JP3758865B2 - 座標入力装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、携帯情報機器などに用いられる、ペン(ペン形状の筆記具)や指によって指示された座標位置を検出する座標入力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のような座標入力装置としては、従来、抵抗膜方式、電磁誘導方式、静電結合方式、超音波方式、赤外線方式などが考えられている。
【0003】
抵抗膜方式は、2枚の抵抗膜を、わずかな間隙をもって重ね合わせて、ペンや指によって押下された点で、2枚の抵抗膜が接触・通電するようにし、その接触点での電位を検知することによって、ペンや指によって押下された点の座標位置を検出するものである。
【0004】
電磁誘導方式は、先端にインダクタンスと容量からなるLC回路が埋め込まれた専用の電子ペンを用い、パネル側にはライン状またはループ状の電極パターンを形成し、ペンを電極パターンに近づけたときに誘導電圧が得られることを利用して、ペンによって指示された点の座標位置を検出するものである。
【0005】
静電結合方式は、パネルの4隅に電極を設け、パネル表面にコーティングした導電薄膜に交番電圧を印加して、パネルにペンや指が接触したとき、4隅の電極からペンや指までの距離に比例した電流が流れるようにし、この電流の比率を測定することによって、ペンや指が接触した点の座標位置を検出するものである。
【0006】
超音波方式は、パネルの隅に設けた超音波発信子から発信された超音波を、表面弾性波としてパネルの入力エリア内にくまなく走査させ、その超音波がペンに設けた超音波受信子で受信されるまでに要した時間と超音波の伝播速度とから、ペンによって指示された点の座標位置を検出するものである。
【0007】
赤外線方式は、パネル面上に赤外線ビームを網の目のように張り巡らせ、ペンや指によって、その赤外線ビームが遮られたとき、どの位置で遮られたかを検知することによって、ペンや指によって指示された点の座標位置を検出するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の上述した抵抗膜方式、静電結合方式、超音波方式および赤外線方式は、ペン入力するとき、ペンを持つ手をパネル面に接触させると、それも入力と判定されてしまうために、ペンを持つ手をパネル面に接触させることができず、ペン入力するときの操作性が悪いという欠点がある。
【0009】
もっとも、特開平9−44304号には、抵抗膜方式において、パネル面のペン入力するときにペンを持つ手が触れる領域では、2枚の抵抗膜の間に挿入するスペーサの密度を高くして、その領域にペンを持つ手が触れても2枚の抵抗膜が接触・通電しないようにすることによって、ペンを持つ手をパネル面に接触させることができるようにすることが示されている。
【0010】
しかし、この方法は、スペーサ密度の高い領域ではペン入力がしずらくなるとともに、スペーサ密度の高い領域が固定されるために、同一の装置を右利きの人と左利きの人で兼用することができないという欠点がある。
【0011】
これに対して、電磁誘導方式は、ペンを持つ手をパネル面に接触させることができ、ペン入力がしやすいものの、専用のペンしか使うことができず、指による入力ができないため、パーソナルコンピュータなどでマウスによって行っているようなウインドウ操作やスクロール操作などの操作も、すべてペンによって行わなければならず、ペンを持つ手の負荷が大きくなって、やはり操作性が悪いという問題がある。
【0012】
しかも、従来のいずれの方式も、ペン入力と指入力の両方が可能であっても、両者の識別ができないため、例えば、ペン入力のときには文字や図形などの手書き入力となり、指入力のときにはウインドウ操作やスクロール操作などの操作となる、というような、ペン入力と指入力の自動的な区分けを行うことができないとともに、一方でペンによって文字や図形などを手書き入力しながら、同時に他方で指によってウインドウ操作やスクロール操作などの操作を行う、というように、ペンと指によって同時に別個の操作ないし入力を行うことができず、携帯情報機器などにおいて操作入力スピードを上げることができないという問題がある。
