JP3755871B2 - 旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置 - Google Patents
旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置に関するものであり、プラットホームと車両の床面(又はデッキ、以下同じ)との間の段差を当該調節装置で補って、乗客の乗降を容易にすることができるものである。
【0002】
【従来の技術】
わが国の鉄道各駅のプラットホームのレール面からの高さはおおよそ760mm,920mm,1100mmの3通りであるが、専ら都市部の通勤輸送に使用される車両のデッキの高さはおおよそ1100mmになっている。
したがって、都市部における高さが1100mmのプラットホームに停車したときは、車両のいわゆるデッキまたはデッキのない車両では客室床(以下これも「デッキ」という)の出入口の高さがプラットホームとほぼ同じ高さになるので問題はないが、殊に郊外や地方における760mmのプラットホームに停車したとき、その段差が大きく、乗降に不便をきたす。
また、地方向けの車両の中には出入口部のみ低床の踏段を設けたものもあるが、逆にこの車両が都市部に乗り入れると1100mmの高さのプラットホームの方が高くなり、これは法規上認められていない。
この不便を解消するために、順次920mmあるいは1100mmの高さまでプラットホーム全体を嵩上げする工事も一部で行われているが、全ての停車場にてこれを実施するのは費用の面で問題がある。
【0003】
【解決しようとする課題】
この発明はプラットホームと車両の出入口との段差を補うためにプラットホーム側の高さを調整するのではなく、車両の出入口の高さを調整するという発想に基づくものであり、その課題は、低コストで設置することができ、また低廉で保守することが可能で、車両の全ての出入口に付設できる出入口高さ調整機構を工夫することである。
【0004】
【課題を解決するために講じた手段】
上記課題を解決するために講じた手段は、旅客輸送用鉄道車両の乗降口の高さ調節装置を前提として、次の(イ)〜(ニ)によって構成されるものである。
(イ)レール面からの高さがほぼ1100mmの車両の出入口を低床にし、当該低床に側引戸レールを設けたこと、
(ロ)上記低床を床面の高さ位置で覆うステップ板を低床部の側壁上端にヒンジで上下方向に回動自在に支持させ、当該ステップ板の駆動装置を車両の床下に設けたこと、
(ハ)上記低床を車両床面よりも150〜180mm低くしたこと、
(ニ)上記ステップ板を低床部の左右両側にそれぞれ設けて、両開きにしたこと。
【0005】
【作用】
レール面からの高さが1100mmのプラットホームに車両が停車したときは、上記ステップ板で上記低床を覆った状態にする。そして、ステップ板はプラットホームとほぼ面一であるから、乗降に支障がない。
高さが920mmのプラットホームに車両が停車したとき、車両の床下に設けた駆動装置によって上記ステップ板が上方に回動して垂直に保持される。上記低床は車両の床面よりも相当低く、その高さは上記プラットホームの高さ920mmとほぼ等しい。したがって、プラットホームと出入口との間の段差はほぼ解消され、支障なく乗降することができる。
高さ760mmのプラットホームに車両が停車したときも上記車両の床下に設けた駆動装置によって上記ステップ板が上方に回動して垂直に保持される。上記低床の高さは、上記プラットホームよりも幾分高いが、この段差は通常の階段一段の高さよりも低い。したがって、プラットホームと出入口の高さとが面一である場合に比して不便はあるが、乗降は容易である。
【0006】
低床が車両床面よりも150〜180mm低いから、出入口がその分だけ低くなり、その段差は通常の階段一段の段差よりも小さいから、上記床面から低床への上り下りは容易であって、支障はない。また、高さ760mmのプラットホームと低床との段差はほぼ160〜200mm程度であるから、760mmのプラットホームからの乗降にも支障がない。
【0007】
さらに、上記ステップ板は低床部の左右両側にそれぞれ設けられていて、左右方向に両開きになっているものであるから、左右のステップ板が、上方に回動して垂直に保持されるとき、軽く動作し、運動空間も小さくてすみ、出入口の左右両側にコンパクトに収められる。
【0008】
【実施態様1】
実施態様1は、上記解決手段における上記ステップ板の駆動手段を空気圧シリンダーにしたことである。
【0009】
【実施態様2】
実施態様2は、上記解決手段におけるステップ板の位置検知手段を設け、ステップ板が使用位置又は折畳み位置にあるときのみ側引戸の開閉操作を許容するようにしたことである。
【0010】
【実施例】
次いで実施例を説明する。
プラットホームに停車した車両のデッキとプラットホームとの関係は概略図1に示すとおりである。レール面からの車両床面の高さは、高さが1100mmのプラットホームP1とほぼ同じであり、プラットホームと車両の出入口との間隔xは最大160mm程度である。
他方、車両の出入口に設けた踏込部Aの奥行き幅は260mm以上でなければならない。
この実施例における低床部Aの幅B1は1300mm、奥行き幅B2は300mmである。この実施例は低床部Aの低床5を覆うステップ板1を、低床部Aの左右両側壁上端にヒンジHで連結している例であり、ステップ板1の幅は低床部Aの幅B1の半分であるが、奥行き幅bは215mmである。ステップ板1の裏面先端にヒンジhで脚板Fが連結されており、この脚板Fの回動角度θは95度〜100度に規制されており、比較的弱い捩じりばね(図示せず)によって開方向に付勢されている。
【0011】
