JP3750719B2 - 作業車両の油圧回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧で作動する作業機と操向装置とを備えた作業車両(特にフォークリフト)の油圧回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の、油圧で作動する作業機と操向装置とを備えた作業車両(特にフォークリフト)の油圧回路について図6を参照して以下に説明する。
【0003】
図6に、一般的な作業車両の油圧回路図を例示する。
エンジン1に駆動されるポンプ52は、プライオリティ弁55を介して第1操作弁13に圧油を送り込んでいる。第1操作弁13は、図示しない作業機を駆動自在とする作業機シリンダ14,15に操作により圧油を供給する。
プライオリティ弁55はまた、ポンプ52の吐出する圧油の一部を、負荷の大小によらず一定流量だけ第2操作弁10に送り込んでいる。第2操作弁10は、図示しない操舵輪を操向自在とする操向シリンダ11に操作により圧油を供給する。
作業機シリンダ14,15から第1操作弁13を介して戻る圧油と、操向シリンダ11から第2操作弁10を介して戻る圧油とは、合流してクーラ50を通過して冷却された後タンク4に戻る。
【0004】
ポンプ52とプライオリティ弁55との間には、第1操作弁13及び作業機シリンダ14,15の最大圧力を規定する作業機リリーフ弁57が設けられ、プライオリティ弁55と第2操作弁10との間には、第2操作弁10及び操向シリンダ11の最大圧力を規定する操向リリーフ弁58が設けられている。
なお、特にフォークリフトにおいては、操向リリーフ弁58の規定圧力は作業機リリーフ弁57の規定圧力よりも低いのが普通である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記油圧回路には、作業機と操向との動力源を1つのポンプ52でまかなっているため、以下の問題が発生している(特にフォークリフトにおいて)。
(1)例えば、作業機操作しないで操向だけを行う(逆の操作でも可)といったとき、操向シリンダ11を駆動する圧油の流量は、ポンプ52の吐出流量の一部である(ことが多い)のに、ポンプ52の吐出流量の全体に負荷圧力がかかる。したがって、ポンプ52は無駄なトルクを吸収し、燃費を悪化させる。
(2)例えば、作業機操作と操向の両方でリリーフさせたとき、ポンプ52の吐出流量の全部にリリーフ弁57の規定圧力がかかる。前述の通りリリーフ弁58はリリーフ弁57よりも規定圧力が低いのが普通だから、ポンプ52は無駄なトルク(リリーフ弁57,58の規定圧力の差×リリーフ弁58の通過流量分)を吸収する。吸収トルクが無駄に大きくなると、エンスト防止のためにエンジン1は大型になり、製造コストが上昇する。
(3)(1)及び(2)で述べた無駄なトルクで発生するエネルギーは、その大半が熱となって油温を上昇させる。したがって、油温の上がり過ぎを防止するためにクーラ50が必要となり、製造コストが上昇する。
(4)プライオリティ弁55が一定流量の圧油を優先的に第2操作弁10に送り込むために、特にエンジン低速回転時にはポンプ52の吐出流量の大部分が第2操作弁10に送られるので、作業機速度が極端に低下し、操作性が悪い。操作性を向上させるにはエンジン回転を上げねばならないので、燃費が悪化する。
【0006】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたものであり、必要以外の負荷によるポンプの吸収トルクを低減することでエンジンの負担増と油温の上昇とを抑え、燃費が良く製造コストの低い作業車両の油圧回路を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に関わる作業車両の油圧回路は、歯車ポンプからの圧油を第1操作弁を介して作業機アクチュエータに供給することにより作業機を駆動自在とするとともに、歯車ポンプからの圧油を第2操作弁を介して操向アクチュエータに供給することにより操舵輪を操向自在とする作業車両において、歯車ポンプは、第1操作弁に圧油を供給する第1ポンプと、第2操作弁に圧油を供給する第2ポンプとを有する多連ポンプであり、第2ポンプと第2操作弁との間に、第2操作弁に供給する圧油の流量が所定流量値を越えたときに余剰分の流量の圧油を分流して排出するプライオリティ弁を設けるとともに、プライオリティ弁の排出する圧油の余剰分の流量を、第1ポンプの吐出圧力に応じて、第1ポンプの吐出する圧油に合流させるか、またはタンク若しくは多連ポンプの吸込口へ戻すかを切換自在とする切換手段を設けている。
