JP3751152B2 - ギヤハウジングの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラックピニオン式の舵取り装置において、ラック軸とピニオン軸とを噛合状態に保って支持するために用いられるギヤハウジングの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
舵輪操作に連動するピニオン軸の回転を、これに噛合するラック軸に伝え、該ラック軸を軸長方向に摺動させて、該ラック軸の両端部に連結された車輪(一般的には前輪)を操向して舵取りを行わせる構成としたラックピニオン式の舵取り装置においては、前記ピニオン軸とラック軸との間に良好な噛合状態を安定して得るべく、これら両軸を少なくとも両者の噛合部において共通のハウジング(ギヤハウジング)内に支持せしめる構成が一般的に採用されている。
【0003】
図3及び図4は、ラックピニオン式の舵取り装置におけるピニオン軸及びラック軸の支持部の構成を示す側断面図である。図中1はラック軸、2はピニオン軸であり、これらは共通のギヤハウジング3内に支持されている。このギヤハウジング3は、ラック軸1の収納部としてのラック収納筒31と、ピニオン軸2の収納部としてのピニオン収納筒32とを備えている。
【0004】
ラック収納筒31とピニオン収納筒32とは、いずれも中空の円筒体であり、ギヤハウジング3は、両収納筒31,32の中途部を交叉させ、この交叉部において内部を連通せしめた一体鋳造品として構成されている。ラック収納筒31に支持されたラック軸1と、ピニオン収納筒32に支持されたピニオン軸2とは、両収納筒31,32の連通部において噛合させてある。
【0005】
ピニオン軸2は、この噛合部の上下両側を夫々支持する軸受20,21により、ピニオン収納筒32の内部に同軸上での回動自在に支承されている。またラック軸1は、長手方向の適宜位置を支持する図示しない軸受ブッシュと、ピニオン軸2の噛合部において逆側から弾接するサポートヨーク10とにより、ピニオン軸2との噛合状態を保ちつつ軸長方向への摺動自在にラック収納筒31の内部に支承されている。
【0006】
図3及び図4に示す装置は、舵取り操作を油圧により補助する油圧式の動力舵取装置(パワーステアリング装置)として構成されたものであり、ピニオン軸2の上部には、舵輪操作に応じて油圧の給排を制御する油圧制御弁4が連設されている。該油圧制御弁4は、ピニオン軸2と、これの上部にトーションバー5を介して連結された入力軸6との間に、前記トーションバー5の捩れに伴って発生する相対角変位を利用して前記油圧の給排制御を行う公知の構成を有している。
【0007】
図3と図4との相違は、油圧制御弁4の支持態様にある。即ち、図3に示す舵取り装置においては、ギヤハウジング3のピニオン収納筒32の上部に筒形をなすバルブハウジング40を取り付け、このバルブハウジング40の内部に油圧制御弁4が支持されているのに対し、図4に示す舵取り装置においては、ギヤハウジング3のピニオン収納筒32を上方に延長し、この延長部の内部に油圧制御弁4が支持されている。そしてこれらを比較した場合、図3においては、ピニオン収納筒32とバルブハウジング40とを同軸的に連結するために、部品点数が増加し、また加工及び組立工数が増すという問題があり、ピニオン収納筒32に油圧制御弁4の収納部を含めてある図4に示す構成の方が望ましい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、以上の如く構成されたラックピニオン式の舵取り装置において、ラック軸1とピニオン軸2との噛合部は、ピニオン軸2を大径化することなく大荷重の負担を可能とするために一般的に斜歯歯車とされており、これによりピニオン軸2には、常時スラスト方向の荷重が作用することから、ピニオン収納筒32の内部にピニオン軸2を支持する軸受20,21の少なくとも一方は、ラジアル荷重に加えてスラスト荷重を負担する必要がある。
【0009】
