JP3750310B2 - ガス発生量簡易試験方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物等に用いられる建材等から発生される有害ガスの発生量を、非破壊的にかつ簡便に検査できるようにしたガス発生量簡易試験方法を提供することを目的とする。
【0002】
【従来の技術】
近年、新建材やコンクリート等の建材から発生する各種ガスが問題となっており、例えば、新建材から放散されるホルムアルデヒド等の人体に有害な揮発性有機化合物で室内空気が汚染されたり、建物のコンクリートから発生するアンモニアガスで博物館や美術館の展示物が劣化されたりしてまう。また、半導体工場のクリーンルームでは、床や壁の塗料から発生されるアンモニアガスや有機ガスの影響によりクリーン度が低下されてしまう。このため、これら問題を解決するためにガス放散現象の解明や実態調査を行う上で、あるいは対策を検討する上で、各種建材類からのガス放散量を調査する必要がある。
【0003】
従来、JIS A 5908「パーティクルボード」では、パーティクルボードの品質規格項目の1つとしてホルムアルデヒド放散量による3種類の区分を設けて、放散量の試験方法が示されている。同試験法は、図4(a)に示すように検査材料1を短冊状(5cm×15cm)に切り出して、その10枚前後を一定間隔を保ってホルダー2に配置し、これを同図(b)に示すように水を入れた皿3とともにガラスデシケータ4中に密閉し、これを一定温度で24時間放置した後に水に溶け込んだホルムアルデヒド濃度を化学分析して評価するという方法である。これはデシケータ法と称され、農林水産省告示題16号のJIS「普通合板」においてもほぼ同様の試験法が規定されている。
【0004】
また、別の試験方法としてチャンバー法があり、これは図5に示すように換気を可能としたチャンバー5内に検査材料1aを設置し、一定風量の清浄空気で換気しつつチャンバー5内空気を捕集して化学分析し、もって有害ガスの放散量に換算するものである。即ち、上記チャンバー5は吸気口5aおよび排気口5bが形成され、排気口5bに接続した流量制御器6およびポンプ7を介してチャンバー5内の空気を排気することにより、吸気口5aから一定量の清浄空気が導入されるようになっている。そして、排気口5b近傍に設けたガス採取口8からガス混合空気を取り出し、このガス混合空気を分析するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来のガス放散量の試験方法にあっては、次の▲1▼〜▲5▼に示すような制約があり、利便性に欠けるという課題があった。
【0006】
▲1▼検査材料1,1aをその都度所定寸法に切断する必要があり、この切断加工に手間がかかる。
▲2▼検査材料1,1aを切断することにより小口からもガスが放散され、特にデシケータ法のように検査材料1,1aを小さく切断して多数用いる場合には、切断した小口からのガス放散の影響が大きくなり、実際の使用状況と条件が異なって正確な検出ができない。
▲3▼デシケータ法およびチャンバー法のいずれにしてもガス濃度を検査するために化学分析を行う必要があり、専門知識や専用の分析装置が必要となって経費が嵩む。
▲4▼チャンバー法では、換気量を一定に制御してはじめてガス放散量の換算を行うことができるため、送風ポンプや流量計および流量制御装置等が必要となって装置が著しく大掛かりになる。
▲5▼特に大きな問題として、試験しようとする材料を建物等に施工した後は、その場での非破壊試験ができないため、実際の設置状況での正確なガス放散量を検出することができない。
【0007】
そこで、本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、建材や塗料等からの特定ガスの放散量を、非破壊的にかつ簡便に測定できるようにしたガス発生量簡易試験方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために請求項1に示す本発明のガス発生量簡易試験方法は、検査材料の表面に気密状態で密接される開口部を形成したカバーを用い、このカバー内に、検知ガス量に応じて発色程度が変化するガス検知手段を着脱自在に取付け、このガス検知手段を取り付けたカバーで検査材料の表面を覆って、この検査材料から放散されるガスをカバー内に封入し、上記ガス検知手段に現れる発色程度と経過時間との関係によって検査対象ガスの発生量を検出する。