【0013】
なお、特開平6−67788号には、抵抗膜方式において、2枚の抵抗膜のうちの一方を一方向に分割した多数の帯状抵抗膜によって構成して、そのうちの複数の帯状抵抗膜が他方の抵抗膜と接触・通電するときには、例えば右手でペンを持ってペン入力した場合には、左側の帯状抵抗膜をペンによって押下された有効なものとし、右側の帯状抵抗膜はペンを持つ手によって押下された無効なものとすることによって、ペンを持つ手をパネル面に接触させることができるようにすることが示されている。しかし、この方法も、ペン入力と指入力とを同時に行うことができない。
【0014】
また、特開平9−44293号には、静電結合方式において、手書き入力枠の設定に対応して入力無効領域を設定して、この入力無効領域にはペンを持つ手を接触させることができるようにすることが示されているが、この方法も、手書き入力枠内には手をつくことができないとともに、ペン入力と指入力とを同時に行うことができないという問題がある。
【0015】
そこで、この発明は、パネル面の任意の領域に手を接触させてペン入力することができ、操作性が良く、手が疲れないペン入力を行うことができるとともに、ペン入力と指入力とを同時に行うことができるようにしたものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この発明の座標入力装置は、
表示部に積層された、LC回路を有する電子ペンによって指示された座標位置を検出するためのペン座標検出層と、
前記表示部に積層された、前記電子ペンによって押下された座標位置、前記電子ペンを持つ手によって押下された座標位置、および操作または入力のために指によって押下された座標位置を検出するための押下座標検出層と、
前記ペン座標検出層によって求められたペン座標値、および前記押下座標検出層によって求められた押下座標値に基づいて、前記電子ペンによって押下された座標位置、前記手によって押下された座標位置、および前記指によって押下された座標位置を、互いに識別して判定する手段であって、
前記押下座標値が、前記ペン座標値と一致するときには、その押下座標値を、前記電子ペンによって押下された座標位置と判定するとともに、
前記ペン座標検出層によって求められたペン座標値ごとに、前記手によって押下される座標位置の領域を、そのペン座標値に対して相対的な位置が定められた無効領域として算出し、
前記押下座標値が、前記ペン座標値と異なり、かつ前記算出された無効領域内の座標値であるときには、その押下座標値を、前記手によって押下された座標位置と判定し、
前記押下座標値が、前記ペン座標値と異なり、かつ前記算出された無効領域外の座標値であるときには、その押下座標値を、前記指によって押下された座標位置と判定する識別判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0017】
【作用】
上記のように構成した、この発明の座標入力装置においては、一方で、ペン座標検出層によって、電磁誘導方式により、電子ペンによって指示された座標位置が、ペン座標値として検出されるとともに、他方で、押下座標検出層によって、電子ペンによって押下された座標位置、電子ペンを持つ手によって押下された座標位置、および操作入力のために指によって押下された座標位置、すなわちパネル面に接触した電子ペン、手または指によって押下された座標位置が、すべて押下座標値として検出される。
【0018】
そして、識別判定手段では、そのペン座標検出層によって求められたペン座標値、および押下座標検出層によって求められた押下座標値に基づいて、電子ペンによって押下された座標位置、電子ペンを持つ手によって押下された座標位置、および操作入力のために指によって押下された座標位置が、識別判定される。
【0019】