図4に示すギヤハウジング3を備える舵取り装置においては、その構造上、ピニオン軸2の先端側を支持する軸受21にスラスト荷重を負担させる構成とせざるを得ない。そこで図示の如く、深みぞ玉軸受等、スラスト負荷能力を有する軸受21を用いる一方、ピニオン収納筒32の先端側開口部の内面にねじ部を設けておき、この開口部に内嵌せしめた前記軸受21を、前記ねじ部にねじ込まれるエンドキャップ33の端面と、前記開口部の内奥側の段差部34との間に挾持して、スラスト方向に支える支持構造が採用されている。
【0010】
従って、前記軸受21が突き当てられる段差部34には、該軸受21のスラスト負荷に耐え得る肉厚を確保する必要がある一方、この段差部34の背面側には、図示の如く、ラック軸1とピニオン軸2とを噛合させるべく所定の幅を有してラック収納筒31とピニオン収納筒32とを連通する連通部が設けられていることから、図4に示す如く構成されたギヤハウジング3においては、ピニオン軸2を支持するピニオン収納筒32の先端部が、両収納筒31,32の連通部の所要幅の半分に、前記段差部34の必要肉厚、軸受21の幅、及びエンドキャップ33の所要幅を加えた突出寸法A(図4参照)を有してラック軸1を支持するラック収納筒31の中心位置から突出することとなり、この突出部の存在が、車体前部のエンジンルーム内部でのギヤハウジング3の配設空間の確保を阻害するという問題があった。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ラック収納筒とピニオン収納筒との連通部の幅を削減することにより、ピニオン軸を支持するピニオン収納筒先端側の突出長さを減じ、エンジンルームの内部での配設位置の確保を容易に行わせ得るようにしたギヤハウジングの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るギヤハウジングの製造方法は、ラック軸を支持するラック収納筒と、これの中途に交叉しピニオン軸を支持するピニオン収納筒とを鋳込みにより一体成形してなるラックピニオン式舵取り装置のギヤハウジングを製造する方法において、前記ギヤハウジングの外形に対応する鋳型の内部に、前記ラック収納筒の対応部とピニオン収納筒の対応部との交叉部の範囲内にて夫々の先端部を突き合わせて先細の中子を2本配し、これらの中子の外面と前記鋳型の内面との間に注湯して鋳込みを終えた後、前記2本の中子を夫々の基端部側に抜き出して前記ラック収納筒を形成することを特徴とする。
【0015】
本発明においては、ラック収納筒とピニオン収納筒とを備えるギヤハウジングを鋳込みにより一体成形するに際し、ギヤハウジングの外形に対応する鋳型の内部のラック収納筒の対応部とピニオン収納筒の対応部との交叉範囲内に夫々の先端を突き合わせて2本の先細の中子を位置決めし、これらの中子と鋳型の内面との間に注湯した後、2本の中子を基端部側に抜き出す手順により、これらの中子の突き合わせ部、即ち、ピニオン収納筒との交叉部の範囲内にラック収納筒の最小径部が位置し、この最小径部に形成されるピニオン収納筒との連通部の幅が削減されたラック収納筒を形成する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る製造方法により製造されたギヤハウジングの平面断面図である。本図に示すギヤハウジング3は、図4に示すギヤハウジング3と同様、ラック軸1を支持するラック収納筒31と、ピニオン軸2を支持するピニオン収納筒32とを一体に備え、ピニオン軸2の先端部を支持する軸受21を、ピニオン収納筒32の先端側開口に螺合せしめたエンドキャップ33と、前記開口の内奥側の段差部34との間に挾持固定する構成としたものである。
【0017】
図1には、図4中のI−I線によるギヤハウジング3の断面が、その内部に前述の如く組み付けられるラック軸1、ピニオン軸2、サポートヨーク10等の部品を省略して示してある。本図に示す如くラック収納筒31は、ラック軸1の挿通支持が可能な内径を有する長寸の円筒体であり、該ラック収納筒31の長手方向の中途部には、これと軸心を交叉させて円筒形をなすピニオン収納筒32が一体的に連設されている。
