JP6544382B2 - 車両用差動伝達装置およびその製造方法 - Google Patents

車両用差動伝達装置およびその製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、車両用差動伝達装置およびその製造方法に関し、詳しくは、変速機の出力ギヤに噛合うヘリカルギヤが外周側に研創された環状の金属製のリングギヤと、左右ドライブシャフトに連結される一対のサイドギヤと、一対のサイドギヤの両方に噛合って回転してサイドギヤの差動を生成する一対のピニオンギヤと、上記サイドギヤとピニオンギヤを収容支持すると共に、一端部に上記リングギヤが結合される樹脂製のケーシングとからなる車両用差動伝達装置およびその製造方法に関する。
一般に、車両に搭載される差動伝達装置(デファレンシャル装置)は、左右の車軸の回転差を吸収するもので、この差動伝達装置は、鋳鉄製のケーシング(デフケース)と、ケーシングの一端部外周に取付けられた環状の金属製のリングギヤとを有し、ケーシング内部に、ピニオンギヤ中心軸としてのピニオンシャフトと、このピニオンシャフトに回転自在に支持されたピニオンギヤと、該ピニオンギヤに噛み合わされ左右の車軸(ドライブシャフト)が連結される一対のサイドギヤとが収納されている。
そして、変速機の出力ギヤから入力されたトルクによってリングギヤが回転すると、ケーシングが一体的に回転し、このケーシングの回転に伴って、ケーシング内のピニオンギヤと、サイドギヤとを介して車軸乃至車輪が回転する。
上述のような差動伝達装置のケーシングとリングギヤとは、従来、それぞれに設けられたフランジ部同士を複数のボルトによって締結することで結合されるのが一般的であった。
ところで、近年の車両においては、エンジンの燃費性能向上や省エネルギ化のために軽量化が求められており、その一環として差動伝達装置の軽量化が検討されている。
つまり、上述のリングギヤをケーシングに対して複数のボルトで取付ける従来構造の場合、ボルト締結部の剛性確保のため、ケーシングおよびリングギヤが重くなるうえ、ボルトそれ自体も重量増加の要因となり、これが差動伝達装置の軽量化の阻害要因となっていた。
このような問題点を解決するため、従来、特許文献1、特許文献2に開示された構造が既に発明されている。
特許文献1に開示されたものは、差動装置ケースを深絞りされた鋼板によって複数の部材から構成すると共に、差動装置ケースとリングギヤとをレーザ溶接により一体結合したものである。
また、特許文献2に開示されたものは、リングギヤとケーシング(デフケース)とを溶接によって結合したものである。
これら特許文献1,2に開示された構造によれば、ボルトで締結するためのフランジ部やボルトが廃止されるため、差動伝達装置の軽量化を図ることができる。
特開平7−54961号公報 特開2015−137706号公報
しかしながら、上記特許文献1,2に開示された構造では、車両の軽量化が充分ではなく、差動伝達装置に関し、さらなる軽量化が望まれている。
そこで、差動伝達装置のさらなる軽量化を図るために、ケーシングを樹脂により形成し、リングギヤを金属製として、樹脂製ケーシングの一端部外周にリングギヤを結合することが考えられる。
この場合、リングギヤからケーシングに回転力が伝わり、ケーシングがピニオンシャフトと一体で回転する時、ピニオンシャフト端部を支持しているケーシングのピニオンシャフト支持部には高い面圧が作用する一方で、ピニオンギヤ背面はサイドギヤ反力を受けてケーシング内面に押付けられる。従前の金属製ケーシングでは、ピニオンギヤ背面と対向してワッシャが設けられているが、ケーシングを樹脂製と成した場合には、充分な強度が確保できないため、対策が必要であった。
そこで、この発明は、差動伝達装置の軽量化を図りつつ、ピニオンギヤ中心軸が挿通するスリーブ部とピニオンギヤ背面の回転摺動の受け部とが一体になった金属製インサートを、ケーシングの一対のピニオンギヤ中心軸の支持腕部に埋込み固定することで、ケーシングのピニオンギヤ中心軸の支持腕部に作用するサイドギヤ反力に起因する圧力の緩和およびピニオンギヤ中心軸の端部からの面圧の緩和を図ることができる車両用差動伝達装置およびその製造方法の提供を目的とする。
この発明による車両用差動伝達装置は、変速機の出力ギヤに噛合うヘリカルギヤが外周側に研創された環状の金属製のリングギヤと、左右ドライブシャフトに連結される一対のサイドギヤと、一対のサイドギヤの両方に噛合って回転してサイドギヤの差動を生成する一対のピニオンギヤと、上記サイドギヤとピニオンギヤを収容支持すると共に、一端部に上記リングギヤが結合される樹脂製のケーシングとからなる車両用差動伝達装置であって、上記ケーシングは、ピニオンギヤの中心軸の両端部を支持する一対の支持腕部を含んでなり、当該支持腕部に、上記ピニオンギヤ中心軸が挿通するスリーブ部と上記ピニオンギヤ背面の回転摺動の受け部とが一体になった金属製インサートが埋め込んで固定されており、上記金属製インサートのスリーブ部と、上記ピニオンギヤ中心軸の上記スリーブ部への挿通部と、上記スリーブ部周囲の支持腕部のそれぞれに、一直線上に合致する孔部が設けられ、当該各孔部に挿入された挿入部材により、これらが共に固定されたものである。
