JP3754566B2 - 光ディスクへの情報記録方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光ディスク記録再生装置による光ディスクへの情報記録方法、特に所定位置に形成されたプリピットの有無からなるプリフォーマット情報を有する光ディスクへの情報記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、情報の記録が可能な記録媒体として用いられる光ディスクは、アドレス情報や回転制御や記録位置制御のための同期信号などが予めプリフォーマット情報として記録されている。このプリフォーマット情報の記録媒体への形成手段としては、例えば、CD−RやMD(ミニディスク)では、トラック溝をウォブル(蛇行)したグルーブと称する形状を有し、これを形成するためのウォブル信号の変調によりアドレス情報を記録している。
【0003】
また、特開平9−326138号公報には、光ディスクのウォブルしたグルーブを有するトラック溝と共に、これらグルーブ間の領域であるランドに所定間隔でプリピットを形成することが提案されており、狭いトラックピッチにおいても記録トラックが分断されることなく、アドレス情報やディスクの回転制御情報を正確に得ることができるという。
【0004】
図10に、この従来例の光ディスクにおけるトラック構造を示す。この図10において、Wはウォブル(蛇行)、Gはグルーブ(トラック溝)、LPPはプリピット、Dはトラック方向を示す。このようなプリフォーマットの構造は、記録するグルーブにアドレス情報を配置していないため、記録情報が分断されることなく連続するので記録密度の低下がなく、CDやDVDの再生専用ディスクのフォーマットに対して互換性が保たれるというメリットを有する。
【0005】
このようなランドプリピット(LPP)からなるプリフォーマットを有する光ディスクは、アドレス情報などの情報を正確に検出しなければならない。前述の公報や特開平9−17029号公報などによれば、プリフォーマット情報の検出方法としては、光ディスク記録再生装置で周知の集光されたレーザ光により、光ディスクからの反射光を分割された受光素子のうち、トラック方向と平行な2分割(4分割中の2分割などを含む)された領域の差分信号から得る方法がある。
【0006】
この差分信号は、通常(ラジアル)プッシュプル信号と呼ばれ、ローパスフィルタ(LPF)を通して高域成分が除去された後、トラッキング制御に必要なトラックエラー信号として用いられる。
また、このプッシュプル信号がバンドパスフィルタ(BPF)を通過すると、単一周波数のウォブル信号が得られ、それがスピンドルモータの回転制御に用いられる。
【0007】
また、このプッシュプル信号がハイパスフィルタ(HPF)を通過して直流成分が除去された後、スライサー(コンパレータ)によって2値化され、復調されることによって、アドレス情報などのプリフォーマット情報が得られる。
このように、上記プッシュプル信号には、光ディスク記録再生装置の制御に必要な各種の信号が重畳されており、それぞれの信号を正確に分離して検出することが重要である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の光ディスク記録再生装置による記録方法では、記録情報のジッタが最小となる最適パワーが望ましく、OPC(試し書き)などを用いて最適記録パワーが決定されていた。この最適記録パワーで記録を行なうと、図12の(d)に示すようなレーザダイオード(LD)の発光波形を用いるため、同図の(e)における左右部に示すように、溝の段差によってマークのラジアル方向の広がりは防止され、溝幅いっぱいに充填されるように記録マークが形成される。
【0009】
なお、図12の(a)はハイパスフィルタ(HPF)通過後のプッシュプル信号、(b)はプリピット検出窓信号、(c)は記録データのEFM(8−14変調)信号を示す。
【0010】
ところが、プリピットは隣接する記録用の溝がつながるようなピットとして形成されているので、プリピット部分は溝の段差がないため、図12の(e)においてプリピットLPPのある部分に示すように記録マークMがはみ出し、反射率の低下及びラジアルプッシュ信号の減少が顕著になるという問題があった。
また、記録情報はEFMパルス変調されており、直流成分がなくなっているから、記録マークとスペースは同じ確率でプリピットLPPと隣接するため、ラジアルプッシュプル信号をHPFを通したプリピット信号は、その振幅が必ず変動する。
【0011】
