JP3756233B2 - 生分解性複合分割繊維及びこれを用いた繊維シート - Google Patents

生分解性複合分割繊維及びこれを用いた繊維シート Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は乳酸成分とジカルボン酸成分及びジオール成分を構造単位として含む乳酸系共重合ポリエステルと、該乳酸系共重合ポリエステルと分割可能な結晶性を示す生分解性重合体とを用いた、燃焼発熱量が低く、貯蔵安定性が良く、臭気の少ない緻密で均一な生分解性の複合分割繊維及びその生分解性複合分割繊維を用いた繊維シートに関するものである。
【0002】
本発明の生分解性複合分割繊維を用いた繊維シートは、保温・保水・養生・防鳥用シート、マルチ用シート、植木の根巻き用シート、肥料袋などの農業用資材、植生シートなどの土木用資材、紙おむつ、マスク、生理用品、パップ材の基布などの衛生用材料、使い捨ておしぼり、ワイピングクロス、生ごみ収集袋、空調用フィルターなどの種々の分野で有用である。
【0003】
また、本発明の繊維シートは、例えば、自然環境下で放置すると、加水分解、微生物などにより分解され、また、焼却された場合も、その燃焼発熱量が低いために、自然環境保護の観点から好ましいものである。
【0004】
【従来の技術】
近年、プラスチックは、耐久性、ソフトな風合い、熱融着性などの特性に優れるため、それらの特性を活かした、多岐の分野に多量に使用されている。しかしながら、それらの廃棄物は自然環境下では殆ど分解されないため、自然界に蓄積され、河川、海洋、土壌汚染などの問題を生じ、大きな社会問題になっている。
【0005】
この環境汚染を抑制する手段として、水中や土中の微生物により分解され、自然界の物質循環系に組み込まれ、環境を汚染しない生分解性を有するプラスチックの開発が望まれており、微生物産生の3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシバリレートとの共重合ポリエステル、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ジカルボン酸とジオールから成る脂肪族ポリエステル、天然高分子の澱粉と変性ポリビニルアルコールとのブレンド物などが知られている。
【0006】
また、これらのポリマーやブレンド物から成る繊維や不織布に関しては、特開平6−207323号公報、6−207324号公報、6−248511号公報、6−248516号公報に開示されている。
【0007】
しかしながら、微生物産生の3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシバリレートとの共重合ポリエステルでは、生分解性は優れるものの、熱分解温度が融点に近いため成形加工性が難しく、成形収縮が大きく、しかも、得られた不織布は脆く、臭いが強く、実用上問題がある。
【0008】
ポリ乳酸は高融点で、剛性に優れるが、その反面では柔軟性に劣り、しかも、その中にはラクチドが多く残留されているため、熱安定性が劣り、成形加工時には熱により分子量低下を起こし、成形加工装置や成形加工品にラクチドなどが付着し成形加工装置のトラブルの原因となり易い。これはラクチドが大気中の水分等により有機酸となりポリマーを切断するためである。
【0009】
ポリカプロラクトンは柔軟性に優れるが、融点が約60℃と低く、耐熱性に劣る。また、脂肪族ジカルボン酸とジオールから成る脂肪族ポリエステルも柔軟性は良好であるが、融点が90℃〜110℃と低く、加工上、実用上の制約を受ける。また天然高分子の澱粉と変性ポリビニルアルコールとのブレンド物は生分解性、成形加工性は比較的良好であるが、強度、耐水性、貯蔵安定性が劣り、使用上かなりの制約を受ける。
【0010】
上述のように、これらの生分解性ポリマ−から成る繊維及び繊維シートは、その物性、成形加工性、熱安定性、貯蔵安定性、発生臭気の問題などが、未だ不十分のために、用途面でかなりの制約があり、用途に応じて広い範囲で、その物性を変えられる生分解性ポリマーからなる繊維及び繊維シートが求められていた。また、従来の生分解性ポリマーから成る繊維では微細な繊維が得にくく、緻密で均一な繊維シートの形成が困難であるという問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明が解決しようとする課題は、燃焼発熱量が低く、貯蔵安定性が良く、臭気の少ない緻密で均一な生分解性の乳酸系共重合ポリエステルから成る細繊維化可能な繊維及び該繊維を含む繊維シートを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、乳酸成分及び乳酸成分との共重合成分、共重合条件、紡糸条件、繊維シート化条件などを検討した結果、良好な生分解性を保持しつつ、風合いが良く、十分な柔軟性、耐熱性、機械的強度を有し、また、貯蔵時に物性の低下がなく安定で、しかも成形加工性に優れ、臭気が少なく緻密で均一な乳酸系共重合ポリエステルから成る細繊維化可能な繊維及び該繊維を含む繊維シートを得て、本発明を完成するに到った。
【0013】
即ち、本発明は、総乳酸中若しくは総ラクチド中に、L体或いはD体を70%以上含む光学活性な乳酸成分(A)と、脂肪族ジカルボン酸成分(B)と脂肪族ジオール成分(C)とを反応させ、次いで多価カルボン酸、金属錯体、エポキシ化合物、イソシアネート及び酸性リン酸エステル類から成る群から選ばれる高分子量化剤(D)を反応させて得られる、融点が110℃〜190℃の乳酸系共重合ポリエステルと、脂肪族ポリエステル系重合体及び/又は脂肪族ポリエステルアミド系共重合体からなる結晶性の生分解性重合体からなることを特徴とする生分解性複合分割繊維である。
【0016】
更に、本発明はこれらの本発明の生分解性分割複合繊維を含むことを特徴とする繊維シートを含むものである。
【0017】
また本発明は、本発明の生分解性複合分割繊維に含まれる乳酸系共重合ポリエステルよりも融点が20〜70℃低い低融点乳酸系共重合ポリエステルを含む生分解性熱融着性繊維を、生分解性複合分割繊維と混合して用いたことを特徴とする繊維シートや、生分解性熱融着性繊維が、低融点乳酸系共重合ポリエステルと、それよりも融点が高い乳酸系共重合ポリエステルとからなる複合繊維であることを特徴とする繊維シートをも含むものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
本発明で使用する乳酸系共重合ポリエステルは、乳酸成分と、ジカルボン酸成分とジオール成分とを構造単位として含むものである。
【0019】
その製造方法としては、ジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルと、乳酸の脱水環状二量体であるラクチドとを、開環重合触媒の存在下で共重合やエステル交換反応する方法や、また乳酸成分、ジカルボン酸成分とジオール成分を触媒の存在下で脱水、脱グリコールによる縮重合する方法、
【0020】
もしくはラクチドを原料として得られるか、或いは溶剤の共存或いは非存在下で乳酸を縮合して得られるポリ乳酸と、ジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルとをエステル交換触媒の共存下にエステル交換する方法などが挙げられる。
【0021】
また、本発明で使用する高分子量化剤を含む乳酸系共重合ポリエステルの製造方法に於ける高分子量化剤の添加時期は、高分子量化剤の種類により異なるが、多価カルボン酸、金属錯体、エポキシ化合物、イソシアネートなどの高分子量化剤(I)は、重合の前工程、中工程、後工程、重合後の脱揮工程、押出工程、加工工程などいずれの工程で添加しても良く、酸性リン酸エステル類、キレート剤などの高分子量化剤(II)は、重合工程の末期、脱揮工程、押出工程、加工工程などで添加することが好ましい。
【0022】
