JP3754577B2 - ラックブレースの羽子板 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、ラックブレースの羽子板に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物等を補強するための筋違として、1組の羽子板とネジ棒とを備えたラックブレースが広く採用されている。このラックブレースでは、例えば、建築物の壁面の四隅に羽子板を固定し、対角線上に配置される1対の羽子板をネジ棒を介してそれぞれ連結することで、横方向への荷重に対する建築物の強度剛性を高めるように構成されている。
ラックブレースの羽子板としては、実公昭54−39565号公報に記載のように、金属パイプの第1端部にネジ棒が螺合するネジ孔を形成し、第2端部を平坦に潰して建築物等への固定用の取付孔を形成したものや、実公昭58−104208号公報に記載のように、左右両側に延びる翼部を備えたナット部材と、幅方向の中央部に長さ方向に延びる長孔を形成した帯板とを用い、ナット部材の本体部が長孔内に配置され且つ翼部が帯板間に挟持されるように、帯板を2つ折りにして両者を結合してなるものが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記公報に記載のラックブレースの羽子板においては、加工工程数が多く、しかも大量生産に不向きなので、製作コストが高くなること、外観形状に対する設計自由度が小さく意匠性に劣ること、などの問題があった。
これらの問題を解決する技術として、鋳造により羽子板を一体成形することも提案されているが、鋳造の場合には、強度剛性に優れた高価な素材を用いた場合でも、鋳巣等の製品欠陥が発生しやすいこと、強度剛性に対する品質バラツキが大きくなりやすいこと、振動に弱いこと、などからラックブレースのような強度メンバーに用いることは、その信頼性の面で問題がある。
【0004】
本発明の目的は、安価で且つ大量生産が製作可能で、しかも強度剛性に対する品質バラツキが少なく信頼性の高いラックブレースの羽子板を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段及びその作用】
請求項1に係るラックブレースの羽子板は、長板状の胴体部と、前記胴体部の長手方向に延びるネジ孔を中央部に有し、胴体部の第1端部に胴体部の両面外へ膨出状に形成したナット部と、前記ナット部のネジ孔に螺合したネジ棒の端部を収容するため、ネジ孔に連なって胴体部の途中部に設けた長孔と、前記胴体部の第2端部に形成した取付孔と、前記胴体部の両面に、胴体部の両面外へ突出配置されるナット部と略同じ高さで、ナット部の第2端部から長孔に沿って長孔の第1端部の両側へ延びるようにそれぞれ形成した、ナット部と胴体部とに亙る略L字状の2つのリブ部とを備え、型打鍛造により一体成形してなるものである。
このラックブレースの羽子板は、型打鍛造により製作されたものなので、大量生産が可能で、しかも鋳造品等と比較して品質バラツキが少なく、強度剛性に対する信頼性も高くなる。また、羽子板の外観形状に対する設計自由度が拡大し、しかも外面が滑らかな曲線状となるので、意匠性に優れるとともに、応力集中の発生が抑制され、強度的にも有利なものとなる。しかも、ナット部と胴体部とに亙って略L字状のリブ部を設けているので、ナット部と胴体部との境界部における強度を高めて該部分における破断を防止できる。
【0006】
また、前記胴体部の両面に2つのリブ部をそれぞれ形成すると、ナット部に作用する引っ張り力をバランスよく胴体部に伝達できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、ラックブレース1は、ネジ棒2と、ネジ棒2の両端部に着脱自在に螺合される羽子板10とを備えている。ネジ棒2の両端部には相互に逆方向のネジを形成したネジ部3が形成され、ネジ棒2の両端に羽子板10を螺合させ、両羽子板10を建築物等に固定した状態で、ネジ棒2を回転操作することにより、両羽子板10が相互に接近或いは離間する方向へ操作されるように構成されている。例えば建築物の壁部の対角状に配置される1対のコーナ部に対して羽子板10をボルト等でそれぞれ固定し、羽子板10が相互に接近するようにネジ棒2を回転操作して、ネジ棒2に対して所定の張力を作用させることで、ラックブレース1を筋違として利用することになる。但し、ターンバックルを併用することも可能である。また、建築物以外の構造物等に対してこのラックブレース1を適用することも可能である。
【0008】
以下、ラックブレース1の羽子板10について説明するが、ネジ棒2の両端に螺合される羽子板10は、ネジ孔15に形成するネジを相互に逆方向に形成した以外は、同じ構成なので、一方の羽子板10の構成についてのみ説明する。
図2〜図5に示すように、羽子板10は、後述のように型打鍛造により一体成形したもので、平坦な長板状の胴体部11と、胴体部11の第1端部に胴体部11の両面外へ膨出するように形成したナット部12と、胴体部11の途中部に設けた長孔13と、胴体部11の第2端部に形成した取付孔14とを備えている。ナット部12の中央部には羽子板10の長手方向に延びるネジ孔15が長孔13に開口するように貫通状に形成されている。長孔13の幅は、ネジ孔15に螺合装着したネジ棒2の端部が長孔13内に進入できるように、ネジ棒2のネジ部3の直径よりもやや大きなサイズに設定され、また長孔13の長さは、ネジ棒2の最大螺進量を考慮して設定されている。
