JP3632917B2 - 旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置に関するものであり、プラットホームと車両の床面(又はデッキ、以下同じ)との間の段差を当該調節装置で補って、乗客の乗降を容易にすることができるものである。
【0002】
【従来の技術】
わが国の鉄道各駅のプラットホームのレール面からの高さはおおよそ760mm、920mm、1100mmの3通りであるが、専ら都市部の通勤輸送に使用される車両のデッキの高さはおおよそ1100mmになっている。
したがって、都市部における高さが1100mmのプラットホームに停車したときは、車両のいわゆるデッキまたはデッキのない車両では客室床(以下これも「デッキ」という)の出入口の高さがプラットホームとほぼ同じ高さになるので問題はないが、殊に郊外や地方における760mmのプラットホームに停車したとき、その段差が大きく、乗降に不便をきたす。
また、地方向けの車両の中には出入口部のみ低床の踏段を設けたものもあるが、逆にこの車両が都市部に乗入れると1100mmの高さのプラットホームの方が高くなり、これは法規上認められていない。
この不便を解消するために、順次920mmあるいは1100mmの高さまでプラットホーム全体を嵩上げする工事も一部で行われているが、全ての停車場にてこれを実施するのは費用の面で問題がある。
【0003】
【解決しようとする課題】
この発明はプラットホームと車両の出入口との段差を補うためにプラットホーム側の高さを調整するのではなく、車両の出入口の高さを調整するという発想に基づくものであり、その課題は、低コストで設置することができ、また低廉で保守することが可能で、車両の全ての出入口に付設できる車両の出入口の高さ調整機構を工夫することである。
【0004】
【課題を解決するために講じた手段】
上記課題を解決するために講じた手段は、旅客輸送用鉄道車両の乗降口の高さ調節装置を前提として、次の(イ)〜(ニ)によって構成されるものである。
(イ)レール面からの高さがほぼ1100mmの車両の出入口を低床にし、当該低床に側引戸レールを設けたこと、
(ロ)上記低床を床面の高さ位置で覆うステップ板を低床部の後壁上端に第1ヒンジで上下方向に回動自在に支持させたこと、
(ハ)上記ステップ板を、前後方向中央の中間第1ヒンジで下方に折り曲げられる折畳み板にし、その前端に支持板の一端を中間第2ヒンジで連結し、当該支持板の他端を上記低床に第2ヒンジで連結したこと、
(ニ)上記ステップ板の駆動用空気圧シリンダーを車両の床下に設け、当該空気圧シリンダーのピストンロッドをステップ板の上記中間第1ヒンジのヒンジ軸またはその近傍に連結したこと。
【0005】
【作用】
上記空気圧シリンダーを伸張させると、上記ステップ板が押し上げられ、支持板が起立して、ステップ板によって上記低床部が覆われた態になる。
また、上記空気圧シリンダーを収縮させると、ステップ板が上記第1ヒンジで下方に折れて直角になり、その一部が低床部の前壁に平行になる。このとき上記支持板とステップ板の中間第1ヒンジより前方の部分とが平らになって低床部の床面に重ねられる。したがって、空気圧シリンダーを収縮させてステップ板を下げることで、出入口の高さが低床部の床面まで下がることになる。
また、レール面からの高さが1100mmのプラットホームに車両が停車したときは、空気圧シリンダーを伸張させて上記ステップ板を押し上げることで、ステップ板がプラットホームとほぼ面一に保持されるから、乗降に支障がない。
さらに、上記高さが920mmのプラットホームに車両が停車したとき、上記ステップ板を下げることにより、出入口の高さが上記プラットホームの高さ920mmとほぼ等しくなるので、プラットホームと出入口との間の段差はほぼ解消され、支障なく乗降することができる。
レール面からの高さ760mmのプラットホームに車両が停車したときも上記ステップ板が下げられる。このとき、上記低床の高さは上記プラットホームよりも幾分高いが、この段差は通常の階段一段の高さよりも低い。したがって、プラットホームと出入口の高さとがほぼ等しい場合に比して不便はあるが、乗降は容易である。
【0006】
【実施態様1】
実施態様1は、上記低床を車両床面よりも150〜180mm低くしたことである。
