JP3755493B2 - 回転電機のステータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転電機のステータ、特にそのステータコアの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
回転電機の一種に発電機(オルタネータ)がある。オルタネータはフレームに固定されたステータと、回転するロータとから成る。このうちステータはステータコアとステータコイルとを含み、ステータコアは環状のヨークと、多数のティース(歯部)及び多数のスロットとを有する。ティースはヨークの内周面から半径方向内向きに突出し、ロータから磁束を導く。スロットは隣接するティースにより区画され、その中にステータコイルが収納される。
【0003】
ステータコイルは開口側から順次スロットに巻装される。スロットの開口部の幅は、ステータコイルの巻装の容易化の点からは広い方が良い。しかし、磁気回路の形成の点からは狭い方が良く、狭くすることによりゴギングトルクが減少する利点もある。この相反する2つの要求を公知の突起状のティースで満たすことは困難である。
【0004】
そこで、本願の出願人は先に特開2000−50540号(以下、「従来例」と呼ぶ)で、ティースを2つの部分即ち本体歯部と取付歯部とで形成した回転電機の組立式固定子コアを出願した。
【0005】
この従来例では、図3に示すように、ステータコア70はヨーク72、ティース(歯部)74及びスロット79を含み、ティース74は基歯部75と別歯部80とを有する。基歯部75はヨーク72の内周面に形成された一対の側壁部76と、両側壁部76間の凹部77とから成る。一方、別歯部80は基部81と、これから突出した凸部(軸部)82とから成る。凸部82の高さ方向中間部の幅即ち凹部77の深さ方向中間部の幅Cが、凸部82の周方向の幅即ち凹部77の幅Bよりも大きくされ、幅Bが凸部82の先端の周方向の幅即ち凹部77の底面の幅Aよりも小さくされている。
【0006】
この従来例によれば、別歯部80を基歯部75に取り付ける前にステータコイル(不図示)を幅の広いスロット79に収納するので、巻装が容易である。そして、スロット79に巻装したステータコイルは別歯部80の基部81の張出し部81aによりスロット79からの脱落を防止される。また、幅Aが幅Bよりも小さいので、凸部82の凹部77への挿入が容易になる。加えて、幅Cが幅Bより大きいので、一旦挿入した凸部82が凹部77内でがたついたり、凹部77から抜け出すことが防止される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例では、別歯部80の凸部82の先端面82aと基歯部75の凹部77の底面77aとの間の公差、及び側壁部76の先端面76aと基部81の対向面81bとの間の公差が共に零とされていた。具体的には、側壁部76の高さと凸部82の高さとが等しくされていた。これにより、別歯部80を基歯部75に取り付けた状態で、凸部82の先端面82aを凹部77の底面77aに当接させ、側壁部76の先端面76aを基部81の対向面81bに当接させようとしている。
【0008】
しかし、上記2つの公差を共に零にするためには、基歯部75の側壁部76及び別歯部80の凸部82に精密な仕上げ加工を施さなければならず、加工コストが上昇する。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ティースを形成する2つの部分の加工が容易化され、加工コストが安価な回転電機のステータの提供を目的としてなされたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願の発明者は、ティースを構成する2つの部材間に隙間を設けることを考えた。但し、この隙間はステータコアのティースに形成される磁気回路を遮断する磁気抵抗となり易い。そこで、実質上磁気抵抗とならないような形状及び大きさの隙間を形成することを思い付いて、本発明を完成した。
【0011】
