JP3756769B2 - 静電容量式圧力センサ、センサ素子およびセンサ素子の製造方法 - Google Patents

静電容量式圧力センサ、センサ素子およびセンサ素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被測定圧力の変化を静電容量の変化として検出するダイアフラム構造の静電容量式圧力センサに関し、特に真空室を備えた絶対圧測定用の静電容量式圧力センサ、センサ素子およびセンサ素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
従来から、圧力計等に用いられる静電容量式圧力センサとしては種々のものが知られている。その一つに絶対圧測定用の静電容量式圧力センサ(以下、このようなセンサを絶対圧センサという)がある。この絶対圧センサは、被測定圧力の変化により容量値が変化するコンデンサ電極間のギャップを大気から隔絶するとともに、内部を真空にしたもので、通常図33に示すように構成されている。これを概略説明すると、絶対圧センサ1は、陽極接合されたシリコン基板2とガラス基板3とを備え、これら両基板間に真空室4を形成している。シリコン基板2は、被測定圧力P1 を受けると弾性変形する薄肉の起歪部2Aが形成されており、この起歪部2Aの表面側に可動電極5が設けられている。可動電極5は、ガラス基板3の表面に設けた容量検出用ICチップ7にリード線8を介して電気的に接続されている。一方、ガラス基板3の前記起歪部2Aと対向する面には、固定電極6が設けられている。
【0004】
このような構造からなる従来の絶対圧センサ1において、起歪部2Aの裏面側に被測定圧力P1 を印加すると、起歪部2Aがその圧力に応じて弾性変形し、可動電極5と固定電極6との間の微少間隙Gが変化する。このため、可動電極5と固定電極6とで構成されるコンデンサの静電容量が変化し、これを電気信号として取り出して信号処理することにより、被測定圧力P1 を検出することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の絶対圧センサ1において、製造後や出荷時には起歪部2Aの測定圧側である受圧面が大気圧となる。その場合、微圧レンジ用の素子においては、電極間距離がきわめて狭いため、起歪部2Aが大気圧によって真空室4側に弾性変形して可動電極5が固定電極6に密着してしまう。このため、計器等に装着しても起歪部2Aが最大変形前の状態に復帰せず、使用不能になるという問題があった。
また、従来の圧力センサは、非測定時において可動電極5と固定電極6を最大に離間させておき、被測定圧力P1 によって起歪部2Aをガラス板3側に弾性変形させて電極間距離を狭めるようにしているので、起歪部2Aの変形量が非測定時の電極間距離によって決まる。言い換えれば、圧力レンジが非測定時の電極間距離によって決まり、広い圧力レンジがとれないという問題があった。さらに、可動電極5が起歪部2Aに設けられているため、相対的な問題ではあるが電極の厚みと、この電極が形成されている部分の基板の厚みとが問題になる。つまり、温度変化により起歪部2Aが膨張収縮すると電極間距離が変化し、測定誤差になる。
【0006】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、大気圧によりダイアフラムの起歪部が弾性変形しても電極どうしが互いに密着することがなく、製造、出荷時の取り扱いが容易で、圧力レンジを広くとることができ、また温度変化による影響が少なく、温度特性を改善した静電容量式圧力センサを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために第1の発明は、真空室の一部を構成するダイアフラムを備え、このダイアフラムの起歪部の弾性変形を静電容量変化として検出する静電容量式圧力センサのセンサ素子において、中央部が起歪部を構成し、この起歪部より外側部分が固定部を構成するダイアフラムと、圧力導入孔を有し、前記ダイアフラムの固定部が接合されることにより前記ダイアフラムとともに圧力導入室を形成するカバープレートと、電極形成部とこの電極形成部の電極形成面の中央に一体に突設した接続部を有する可動プレートとからなり、前記ダイアフラムの起歪部中央で前記カバープレート側とは反対側の面に前記可動プレートの接続部を接合し、前記ダイアフラムの固定部と前記可動プレートの電極形成部に固定電極と可動電極を互いに対向させて形成したものである。
【0008】
この発明においては、ダイアフラムの起歪部が弾性変形すると、可動プレートも起歪部と一体に変位し、電極間距離を変化させる。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、ダイアフラム、カバープレートおよび可動プレートを同一材料によってそれぞれ形成し、これらを直接接合によって一体的に接合したものである。
【0010】
この発明においては、ダイアフラムと可動プレートが直接接合されているので、所望の電極間距離をもったセンサ素子を得ることができる。すなわち、接合材を用いて接合する方法は、接合後における接合材自体の厚みのばらつきによって電極間距離にばらつきが生じる。一方、直接接合は、接合部材の接合面を鏡面仕上げして互いに密着させるだけで接合する方法であるため、接合材を用いる必要がなく、そのため接合材の厚みのばらつきによる電極間距離のばらつきが生じず、高精度な電極間距離を得ることができる。
直接接合に際しては、大きな加圧力を必要とせず、基本的には互いに積層するだけでよいが、より確実な接合を得るためには適宜な温度(200〜1300°C程度)で加熱することが好ましい。
また、同一材料で形成されているので、熱膨張係数の相違による応力の発生が生じない。
【0011】
第3の発明は、真空室の一部を構成するダイアフラムを備え、このダイアフラムの起歪部の弾性変形を静電容量変化として検出する静電容量式圧力センサにおいて、圧力導入孔を有し、前記ダイアフラムの受圧面を覆うことにより前記ダイアフラムとともに圧力導入室を形成するカバープレートと、前記カバープレートとともに前記ダイアフラムの外周縁部を挟持する枠状の保持部を有し、前記ダイアフラムとともに前記真空室を形成する基板と、電極形成部とこの電極形成部の電極形成面の中央に一体に突設した接続部を有し、この接続部が前記ダイアフラムの真空室側の面で起歪部の中央に接合された可動プレートとを具備し、前記ダイアフラム、前記カバープレートおよび前記可動プレートによってセンサ素子を構成し、前記ダイアフラムの外周縁部と前記可動プレートの前記電極形成面に固定電極と可動電極を互いに対向するように設けたものである。
【0012】
この発明においては、圧力導入室に被測定圧力を導入すると、ダイアフラムの起歪部が弾性変形し、これと一体に可動プレートも変位し、電極間距離を変化させる。起歪部の変形方向は、カバープレートから離間する方向、言い換えれば電極間距離が拡大する方向であるため、固定電極と可動電極が密着することがなく、また、圧力レンジを大きくとることができる。さらに、固定電極はダイアフラムの固定部に設けられているので、温度変化による起歪部の膨張収縮による影響を受けない。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明において、可動プレートの電極形成部に重量軽減用の孔を設けたものである。
