、xは梁の上面から中立軸までの距離を表している。図11に示す歪εの分布では、中立軸よりも下側の梁部材は引張られて伸び、上側の梁部材は圧縮されて縮んでいる。
【0005】
次に、図12を参照して、鋼板コンクリート構造梁10の応力分布について説明する。従来の鋼板コンクリート構造梁の強度計算法においては、例えば、田中礼治著『鉄筋コンクリートの構造設計入門』(相模書房、平成元年)にも記載されているように、コンクリートは圧縮力のみを分担し、引張り力を全く分担しないという仮定のもとに強度計算が行われていた。従って、鋼板コンクリート構造梁に作用する応力は図12に示すような分布になる。即ち、中立軸よりも下側のコンクリートの部分の応力が0になる。
【0006】
従来技術による鋼板コンクリート構造梁の強度計算法について具体的に説明する。図11に示すように、鋼板コンクリート構造梁10の上面における歪をεuとすると、上側鋼板4の中心の歪ε2は(数式1)によって表される。
【数1】
従って、上側鋼板4が分担する圧縮力CSは、
【数2】
となる。
【0007】
また、コンクリート8の上端における歪εCは、
【数3】
となる。従って、中立軸よりも上のコンクリート8が分担する圧縮力CCは、
【数4】
となる。
【0008】
また、前述のように、中立軸よりも下側のコンクリート8が分担する引張り力TCは0である。更に、下側鋼板2の下端における歪εbは、
【数5】
となる。従って、下側鋼板2の中心におけるε1歪は、
【数6】
となる。よって、下側鋼板2が分担する引張り力TSは、
【数7】
となる。
【0009】
上記のCS、CC、TSの間には(数式8)の関係が成り立つ。
【数8】
(数式1)乃至(数式7)を(数式8)に代入し、両辺をECεuで除し、更に両辺にxを乗じて、xについて整理すると(数式9)が得られる。
【数9】
(数式9)をxの2次方程式として解くことにより、具体的な中立軸の位置を求めることができる。
【0010】
ここで、鋼板コンクリート構造梁10が受ける曲げモーメントMは中立軸を中心とするモーメントを合算することにより(数式10)から求めることができる。
【数10】
また、下側鋼板2が降伏応力σyに達するときの歪ε1は、
【数11】
となる。
【0011】
一方、長さLの両端単純支持梁の中央に、設計荷重である集中荷重Fが作用するときの最大曲げモーメントMmaxは、
【数12】
と表され、この最大曲げモーメントMmaxは鋼板コンクリート構造梁10の中央に作用する。次に、(数式12)をFについて解くと次式が得られる。
【数13】
【0012】
今度は数値例をあげて説明する。鋼板コンクリート構造梁10の諸元を(表1)のように定める。
【表1】
【0013】
(表1)の値を(数式9)に代入してxの値を求めると、
x=9.67[cm]
となる。即ち、中立軸は鋼板コンクリート構造梁10の上端から9.67[cm]下の位置にある。更に、下側鋼板2が降伏応力σyに達するときの歪ε1、εuを(数式11)より求め、CS、CC、TSを(数式2)、(数式4)、(数式7)より求めて、これらの値を(数式10)に代入することにより、鋼板コンクリート構造梁10が受ける曲げモーメントMを計算すると、
M=924927[kgcm]
となる。この値を(数式13)のMmaxに代入することにより、下側鋼板2が降伏応力σyに達するときの集中荷重Fを求めることができる。(数式13)より、梁中央の降伏集中荷重Fは、
F=25692[kg]≒25.7[ton]
となる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術の鋼板コンクリート構造では、上記の方法により強度計算を行っている。しかしながら、実際の鋼板コンクリート構造梁は、上記の計算で得られた降伏荷重よりも大きな荷重に耐えることが実験的に知られている。従って、鋼板コンクリート構造梁に対して必要とされる耐荷重について、従来技術の強度計算法で梁の諸元を決定すると、過大な強度を有する鋼板コンクリート構造梁を設計することになる。これにより、梁を構成する部材、特に、鋼材の分量が多くなり、コストが高くなるという問題がある。
【0015】
コンクリートの力学的特性は、非常に複雑であり、鋼材とコンクリートとを組合せた構造物の強度を理論的に厳密に求めることができる強度計算方法は知られていない。
本発明の目的は、与えられた設計荷重に対して必要にして十分な強度を有する低コストな鋼板コンクリート構造梁、及びそれを有する建設物を提供することにある。