そのため、図11の(a)に示すように、未記録部分でのプリピット信号は振幅が安定しており、信号のアイが十分に開いている。したがって、ウォブル振幅変動に追従する2値化スライサを用いることにより、正確にかつ容易に信号検出が可能である。
【0012】
ところが、記録情報のジッタが最小となる最適記録パワーでトラック全周を記録すると、記録後のプリピット信号は図11の(b)に示すように、隣接した記録情報がマークであるかスペースであるかによって大きな光量変動が生じ、例えばマークが隣接すると振幅が1/2以下に低下する。この状態は、記録マークが完全に隣接したとき最小値となり、スペースが完全に隣接したとき最大値となっている。このような状態ではプリピット信号のアイは小さくなるか閉じてしまい、2値化が困難になったり、全く検出不能になることもある。
【0013】
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、所定位置に形成されたプリフォーマット情報を有する光ディスクへの情報記録において、プリピット信号が隣接して記録された記録マークにより減衰するのを防止すると共に、ウォブル信号成分に乗ずる記録マークの信号をも防止することができ、プリフォーマット情報を正確に読み取ることができるようにすることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明は、所定位置に形成されたプリピットの有無からなるプリフォーマット情報を有する光ディスクへの情報記録方法であって、上記の目的を達成するため、上記プリピットが隣接して配置される領域での記録マークのラジアル方向の幅を、他の領域における記録情報の最適記録パワーで形成された記録マークの幅より狭く形成する
【0017】
そして、光ディスクに記録するときに予め複数の記録パワーでの試し書きによって、記録情報に対する最適記録パワーを決定する試し書き動作を行なうときに、各々の記録パワーに対してプリピットの信号の有無あるいはプリフォーマット情報の読み出しの正否を対応づけて、プリピット検出が可能な適正記録パワーを決定し、前記プリピットが隣接して配置される領域ではその適正記録パワーで記録する
【0019】
また、上記プリピットの有無を検出するためプリピット検出窓信号を生成し、そのプリピット検出窓期間中を上記プリピットが隣接して配置された領域とすることができる。
【0020】
このような光ディスクへの情報記録方法において、記録溝をラジアル方向に所望の振幅で蛇行させたトラック溝から検出したウォブル信号の振幅の上下ピーク位置のいずれかにプリピットを形成したとき、目的のプリピット位置を含む所望の時間幅に調整されたウォブルピーク検出信号を生成し、そのウォブルピーク検出信号からプリピット検出窓信号を生成するようにして、そのウォブルピーク期間中もしくはプリピット検出窓期間中を上記プリピットが隣接して配置された領域とすることもできる。
【0021】
さらに、記録マークとスペースの形成に対応した複数のレーザダイオードの発光パワーを発生させるためのレーザダイオード制御回路とレーザダイオード駆動回路に、前記プリピット検出窓信号を入力し、該プリピット検出窓信号期間中は、その他の領域より低減したレーザダイオードの発光パワーを設定してレーザダイオード駆動回路を制御するか、あるいはその他の領域より低減したパルス幅を設定してレーザダイオード制御信号を生成することもできる。
【0022】
上記プリピットが隣接して配置された領域の期間中に、その他の領域と異なるレーザダイオード発光波形で情報の記録をするとき、該領域の期間中に形成された記録マーク長とスペース長が、該領域以外における理想的な平均の記録マーク長もしくはスペース長と略同一になるように、レーザダイオード制御信号のパルス幅を補正するのが望ましい。
【0023】
また、光ディスクに形成されたグルーブあるいはランドの一方の溝に記録マークを形成するとき、該記録マークを形成する溝領域に対する他方の溝にプリピットを形成したプリフォーマット情報を有する光ディスクを用いることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いてこの発明の詳細な説明を行なう。
図1は、この発明による情報記録方法を実施するための光ディスク記録再生装置に必要な制御ブロックの構成を示す。また、図2は、各種の制御信号を得るための具体的な回路例を示すブロック図である。
【0025】
