JP3750792B2 - 移動体通信機器用フロントエンドモジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話、自動車電話などの移動体通信機器に利用可能な送受切換えスイッチを主体とするフロントエンドモジュールに関する。
【従来の技術】
【0002】
従来の移動体通信機器のフロントエンドモジュールとして、本出願人の提案でなる特開平9−261110号公報に開示されたアンテナスイッチがある。携帯電話システムのほとんどは、送信と受信とで異なる周波数帯域に設定されるため、送受信切り換え部とアンテナ切り換え部が似かよった回路であっても、素子定数は異なる構成になり易く、設計を迅速に進めるうえで負担にならないように、前記公報に記載のアンテナスイッチにおいては、一方の切り換え部と他方の切り換え部は、ローパスフィルタを中心に対称な回路構成としている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来例は、TDMA方式の携帯電話に使用されるアンテナスイッチであり、欧州におけるGSM方式デュアルバンド携帯電話のように、2つの送受信系を取り扱うものにはこれを適用することができない。そのため、アンテナスイッチを主体として、2つの帯域を分波する回路を備えたフロントエンドモジュールが要望されるが、フロントエンドモジュールの多層基板にはより多くの回路素子を構成する必要があり、多層基板は複雑になり、回路相互間の干渉が生じやすく、また、積層し焼成する工程で変形が生じやすく、歩留まりが悪くなりやすい。
【0004】
そこで、本発明は、複数の送受信系を取り扱うフロントエンドモジュールにおいて、回路素子を構成する層の素材を最適化すると共に、多層基板を小型化しても回路相互の干渉が生じ難い多層基板のフロントエンドモジュールを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の移動体通信機器用フロントエンドモジュールは、異なる通信方式に使用される移動体通信機器用フロントエンドモジュールであって、
アンテナに接続される分波回路と、
該分波回路を介してアンテナに接続され、アンテナをそれぞれ異なる通信方式の送信回路、受信回路に対して切換え接続する送受切換えスイッチと、
高周波を除去するフィルタとを少なくとも有し、
該フロントエンドは多層基板に部品を搭載して一体化したモジュールを構成し、
前記多層基板は平面方向中心位置に分波回路用パターンを配置し、
該分波回路用パターンを境にして、通信方式が異なる複数の送受切換えスイッチ用導体パターンを分離して配置する
ことを特徴とする。
【0006】
請求項2の移動体通信機器用フロントエンドモジュールは、請求項1において、前記多層基板は複数の誘電体層を積層して構成し、
前記多層基板内の誘電体層は、コイル用導体パターンが主に形成されて互いに隣接して積層された複数の誘電体層と、コンデンサ電極パターンが主に形成されて互いに隣接して積層された複数の誘電体層とに分離して構成し、
前記コイル用導体パターンが主に形成された誘電体層は、前記コンデンサ電極パターンが主に形成された誘電体層より比誘電率が低くなる材料を選択する
ことを特徴とする。
【0007】
請求項3の移動体通信機器用フロントエンドモジュールは、請求項2において、コイル用導体パターンが主に形成された誘電体層を隣接して積層してなる層の下層に、コンデンサ電極パターンが主に形成された誘電体層を隣接して積層してなる層を設け、
前記コイル用導体パターンが主に形成された誘電体層の上層にも、コンデンサ電極パターンが主に形成された層と同じ素材からなる層を積層して、焼成に伴う縮率が相違する変形を防止する
ことを特徴とする。
【0008】
請求項4の移動体通信機器用フロントエンドモジュールは、請求項1から3までのいずれかにおいて、前記送受切換えスイッチは、ダイオードとLC回路とで構成され、かつ前記フィルタ、分波回路もLC回路で構成され、
前記LC回路は前記多層基板内に形成され、
前記LC回路の一部は、前記多層基板の上面に配置されたダイオードとビアホールを通して接続される
ことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図1はフロントエンドモジュールを示す断面図である。フロントエンドモジュール1は、多層基板20上に表面実装部品11、12等を搭載し、さらに多層基板20と、表面実装部品11、12とを覆うように、多層基板20にシールドケース15が固着されている。
【0010】
多層基板20は、誘電体層21〜36でなり、図1においては、各誘電体層21〜36は実際の厚みに対応する厚みで描いてある。
【0011】