本発明の他の目的は、与えられた設計荷重に対して必要にして十分な強度を有する低コストな鋼板コンクリート構造梁、及びそれを有する建設物を製造する方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記のように、鋼板コンクリート構造梁の従来の強度計算法では、鋼板コンクリート構造梁がウェブ部材を有するにもかかわらず、強度計算においてウェブ部材の存在を全く考慮していなかった。本願発明者は理論、実験の両面から鋼板コンクリート構造梁の強度解析を行うことによって、後述する範囲のウェブ部材間隔を有する鋼板コンクリート構造梁においては、トラス構造の理論を用いることにより、より正確な強度計算ができることをつきとめた。
【0017】
これにより、任意の大きさの曲げモーメントが作用する鋼板コンクリート構造梁について、引張り力が作用する側の鋼板の必要にして十分な厚さを正確に計算し、必要な設計荷重に十分に耐え得る強度の鋼板コンクリート構造梁を低コストで得ることが可能になった。なお、設計荷重には梁に加えられる長期荷重、短期荷重、及びそれらを足し合せた荷重を適宜採用することができる。
【0018】
本発明は、降伏引張り応力σyの第1の鋼板と、第1の鋼板と平行に配置された第2の鋼板とを複数のウェブ部材で連結し、第1の鋼板と、第2の鋼板との間にコンクリートを充填した構造を有し、高さH、幅B、ウェブ部材間隔Lwの最大曲げモーメントMmaxを受ける鋼板コンクリート構造梁において、
最大の引張り力が作用する前記第1の鋼板の厚さtが、
の範囲内にあり、ウェブ部材の間隔Lwが、
の範囲内にあることを特徴とする、鋼板コンクリート構造梁、及び前記鋼板コンクリート構造梁を有する建設物である。
【0019】
本発明は又、高さH、幅Bの鋼板コンクリート構造梁に作用する最大曲げモーメントMmaxを算出する段階と、
鋼板コンクリート構造梁が曲げモーメントを受けたとき、引張り力が作用する位置に、降伏引張り応力σyの第1の鋼板を配置する段階と、
距離Lwの間隔を隔てて取付けられる複数のウェブ部材を介して、第2の鋼板を第1の鋼板に平行に連結する段階と、
第1の鋼板と第2の鋼板との間にコンクリートを充填する段階と、を有する鋼板コンクリート構造梁の製造方法において、
第1の鋼板の厚さtを、
の範囲内とし、ウェブ部材の間隔Lwを、
の範囲内とすることを特徴とする、鋼板コンクリート構造梁の製造方法、及び前記鋼板コンクリート構造梁の製造方法を利用した建設物の製造方法である。
【0020】
本発明を使用すると、鋼板コンクリート構造梁の引張り荷重を受ける鋼板の厚さを、従来技術の強度計算方法によって設計された場合よりも最大で約12%薄くすることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
前述のように、本願発明者の実験的、理論的解析により、所定の範囲のウェブ部材間隔を有する鋼板コンクリート構造梁においては、この梁をトラス構造物としてモデル化して梁の強度を求めると、従来の強度計算法によって求めた強度よりも実験値に近い値が得られることが明らかになった。以下に、トラス構造物の強度解析について説明する。
【0022】
まず、図1(a)に示す両端単純支持の鋼板コンクリート構造梁1を、図1(b)に示すトラス構造物にモデル化する。梁の諸元は、梁の長さL、高さH、幅B(図示せず)、ウェブ間隔Lwとする。図1(b)に示すように、トラス構造物の各節点に▲1▼乃至▲6▼の節点番号をつける。また、各トラス部材にa乃至mの符号を付ける。又、上側のトラス部材b、f、jに働く内力をPu1、Pu2、Pu3とし、下側のトラス部材d、h、mに働く内力をPb1、Pb2、Pb3とし、縦方向のトラス部材a、e、iに働く内力をPw1、Pw2、Pw3とし、斜め方向のトラス部材c、g、kに働く内力をPc1、Pc2、Pc3とする。
ここで、梁の中央に設計荷重である集中荷重Fを加えた場合を考えると、梁の両端の支持点には各々P(=F/2)の反力が働く。
【0023】
まず、節点▲1▼における力の釣り合いを考えると、節点▲1▼には外力が働いていないため、部材a、bには力が働かない、従って、Pu1=Pw1=0となる。
次に、節点▲2▼における力の釣り合いについて考える。図2(a)に示すように、節点▲2▼では、左側の支点反力Pと、トラス部材の内力Pc1、Pb1が釣り合う(前述のように、Pw1は0である。)。従って、
【数14】
【数15】
という関係が成り立つ。
【0024】
次に、図2(b)を参照して、節点▲3▼の力の釣り合いについて考える。水平方向の力の釣り合いから、
【数16】
の関係が成り立ち、鉛直方向の力の釣り合いから、
【数17】
の関係が成り立つ。
【0025】
更に、図2(c)を参照して、節点▲4▼の力の釣り合いについて考える。鉛直方向の力の釣り合いから、
【数18】
の関係が成り立ち、水平方向の力の釣り合いから、
【数19】
の関係が成り立つ。
【0026】
同様に、図2(d)を参照して、節点▲5▼の力の釣り合いについて考える。鉛直方向の力の釣り合いから、