【0014】
この発明においては、可動プレートの重量が軽減されるので、重力や加速度の影響を受けることが少ない。すなわち、可動プレートはダイアフラムの起歪部に吊り下げられているので、自身の質量により重力や加速度の影響を受け易いが、重量軽減用の孔によって質量を軽減することにより、重力や加速度による影響が少なく、振動特性やセンサの姿勢の制限が解消される。重量軽減用の孔としては、不貫通孔または貫通孔が考えられる。
【0015】
第5の発明は、上記第3または第4の発明において、可動プレートの変位を規制する過負荷防止部を基板に設けたものである。
【0016】
この発明においては、過負荷防止部が可動プレートの変位を制限するので、過負荷が加わったときにダイアフラムの起歪部が所定量以上に変形して破損することがない。過負荷防止部としては、突起、段差面等が考えられる。
【0017】
第6の発明は、上記第3、第4または第5の発明において、カバープレートが圧力導入室用の凹陥部を有し、ダイアフラムが、厚みが一定の薄板状に形成されたものであって、カバープレートに接合されることにより外周縁部が固定部を形成し、この固定部より内側部分が起歪部を形成し、前記固定部の真空室側の面に固定電極が形成されているものである。
【0018】
この発明においては、ダイアフラム素材を研磨によって形成することができるので、ダイアフラムの形成が容易である。ダイアフラムをカバープレートに接合すると、凹陥部に対応する部分が起歪部となり、これより外側部分が固定部となる。
【0019】
第7の発明は、上記第3,第4、第5または第6の発明において、ダイアフラム、カバープレートおよび可動プレートを同一材料によってそれぞれ形成し、これらを直接接合によって一体的に接合することによりセンサ素子を構成したものである。
【0020】
この発明においては、電極間距離を設計値どおり正確に決めることができる。すなわち、接合材を用いて接合すると、接合後における接合材自体の厚みのばらつきによって電極間距離にばらつきが生じるため、高精度な電極間距離を得ることが難しい。一方、直接接合の場合は接合部材の接合面を鏡面仕上げして互いに密着させるだけで接合するため、接合材を用いる必要が全くなく、したがって接合材の厚さによるばらつきが生じず、高精度な電極間距離を得ることができる。
【0021】
第8の発明は、上記7の発明において、ダイアフラム、カバープレートおよび可動プレートをサファイアまたは石英によって形成したものである。
【0022】
この発明においては、ダイアフラムが耐食性に優れており、被測定流体に直接接触させることができる。
【0023】
第9の発明は、真空室の一部を構成するダイアフラムを備え、このダイアフラムの起歪部の弾性変形を静電容量変化として検出する静電容量式圧力センサにおけるセンサ素子の製造方法において、ダイアフラム素材によってダイアフラムを形成する工程と、プレート素材によって圧力導入孔を有するカバープレートを形成する工程と、前記工程によって形成されたカバープレートと前記ダイアフラムの外周縁部を一体的に接合して前記ダイアフラムの外周縁部を固定部とし、この固定部より内側部分を起歪部とする工程と、前記ダイアフラムの固定部で前記カバープレート側とは反対側の面の外周縁部に固定電極を形成する工程と、可動プレート素材の一方の面で中央部以外の部分をエッチングによって除去することにより電極形成部を形成するとともに、未エッチング部分によりダイアフラムに接合される接続部を形成する工程と、前記可動プレート素材の前記電極形成部の電極形成面に可動電極を形成し可動プレートを形成する工程と、前記可動プレートの前記接続部を前記ダイアフラムの起歪部中央に接合する工程とを備えたものである。
【0024】
この発明においては、ダイアフラムの起歪部の弾性変形によって可動プレートが一体的に変位し、電極間距離が変化するセンサ素子が形成される。
【0025】
第10の発明は、真空室の一部を構成するダイアフラムを備え、このダイアフラムの起歪部の弾性変形を静電容量変化として検出する静電容量式圧力センサにおけるセンサ素子の製造方法において、ダイアフラム素材によって厚みが一定のダイアフラムを形成する工程と、プレート素材によって圧力導入孔と、圧力導入室用の凹陥部を有するカバープレートを形成する工程と、前記工程によって形成されたカバープレートと前記ダイアフラムの外周縁部を一体的に接合して前記ダイアフラムの外周縁部を固定部とし、この固定部より内側部分を起歪部とする工程と、前記ダイアフラムの固定部で前記カバープレート側とは反対側の面の外周縁部に固定電極を形成する工程と、可動プレート素材の一方の面にダイアフラムの起歪部より大きい環状の分離用溝と、この分離用溝より外側に位置するピン用挿通孔を形成する工程と、前記可動プレート素材の前記一方の面で前記分離用溝より内側部分をドライエッチングによって環状に除去して電極形成部を形成し、未エッチング部分によりダイアフラムに接合される接続部を形成する工程と、前記可動プレート素材の前記電極形成部の電極形成面に可動電極を形成する工程と、前記可動プレート素材の前記接続部と前記分離用溝より外側部分を前記ダイアフラムの起歪部と固定部に接合する工程と、前記可動プレート素材の前記ダイアフラム側とは反対側の面をドライエッチングによって所定深さ除去して前記分離用溝の閉塞端を開放させることにより、可動プレート素材を前記分離用溝より外側と内側の部分とに分離して基板の保持部と可動プレートを形成する工程とを備えたものである。
【0026】
この発明においては、ダイアフラムとカバープレートとを接合することにより、ダイアフラムの固定部と起歪部が形成される。また、1つの可動プレート素材によって可動プレートと基板の保持部が同時に形成される。
【0027】
第11の発明は、上記第10の発明において、可動プレート素材が、接合面に環状の第1分離用溝が形成された第1のプレート素材と、この第1のプレート素材と同一材料からなり、第1のプレート素材との接合面に環状の第2分離用溝が形成され、第1のプレート素材に対して直接接合される第2のプレート素材とからなり、前記第1または第2のプレート素材の接合面に前記第1分離用溝と第2分離用溝を互いに接続する連通溝が形成されているものである。
【0028】
この発明においては、第1、第2分離用溝が同一直線上に位置していないので、可動プレート素材をドライエッチングしたとき、ダイアフラムに形成されている固定電極をエッチングすることがない。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る静電容量式圧力センサの一実施の形態を示す外観斜視図、図2は図1のII−II線断面図、図3は図1のIII −III 線断面図、図4は固定電極の平面図、図5は可動電極の平面図である。これらの図において、符号21で示すものは基板、22は枠状の保持部材(保持部)、23はダイアフラム、24はカバープレート、25は可動プレート、26は固定電極、27は可動電極、28は電極取出用ピンで、これらによって絶対圧測定用の静電容量式圧力センサ(以下、絶対圧センサという)20を構成している。