具体的に、押下座標検出層によって求められた押下座標値が、ペン座標検出層によって求められたペン座標値と一致するときには、その押下座標値は、電子ペンによって押下された座標位置と判定され、押下座標検出層によって求められた押下座標値が、ペン座標検出層によって求められたペン座標値と異なるときには、その押下座標値は、電子ペンを持つ手によって押下された座標位置、または操作入力のために指によって押下された座標位置と判定される。
【0020】
さらに、右利きの人が右手でペンを持ち、右手をパネル面に接触させてペン入力するときには、ペン先端に対して右下に位置する一定領域内で右手の小指側の側面がパネル面に接触し、左利きの人が左手でペンを持ち、左手をパネル面に接触させてペン入力するときには、ペン先端に対して左下に位置する一定領域内で左手の小指側の側面がパネル面に接触することから、識別判定手段では、ペン座標検出層によって求められたペン座標値ごとに、電子ペンを持つ手によって押下される座標位置の領域が、そのペン座標値に対して相対的な位置が定められた無効領域として算出され、押下座標検出層によって求められた押下座標値が、ペン座標検出層によって求められたペン座標値と異なり、かつ算出された無効領域内の座標値であるときには、その押下座標値は、電子ペンを持つ手によって押下された座標位置と判定され、押下座標検出層によって求められた押下座標値が、ペン座標検出層によって求められたペン座標値と異なり、かつ算出された無効領域外の座標値であるときには、その押下座標値は、操作入力のために指によって押下された座標位置と判定される。
【0022】
このように、電子ペンを持つ手をパネル面に接触させてペン入力したとき、その電子ペンを持つ手によって押下された座標位置が識別され、その座標値については処理対象から除外されるので、パネル面の任意の領域に手を接触させてペン入力することができ、操作性が良く、手が疲れないペン入力を行うことができる。
【0023】
また、電子ペンによって押下された座標位置と、操作入力のために指によって押下された座標位置とが、互いに識別されるので、ペン入力と指入力とを同時に行うことができ、例えば、ペン入力のときには文字や図形などの手書き入力となり、指入力のときにはウインドウ操作やスクロール操作などの操作となる、というような、ペン入力と指入力の自動的な区分けを行うことができるとともに、一方でペンによって文字や図形などを手書き入力しながら、同時に他方で指によってウインドウ操作やスクロール操作などの操作を行う、というように、ペンと指によって同時に別個の操作ないし入力を行うことができ、携帯情報機器などにおいて操作入力スピードを上げることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の座標入力装置の一実施形態の要部の概略的な断面構成を示す。この実施形態では、液晶表示部10の下面にペン座標検出層20を配置し、上面に押下座標検出層30を配置する。図では省略したが、押下座標検出層30上には保護絶縁層を設ける。
【0025】
ペン座標検出層20は、電磁誘導方式の電子ペン1によって指示された座標位置を検出するためのもので、図2に示すように、ループコイルX1〜X5をx方向に配列し、これと交差させてループコイルY1〜Y5をy方向に配列して構成する。図2では便宜上、x方向およびy方向とも5個のコイルしか示していないが、実際上は、十分に小さい間隔で必要な数のコイルを配列する。
【0026】
コイルX1〜X5およびY1〜Y5の一端には、それぞれ所定電圧を印加し、コイルX1〜X5の他端側のスイッチSx1〜Sx5を順次、オンにして、コイルX1〜X5に順次、所定電流を流すとともに、その後、コイルY1〜Y5の他端側のスイッチSy1〜Sy5を順次、オンにして、コイルY1〜Y5に順次、所定電流を流す。
【0027】
これによって、インダクタンスLaおよび容量CaからなるLC回路1aが内蔵された電子ペン1が、図1に示すように押下座標検出層30に接触して、例えば図2に示すように、コイルX3とコイルY3の交差位置の真上に位置するとき、すなわちコイルX3とコイルY3の交差位置を指示するときには、図3(A)および(B)に示すように、コイルX3に電流が流れるタイミングおよびコイルY3に電流が流れるタイミングにおいて、LC回路1aに閾値電圧Vtを超える誘導電圧が得られる。