【数20】
の関係が成り立ち、水平方向の力の釣り合いから、
【数21】
の関係が成り立つ。
【0027】
更に、図2(e)を参照して、節点▲6▼の力の釣り合いについて考える。鉛直方向の力の釣り合いから、
【数22】
の関係が成り立ち、水平方向の力の釣り合いから、
【数23】
の関係が成り立つ。
【0028】
各トラス部材に働く内力を表にまとめると、(表2)のようになる。
【表2】
【0029】
このトラス構造は左右対称であり、中央に荷重が作用しているため、トラス構造の右半分の部材の内力は、対称の位置にある左側のトラス部材の内力と同じになる。また、図1に記載したトラス構造は、トラスの同一の組み合わせが左右対称に6回繰り返される形態である。この繰り返し数が多くなった場合にはPb、Puの値は、梁の端から順にP/tanθずつ増加し、梁の中央で最大になることも分かる。一方、PW、PCの値は、各部材同一のままである。
【0030】
次に、数値例をあげて説明する。ここでも、(表1)に示した鋼板コンクリート構造梁の諸元と同一の諸元を用い、それに加えて、ウェブ間隔LWの値を24[cm]と定める。従って、鋼板コンクリート構造梁1はウェブ6によって6等分される。
【0031】
下側鋼板2に働く最大引張り荷重は(表2)より、3P/tanθである。ここで、
【数24】
の関係が成り立つので、下側鋼板2に働く最大引張り荷重は3Pとなる。この荷重を下側鋼板2の降伏荷重と等置すると、
【数25】
という値が得られる。
【0032】
従って、下側鋼板2が降伏荷重に達する際に鋼板コンクリート構造梁1の中央に加えられている集中荷重Fの値、即ち、鋼板コンクリート構造梁1の降伏荷重は、
F=2P=28764[kg]
となる。この値は、従来技術の強度計算法で求めた降伏荷重F=25692[kg]よりも約12%大きい。逆に、同一の荷重で降伏荷重に達する鋼板コンクリート構造梁1を設計したとすれば、本実施形態の計算法では、下側鋼板2を従来技術の計算法よりも約12%薄く設計することが可能になる。
【0033】
次に、上記のトラス構造物のモデルを用いた場合の、鋼板コンクリート構造梁1に作用する最大曲げモーメントMmaxと、下側鋼板2に加わる引張り応力σとの関係を、より一般的に求める。まず、長さLの鋼板コンクリート構造梁1が、距離LW間隔に設けられたウェブ部材6で2N等分された場合には、次の関係が成り立つ。
【数26】
【0034】
(表2)より、鋼板コンクリート構造梁1がウェブ部材6によって2N等分された場合には、最大引張り力が作用する部材(下側中央の部材)には、
【数27】
の内力が作用することがわかる。P=F/2、(数式26)、(数式24)の関係を、(数式27)に夫々代入すると、
【数28】
の関係が得られる。
【0035】
(数式28)に(数式12)を代入し、両辺を下側鋼板2の断面積Bt1で除することにより、下側鋼板2に作用する応力σが得られる。
【数29】
更に、(数式29)をt1について解くと、
【数30】
の関係が得られる。(数式30)のσを下側鋼板2の降伏応力とすれば、最大曲げモーメントMmaxが生じる荷重Fを受けたとき、鋼板コンクリート構造梁1の下側鋼板2が降伏応力に達する板厚が得られる。
【0036】
上述の通り、このようにして算出される板厚t1は、従来技術の強度計算法によって算出される板厚よりも、約12%薄くなる。更に、本発明の実施形態において算出された降伏荷重は、ウェブ間隔LW=0.5H乃至3.0Hの範囲にあるとき、好ましくは、LW=0.5H乃至2.0H、更に好ましくは、LW=0.5H乃至1.0Hの範囲にあるとき実験結果と良く一致する。
【0037】
従って、最大曲げモーメントMmaxを受ける高さH、幅Bの鋼板コンクリート構造梁1を構成する場合、ウェブ部材6を、
【数31】
の間隔に配置し、下側鋼板2の板厚t1を、
【数32】
の範囲に設計すれば、従来技術の強度計算法によって設計された鋼板コンクリート構造梁10よりも少ない鋼材の量で、最大曲げモーメントMmaxに耐え得る鋼板コンクリート構造梁を得ることができる。ただし、(数式32)中のσyは下側鋼板2の降伏引張り応力である。
【0038】
本実施形態では、下側鋼板2に最大引張り力が働く場合のみについて記載したが、鋼板コンクリート構造梁1が上記の実施形態とは逆向きの曲げモーメントを受ける場合には、上側鋼板4の板厚t2について全く同様に本発明を適用することができる。
【0039】
更に、図3に示すように、上側鋼板4及び下側鋼板2、及びウェブ部材6に多数のスタッド12を溶接した鋼板コンクリート構造梁にも本発明を適用することができる。これにより、鋼板とコンクリートとの間の剥離を防ぐことができ、鋼板コンクリート構造梁の剛性を向上することができるとともに、鋼板の座屈を防止することができる。