より具体的には、特に、ジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルに、高分子量化剤(I)を反応させた後、ラクチドを開環重合触媒の存在下で共重合する方法、また、ジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルとラクチドとを開環重合触媒の存在下で共重合して得られた乳酸系共重合ポリエステルに、高分子量化剤(I)及び/又は(II)を反応させる方法、
【0023】
乳酸成分、ジカルボン酸成分、ジオール成分と高分子量化剤(I)とを触媒の存在下で脱水、脱グリコールによる縮重合やエステル交換反応させる方法、乳酸成分、ジカルボン酸成分とジオール成分を触媒の存在下で脱水、脱グリコールによる縮重合やエステル交換反応して得られた共重合体に高分子量化剤(I)及び/又は(II)を反応させる方法などが挙げられる。
【0024】
また、ラクチドを原料として得られたポリ乳酸、或いは乳酸を溶剤の共存或いは非存在下で縮重合して得られたポリ乳酸と、ジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルとを、高分子量化剤(I)及び/又は(II)と、エステル交換触媒の共存下にエステル交換させる方法、ラクチドを原料として得られたポリ乳酸、或いは乳酸を溶剤の共存或いは非存在下で縮重合して得られたポリ乳酸と、ジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルとをエステル交換触媒の共存下でエステル交換後、得られた乳酸系共重合ポリエステルに高分子量化剤(I)及び/又は(II)を反応せせる方法などが挙げられる。
【0025】
特に、乳酸系共重合ポリエステル中のラクチドなどの残留揮発分を低減する方法としては、高分子量化剤を添加、反応後、減圧下で揮発分を脱揮除去することが好ましく、特に、高分子量化剤(II)を使用した場合には、残留ラクチドの低減に大きな効果が得られる。
【0026】
本発明に用いる乳酸系共重合ポリエステルの製造には、その生分解性、並びに物性を損なわない範囲で、乳酸以外のヒドロキシカルボン酸成分、多価アルコール成分、ラクチド以外の環状エステルなどを含んでも良い。その添加時期は特に限定されないが、ジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルを製造するときや該ポリエステルとラクチドとを共重合して乳酸系共重合ポリエステルを製造するときなどが好ましい。
【0027】
また、重合中の粘度を下げ、攪拌効率を高め、良好な品質を得るため、製造工程では、反応成分と不活性な溶剤を使用することができる。使用できる溶剤の例として、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、シクロヘキサノン、ジフェニールエーテルなどが挙げられる。その添加量は製造方法、製造条件、反応成分の種類、組成などにより異なるが、乳酸系共重合ポリエステルに対して通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
【0028】
本発明の乳酸系共重合ポリエステルの製造時に、使用される開環重合触媒、エステル交換触媒としては、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属及びその化合物が挙げられ、金属化合物については、特に、金属有機化合物、炭酸塩、ハロゲン化物が好ましい。
【0029】
具体的にはオクタン酸錫、塩化錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、ジアセトアセトキシオキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムなどが適している。その添加量は、反応成分の全量に対し、0.001重量%〜1.0重量%が好ましい。更に、反応速度、着色などから、その添加量は、0.002重量%〜0.5重量%が好ましい。
【0030】
また、ジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルの製造時に使用される触媒としては、錫、亜鉛、チタン、ジルコニウムなどの金属及びその化合物が好ましく、具体的には、オクタン酸錫、塩化錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、ジアセトアセトキシオキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。
【0031】
これらはポリエステルに対して0.001重量%〜0.5重量%、好ましくは0.002重量%〜0.1重量%をエステル化の最初から、或いは脱グリコール反応の直前に加えることが好ましい。
【0032】
また、本発明で用いられる乳酸系共重合ポリエステルには、公知慣用の、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、ワックス類、着色剤、結晶化促進剤などを、重合の前工程、中工程、後工程、重合後の脱揮工程、押出工程などに添加しても良い。それらの添加量は、通常0.001重量%〜1重量%が好ましい。
【0033】
具体的には、酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネートなどを、
【0034】
熱安定剤としては、トリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどを、紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノンなどを、
【0035】
滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸ナトリウムなどを、帯電防止剤としては、N,N−ビス(ヒドリキシエチル)アルキルアミン、アルキルアミン、アルキルアリルスルフォネート、アルキルスルフォネートなどを、難燃剤としては、ヘキサブロモシクロドデカン、トリス−(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、ペンタブロモフェニルアリルエーテルなどが挙げられる。
【0036】
本発明に用いる乳酸系共重合ポリエステルを製造する際の反応温度は、共重合成分であるポリエステル、環状エステルなどの種類、量及び組合せなどにより異なるが、通常125℃〜270℃、好ましくは140℃〜250℃、更に好ましくは150℃〜240℃である。
【0037】
得られる乳酸系共重合ポリエステルの分解、着色を抑制するため、反応の雰囲気は水分の無い乾燥した状態、例えば、窒素、アルゴン、ガス雰囲気下、あるいはバブリング状態で反応を行う。使用原料も水分を除去し、乾燥させておく必要がある。
【0038】
得られた乳酸系共重合ポリエステル中の未反応成分、とりわけラクチドや溶剤などの揮発分は、脱揮槽、フィルムエバポレーター、ベント付押出機などの重合工程後に取付けられた脱揮装置で除去するか、アルコール、ケトン、炭化水素などの溶剤を用いて、溶解、浸漬或いは分散後抽出させて除去する。このような方法により、乳酸系共重合ポリエステル中の残留ラクチドを1重量%以下、必要に応じて、0.5重量%以下にすることができる。これらの処理は、成形加工上、或いは生分割性複合分割繊維の耐熱性、貯蔵安定性を高め、臭いを低減させることから好ましい。
【0039】
以下に、本発明で使用する乳酸系共重合ポリエステルの成分組成について順に説明する。本発明の乳酸成分、ジカルボン酸成分とジオール成分の比率については、良好な耐熱性を保持するためには、乳酸成分と、ジカルボン酸成分とジオール成分との合計成分との比率として99/1〜40/60が好ましい。
【0040】
また、本発明で、優れた耐熱性を有する乳酸系共重合ポリエステルを得るためには、乳酸成分の光学活性は高いことが必要である。具体的には本発明の乳酸系共重合ポリエステルの構造成分の乳酸成分として、総乳酸中に、L体或いはD体が70%以上含まれることが必要である。更に高い耐熱性を得るためには、L体或いはD体が80%以上であることが好ましい。また、ラクチドについても、総ラクチド中に、L体或いはD体が70%以上含まれることが必要である。更に高い耐熱性を得るためには、L体或いはD体が80%以上であることが好ましい。