図2は該フロントエンドモジュールの層構造を示す。該フロントエンドモジュールは、フロントエンドモジュールの多数個分の電極、接続パターン、ビアホールまたはマークを縦横に配置して形成した誘電体グリーンシートを積層し、個々のフロントエンドモジュール分に切断し、加熱圧着し、焼成して図1に示した個々の多層基板20が製造される。
【0012】
図2において、21〜36は図1に示した誘電体層である。これらの誘電体層21〜36は、製造工程においては誘電体グリーンシートである。矢印a〜oは積層されることを意味する。積層工程においては、誘電体層となるグリーンシート36が最下層であり、その上に誘電体層となるグリーンシート35が重ねられ、さらにその上にグリーンシート34が重ねられるというふうにグリーンシート21〜36が重ねられる。これらのグリーンシートの加熱圧着、切断後の焼成工程において、焼結体として一体化されるとともに、焼成に伴う縮率に従って寸法が変化し、かつ焼成により所定の電気特性を有する誘電体層となる。
【0013】
図3はフロントエンドモジュール1の回路構成の1例を示す回路図である。図3において、T1〜T12は外部接続電極である。これらの外部接続電極のT9はアンテナへの外部接続電極であり、コイルL1、L2、L11とコンデンサC1、C11、C12は分波回路を構成する。コイルL1とコンデンサC1から外部接続電極T11に至る側の回路(図面上、右側の回路)がDCS方式(1.8GHz帯)に対応する回路である。コイルL11とコンデンサC11から外部接続電極T1に至る回路(図面上、左側の回路)がGSM方式(900MHz帯)に対応する回路である。
【0014】
右側のDCS方式に対応する回路において、T11はDCS方式の送信回路に接続される外部接続電極である。T7はDCS方式の受信回路に接続される外部接続電極である。T8は外部回路で接地される外部接続電極である。T10はDCS方式の送受切り換えを行うための制御信号を加える外部接続電極である。コイルL6とコンデンサC6〜C8はローパスフィルタを構成する。ダイオードD1、D2と、コイルL3〜L5と、コンデンサC2〜C5、C9は送受切換えスイッチを構成する。
【0015】
また、左側のGSM方式に対応する回路において、T1はGSM方式の送信回路に接続される外部接続電極である。T5はGSM方式の受信回路に接続される外部接続電極である。T2はGSM方式の送受切り換えを行うための制御信号を加える外部接続電極である。T4は外部回路で接地される外部接続電極である。コイルL14とコンデンサC17〜C19はローパスフィルタを構成する。また、ダイオードD11、D12とコイルL12、L13とコンデンサC13〜C16は送受切換えスイッチを構成する。また、T3、T6、T12はフロントエンドモジュールの内部のグランド電極に接続される外部接続電極である。
【0016】
図4ないし図6はフロントエンドモジュール1の外観を示す。図4は図1と同じ方向より見た正面図、図5は平面図、図6は図4と直交する方向から見た側面図である。図4、図6に示すように、シールドケース15の左右端(図面上)が平面部に直交するように下方に折り曲げられ、折り曲げられた端部15A、15Bは、それぞれ、グランド電極である外部接続電極T6、T12に固着して接続される。なお、図4においては、前記表面実装部品11、12の図示は省略している。
【0017】
図5において、15Cはシールドケース15に設けた孔であり、フロントエンドモジュール1の方向を示す目印である。図5に示すように、前記フロントエンドモジュールの回路を外部に接続するための外部接続電極T1〜T12は、フロントエンドモジュールの外周に配置される。これらの外部接続電極T1〜T12は、フロントエンドモジュールを携帯電話の回路基板に搭載して接続するものである。
【0018】
この例のフロントエンドモジュールは、シールドケース15を含む高さが1.8mm、図5における左右方向の幅が6.5mm、上下方向の幅が4.8mmである。
【0019】
次に該フロントエンドモジュールの構造をさらに詳細に説明する。図1、図2に示すように、下層の誘電体層35には接地電極パターン201がほぼ全面に形成され、その上側に隣接する誘電体層34上には接地コンデンサの対向電極パターン202が形成される。該誘電体層34には、前記対向電極パターン202以外にも複数の対向電極パターンが形成されるが、符号の記入を省略する。誘電体層34上に隣接する誘電体層33には、接地電極パターン203と、符号の記入を省略して示す他の電極パターンとが形成される。
【0020】
前記接地コンデンサの上側にはほとんどパターンが形成されていない誘電体層28〜32を積層する。これらの誘電体層28〜32は、上下に隣接する誘電体層間のパターンを接続するビアホール204と、ビアホール間を接続する接続パターン205と、電極パターン206と、符号の記入を省略したその他の電極パターンおよび分波回路用のコンデンサ電極パターンのいくつかが形成される。
【0021】