図4に示すように、スタッド12を溶接する代りに多数のL形のアングル材14等を溶接しても良い。これにより、溶接の工程数を減じることができる。
【0040】
また、図5に示すように、ウェブ部材6に穴をあけた鋼板コンクリート構造梁にも本発明を適用することができる。これにより、ウェブ部材6で囲われた空間に容易にコンクリートを流し込むことができるようになり、コンクリートの充填性が向上する。
更に、図6に示すように、フラットバー16にメッシュ筋18を溶接したものでウェブ部材を構成しても良い。この構成によっても、コンクリートの充填性を向上させることができる。また、穴をあけたウェブ部材6よりも製造コストを低く抑えることができる。
【0041】
また、図7に示すように、ウェブ部材6は長さLWの間隔を隔てて、斜めに配置しても良い。ウェブ部材6を図7に示すような位置に配置した場合、ウェブ部材6には引張り力が作用し、ウェブ部材6の間のコンクリート8には圧縮力が加わるため、強度的に有利である。このように、ウェブ部材6を斜めに配置した場合にも上記実施形態と同じ手順によって下側鋼板2の厚さを決定することができる。
また、本発明を、図8に示すような上側鋼板4と下側鋼板2との間に第3の鋼板20を設けた鋼板コンクリート構造梁にも適用することができる。この場合にも、上記実施形態と同一の仕方で下側鋼板2の厚さを決定することができる。
【0042】
更に、例えば、図9に示すような、原子力施設で用いられる厚さが途中で変化する遮蔽壁22として鋼板コンクリート構造梁を用いることができる。この場合には、遮蔽壁22の厚い部分を3枚の鋼板を有する鋼板コンクリート構造梁として取扱い、薄い部分を2枚の鋼板を有する鋼板コンクリート構造梁として取扱うことにより、鋼板の厚さを決定する。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内において、開示した実施形態に種々の変更を加えることができる。
【0044】
【発明の効果】
本発明により、与えられた設計荷重に対して必要にして十分な強度を有する低コストな鋼板コンクリート構造梁、及びそれを有する建設物を得ることができる。
また、本発明により、与えられた設計荷重に対して必要にして十分な強度を有する低コストな鋼板コンクリート構造梁、及びそれを有する建設物を製造する方法が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による鋼板コンクリート構造梁、及びそれをモデル化したトラス構造物を示す図である。
【図2】トラス構造物の各節点における力の釣り合いを示す図である。
【図3】上側及び下側鋼板、及びウェブ部材にスタッドを設けた鋼板コンクリート構造梁を示す図である。
【図4】スタッドの代りにL形アングルを取付けた鋼板コンクリート構造梁を示す図である。
【図5】ウェブ部材に穴を設けた鋼板コンクリート構造梁を示す斜視図である。
【図6】ウェブ部材をフラットバー及びメッシュ筋によって構成した鋼板コンクリート構造梁を示す斜視図である。
【図7】ウェブ部材を斜めに配置した鋼板コンクリート構造梁を示す図である。
【図8】上側鋼板と下側鋼板との間に、更に1枚鋼板を設けた鋼板コンクリート構造梁を示す図である。
【図9】厚さが途中で変化する鋼板コンクリート構造梁を、原子力施設の遮蔽壁に適用した例を示す図である。
【図10】従来技術の鋼板コンクリート構造梁の正面図及び側面図である。
【図11】従来技術の鋼板コンクリート構造梁の各部の歪を表すグラフである。
【図12】従来技術の鋼板コンクリート構造梁の各部に発生する応力の分布を表すグラフである。
【符号の説明】
B 梁の幅
F 荷重
H 梁の高さ
L 梁の長さ
LW ウェブ部材の間隔
P 支点反力
t1 下側鋼板の厚さ
t2 上側鋼板の厚さ
1 鋼板コンクリート構造梁
2 下側鋼板
4 上側鋼板
6 ウェブ部材
8 コンクリート
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板コンクリート構造梁、及び鋼板コンクリート構造梁を有する建設物に関し、また、それらを製造するための製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼板コンクリート構造(SC構造)、即ち、2枚の鋼板の間にコンクリートを充填した構造は、コンクリート打設時の型枠が不要であるため、鉄筋コンクリート(RC構造)に比べて工期が短いという利点がある。更に、鋼板コンクリート構造は、鉄筋コンクリート構造よりも力学的特性が優れているという利点もある。なお、本明細書では、曲げモーメント、及び/又は、面外方向の剪断力を受ける鋼板コンクリート構造物を「鋼板コンクリート構造梁」と呼ぶ。
【0003】