上述のケーシングを形成する樹脂は、炭素繊維強化樹脂(いわゆるCFRP)やガラス繊維強化樹脂(いわゆるGFRP)などの繊維強化樹脂に設定してもよい。
上記構成によれば、リングギヤを金属製とし、ケーシングを樹脂製と成したので、差動伝達装置の軽量化を図ることができる。
しかも、ピニオンギヤ中心軸が挿通するスリーブ部とピニオンギヤ背面の回転摺動の受け部とが一体になった金属製インサートを、ケーシングの一対のピニオンギヤ中心軸の支持腕部に埋込み固定したので、次の如き作用、効果がある。
すなわち、サイドギヤ反力によりピニオンギヤ背面から入力される圧力を、金属製インサートの回転摺動の受け部の広い外側面部全体を介して、樹脂製のケーシングにおけるピニオンギヤ中心軸の支持腕部に伝えるので、当該支持腕部に局所的な圧力が入力するのを緩和することができる。
また、ケーシングとピニオンギヤ中心軸とが一体回転する時、高い面圧を、金属製インサートのスリーブ部を介して、ケーシングの支持腕部に伝えるので、面圧緩和を図ることができる。
さらに、上述の挿入部材により、ケーシングの支持腕部と、インサートのスリーブ部と、ピニオンギヤ中心軸のスリーブ部への挿入部との三者の位置決め、および、固定の簡素化を図ることができる。
この発明の一実施態様においては、上記金属製インサートの回転摺動の受け部には放射方向に延びる油路が凹設されたものである。
上記構成によれば、上述の油路により、金属製インサートとピニオンギヤ間の潤滑性を確保することができる。
この発明による車両用差動伝達装置の製造方法は、サイドギヤとピニオンギヤとを収容支持する樹脂製のケーシングと、当該ケーシングの一端部に金属製のリングギヤが固定された車両用差動伝達装置の製造方法であって、上記ケーシングの射出成形用金型内に、型開き状態で金属製のリングギヤを配置固定する第1工程と、上記金型の型締め状態で、ピニオンギヤ中心軸が挿通するスリーブ部と上記ピニオンギヤ背面の回転摺動の受け部とが一体になった金属製インサートを、分割可能な中子により、ピニオンギヤ中心軸の両端部を支持する支持腕部が形成される空間に配置して支持する第2工程と、上記金型の型締め後、該金型内に形成される空間に溶融樹脂を射出してケーシングを形成すると共に上記金属製リングギヤと金属製インサートとを一体化する第3工程と、溶融樹脂の硬化後に、上記金型を開いて成形品たる上記ケーシングを金型から取出すと共に上記中子を分割して除去する第4工程と、上記スリーブ部周囲の支持腕部に、上記金属製インサートのスリーブ部と上記ピニオンギヤ中心軸の上記スリーブ部への挿通部分にそれぞれ予め設けられた孔部と、一直線上に合致する挿通孔を開削する第5工程と、上記支持腕部の内部に一対のピニオンギヤとサイドギヤを組み込んでピニオンギヤ中心軸を上記スリーブ部に挿通させ、棒状の挿入部材を上記挿通孔と上記スリーブ部とピニオンギヤ中心軸の孔部に一直線上に挿入してこれらを固定する第6工程とを実行してなるものである。
上記構成によれば、上述の第1工程で、ケーシングの射出成形用金型内に、型開き状態で金属製のリングギヤが配置固定される。
次に、第2工程で、金型の型締め状態で、ピニオンギヤ中心軸が挿通するスリーブ部と上記ピニオンギヤ背面の回転摺動の受け部とが一体となった金属製インサートを、分割可能な中子により、ピニオンギヤ中心軸の両端部を支持する支持腕部が形成される空間に配置して支持する。
次に第3工程で、上記金型の型締め後、該金型内に形成される空間に溶融樹脂を射出してケーシングを形成すると共に上記金属製リングギヤと金属製インサートとを一体化する。
次に第4工程で、溶融樹脂の硬化後に、上記金型を開いて成形品たる上記ケーシングを金型から取出すと共に上記中子を分割して除去する。
次に第5工程で、上記スリーブ部周囲の支持腕部に、上記金属製インサートのスリーブ部と上記ピニオンギヤ中心軸の上記スリーブ部への挿通部分にそれぞれ予め設けられた孔部と、一直線上に合致する挿通孔を開削する。
次に第6工程で、上記支持腕部の内部に一対のピニオンギヤとサイドギヤを組み込んでピニオンギヤ中心軸を上記スリーブ部に挿通させ、棒状の挿入部材を上記挿通孔と上記スリーブ部とピニオンギヤ中心軸の孔部に一直線上に挿入してこれらを固定する。
上記構成によれば、第2工程で、ピニオンギヤ中心軸の両端部を支持する支持腕部が形成される空間に配置支持された金属製インサートが、次の第3工程で、当該空間に埋込み固定され、ケーシングと金属製インサートとが一体化されるので、請求項1に記載の効果を発揮する差動伝達装置を製造することができる。
この発明によれば、差動伝達装置の軽量化を図りつつ、ピニオンギヤ中心軸が挿通するスリーブ部とピニオンギヤ背面の回転摺動の受け部とが一体になった金属製インサートを、ケーシングの一対のピニオンギヤ中心軸の支持腕部に埋込み固定することで、ケーシングのピニオンギヤ中心軸の支持腕部に作用するサイドギヤ反力に起因する圧力の緩和およびピニオンギヤ中心軸の端部からの面圧の緩和を図ることができる効果がある。
本発明の車両用差動伝達装置を自動変速機に連結した状態で示す断面図 ケーシングとリングギヤとを示す分解斜視図 リングギヤの説明図 車両用差動伝達装置のケーシング、リングギヤおよび金属製インサートを示す断面図 (a)は金属製インサートの斜視図、(b)は金属製インサートの他の実施例を示す縦断面図、(c)は図5の(b)の底面図 リングギヤ配置工程および金属製インサートの配置工程を示す断面図 図6のA−A線矢視断面図 溶融樹脂の射出工程を示す断面図 図8のB−B線矢視断面図 上部中子の取外し工程を示す断面図 左右中子の抜取り工程を示す断面図 左右中子の取外し工程を示す断面図 挿入部材の挿入工程を示す断面図