本発明にかかる回転電機のステータは、請求項1に記載しているように、環状のヨークと、ヨークの周面に円周方向に隔設され磁束の通路を形成すると共に複数のスロットを区画する複数のティースとを備えるステータコアであって、各ティースは、ヨークからロータに向かって突出し円周方向に隔設された一対の側壁部及び両側壁部により区画される凹部を含む本体歯部と、ロータに対向しスロットの開口部に張り出した基部及び基部から反ロータ側に突出し凹部に挿入される凸部を含む取付歯部と、を含むステータコアと;各スロット内に収納されたステータコイルと;から成る。そして、各本体歯部の各側壁部の先端面と取付歯部の基部の対向面との間に隙間が形成され、取付歯部の凸部の先端面は、本体歯部の凹部の底面に当接し、本体歯部の両側壁部の先端面の面積は、取付歯部の凸部の先端面の面積よりも狭く、本体歯部の各側壁部の幅は凹部の幅の1/10から1/3であり、隙間の高さは取付歯部の各側壁部の幅の1/100から1/5である、ことを特徴とする
本発明のステータでは、ティースがステータコアに形成された本体歯部と、ステータコアとは別体の取付歯部とから成る。この場合、理論上隙間は本体歯部の側壁部と取付歯部の基部との間、又は取付歯部の凸部と本体歯部の凹部との間の何れに設けることもできる。しかし、隙間が磁気抵抗となることを考えて、当接面積が大きい凹部の底面と凸部の先端面との間ではなく、当接面積が小さい側壁部の先端面と基部の対向面との間に隙間を形成した。その上で、側壁部及び凸部の加工精度の緩和と、隙間の形成による磁気抵抗の増加の抑制との両方を考慮しつつ、隙間の大きさ(幅、高さ)を定めた。
【0012】
このステータにおいて、ステータコアの本体歯部の側壁部の高さにはマイナス公差を、及び/又は取付歯部の凸部の高さにはプラス公差を与える。公差を与えられた側壁部及び/又は凸部は高さの管理が緩くできる。
【0015】
本発明の隙間は、取付歯部又は保持部及び本体歯部又はティースの加工を容易にすると共に、極力磁気抵抗とならないように意図的に設けるものであり、加工や組立上の都合でたまたま存在する隙間とは区別されるべきである。
【0019】
請求項2のステータは、請求項1において、本体歯部の凹部は深さが増加するにつれて幅が漸増し中央付近で最大となった後漸減し、取付歯部の凸部は高さが増加するにつれて幅が漸増し中央付近で最大となった後漸減している。
【0020】
請求項3のステータは、請求項1において、取付歯部の基部は、中央部、中央部の両外側の一対の対向部及び両対向部の両外側の一対の張出し部を含み、各対向部が各側壁部に対向し、両張出し部がスロットの開口に張り出している。
【0021】
【発明の実施の形態】
<回転電機>
回転電機はモータ、発電機及びモータ/発電機を含む。このうち、例えば同期モータは、ステータのコイルに交流を流して回転磁界を形成し、固定磁極としてのロータを吸引又は反発して回転させる。また、例えば三相交流発電機は、ロータの回転磁束によりステータのコイルに電力を発生させる。
【0022】
尚、モータ/発電機はモータ及び発電機の両方の機能を持ち、電源(バッテリ)の充電量が少ないときは発電機として機能し発生した電力をバッテリに充電し、エンジンの駆動力が不足してるときはモータとして機能しエンジンの駆動力を補助する。
<ステータ>
ステータはステータコアと、ステータコイルとから成る。ステータコアは環状のヨークと、その内周面又は外周面に円周方向に隔設された複数のティースとを含む。本発明では、各ティースはステータコアに形成された本体歯部と、ステータコアとは別体の取付歯部とから成る。
【0023】
本発明では、隣接するティースにより区画されるスロット内に、ステータコイルが収納され、ティースを利用して巻装される。例えば、3相交流発電機の場合、3本のステータコイルが巻装される。
<本体歯部、保持部>
本発明における本体歯部は、一対の側壁部と、両側壁部間に形成される凹部とを含む。一対の側壁部は、ヨークの内周面から内向きに又は外周面から外向きに突出し、円周方向に隔設され、対称な形状を持つ。横断面形状は細長い矩形状で、幅は全高さに亘って均一でも良いが、付け根に向かうにつれて漸増していても良い。厚さ(ステータコアの軸方向寸法)はヨークの厚さと同じである。
【0024】
側壁部間の間隔即ち凹部の幅は側壁部の内側面の形状により決まり、全深さに亘って均一でも良いが、深さが深くなるにつれて漸減しているか、又は深さ中央付近まで漸増しその後漸減していることが望ましい。凹部の深さは上記側壁部の高さにより決まる。
<取付歯部、ティース>
本発明における取付歯部は、基部とこれから突出した凸部とを含み、断面T字形状を持つことができる。基部は外向き又は内向きに湾曲した矩形状を持ちロータに対向し、その一辺(円周方向の辺)はスロットのピッチに対応し、他辺はヨークの厚さに対応している。基部は中央部と、その両外側に位置し側壁部に対向する一対の対向部と、さらにその両外側に位置しスロットの開口に張り出す張出し部とを持つことができる。