鋼板コンクリート構造梁の従来の強度計算では、例えば、梁に曲げモーメントが作用した時の降伏荷重を以下のように計算していた。
図10を参照して、鋼板コンクリート構造梁の従来の強度計算法について説明する。図10(a)は鋼板コンクリート構造梁の正面図であり、図10(b)は側面図である。鋼板コンクリート構造梁10は、下側鋼板2と、上側鋼板4と、それらを連結する複数のウェブ部材6と、上側鋼板と下側鋼板との間に充填されたコンクリート8とを有する。鋼板コンクリート構造梁10の諸元を、長さL、高さH、幅B、下側鋼板の厚さt1、上側鋼板の厚さt2、コンクリートの弾性係数EC、上側及び下側鋼板の弾性係数ES、弾性係数比n=ES/ECと、定める。
【0004】
図11に、鋼板コンクリート構造梁10に曲げモーメントが作用した場合の歪εの分布の一例を示す。ここで、xは梁の上面から中立軸までの距離を表している。図11に示す歪εの分布では、中立軸よりも下側の梁部材は引張られて伸び、上側の梁部材は圧縮されて縮んでいる。
【0005】
次に、図12を参照して、鋼板コンクリート構造梁10の応力分布について説明する。従来の鋼板コンクリート構造梁の強度計算法においては、例えば、田中礼治著『鉄筋コンクリートの構造設計入門』(相模書房、平成元年)にも記載されているように、コンクリートは圧縮力のみを分担し、引張り力を全く分担しないという仮定のもとに強度計算が行われていた。従って、鋼板コンクリート構造梁に作用する応力は図12に示すような分布になる。即ち、中立軸よりも下側のコンクリートの部分の応力が0になる。
【0006】
従来技術による鋼板コンクリート構造梁の強度計算法について具体的に説明する。図11に示すように、鋼板コンクリート構造梁10の上面における歪をεuとすると、上側鋼板4の中心の歪ε2は(数式1)によって表される。
【数1】
従って、上側鋼板4が分担する圧縮力CSは、
【数2】
となる。
【0007】
また、コンクリート8の上端における歪εCは、
【数3】
となる。従って、中立軸よりも上のコンクリート8が分担する圧縮力CCは、
【数4】
となる。
【0008】
また、前述のように、中立軸よりも下側のコンクリート8が分担する引張り力TCは0である。更に、下側鋼板2の下端における歪εbは、
【数5】
となる。従って、下側鋼板2の中心におけるε1歪は、
【数6】
となる。よって、下側鋼板2が分担する引張り力TSは、
【数7】
となる。
【0009】
上記のCS、CC、TSの間には(数式8)の関係が成り立つ。
【数8】
(数式1)乃至(数式7)を(数式8)に代入し、両辺をECεuで除し、更に両辺にxを乗じて、xについて整理すると(数式9)が得られる。
【数9】
(数式9)をxの2次方程式として解くことにより、具体的な中立軸の位置を求めることができる。
【0010】
ここで、鋼板コンクリート構造梁10が受ける曲げモーメントMは中立軸を中心とするモーメントを合算することにより(数式10)から求めることができる。
【数10】
また、下側鋼板2が降伏応力σyに達するときの歪ε1は、
【数11】
となる。
【0011】
一方、長さLの両端単純支持梁の中央に、設計荷重である集中荷重Fが作用するときの最大曲げモーメントMmaxは、
【数12】
と表され、この最大曲げモーメントMmaxは鋼板コンクリート構造梁10の中央に作用する。次に、(数式12)をFについて解くと次式が得られる。
【数13】
【0012】
今度は数値例をあげて説明する。鋼板コンクリート構造梁10の諸元を(表1)のように定める。
【表1】
【0013】
(表1)の値を(数式9)に代入してxの値を求めると、
x=9.67[cm]
となる。即ち、中立軸は鋼板コンクリート構造梁10の上端から9.67[cm]下の位置にある。更に、下側鋼板2が降伏応力σyに達するときの歪ε1、εuを(数式11)より求め、CS、CC、TSを(数式2)、(数式4)、(数式7)より求めて、これらの値を(数式10)に代入することにより、鋼板コンクリート構造梁10が受ける曲げモーメントMを計算すると、
M=924927[kgcm]
となる。この値を(数式13)のMmaxに代入することにより、下側鋼板2が降伏応力σyに達するときの集中荷重Fを求めることができる。(数式13)より、梁中央の降伏集中荷重Fは、
F=25692[kg]≒25.7[ton]
となる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術の鋼板コンクリート構造では、上記の方法により強度計算を行っている。しかしながら、実際の鋼板コンクリート構造梁は、上記の計算で得られた降伏荷重よりも大きな荷重に耐えることが実験的に知られている。従って、鋼板コンクリート構造梁に対して必要とされる耐荷重について、従来技術の強度計算法で梁の諸元を決定すると、過大な強度を有する鋼板コンクリート構造梁を設計することになる。これにより、梁を構成する部材、特に、鋼材の分量が多くなり、コストが高くなるという問題がある。