差動伝達装置の軽量化を図りつつ、ピニオンギヤ中心軸が挿通するスリーブ部とピニオンギヤ背面の回転摺動の受け部とが一体になった金属製インサートを、ケーシングの一対のピニオンギヤ中心軸の支持腕部に埋込み固定することで、ケーシングのピニオンギヤ中心軸の支持腕部に作用するサイドギヤ反力に起因する圧力の緩和およびピニオンギヤ中心軸の端部からの面圧の緩和を図るという目的を、変速機の出力ギヤに噛合うヘリカルギヤが外周側に研創された環状の金属製のリングギヤと、左右ドライブシャフトに連結される一対のサイドギヤと、一対のサイドギヤの両方に噛合って回転してサイドギヤの差動を生成する一対のピニオンギヤと、上記サイドギヤとピニオンギヤを収容支持すると共に、一端部に上記リングギヤが結合される樹脂製のケーシングとからなる車両用差動伝達装置であって、上記ケーシングは、ピニオンギヤの中心軸の両端部を支持する一対の支持腕部を含んでなり、当該支持腕部に、上記ピニオンギヤ中心軸が挿通するスリーブ部と上記ピニオンギヤ背面の回転摺動の受け部とが一体になった金属製インサートが埋め込んで固定されており、上記金属製インサートのスリーブ部と、上記ピニオンギヤ中心軸の上記スリーブ部への挿通部と、上記スリーブ部周囲の支持腕部のそれぞれに、一直線上に合致する孔部が設けられ、当該各孔部に挿入された挿入部材により、これらが共に固定されるという構成にて実現した。
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両用差動伝達装置およびその製造方法を示すが、まず、図1を参照して差動伝達装置の概略構造および差動伝達装置の配置構造について説明する。
エンジン後部に位置するトルクコンバータを囲繞するコンバータハウジング1と、自動変速機を囲繞するトランスミッションケース2とを設け、自動変速機の出力側において上述のコンバータハウジング1とトランスミッションケース2とで形成された空間部3内には差動伝達装置4を配設している。
上述の自動変速機はセカンダリシャフト5を有しており、このセカンダリシャフト5は出力ギヤ6とセカンダリギヤ7とを備えると共に、軸受8,9を介してコンバータハウジング1およびトランスミッションケース2に回転自在に軸支されている。
図1に示すように、上述の差動伝達装置4(いわゆるデファレンシャル装置)は、樹脂製かつ略球状のケーシング10と、該ケーシング10の車体左右方向(車軸方向)の一端寄りに設けられたフランジ部11の外周部に結合された金属製のリングギヤ12とを有する。
また、上述のケーシング10の車軸方向(図示の左右方向)の両端部には、左右に延びる円筒状のボス部13,14が設けられており、これらのボス部13,14の内周に左右のドライブシャフト15,16(つまり、車軸)がそれぞれ回転自在に支持されている。上述のボス部13,14の外周部は軸受17,18を介してトランスミッションケース2およびコンバータハウジング1に軸支されている。
さらに、上述のケーシング10の中央部には、車軸方向に直交する軸線を中心とした一対の孔部19,19が対向して形成されており、当該孔部19,19には、車軸方向と直交させてピニオンギヤ中心軸としてのピニオンシャフト20の両端部が挿入されている。
上述のピニオンシャフト20は、その一端側に貫通形成されたピン孔21(孔部)を有し、ケーシング10の後述する支持腕部10cに形成されたピン孔22(孔部)と、ピニオンシャフト20のピン孔21とに挿入部材としての固定ピン23(いわゆるスプリングピン)が挿入されている。これにより、ピニオンシャフト20はケーシング10に回転不能かつ抜出し不能に固定されている。
上述のピニオンシャフト20の両端側には、ケーシング10の内壁面に近接して一対のピニオンギヤ24,24が回転自在に嵌合されると共に、これら一対のピニオンギヤ24,24と噛み合う一対のサイドギヤ25,25を備えており、これら一対のサイドギヤ25,25に、上述のドライブシャフト15,16の端部がそれぞれスプライン嵌合されている。
ここで、上述のリングギヤ12には、その外周側にヘリカルギヤ12hが研創されており、このヘリカルギヤ12hが自動変速機の出力ギヤ6と噛み合っている。
要するに、上述の差動伝達装置4は、変速機の出力ギヤ6に噛み合うヘリカルギヤ12hが外周側に研創された環状かつ金属製のリングギヤ12と、左右ドライブシャフト15,16に連結される一対のサイドギヤ25,25と、一対のサイドギヤ25,25の両方に噛み合って回転してサイドギヤ25,25の差動を生成する一対のピニオンギヤ24,24と、上述のサイドギヤ25,25とピニオンギヤ24,24を収容支持するとともに、一端部外周にリングギヤ12が結合された樹脂製のケーシング10とからなるものである。
そして、出力ギヤ6の回転力は、リングギヤ12を介してケーシング10およびピニオンシャフト20に伝達された後に、ピニオンギヤ24,24から左右のサイドギヤ25,25に伝達され、左右の各ドライブシャフト15,16を駆動する。