【0009】
胴体部11の両面にはナット部12の第2端部から長孔13の第1端側の口縁に沿って平面視略L字状に延びる1対のリブ部16がそれぞれ形成され、これら4つのリブ部16をナット部12と胴体部11とに亙って形成することにより、ナット部12と胴体部11間に作用する引っ張り応力に対する強度剛性が高められている。リブ部16の高さはナット部12の高さと略同じに設定したが、それよりも高く設定してナット部12の両側のリブ部16の上端部が繋がるように構成してもよい。また、リブ部16のうちの胴体部11の長さ方向に沿って延びる部分は、長く設定することが好ましいが、あまり長くすると建築物への取付けの際に邪魔になるので、建築物への取付に支障を来さない範囲で極力長く設定することが好ましい。尚、リブ部16は、胴体部11の一方の面側にのみ形成してもよいが、ナット部12に作用する引っ張り力をバランスよく胴体部11に伝達できることから胴体部11の両面に形成することが好ましい。尚、符号17は、ネジ棒2に取り付ける左右の羽子板10を見分けるために、一方の羽子板にのみ形成した識別用の突部である。
【0010】
次に、前記ラックブレース1の羽子板10の製造方法について簡単に説明する。
先ず、丸棒を羽子板10と略同じ長さに切断する。丸棒の直径は、羽子板10のサイズに応じて適宜設定するものとし、丸棒の素材は、ラックブレースとしての強度剛性が得られ且つ型打鍛造に適したものであれば、任意の金属材料を利用できる。
次に、切断した丸棒を例えば1200℃に加熱して、エアハンマにて型打鍛造する。加熱は、丸棒自体が導電体であることから、電磁誘導加熱が好適に利用できるが、その他の周知の方法で加熱してもよい。また、この型打鍛造時に、会社名や品番等を付すための浮き出し文字を同時に形成することになる。
【0011】
次に、成形した鍛造品のバリを打ち抜いて除去する。具体的には、鍛造品の外周部に形成されたバリと、長孔13及び取付孔14を閉鎖するように形成されたバリを打ち抜いて除去する。また、このとき、鍛造品の表面に製造年月等を刻印する。
次に、鍛造品に対してショットブラスト処理を施して、表面に付着した酸化物等を除去してから、ナット部12にドリル孔加工を施したのちタップ加工を施してネジ孔15を形成し、電気メッキを施して羽子板10を得ることになる。
こうして一方の羽子板10を製作し、これと同様にしてネジ孔15のネジ切り方向を左右逆にした羽子板10を製作する。そして、羽子板10の製作と並行して右ネジと左ネジとを両端部に形成したネジ棒2を製作し、2種類の羽子板10を1本のネジ棒2の両端にセットし、ラック用のブレースとする。
【0012】
【発明の効果】
本発明に係るラックブレースの羽子板によれば、型打鍛造により製作されたものなので、大量生産が可能で、しかも鋳造品等と比較して品質バラツキが少なく、強度剛性に対する信頼性も高くなる。また、羽子板の外観形状に対する設計自由度が拡大し、しかも外面が滑らかな曲線状となるので、意匠性に優れるとともに、応力集中の発生が抑制され、強度的にも有利なものとなる。しかも、ナット部と胴体部とに亙って略L字状のリブ部を設けているので、ナット部と胴体部との境界部における強度を高めて該部分における破断を防止できる。
【0013】
また、胴体部の両面に2つのリブ部をそれぞれ形成すると、ナット部に作用する引っ張り力をバランスよく胴体部に伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ラックブレースの斜視図
【図2】 羽子板の斜視図
【図3】 羽子板の平面図
【図4】 羽子板の側面図
【図5】 羽子板の正面図
【符号の説明】
1 ラックブレース 2 ネジ棒
3 ネジ部
10 羽子板 11 胴体部
12 ナット部 13 長孔
14 取付孔 15 ネジ孔
16 リブ部 17 突部
Claims (1)
- 長板状の胴体部と、
前記胴体部の長手方向に延びるネジ孔を中央部に有し、胴体部の第1端部に胴体部の両面外へ膨出状に形成したナット部と、
前記ナット部のネジ孔に螺合したネジ棒の端部を収容するため、ネジ孔に連なって胴体部の途中部に設けた長孔と、
前記胴体部の第2端部に形成した取付孔と、
前記胴体部の両面に、胴体部の両面外へ突出配置されるナット部と略同じ高さで、ナット部の第2端部から長孔に沿って長孔の第1端部の両側へ延びるようにそれぞれ形成した、ナット部と胴体部とに亙る略L字状の2つのリブ部と、
を備え、型打鍛造により一体成形してなるラックブレースの羽子板。
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JP18712099A JP3754577B2 (ja) | 1999-07-01 | 1999-07-01 | ラックブレースの羽子板 |
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