【0030】
前記基板21、保持部材22、ダイアフラム23およびカバープレート24は中心を一致させて順次積層され、一体的に接合されている。可動プレート25はダイアフラム23の裏面中央に一体的に接合されている。前記固定電極26が設けられたダイアフラム23、前記カバープレート24および前記可動電極27が設けられた可動プレート25は、同一材料によって形成され、センサ素子Sを構成している。前記基板21と保持部材22は、センサ素子Sのハウジングを形成している。
【0031】
前記基板21は、サファイア、石英またはアルミナセラミックス等によって形成されて上面中央に正方形の凹陥部30を有し、この凹陥部30と前記保持部材22の内面および前記ダイアフラム23の裏面とで囲まれた密閉空間31に前記可動プレート25が収容されている。また、この密閉空間31は、真空排気されることにより所定の真空度の真空室を形成している。このため、基板21には内外を連通させる真空排気用パイプ32が貫通して設けられており、この真空排気用パイプ32は、密閉空間31を真空排気して真空室とした後、押し潰して閉塞する。
【0032】
また、前記基板21は、前記真空室31の両側に位置し表裏面に貫通する2つのピン挿通孔33を有し、これらのピン挿通孔33には前記電極取出用ピン28が貫通して設けられている。
【0033】
前記保持部材22は、正方形の枠状に形成され、上端部内側面に矩形の凹部34を全周にわたって形成することにより、上端部が薄肉部22A、下端部が厚肉部22Bとされ、前記基板21の上面にロー付け等によって接合されている。また、厚肉部22Bには、複数の電極用孔35が貫通して形成されており、これらの電極用孔35に前記電極取出用ピン28が貫通して設けられている。電極取出用ピン28の内端は、前記固定電極26に半田等によって接続される。この半田付けは、溶融半田をピン挿通孔33および電極用孔35に流し込んで固化させることにより行われる。さらに、厚肉部22Bの上面、すなわち前記凹部34の底面には、リファレンス用電極36が形成されている。リファレンス用電極36は、前記固定電極26,可動電極27と同様に、蒸着またはスパッタリングによって形成される。
【0034】
前記ダイアフラム23は、前記基板21と保持部材22とからなるハウジングとともに前記真空室31を形成するもので、厚さが一定な極めて薄い四角形の板からなり、中央部が起歪部23Aとして用いられ、この起歪部23Aより外側部分が固定部23Bとして用いられる。起歪部23Aは円形で、上面が被測定圧力P1 を受ける受圧面38を形成し、裏面中央部に前記可動プレート25が接合されている。固定部23Bの上面は、前記カバープレート24との接合面を形成し、裏面の外周縁部が前記保持部材22の薄肉部22Aの上面に接合され、これより内側部分に前記固定電極26と、リファレンス電極39が形成される。リファレンス電極39は固定電極26より外側に設けられ、前記保持部材22側に設けられた前記リファレンス電極36と近接して対向している。
【0035】
前記固定電極26は、図4に示すようにダイアフラム23の起歪部23Aを挟んで互いに対向する2つの電極26A,26Bで構成されている。各電極26A,26Bは、外形状が正方形で内形状が円形のパターンを2分割した形状を呈し、一側面には配線部40が延設され、その先端部に設けたパッド部41に前記電極取出用ピン28の内端が半田付けによって接続されている。なお、2つの電極26A,26Bは、同一形状ではあるが、点対称になるように位置付けられている。
【0036】
ここで、本実施の形態においては、固定電極26の面積を大きくするためにダイアフラム23の起歪部23Aを円形に形成した例を示したが、これに限らず角形であってもよい。
【0037】
前記カバープレート24は、前記保持部材22およびダイアフラム23と同一の大きさからなる正方形の板体で、中央に被測定圧力P1 を前記ダイアフラム23の受圧面38に導く圧力導入孔44が表裏面に貫通して形成され、裏面側に前記ダイアフラム23の固定部23Bが接合されている。また、カバープレート24の表裏面の中央部には、凹陥部45,46がそれぞれ形成されている。裏面側の凹陥部46は円形の凹部からなり、前記ダイアフラム23の起歪部23Aの外縁を規定するとともに、この起歪部23Aとの間に被測定圧力P1 が導かれる圧力導入室51を形成している。
【0038】
前記可動プレート25は、前記固定電極26の外形状より若干小さい正方形の板体からなる電極形成部25Aと、この電極形成部25Aの上面、すなわちダイアフラム23と対向する面の中央に一体に突設された接続部25Bとで構成されている。電極形成部25Aの上面は電極形成面47を形成し、この電極形成面47の外周縁部に前記可動電極27が前記固定電極26と所定の電極間距離をもって対向するように形成されている。また、この可動電極27より内側部分には、重量軽減用の孔48が複数個形成されており、これにより可動プレート25の質量を軽減し、重力や加速度の影響を受け難くしている。孔48は、貫通孔に限らず不貫通孔であってもよい。前記接続部25Bの上面は接合面49を形成しており、前記ダイアフラム23の起歪部23Aの裏面中央に接合される。そして、このような可動プレート25は、前記保持部材22と同時に形成され(この点については後述する)、前記保持部材22とともにダイアフラム23に接合される。
【0039】
前記可動電極27は、図5に示すように外形状が可動プレート25の外形状と等しく、内形状が前記ダイアフラム23の起歪部23Aと略同一の大きさの円形パターンに形成され、前記固定電極26と極めて微少な隙間を保って対向している。
【0040】
前記保持部材22、ダイアフラム23、カバープレート24および可動プレート25は、同一材料、例えばサファイア基板(Al23)または石英によって形成され、直接接合によって一体的に接合されることにより、センサ素子Sを構成している。直接接合とは、接合材等を一切用いないで接合部材どうしの物理化学的な結合力のみによって接合する方法で、2つの接合部材の接合面を鏡面仕上げして互いに密着させることにより接合する方法である。接合に際しては、特に圧力を加える必要がなく、単に重ね合わせるだけでよいが、好ましくは200〜1300°C程度に加熱して接合するとより一層確実な接合が得られる。
【0041】
このような絶対圧センサ20において、測定時に被測定圧力P1 を圧力導入室51に導いて起歪部23Aの受圧面38に加えると、起歪部23Aは被測定圧力P1 に応じて真空室31側に弾性変形する。このため、可動プレート25もダイアフラム23の起歪部23Aとともに真空室31側に変位し、固定電極26と可動電極27の電極間距離が大きくなる。したがって、固定電極26と可動電極27とで構成されるコンデンサの静電容量が変化し、これを電気信号として取り出すことにより、被測定圧力P1 を検出することができる。
【0042】
このように、ダイアフラム23を被測定圧力P1 によって固定電極26と可動電極27の電極間距離が大きくなる方向に弾性変形させるように構成すると、図6に示すように製造、出荷時において、圧力導入室51が大気開放された状態にあっては、大気圧Poによってダイアフラム23の起歪部23Aが真空室31側に弾性変形しているので、図33に示した従来の圧力センサ1と異なり、可動電極27が固定電極26に対して密着するといった事態が発生することがなく、使用不能になることがない。したがって、製造、出荷時の圧力センサ20の取り扱いが容易である。