まず、図1に示すように、トラック方向に対して前後左右に4分割した受光素子(フォトダイオード:以下PDと称す)1と、レーザ光を発生するレーザダイオード(LD)2とその発光量のモニタ用PD3、およびアクチュエータ4の他に図示しないレンズ等の光学素子などによって、ピックアップ5を構成している。
【0026】
そのPD1の4分割されたA,B,C,Dの各部(チャネル)からの検出電流信号を、4ch.I/V変換・演算部6によってそれぞれ電圧信号A〜Dに変換した後、加減演算する。
そして、その演算によるA+B+C+D信号のをRF検出部7へ、(A+B)−(C+D)信号をプリピット検出部10とウォブル検出部13とトラックエラー検出部16とへ、(A+C)−(B+C)信号をフォーカスエラー検出部18へ、それぞれ入力させる。
【0027】
A+B+C+D信号が記録情報であり、RF検出部7の波形等価回路により波形整形されたRF信号と、クロック生成部8のPLL(フェーズロックドループ)回路によって生成したチャネルクロックとを用いて、EFMデコーダ9によって情報が再生される。
【0028】
(A+C)−(B+D)信号は非点収差法を用いた場合に得られるフォーカスエラー信号であり、ローパスフィルタ(LPF)からなるフォーカスエラー検出部18を通過して高域信号をカットされた後、フォーカシング駆動回路19に入力してフォーカシングアクチュエータを制御する。
(A+B)−(C+D)信号がプッシュプル信号であり、図2で説明する各種制御信号の原信号となる。
【0029】
このプッシュプル信号を、まず高域であるプリピットとウォブル帯域をカットするローパスフィルタ(LPF)からなるトラックエラー検出部16を通してトラックエラー信号を得て、トラッキング駆動回路17によってトラッキングアクチュエータを制御する。
【0030】
また、ウォブル周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタ(BPF)からなるウォブル検出部13を通してウォブル信号を得て、PLL回路からなるクロック生成部14によって生成したクロック信号を取り出し、スピンドル駆動回路15によってスピンドルモータを制御する。
【0031】
同時に、ウォブル検出部13からのウォブル信号をプリピット領域生成部20へ入力させる。
一方、ハイパスフィルタ(HPF)からなるプリピット検出部10を通して得たプリピット信号も、プリピット領域生成部20へ入力させる。
このプリピット領域生成部20からのプリピット領域を示す信号を記録波形制御回路22に入力させる。
【0032】
また、プリピット検出部10からのプリピット信号をアドレス検出部11でそのアドレス情報を検出し、そのアドレス情報にしたがって記録位置制御回路12により記録位置信号が決定され、記録波形制御回路22に入力させる。この記録波形制御回路22には、発光パワー/パルス幅設定部21からの発光パワー/パルス幅設定信号も入力される。
そして、記録する情報は記録位置信号によって定められた位置から、EFMデコーダ9によってEFM変調されたデータに応じて、記録波形制御回路22によってLD2の駆動を行なって記録している。
【0033】
プッシュプル信号の生成と、それから各種制御信号を得る回路について、図2によってより具体的に説明する。
図2に示す4分割のPD1のA,B,C,Dの各部の受光量に応じた検出電流(光電流)信号のうち、A部とB部からの信号を加算してI/V変換回路61で電圧信号に変換して(A+B)信号を得る。また、C部とD部からの信号を加算してI/V変換回路62で電圧信号に変換して(C+D)信号を得る。
【0034】
それらをオペアンプによる減算回路63に入力させて、(A+B)−(C+D)信号を出力させる。これがプッシュプル信号であり、各種制御信号の原信号となる。
このプッシュプル信号から、前述したように、LPFからなるトラックエラー検出部16を通してトラックエラー信号を得る。
また、BPFからなるウォブル検出部13とPLL回路からなるクロック生成部14を通してスピンドル駆動信号を得る。
【0035】
さらに、ウォブル検出部13を通して得たウォブル信号をピークホールド回路30に入力させてピークホールド電圧VPHを得る。そのピークホールド電圧VPHを、オペアンプによる減算回路31に入力させて、所定の電圧V1 だけレベルダウンしたスライスレベルVPH−V1 を比較回路33の一方の入力とし、その比較回路33他方の入力であるウォブル信号を2値化して、ウォブルピーク検出信号を得る。
【0036】