【0025】
凸部は基部の中央部から基部の湾曲方向と反対方向に突出している。凸部の高さは側壁部の高さよりも高く、幅及び長さは本体歯部の凹部のそれに対応している。従って、幅は均一でも良いが、先端に向かって漸減しているか、又は深さ中央付近まで漸増しその後漸減していることが望ましい。取付歯部を本体歯部に嵌合したとき、凸部の先端部は凹部の底面に当接する。
<隙間>
両側壁部の先端面とこれに対向する基部の両対向面との間に隙間を形成することが望ましいが、何れか一方の先端面と対向面との間のみに形成しても良い。隙間を形成するためには、具体的には、側壁部の高さにマイナス公差を設けるか、又は凸部の高さにプラス公差を設ければよい。両方に公差を設ければ、側壁部及び凸部の加工が容易になり、一方のみに公差を設ければ側壁部又は凸部の加工が容易になる。また、側壁部や凸部の高さは公差を設けず、基部の対向面にくぼみを形成しても良い。
【0026】
隙間の大きさは、例えば側壁部の先端の幅を凹部の開口部の幅の1/10から1/3程度とし、これにより両側壁部の先端面の面積は凸部の先端面の面積よりも狭くなる。また、隙間の高さは側壁部の幅の1/100から1/5程度とすることができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の実施例を添付図面を基にして説明する。この実施例では、回転電機が3相交流発電機であり、ティースは本体歯部と取付歯部とから成る。
(構成)
図1において、発電機はロータ10及びステータ20等から成る。ロータ10はフレーム(不図示)に回転可能に支持されたシャフト(不図示)、シャフトに取り付けられたロータコア11、ロータコア11の空間12に収容されたS極及びN極の磁石13等を含む。
【0028】
一方、ステータ20は全体として円筒形状で、上記フレームに取り付けられ、その内部空間にロータ10を収納している。ステータ20は、ステータコア22と、ステータコイル34とに大別される。
【0029】
ステータコア22は多数枚の薄板鉄板を積層して成り、環状のヨーク23と、多数のティース(歯部)24とを含む。詳述すると、ヨーク23の内周面に形成されたティース24は本体歯部25と取付歯部40とから成る。
【0030】
図2に拡大して示すように、本体歯部25は半径方向内向きに突出した一対の側壁部27を含む。各側壁部27の内側面は幅が漸減している開口側の垂直面28aと、幅が漸増している奥側の傾斜面28bとから成る。外側面29は半径と平行に延びている。高さにはマイナス公差を設けている。一対の側壁部27間に形成された凹部30の幅は入口側より一定の割合で増大し、中央付近で最大となり、奥側は一定の割合で減少している。
【0031】
隣接するティース24(より正確には側壁部27)によりスロット33が区画され、断面矩形状を持つ。スロット33の幅は凹部30の幅よりも広く、深さは凹部30の深さよりも深い。スロット33内にステータコイル34が収納され、ティース24に巻装されている。
【0032】
取付歯部40の基部41は全体的に外向きに湾曲した矩形板状を持ち、その一辺は隣接するスロット33の円周方向ピッチにほぼ等しく、その他辺はヨーク23の厚さに等しい。基部41は中央部42と、その両外側の一対の対向部43と、さらにその両外側の張出し部44とを持つ。中央部42から凸部45が基部41の湾曲方向と反対方向即ち半径方向外向きに突出している。対向部43の対向面43aは側壁部27の先端面27aに対向し、張出し部44はスロット33の開口に張り出している。
【0033】
凸部45の幅及び長さは上記本体歯部25の凹部30のそれに対応している。高さにはプラス公差が設けられ、側壁部27の高さよりも少し高くされている。その結果、凸部45の先端面45aが凹部30の底面30aに当接した状態で、側壁部27の先端面27aは対向面43aに当接せず、両者間には隙間50が形成されている。
【0034】
尚、ステータコイル34をステータコア22へ巻装する際は、本体歯部25に取付歯部40を嵌合する前に、膜状のインシュレータ46をスロット33の底面及び両側面に配置する。この状態でステータコイル34をスロット33に収納し、インシュレータ46の両端を開口側で重ねる。次に、取付歯部40の凸部45を本体歯部25の凹部30に嵌合させ、凸部45の先端面45aが凹部30の底部30aに当接するまで挿入する。凸部45及び凹部30は幅が途中まで漸増し、その後漸減しているので、一旦挿入した取付歯部40が本体歯部25から抜け出す心配はない。
(作用効果)