【0041】
とりわけ、商業的にはL−乳酸の方が発酵法により安価で、高純度のものが得られるため、乳酸系ポ共重合リエステルの構造成分の乳酸成分としては、Lー乳酸を、ラクチドとしてはLーラクチドを使用することが好ましい。
【0042】
また、高分子量化剤としては、乳酸成分、ジカルボン酸成分とジオール成分との合計成分の0.001重量%〜5重量%、更に好ましくは0.01重量%〜2重量%であることが好ましい。5重量%を越えるときには乳酸系共重合ポリエステルが、ゲル化したり、着色したり、粘度低下を起こすことから好ましくない。0.001重量%では乳酸系共重合ポリエステルの高分子量化の効果が少なく、柔軟性、機械的強度、成形加工性などに十分の効果が認められない。
【0043】
本発明の生分解性複合分割繊維に用いられる乳酸系共重合ポリエステルは、ある程度以上の分子量があることが好ましく、具体的に重量平均分子量で2万〜40万であり、更に好ましくは3万〜20万である。2万未満では繊維としての強度が不十分であり、40万を越えると成形加工上、生産効率上問題があり好ましくない。
【0044】
乳酸系共重合ポリエステル中のジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、具体的にはコハク酸、メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、メチルグルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸、(無水)マレイン酸、フマル酸など又はそれらの混合物が挙げられる。
【0045】
乳酸系共重合ポリエステル中のジオール成分に関しては、ジオールであれば特に種類は問わないが、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、オクタンジオール、
【0046】
ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、水添ビスフェノールA等又はそれらの混合物が挙げられる。
【0047】
とりわけ、乳酸系共重合ポリエステル中のジカルボン酸成分、ジオール成分として、脂肪族ジカルボン酸成分、脂肪族ジオール成分を使用したときには生分解性に優れる。更に、ジカルボン酸成分、ジオール成分として、分岐鎖を有するものは、それから得られた繊維及び繊維シートが染色性に優れることから、好ましい。
【0048】
更に、ジオール成分としてポリアルキレングリコールを用いたときには、優れた柔軟性を有する乳酸系共重合ポリエステルを得ることができる。具体的には分子量200〜20,000を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、又はそれらの混合物が挙げられる。とりわけ、柔軟性に加え染色性を高めるためには分岐鎖を有するポリプロピレングリコールなどが好ましい。
【0049】
また、高分子量化剤としては多価カルボン酸、金属錯体、エポキシ化合物、イソシアネート、酸性燐酸エステル類、キレート剤などが挙げられ、それらを単独或いは混合して使用することができる。多価カルボン酸、金属錯体、エポキシ化合物、イソシアネート、キレート剤が特に好ましい。
【0050】
多価カルボン酸としては、(無水)フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)トリメリット酸、トリメチルアジピン酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、大日本インキ化学工業株式会社製のエピクロン4400など及びそれらの混合物が挙げられる。特に、3官能以上カルボン酸は高分子量化に有効である。
【0051】
金属錯体としては、蟻酸リチウム、ナトリウムメトキシド、プロピオン酸カリウム、マグネシウムエトキシド、プロピオン酸カルシウム、マンガンアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシド、テトラブトキシチタンが好ましく、とりわけ、2価以上の金属錯体が更に好ましい。
【0052】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ο−フタル酸ジグリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4エポキシシクロヘキシル)アジペート、テトラデカン−1,14−ジカルボン酸グリシジルエステルなどを用いることができる。
【0053】
イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ジイソシアネート修飾したポリエーテル、ジイソシアネート修飾したポリエステル、多価アルコールに2官能性イソシアネートで修飾した化合物、多価イソシアネートで修飾したポリエーテル、多価イソシアネートで修飾したポリエステル、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0054】
酸性リン酸エステル類としては、酸性リン酸エステル、ホスホン酸エステル、アルキルホスホン酸などである。具体的には、酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノエチル、リン酸ジエチル、リン酸モノプロピル、リン酸ジプロピル、リン酸モノイソプロピル、リン酸ジイソプロピル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸モノペンチル、リン酸ジペンチル、リン酸モノヘキシル、リン酸ジヘキシル、リン酸モノオクチル、
【0055】
リン酸ジオクチル、リン酸モノエチルヘキシル、リン酸ジエチルヘキシル、リン酸モノデシル、リン酸ジデシル、リン酸モノイソデシル、リン酸ジイソデシル、リン酸モノウンデシル、リン酸ジウンデシル、リン酸モノドデシル、リン酸ジドデシル、リン酸モノテトラデシル、リン酸ジテトラデシル、リン酸モノヘキサデシル、リン酸ジヘキサデシル、リン酸モノオクタデシル、リン酸ジオクタデシル、リン酸モノフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノベンジル、リン酸ジベンジルなど、
【0056】
ホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸モノメチル、ホスホン酸モノエチル、ホスホン酸モノプロピル、ホスホン酸モノイソプロピル、ホスホン酸モノブチル、ホスホン酸モノペンチル、ホスホン酸モノヘキシル、ホスホン酸モノオクチル、ホスホン酸モノエチルヘキシル、ホスホン酸モノデシル、ホスホン酸モノイソデシル、ホスホン酸モノウンデシル、ホスホン酸モノドデシル、ホスホン酸モノテトラデシル、ホスホン酸モノヘキサデシル、ホスホン酸モノオクタデシル、ホスホン酸モノフェニル、ホスホン酸モノベンジルなど、
【0057】
アルキルホスホン酸としては、モノメチルホスホン酸、ジメチルホスホン酸、モノエチルホスホン酸、ジエチルホスホン酸、モノプロピルホスホン酸、ジプロピルホスホン酸、モノイソプロピルホスホン酸、ジイソプロピルホスホン酸、モノブチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸、モノペンチルホスホン酸、ジペンチルホスホン酸、モノヘキシルホスホン酸、ジヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、モノエチルヘキシルホスホン酸、ジエチルヘキシルホスホン酸、モノデシルホスホン酸、ジデシルホスホン酸、
【0058】