また、ピークホールド電圧VPHをオペアンプによる加算回路32にも入力させて、所定の電圧V2 だけレベルアップしたスライスレベルVPH+V2 を比較回路34の入力とし、その比較回路34の他方の入力であるプリピット検出部(HPF)10を通過したプッシュプル信号を2値化し、プリピット信号を得る。
この信号はプリピット信号の振幅の大小によってパルス幅がばらつくため、単安定マルチバイブレータ37により安定した一定パルス幅に調整し、安定したプリピット検出信号を得る。
【0037】
このプリピット検出信号とウォブルピーク検出信号とから、CPU35に制御されるプリピット・ポジション検出回路36の復調器を用いて、アドレス情報などのプリフォーマット情報を得ている。また、プリピット検出窓信号も得る。
【0038】
図3はこれらの各信号の波形を示すタイミングチャートである。(a)はプリピット検出部10のHPFを通過した後のプッシュプル信号、(b)はウォブル検出部13のBPFを通過したウォブル信号、(c)はウォブルピーク検出信号、(d)は比較回路34から出力されるプリピット検出信号、(e)は単安定マルチバイブレータ37を通過後のプリピット検出信号、(f)はプリピット検出窓信号の波形をそれぞれ示す。
【0039】
そこで、このような光ディスク記録再生装置を用いた、この発明による情報記録方法の実施形態について説明する。
まず、この発明の第1の実施の形態では、光ディスクのプリピット(LPP)を含む所望領域に記録するときは、図4の(d)に示すように記録パワーを低下させたLD発光波形とし、記録マークMの幅を同図の(e)に示すように他の最適記録パワーで記録された記録マークMの幅よりも狭くなるように形成する。
【0040】
このとき、マークは記録パワーの低下量に応じてプリピット(LPP)へのはみ出し量が減少し、反射光量の低下も防止される。このような記録を行なうことによって、図5に示すように、記録後のプリピット信号は十分な振幅が得られ、2値化するためのスライサの設定も容易になり、正確な検出が可能になる。
【0041】
具体的な記録制御として、プリピットを含む所望領域は前述のウォブルピーク検出信号の期間としており、この期間はマーク部分の発光パワーを低下させるように、図1における記録波形制御回路22においてリアルタイムで切り替えるように設定している。
また、他の例として、プリピット検出窓信号の期間は記録マーク部分の加熱パルス幅を狭くさせるように、記録波形制御回路22においてリアルタイムで切り替えるように設定して、LD制御信号を生成するようにしてもよい。
【0042】
なお、前述の例ではウォブルピークの期間をプリピット検出窓信号としているが、図3の(f)に示すような検出窓信号が望ましい。詳細には、ウォブルピーク検出信号とプリピット検出信号から、図2に示したCPU35に制御されるプリピット・ポジション検出回路36によって、プリピットの有無が反映されたウォブル位置のみを抽出する。
この信号をプリピット検出窓信号とすることにより、プリピットを検出するために低減された記録パワーを、不必要な領域に設定することがなくなる。
【0043】
次に、この発明による情報記録方法の第2の実施形態を図6を用いて説明する。この情報記録方法を実施するための光ディスク記録再生装置の構成は、図1および図2によって説明した第1の実施形態の場合と同様である。
この第2の実施形態の情報記録方法では、光ディスクのプリピットを含む所望領域に記録するときは、記録パワーを低下させず、記録パルス列中の加熱パルス幅を狭くするようにしている。
【0044】
具体的には、図6の(a)に示すLD発光波形のように、先頭の加熱パルスと後続の複数の加熱パルスの幅を、一定間隔だけ他の部分の最適なパルス幅より狭く発生させる。特にマルチパルス部分はチャネルクロック周期で繰り返して発光するため加熱パルスのデューティを減少させることによって、すべてのマーク長に対応することができる。
【0045】
このような記録を行なうことにより、プリピット領域の熱容量が低下するため、記録マークは細く形成されるようになり、記録パワーを低下させる場合と同様にプリピット(LPP)へのマークMのはみだし量が減少し、図5に示したプリピット信号と同様な信号が得られ、かつ正確な検出が可能になる。
【0046】
しかし、この第2の実施形態の情報記録方法は、プリピット信号は良好に検出できるが、プリピットを含む所望領域の記録マーク幅はラジアル方向(直径方向)だけでなく、タンジェンシャル方向(円周方向)についても図6に破線で示す理想長に対して長さが短くなってしまい、情報の記録精度(ジッタ特性)が劣化している。
【0047】