【0008】
【発明の効果】
上記構成によれば、以下の如き効果が得られる。
(1) ポンプを2つにしたことにより、作業機と操向との負荷をそれぞれ別のポンプで分担でき、各々のポンプを必要な吐出圧力で作動できるので、無駄な吸収トルクがなくなる。したがって、燃費が向上するとともに、エンジンを小型化して製造コストを低減可能となる。また、作動油温の上昇も抑えられ、クーラが必要なくなる。
(2) 第1ポンプの吐出圧力が高いときに、第2ポンプからの余剰分の圧油を第1ポンプからの圧油に合流させると、第2ポンプの吐出圧力も上昇して吸収トルクが増加し、燃費の悪化と油温の上昇とを招く。そこで本発明では、第2ポンプからの余剰分の圧油を、第1ポンプからの圧油に合流させるか、またはタンク等へ戻すかを、切換手段によって切替自在としている。これにより、第1ポンプの吐出圧力が低いときは、第2ポンプからの余剰分の流量の圧油を、第1ポンプの吐出する圧油に合流させることで、第1操作弁に流れる圧油の流量が増加し、作業機の速度を上げて作業能力を向上でき、第1ポンプの吐出圧力が高いときは、第2ポンプからの余剰分の流量の圧油を、タンクまたは多連ポンプの吸込口へ戻すことで、第2ポンプにおける吸収トルクの増加や、余剰分の流量が第2操作弁に流れることで生じる通路抵抗の増大による、燃費の悪化および油温の上昇を防止することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、第1の実施形態について、図1、図2を参照して説明する。
なお、説明は従来技術の実施形態と相違する部分のみに限ることとして、従来技術の実施形態と同一の構成要素には同一符号を付し、ここでの説明を省く。
【0014】
図1に、本発明の実施形態による作業車両(特にフォークリフト)の油圧回路図を示す。
エンジン1に駆動される歯車ポンプ20は、第1操作弁13に圧油を供給する第1ポンプ2と第2操作弁10に圧油を供給する第2ポンプ3とを有する多連ポンプである。第2ポンプ3と第2操作弁10との間には、第2操作弁10に供給する圧油の流量が所定流量値を越えたときに余剰分の流量の圧油を分流して排出するプライオリティ弁5を設ける。プライオリティ弁5と第1ポンプ2との間には、合流切替弁6を設ける。合流切替弁6はプライオリティ弁5の排出する余剰分の流量の圧油を、第1ポンプ2の吐出圧力が規定圧力を越えるときにタンク4へ戻し、これ以外のときに第1ポンプ2の吐出する圧油に合流させる。また、合流切替弁6はチェック弁6aを有して、第1ポンプ2からプライオリティ弁5への逆流を防止している。
合流切替弁6と第1操作弁13との間には、第1操作弁13及び作業機シリンダ14,15の最大圧力を規定する作業機リリーフ弁7が設けられ、プライオリティ弁5と第2操作弁10との間には、第2操作弁10及び操向シリンダ11の最大圧力を規定する操向リリーフ弁8が設けられている。
なお、フォークリフトの場合リリーフ弁8の規定圧力はリリーフ弁7の規定圧力よりも低いものである。
【0015】
上記の合流切替弁6の作動によれば、第1ポンプ2の吐出圧力が低いときには第2ポンプ3の圧油の余剰分の流量を合流させ、第1操作弁13への供給流量を増加して作業機速度を増加できるとともに、第1ポンプ2の吐出圧力が高い(合流させると第2ポンプ3の吐出圧力が上昇し、リリーフ弁8が作動する)ときにはタンク4に戻して、第2ポンプ3の合流時のリリーフ弁8からのリリーフ損失による燃費の悪化及び油温の上昇を防止できる。
【0016】
なお、合流切替弁6が非合流から合流に急激に切替わると、第2ポンプ3の吐出圧力及び吸収トルクが急激に増大してエンストを招く可能性がある。そのため、例えば図1中に示したようにスローリターン絞り6bを設けるなどして、合流切替弁6の切替速度を緩慢にするのが望ましい。
【0017】
合流切替弁6の替わりに、図2中に示したように圧油の余剰分の流量を常に合流させる合流ブロック6e、または図3中に示したように圧油の余剰分の流量を常にタンク4に戻す非合流ブロック6fを設けても良い。
【0018】
また、第1ポンプ2の吐出圧力及び吸収トルクの急な増大によるエンストを防止するために、図1中に示したように第1ポンプ2と第1操作弁13との間にブリードオフする絞り弁9を設けても良い。
絞り弁9は第1操作弁13へ供給される圧油のわずかな一部を、絞りを通じてタンク4へ戻している。第1操作弁13への供給圧力すなわち第1ポンプ2の吐出圧力が、高いときは絞りの開口が狭まり、低いときは広がる。こうして可変絞り弁9はタンク4へ戻す圧油の流量を圧力によらず略一定に制御している。