【0015】
コンクリートの力学的特性は、非常に複雑であり、鋼材とコンクリートとを組合せた構造物の強度を理論的に厳密に求めることができる強度計算方法は知られていない。
本発明の目的は、与えられた設計荷重に対して必要にして十分な強度を有する低コストな鋼板コンクリート構造梁、及びそれを有する建設物を提供することにある。
本発明の他の目的は、与えられた設計荷重に対して必要にして十分な強度を有する低コストな鋼板コンクリート構造梁、及びそれを有する建設物を製造する方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記のように、鋼板コンクリート構造梁の従来の強度計算法では、鋼板コンクリート構造梁がウェブ部材を有するにもかかわらず、強度計算においてウェブ部材の存在を全く考慮していなかった。本願発明者は理論、実験の両面から鋼板コンクリート構造梁の強度解析を行うことによって、後述する範囲のウェブ部材間隔を有する鋼板コンクリート構造梁においては、トラス構造の理論を用いることにより、より正確な強度計算ができることをつきとめた。
【0017】
これにより、任意の大きさの曲げモーメントが作用する鋼板コンクリート構造梁について、引張り力が作用する側の鋼板の必要にして十分な厚さを正確に計算し、必要な設計荷重に十分に耐え得る強度の鋼板コンクリート構造梁を低コストで得ることが可能になった。なお、設計荷重には梁に加えられる長期荷重、短期荷重、及びそれらを足し合せた荷重を適宜採用することができる。
【0018】
本発明は、降伏引張り応力σyの第1の鋼板と、第1の鋼板と平行に配置された第2の鋼板とを複数のウェブ部材で連結し、第1の鋼板と、第2の鋼板との間にコンクリートを充填した構造を有し、高さH、幅B、ウェブ部材間隔Lwの最大曲げモーメントMmaxを受ける鋼板コンクリート構造梁において、
最大の引張り力が作用する前記第1の鋼板の厚さtが、
の範囲内にあり、ウェブ部材の間隔Lwが、
の範囲内にあることを特徴とする、鋼板コンクリート構造梁、及び前記鋼板コンクリート構造梁を有する建設物である。
【0019】
本発明は又、高さH、幅Bの鋼板コンクリート構造梁に作用する最大曲げモーメントMmaxを算出する段階と、
鋼板コンクリート構造梁が曲げモーメントを受けたとき、引張り力が作用する位置に、降伏引張り応力σyの第1の鋼板を配置する段階と、
距離Lwの間隔を隔てて取付けられる複数のウェブ部材を介して、第2の鋼板を第1の鋼板に平行に連結する段階と、
第1の鋼板と第2の鋼板との間にコンクリートを充填する段階と、を有する鋼板コンクリート構造梁の製造方法において、
第1の鋼板の厚さtを、
の範囲内とし、ウェブ部材の間隔Lwを、
の範囲内とすることを特徴とする、鋼板コンクリート構造梁の製造方法、及び前記鋼板コンクリート構造梁の製造方法を利用した建設物の製造方法である。
【0020】
本発明を使用すると、鋼板コンクリート構造梁の引張り荷重を受ける鋼板の厚さを、従来技術の強度計算方法によって設計された場合よりも最大で約12%薄くすることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
前述のように、本願発明者の実験的、理論的解析により、所定の範囲のウェブ部材間隔を有する鋼板コンクリート構造梁においては、この梁をトラス構造物としてモデル化して梁の強度を求めると、従来の強度計算法によって求めた強度よりも実験値に近い値が得られることが明らかになった。以下に、トラス構造物の強度解析について説明する。
【0022】
まず、図1(a)に示す両端単純支持の鋼板コンクリート構造梁1を、図1(b)に示すトラス構造物にモデル化する。梁の諸元は、梁の長さL、高さH、幅B(図示せず)、ウェブ間隔Lwとする。図1(b)に示すように、トラス構造物の各節点に▲1▼乃至▲6▼の節点番号をつける。また、各トラス部材にa乃至mの符号を付ける。又、上側のトラス部材b、f、jに働く内力をPu1、Pu2、Pu3とし、下側のトラス部材d、h、mに働く内力をPb1、Pb2、Pb3とし、縦方向のトラス部材a、e、iに働く内力をPw1、Pw2、Pw3とし、斜め方向のトラス部材c、g、kに働く内力をPc1、Pc2、Pc3とする。
ここで、梁の中央に設計荷重である集中荷重Fを加えた場合を考えると、梁の両端の支持点には各々P(=F/2)の反力が働く。
【0023】
まず、節点▲1▼における力の釣り合いを考えると、節点▲1▼には外力が働いていないため、部材a、bには力が働かない、従って、Pu1=Pw1=0となる。
