JP3753571B2 - 高靱性耐熱鋼の冷間鍛造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばオーステナイト系耐熱鋼等の冷間鍛造性に劣る材料を用いた冷間鍛造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンバルブを熱間鍛造にて製造する方法として、特開昭60−216944号公報が知られている。この先行技術は、本出願人が提案したものであり、その内容は、先ず図5(a)に示すように、溶体化処理が終了した耐熱鋼線材を所定長さに切断してスラブ(ビレット)とし、次いで、同図(b)に示すように、該スラブの一端に押出し成形時の油溜を画成するテーパ面を形成し、この後、同図(c)に示すように、押出し成形することで、大径部と小径部を形成し、更に同図(d)に示すように、大径部の形状をバルブ傘部に近い形状とした中間品まで成形するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した熱間鍛造を、マルテンサイト系鋼材、クロムモリブデン鋼材、構造用鋼材などに適用する場合には、大きな問題は生じない。
しかしながら、エンジンバルブでも高温に晒されるエキゾーストバルブの材料としてはオーステナイト系耐熱鋼のような高耐熱鋼が要求され、斯かるオーステナイト系耐熱鋼等に上述した熱間鍛造ではなく作業環境の改善等を目的として冷間鍛造を適用した場合には以下の不具合が生じる。
【0004】
即ち、エンジンバルブを冷間鍛造するには、図6に示すように線材101をシャー102を用いて所定寸法に切断してスラブ103とし、このスラブ103を冷間鍛造するのであるが、溶体化処理後のオーステナイト系耐熱鋼は他の材料に比べて靱性(粘性)が高いため、スラブ103の形状は、マルテンサイト系鋼線材を切断した場合と異なり、図7(a)及び(b)に示すように、両端の剪断部が潰れて楕円形に近い形状になり、また一部にダレ104が生じ、更に軸方向に沿って全体も曲ってしまう。
【0005】
そして、このようなスラブを用い、特開昭60−216944号公報に開示される熱間鍛造と同様に、スラブの一端にテーパ面を形成するため、図8に示すように、スラブ103を金型105内にセットし、上からパンチ106で押圧して成形しようとすると、先に点aから変形が開始し、点bの変形開始は図9に示すように、点a部分が弾性域を過ぎて塑性域に入ってからになり、点bが塑性域に入る前に点aでは破断域に入ってしまう。
【0006】
その結果、図10(a)に示すように、ダレ104がスラブ103に重なってしまうカブリ現象(かえり現象)が生じ、このカブリ現象が生じた材料を用いて軸押出し成形すると、図10(b)に示すように、カブリ部分が延伸され軸端部に箔状のバリが発生してしまう。また、スラブの一端にテーパ面を形成せずに端部形状を不均一のままにして軸押出し成形すると、図10(c)に示すように、軸部にスラスト方向のカジリが発生してしまう。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく本発明は、オーステナイト系の高靭性耐熱綱からなる線材を所定長さに切断してスラブとし、潤滑油を用いて金型装置内のキャビティ内にスラブを挿入し、このスラブの少なくとも一端側の形状を切断前の形状に近づける矯正加工を行い、この後、矯正したスラブを冷間鍛造により、前記スラブの一端を前方押出成形し、テーパー部を備えたスラブとする高靭性耐熱綱の冷間鍛造方法であって、前記金型のキャビティ底部はフラット面とこのフラット面とキャビティ内周面との境界部に形成される曲面とからなり、スラブの直径をDとしたとき、前記曲面の曲率半径(r)をr=D/4以下としで、前記フラット面の直径(d)をd=D−2r以上とするようにした。
これにより、オーステナイト系耐熱鋼等に上述した熱間鍛造ではなく作業環境の改善等を目的として冷間鍛造を適用した場合でも剪断両端部における潰れやダレの発生を防止し、成形時のカブリ現象やカジリを防止することが出来る。