【0009】
また、請求項2に示す本発明のガス発生量簡易試験方法は、上記カバーをそれ自体からのガス発生が無い材料で形成した透明カバーとする。
【0010】
かかる本発明のガス発生量簡易試験方法の作用を各請求項毎に以下述べると、請求項1のガス発生量簡易試験方法は、ガス検知手段を取り付けたカバーの開口部で検査材料の一定面積を覆うことにより、該開口部は密閉されて検査材料から放散されるガスがこのカバー内に封入される。そして、この密閉状態で時間経過に伴ってカバー内のガス濃度が上昇し、カバー内に取り付けられたガス検知手段の発色程度が進行する。このとき、検査材料からのガス放散速度が大きい程、短時間でガス検知手段の発色が促進される。従って、時間経過に伴うガス検知手段の発色程度とガス放散量との関係を予め確認して換算式を求めておけば、所定時間でのガス検知手段の発色程度から検査材料のガス放散速度、延いては検査対象ガスの放散量を検出することができる。
【0011】
従って、基本的にガス検知手段とカバーとを用いるのみでガス発生量の検査を行うことができるので、検査装置を著しく簡略化できるとともに、ガス検知手段を取り付けたカバーで検査材料の表面を覆い、所定時間後にガス検知手段の発色程度を確認するという簡単な作業でガス放散量を検出できるため、化学分析等の専門知識を要することなく簡単にガス発生量を検出することができる。また、カバーで検査材料の表面を覆うことによりガス発生量を検出できるため、検査材料の切り取りを全く必要とせず、完全な非破壊試験を行うことができるとともに、実際の設置状況でのガス発生量を検出できるため、現実の環境条件下での正確なガス放散量を検出することができる。
【0012】
また、請求項2のガス発生量簡易試験方法は、上記カバーを、それ自体からのガス発生が無い材料で形成した透明カバーとしたので、カバー内に取り付けたガス検知手段の発色程度を外から確認することができる。このため、ガス検知手段の発色程度を、カバーを開けることなく確認できるため、単位時間毎にガス検知手段の発色程度を確認しつつ検査を長時間に亘って継続して行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。図1から図3は本発明のガス発生量簡易試験方法の一実施形態を示し、図1はガス発生量の試験状態を示す斜視図、図2は本試験方法に用いられるガス検知手段を示す縦断面図および横断面図、図3は本試験方法によるガス検知手段の発色程度と経過時間との関係を示す特性図である。
【0014】
即ち、本実施形態のガス発生量簡易試験方法は、図1に示すように検査材料10の表面に気密状態で密接される所定面積の開口部12aを形成したカバー12を用い、このカバー12内に、検知ガス量に応じて発色程度が変化するガス検知手段14を着脱自在に取付け、このガス検知手段14を取り付けたカバー12で検査材料10の表面を覆って、この検査材料10から放散されるガスをカバー内に封入し、上記ガス検知手段14に現れる発色程度と経過時間との関係によって検査対象ガスの発生量を検出する。
【0015】
上記カバー12は、プラスチックやガラス等のそれ自体からガス発生が無い透明材料によって形成される半球状の透明カバーとしてあり、このカバー12の円形状の開口部12aは単位面積あたりのガス発生量を換算し易いように、予め一定の開口面積となるようにその半径が決定されている。また、上記開口部12aの周縁部には軟質ゴムを用いたガスケット16が連続して取り付けられ、カバー12を検査材料10の表面に押し当てた際に密着して、開口部12a周縁部の気密性を高めてカバー12内の密封度を高めるようになっている。
【0016】