次に、節点▲2▼における力の釣り合いについて考える。図2(a)に示すように、節点▲2▼では、左側の支点反力Pと、トラス部材の内力Pc1、Pb1が釣り合う(前述のように、Pw1は0である。)。従って、
【数14】
【数15】
という関係が成り立つ。
【0024】
次に、図2(b)を参照して、節点▲3▼の力の釣り合いについて考える。水平方向の力の釣り合いから、
【数16】
の関係が成り立ち、鉛直方向の力の釣り合いから、
【数17】
の関係が成り立つ。
【0025】
更に、図2(c)を参照して、節点▲4▼の力の釣り合いについて考える。鉛直方向の力の釣り合いから、
【数18】
の関係が成り立ち、水平方向の力の釣り合いから、
【数19】
の関係が成り立つ。
【0026】
同様に、図2(d)を参照して、節点▲5▼の力の釣り合いについて考える。鉛直方向の力の釣り合いから、
【数20】
の関係が成り立ち、水平方向の力の釣り合いから、
【数21】
の関係が成り立つ。
【0027】
更に、図2(e)を参照して、節点▲6▼の力の釣り合いについて考える。鉛直方向の力の釣り合いから、
【数22】
の関係が成り立ち、水平方向の力の釣り合いから、
【数23】
の関係が成り立つ。
【0028】
各トラス部材に働く内力を表にまとめると、(表2)のようになる。
【表2】
【0029】
このトラス構造は左右対称であり、中央に荷重が作用しているため、トラス構造の右半分の部材の内力は、対称の位置にある左側のトラス部材の内力と同じになる。また、図1に記載したトラス構造は、トラスの同一の組み合わせが左右対称に6回繰り返される形態である。この繰り返し数が多くなった場合にはPb、Puの値は、梁の端から順にP/tanθずつ増加し、梁の中央で最大になることも分かる。一方、PW、PCの値は、各部材同一のままである。
【0030】
次に、数値例をあげて説明する。ここでも、(表1)に示した鋼板コンクリート構造梁の諸元と同一の諸元を用い、それに加えて、ウェブ間隔LWの値を24[cm]と定める。従って、鋼板コンクリート構造梁1はウェブ6によって6等分される。
【0031】
下側鋼板2に働く最大引張り荷重は(表2)より、3P/tanθである。ここで、
【数24】
の関係が成り立つので、下側鋼板2に働く最大引張り荷重は3Pとなる。この荷重を下側鋼板2の降伏荷重と等置すると、
【数25】
という値が得られる。
【0032】
従って、下側鋼板2が降伏荷重に達する際に鋼板コンクリート構造梁1の中央に加えられている集中荷重Fの値、即ち、鋼板コンクリート構造梁1の降伏荷重は、
F=2P=28764[kg]
となる。この値は、従来技術の強度計算法で求めた降伏荷重F=25692[kg]よりも約12%大きい。逆に、同一の荷重で降伏荷重に達する鋼板コンクリート構造梁1を設計したとすれば、本実施形態の計算法では、下側鋼板2を従来技術の計算法よりも約12%薄く設計することが可能になる。
【0033】
次に、上記のトラス構造物のモデルを用いた場合の、鋼板コンクリート構造梁1に作用する最大曲げモーメントMmaxと、下側鋼板2に加わる引張り応力σとの関係を、より一般的に求める。まず、長さLの鋼板コンクリート構造梁1が、距離LW間隔に設けられたウェブ部材6で2N等分された場合には、次の関係が成り立つ。
【数26】
【0034】
(表2)より、鋼板コンクリート構造梁1がウェブ部材6によって2N等分された場合には、最大引張り力が作用する部材(下側中央の部材)には、
【数27】
の内力が作用することがわかる。P=F/2、(数式26)、(数式24)の関係を、(数式27)に夫々代入すると、
【数28】
の関係が得られる。
【0035】
(数式28)に(数式12)を代入し、両辺を下側鋼板2の断面積Bt1で除することにより、下側鋼板2に作用する応力σが得られる。
【数29】
更に、(数式29)をt1について解くと、
【数30】
の関係が得られる。(数式30)のσを下側鋼板2の降伏応力とすれば、最大曲げモーメントMmaxが生じる荷重Fを受けたとき、鋼板コンクリート構造梁1の下側鋼板2が降伏応力に達する板厚が得られる。
【0036】
上述の通り、このようにして算出される板厚t1は、従来技術の強度計算法によって算出される板厚よりも、約12%薄くなる。更に、本発明の実施形態において算出された降伏荷重は、ウェブ間隔LW=0.5H乃至3.0Hの範囲にあるとき、好ましくは、LW=0.5H乃至2.0H、更に好ましくは、LW=0.5H乃至1.0Hの範囲にあるとき実験結果と良く一致する。
【0037】
従って、最大曲げモーメントMmaxを受ける高さH、幅Bの鋼板コンクリート構造梁1を構成する場合、ウェブ部材6を、
【数31】
の間隔に配置し、下側鋼板2の板厚t1を、
【数32】
の範囲に設計すれば、従来技術の強度計算法によって設計された鋼板コンクリート構造梁10よりも少ない鋼材の量で、最大曲げモーメントMmaxに耐え得る鋼板コンクリート構造梁を得ることができる。ただし、(数式32)中のσyは下側鋼板2の降伏引張り応力である。