モノイソデシルホスホン酸、ジイソデシルホスホン酸、モノウンデシルホスホン酸、ジウンデシルホスホン酸、モノドデシルホスホン酸、ジドデシルホスホン酸、モノテトラデシルホスホン酸、ジテトラデシルホスホン酸、モノヘキサデシルホスホン酸、ジヘキサデシルホスホン酸、モノオクタデシルホスホン酸、ジオクタデシルホスホン酸などや、モノフェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸、モノベンジルホスホン酸、ジベンジルホスホン酸など、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0059】
本発明で使用できるキレート剤としては、有機系キレート剤と無機系キレート剤がある。有機系キレート剤は、吸湿性が少なく、熱安定性に優れれる。使用できる有機系キレートとしては、特に、限定されないが、アミノ酸、フェノール類、ヒドロキシカルボン酸、ジケトン類、アミン類、オキシム、フェナントロリン類、ピリジン化合物、ジチオ化合物、配位原子としてN含有フェノール、配位原子としてN含有カルボン酸、ジアゾ化合物、チオール類、ポルフィリン類などが挙げられる。
【0060】
それらは、乳酸系共重合ポリエステル中に含有される触媒の金属イオンと錯体を形成して触媒活性を失わせるものである。
具体的には、アミノ酸としてはグリシン、ロイシン、アラニン、セリン、α−アミノ酪酸、アセチルアミノ酢酸、グリシルグリシン、グルタミン酸など、フェノール類としてはアリザリン、t−ブチルカテコール、4−イソプロピルトリポロン、クロモトロープ酸、タイロン、オキシン、没食子酸プロピルなど、
【0061】
ヒドロキシカルボン酸としては酒石酸、シュウ酸、クエン酸、クエン酸モノオクチル、ジベンゾイル−D−酒石酸、ジパラトルオイル−D−酒石酸など、ジケトン類としては、アセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、テノイルトリフルオロアセトン、トリフルオロアセチルアセトンなど、
【0062】
アミン類としてはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,2,3−トリアミノプロパン、チオジエチルアミン、トリエチレンテトラミン、トリエタノールアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなど、オキシムとしてはジメチルグリオキシム、α,α−フリルジオキシム、サリチルアルドキシムなど、フェナントロリン類としてはネオクプロイン、
【0063】
1,10−フェナントロリンなど、ピリジン化合物としては2,2−ピピリジン、2,2‘,2“−テルピリジルなど、ジチオ化合物としてはキサントゲン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、トルエン−3,4−ジチオールなど、配位原子N含有フェノールとしては、o−アミノフェノール、オキシン、ニトロソR塩、2−ニトロソ−5−ジメチルアミノフェノール、1−ニトロソ−2−ナフトール、8−セレノキノリンなど、
【0064】
配位原子N含有カルボン酸としてはキナルジン酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、アニリン二酢酸、2−スルホアニリン二酢酸、3−スルホアニリン二酢酸、
【0065】
4−スルホアニリン二酢酸、2−アミノ安息香酸−N,N−二酢酸、3−アミノ安息香酸−N,N−二酢酸、4−アミノ安息香酸−N,N−二酢酸、メチルアミン二酢酸、β−アラニン−N,N−二酢酸、β−アミノエチルスルホン酸−N,N−二酢酸、β−アミノエチルホスホン酸−N,N−二酢酸など、
【0066】
ジアゾ化合物としてはジフェニルカルバゾン、マグネソン、ジチゾン、エリオクロムブラックT、4−(2−チアゾリルアゾ)レゾルシン、1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトールなど、チオール類としてはチオオキシン、チオナリド、1,1,1−トリフルオロ−4−(2−チエニル)−4−メルカプト−3−ブテン−2−オン、3−メルカプト−p−クレゾールなど、
【0067】
ポルフィリン類としてはテトラフェニルポルフィン、テトラキス(4−N−メチルピリジン)ポルフィンなど、その他としてクペロン、ムレキシド、ポリエチレンイミン、ポリメチルアクリロイルアセトン、ポリアクリル酸など及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0068】
無機系キレート剤は、吸湿性が高く、吸湿すると、効果がなくなるため、取り扱いに注意が必要である。具体的には、リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などのリン酸類を挙げることができる。
【0069】
このような高分子量化剤は、その添加により単に乳酸系共重合ポリエステルの高分子量化を図れるのみならず、熱による分子量低下を抑制できる上で効果的であり、高分子量化剤の種類、組合せ、添加量などにより、その分子量や熱安定性を改善することができる。
【0070】
特に、多価カルボン酸、金属錯体、エポキシ化合物、イソシアネートなどの高分子量化剤は乳酸系共重合ポリエステルの重合工程、脱揮工程、押出工程、加工工程などに添加、乳酸系共重合ポリエステルと反応させて、その高分子量化を図るのに効果があり、酸性リン酸エステル類、キレート剤などは重合終了後に添加、反応させ、成形加工などでのその熱分解抑制に特に効果を示す。また、高分子量化剤の中でも脂肪族化合物を使用したものは生分解性に優れる利点を有する。
【0071】
また、共重合成分として、乳酸以外のヒドロキシカルボン酸成分を使用することにより、概して結晶化度、耐熱性などは低下し、乳酸系共重合ポリエステルから得られる繊維の、柔軟性、結晶化度、耐熱性などを調節することができる。
【0072】
該ヒドロキシカルボン酸成分としては、特に限定されないが、具体的には、グリコール酸、ジメチルグリコール酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシカプロン酸、4−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシメチルカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシメチルカプロン酸など及びそれらの混合物を使用することができる。
【0073】
更に、乳酸系共重合ポリエステルの重合工程、成形加工工程などでの溶融粘度調節剤として、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールなどを構成成分として含んでもよい。
【0074】
また、共重合成分の環状エステルとして、グリコリドなどのヒドロキシカルボン酸の分子間環状二量体、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ウンデカラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸の分子内環状エステル類などを単独或いは混合して使用することができる。これらの環状エステルの共重合により柔軟性を増したり、融点を低下させることができる。
【0075】
本発明の結晶性の生分解性重合体の結晶性とは、例えば、示差走査型熱量計(DSC)などの熱分析法において、ガラス転移温度、結晶化温度、及び融解温度を示すものをいい、結晶性の生分解性重合体成分としては特に限定するものではないが、例えば、脂肪族ポリエステル系重合体や脂肪族ポリエステルアミド系共重合体などを使用できる。
【0076】
これら重合体は熱可塑性で、細繊維化後に接着成分として作用できるので、好適に使用できる。より具体的には、脂肪族ポリエステル系重合体として、例えば、グリコール酸や乳酸などのα−ヒドロキシ酸の重合体又は共重合体、ε−カプロラクトンやβ−プロピオラクトンなどのω−ヒドロキシアルカノエート重合体又は共重合体、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシバリレート、4−ヒドロキシブチレートなどのβ−ヒドロキシアルカノエートの重合体又は共重合体、