【0018】
ラック収納筒31及びピニオン収納筒32の内部は、図示の如く、夫々の半部において相互に連通させてあり、ラック収納筒31の内部に支持されたラック軸1と、ピニオン収納筒32の内部に支持されたピニオン軸2とが、両収納筒31,32の連通部において、図4に示す如くに噛合せしめられている。なお、ラック収納筒31とピニオン収納筒32との連通部は、図示しない舵輪(ステアリングホイール)への連結のために制限される前記ピニオン軸2の位置に応じて決定される関係上、図示の如く、ラック収納筒31の軸長方向中心部から一側に適長ずらせた位置に設定される場合が多い。
【0019】
また、ピニオン収納筒32の連通部に対応するラック収納筒31の他側半部には、該ラック収納筒31の軸心を含む面内において、この軸心と略直交する軸心を有して円筒形のヨークハウジング11が連設されており、前述の如くピニオン軸2と噛合するラック軸1には、このヨークハウジング11内に支持されたサポートヨーク10をピニオン軸2の逆側から押し付け(図4参照)、ラック軸1とピニオン軸2との噛合状態を良好に保つと共に、ラック収納筒31内にて軸長方向に摺動するラック軸1の摺動案内を行わせるようになしてある。
【0020】
更に、ラック収納筒31の一側端部近傍には、これの外側に張り出す態様に一対の支持脚12,12が突設されており、ギヤハウジング3は、これらの支持脚12,12を介して、例えば、車体前部のエンジンルーム内部の適宜位置に固定して用いられる。
【0021】
以上の如く構成されたギヤハウジング3は、ラック収納筒31、ピニオン収納筒32、及びヨークハウジング11を含めて鋳込みにより一体成形されている。図2は、この鋳込み手順の説明図である。
【0022】
ギヤハウジング3の鋳込み成形に際しては、図2(a)に示す如く、ラック収納筒31及びピニオン収納筒32の夫々に対応する凹型を備える鋳型Mを用いる。なおこの図中には、ラック収納筒31及びピニオン収納筒32の夫々に対応する凹型を単純な円筒形状に略示してあるが、実際のラック収納筒31及びピニオン収納筒32は、図1及び図4に示す如く、軸長方向の適宜位置に、他部品との接続のためのフランジ、強度確保のためのリブ、圧力導入,導出口を形成するための突出部等を有しており、鋳型Mの凹型は、これらの突出部を含めて形成されている。
【0023】
次いで、図2(b)に示す如く、ラック収納筒31及びピニオン収納筒32の内面に対応する外形を有する丸棒状の中子を、鋳型Mの前記凹型の内部に同軸的に位置決めする。このときラック収納筒31の対応部分においては、図示の如く、先細形状をなす2本の中子7a,7bを用い、これらを夫々の先端部を突き合わせて配する。また図中の7cは、ピニオン収納筒32の内面に対応する外形を有する中子であり、この中子7cは、ピニオン収納筒32に対応する凹型の内部に同軸的に配してある。ラック収納筒31用の前記2本の中子7a,7bは、両者の突き合わせが、ピニオン収納筒32用の中子7cの中途部において生じるように位置決めされている。
【0024】
図1に示すギヤハウジング3は、以上の如く中子7a,7b,7cを配した鋳型Mに図示しない上型を合わせ、これらの中子7a,7b,7cの外面と、鋳型Mに形成された凹型の内面との間に注湯することにより一体的に鋳込み成形することにより製造される。ラック収納筒31は、図2(c)に示す如く、鋳込み完了後に鋳型Mから成形物8を取り出し、該成形物8の対応部分の両端に突出する中子7a,7bの基端部を夫々の側に抜き出すことにより形成される。
【0025】