そこで、記録パワーの低減や加熱パルス幅の低減によって短縮化されたタンジェンシャル方向の記録マーク長が、その他の最適記録パワーで記録した領域の理想的な平均の記録マーク長もしくはスペース長と一致するように、先頭の加熱パルスの前エッジと最終の加熱パルスの後ろエッジが広くなるように、図6の(c)のLD発光波形に示すように補正する。
それによって、図6の(d)に示すように、プリピット(LPP)を含む領域にも理想長の記録マークMが形成される。
【0048】
この補正はプリピットを含む所望の領域の全域に適応することで、第2の実施形態のようにマーク幅を低減した場合での補正を示しているが、第1の実施形態のように記録パワーを低減した場合であってもパルス幅を補正することにより、同一の効果が得られる。
【0049】
このように、この実施の形態ではプリピットが配置される所望領域に対し、記録マークの幅を細く形成できるようにしたので、プリピット信号の光量変動を防止できる。このような記録を行なうことによって、プリピット信号のアイは十分開くようになり、2値化による検出も正確にかつ容易になる。
このとき、プリピットが配置される所望領域の記録された情報は最適パワーより低パワーとなるが、再生時にエラーとなるほどでは無い。仮にパワー変動により誤りが生じたとしても、領域は微少であり、ECC(誤り訂正符号)により訂正されるために問題とはならない。
【0050】
次に、この発明による記録を行なうとき、情報の記録とプリピット領域の記録のそれぞれに最適なパワーを得る方法について説明する。これは、上記のすべての実施の形態において用いられる。
基本的には、記録する情報に対する試し書きと同様な手順である。
【0051】
まず、複数の記録パワーで記録を行ない、それぞれの再生信号からモジュレーションやアシンメトリやジッタなどの再生信号特性を検出回路から算出する。これらの値はそれぞれの記録パワーに対応づけておくと同時に、プリピット検出回路から得られるプリピット信号振幅値や、その復号されて得られたプリフォーマット情報と予め検出しておいたプリフォーマット情報との差異により、プリピット検出の正否を判定して対応づけておく。これにより、記録情報にとっての最適記録パワーと、プリピット検出にとっての適正記録パワーが求められる。
【0052】
このようなOPC(試し書き)での各々の記録パワーに対する、再生された記録情報のジッタ特性と、プリピットを復調したアドレス情報のエラー率(Block Error Ratio)は、図7の(a),(b)に示すような特性を示す。なお、(a)は色素系ディスクの特性、(b)は相変化系ディスクの特性例を示している。
【0053】
これによると、それぞれに最適なパワーは一致せず、ジッタ特性への最適記録パワーP0σはプリピットのエラー率への適正記録パワーP0LPPよりも高くなっていることが分かる。
したがって、それぞれに適した記録パワーを所望な領域で使い分けることができれば、高精度な記録とプリピット検出を両立できる。
【0054】
次に、具体的なこの発明におけるOPC(試し書き)の方法の一つを、図8のフローチャートに示す。
この実施例のOPCを開始すると、まずステップS1で、光ディスクに情報を記録する前に所定のPCA(Power Calibration Area) 領域へピックアップ(PU)を移動し、ステップS2で十分低い記録パワーをセットして記録(試し書き)を行なう。そして、ステップS3ですぐに再生して、記録情報のモジュレーションM、アシンメトリβ、ジッタσなどの記録状態を示す特性値を検出する。
【0055】
そして、ステップS4でプリピットの振幅(強度)や予め検出しておいたアドレス情報との差異(精度)を検出する。
次に、ステップS5で記録情報の最適パワーとプリピットへの最適パワーを得たか否かを判断する。その結果、得ていると判断した場合にはステップS6へ進むが、そうでなければステップS9へ進んで、記録パワーを所定量だけ増加させて、ステップS2に戻って同様の試し書きと検出を繰り返す。
【0056】
ステップS6に進んだ場合は、得られた記録情報に対する最適記録パワーを決定した後、ステップS7へ進んではプリピットの所望領域への最適記録パワーを決定する。そして、ステップS8で、得られた2つの記録パワーの設定比を算出し、記録再生装置の記憶素子やディスクの所定領域に記録(保存)しておく。
このような一連の動作によりOPCを終了する。この手順により、記録する情報とプリピット領域に対するそれぞれの最適な記録パワーを得ることが可能である。
【0057】
上記のOPCの方法では、従来のOPCよりも多くのPCA領域を必要とする。通常の記録可能なディスクは追記が可能であり、従来あるいは上述のOPCの方法では、追記のたびに毎回試し書きを行なうことになる。