【0077】
ポリエチレンアゼレート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレートなどのジオールとジカルボン酸の縮重合体又は共重合体などがある。
【0078】
脂肪族ポリエステルアミド系共重合体としては、上記脂肪族ポリエステル系重合体に、カプロラクタム、メチルカプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、カプラミド、テトラメチレンアジパミド、ウンデカナミド、ラウロラクタミド、ヘキサメチレンアジパミドなどの脂肪族アミドを共重合したものがある。これらの中でもジオールとジカルボン酸の脂肪族ポリエステル系縮重合体又は共重合体、特にポリエチレンサクシネートやポリブチレンサクシネートは紡糸性に優れているため、結晶性の生分解性重合体成分として好適である。
【0079】
本発明の生分解性複合分割繊維は、上記の乳酸系共重合ポリエステルと、結晶性の生分解性重合体とからなり、機械的外力又は化学的処理により各成分ごとに分割し、細繊維化することができる。分割は、繊維全体が乳酸系共重合体成分と結晶性の生分解性重合体成分とに完全に分割してもよいし、繊維の一部分が分割し、他の部分が結合したままになってもよい。
【0080】
本発明の生分解性複合分割繊維は、繊維断面で見た場合に、乳酸系共重合ポリエステル成分1と結晶性の生分解性重合体成分2とが、お互いに相手の領域を分割する関係で配置されていることが望ましい。乳酸系共重合ポリエステル成分1と結晶性の生分解性重合体成分2との配置はとくに限定されないが、例えば、図1の(a)〜(e)に示す繊維断面模型図のように配置することができる。
【0081】
また、このような繊維断面形状は繊維の長手方向に連続して、分割後に細繊維を形成することが望ましい。例えば図1の(a)では、16分割する例が示されているが、分割数はとくに限定されず、2以上であればよい。ただし、一般には分割数が増えるに従って細い繊維が得られるので、技術的に可能な範囲で分割数が多い方が好ましい。
【0082】
分割後の繊維(一部が分割している場合は、分割した部分のひとつの分岐)の直径は20μm以下であることが望ましく、好適には10μm以下、より好適には6μm以下であることが望ましい。なお、図1に円形断面の生分解性複合分割繊維の例を示すが、繊維の断面形状は円形に限られず、楕円形状、長円形状、多角形状、ひょうたん形状などの非円形状でもよく、とくに限定されない。
【0083】
このような乳酸系共重合ポリエステル成分と結晶性の生分解性重合体成分とから成る複合分割繊維は、通常の複合紡糸法により形成することができる。例えば、図1の(a)に示した断面形状を有する複合分割繊維を紡糸する場合には、小孔から結晶性の生分解性重合体成分融液を押出すと共に、結晶性の生分解性重合体成分融液を押出す小孔間に位置する小孔から、乳酸系共重合体ポリエステル成分融液を押出した後、複合し延伸して形成することができる。なお、結晶性の生分解性重合体成分と乳酸系共重合体ポリエステル成分との容積比は複合分割繊維の構造により異なるが、一般的に0.1:99.9〜99.9:0.1である。
【0084】
以下に、本発明の生分解性複合分割繊維の製造方法の一例について説明する。本発明に用いる乳酸系共重合ポリエステル成分と結晶性の生分解性重合体成分とから成る生分解性複合分割繊維のステープル・ファイバーは、前記の乳酸系共重合ポリエステル成分と結晶性の生分解性重合体成分とを所定の配置で溶融紡糸し、延伸した後、機械的に捲縮加工し切断することにより製造することができる。
【0085】
溶融紡糸の温度は、本発明に用いる乳酸系共重合ポリエステル及び結晶性の生分解性重合体の融点ならびに熱分解開始温度を考慮して、170〜300℃、好ましくは170〜250℃とすることが望ましい。紡糸温度が170℃未満では溶融押出しが困難であり、300℃を越えると分解が顕著となり、捲縮特性に優れた高強度のステープル・ファイバーを得ることが困難となる。
【0086】
溶融紡糸された糸条は結晶化温度以下に急冷される。この場合、乳酸系共重合ポリエステル及び結晶性の生分解性重合体の融点は一般に低く、結晶化温度は約60〜130℃の範囲にあるため、ノズルから引取りローラーまでのドラフト過程で一定の配向結晶化を促進させるように十分に冷却しないと、得られる糸条の機械的強度や捲縮特性が劣ったものとなる。
【0087】
冷却された糸条は、一旦巻き取った後又は巻取らずにそのまま1段又は2段以上で、室温〜100℃で延伸される。延伸倍率は、紡糸速度と目的とするステープル・ファイバーの要求性能により異なり、2.0g/d以上の引張強度と100%以下の切断伸度とを有する繊維が得られるように設定される。引張強度が2.0g/d未満であると加工工程でトラブルが発生したりして好ましくない。また、切断伸度が100%を越えると捲縮特性、特に捲縮率が劣ったものとなり、実用に供することが困難となる。
【0088】
次に、上記の延伸糸をスタッフィングボックス法、押込加熱ギア法又は高速エアー噴射押込法などにより16〜70コ/51mm、好ましくは20〜60コ/51mmの捲縮を付与し、20〜100mmの長さに切断する。この場合、捲縮数が16コ/51mm未満では、そ綿工程で未開繊部が生じやすく、70コ/51mmを越えるとネップが発生しやすい。また、捲縮度が5.0%以上となるようにすることが必要であり、捲縮度が5.0%未満であると次工程でカードにかける際に抱合性が悪いためウェブに密度斑が生じやすい。
【0089】
このようにして得られる本発明のステープル・ファイバーは、110℃以上の耐熱性を有し、前述のように優れた捲縮特性と強伸度特性と生分解性を有するものである。なお、通常ステープル・ファイバーの単繊維繊度は1.0〜20デニールのものであり、単繊維繊度が1.0デニール未満であるとカードウェブを作成するに際してのカード通過性が劣ったり、あるいはこの短繊維を用いて得られるウェブが斑の多いものとなり、一方、単繊維繊度が20デニールを越えるとこの短繊維を用いて得られる不織布が粗硬な地合の粗いものとなってその品位が劣るため、いずれも好ましくない。
【0090】
乳酸系共重合ポリエステル及び結晶性の生分解性重合体は、紡糸前に乾燥機により乾燥し、紡糸機に供給することが好ましい。適正な紡糸温度は使用する乳酸系共重合ポリエステル及び結晶性の生分解性重合体によって異なるが、流動可能な温度であることが望ましい。
【0091】
また本発明の乳酸系共重合ポリエステルと結晶性の生分解性重合体から成る複合体を紡糸する際に、必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、ワックス類、着色剤、結晶化促進剤などを併用できることは勿論である。
【0092】
即ち、酸化防止剤としては、p−tブチルヒドロキシトルエン、p−tブチルヒドロキシアニソールなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤など、
【0093】
熱安定剤としては、トリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなど、紫外線吸収剤としては、p−tブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノンなど、滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸ナトリウムなど、
【0094】
帯電防止剤としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アルキルアミン、アルキルアミン、アルキルアリルスルホネート、アルキルスルホネートなど、難燃剤として、ヘキサブロモシクロドデカン、トリス−(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、ペンタブロモフェニルアリルエーテル等があげられる。