【0043】
また、保持部材22、ダイアフラム23、カバープレート24および可動プレート25を同一材料で形成すると、異種材料で製作した場合に比べて製作時に接合部に生じる残留応力を少なくすることができる。この残留応力の経時変化は圧力計測の誤差要因となるため、できる限り少なくすることが望ましい。また、使用時に温度変化等があっても接合部に熱応力が生じず、ダイアフラム23の弾性変形に影響を与えることがない。したがって、温度特性に優れ、高精度な測定が可能な静電容量式の圧力センサを提供することができる。
【0044】
また、ダイアフラム23、カバープレート24および可動プレート25を直接接合によって一体的に接合しているため、高精度な電極間距離が得られる。すなわち、接合材を用いて接合する場合は、接合材の厚さのばらつきによって電極間距離にばらつきが生じるが、直接接合の場合は接合材を一切用いないため、接合材の厚さによるばらつきが生じることががなく、カバープレート25のドライエッチング量と、固定電極26,可動電極27の厚さのみによって電極間距離が決定される。したがって、設計値に略等しい電極間距離を得ることが可能で、きわめて高精度で信頼性の高い圧力計測が可能な静電容量式圧力センサが得られる。
【0045】
また、センサ素子Sの各構成部材を、特にサファイア基板で形成すると、サファイアは単結晶であり、アルミナ、セラミックスのような粒界が存在しないため、高い耐食性を有し、アルカリ性や酸性の液体など腐食性の高い被測定流体であっても直接接触させて圧力を測定することができる。したがって、センサ素子Sの表面を封入液で覆うなどして被測定流体から隔離する必要がなく、計測部の小型化を図ることができる。
【0046】
さらに、サファイアは、半導体で使用されるバッチプロセスと同様な製造工程と採用することにより数百個のセンサ素子の製作が可能であり、量産性に優れている。すなわち、上記した工程により、1枚のカバープレート素材に多数のカバープレートを形成する。また、1枚のダイアフラム素材に多数のダイアフラムを形成する。さらに1枚の可動プレート素材に多数の可動プレート素材を形成する。そして、これらのプレート素材を積層して互いに直接接合することにより、多数のセンサ素子を形成する。しかる後、これらのセンサ素材をダイシングによって切り出す。その結果として、電極間隔などのセンサ素子間のばらつきが小さく、同一特性のセンサ素子を大量に製作することが可能である。
【0047】
さらにまた、被測定圧力P1 が変化しても容量値が変化しないリファレンス電極36,39を設けているので、このリファレンス電極による静電容量と、固定電極26と可動電極27間の静電容量とを比較することにより、温度の変化により発生する誤差要因を取り除くことができる。
【0048】
ここで、本発明に係る静電容量式圧力センサは、上記した実施の形態に限らず種々の変形、変更が可能であり、例えば保持部材22を基板21と同一材料によって一体に形成し、可動プレート25をサファイア等の別材料によって形成してもよい。
【0049】
また、図2に二点鎖線で示すように基板21の内面に過負荷防止部を構成する段差部54を形成し、この段差部54によって可動プレート25の下面を支承させることにより、過大な圧力が加わったときのダイアフラム23の起歪部23Aの塑性変形、破損等を防止するようにしてもよい。
【0050】
次に、本願発明に係る静電容量式圧力センサにおけるセンサ素子の製造方法について説明する。
図7〜図15は図1〜図6に示したセンサ素子Sと静電容量式圧力センサ20の形成工程を説明するための図である。この静電容量式圧力センサ20は、例えば厚さが0.5mm程度の4インチ角のサファイア基板内に半導体チップと同様に多数製作され、その後ダイシングによって個々に独立したセンサに分離されるものであるが、その中の1つのセンサの製作手順について説明する。また、本製造方法は、上記したリファレンス電極36,39を備えない圧力センサの製造方法について説明する。
【0051】
図7(a)、(b)はカバープレート24の形成工程を説明するための平面図および断面図で、サファイア基板からなるプレート素材55の中心に圧力導入孔44をレーザー加工によって表裏面に貫通するように形成する。次に、研磨加工によってサファイア基板の表裏面を直接接合が可能な鏡面に仕上げる。次いで、裏面の中央にドライエッチングによって所要の深さの凹陥部46を形成することにより、カバープレート24を製作する。
【0052】
圧力導入孔44と凹陥部46の形成順序は、どちらが先であってもよい。凹陥部46の周縁46aは、ダイアフラム23の起歪部23Aの外周縁を規定する。プレート素材55の表面、すなわち凹陥部46が形成される裏面とは反対側の面は、平坦面に形成されているが、図1に示した凹陥部45が形成されるものであってもよい。
【0053】
図8(a)、(b)はダイアフラム23とカバープレート24の接合工程を説明するための平面図および断面図である。ダイアフラム23は、サファイア基板を研磨することにより、厚さが一定の極めて薄い板に形成され、表裏面が鏡面仕上げされている。このダイアフラム23をカバープレート24の凹陥部46が形成されている裏面に載置してダイアフラム23の外周縁部を直接接合によって接合し、凹陥部46を覆う。ダイアフラム23をカバープレート24に接合すると、ダイアフラム23の前記凹陥部46に対応する中央部分が起歪部23Aとなり、これより外側部分が固定部23Bとなる。
【0054】
図9(a)、(b)は固定電極の形成工程を説明するための平面図および断面図で、ダイアフラム23のカバープレート24側とは反対側の面全体に導電性薄膜を成膜し、写刻技術によりパターンニングすることにより、所定形状の固定電極26を形成する。この導電性薄膜の成膜は、通常半導体プロセスで用いられているドライ成膜であるCVD、真空蒸着、スパッタリング法などにより形成することができる。このとき、図4に示す配線部40とパッド部41が同時に形成されることはいうまでもない。
【0055】
図10〜図13(a)、(b)は保持部材と可動プレートの形成工程を説明するための平面図および断面図、図14(a)、(b)、(c)は保持部材と可動プレートの形成工程を説明するための平面図、A−A線断面図およびB−B断面図である。先ず、図10において、所定の板厚を有するサファイア基板からなる可動プレート素材60を用意する。可動プレート素材60は、表裏両面が研磨されており、その表面(ダイアフラムとの接合面)の外周寄りに環状(正方形)の分離用溝61を超音波加工等によって形成する。この分離用溝61は、可動プレート25の厚さより十分に深く形成される。
【0056】