これは、既存の光ディスクや2度目以降の記録の場合であっても、記録情報に対する最適記録パワーは記録再生装置の状態によってずれを生じ易いため、前回記録時の記録パワーを用いると適正な記録ができなかったためである。
【0058】
しかし、この場合でも記録情報の最適記録パワーと、プリピット領域への適正記録パワーの設定比は大きく変化しないことが分かった。
そこで、これを利用した別のOPCの方法を図9のフロー図を用いて以下に説明する。
【0059】
この実施例のOPCを開始すると、ステップS11で記録するディスクが既存のディスクか、または追記であるかを検査する。
既存のディスクでなく、追記でもなかった場合には、ステップS20に移り、前述した実施例1のOPC動作を選択し、ステップ21でそのOPCを開始する。以下、第8によって説明したステップS1〜S9の動作を実行した後、OPCを終了するが、図9では省略している。
【0060】
記録するディスクが既存のディスクか、または追記であった場合には、ステップS12へ進んで、記録情報へのOPC(試し書き)動作を選択し、ステップS13〜S18,およびS22でそれを実行するが、前述した実施例1の場合と異なり、記録情報に対する最適記録パワーのみを求め、プリピット領域に対する適正記録パワーは求めない。
つまり、ステップS13〜S18,S22は従来のOPCと同様である。
そして、S19で既にディスクに記録されている設定比と記録情報に対する最適記録パワーとを用いて、プリピットの所望領域への適正記録パワーを算出し、決定する。
【0061】
次に、さらに簡易に適正記録パワーを得る方法を説明する。
記録可能な光ディスクや、書き換え可能な光ディスクにはいろいろな材質が用いられているが、記録情報の最適記録パワーとプリピット領域に対する適正記録パワーの設定比は、光ディスクの材質によってほぼ決まっていた。
これを利用して、このOPCの実施の形態では、従来のOPCのように記録情報の最適記録パワーのみを求めて、プリピット領域に対する適正記録パワーはこの材質による設定比を用いて求める。
【0062】
まず、記録可能な光ディスクとして、有機色素を記録層に用いたディスクについて説明する。
記録材料の例としては、ポリメチン色素、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系染料、および金属錯体化合物などが挙げられる。
【0063】
これらの色素は、熱分解やそれに伴う基板変形による光学的変化を生じ、その変化によりマークが形成されるため、情報を記録するときの最適記録パワーは非常に敏感である。
これらの記録材料を用いた光ディスクでの詳細な実験と評価の結果、図7の(a)に示すように、前述のプリピットを含む所望領域での適正な記録パワーP0LPPを、情報の最適記録パワーP0σに対して5〜15%低減することによって、記録された情報とプリピットの検出が両方とも正確に行なえることが分かった。そして、より望ましい低減比率は約10%であった。
【0064】
次に、書き換え可能な光ディスクとして、相変化材料を記録層に用いたディスクについて説明する。
これらの記録材料の例として、Ge−Sb−Te系、Ge−Te−Sb−S系、Te−Ge−Sn−Au系、Ge−Te−Sn系、Sb−Se系、Sb−Se−Te系、Sn−Se−Te系、Ga−Se−Te系、Ga−Se−Te−Ge系、In−Se系、In−Se−Te系、Ag−In−Sb−Te系などが挙げられる。
【0065】
これらの相変化材料は加熱から冷却の工程において、徐冷却によってクリスタル層を示すことにより高反射のスペースを形成し、急冷却によってアモルファス層を示すことにより低反射のマークを形成する。この状態は可逆変化するため、上書きが可能である。
【0066】
この光ディスクでの詳細な実験と評価の結果、図7の(b)に示すように、前述のプリピットを含む所望領域での適正な記録パワーP0LPPを、情報の最適記録パワーP0σに対して10〜20%低減することにより、記録された情報とプリピットの検出が両方とも正確に行なえることが分かった。
そして、より望ましい低減比率は約15%であった。特に、Ag−In−Sb−Te系の相変化材料において高い効果が得られる。
【0067】
また、グルーブあるいはランドの一方の溝領域に記録マークを形成するとき、記録マークを形成する溝領域に対し他方の溝領域にプリピットからなるプリフォーマットが形成された光ディスクを用いると良い。