上記低床が車両床面よりも150〜180mm低いから、出入口がその分だけ低くなり、その段差は通常の階段一段の段差よりも小さいから、上記床面から低床への上り下りは容易であって、支障はない。また、高さ760mmのプラットホームと低床との段差はほぼ160〜200mm程度であるから、760mmのプラットホームからの乗降にも支障がない。
【0007】
【実施態様2】
実施態様2は、上記ステップ板の上に荷物または乗客が存在するときは、ステップ板を昇降させる空気圧シリンダーの伸縮動作が禁止されるようにしたことである。
なお、上記荷物の存在は、光センサで直接検知すればよいが、ステップ板の荷重による歪み、空気圧シリンダにかかる負荷の変化などで検出することもできる。
【0008】
【実施態様3】
実施態様3は、ステップ板の位置検知手段を設け、ステップ板が展開位置又は折畳み位置にあるときのみ側引戸の開閉操作を許容するようにしたことである。
なお、ステップ板の上記両位置を直接検知する代わりに空気圧シリンダーの伸張位置、または収縮位置を検知するのも同じである。
【0009】
【実施例】
次いで実施例を説明する。
プラットホームに停車した車両のデッキとプラットホームとの関係は概略図1に示すとおりである。車両の床面の高さは、高さが1100mmのプラットホームP1とほぼ同じであり、プラットホームと車両の出入口との間隔xは最大160mm程度である。
他方、車両の出入口に設けた踏込部である低床部Aの奥行き幅は260mm以上でなければならない。
この実施例における低床部Aの幅B1は1300mm、奥行き幅B2は300mmである。この実施例は低床部Aを覆うステップ板1を、前部1aと後部1bに2分し、前部1aと後部1bとを中間第1ヒンジh1で下方に屈曲可能に連結してあって、上記後部1bの後端を第1ヒンジH1で低床部Aの後壁上端に連結している。ステップ板1の幅は低床部Aの幅B1と等しく、奥行き幅bは200mmである。ステップ板1の前部1aの先端に中間第2ヒンジh2で支持板Fが連結されており、この支持板Fの下端は側引戸7のガイドレール6の内側において低床5に第2ヒンジH2で連結されている。
また、車両の床面2の床下に前後方向に空気圧シリンダー4が配置されており、この空気圧シリンダー4のピストンロッドがステップ板1の上記中間第1ヒンジh1のヒンジ軸に連結されている。このピストンロッドの連結位置は、上記中間第1ヒンジh1のヒンジ軸に限られるものではなく、ステップ板の昇降動作、折り畳み、展開動作を円滑にするために、中間第1ヒンジh1の近傍、すなわち、ステップ板の後部1bの先端部下面にブラケットを突設して、このブラケットにピストンロッドを連結してもよい。
なお、ステップ板の前部1aと支持板Fとが平らになったときの幅が上記第2ヒンジH2と低床部Aの後壁との間の間隔に等しくなるように、ステップ板1の上記中間第1ヒンジh1による屈曲位置を選択することが必要である。
また、ステップ板1が乗客の体重によって大きく撓むことがないように、荷重に対するステップ板1の剛性を大きくする必要があるが、そのためは、ステップ板をダブルスキン型材(表裏両板をリブで接続した構造の中空型材)とし、あるいは板材の下面に奥行き方向に伸びる補強リブを設ければよい。
また、中間第1ヒンジh1による連結部、ピストンロッドとの連結部が表面に露出しないように、中間第2ヒンジh2の配置、ピストンロッドとの連結機構を工夫し、あるいはステップ板の上面をマットで覆うなどの工夫をするとよい。
【0010】
低床部Aの低床5が床面2から200mmほど低く、この低床5の出入口端に設けたレール6によって側引戸7をガイドしている。
レール面からの高さが1100mmのプラットホームに停車するときは、ステップ板1が空気圧シリンダー4で押上げられて低床5の上方にあり、このとき、ステップ板1の先端に中間第2ヒンジh2で連結された支持板Fが直立してステップ板1の先端を支持する。
他方、上記高さが920mm,760mmのプラットホームに停車するときに、停車する前にステップ板1が空気圧シリンダー4で下方に引き下げられ、その後部1bが低床部Aの後壁にそって垂直になり、支持板Fが低床5上に倒れ、ステップ板1の前部1aが低床上に重ね合わされる。したがって、乗客は低床5から乗降することができる。