ステップ板1を底床部Aの左右両側壁の上端に回動可能に連結しているヒンジHで連結しており、また、このヒンジ軸と同軸線上の操作軸3がステップ板1の内側端面に固着されている。そして、この操作軸3から半径方向下方に突出させた操作アーム3aに、車両の床板2の下方に配置して空気圧シリンダー4のピストンロッド4aを連結している。
このステップ板1が乗客の体重によって大きく撓むことがないように、荷重に対するステップ板1の剛性を大きくする必要があるが、そのためには、ステップ板をダブルスキン型材(表裏両板をリブで接続した構造の中空型材)とし、あるいは板材の下面に奥行き方向に伸びる補強リブを設ければよい。
床板(デッキ床)2の床下に空気圧シリンダー4を設け、そのピストンロッド4aをステップ板1の内端に連結している。
【0012】
低床部Aの低床5が床板2から180mmほど低く、この低床5の出入口端に設けた側引戸のレール6によって側引戸7をガイドしている。
この例ではステップ板1は倒されて低床5を覆っており、このときのステップ板1の先端は脚板Fで支持されている。他方、高さ920mm,760mmのプラットホームに停車するときに、停車する前にステップ板1が空気圧シリンダー4で垂直に立てられるから、乗客は低床部Aから乗降することができる。
ステップ板1が折畳まれて垂直に起立した状態にあるとき、脚板Fがその自重で、ヒンジhに設けた比較的弱い捩じりばねに抗してステップ板1に対して回動し、ステップ板1の下面に折重ねられる。他方ステップ板1が倒されたとき、脚板Fがその自重と上記捩じりばねのばね力とで脚板Fが開かれてステップ板1から開かれ、ステップ板1が水平になる前に上記捩じりばねによって最大限(95度乃至100度)まで開かれる。したがって、ステップ板1は脚板Fで確実に支持される。
【0013】
ステップ板1の出入動作中に側引戸7が開閉したり、あるいは側引戸7が解放されて後にステップ板1が出入動作するのは安全上好ましくないので、ステップ板1の出入り動作中に側引戸7が開閉動作することがないように、また、側引戸7が解放されて後にステップ板1が動き出すことを阻止するように、空気圧シリンダー4、側引戸7の制御が行われる。
駆動手段として空気圧シリンダー4を用いれば、これを流体的にロックすることができるから、折畳み位置(垂直位置)及び使用位置(水平位置)にステップ板を固定するための別途の手段は必要ない。
また、空気圧シリンダー4についてはダブルアクション型(伸縮両方向に空気圧で作動するもの)でもよく、また、シリンダーに付勢ばねを内装したもの(例えば付勢ばねで押出方向にピストンを付勢し、この付勢ばねに抗して空気圧でピストンロッドを引っ込めるもの)でもよい。
【0014】
また、ステップ板の駆動手段としては、電動モータを使用することができる。この場合は、上記操作軸3に扇型のウオームギアを設け、このウオームギアを電動モータのピニオンで駆動するようにすればよい。また上記電動モータはブレーキ付モータであって、ブレーキがノーマルON(電動モータ不作動状態でブレーキ作動)であれば、電動モータで使用位置、折畳み位置のいずれでもステップ板1が電動モータで固定されるから、使用位置及び折畳み位置でステップ板1を固定するための別途の手段は必要ない。
【0015】
【発明の効果】
以上説明したように、車両の出入口の高さを調整する調整装置を上記出入口に設け、ステップ板を駆動して出入口に設けた低床部Aを覆い、あるいは解放することで、上記出入口の高さ調節するものであるから、この調節機構は極めて単純であり、その作動の信頼性も高い。したがって、出入口の高さ調整装置を廉価に設置することができ、その保守費用も低廉である。
また、上記ステップ板は低床部の左右両側にそれぞれ設けられていて、左右方向に両開きになっているものであるから、左右のステップ板が、上方に回動して垂直に保持されるとき、軽く動作し、運動空間も小さくてすみ、出入り口の左右両側にコンパクトに収められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は車両デッキとプラットホームとの位置関係を示す断面図である。
【図2】は実施例の斜視図である。
【図3】は実施例の要部断面図である。
【図4】は実施例の他の要部断面図である。
【符号の説明】
1:ステップ板
2:床板
3:操作軸
3a:アーム
4:空気圧シリンダー
4a:ピストンロッド
5:低床
6:側引戸のレール
7:側引戸
A:低床部
H,h:ヒンジ
Claims (3)
- 旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置において、
レール面からの高さがほぼ1100mmの床面の出入口を低床にし、当該低床に側引戸レールを設け、
上記低床を床面の高さ位置で覆うステップ板を低床部の側壁上端にヒンジで上下方向に回動自在に支持させ、当該ステップ板の駆動装置を車両の床下に設けたものであり、
上記低床と床面との段差が150〜180mmであり、
上記ステップ板が低床部の左右両側にそれぞれ設けられていて、左右方向に両開きになっている旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置。 - 上記ステップ板の駆動手段を空気圧シリンダーにした請求項1の旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置。
- 上記ステップ板の位置検知手段を設け、ステップ板が全閉又は全開位置にあるときのみ側引戸の開閉操作を許容するようにした請求項1の旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置。
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