また、分離用溝61の外側に2つの貫通孔からなる電極用孔35をレーザー加工等によって形成する。2つの電極用孔35は、前記固定電極26のパッド部41に対応一致する位置に形成されるもので、可動プレート素材60の中心を通り互いに対向する2つの辺に対して垂直な仮想線62上に位置している。さらに、前記表面の前記分離用溝61より外側部分をドライエッチングによって全周にわたって所定量除去することにより環状の溝63を形成する。分離用溝61、電極用孔35および溝63の形成順序は特に限定されない。分離用溝61を挟んでその外側部分と内側部分は、最終的には保持部材22と、可動プレート25となる部分である。溝63を形成する理由は、後述する電極間隔設定用溝64を形成したとき、接続部25Bを保持部材22となる外周縁部の上面より突出させるためである。
【0057】
図11(a)、(b)は電極間隔設定用溝の形成工程を説明するための平面図および断面図である。可動プレート素材60の表面の分離用溝61より内側でかつ中央部を除く部分をドライエッチングによって所定量除去して電極間隔設定用溝64を形成する。これにより、電極間隔設定用溝64が形成されている部分が、可動プレート25の電極形成部25Aとなる部分で、溝底面が電極形成面47とされる。電極間隔設定用溝64の形成によって可動プレート素材60の表面中央に残っている突起部分は、ダイアフラム23との接続部25Bとなる部分である。電極間隔設定用溝64は、その底面から接続部25Bの上面までの距離が電極間距離を規定するため、高い精度で形成される。また、接続部25Bの上面は、可動プレート素材60の外周縁部、すなわち電極間隔設定用溝64が形成されている部分より外側の上面より上方に僅かに突出しており、ダイアフラム23との接合面49(図2)を形成する。この突出寸法Δdは、接続部25Bとダイアフラム23との直接接合を確実にするために設けられる(この点については後述する)。
【0058】
さらに、前記分離用溝61より外側の表面部分でかつ前記電極用孔35に対応する部分をドライエッチングによって所定量除去して凹部65を形成する。この凹部65は前記分離用溝61に連通しているが、可動プレート素材60の外側面に開放することはない。また、この凹部65は、電極間隔設定用溝64より低くなるように形成される。図11においては、電極間隔設定用溝64と凹部65を黒く塗り潰して示している。このとき、重量軽減用の孔48(図2)も形成されるるが、その図示については省略している。
【0059】
図12(a)、(b)は可動電極の形成工程を説明するための平面図および断面図である。可動プレート素材60の表面で分離用溝61より内側に導電性薄膜を成膜し、写刻技術によりパターンニングすることにより、所定形状の可動電極27を形成する。この導電性薄膜の成膜は、前記固定電極26の形成と同様に通常半導体プロセスで用いられているドライ成膜であるCVD、真空蒸着、スパッタリング法などにより形成することができる。
【0060】
図13(a)、(b)はダイアフラムと可動プレート素材60の接合工程を説明するための平面図および断面図で、ダイアフラム23を上下反転させることにより裏面側を上にする。また、上記工程で製作した可動プレート素材60を同じく上下反転させてダイアフラム23の上に位置決めして載置する。これにより、可動プレート素材60の外周縁部がダイアフラム23の裏面外周縁部に接触し、接続部25Bの接続面49がダイアフラム23の裏面中央に接触して直接接合される。このとき、可動プレート素材60の外周縁部と接続部25Bの接続面49が同一面、すなわち前記突出寸法Δd(図11)が零であると、接続部25Bがダイアフラム23に接触したとき、ダイアフラム23の起歪部23Aが下方に弾性変形して良好な接合が得られないおそれがあるが、Δdだけ突出させておくと、この突出量Δdだけ起歪部23Aを接続部25Bが押圧して下方に弾性変形させるため、確実な直接接合が得られる。
【0061】
図14(a)、(b)、(c)は保持部材22と可動プレート25の形成工程を説明するための平面図、A−A線断面図およびB−B線断面図である。上記工程で可動プレート素材60をダイアフラム23の裏面側に直接接合した後、可動プレート素材60の上になっている裏面全面をドライエッチングによって所定量除去することにより、分離用溝61の閉塞端を上方に開放させる。これにより、分離用溝61より外側と内側部分が完全に分離し、外側部分が保持部材22となり、内側部分が可動プレート25となり、もってセンサ素子Sが製作される。
【0062】
図15は基板21と保持部材22の接合工程を説明するための断面図で、凹陥部30とピン挿通孔33が形成された基板21の上に、上記工程で形成された保持部材22を載置してロー付け等によって一体的に接合する。また、ピン挿通孔33より電極用孔35に電極取出用ピン28を挿入し、その挿入端を固定電極26のパッド部41に接触させる。さらに、ピン挿通孔33および電極用孔35に溶融半田を流し込んで電極取出用ピン28と固定電極26のパッド部41を電気的に接続する。そして、この溶融半田はピン挿通孔33および電極用孔35内で固化することにより、これらの孔を気密に封止する。
【0063】
しかる後、真空排気用パイプ32を図示しない真空ポンプに接続し、この真空ポンプによって基板21、保持部材22およびダイアフラム23によって囲まれた密閉空間内の空気を排気することにより、所定の真空度の真空室31とする。そして、真空排気用パイプ32を封止することにより、静電容量式圧力センサの製造を終了する。
【0064】
このようにして製作される静電容量式圧力センサにあっては、半導体プロセスと同様にサファイアからなる基板内に多数のセンサ素子Sを同時に製作することができるので、同じ品質のセンサ素子Sの大量生産が可能である。このことは低コスト化にもつながる。
【0065】
図16(a)〜(f)は保持部材と可動プレートを形成するための他の製造方法を説明するための図である。保持部材22と可動プレート25を形成するために用いられる可動プレート素材60’は、図16(a)、(b)に示すように第1、第2のプレート素材70,71によって形成される。第1のプレート素材70は両面が鏡面仕上げされたサファイア基板からなり、第2のプレート素材71との接合面に所要深さからなる環状(四角形)の第1分離用溝72が超音波加工によって形成される(a)。第2のプレート素材71は同じく両面が直接接合が可能なお鏡面仕上げされたサファイア基板からなり、第1のサファイア基板70との接合面に所要深さからなる環状(四角形)の第2分離用溝73と、浅い連通溝74が形成される(b)、(c)。
【0066】
第1分離用溝72が形成された第1のプレート素材70と、第2分離用溝73と連通溝74が形成された第2のプレート素材71をその接合面を直接接合することにより、可動プレート素材60’を形成する(d)。次に、プレート素材71の上面全体をドライエッチングする。この後、可動プレート素材60’に貫通孔からなる2つの電極用孔35をレーザー加工によって形成する(e)。さらに、第1のプレート素材70の表面で中央部と外周部を除く部分をドライエッチングによって所定量除去することにより、電極間隔設定用溝64を形成し、中央に残った突起状の未エッチング部分をダイアフラム23との接続部25Bとする(f)。これ以降の工程は、図12〜図14に示した工程と全く同一であるため、その説明を省略する。
【0067】