3相交流発電機の作動時、ロータ10のN極の磁石13から出た磁束はエアーギャップを通ってステータコア22の中を進み、S極に戻る。ロータ10がエンジン等により回転されると、ステータコア22の中を流れていた磁束は回転移動し、ロータ10の磁束をステータコイル34で鎖交することになり、ステータコイル34に3相の起電力が発生する。
【0035】
本実施例によれば、第1に、ステータコア22のティース24を構成する本体歯部25の側壁部27及び取付歯部40の凸部45の加工が容易になる。即ち、その底面30aを基準面として側壁部27の高さを求め、これにマイナス公差を与えている。よって、側壁部27の高さは従来例のように特定の寸法である必要はなく、このマイナス公差の範囲内にあれば良く、その分加工が容易になる。一方、その先端面45aを基準面として凸部45の高さを求め、これにプラス公差を与えている。よって、凸部45の高さも特定の値である必要はなく、このプラス公差の範囲内にあれば良く、その分加工が容易になる。
【0036】
第2に、上記第1の効果が得られながら、側壁部27と対向部43との間の隙間50はステータコア22の磁気抵抗を殆ど増加させない。即ち、ロータ10の回転時、ステータコア22のティース24では図1中矢印Xで示す方向に磁束が形成され、側壁部27と対向部43との間の隙間50はこれと交差する方向である。しかし、側壁部27の幅は小さく、しかも隙間50の厚さ(高さ)は非常に小さい。よって隙間50の形成による磁気抵抗の増加は実質的に問題にならない。
【0037】
【発明の効果】
以上述べてきたように、請求項1に記載した本発明の回転電機のステータによれば、隙間を形成したことにより、本体歯部の側壁部の高さ及び/又は取付歯部の凸部の高さの管理が緩やかになる。その結果、側壁部及び/又は凸部の加工、ひいては本体歯部及び取付歯部の加工が容易になる。しかも、隙間は幅、長さ及び高さが小さいので実質的に磁気抵抗にならない。また、面積の広い凸部の先端面と凹部の底面とが当接し両者間に隙間がないので、この部分では磁気抵抗が発生しない。
【0039】
請求項2のステータによれば、本体歯部により取付歯部の脱出が防止される。請求項3のステータによれば、本体歯部と取付歯部との間に隙間が確保され、しかも取付歯部によりステータコイルの脱落が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転電機のステータコアの要部横断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】従来例のステータコアの要部横断面図である。
【符号の説明】
10:ロータ 20:ステータ
22:ステータコア 23:ヨーク
24:ティース 25:本体歯部
30:凹部 40:取付歯部
45:凸部 50:隙間
Claims (3)
- 環状のヨークと、該ヨークの周面に円周方向に隔設され磁束の通路を形成すると共に複数のスロットを区画する複数のティースとを備えるステータコアであって、各該ティースは、該ヨークからロータに向かって突出し円周方向に隔設された一対の側壁部及び該両側壁部により区画される凹部を含む本体歯部と、ロータに対向し該スロットの開口部に張り出した基部及び該基部から反ロータ側に突出し該凹部に挿入される凸部を含む取付歯部と、を含むステータコアと、
各該スロット内に収納されたステータコイルと、から成り、
各該本体歯部の各該側壁部の先端面と該取付歯部の基部の対向面との間に隙間が形成され、
前記取付歯部の前記凸部の先端面は、前記本体歯部の前記凹部の底面に当接し、
前記本体歯部の前記両側壁部の先端面の面積は、前記取付歯部の前記凸部の先端面の面積よりも狭く、
前記本体歯部の各前記側壁部の幅は前記凹部の幅の1/10から1/3であり、
前記隙間の高さは前記取付歯部の各該側壁部の幅の1/100から1/5である、
ことを特徴とする回転電機のステータ。 - 前記本体歯部の前記凹部は深さが増加するにつれて幅が漸増し中央付近で最大となった後漸減し、前記取付歯部の前記凸部は高さが増加するにつれて幅が漸増し中央付近で最大となった後漸減している請求項1に記載のステータ。
- 前記取付歯部の前記基部は、中央部、該中央部の両外側の一対の対向部及び該両対向部の両外側の一対の張出し部を含み、各該対向部が各前記側壁部に対向し、該両張出し部が前記ステータコイルの脱落を防止している請求項1に記載のステータ。
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