さらに、上側に誘電体層22〜27を積層する。これらの誘電体層22〜27にはコイル用導体パターンと、コンデンサ電極パターンとを混在させてパターニングしてコイルおよびコンデンサが形成される。
【0022】
電極パターン211〜218は分波回路用コンデンサ電極パターンである。分波回路用コンデンサ電極パターン211〜218は、図2の各誘電体層22〜29において、図面上、上下方向の中間(すなわち平面上の中間)に位置するように形成される。そして、各誘電体層22〜26上には、図2の各誘電体層において、図面上、上側にはDCS方式に対応する回路を形成し、下側にGSM方式に対応する回路を形成する。
【0023】
すなわち、誘電体層27上には、図面上、上側にDCS方式のための接続パターン221を形成し、誘電体層22〜26には、各層の図面上、上側にDCS方式のためのコイル用導体パターン222〜226を形成する。
【0024】
一方、誘電体層27上には、図面上、下側にGSM方式のための接続パターン231を形成し、誘電体層22〜26には、各層の図面上、下側にGSM方式のためのコイル用導体パターン232〜236を形成する。
【0025】
該モジュールは、GSM方式とDCS方式という高い周波数帯で使用されるため、前記各素子を形成するパターンは相互の干渉を十分に配慮した形で配置されなければならない。特にDCS方式の帯域は、GSM方式のおよそ2倍の周波数になるため、GSM方式の送信系の2次高調波に与える影響を考慮する必要がある。しかし図2に示した構成では、双方の回路が共用する分波回路用コンデンサ電極パターン211〜218を境にして、DCS方式に対応する回路と、GSM方式に対応する回路が、別の領域に分離して配置されることになり、双方の回路を分波回路用コンデンサ電極パターン211〜218で最も隔てながら全体を小型化する効果が生じる。
【0026】
誘電体層21上には接続パターン219が形成される。該接続パターン219には表面実装部品11、12が接続され、搭載される。表面実装部品11、12はダイオード、チップ抵抗、チップコンデンサまたはチップインダクタであり、回路構成に従って適宜に配置される。
【0027】
前記接続パターン219は回路構成に従って対応するビアホールに接続される。外部接続電極T1〜T12のうち、例えば外部接続電極T8、T4は、内部電極の引き出しパターンである接続パターン221、231と接続される。
【0028】
本実施の形態において、図1、図2に示した誘電体層21〜36の配置は、電気特性と、グリーンシートの焼成に伴う縮率を考慮して決定されている。すなわち、最上層の誘電体層21は比誘電率が11程度となり、縮率が小さいグリーンシートが選択される。また、その下の誘電体層22〜32は、比誘電率が7.3程度となり、縮率がやや大きいグリーンシートが選択される。また、その下の誘電体層33、34は、最上層の誘電体層21と同じく比誘電率が11程度となり、縮率が小さいグリーンシートが選択される。さらにその下の誘電体層35、36は、誘電体層22〜32と同様に比誘電率が7.3程度となり、縮率がやや大きいものが選択される。
【0029】
すなわち、誘電体層22〜26は主にコイル用導体パターンを形成し、誘電体層27〜32は主に接続パターンを形成するが、いずれの誘電体層22〜32も比誘電率が7.3程度となる素材を選択する。これらの誘電体層22〜32は比誘電率が低いことにより、隣接するパターンとの浮遊容量による干渉を防止できる。誘電体層33、34はコンデンサを構成する電極間の誘電体層であり、いずれも比誘電率が11程度となる素材を選択する。このように比誘電率を他の誘電体層より高くすることにより、コンデンサとしての容量を得やすい。しかし、誘電体層33、34は焼成に伴う縮率が小さく、一方、上層の誘電体層22〜32は縮率が大きいので、焼成時に変形してしまう。そのため、最上層の誘電体層21に誘電体層33、34と同じ縮率の小さい素材を選択することで焼成時の変形を防止する。
【0030】
また、送受切換えスイッチを、ダイオードとLC回路で構成し、LC回路部を多層基板内に形成したので、高周波回路で一般的に用いられるダイオード、コンデンサおよびλ/4ストリップラインによる従来構成に比較し、ストリップラインのインピーダンス整合を考慮しなくてもよいため、ストリップラインの整合をとるための誘電体層を設ける必要がないので、多層基板をより薄型化することができる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、移動体通信機器用フロントエンドモジュールを上述の構成にしたことにより、以下の効果が得られる。
(1)多層基板の通信方式が異なる複数の送受信機能を備える送受信回路を一体化するに当たり、多層基板は、平面方向の中心位置に分波回路用パターンを配置し、該分波回路用パターンを境にして、通信方式が異なる複数の送受切換えスイッチを別の領域に分離して配置することにより、双方の回路間の干渉を分波回路用パターンで防ぐことができ、これにより多層基板全体を小型化することができる。