また、ステアリング操作時に左右輪に回転差が生ずると、回転差分に応じてサイドギヤ25とピニオンギヤ24が回転することで、左右輪の回転差を吸収するものである。
図2はケーシング10とリングギヤ12とを示す分解斜視図、図3はリングギヤ12の説明図、図4は車両用差動伝達装置のケーシング10、リングギヤ12および金属製インサート部材を示す断面図である。
図2に示すように、上述のケーシング10の周壁部には、ピニオンシャフト20の支持部を避けて、一対の開口部26,26が設けられており、これら開口部26,26から上述のピニオンギヤ24およびサイドギヤ25をケーシング10内に組み込むようになっている。
図2〜図4に示すように、上述のリングギヤ12は環状かつ金属製で、その外周側には上記出力ギヤ6に噛み合うヘリカルギヤ12hが研創されている。
また、上述のケーシング10は炭素繊維強化樹脂(いわゆるCFRP)やガラス繊維強化樹脂(いわゆるGFRP)などの繊維強化樹脂により形成されている。
図3に示すように、上述のリングギヤ12の外周側に研創されたヘリカルギヤ12hは、この実施例では、約4.74°の等間隔で76の歯が形成されているが、歯数の数量はこれに限定されるものではない。
また、上述のリングギヤ12は、その内周側の面12aつまり内周面から径方向内方に突出し、その長手方向が上記ヘリカルギヤ12hのねじれ角に一致して歯幅方向に対して傾斜してなる突条部12bを有し、当該突条部12bは複数個あって周方向に周期的に配置されている。この実施例では、該突条部12bは15°の等間隔で24個形成されているが、この数量に限定されるものではない。
さらに、上述の突条部12bの内周側の面12aからの突出量は、ヘリカルギヤ12hの歯丈に対して2倍以上に設定されているが、これに限定されるものではない。
一方、図2に示すように、ケーシング10は、リングギヤ12の内周面12aに合致して、これを保持固定するリングギヤ保持面10aを有し、当該リングギヤ保持面10aには、上述の突条部12bの外表面形状に一致する形状の穴部10bが形成されている。
つまり、該穴部10bはその長手方向がヘリカルギヤ12hのねじれ角に一致して歯幅方向に対して傾斜しており、当該穴部10bは複数個あって周方向に周期的に配置されると共に、上記突条部12bと対応すべく15°の等間隔で24個形成されている。
そして、リングギヤ12の各突条部12bがケーシング10の各穴部10bに一致して結合されている。
この実施例では、図2で示したように、リングギヤ12の内周側の面12aから径方向内方へ突出する突条部12bを、その長手方向がヘリカルギヤ12hのねじれ角に一致するよう歯幅方向に対して傾斜させると共に、リングギヤ保持面10aの穴部10bは、上記突条部12bの外表面形状に一致する形状に形成されているので、リングギヤ12と出力ギヤ6とが噛み合って回転する際に発生するスラスト力(図1に矢印aで示す方向とは反対方向の軸方向圧力参照)が突条部12bを介して穴部10bに作用する場合、突条部12bの荷重を穴部10bの長手方向全域で受け止めることができる。
つまり、リングギヤ12のギヤ荷重の付勢方向に合わせて、穴部10bの荷重受圧面を大きくとることができ、応力の分散緩和を図ることができるものである。要するに、ケーシング10の樹脂化により装置の充分な軽量化を図ることができるのは勿論、出力ギヤ6とリングギヤ12との噛み合い部位に発生するスラスト力に起因した穴部局所に作用する応力の緩和を図って、信頼性および耐久性の向上を図るよう構成したものである。
図5の(a)は金属製インサートの斜視図、図5の(b)は金属製インサートの他の実施例を示す縦断面図、図5の(c)は図5の(b)の底面図である。
図1、図4に示すように、ケーシング10における一対のピニオンシャフト支持腕部10c(以下単に支持腕部10cと略記する)には、金属製インサート27がそれぞれ埋込み固定されている。
この金属製インサート27は、図4、図5に示すように、ピニオンシャフト20を挿通する円筒形状のスリーブ部27aと、ピニオンギヤ24背面の回転摺動の受け部27bとを一体形成したもので、当該摺動受け部27bは球面形状に加工されている。
上述のように、金属製インサート27をケーシング10の支持腕部10cに埋込み固定することで、サイドギヤ25の反力によりピニオンギヤ24背面から入力される圧力を、当該金属製インサート27の摺動受け部27bの広い外側面部全体を介して、樹脂製のケーシング10における支持腕部10cに伝え、これにより、該支持腕部10cに局所的な圧力が入力されるのを緩和するよう構成したものである。
また、ケーシング10とピニオンシャフト20とが一体回転する時、高い面圧を、金属製インサート27の支持筒部27aを介して、ケーシング10の支持腕部10cに伝え、これにより、面圧緩和を図るよう構成したものである。
さらに、図4に示すように、金属製インサート27のスリーブ部27aの外側はケーシング10それ自体でその全周を覆っている。つまり、ケーシング10にはスリーブ部27aの外端部全周をその外方から覆う抜止め部10dが一体形成されており、当該抜止め部10dにて金属製インサート27の抜止めを図るよう構成している。