【0095】
以上のような生分解性複合分割繊維を含む、織物、編物、不織布などの繊維シートを形成した後に複合分割繊維を分割して細繊維化する、又は、複合分割繊維を分割して細繊維化した後に繊維シートを形成して、緻密で均一な繊維シートを形成することができるが、前者の形成方法の方が、製造上、取り扱い易く、より緻密で均一な繊維シートを形成しやすいので好適である。
【0096】
これら繊維シートの中でも、不織布は製造方法により、多種多様のものを形成できるので、より好適である。この生分解性複合分割繊維は緻密で均一な繊維シートを形成できるように、繊維シート中、20重量%以上含まれているのが好ましく、40重量%以上含まれているのがより好ましく、70重量%以上含まれているのが最も好ましい。
【0097】
なお、本発明の生分解性複合分割繊維以外の繊維として、例えば、レーヨン繊維などの再生繊維、アセテート繊維などの半合成繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維、綿などの植物繊維、羊毛などの動物繊維などを使用できる。
【0098】
不織布の製造方法について説明すれば、まず、湿式抄紙法、カード法、エアレイ法などの乾式法、或はスパンボンド法、メルトブロー法などの直接法により繊維ウェブを形成する。なお、湿式抄紙法による場合には、繊維長1〜25mm程度の繊維を使用し、乾式法による場合には、繊維長20〜110mm程度の繊維を使用する。なお、乾式法、湿式法、或は直接法により得た繊維ウェブを、適宜組み合わせても良い。
【0099】
なお、カード法により繊維ウェブを形成する場合、カード機で開繊され、一方向に配向した一方向性の繊維ウェブでも良いが、この一方向性の繊維ウェブを、クロスレイヤーなどにより、繊維ウェブの流れ方向に対して、交差するように配向させた交差繊維ウェブを使用すると、幅方向の強度にも優れた不織布とすることができる。また、この一方向性の繊維ウェブと交差繊維ウェブとを積層しても良い。
【0100】
次いで、この繊維ウェブを結合及び/又は絡合して不織布を形成できる。前者の絡合方法としては、例えば、エマルジョン、粉末などのバインダーで結合したり、繊維ウェブ中に含まれる熱融着性繊維(複合繊維の結晶性成分又は非晶性成分も含む)により結合する方法があり、後者の絡合方法としては、例えば、ニードルパンチや高圧水流による方法があり、これらの結合方法と絡合方法を適宜組み合わせても良い。これらの中でも、高圧水流により絡合する方法は、生分解性複合分割繊維を絡合すると同時に分割して細繊維化できるので好適である。
【0101】
なお、熱融着性繊維として、生分解性複合分割繊維に含まれる乳酸系共重合ポリエステルよりも融点が20〜70℃低い低融点乳酸系共重合ポリエステルからなる生分解性熱融着性繊維、またはこの低融点乳酸系共重合ポリエステルとこれより融点が高い乳酸系共重合ポリエステルとからなる、サイドバイサイド型、芯鞘型、偏芯芯鞘型、海島型などの生分解性熱融着性複合繊維が利用できる。
【0102】
生分解性複合分割繊維に含まれる乳酸系共重合ポリエステルと低融点乳酸系共重合ポリエステルとの融点の差が、20℃未満では熱融着が困難であり、フィルム状となって全融着してしまう。また、融点の差が70℃を越えると、熱融着性繊維の紡糸が困難となりノズル出口で破断しやすく、延伸性が悪い。これらの生分解性熱融着性繊維は、繊維間を熱融着により結合できるだけでなく、それ自体も生分解性を有するため、本発明の生分解性複合分割繊維と混合して繊維シート、特に繊維接着型不織布を形成することにより、容易に生分解性繊維100%、または生分解性繊維の割合が極めて高い緻密な繊維シートを形成することができる。
【0103】
本発明の繊維シートは生分解性複合分割繊維を含んでおり、この複合分割繊維を機械的外力及び/又は化学的処理により細繊維化して、緻密で均一な繊維シートとなる。この機械的外力としては、例えば、前述のニードルパンチ、高圧水流以外に、カレンダー、フラットプレス機などがあり、化学的な処理としては、例えば、結晶性の生分解性重合体成分と乳酸系共重合ポリエステル成分の溶剤による収縮性や膨潤性などの違いを利用する。
【0104】
本発明の繊維シートは、生分解性複合分割繊維の細繊維化により、緻密で均一な構造を有していると共に、生分解性が高く、堆肥として利用でき、様々な用途に利用できる。例えば、貼付剤用基布、マスク、医療用防護材、各種衛生材料、空調用又は液体フィルター、内装材、クリーニング材、使い捨ておしぼり、紙おむつ、生理用品、生ごみ収集袋などに使用することができる。なお、各種用途に適合するように、後加工を施しても良い。
【0105】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、溶融粘度は240℃、シェアレート1,000s-1における値を言う。
【0106】
【実施例】
以下に実施例および比較例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、例中の部は特に記載のない限り全て重量基準である。また、例中に示す分子量、融点、紡糸性、繊度、貯蔵安定性、生分解性などは、次の方法により求めた。
【0107】
分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、ポリスチレン換算として求めた。
融点(℃):セーコー社製示差走査型熱量計DSC−200型を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線で極値を与える温度を融点とした。
【0108】
紡糸性:1時間の連続紡糸において、糸切れがない場合を良好とした。
繊度:JIS−L−1013に記載の方法に準じて測定した。
耐熱性:オーブン中で、不織布が変形する温度を求めた。
分割性:分割性繊維が極細繊維に分割していれば、それだけ不織布構造が緻密になり、通気性が低くなることに着目して、下記の方法により不織布の通気性を測定し、分割性を評価した。
【0109】
JIS L−1096の6.27(通気性試験)に規定するフラジール型通気性試験機を用い、加圧抵抗器により傾斜形気圧計が水柱12.7mmの圧力を示すように吸い込み、吸い込みファンを調整した時の、垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から、不織布を通過する空気量を求めた。
【0110】
貯蔵安定性:得られた不織布について、35℃、80%湿度中に1ケ月間放置後の機械的強度の低下状態を4段階で評価した。
◎:変化なし。
○:殆ど変化なし。
△:若干低下。
×:大幅に低下。
【0111】
臭気性:容量300ミリリットルの共栓付三角フラスコに10cm×10cmの不織布のサンプルを入れ、密閉後、60℃の乾燥機中に30分間放置した。その後、不織布のサンプルを取り出し、室温で30分間放冷後、臭気の程度を官能試験で、次の4段階で評価した。
◎:殆ど臭気なし。
○:僅かに臭気あり。
△:臭気あり。
×:かなり臭気あり。
【0112】
生分解性試験:屋外に設置した、容量100リットルの新輝合成社製コンポスト化容器トンボミラクルコンポ100型を使用し、これに生ごみ50kgを入れ、10cm×10cmの不織布のサンプルを置いて、更に生ごみを約5cm程度の厚さに入れた。その上にアロン化成社製発酵促進剤ニュークサミノン500gをふりかけた。
【0113】
試験開始から1カ月後に試験片を取出し、次の4段階で評価した。
◎:原形をとどめない状態までぼろぼろになった。
○:元の形状はとどめているが脆くなった。
△:変化は認められるが、崩壊するところまで分解が進んでいなかった。
×:全く変化なし。
【0114】
燃焼発熱量:本発明の実施例、比較例に用いた乳酸系共重合ポリエステルの燃焼発熱量は、いずれも5,000cal/g程度の良好な値であった。
【0121】
(参考例