【0028】
したがって、LC回路1aに得られる誘導電圧Vaが閾値電圧Vtを超えるときのタイミングを検知することによって、電子ペン1によって指示された座標位置を検出することができる。
【0029】
上述したように、コイルX1〜X5およびY1〜Y5に別の期間において電流を流す代わりに、例えば、スイッチSy1〜Sy5を順次、オンにして、コイルY1〜Y5に順次、所定電流を流すとともに、スイッチSy1をオンにしてコイルY1に電流を流している期間内において、スイッチSx1〜Sx5を順次、オンにして、コイルX1〜X5に順次、所定電流を流し、同様にスイッチSy2をオンにしてコイルY2に電流を流している期間内において、スイッチSx1〜Sx5を順次、オンにして、コイルX1〜X5に順次、所定電流を流すというように、コイルX1〜X5とコイルY1〜Y5の交差位置をx方向およびy方向に走査するように、コイルX1〜X5およびY1〜Y5に電流を流すようにしてもよい。
【0030】
電圧測定部27は、LC回路1aに得られる誘導電圧Vaを閾値電圧Vtと比較して、誘導電圧Vaが閾値電圧Vtを超えるか否かを検出するものであり、ペン座標算出部28は、誘導電圧Vaが閾値電圧Vtを超えるときのタイミングから、電子ペン1によって指示された座標位置を算出するものである。
【0031】
押下座標検出層30は、電子ペン1によって押下された座標位置、電子ペン1を持つ手によって押下された座標位置、および操作入力のために指によって押下された座標位置、すなわちパネル面に接触した電子ペン1、手および指によって押下された座標位置を、すべて検出するためのもので、図4に示すように、透明なライン状の導電体31a,31b…31jをy方向に配列し、これと交差させて透明なライン状の導電体32a,32b…32jをx方向に配列して構成する。導電体31a〜31jおよび32a〜32jの幅は、それぞれ5〜10mm程度とし、それぞれの間隔は、絶縁が保たれる範囲で十分に狭くし、0.5mm以下とする。
【0032】
導電体31a〜31jおよび32a〜32jは、それぞれ絶縁基板上に印刷や蒸着などによって形成して、押下座標検出層30が電子ペン1、手または指のいずれによっても押下されないときには両者間が絶縁されるように、わずかな間隙をもって重ね合わせる。
【0033】
図5は、この実施形態の座標入力装置の全体構成を示し、スイッチ回路33を順次、切り替えて、y方向に配列された導電体31a,31b…31jに順次、電源35からの所定電圧Voを印加するとともに、導電体31aに所定電圧Voを印加している期間内において、スイッチ回路34を順次、切り替えて、x方向に配列された導電体32a,32b…32jを順次、検出用抵抗36に接続し、同様に導電体31bに所定電圧Voを印加している期間内において、スイッチ回路34を順次、切り替えて、導電体32a,32b…32jを順次、検出用抵抗36に接続するというように、導電体32a〜32jと導電体31a〜31jの交差位置をx方向およびy方向に走査するように、導電体31a〜31jに所定電圧Voを印加し、導電体32a〜32jを検出用抵抗36に接続する。
【0034】
これによって、電子ペン1、手または指のいずれかによって、例えば、導電体31a,31bと導電体32a,32bの交差位置、および導電体31iと導電体32iの交差位置が押下されたときには、導電体31a,31bと導電体32a,32bの交差位置において導電体31a,31bと導電体32a,32bとが接触・通電するとともに、導電体31iと導電体32iの交差位置において導電体31iと導電体32iとが接触・通電して、導電体31aに所定電圧Voが印加され、かつ導電体32aが検出用抵抗36に接続されるタイミング、導電体31aに所定電圧Voが印加され、かつ導電体32bが検出用抵抗36に接続されるタイミング、導電体31bに所定電圧Voが印加され、かつ導電体32aが検出用抵抗36に接続されるタイミング、導電体31bに所定電圧Voが印加され、かつ導電体32bが検出用抵抗36に接続されるタイミング、および導電体31iに所定電圧Voが印加され、かつ導電体32iが検出用抵抗36に接続されるタイミングにおいて、検出用抵抗36に所定電流が流れて、検出用抵抗36の両端間に所定電圧Voに達する電圧が得られる。