ところが、第1ポンプ2の吐出圧力の急激な上昇時は、絞りの開口を狭めるのに作動遅れを生じて、一瞬の間過分に多量の圧油がタンク4へ戻る。これによって、第1ポンプ2の吐出圧力の急激な上昇を緩和し、吸収トルクの急な増大によるエンストを防止できる。
【0019】
つぎに、ポンプ20の構成について、図4、図5を参照して説明する。
まず、図4は、ポンプ20を軸方向に破断した断面図である。
ポンプ20において一体のケーシング21内に、第1ポンプ2及び第2ポンプ3が形成されている。第1ポンプ2は第1ドライブギヤ22と第1ドリブンギヤ24とを有し、第2ポンプ3は第2ドライブギヤ23と第2ドリブンギヤ25とを有する。第1、第2ドライブギヤ22、23はそれぞれに固設した第1、第2回転軸26、27を有し、これらの回転軸によって回転力を授受する。
【0020】
第1、第2回転軸26、27はその結合部において、一方(ここでは第1回転軸26)がオス、他方がメスのスプライン形状を有し、互いに係合することによって一方から他方へ回転力を伝達自在とする。
第1、第2回転軸26、27が直接係合することで継手が不要となり、軸方向長さを短縮してポンプ20を小型化できる。
なお、軸の係合形状は、セレーション、キー溝またはその他の形状でも良い。
【0021】
次に、図5は、ポンプ20を第2ポンプ3の部分で軸に垂直な方向に破断した断面図である。
プライオリティ弁5及びリリーフ弁8をケーシング21内に設けるとともに、第2ポンプ3の吐出口3aからプライオリティ弁5及びリリーフ弁8までの通路と、リリーフ弁8から第2ポンプ3の吸込口3bまでの(戻り)通路とをケーシング21内に形成している。
これにより配管を簡素化し、組立工数の低減とポンプ20の小型化とが可能になる。
なお、プライオリティ弁5及びリリーフ弁8を別ブロックとして、ケーシング21に締結しても、同様の効果が得られる。
【0022】
本発明の実施形態によれば、ポンプを2つ有するので、作業機と操向との負荷をそれぞれ別のポンプで分担でき、それぞれのポンプを異なる吐出圧力で駆動できて無駄な吸収トルクがなくなる。したがって燃費が向上するとともに、エンジンを小型化して製造コストを低減可能となる。また、作動油温の上昇も抑えられ、クーラを備える必要がなくなる。
単に作業機用と操向用との2つのポンプをそれぞれ備えるだけでは大型化して大きな設置スペースが必要となり、コストも上昇する。特にフォークリフトでは油圧ポンプを設置する場所が非常に狭く、単に2つのポンプを連結するだけでは設置スペースを確保できない。本発明では、第1、第2ポンプ2,3を、プライオリティ弁5及びリリーフ弁8をも含めて一体化したので、機器の小型化、配管の簡素化及び製造コストの低減が可能となる。
【0023】
なお、本発明の回路は必ずしもポンプの数を2つに限定するものではない。例えば図1に示すように、他の油圧回路70に圧油を供給する第3ポンプ60を、第1、第2ポンプ2,3と同軸上に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による油圧回路図である。
【図2】合流ブロック6eの油圧回路図である。
【図3】非合流ブロック6fの油圧回路図である。
【図4】油圧ポンプ20の軸方向の断面図である。
【図5】油圧ポンプ20の軸に垂直な方向の断面図である。
【図6】従来の技術に係る油圧回路図である。
【符号の説明】
2…第1ポンプ、3…第2ポンプ、4…タンク、5…プライオリティ弁、6…合流切替弁、10…第2操作弁、13…第1操作弁、20…歯車ポンプ、21…ケーシング、22…第1ドライブギヤ、23…第2ドライブギヤ、24…第1ドリブンギヤ、25…第2ドリブンギヤ、26…第1回転軸、27…第2回転軸。
Claims (1)
- 歯車ポンプからの圧油を第1操作弁を介して作業機アクチュエータに供給することにより作業機を駆動自在とするとともに、歯車ポンプからの圧油を第2操作弁を介して操向アクチュエータに供給することにより操舵輪を操向自在とする作業車両において、
歯車ポンプは、第1操作弁に圧油を供給する第1ポンプと、第2操作弁に圧油を供給する第2ポンプとを有する多連ポンプであり、
第2ポンプと第2操作弁との間に、第2操作弁に供給する圧油の流量が所定流量値を越えたときに余剰分の流量の圧油を分流して排出するプライオリティ弁を設けるとともに、
プライオリティ弁の排出する圧油の余剰分の流量を、第1ポンプの吐出圧力に応じて、第1ポンプの吐出する圧油に合流させるか、またはタンク若しくは多連ポンプの吸込口へ戻すかを切換自在とする切換手段を設けたことを特徴とする作業車両の油圧回路。
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