また矯正加工の際に、金型装置例えば上インサートと下インサート間に形成した排出路を介してキャビティ内の潤滑油を排出するようにすれば、キャビティの底部に潤滑油が残ってしまうことも防止できる。
【0008】
本発明は耐熱性が要求される部材の冷間鍛造に適用され、エンジンのエキゾーストバルブの製造を例に挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明方法の実施に用いる金型装置の断面図、図2(a)〜(d)は本発明方法を組込んだ冷間鍛造を工程順に説明した図である。尚、図示した金型装置は縦置きのものを示したが、横置きのパーツフォーマを用いても本発明を実施することができる。構造的には縦置きと横置きとでは実質的に差異はないので、以下には縦置きの金型装置の構造を説明する。
【0010】
金型装置は、ベース1の上に補強リング2を設け、これらベース1と補強リング2の外側をケース3で囲み、また、補強リング2の内側に上インサート4と下インサート5を分割して配置している。上インサート4及び下インサート5は何れも裁頭円錐形若しくは裁頭角錐形をなし、補強リング2で強固に外周から保持され、成形時に上下にガタつくことがないようにしている。
【0011】
また、上インサート4と下インサート5にはスラブWを投入するとともにパンチ6が進入するキャビティ7(成形空間)が形成されている。このキャビティ7の底面はフラット面8と曲面9からなっている。フラット面8の一部はノックアウトピン10の上端面にて構成され、このノックアウトピン10はベース1内に設けた昇降ロッド11の作動によりこのキャビティ7内に出没する。また曲面9はキャビティ7の底面と内周面との境界部に形成されている。
【0012】
ここで、スラブWの直径をDとすると、前記曲面9の曲率半径rは、r=D/4以下とし、フラット面8の直径dはd=D−2r以上とすることが好ましい。即ち、曲面9の曲率半径rをあまり大きくすると、スラブWの形状を切断前の状態に戻すというよりは、従来例で説明したテーパ面をつける金型に近くなり、カブリやカジリを生じるおそれがある。したがって、曲面9の曲率半径r、フラット面8の直径dは上記の範囲にするのが好ましい。
【0013】
また、前記キャビティ7内周面には潤滑油が塗布されるが、矯正時にこの潤滑油がキャビティ7底部に溜まってしまうと、矯正の阻害になる。そこで、本実施例にあっては、金型装置に潤滑油の排出路12を形成している。そして、前記上インサート4と下インサート5との分割面間に形成される隙間13を前記排出路12につなぎ、該分割面をキャビティ7の底面近くに設けることで、キャビティ7の底部に潤滑油が残らないようにしている。
【0014】
更に、隙間13については、径方向外側に向かって徐々に流路断面積が大きくなるようにし、潤滑油が排出されやすい構造になっている。
【0015】
以上の構成からなる金型装置を用いてエンジンのエキゾーストバルブを冷間鍛造する手順を図2に基づいて説明する。
先ず、溶体化処理が施されたオーステナイト系耐熱鋼の線材を切断して所定寸法のスラブWとする。このスラブWに図示しないノズルを介して潤滑剤を噴射(塗布)した後、図2(a)に示すように、上インサート4と下インサート5にて画成されるキャビティ7内にセットし、パンチ6にて矯正(冷間鍛造)する。このようにして、図2(b)に示す矯正されたスラブWを得る。
【0016】
図3は剪断スラブの変形量と矯正スラブの変形量を比較したグラフであり、本発明によって矯正されたスラブWの段差、縦歪及び径歪は従来のスラブと比較して極めて小さくなっている。尚、段差、縦歪及び径歪がどの部位を指すかは図7に示している。
【0017】
以上のようにして、切断前の状態と比較して段差、縦歪及び径歪が極めて少ないスラブWを図2(c)に示すように、別の金型装置にセットし、パンチを用いて押出し成形することで、図2(d)に示すテーパ部を備えたスラブWとする。この後は、従来例と同様に、更なる別の金型を用いて大径部と軸部とを備えた中間部材を冷間鍛造し、この中間部材に更に冷間鍛造を行って目的とするエキゾーストバルブを得る。