【0035】
したがって、検出用抵抗36の両端間に得られる電圧Vrが所定電圧Voに達するときのタイミングを検知することによって、電子ペン1、手または指のいずれかによって押下された座標位置を検出することができる。
【0036】
上述した方法とは逆に、導電体31a,31b…31jを順次、検出用抵抗に接続するとともに、導電体31aを検出用抵抗に接続している期間内において、導電体32a,32b…32jに順次、所定電圧を印加し、同様に導電体31bを検出用抵抗に接続している期間内において、導電体32a,32b…32jに順次、所定電圧を印加するというように、導電体32a〜32jと導電体31a〜31jの交差位置をx方向およびy方向に走査するように、導電体31a〜31jを検出用抵抗に接続し、導電体32a〜32jに所定電圧を印加するようにしてもよい。
【0037】
電圧測定部37は、検出用抵抗36の両端間に得られる電圧Vrを所定電圧Voより若干低い閾値電圧と比較して、電圧Vrが閾値電圧を超えて所定電圧Voに達するか否かを検出するものであり、押下座標算出部38は、電圧Vrが所定電圧Voに達するときのタイミングから、電子ペン1、手または指のいずれかによって押下された座標位置を算出するものである。
【0038】
さらに、この実施形態では、あらかじめ、無効領域設定部41において、電子ペン1を持つ手によって押下される座標位置の領域が、電子ペン1によって指示される座標位置に対して相対的な位置が定められた無効領域として設定される。
【0039】
すなわち、右利きの人が右手で電子ペン1を持ち、右手をパネル面に接触させてペン入力するときには、図6に示すように、電子ペン1によって指示され、ペン座標算出部28によって算出されるペン座標値Pa=(Xa,Ya)に対して右下に位置する、座標値Pd=(Xa+Xd,Ya−Yd)を左上隅の点とし、座標値Pe=(Xa+Xd+Xw,Ya−Yd)を右上隅の点とし、座標値Pf=(Xa+Xd,Ya−Yd−Yw)を左下隅の点とし、座標値Pg=(Xa+Xd+Xw,Ya−Yd−Yw)を右下隅の点とする領域2R内で、右手の小指側の側面がパネル面に接触する。
【0040】
また、左利きの人が左手で電子ペン1を持ち、左手をパネル面に接触させてペン入力するときには、同図に示すように、ペン座標値Pa=(Xa,Ya)に対して左下に位置する、座標値Pd’=(Xa−Xd,Ya−Yd)を右上隅の点とし、座標値Pe’=(Xa−Xd−Xw,Ya−Yd)を左上隅の点とし、座標値Pf’=(Xa−Xd,Ya−Yd−Yw)を右下隅の点とし、座標値Pg’=(Xa−Xd−Xw,Ya−Yd−Yw)を左下隅の点とする領域2L内で、左手の小指側の側面がパネル面に接触する。
【0041】
そこで、無効領域設定部41では、無効領域として、領域2R,2Lのペン座標値Pa=(Xa,Ya)に対するx,y方向の距離Xd,Ydと、領域2R,2Lのx,y方向の幅Xw,Ywとが、設定される。
【0042】
この場合、無効領域の大きさを一律に規定する場合には、人の手の大きさにはばらつきがあることから、幅Xw,Ywを大きめに設定する。ただし、その場合でも、装置の利用者が、装置の初期設定として、右利きか左利きかを指定し、無効領域設定部41が、その指定に応じて、右手によるペン入力か左手によるペン入力かを示す情報を、距離Xd,Ydおよび幅Xw,Ywとともに設定するように構成することができる。
【0043】
また、装置の利用者が、装置の初期設定として、実際に電子ペン1および電子ペン1を持つ手をパネル面に接触させることによって、装置の後述する識別判定部40が、そのときにペン座標算出部28によって算出されたペン座標値Paと押下座標算出部38によって算出された押下座標値とから、押下座標値のうちのペン座標値Paと異なる座標値を電子ペン1を持つ手によって押下された座標位置と判定し、それから領域2Rまたは2Lを決定して、距離Xd,Ydおよび幅Xw,Ywを算出し、それを無効領域として無効領域設定部41に設定するように構成することもできる。