それによって、プリピット信号と記録する情報の精度が両立しがたい記録媒体であっても、上記のプリピット信号検出と情報の再生信号を正確に得る効果が最大限に発揮される。
【0068】
【発明の効果】
以上説明してきたように、この発明による光ディスクへの情報記録方法は、プリピット領域での記録マークのラジアル方向の幅を、他の領域における記録情報の最適記録パワーで形成された記録マークの幅より狭く形成することにより、プリピット信号に対する記録マークの影響を最小限に抑え、プリフォーマット情報を高精度に読み出すことが可能になると共に、記録された情報もジッタの悪化を抑えて再生することができる。
【0070】
また、OPC(試し書き)を行なうときに、各々の記録パワーに対して適正な記録パワーを求めることにより、プリピット情報を高精度に読み出せると共に、記録された情報もジッタの悪化を抑えて再生することができる。
さらに、OPCを行なうときに前回記録時のOPCによる記録情報の最適記録パワーとプリピット領域の適正記録パワーの設定比を保存することにより、従来のOPCと同様の手間でプリピット情報を高精度に読み出せると共に、記録された情報もジッタの悪化を抑えて再生することができる。
【0071】
あるいは、上記設定比を光ディスクの材質ごとに記憶しておくことにより、適正な記録パワーをより簡単に決定することができ、プリピット情報を高精度に読み出せると共に、記録された情報もジッタの悪化を抑えて再生することができる。
また、プリピットの有無を検出するためのプリピット検出窓信号を生成し、そのプリピット検出窓期間中をプリピット領域とすることにより、プリピット近傍の領域を誤ることなく設定できる。
【0072】
さらに、記録溝をラジアル方向に所望の振幅で蛇行させたウォブルから検出したウォブル信号の振幅の上下ピーク位置のいずれかにプリピットを形成したとき、目的のプリピット位置を含む所望の時間幅に調整されたウォブルピーク検出信号を生成し、この信号からプリピット検出窓信号を生成することにより、プリピット近傍の領域を正確にかつ必要最小限に設定できる。
【0073】
また、記録マークとスペースの形成に対応した複数のLD発光パワーを発生させるためのLD制御回路とLD駆動回路に、上記プリピット検出窓期間中はその他の領域と異なるLD発光パワーもしくは異なるパルス幅を選択するように、LD制御信号を生成してLD駆動回路を制御するようにすれば、プリピット検出窓信号を用いてプリピット近傍の記録マークを常に所望の形状にコントロールできる。
【0074】
さらにまた、プリピット領域で、通常領域と異なるLD発光波形で情報の記録をするとき、プリピット領域の期間中に形成された記録マーク長とスペース長が、プリピット領域以外での長さと略同じになるように、LD制御信号のパルス幅を補正することにより、プリピット領域のタンジェンシャル方向のマーク長が短くなることがなくなる。
【0075】
そして、グルーブあるいはランドの一方の溝領域に記録マークを形成するとき、記録マークを形成する溝領域に対し他方の溝領域にプリピットからなるプリフォーマットが形成された光ディスクを使用すれば、プリピット信号と記録する情報の精度が両立しがたい記録媒体であっても、上記のプリピット信号検出と情報の再生信号を正確に得る効果が最大限に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による光ディスクへの情報記録方法を実施するための記録再生装置に必要な制御系のブロック図である。
【図2】同じくそのプッシュプル信号から各種の信号を得るための具体的な回路構成を示すブロック図である。
【図3】図2における各種の信号の波形を示すタイミングチャート図である。
【図4】この発明の第1の実施形態を説明するための各種の信号とLD発光波形および光ディスクの記録状態を示すタイミングチャート図である。
【図5】同じくその場合のプリピット信号の検出波形を示す図である。
【図6】この発明の第2の実施形態を説明するためのLD発光波形と光ディスクの記録状態を示すタイミングチャート図である。
【図7】色素ディスク系及び相変化系ディスクにおける、この発明による情報記録時のジッタ特性とプリピット検出精度との関係を示す線図である。
【図8】この発明による光ディスクへの情報記録方法における、OPC(試し書き)動作の一例を示すフロー図である。
【図9】同じくOPC(試し書き)動作の他の例を示すフロー図である。
【図10】この発明により情報を記録する光ディスクの記録部分の一部を示す拡大図である。