【0038】
本実施形態では、下側鋼板2に最大引張り力が働く場合のみについて記載したが、鋼板コンクリート構造梁1が上記の実施形態とは逆向きの曲げモーメントを受ける場合には、上側鋼板4の板厚t2について全く同様に本発明を適用することができる。
【0039】
更に、図3に示すように、上側鋼板4及び下側鋼板2、及びウェブ部材6に多数のスタッド12を溶接した鋼板コンクリート構造梁にも本発明を適用することができる。これにより、鋼板とコンクリートとの間の剥離を防ぐことができ、鋼板コンクリート構造梁の剛性を向上することができるとともに、鋼板の座屈を防止することができる。
図4に示すように、スタッド12を溶接する代りに多数のL形のアングル材14等を溶接しても良い。これにより、溶接の工程数を減じることができる。
【0040】
また、図5に示すように、ウェブ部材6に穴をあけた鋼板コンクリート構造梁にも本発明を適用することができる。これにより、ウェブ部材6で囲われた空間に容易にコンクリートを流し込むことができるようになり、コンクリートの充填性が向上する。
更に、図6に示すように、フラットバー16にメッシュ筋18を溶接したものでウェブ部材を構成しても良い。この構成によっても、コンクリートの充填性を向上させることができる。また、穴をあけたウェブ部材6よりも製造コストを低く抑えることができる。
【0041】
また、図7に示すように、ウェブ部材6は長さLWの間隔を隔てて、斜めに配置しても良い。ウェブ部材6を図7に示すような位置に配置した場合、ウェブ部材6には引張り力が作用し、ウェブ部材6の間のコンクリート8には圧縮力が加わるため、強度的に有利である。このように、ウェブ部材6を斜めに配置した場合にも上記実施形態と同じ手順によって下側鋼板2の厚さを決定することができる。
また、本発明を、図8に示すような上側鋼板4と下側鋼板2との間に第3の鋼板20を設けた鋼板コンクリート構造梁にも適用することができる。この場合にも、上記実施形態と同一の仕方で下側鋼板2の厚さを決定することができる。
【0042】
更に、例えば、図9に示すような、原子力施設で用いられる厚さが途中で変化する遮蔽壁22として鋼板コンクリート構造梁を用いることができる。この場合には、遮蔽壁22の厚い部分を3枚の鋼板を有する鋼板コンクリート構造梁として取扱い、薄い部分を2枚の鋼板を有する鋼板コンクリート構造梁として取扱うことにより、鋼板の厚さを決定する。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内において、開示した実施形態に種々の変更を加えることができる。
【0044】
【発明の効果】
本発明により、与えられた設計荷重に対して必要にして十分な強度を有する低コストな鋼板コンクリート構造梁、及びそれを有する建設物を得ることができる。
また、本発明により、与えられた設計荷重に対して必要にして十分な強度を有する低コストな鋼板コンクリート構造梁、及びそれを有する建設物を製造する方法が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による鋼板コンクリート構造梁、及びそれをモデル化したトラス構造物を示す図である。
【図2】トラス構造物の各節点における力の釣り合いを示す図である。
【図3】上側及び下側鋼板、及びウェブ部材にスタッドを設けた鋼板コンクリート構造梁を示す図である。
【図4】スタッドの代りにL形アングルを取付けた鋼板コンクリート構造梁を示す図である。
【図5】ウェブ部材に穴を設けた鋼板コンクリート構造梁を示す斜視図である。
【図6】ウェブ部材をフラットバー及びメッシュ筋によって構成した鋼板コンクリート構造梁を示す斜視図である。
【図7】ウェブ部材を斜めに配置した鋼板コンクリート構造梁を示す図である。
【図8】上側鋼板と下側鋼板との間に、更に1枚鋼板を設けた鋼板コンクリート構造梁を示す図である。
【図9】厚さが途中で変化する鋼板コンクリート構造梁を、原子力施設の遮蔽壁に適用した例を示す図である。
【図10】従来技術の鋼板コンクリート構造梁の正面図及び側面図である。
【図11】従来技術の鋼板コンクリート構造梁の各部の歪を表すグラフである。
【図12】従来技術の鋼板コンクリート構造梁の各部に発生する応力の分布を表すグラフである。
【符号の説明】
B 梁の幅
F 荷重
H 梁の高さ
L 梁の長さ
LW ウェブ部材の間隔
P 支点反力
t1 下側鋼板の厚さ
t2 上側鋼板の厚さ
1 鋼板コンクリート構造梁
2 下側鋼板
4 上側鋼板
6 ウェブ部材
8 コンクリート
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