【0044】
そして、識別判定部40では、以下に示すように、ペン座標算出部28によって算出されたペン座標値、押下座標算出部38によって算出された押下座標値、および無効領域設定部41での設定結果に基づいて、電子ペン1によって押下された座標位置、電子ペン1を持つ手によって押下された座標位置、および操作入力のために指によって押下された座標位置が、識別判定される。識別判定部40は、例えば、CPU、CPUが実行すべき後述する判定処理ルーチンなどのプログラムが書き込まれたROM、およびCPUの作業エリアとして機能するRAMなどを有するものとして構成する。
【0045】
電子ペン1によって指示され、ペン座標算出部28によって算出されるペン座標値Pa=(Xa,Ya)は、電子ペン1によって文字や図形などを手書き入力するときには逐次、その値が変化する。そして、このペン座標値Paのそれぞれの値ごとに、押下座標算出部38では、電子ペン1、手または指のいずれかによって押下された座標値が算出される。
【0046】
そこで、識別判定部40では、ペン座標値Paのそれぞれの値ごとに、図7に示すような判定処理ルーチン50によって、電子ペン1によって押下された座標位置、電子ペン1を持つ手によって押下された座標位置、および操作入力のために指によって押下された座標位置が、識別判定される。
【0047】
まず、ステップ51において、そのときのペン座標値Pa=(Xa,Ya)と、無効領域設定部41での設定結果、すなわち上記の距離Xd,Ydおよび幅Xw,Ywとから、そのときのペン座標値Pa=(Xa,Ya)に対する無効領域として、図6に示したような、座標値Pd=(Xa+Xd,Ya−Yd)を左上隅の点、座標値Pe=(Xa+Xd+Xw,Ya−Yd)を右上隅の点、座標値Pf=(Xa+Xd,Ya−Yd−Yw)を左下隅の点、座標値Pg=(Xa+Xd+Xw,Ya−Yd−Yw)を右下隅の点とする領域2R、または、座標値Pd’=(Xa−Xd,Ya−Yd)を右上隅の点、座標値Pe’=(Xa−Xd−Xw,Ya−Yd)を左上隅の点、座標値Pf’=(Xa−Xd,Ya−Yd−Yw)を右下隅の点、座標値Pg’=(Xa−Xd−Xw,Ya−Yd−Yw)を左下隅の点とする領域2Lを算出する。
【0048】
次に、ステップ52において、押下座標算出部38によって算出された押下座標値の一つを選択し、次にステップ53において、その選択した押下座標値がペン座標値Pa=(Xa,Ya)と一致するか否かを判断する。
【0049】
そして、選択した押下座標値がペン座標値Pa=(Xa,Ya)と一致するときには、ステップ53からステップ54に進んで、その選択した押下座標値は、電子ペン1によって押下された座標位置であると判定した上で、さらにステップ55に進んで、ほかに押下座標値があるか否かを判断し、ほかに押下座標値がなければ、判定処理を終了するが、ほかに押下座標値があれば、ステップ52に戻って、押下座標値の他の一つを選択する。
【0050】
ステップ53において、ステップ52で選択した押下座標値がペン座標値Pa=(Xa,Ya)と一致しないと判断したときには、ステップ53からステップ56に進んで、その選択した押下座標値がステップ51で算出した領域2Rまたは2L内であるか否かを判断する。
【0051】
選択した押下座標値を、Pb=(Xb,Yb)とすると、
(Xa+Xd)≦Xb≦(Xa+Xd+Xw)
または、
(Xa−Xd−Xw)≦Xb≦(Xa−Xd)
で、かつ、
(Ya−Yd−Yw)≦Yb≦(Ya−Yd)
であるときには、押下座標値Pb=(Xb,Yb)は、領域2Rまたは2L内である。
【0052】