【図11】光ディスクの未記録のプリピット信号と従来の情報記録方法による記録後のプリピット信号の検出波形を示す図である。
【図12】従来の光ディスクへの情報記録方法を説明するための図4と同様なタイミングチャート図である。
【符号の説明】
1:4分割した受光素子(フォトダイオード)
2:レーザダイオード(LD)
3:モニタ用のフォトダイオード(PD)
4:アクチュエータ 5:ピックアップ
6:4ch.I/V変換・演算部
7:RF検出部 8:クロック生成部
9:EFMデコーダ
10:プリピット検出部(HPF)
11:アドレス検出部 12:記録位置制御回路
13:ウォブル検出部(BPF)
14:クロック生成部 15:スピンドル駆動回路
16:トラックエラー検出部(LPF)
17:トラッキング駆動回路
18:フォーカスエラー検出部(LPF)
19:フォーカシング駆動回路
20:プリピット領域生成部
21:発光パワー/パルス幅設定部
22:記録波形制御回路
30:ピークホールド回路 31:減算回路
32:加算回路 33,34:比較回路
35:CPU 36:プリピット・ポジション検出回路
37:単安定マルチバイブレータ

Claims (6)

  1. 所定位置に形成されたプリピットの有無からなるプリフォーマット情報を有する光ディスクへの情報記録方法であって、
    前記プリピットが隣接して配置される領域での記録マークのラジアル方向の幅を、他の領域における記録情報の最適記録パワーで形成された記録マークの幅より狭く形成するとともに、
    光ディスクに記録するときに予め複数の記録パワーでの試し書きによって、記録情報に対する最適記録パワーを決定する試し書き動作を行なうときに、各々の記録パワーに対してプリピットの信号の有無あるいはプリフォーマット情報の読み出しの正否を対応づけて、プリピット検出が可能な適正記録パワーを決定し、前記プリピットが隣接して配置される領域ではその適正記録パワーで記録することを特徴とする光ディスクへの情報記録方法。
  2. 請求項1に記載の光ディスクへの情報記録方法において、
    前記プリピットの有無を検出するためプリピット検出窓信号を生成し、そのプリピット検出窓期間中を前記プリピットが隣接して配置された領域とすることを特徴とする光ディスクへの情報記録方法。
  3. 請求項1に記載の光ディスクへの情報記録方法において、
    記録溝をラジアル方向に所望の振幅で蛇行させたトラック溝から検出したウォブル信号の振幅の上下ピーク位置のいずれかにプリピットを形成したとき、目的のプリピット位置を含む所望の時間幅に調整されたウォブルピーク検出信号を生成し、そのウォブルピーク検出信号からプリピット検出窓信号を生成するようにして、そのウォブルピーク期間中もしくはプリピット検出窓期間中を前記プリピットが隣接して配置された領域とすることを特徴とする光ディスクへの情報記録方法。
  4. 請求項2又は3に記載の光ディスクへの情報記録方法において、
    記録マークとスペースの形成に対応した複数のレーザダイオードの発光パワーを発生させるためのレーザダイオード制御回路とレーザダイオード駆動回路に、前記プリピット検出窓信号を入力し、該プリピット検出窓信号期間中は、その他の領域より低減したレーザダイオードの発光パワーを設定してレーザダイオード駆動回路を制御するか、あるいはその他の領域より低減したパルス幅を設定してレーザダイオード制御信号を生成することを特徴とする光ディスクへの情報記録
    方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光ディスクへの情報記録方法において、
    前記プリピットが隣接して配置された領域の期間中に、その他の領域と異なるレーザダイオード発光波形で情報の記録をするとき、該領域の期間中に形成された記録マーク長とスペース長が、該領域以外における理想的な平均の記録マーク長もしくはスペース長と略同一になるように、レーザダイオード制御信号のパルス幅を補正することを特徴とする光ディスクへの情報記録方法。
  6. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の光ディスクへの情報記録方法において、
    光ディスクに形成されたグルーブあるいはランドの一方の溝に記録マークを形成するとき、該記録マークを形成する溝領域に対する他方の溝にプリピットを形成したプリフォーマット情報を有する光ディスクを用いることを特徴とする光ディスクへの情報記録方法。
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