脂肪族ポリエステル(ドデカンジカルボン酸50モル%、ネオペンチルグリコール50モル%、重量平均分子量38,000)20部にヘキサメチレンジイソシアネート0.1部を加えて130℃で3時間攪拌、反応させ、重量平均分子量78,000のポリマーを得た。
【0122】
これにL−ラクチド72部とD,L−ラクチド8部、及び溶媒としてトルエン10部を加えて、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融混合し、触媒としてオクタン酸錫を0.03部加えて6時間反応後、更に酒石酸を0.2部添加し、1時間反応させ、続いて、200℃、5mmHgの減圧度で揮発分を除去しながらペレット化した。得られた乳酸系共重合ポリエステルの重量平均分子量は156,000、数平均分子量83,000、融点166℃であった。
【0123】
(参考例
脂肪族ポリエステル(セバシン酸50モル%、エチレングリコール50モル%、重量平均分子量45,000)40部に、L−ラクチド55部とD,L−ラクチド5部、及び溶媒としてトルエン15部を加えて、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融混合し、触媒としてオクタン酸錫を0.03部加えて5時間反応後、リン酸モノドデシルとリン酸ジドデシルの混合物を0.2部添加し、更に1時間反応させ、続いて、200℃、5mmHgの減圧度で揮発分を除去しながらペレット化した。得られた乳酸系共重合ポリエステルの重量平均分子量は128,000、数平均分子量64,000、融点163℃であった。
【0124】
(参考例
脂肪族ポリエステル(コハク酸50モル%、エチレングリコール25モル%、分子量1000のポリプロピレングリコール25モル%、重量平均分子量46,000)20部に、L−ラクチド70部とD,L−ラクチド10部、及び溶媒としてトルエン10部を加えて、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融、混合し、触媒としてオクタン酸錫を0.03部加えて、175℃で6時間反応後、無水トリメリット酸を0.3部添加し、同温度で1時間反応させ、続いて、200℃、5mmHgの減圧度で揮発分を除去しながらペレット化した。得られた乳酸系共重合ポリエステルの重量平均分子量は150,000、数平均分子量73,000、融点142℃であった。
【0125】
(参考例
脂肪族ポリエステル(アゼライン酸50モル%、エチレングリコール15モル%、トリプロピレングリコール35モル%、重量平均分子量41,000)20部に、L−ラクチド76部、D,L−ラクチド4部、及び溶媒としてトルエン15部を加えて、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融混合し、触媒としてオクタン酸錫を0.03部加えて5時間反応後、無水ピロメリット酸0.3部添加し、1時間反応させた後、脱揮しながらペレット化した。
【0126】
得られたペレット100部に対し、エチレンジアミン四酢酸を0.4部ブレンド後、200℃に設定のベント付き押出機を使用して、溶融混練しながら5mmHgの減圧度で脱揮した。得られた乳酸系共重合ポリエステルの重量平均分子量は165,000、数平均分子量75,000、融点158℃であった。
【0127】
(参考例
脂肪族ポリエステル(メチルコハク酸49モル%、無水マレイン酸1モル%、2,3−ブタンジオール成分50モル%、重量平均分子量44,000)20部に、L−ラクチド80部、及び溶媒としてトルエン15部を加えて、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融混合し、触媒としてオクタン酸錫を0.03部加えて5時間反応後、トリエチレンテトラミン六酢酸0.4部添加し、更に1時間反応させ、続いて、200℃、5mmHgの減圧度で揮発分を除去しながらペレット化した。得られた乳酸系共重合ポリエステルの重量平均分子量は156,000、数平均分子量74,000、融点168℃であった。
【0128】
(参考例
脂肪族ポリエステル(セバシン酸49モル%、無水マレイン酸1モル%、2,3−ブタンジオール50モル%、重量平均分子量45,000)15部に、L−ラクチド80部とグリコリド5部、及び溶媒としてトルエン8部を加えて、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融混合し、触媒としてオクタン酸錫を0.03部加えて5時間反応後、更にモノエチルヘキシルホスホン酸0.2部添加し、1時間反応させた後、脱揮しながらペレット化した。
【0129】
得られたペレットは室温でメタノール中に分散、攪拌、分離、乾燥して揮発分を除去した。得られた乳酸系共重合ポリエステルの重量平均分子量は163,000、数平均分子量81,000、融点144℃であった。
【0130】
(参考例
脂肪族ポリエステル(メチルコハク酸50モル%、プロピレングリコール25モル%、分子量1000のポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールのブロック共重合体25モル%、重量平均分子量52,000)20部に、L−ラクチド75部とε−カプロラクトン5部、及び溶媒としてトルエン8部を加えて、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融混合し、触媒としてオクタン酸錫を0.03部加えて5時間反応後、アルミニウムイソプロポキシド0.3部、及びエチレンジアミン四酢酸0.3部を添加し、1時間反応させた後、脱揮しながらペレット化した。
【0131】
得られたペレットは室温でアセトン中に分散、攪拌、分離、乾燥して揮発成分を除去した。重量平均分子量は158,000、数平均分子量86,000、融点142℃であった。
【0133】
得られたペレット100部にアルミニウムイソプロポキシド0.5部をブレンド後、200℃に設定のベント付き押出機を使用して、溶融、混練しながら5mmHgの減圧度で脱揮した。得られた乳酸系共重合ポリエステルの重量平均分子量は148,000、数平均分子量68,000、融点160℃であった。
【0134】
(参考例10
セバシン酸3モル%、プロピレングリコール4モル%、L−乳酸96モル%を反応釜に仕込み、不活性ガス雰囲気下で150℃から1時間に7℃ずつ昇温させながら加熱攪拌した。生成する水を留去しながら200℃まで昇温し、水の留出が止まったらエステル交換触媒としてテトライソプロポキチタンを0.007部添加し、最高0.5torrまで減圧しながら攪拌した。
【0135】
グリコールの留出が止まってから210℃で1時間反応を継続した。得られたポリエステル100部に対し、リン酸モノオクタデシルとリン酸ジオクタデシルの混合物を0.2部添加し、170℃で1時間反応させ、続いて、200℃、5mmHgの減圧度で揮発分を除去しペレット化した。その重量平均分子量は118,000、数平均分子量62,000、融点146℃であった。
【0136】
(実施例1)
乾燥処理した参考例1により得られた溶融粘度1100ポイズの乳酸系共重合ポリエステルと溶融粘度180ポイズのポリブチレンサクシネート(商品名:ビオノーレ1020、昭和高分子株式会社製)を使用し、紡糸温度240℃で溶融紡糸して、乳酸系共重合ポリエステルにより、ポリブチレンサクシネートが8つに分割され図1の(a)と同様の断面形状を有する繊度6デニールの糸を得た。
【0137】
この糸を構成する、乳酸系共重合ポリエステルと、ポリブチレンサクシネートとの容積比は50:50であった。次いでこの糸を90℃の温浴中で延伸し、繊度2デニール、強度2.6g/デニールで、16本の細繊維に分割可能な複合繊維(乳酸系共重合ポリエステルからなる分割後の平均繊維径3.8μmの細繊維と、ポリブチレンサクシネートからなる分割後の平均繊維径3.8μmの繊維に細繊維化可能)を得た。この複合繊維を土中に埋没し、2ヶ月後に観察したところ、繊維形態が消失しており、優れた生分解性を有することが確認できた。
【0138】