そして、選択した押下座標値が領域2Rまたは2L内であるときには、ステップ56からステップ57に進んで、その選択した押下座標値は、電子ペン1を持つ手によって押下された座標位置であると判定した上で、さらにステップ55に進んで、ほかに押下座標値があるか否かを判断し、ほかに押下座標値がなければ、判定処理を終了するが、ほかに押下座標値があれば、ステップ52に戻って、押下座標値の他の一つを選択する。
【0053】
ステップ56において、ステップ52で選択した押下座標値が領域2Rまたは2L内ではないと判断したときには、ステップ56からステップ58に進んで、その選択した押下座標値は、電子ペン1によって押下された座標位置でもなく、電子ペン1を持つ手によって押下された座標位置でもない、操作入力のために指によって押下された座標位置であると判定した上で、さらにステップ55に進んで、ほかに押下座標値があるか否かを判断し、ほかに押下座標値がなければ、判定処理を終了するが、ほかに押下座標値があれば、ステップ52に戻って、押下座標値の他の一つを選択する。
【0054】
以上のように、一つのペン座標値Pa=(Xa,Ya)についての押下座標値のすべてにつき、電子ペン1によって押下された座標位置であるか、電子ペン1を持つ手によって押下された座標位置であるか、操作入力のために指によって押下された座標位置であるかが、識別判定される。
【0055】
そして、識別判定部40は、電子ペン1によって押下された座標位置と判定した押下座標値、すなわちペン座標値Paについては、その座標値Paの位置において液晶表示部10に文字や図形などの一部を構成する線や点などを表示させて、文字や図形などの手書きペン入力の処理を行い、または、その座標値Paの位置において液晶表示部10にアイコンなどで表示されている項目の操作や入力の処理を行う。
【0056】
また、識別判定部40は、電子ペン1を持つ手によって押下された座標位置と判定した押下座標値については、その座標値を無効として、特別の処理をしない。
【0057】
さらに、識別判定部40は、操作入力のために指によって押下された座標位置と判定した押下座標値については、その座標値の位置において液晶表示部10にアイコンなどで表示されている項目の操作や入力の処理を行う。
【0058】
電子ペン1を持つ手をパネル面に接触させてペン入力するときの手とパネル面との接触面積は、操作入力のために指をパネル面に接触させるときの指とパネル面との接触面積に比べて、かなり大きい。
【0059】
そこで、図5〜図7に示して上述した実施形態のように、無効領域を設定し、算出することによって、電子ペン1を持つ手によって押下された座標位置と操作入力のために指によって押下された座標位置とを識別する代わりに、押下座標算出部38によって算出された押下座標値が、ペン座標算出部28によって算出されたペン座標値Paと異なり、かつ所定数を超える隣接する座標値からなるときには、その押下座標値を、電子ペン1を持つ手によって押下された座標位置と判定し、押下座標算出部38によって算出された押下座標値が、ペン座標算出部28によって算出されたペン座標値Paと異なり、かつ所定数以下の隣接する座標値からなるときには、その押下座標値を、操作入力のために指によって押下された座標位置と判定するようにしてもよい。この場合には、ペン入力しないで指入力するだけのときにも、指入力であることを識別判定することができる。
【0060】
また、図1の実施形態は、液晶表示部10を挟んでペン座標検出層20と押下座標検出層30を配置する場合であるが、液晶表示部10の観察面側にペン座標検出層20と押下座標検出層30を積層して配置してもよい。また、液晶表示部以外の表示部を用いることもできる。
【0061】
【発明の効果】
上述したように、この発明によれば、パネル面の任意の領域に手を接触させてペン入力することができ、操作性が良く、手が疲れないペン入力を行うことができるとともに、ペン入力と指入力とを同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の座標入力装置の一実施形態の要部の概略的な断面構成を示す図である。
【図2】ペン座標検出層の一例を示す図である。
【図3】電子ペンによって指示された座標位置の検出の説明に供する図である。