このように第1、第2のプレート素材70,71を直接接合して1枚の可動プレート素材60’を形成すると、図17に示すドライエッチングによる保持部材22と可動プレート25の分離工程で固定電極26をエッチングするおそれがなく、固定電極26の断線を防止することができる。すなわち、第2のプレート素材71の表面をドライエッチングによって所定量除去し、分離用溝73の閉塞端を開放させることにより第1、第2分離用溝72,73より外側部分を保持部材22とし、内側部分を可動プレート25としたとき、第1、第2分離用溝72,73が連続したストレートな溝であると固定電極26をオーバーエッチングするおそれがあるが、第1分離用溝72と第2分離用溝73の大きさを異ならせてその接続部分を連通溝74によって屈曲部としておくと、オーバーエッチングされる部分Aが第1、第2のプレート素材70,71の接合面で第2分離用溝73に対応する部分だけであるため、固定電極26をエッチングすることがない。
【0068】
図18〜図21は電極形成の他の方法を説明するための図である。
この電極形成方法は、半田等の導電材80と電極取出用ピン28とで電極を形成するようにしたものである。図18(a)、(b)は半田からなる導電材80を形成する工程を説明するための平面図および断面図で、図12に示す工程によって形成した可動プレート素材60をダイアフラム23の上に載置して直接接合した後、可動プレート素材60の上方から電極用孔35にSn−Ag、Pb−Sn等の溶融半田材を流し込んで固化させることにより導電材80とし、固定電極26に電気的に接続する。
【0069】
図19は(a)、(b)、(c)は保持部材22と可動プレート25の形成工程を説明するための平面図、A−A線断面図およびB−B線断面図である。導電材80を形成した後、可動プレート素材60の上になっている裏面全面をドライエッチングによって所定量除去することにより、分離用溝61の閉塞端を上方に開放させる。これにより、分離用溝61より外側と内側部分が完全に分離することにより、外側部分を保持部材22とし、内側部分を可動プレート25とする。導電材80が接続される固定電極26のパッド部としては、濡れ性の低い材料で形成し、溶融半田材が流れ出してダイアフラム23に接触しないようにすることが望ましい。
【0070】
図20(a)、(b)は保持部材22の表面に突出している導電材80にバンプ81を形成する工程を説明するための平面図および断面図で、導電材80の外部に露呈している部分にバンプ81を形成する。この後、図21に示すように保持部材22を基板21の上に載置してロー付け等により接合し、ピン挿通孔33に電極取出用ピン28を挿入して内端を導電材80のバンプ81に接合する。接合に際しては、ピン挿通孔33にSn−Ag、Pb−Sn等の溶融半田材を流し込んで固化させることにより、バンプ81との接続を確実にするとともにピン挿通孔33を気密に封止する。
【0071】
図22〜図32は可動プレート25の周りに保持部材を設けない構造のセンサ素子と圧力センサの製造方法を説明するための図である。図22、図23および図24に示す工程は、上記した図7〜図9に示した工程と全く同一である。すなわち、図22(a)、(b)はカバープレート24の形成工程を説明するための平面図および断面図で、サファイア基板からなるプレート素材55の表裏面を鏡面仕上げし、裏面の中央にドライエッチングによって所要の深さの凹陥部46を形成する。さらに、中心に圧力導入孔44をレーザー加工によって表裏面に貫通するように形成することにより、カバープレート24を製作する。
【0072】
図23(a)、(b)はダイアフラム23とカバープレート24の接合工程を説明するための平面図および断面図で、カバープレート24の凹陥部46が形成されている裏面にダイアフラム23の固定部23Bとなる部分を載置して直接接合し、凹陥部46を覆う。ダイアフラム23は、所要の厚さおよび大きさを有する厚さが一定のサファイア基板からなり、表裏面が鏡面仕上げされている。ダイアフラム23をカバープレート24に直接接合すると、ダイアフラム23の前記凹陥部46に対応する中央部分が起歪部23Aとなる。
【0073】
図24(a)、(b)は固定電極26の形成工程を説明するための平面図および断面図で、ダイアフラム23のカバープレート24側とは反対側の面全体に導電性薄膜を成膜し、写刻技術によりパターンニングすることにより、所定形状の固定電極26を上記したと同様な技術により固定部23Bに形成する。
【0074】
図25(a)、(b)は固定電極26の配線部分を保護膜によって覆う工程を示す平面図および断面図で、パイレックス等の溶融ガラスを固定電極26の配線部分40(図4)の上に滴下して固化させることにより、保護膜90を形成する。
【0075】
図26(a)、(b)は固定電極26のパッド部41に金のバンプ91を形成する工程を示す平面図および断面図で、溶融した金をパッド部41の上に滴下して固化させ、バンプ91を形成する。
【0076】
図27〜図29は可動プレート25の形成工程を説明するための図である。
図27(a)、(b)は、所定の板厚を有するサファイア基板からなる可動プレート素材92を用意してその外周部を全周にわたって超音波加工によって所定深さ除去することにより溝93を形成する工程を示す平面図および断面図である。これにより、可動プレート素材92の外周面下端部側にフランジ95が形成される。
【0077】
図28(a)、(b)は、さらに可動プレート素材92の表面で中央部を除く部分に電極間隔設定用溝64をドライエッチングによって形成する工程を示す平面図および断面図で、中央に残った未エッチング部分をダイアフラムとの接続部25Bとする。
【0078】
図29(a)、(b)は、可動電極27の形成工程を説明するための平面図および断面図図である。電極間隔設定用溝64の底面外周部に導電性薄膜を成膜し、写刻技術によりパターンニングすることにより、所定形状の可動電極27を形成する。
【0079】
図30(a)、(b)はダイアフラム23と可動プレート素材92の接合工程を説明するための平面図および断面図である。ダイアフラム23を上下反転させることにより裏面側を上にする。また、上記工程で製作した可動プレート素材92を同じく上下反転させてダイアフラム23の上に位置決めして載置する。これにより、接続部25Bがダイアフラム23の起歪部裏面に直接接合される。
【0080】
図31(a)、(b)は可動プレート25の形成工程を説明するための平面図および断面図である。可動プレート素材92の上になっている面をドライエッチングによって所定量除去し、フランジを完全に取り除く。これによって可動プレート25が形成され、センサ素子96が形成される。センサ素子96は、ダイアフラム23、カバープレート24および可動プレート25によって構成されている。
【0081】
図32はセンサ素子96の封止工程を説明するための断面図である。金バンプ91に電極取出用ピン28の一端を半田付け等によって接続する。電極取出用ピン28は、ダイアフラム23と平行になるように取付けられ、センサ素子96の側方に延在している。次に、ガラス、金属等によって形成した上面中央に開口101を有する上側ケース(保持部材)100の内部にセンサ素子96を組込んでカバープレート24により前記開口101を閉塞し、ロー付け等によって接合する。さらに、ガラス、金属等によって形成した下側ケース(基板)103の上面に上側ケース100を設置して両ケースの接合部を封止する。この後、ケース内部を真空排気して所定の真空度の真空室105とすることにより、静電容量式圧力センサ106の製作を終了する。