このとき中子7a,7bは、前述した如き先細形状を有しており、先端に向かう傾斜が鋳抜き勾配となるから、前述した抜き出しを容易に行わせることができる。また、この抜き出しの結果ラック収納筒31の内面には、前記中子7a,7bの突き合わせ部に相当する位置に分割線Xが残る。この分割線Xは、ピニオン収納筒32の中子7cに対する前述した位置決めにより、図1に示す如く、ピニオン収納筒32との交叉部に形成されることとなり、前記中子7a,7bが先細形状をなすことから、以上の如く成形されたラック収納筒31は、分割線Xの形成位置、即ち、ピニオン収納筒32との交叉範囲内に最小径部を有することとなる。
【0026】
これにより、図4に示す如く、ラック軸1とピニオン軸2とを噛合させるべくピニオン収納筒32との交叉部に設けられる連通部が、ラック収納筒31の最小径部を含めて形成され、この連通部の所要幅を削減することができる。この結果、図4中に示す如く、ピニオン軸2を支持するピニオン収納筒32の先端側の突出長さAが減じられたギヤハウジング3が、軸受21が突き当てられる段差部34の薄肉化を伴うことなく得られる。このようにして得られる突出長さAの削減量は、高々数mm程度であるが、ギヤハウジング3が配設されるエンジンルーム内での配設空間の確保のためには有用である。
【0027】
なおラック収納筒31とピニオン収納筒32とは、一般的に適宜の傾斜角度を有して交叉させてあることから、中子7a,7bの分割線Xは、ラック収納筒31とピニオン収納筒32との交叉部の中央(軸心線の交叉位置)ではなく、図1に示す如く、軸心線の交叉位置からピニオン収納筒32の下部の傾斜方向、即ち、エンドキャップ33の取り付け側でピニオン収納筒32とラック収納筒31との交叉角が鋭角となる側に偏倚させた位置に設定するのが好ましい。これにより、分割線Xが形成されるラック収納筒31の最小径部と前記段差部34の形成位置とが一致し、該段差部34の薄肉化を有効に防止することができる。
【0028】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明に係るギヤハウジングの製造方法においては、ラック収納筒とピニオン収納筒とを一体に備えるギヤハウジングの鋳込み成形に際し、ラック収納筒の対応部の内面形成のために2本の先細の中子を用い、これらの中子をピニオン収納筒の対応部との交叉範囲内に夫々の先端を突き合わせて位置決めするから、この突き合わせ部に形成されるラック収納筒の最小径部ピニオン収納筒との交叉部の範囲内に生じ、この交叉部内に形成される両収納筒の連通部の幅を削減して、ピニオン収納筒の先端側の突出長さを小さくすることができ、エンジンルームの内部等の限られた空間内での配設位置の確保が容易なギヤハウジングを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る製造方法により製造されたギヤハウジングの平面断面図である。
【図2】 図1に示すギヤハウジングの鋳込み手順の説明図である。
【図3】 ラックピニオン式の舵取り装置におけるピニオン軸及びラック軸の支持部の構成を示す側断面図である。
【図4】 ラックピニオン式の舵取り装置におけるピニオン軸及びラック軸の支持部の他の構成を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 ラック軸
2 ピニオン軸
3 ギヤハウジング
7a 中子
7b 中子
31 ラック収納筒
32 ピニオン収納筒
M 鋳型
X 分割線

Claims (1)

  1. ラック軸を支持するラック収納筒と、これの中途に交叉しピニオン軸を支持するピニオン収納筒とを鋳込みにより一体成形してなるラックピニオン式舵取り装置のギヤハウジングを製造する方法において、前記ギヤハウジングの外形に対応する鋳型の内部に、前記ラック収納筒の対応部とピニオン収納筒の対応部との交叉部の範囲内にて夫々の先端部を突き合わせて先細の中子を2本配し、これらの中子の外面と前記鋳型の内面との間に注湯して鋳込みを終えた後、前記2本の中子を夫々の基端部側に抜き出して前記ラック収納筒を形成することを特徴とするギヤハウジングの製造方法
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