【図4】押下座標検出層の一例を示す図である。
【図5】この発明の座標入力装置の一実施形態の全体構成を示す図である。
【図6】無効領域の説明に供する図である。
【図7】識別判定部が行う判定処理ルーチンの一例を示す図である。
【符号の説明】
1…電子ペン
1a…LC回路
2R,2L…領域
10…液晶表示部
20…ペン座標検出層
X1〜X5,Y1〜Y5…ループコイル
27…電圧測定部
28…ペン座標算出部
30…押下座標検出層
31a〜31j,32a〜32j…導電体
33,34…スイッチ回路
35…電源
36…検出用抵抗
37…電圧測定部
38…押下座標算出部
40…識別判定部
41…無効領域設定部
50…判定処理ルーチン
Claims (6)
- 表示部に積層された、LC回路を有する電子ペンによって指示された座標位置を検出するためのペン座標検出層と、
前記表示部に積層された、前記電子ペンによって押下された座標位置、前記電子ペンを持つ手によって押下された座標位置、および操作または入力のために指によって押下された座標位置を検出するための押下座標検出層と、
前記ペン座標検出層によって求められたペン座標値、および前記押下座標検出層によって求められた押下座標値に基づいて、前記電子ペンによって押下された座標位置、前記手によって押下された座標位置、および前記指によって押下された座標位置を、互いに識別して判定する手段であって、
前記押下座標値が、前記ペン座標値と一致するときには、その押下座標値を、前記電子ペンによって押下された座標位置と判定するとともに、
前記ペン座標検出層によって求められたペン座標値ごとに、前記手によって押下される座標位置の領域を、そのペン座標値に対して相対的な位置が定められた無効領域として算出し、
前記押下座標値が、前記ペン座標値と異なり、かつ前記算出された無効領域内の座標値であるときには、その押下座標値を、前記手によって押下された座標位置と判定し、
前記押下座標値が、前記ペン座標値と異なり、かつ前記算出された無効領域外の座標値であるときには、その押下座標値を、前記指によって押下された座標位置と判定する識別判定手段と、
を備えることを特徴とする座標入力装置。 - 請求項1の座標入力装置において、
利用者が右利きか左利きかを指定する指定手段と、
この指定手段による指定に応じて、前記無効領域の前記ペン座標値に対する方向を設定する無効領域設定手段と、
を備えることを特徴とする座標入力装置。 - 請求項1の座標入力装置において、
あらかじめ利用者が電子ペンおよび電子ペンを持つ手を当該座標入力装置のパネル面に接触させたときに前記識別判定手段が前記押下座標値のうちの前記ペン座標値と異なる座標値と判定した座標値から、前記無効領域の前記ペン座標値に対する相対的な位置を設定する無効領域設定手段を備えることを特徴とする座標入力装置。 - 請求項1〜3のいずれかの座標入力装置において、
前記押下座標検出層は、前記表示部の表示面に沿う面の一方向に配列された複数の第1の導電体と、これと交差する方向に配列された複数の第2の導電体とを有し、第1の導電体と第2の導電体とが接触した点の座標位置が、前記押下座標値として算出されるものであることを特徴とする座標入力装置。 - 請求項4の座標入力装置において、
前記複数の第1の導電体を順次、電源または検出用抵抗に接続し、同一の第1の導電体を電源または検出用抵抗に接続している期間内において、前記複数の第2の導電体を順次、逆に検出用抵抗または電源に接続して、その検出用抵抗の両端間に得られる電圧が閾値電圧を超えるときのタイミングから、前記押下座標値を算出することを特徴とする座標入力装置。 - 請求項1〜3のいずれかの座標入力装置において、
前記識別判定手段は、前記電子ペンによって押下された座標位置と判定した座標値については、手書きペン入力の処理を行い、前記指によって押下された座標位置と判定した座標値については、操作入力項目の操作または入力の処理を行うことを特徴とする座標入力装置。
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