【0032】
(2)誘電体層として、それぞれコイル用導体パターンが主に形成された複数の誘電体層を積層方向に隣接させて配置し、それぞれコンデンサ電極パターンが主に形成された複数の誘電体層を積層方向に隣接させて配置するというふうに、分離配置したので、コイル用導体パターンを主に形成した複数の誘電体層は、コンデンサ電極パターンが主に形成された層より比誘電率が低くなる素材を選択することにより、積層方向に隣接するパターン間の浮遊容量による干渉を防止できる。また、コンデンサ電極パターンを主に形成した誘電体層はコンデンサとしての容量を取得し易く、多層基板全体を小型化できる。
【0033】
(3)コイル用導体パターンを主に形成した層の下に隣接して、コンデンサ電極パターンを主に形成した層を積層し、前記コイル用導体パターンを主に形成した層の上層にもコンデンサ電極パターンを主に形成した層と同様の素材からなる層を積層したので、縮率の相違による焼成時の変形を防止することができる。
【0034】
(4)送受切換えスイッチを、ダイオードとLC回路で構成し、LC回路部を多層基板内に形成したので、高周波回路で一般的に用いられるダイオード、コンデンサおよびλ/4ストリップラインによる従来構成に比較し、ストリップラインのインピーダンス整合を考慮しなくてもよいため、ストリップラインの整合をとるための誘電体層を設ける必要がないので、多層基板をより薄型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフロントエンドモジュールの一実施の形態を示す断面図。
【図2】該実施の形態の多層基板の各誘電体層に形成するパターンを示す図。
【図3】該実施の形態のフロントエンドモジュールの回路構成の一例を示す回路図。
【図4】該実施の形態のフロントエンドモジュールの外観を図1と同一方向で示す正面図。
【図5】該実施の形態のフロントエンドモジュールの平面図である。
【図6】該実施の形態のフロントエンドモジュールの側面図。
【符号の説明】
1:フロントエンドモジュール、11、12:表面実装部品、15:シールドケース、20:多層基板、21〜36:誘電体層、201、203:接地電極パターン、202:対向電極、204:ビアホール、205、219、221、231:接続パターン、206:電極、211〜218:分波回路用コンデンサ電極パターン、222〜226、232〜236:コイル用導体パターン、T1〜T12:外部接続電極
Claims (4)
- 異なる通信方式に使用される移動体通信機器用フロントエンドモジュールであって、
アンテナに接続される分波回路と、
該分波回路を介してアンテナに接続され、アンテナをそれぞれ異なる通信方式の送信回路、受信回路に対して切換え接続する送受切換えスイッチと、
高周波を除去するフィルタとを少なくとも有し、
該フロントエンドは多層基板に部品を搭載して一体化したモジュールを構成し、
前記多層基板は平面方向中心位置に分波回路用パターンを配置し、
該分波回路用パターンを境にして、通信方式が異なる複数の送受切換えスイッチ用導体パターンを分離して配置する
ことを特徴とする移動体通信機器用フロントエンドモジュール。 - 前記多層基板は複数の誘電体層を積層して構成し、
前記多層基板内の誘電体層は、コイル用導体パターンが主に形成されて互いに隣接して積層された複数の誘電体層と、コンデンサ電極パターンが主に形成されて互いに隣接して積層された複数の誘電体層とに分離して構成し、
前記コイル用導体パターンが主に形成された誘電体層は、前記コンデンサ電極パターンが主に形成された誘電体層より比誘電率が低くなる材料を選択する
ことを特徴とする請求項1記載の移動体通信機器用フロントエンドモジュール。 - コイル用導体パターンが主に形成された誘電体層を隣接して積層してなる層の下層に、コンデンサ電極パターンが主に形成された誘電体層を隣接して積層してなる層を設け、
前記コイル用導体パターンが主に形成された誘電体層の上層にも、コンデンサ電極パターンが主に形成された層と同じ素材からなる層を積層して、焼成に伴う縮率が相違する変形を防止する
ことを特徴とする請求項2記載の移動体通信機器用フロントエンドモジュール。 - 前記送受切換えスイッチは、ダイオードとLC回路とで構成され、かつ前記フィルタ、分波回路もLC回路で構成され、
前記LC回路は前記多層基板内に形成され、
前記LC回路の一部は、前記多層基板の上面に配置されたダイオードとビアホールを通して接続される
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の移動体通信機器用フロントエンドモジュール。
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