金属製インサート27の摺動受け部27bには、図5の(b)、図5の(c)に示すように、放射方向に延びる油路27cを凹設してもよい。このように、上記摺動受け部27bに油路27cを形成すると、当該油路27cにより、金属製インサート27とピニオンギヤ24背面との間の潤滑性を確保することができる。なお、図5の(c)に示すように、上述の油路27cは底面視で略十文字状のパターンに形成したが、油路27cの形成パターンは、これに限定されるものではない。
一方で、図13に示すように、上述の金属製インサート27のスリーブ部27aには、ピニオンシャフト20のピン孔21、およびケーシング10のピン孔22と一直線上に合致するピン孔28,28が形成されており、これら各ピン孔22,28,21に貫通状に挿入する挿入部材としての固定ピン23にて、図13、図1に示すように、金属製インサート27のスリーブ部27aと、ピニオンシャフト20の端部と、ケーシング10の支持腕部10cとの三者を連結固定している。
これにより、上記固定ピン23にて上述の三者の位置決め、および固定の簡素化を図るよう構成したものである。
次に、図6〜図13を参照して、サイドギヤ25とピニオンギヤ24とを収容支持する樹脂製のケーシング10と、当該ケーシング10の一端部に金属製のリングギヤ12が固定された車両用差動伝達装置の製造方法について説明する。
図6はリングギヤ配置工程および金属製インサート部材の配置工程を示す断面図、図7は図6のA−A線矢視断面図、図8は溶融樹脂の射出工程を示す断面図、図9は図8のB−B線矢視断面図、図10は上部中子の取外し工程を示す断面図、図11は左右中子の抜取り工程を示す断面図、図12は左右中子の取外し工程を示す断面図、図13は挿入部材の挿入工程を示す断面図である。なお、図10、図11、図12においては、図示の便宜上、リングギヤ12の図示を省略している。
まず、リングギヤ製造工程で、鍛造により金属製のリングギヤ12を形成し、該リングギヤ12の外周側に機械加工にてヘリカルギヤ12hを研創すると共に、内周側に機械加工にて突条部12bを形成する。
このリングギヤ12は必要に応じて焼入れ処理や仕上げ処理等の所定の処理が施される。
図6に示す成形装置30は、射出成形用金型としての下型31(第1外型)と、上型(第2外型)と、複数の分割可能な中子33,34,35,36,37と、型締め、および、型開きを行なう成形開閉装置(図示せず)と、上記各金型(詳しくは、下型31、上型32、各中子33,34,35,36)により形成されるキャビティ38に溶融樹脂を射出するゲート39とを有する。この実施例では、該ゲート39は上型32に設けられている。
上述の下型31は、その外周部にリングギヤ12の嵌込み部31aを備えている。また下型31の中央部には上方に向けて突出するボス部13形成用の突部31bが一体形成されると共に、該突部31bの径方向外方にはボス部13形成用の形状面31cが形成され、この形状面31cと上述の嵌込み部31aとの間にはフランジ部11形成用の形状面31dが形成されている。
上述の上型32の中央部には下方に向けて突出するボス部14形成用の突部32aが一体形成されると共に、該突部32aの径方向外方にはボス部14形成用の形状面32bが形成されている。
また、上述の上型32の下部から下端にかけてフランジ部11形成用の形状面32cが形成されており、この形状面32cと上述の形状面32bとの間には腕部10c形成用の形状面32dが形成されている。
上述の下型31と上型32は、分割面としてのパーティングラインPLで当接(型締め)および離間(型開き)するように構成されている。
上述の中子は、上側の突部32a下部に当接される上部中子33と、下側の突部31b上部に当接される下部中子34と、金属製インサート27を保持する保持部35aが一体形成された左中子35と、金属製インサート27を保持する保持部36aが一体形成された右中子36と、上述の各中子33,34,35,36間に位置して、これらの各中子33,34,35,36の位置ずれ防止を図る断面方形状の中間中子37と、に5分割されている。
ここで、上述の左中子35および右中子36の各保持部35a、36aは、金属製インサート27のスリーブ部27aを装着する円柱部と、金属製インサート27の摺動受け部27bを当接する球面形状の当接部とを、それぞれ備えている。
これらの各中子33〜37は、ケーシング10成形後に開口部26(図2参照)が形成される部位に相当して上型32に形成された開口部41,42(図7参照)から金型内に挿入されるものである。
すなわち、金属製インサート27を保持した左右一対の中子35,36を互いに近接させた状態で、開口部42から金型内に挿入した後に、各中子35,36を離間させて、図6、図7に示す所定位置にセットし、次に、上下一対の中子33,34を互いに近接させた状態で、開口部42から金型内に挿入した後に、各中子33,34を離間させて、図6、図7に示す所定位置にセットし、次に、中間中子37を開口部41から金型内に挿入すると、この中間中子37で他の中子33〜36の位置規制を行なうと共に、金属製インサート27を支持腕部10cが形成される空間に配置した状態下でのキャビティ38が形成されるものである。
第1工程で、ケーシング10を射出成形する金型(射出成形用金型)内、詳しくは、下型31の嵌込み部31aに、型開き状態で金属製のリングギヤ12を配置固定する(図6参照)。