【0082】
このような製造方法においては、上側ケース100を図2に示した保持部材22の代わりに用いているため、電極取出用ピン28の固定電極26への接続および取出しが比較的容易である。
【0083】
なお、上記した実施の形態においては、圧力センサの形状を正方形とした場合について説明したが、本発明はこれに何ら特定されるものではなく、多角形、円形あるいは楕円形などの各種の形状のものであっても同様な効果が得られる。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るセンサ素子は、真空室の一部を構成するダイアフラムを備え、このダイアフラムの起歪部の弾性変形を静電容量変化として検出する静電容量式圧力センサのセンサ素子において、中央部が起歪部を構成し、この起歪部より外側部分が固定部を構成するダイアフラムと、圧力導入孔を有し、前記ダイアフラムの固定部が接合されることにより前記ダイアフラムとともに圧力導入室を形成するカバープレートと、電極形成部とこの電極形成部の電極形成面の中央に一体に突設した接続部を有する可動プレートとからなり、前記ダイアフラムの起歪部中央で前記カバープレート側とは反対側の面に前記可動プレートの接続部を接合し、前記ダイアフラムの固定部と前記可動プレートの電極形成部に固定電極と可動電極を互いに対向させて形成したので、大気圧がダイアフラムの起歪部に加わったとき、起歪部が真空室側に弾性変形して電極間距離を拡大させるため、電極どうしが密着することがなく、製造、出荷時の取り扱いが容易で、使用不能になることがない。
また、起歪部の変形方向が電極間距離が拡大する方向であるため、起歪部を弾性変形限界内において最大限に変形させることができ、圧力レンジを広く取ることができる。さらに、固定電極がダイアフラムの固定部に設けられ、弾性変形の大きい起歪部に設けられていないので、起歪部が温度変化によって膨張収縮してもその影響が少なく、高い測定精度と信頼性に優れたセンサ素子および静電容量式圧力センサを提供することができる。
【0085】
また、センサ素子の素材としてサファイアまたは石英を用いているので、耐食性に優れており、また直接接合しているので、高い精度の極間距離が得られる。
また、可動プレートに貫通孔または不貫通孔からなる重量軽減用の孔を設けているので、自身の質量が重力や加速度の影響を受け難く振動特性やセンサの姿勢の制限が解消される。
【0086】
また、過負荷防止部を備えているので、過大圧力によるダイアフラムの起歪部の破損を防止することができる。
【0087】
また、本発明によるセンサ素子の製造方法によれば、ダイアフラムの起歪部に可動プレートを備えたセンサ素子を製作することができ、また分離用溝を屈曲した溝で構成した製造方法においては、ドライエッチング時に固定電極をエッチングして切断するといったおそれがなく、センサ素子を良好に製作することができる。
【0088】
さらに、本発明によるセンサ素子の製造方法によれば、半導体製造と同様に同一品質のものを大量に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る静電容量式圧力センサの一実施の形態を示す外観斜視図である。
【図2】 図1のII−II線断面図である。
【図3】 図1のIII −III 線断面図である。
【図4】 固定電極の平面図である。
【図5】 可動電極の平面図である。
【図6】 製造、出荷時においてダイアフラムの起歪部が大気圧によって真空室側に変形した状態を示す図である。
【図7】 (a)、(b)はカバープレートの形成工程を説明するための平面図および断面図である。
【図8】 (a)、(b)はダイアフラムとカバープレートの接合工程を説明するための平面図および断面図である。
【図9】 (a)、(b)は固定電極の形成工程を説明するための平面図および断面図である。
【図10】 (a)、(b)は保持部材と可動プレートの形成工程を説明するための平面図および断面図である。
【図11】 (a)、(b)は保持部材と可動プレートの形成工程を説明するための平面図および断面図である。
【図12】 (a)、(b)は保持部材と可動プレートの形成工程を説明するための平面図および断面図である。
【図13】 (a)、(b)は保持部材と可動プレートの形成工程を説明するための平面図および断面図である。
【図14】 (a)、(b)、(c)は保持部材と可動プレートの形成工程を説明するための平面図、A−A断面図およびB−B断面図である。
【図15】 基板と保持部材との接合工程を説明するための図である。
【図16】 (a)〜(f)は、保持部材と可動プレートを形成するための他の製造方法を説明するための断面図である。
【図17】 保持部材と可動プレートの分離工程を説明するための断面図である。
【図18】 (a)、(b)は電極の形成の他の方法を説明するための平面図および断面図である。
【図19】 (a)、(b)は保持部材と可動プレートの形成工程を説明するための平面図、A−A断面図およびB−B断面図である。
【図20】 (a)、(b)は保持部材の表面に突出している導電材にバンプを形成する工程を説明するための平面図および断面図である。
【図21】 電極の成形工程を説明するための断面図である。
【図22】 (a)、(b)は可動プレートの周りに保持部材を設けない構造のセンサ素子と圧力センサの製造方法を説明するための平面図および断面図である。
【図23】 (a)、(b)はダイアフラムとカバープレートの接合工程を説明するための平面図および断面図である。
【図24】 (a)、(b)は固定電極の形成工程を説明するための平面図および断面図である。
【図25】 (a)、(b)は固定電極の配線部分を保護膜によって覆う工程を説明するための平面図および断面図である。
【図26】 (a)、(b)は固定電極のパッド部に金のバンプを形成する工程を説明するための平面図および断面図である。
【図27】 (a)、(b)は可動プレートの形成工程を説明するための平面図および断面図である。
【図28】 (a)、(b)は可動プレートに電極間隔設定用溝を形成する工程を説明するための平面図および断面図である。
【図29】 (a)、(b)は可動電極の形成工程を説明するための平面図および断面図である。
【図30】 (a)、(b)はダイアフラムと可動プレート素材の接合工程を説明するための平面図および断面図である。
【図31】 (a)、(b)は可動プレートの形成工程を説明するための平面図および断面図である。
【図32】 センサ素子の封止工程を説明するための断面図である。
【図33】 従来の静電容量式圧力センサの断面図である。
【符号の説明】
20…静電容量式圧力センサ、21…基板、22…保持部材、23…ダイアフラム、23A…起歪部、23B…固定部、24…カバープレート、25…可動プレート、25A…電極形成部、25B…接続部、26…固定電極、27…可動電極、28…電極取出用ピン、31…真空室、44…圧力導入孔、46…凹陥部、47…電極形成面、48…重量軽減用孔、49…接続面、51…圧力導入室、54…過負荷防止部、55…プレート素材、60…可動プレート素材、61…分離用溝、64…電極間隔設定用溝。