【0018】
ところで、図2(c)に示す金型装置でスラブWにテーパ部を形成する際に、図8と比較すると明らかなように、矯正されたスラブWの点a,点bは同時に金型の成形面に当っている。したがって、パンチによって生ずる圧縮応力はスラブWに均等に作用し、図9において、点aの歪を表した線分と点bの歪を表した線分とが重なるか極めて接近し、スラブWの端部全体がほぼ同時に降伏点に達することになる。
【0019】
その結果、オーステナイト系耐熱鋼等の高靱性耐熱鋼を冷間鍛造する際に問題となっていたカブリやカジリを防ぐことができる。
【0020】
図4は別実施例を示すものであり、キャビティ7の底面となる部分のうちフラット面8をノックアウトピン10の上端面で形成し、キャビティ7の底面と内周面との境界部となる曲面9のみを下インサート5に形成している。
【0021】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、オーステナイト系耐熱鋼のような溶体化処理後の靱性(粘性)が極めて高い材料を用いて、冷間鍛造するに当り、線材(オーステナイト系耐熱鋼)を切断してスラブとした後、当該スラブの少なくとも一端側の形状を切断前の形状に近づける矯正加工を行ってから冷間鍛造を開始するようにしたので、カブリやカジリ等の不良品が生じる確率が大幅に低減する。
【0022】
また、本発明によれば、従来はオーステナイト系耐熱鋼のような難成形材を用いて全て冷間鍛造で目的物を成形することは不可能であったが、本発明により、オーステナイト系耐熱鋼のような難成形材であっても、冷間鍛造で目的物を成形することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の実施に用いる金型装置の断面図
【図2】(a)〜(d)は本発明方法を組込んだ冷間鍛造を工程順に説明した図
【図3】剪断スラブの変形量と矯正スラブの変形量を比較したグラフ
【図4】金型装置の別実施例を示す拡大断面図
【図5】先行技術を説明した図
【図6】線材を切断している状態を示す図
【図7】(a)は線材から切断されたスラブの側面図、(b)は同スラブの端面図
【図8】図7で示したスラブを従来の金型にセットした状態を示した図
【図9】図8に示したスラブの点a及び点bの応力と歪との関係を示すグラフ
【図10】(a)乃至(c)は従来法による欠点を説明した図
【符号の説明】
1…ベース、2…補強リング、3…ケース、4…上インサート、5…下インサート、6…パンチ、7…キャビティ、8…キャビティのフラット面、9…キャビティの曲面、10…ノックアウトピン、11…昇降ロッド、12…潤滑油の排出路、13…上インサートと下インサートとの分割面間に形成される隙間、W…スラブ。
Claims (3)
- オーステナイト系の高靭性耐熱綱からなる線材を所定長さに切断してスラブとし、潤滑油を用いて金型装置内のキャビティ内にスラブを挿入し、このスラブの少なくとも一端側の形状を切断前の形状に近づける矯正加工を行い、この後、矯正したスラブを冷間鍛造により、前記スラブの一端を前方押出成形し、テーパー部を備えたスラブとする高靭性耐熱綱の冷間鍛造方法であって、前記金型のキャビティ底部はフラット面とこのフラット面とキャビティ内周面との境界部に形成される曲面とからなり、スラブの直径をDとしたとき、前記曲面の曲率半径(r)をr=D/4以下とし、前記フラット面の直径(d)をd=D−2r以上としたことを特徴とする高靭性耐熱綱の冷間鍛造方法。
- 請求項1に記載の高靱性耐熱鋼の冷間鍛造方法において、前記矯正加工の際に金型装置に形成した排出路を介してキャビティ内の潤滑油を排出することを特徴とする高靭性耐熱綱の冷間鍛造方法。
- 請求項1に記載の高靱性耐熱鋼の冷間鍛造方法において、この冷間鍛造方法はエンジンのエキゾーストバルブの製造に適用されることを特徴とする高靱性耐熱鋼の冷間鍛造方法。
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