次に、第2工程で、下型31と上型32の型締め状態で、ピニオンシャフト20のスリーブ部27aとピニオンギヤ24背面の回転摺動の受け部27bとが一体形成された金属製インサート27を、分割構造の中子33〜37を用いて、支持腕部10cが形成される空間に配置支持する(図6参照)。
次に、第3工程で、図8に示すように、下型31と上型32の型締め後に、ゲート39から当該金型内に形成される空間としてのキャビティ38内に溶融樹脂を射出して、ケーシング10を形成すると共に、金属製インサート部材27を、ケーシング10の所定部に埋込み固定する。この際、ケーシング10一端部外周には、リングギヤ12内周側の複数の突条部12bが取込まれ、樹脂硬化後において、リングギヤ12の各突条部12bがケーシング10の各穴部10bに一致して結合されることになる。
次に、第4工程で、溶融樹脂の硬化後に、中子33〜37を分割して除去すると共に、下型31と上型32とを型開きして、ケーシング10の支持腕部10cに金属製インサート部材27が埋込み固定され、かつ、樹脂製ケーシング10の一端部外周に金属製のリングギヤ12が結合されてなる成形品Dを取出す(図4参照)。
上述の中子33〜37の取出し方法を、図9〜図12を参照して以下に説明する。
図9に示す各中子33〜37のセット位置から、まず、図10に示すように、中間中子37を開口部41から上型32外方に取出す。
図10に示すように、中間中子37が取出されると、左右の中子35,36間には空間部が形成されるので、図10に示す状態から図11に示すように、左中子35と右中子36とを近接方向に移動し、これらの中子35,36の各保持部35a,36aを金属製インサート27,27から抜取る。
次に、図11に示す状態から図12に示すように、左右の中子35,36の近接状態を保ったまま、左右一対の中子35,36を開口部42から上型32外方に取出す。
次に、図12に示す状態から上下一対の中子33,34を近接方向に移動させた後、当該近接状態を保ったまま、上下一対の中子33,34を開口部42から上型32外方に取出す。
このようにして、全ての中子33〜37を上型32から取出すことができる。
次に、第5工程で、図13に示すように、上述のスリーブ部27a周囲の支持腕部10cに、金属製インサート27のスリーブ部27aとピニオンシャフト20のスリーブ部27aへの挿通部分にそれぞれ予め設けられた孔部としてのピン孔28,21と、一直線上に合致する挿通孔としてのピン孔22を開削する。
次に、第6工程で、支持腕部10cの内部に一対のピニオンギヤ24とサイドギヤ25とを組込んでピニオンシャフト20をスリーブ部27aに挿通させ、棒状の挿入部材である固定ピン23を上述の挿通孔としてのピン孔22とスリーブ部27aとピニオンシャフト20の孔部(ピン孔28,21)に一直線上に挿入してこれらを固定する。
このように、上記実施例の車両用差動伝達装置は、変速機の出力ギヤ6に噛合うヘリカルギヤ12hが外周側に研創された環状の金属製のリングギヤ12と、左右ドライブシャフト15,16に連結される一対のサイドギヤ25と、一対のサイドギヤ25の両方に噛合って回転してサイドギヤ25の差動を生成する一対のピニオンギヤ24と、上記サイドギヤ25とピニオンギヤ24を収容支持すると共に、一端部に上記リングギヤ12が結合される樹脂製のケーシング10とからなる車両用差動伝達装置であって、上記ケーシング10は、ピニオンギヤ24の中心軸(ピニオンシャフト20参照)の両端部を支持する一対の支持腕部10cを含んでなり、当該支持腕部10cに、上記ピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)が挿通するスリーブ部27aと上記ピニオンギヤ24背面の回転摺動の受け部27bとが一体になった金属製インサート27が埋め込んで固定されており、上記金属製インサート27のスリーブ部27aと、上記ピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)の上記スリーブ部27aへの挿通部と、上記スリーブ部27a周囲の支持腕部10cのそれぞれに、一直線上に合致する孔部(ピン孔28,21,22)が設けられ、当該各孔部に挿入された挿入部材(固定ピン23)により、これらが共に固定されたものである(図1、図13参照)。
上述のケーシング10を形成する樹脂は、炭素繊維強化樹脂(いわゆるCFRP)やガラス繊維強化樹脂(いわゆるGFRP)などの繊維強化樹脂に設定されることが好ましい。
上記構成によれば、リングギヤ12を金属製とし、ケーシング10を樹脂製と成したので、差動伝達装置の軽量化を図ることができる。
しかも、ピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)が挿通するスリーブ部27aとピニオンギヤ24背面の回転摺動の受け部27bとが一体になった金属製インサート27を、ケーシング10の一対のピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)の支持腕部10c,10cに埋込み固定したので、次の如き作用、効果がある。
すなわち、サイドギヤ25反力によりピニオンギヤ24背面から入力される圧力を、金属製インサート27の回転摺動の受け部27bの広い外側面部全体を介して、樹脂製のケーシング10におけるピニオンギヤ中心軸の支持腕部10cに伝えるので、当該支持腕部10cに局所的な圧力が入力するのを緩和することができる。