ステップ板1の昇降動作中に側引戸7が開閉したり、あるいは側引戸7が解放されて後にステップ板1が昇降するのは安全上好ましくないので、ステップ板1の出入り動作中に側引戸7が開閉動作することがないように、また、側引戸が解放されて後にステップ板1が動き出すことを阻止するように、空気圧シリンダー4、側引戸の制御が行われる。
ステップ板1上に荷物や乗客が載っている状態でステップ板1が昇降するのは安全上好ましくないので、上記低床部A及びその上方にセンサー(例えば光センサー。図示は省略)を配置して、ステップ板1上に荷物や乗客が載っているときは、ステップ板1の昇降動作がなされないように、上記センサーの検知信号によって空気圧シリンダー4の作動を禁止している。
駆動手段として空気圧シリンダーを用いれば、これを流体的にロックすることができるから、折畳み位置(垂直位置)及び展開位置(水平位置)にステップ板を固定するための別途の手段は必要ない。
また、空気圧シリンダーについてはダブルアクション型(伸縮両方向に空気圧で作動するもの)でもよく、また、シリンダに付勢ばねを内装したもの(例えば付勢ばねで引込み方向にピストンを付勢し、この付勢ばねに抗して空気圧でピストンロッドを押出すもの)でもよい。
【0011】
【発明の効果】
以上説明したように、車両の出入口の高さを調整する調整装置を上記出入口に設け、ステップ板を駆動して出入口に設けた低床部を覆い、あるいは解放することで、上記出入口の高さ調節するものであるから、この調節機構は極めて単純であり、その作動の信頼性も高い。したがって、出入口の高さ調整装置を廉価に設置することができ、その保守費用も低廉である。
【図面の簡単な説明】
【図1】は車両デッキとプラットホームとの位置関係を示す断面図である。
【図2】は実施例の斜視図である。
【図3】は実施例の一つの状態の要部断面図である。
【図4】は実施例の他の状態の要部断面図である。
【符号の説明】
1:ステップ板
2:床板
4:空気圧シリンダー
5:低床
6:側引戸のレール
7:側引戸
A:低床部
F:支持板
H1:第1ヒンジ
H2:第2ヒンジ
h1:中間第1ヒンジ
h2:中間第2ヒンジ
Claims (5)
- 旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置において、
レール面からの高さがほぼ1100mmの車両出入口が低床であり、当該低床に側引戸レールが設けられており、
上記低床を床面の高さ位置で覆うステップ板が低床部の後壁上端に第1ヒンジで上下方向に回動自在に支持されており、
上記ステップ板が、前後方向中央の中間第1ヒンジで下方に折り曲げられる折畳み板であり、その前端に支持板の一端が中間第2ヒンジで連結されており、当該支持板の他端が上記低床に第2ヒンジで連結されており、
上記ステップ板の駆動用空気圧シリンダーが車両の床下に設けられており、当該空気圧シリンダーのピストンロッドがステップ板の上記中間第1ヒンジのヒンジ軸またはその近傍に連結されている旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置。 - 上記支持板とステップ板の上記中間第1ヒンジより前方の部分とが上記低床部の床面に重なって平らになったとき、その奥行き幅が、側引戸と上記低床部の後壁間の間隔にほぼ等しいように、ステップ板の上記中間第1ヒンジの位置が定められている請求項1の旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置。
- 上記低床と床面との段差が150〜180mmである請求項1の旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置。
- 上記ステップ板の上に荷物または乗客が存在するときは、ステップ板を昇降させる空気圧シリンダーの伸縮動作が禁止されるようにした請求項1乃至請求項4の旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置。
- 上記ステップ板の位置検知手段が設けられており、ステップ板が展開位置又は折畳位置にあるときのみ側引戸の開閉操作が許容されるようになっている請求項1の旅客輸送用鉄道車両の側出入口の高さ調節装置。
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