Claims (11)

  1. 真空室の一部を構成するダイアフラムを備え、このダイアフラムの起歪部の弾性変形を静電容量変化として検出する静電容量式圧力センサのセンサ素子において、
    中央部が起歪部を構成し、この起歪部より外側部分が固定部を構成するダイアフラムと、
    圧力導入孔を有し、前記ダイアフラムの固定部が接合されることにより前記ダイアフラムとともに圧力導入室を形成するカバープレートと、
    電極形成部とこの電極形成部の電極形成面の中央に一体に突設した接続部を有する可動プレートとからなり、
    前記ダイアフラムの起歪部中央で前記カバープレート側とは反対側の面に前記可動プレートの接続部を接合し、前記ダイアフラムの固定部と前記可動プレートの電極形成部に固定電極と可動電極を互いに対向させて形成したことを特徴とする静電容量式圧力センサのセンサ素子。
  2. 請求項1記載の静電容量式圧力センサのセンサ素子において、
    ダイアフラム、カバープレートおよび可動プレートを同一材料によってそれぞれ形成し、これらを直接接合によって一体的に接合したことを特徴とする静電容量式圧力センサのセンサ素子。
  3. 真空室の一部を構成するダイアフラムを備え、このダイアフラムの起歪部の弾性変形を静電容量変化として検出する静電容量式圧力センサにおいて、
    圧力導入孔を有し、前記ダイアフラムの受圧面を覆うことにより前記ダイアフラムとともに圧力導入室を形成するカバープレートと、
    前記カバープレートとともに前記ダイアフラムの外周縁部を挟持する枠状の保持部を有し、前記ダイアフラムとともに前記真空室を形成する基板と、
    電極形成部とこの電極形成部の電極形成面の中央に一体に突設した接続部を有し、この接続部が前記ダイアフラムの真空室側の面で起歪部の中央に接合された可動プレートとを具備し、
    前記ダイアフラム、前記カバープレートおよび前記可動プレートによってセンサ素子を構成し、
    前記ダイアフラムの外周縁部と前記可動プレートの前記電極形成面に固定電極と可動電極を互いに対向するように設けたことを特徴とする静電容量式圧力センサ。
  4. 請求項3記載の静電容量式圧力センサにおいて、
    可動プレートの電極形成部に重量軽減用の孔を設けたことを特徴とする静電容量式圧力センサ。
  5. 請求項3または4記載の静電容量式圧力センサにおいて、
    可動プレートの変位を規制する過負荷防止部を基板に備えたことを特徴とする静電容量式圧力センサ。
  6. 請求項3,4または5記載の静電容量式圧力センサにおいて、
    カバープレートは圧力導入室用の凹陥部を有し、
    ダイアフラムは、厚みが一定の薄板状に形成されたものであって、カバープレートに接合されることにより外周縁部が固定部を形成し、この固定部より内側部分が起歪部を形成し、前記固定部の真空室側の面に固定電極が形成されていることを特徴とする静電容量式圧力センサ。
  7. 請求項3,4,5または6記載の静電容量式圧力センサにおいて、
    ダイアフラム、カバープレートおよび可動プレートを同一材料によってそれぞれ形成し、これらを直接接合によって一体的に接合することによりセンサ素子を構成したことを特徴とする静電容量式圧力センサ。
  8. 請求項7記載の静電容量式圧力センサにおいて、
    ダイアフラム、カバープレートおよび可動プレートがサファイアまたは石英によって形成されていることを特徴とする静電容量式圧力センサ。
  9. 真空室の一部を構成するダイアフラムを備え、このダイアフラムの起歪部の弾性変形を静電容量変化として検出する静電容量式圧力センサにおけるセンサ素子の製造方法において、
    ダイアフラム素材によってダイアフラムを形成する工程と、
    プレート素材によって圧力導入孔を有するカバープレートを形成する工程と、
    前記工程によって形成されたカバープレートと前記ダイアフラムの外周縁部を一体的に接合して前記ダイアフラムの外周縁部を固定部とし、この固定部より内側部分を起歪部とする工程と、
    前記ダイアフラムの固定部で前記カバープレート側とは反対側の面の外周縁部に固定電極を形成する工程と、
    可動プレート素材の一方の面で中央部以外の部分をエッチングによって除去することにより電極形成部を形成するとともに、未エッチング部分によりダイアフラムに接合される接続部を形成する工程と、
    前記可動プレート素材の前記電極形成部の電極形成面に可動電極を形成し可動プレートを形成する工程と、
    前記可動プレートの前記接続部を前記ダイアフラムの起歪部中央に接合する工程とを備えたことを特徴とするセンサ素子の製造方法。
  10. 真空室の一部を構成するダイアフラムを備え、このダイアフラムの起歪部の弾性変形を静電容量変化として検出する静電容量式圧力センサにおけるセンサ素子の製造方法において、
    ダイアフラム素材によって厚みが一定のダイアフラムを形成する工程と、
    プレート素材によって圧力導入孔と、圧力導入室用の凹陥部を有するカバープレートを形成する工程と、
    前記工程によって形成されたカバープレートと前記ダイアフラムの外周縁部を一体的に接合して前記ダイアフラムの外周縁部を固定部とし、この固定部より内側部分を起歪部とする工程と、
    前記ダイアフラムの固定部で前記カバープレート側とは反対側の面の外周縁部に固定電極を形成する工程と、
    可動プレート素材の一方の面にダイアフラムの起歪部より大きい環状の分離用溝と、この分離用溝より外側に位置するピン用挿通孔を形成する工程と、
    前記可動プレート素材の前記一方の面で前記分離用溝より内側部分をドライエッチングによって環状に除去して電極形成部を形成し、未エッチング部分によりダイアフラムに接合される接続部を形成する工程と、
    前記可動プレート素材の前記電極形成部の電極形成面に可動電極を形成する工程と、
    前記可動プレート素材の前記接続部と前記分離用溝より外側部分を前記ダイアフラムの起歪部と固定部に接合する工程と、
    前記可動プレート素材の前記ダイアフラム側とは反対側の面をドライエッチングによって所定深さ除去して前記分離用溝の閉塞端を開放させることにより、可動プレート素材を前記分離用溝より外側と内側の部分とに分離して基板の保持部と可動プレートを形成する工程と、
    を備えたことを特徴とするセンサ素子の製造方法。
  11. 請求項10記載の静電容量式圧力センサにおけるセンサ素子の製造方法において、
    可動プレート素材が、接合面に環状の第1分離用溝が形成された第1のプレート素材と、この第1のプレート素材と同一材料からなり、第1のプレート素材との接合面に環状の第2分離用溝が形成され、第1のプレート素材に対して直接接合される第2のプレート素材とからなり、
    前記第1または第2のプレート素材の接合面に前記第1分離用溝と第2分離用溝を互いに接続する連通溝が形成されていることを特徴とするセンサ素子の製造方法。
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