また、ケーシング10とピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)とが一体回転する時、高い面圧を、金属製インサート27のスリーブ部27aを介して、ケーシング10の支持腕部10cに伝えるので、面圧緩和を図ることができる。
さらに、上述の挿入部材(固定ピン23参照)により、ケーシング10の支持腕部10cと、インサート27のスリーブ部27aと、ピニオンギヤ中心軸のスリーブ部27aへの挿入部との三者の位置決め、および、固定の簡素化を図ることができる。
また、この発明の一実施形態においては、上記金属製インサート27の回転摺動の受け部27bには放射方向に延びる油路27cが凹設されたものである(図5参照)。
この構成によれば、上述の油路27cにより、金属製インサート27とピニオンギヤ24間の潤滑性を確保することができる。
この発明による車両用差動伝達装置の製造方法は、サイドギヤ25とピニオンギヤ24とを収容支持する樹脂製のケーシング10と、当該ケーシング10の一端部に金属製のリングギヤ12が固定された車両用差動伝達装置の製造方法であって、上記ケーシング10の射出成形用金型(下型31、上型32参照)内に、型開き状態で金属製のリングギヤ12を配置固定する第1工程(図6参照)と、上記金型の型締め状態で、ピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)が挿通するスリーブ部27aと上記ピニオンギヤ24背面の回転摺動の受け部27bとが一体になった金属製インサート27を、分割可能な中子33,34,35,36,37により、ピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)の両端部を支持する支持腕部10cが形成される空間に配置して支持する第2工程(図6参照)と、上記金型の型締め後、該金型内に形成される空間(キャビティ38参照)に溶融樹脂を射出してケーシング10を形成すると共に上記金属製リングギヤ12と金属製インサート27とを一体化する第3工程(図8参照)と、溶融樹脂の硬化後に、上記金型を開いて成形品Dたる上記ケーシング10を金型から取出すと共に上記中子33〜37を分割して除去する第4工程(図4、図10、図11、図12参照)と、上記スリーブ部27a周囲の支持腕部10cに、上記金属製インサート27のスリーブ部27aと上記ピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)の上記スリーブ部27aへの挿通部分にそれぞれ予め設けられた孔部(ピン孔28,21)と、一直線上に合致する挿通孔(ピン孔22)を開削する第5工程(図13参照)と、上記支持腕部10cの内部に一対のピニオンギヤ24とサイドギヤ25を組み込んでピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)を上記スリーブ部27aに挿通させ、棒状の挿入部材(固定ピン23)を上記挿通孔(ピン孔22)と上記スリーブ部27aとピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)の孔部(ピン孔21)に一直線上に挿入してこれらを固定する第6工程(図1、図13参照)とを実行してなるものである。
この構成によれば、上述の第1工程で、ケーシング10の射出成形用金型(下型31、上型32参照)内に、型開き状態で金属製のリングギヤ12が配置固定される。
次に、第2工程で、金型の型締め状態で、ピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)が挿通するスリーブ部27aと上記ピニオンギヤ24背面の回転摺動の受け部27bとが一体となった金属製インサート27を、分割可能な中子33〜37により、ピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)の両端部を支持する支持腕部10cが形成される空間に配置して支持する。
次に第3工程で、上記金型の型締め後、該金型内に形成される空間(キャビティ38参照)に溶融樹脂を射出してケーシング10を形成すると共に上記金属製リングギヤ12と金属製インサート27とを一体化する。
次に第4工程で、溶融樹脂の硬化後に、上記金型を開いて成形品Dたる上記ケーシング10を金型から取出すと共に上記中子33〜37を分割して除去する。
次に第5工程で、上記スリーブ部27a周囲の支持腕部10cに、上記金属製インサート27のスリーブ部27aと上記ピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)の上記スリーブ部27aへの挿通部分にそれぞれ予め設けられた孔部(ピン孔28,21)と、一直線上に合致する挿通孔(ピン孔22)を開削する。
次に第6工程で、上記支持腕部10cの内部に一対のピニオンギヤ24とサイドギヤ25を組み込んでピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)を上記スリーブ部27aに挿通させ、棒状の挿入部材(固定ピン23)を上記挿通孔(ピン孔22)と上記スリーブ部27aとピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)の孔部(ピン孔28,21)に一直線上に挿入してこれらを固定する。