この複合繊維を10mmに裁断した後、この複合繊維を100%使用して湿式抄紙法により、目付40g/m2の繊維ウェブを形成した。次いで、この繊維ウェブをオーブン中、125℃で熱処理して、複合繊維のポリブチレンサクシネート成分で融着した後、100メッシュのネット(線径0.14mm)に載置し、直径0.13mm、ピッチ0.6mmのノズルを有するノズルプレートから、圧力120kg/cm2の水流を噴出し、反転させ、同様のノズルプレートから、圧力120kg/cm2の水流を噴出することを1サイクルとして、2サイクル処理して、不織布を形成した。
【0139】
この不織布の電子顕微鏡写真を観察したところ、複合繊維から細繊維が発生しており、緻密で均一な不織布であった。この不織布の分割性を評価するために通気性測定をおこなったところ、10cc/cm2・secであった。この不織布を土中に埋没し、2ヶ月後に観察したところ、不織布形態が消失しており、優れた生分解性を有することが確認できた。
【0140】
(実施例2〜10
参考例1により得られた乳酸系共重合ポリエステルの代わりに、参考例2〜参考例10により得られた乳酸系共重合ポリエステルを使用する以外は、実施例1と同様の方法で、乳酸系共重合ポリエステルにより、ポリブチレンサクシネートが8つに分割された、図1の(a)と同様の断面形状を有する6デニールの複合繊維及びその不織布を作成した。この不織布を土中に埋没し、2ヶ月後に観察したところ、不織布形態が消失しており、優れた生分解性を有することが確認できた。
【0141】
(実施例11
参考例1により得られた乳酸系共重合ポリエステルの代わりに、参考例により得られた乳酸系共重合ポリエステルを、ポリブチレンサクシネート(商品名:ビオノーレ1020、昭和高分子株式会社製)の代わりにポリブチレンアジペート40部に対しε−カプロラクタム60部を共重合した脂肪族ポリエステルアミド(溶融粘度150ポイズ)を使用する以外は、実施例1と同様の方法で、乳酸系共重合ポリエステルにより、脂肪族ポリエステルアミドが8つに分割された、図1の(a)と同様の断面形状を有する6デニールの複合繊維及びその不織布を作成した。この不織布を土中に埋没し、2ヶ月後に観察したところ、不織布形態が消失しており、優れた生分解性を有することが確認できた。
【0142】
(実施例12
実施例1における複合繊維を延伸、乾燥後、100℃の熱風で捲縮加工した後、カットを行い、繊度2デニール、捲縮数15個/インチ、捲縮率17%の複合繊維を得た。この複合繊維100%をランダムウェッバーにより開繊し、一方向に配向した繊維ウェブと、クロスレイヤーにより一方向性の繊維ウェブに対して交差する繊維ウェブとを積層した。次いで、この積層繊維ウェブを針密度200本/cm2でニードルパンチし、分割性複合繊維の分割と同時に、繊維同士を絡合し、目付80g/m2の不織布を得た。
【0143】
この不織布を電子顕微鏡により観察したところ、複合繊維から分割され細繊維が発生し、分割されたポリブチレンサクシネートと、乳酸系共重合ポリエステルの細繊維が交互に絡合している緻密な不織布であることが確認された。この不織布の分割性を評価するために通気性測定をおこなったところ、10cc/cm2・secであった。また、この不織布を土中に埋没し、2ヶ月後に観察したところ、不織布形態が消失しており、優れた生分解性を有することが確認できた。
【0144】
(比較参考例1)
L−ラクチド98部、D−ラクチド2部に、触媒としてオクタン酸錫を0.03部、溶媒としてトルエン15部を加えて、不活性ガス雰囲気下、170℃で6時間反応後、200℃、5mmHgの減圧度で揮発分を除去しながらペレット化した。得られたポリ乳酸の重量平均分子量164,000、数平均分子量75,000、融点160℃であった。
【0145】
(比較参考例2)
L−ラクチド65部、D−ラクチド35部に、触媒としてオクタン酸錫を0.03部、溶媒としてトルエン15部を加えて、不活性ガス雰囲気下、170℃で6時間反応後、脱揮しながらペレット化した。得られたペレットは室温でメタノール中に分散、攪拌、分離、乾燥して揮発分を除去した。得られたポリ乳酸の重量平均分子量142,000、数平均分子量72,000であった。
【0146】
(比較例1)
参考例1により得られた乳酸系共重合ポリエステルの代わりに、比較参考例1により得られたポリ乳酸を使用する以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸により、ポリブチレンサクシネートが8つに分割された、図1の(a)と同様の断面形状を有する6デニールの複合繊維及びその不織布を作成した。得られた不織布は貯蔵安定性に劣り、臭気がかなり強かった。生分解性については、この不織布を土中に埋没し、2ヶ月後に観察したところ、不織布形態が消失しており、生分解性はかなり優れていることが確認できた。
【0147】
(比較例2)
参考例1により得られた乳酸系共重合ポリエステルの代わりに、比較参考例2により得られたポリ乳酸を使用する以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸により、ポリブチレンサクシネートが8つに分割された、図1の(a)と同様の断面形状を有する6デニールの複合繊維及びその不織布を作成した。なお、この6デニールの複合繊維については延伸を30℃の温浴中で行い、得られた複合繊維の繊度は4デニールであった。また、得られた不織布は貯蔵安定性に劣り、臭気がかなり強かった。生分解性については、この不織布を土中に埋没し、2ヶ月後に観察したところ、不織布形態が消失しており、生分解性はかなり優れていることが確認できた。
【0148】
【表1】
Figure 0003756233
【0149】
【発明の効果】
本発明は、燃焼発熱量が低く、良好な生分解性と貯蔵安定性を有し、臭気の少ない、細繊維化が可能な、乳酸系共重合ポリエステルと結晶性の生分解性重合体とからなる生分解性複合分割繊維、及びそれを用いた緻密で均一な生分解性の繊維シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)から(e)は、本発明の生分解性複合分割繊維の断面模型図の1例を示す図である。
【符号の説明】
1は乳酸系共重合ポリエステル、2は結晶性の生分解性重合体を表わす。

Claims (6)

  1. 総乳酸中若しくは総ラクチド中に、L体或いはD体を70%以上含む光学活性な乳酸成分(A)と、脂肪族ジカルボン酸成分(B)と脂肪族ジオール成分(C)とを反応させ、次いで多価カルボン酸、金属錯体、エポキシ化合物、イソシアネート及び酸性リン酸エステル類から成る群から選ばれる高分子量化剤(D)を反応させて得られる、融点が110℃〜190℃の乳酸系共重合ポリエステルと、脂肪族ポリエステル系重合体及び/又は脂肪族ポリエステルアミド系共重合体からなる結晶性の生分解性重合体からなることを特徴とする生分解性複合分割繊維。
  2. 乳酸系共重合ポリエステルの残留ラクチドが1重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性複合分割繊維。
  3. ジカルボン酸成分(B)及びジオール成分(C)が、分岐鎖を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性複合分割繊維。
  4. 請求項1〜3のいずれか一つに記載の生分解性複合分割繊維を含むことを特徴とする繊維シート。
  5. 生分解性複合分割繊維に含まれる乳酸系共重合ポリエステルよりも融点が20〜70℃低い低融点乳酸系共重合ポリエステルを含む生分解性熱融着性繊維を、生分解性複合分割繊維と混合して用いたことを特徴とする請求項4に記載の繊維シート。
  6. 生分解性熱融着性繊維が、低融点乳酸系共重合ポリエステルと、それよりも融点が高い乳酸系共重合ポリエステルとからなる複合繊維であることを特徴とする請求項5に記載の繊維シート。
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