この構成によれば、第2工程で、ピニオンギヤ中心軸(ピニオンシャフト20)の両端部を支持する支持腕部10cが形成される空間に配置支持された金属製インサート27が、次の第3工程で、当該空間に埋込み固定され、ケーシング10と金属製インサート27とが一体化されるので、請求項1に記載の効果を発揮する差動伝達装置を製造することができる。
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のピニオンギヤ中心軸は、実施例のピニオンシャフト20に対応し、
以下同様に、
挿通孔は、ピン孔22に対応し、
孔部は、ピン孔21,28に対応し、
挿入部材は、固定ピン23に対応し、
射出成形用金型は、下型31、上型32に対応し、
金型内に形成される空間は、キャビティ38に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、固定ピン23で支持腕部10cと金属製インサート27とピニオンギヤ中心軸のスリーブ部27aへの挿入部との三者を連結固定する構成に代えて、ボルト、ナットによりこれら三者を連結固定すべく構成してもよい。
以上説明したように、本発明は、変速機の出力ギヤに噛合うヘリカルギヤが外周側に研創された環状の金属製のリングギヤと、左右ドライブシャフトに連結される一対のサイドギヤと、一対のサイドギヤの両方に噛合って回転してサイドギヤの差動を生成する一対のピニオンギヤと、上記サイドギヤとピニオンギヤを収容支持すると共に、一端部に上記リングギヤが結合される樹脂製のケーシングとからなる車両用差動伝達装置およびその製造方法について有用である。
6…出力ギヤ
10…ケーシング
10c…支持腕部
12…リングギヤ
12h…ヘリカルギヤ
15,16…ドライブシャフト
20…ピニオンシャフト(ピニオンギヤ中心軸)
21,22,28…ピン孔(孔部、挿通孔)
23…固定ピン(挿入部材)
24…ピニオンギヤ
25…サイドギヤ
27…インサート
27a…スリーブ部
27b…摺動受け部
27c…油路
31…下型(射出成形用金型)
32…上型(射出成形用金型)
33〜37…中子
38…キャビティ(空間)
D…成形品

Claims (3)

  1. 変速機の出力ギヤに噛合うヘリカルギヤが外周側に研創された環状の金属製のリングギヤと、
    左右ドライブシャフトに連結される一対のサイドギヤと、
    一対のサイドギヤの両方に噛合って回転してサイドギヤの差動を生成する一対のピニオンギヤと、
    上記サイドギヤとピニオンギヤを収容支持すると共に、一端部に上記リングギヤが結合される樹脂製のケーシングとからなる車両用差動伝達装置であって、
    上記ケーシングは、ピニオンギヤの中心軸の両端部を支持する一対の支持腕部を含んでなり、
    当該支持腕部に、上記ピニオンギヤ中心軸が挿通するスリーブ部と上記ピニオンギヤ背面の回転摺動の受け部とが一体になった金属製インサートが埋め込んで固定されており、
    上記金属製インサートのスリーブ部と、上記ピニオンギヤ中心軸の上記スリーブ部への挿通部と、
    上記スリーブ部周囲の支持腕部のそれぞれに、一直線上に合致する孔部が設けられ、当該各孔部に挿入された挿入部材により、これらが共に固定されたことを特徴とする
    車両用差動伝達装置。
  2. 上記金属製インサートの回転摺動の受け部に、放射方向に延びる油路が凹設されたことを特徴とする
    請求項1に記載の車両用差動伝達装置。
  3. サイドギヤとピニオンギヤとを収容支持する樹脂製のケーシングと、
    当該ケーシングの一端部に金属製のリングギヤが固定された車両用差動伝達装置の製造方法であって、
    上記ケーシングの射出成形用金型内に、型開き状態で金属製のリングギヤを配置固定する第1工程と、
    上記金型の型締め状態で、ピニオンギヤ中心軸が挿通するスリーブ部と上記ピニオンギヤ背面の回転摺動の受け部とが一体になった金属製インサートを、分割可能な中子により、ピニオンギヤ中心軸の両端部を支持する支持腕部が形成される空間に配置して支持する第2工程と、
    上記金型の型締め後、該金型内に形成される空間に溶融樹脂を射出してケーシングを形成すると共に上記金属製リングギヤと金属製インサートとを一体化する第3工程と、
    溶融樹脂の硬化後に、上記金型を開いて成形品たる上記ケーシングを金型から取出すと共に上記中子を分割して除去する第4工程と、
    上記スリーブ部周囲の支持腕部に、上記金属製インサートのスリーブ部と上記ピニオンギヤ中心軸の上記スリーブ部への挿通部分にそれぞれ予め設けられた孔部と、一直線上に合致する挿通孔を開削する第5工程と、
    上記支持腕部の内部に一対のピニオンギヤとサイドギヤを組み込んでピニオンギヤ中心軸を上記スリーブ部に挿通させ、棒状の挿入部材を上記挿通孔と上記スリーブ部とピニオンギヤ中心軸の孔部に一直線上に挿入してこれらを固定する第6工程とを実行してなる
    車両用差動伝達装置の製造方法。
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