上記カバー12の内側頂部には上記ガス検知手段14を着脱自在に取り付けるためのクリップ18が設けられ、このクリップ18によってガス検知手段14の取付けおよび取り外しが簡単に行われる。また、カバー12の内側には温度指示計20が取り付けられ、この温度指示計20によってカバー12内の温度が確認されるようになっている。
【0017】
上記ガス検知手段14の例としては、例えば一般に市販されるガステック社製のパッシブ・ドジチューブ(商品名)がある。このパッシブ・ドジチューブは図2(a)に示すように両端部が閉止されたガラス管22内に、拡散誘導体24と、特定のガスと反応して発色する検知剤26とが平行して同図(b)に示すように収納されたもので、上記ガラス管22の一端部には凹設されたカッティングマーク22aが形成されている。そして、上記パッシブ・ドジチューブの使用時には、カッティングマーク22aから折って開口することにより、ガラス管22内に自然拡散によってガスが侵入し、これが検知剤26と反応してこの検知剤26の一端から次第に発色長さが増加するようになっている。また、ガラス管22の外周面には目盛りが付けてあり、一定時間暴露後の検知剤26の発色長さを読みとることによりガス濃度に換算できるようになっている。上記パッシブ・ドジチューブは、検知剤26の成分によって多種のガス検知、例えばホルムアルデヒドやアンモニア等の検知が可能となっている。
【0018】
そして、本実施形態のガス発生量簡易試験方法によってガス発生を試験する際には、まずカバー12内のクリップ18にパッシブ・ドジチューブをカッティングマーク22aから折って取り付けた後、直ちにこのカバー12で検査しようとする検査材料10の検査部位表面を覆って、カバー12内を周囲の空気から遮断した状態を保つ。すると、検査材料10からガスが放散される場合は、このガスがカバー12内に封入されて時間経過とともにその濃度が上昇する。このとき、上記パッシブ・ドジチューブはカバー12内のガス混合空気がガラス管22内に侵入し、そのガスが検知剤26と反応して発色程度が進行する。このときの発色程度は、検査材料10からのガス放散速度が速いほど短時間で発色が進むので、時間経過に伴うこの発色程度とガス放散量との関係を予め確認して換算式を求めておけば、所定時間でのパッシブ・ドジチューブの発色程度から検査材料10のガス放散速度を検知することができる。このことから、検査材料10の単位面積に対する単位時間当たりのガス放散量を求めることができる。
【0019】
検査材料10となる建材等からのガス放散速度は温度依存性が高く、また、上記パッシブ・ドジチューブの反応速度(ガスの拡散侵入速度)も温度によって変化する性質があるため、カバー12内に取り付けた温度指示計20によって試験中の温度を測定し、評価の補助データとする。
【0020】
従って、上記カバー12で検査材料10を覆った後、任意の時間(30分〜数時間)経過毎に透明のカバー12を通してパッシブ・ドジチューブの変色長さを目盛りで読み取るとともにカバー12内の温度を温度指示計20で読み取り、これらを記録して所定時間での検査材料10のガス放散量を評価する。
【0021】
図3は本実施形態のガス発生量簡易試験方法によって求めたホルムアルデヒドの発生量の特性図の一例を示し、横軸に測定開始後の経過時間を示し、縦軸にパッシブ・ドジチューブの読み取り値を示してある。同図中、特性Aは検査材料10としてホルムアルデヒド放散量404μl/m2 /hrの合板を用いた場合、特性Bはホルムアルデヒド放散量133μl/m2 /hrの合板を用いた場合、特性Cはホルムアルデヒド放散量20μl/m2 /hrの合板を用いた場合で、これらの結果から本実施形態の試験方法が適正に利用できることが理解される。
【0022】
従って、本実施形態のガス発生量簡易試験方法では、基本的にカバー12とガス検知手段14とを用いるのみでガス発生量の検査を行うことができるので、検査装置を著しく簡略化できるとともに、ガス検知手段14を取り付けたカバー12で検査材料10の表面を覆い、所定時間後にガス検知手段14の発色程度を確認するという簡単な作業でガス放散量を検出できるため、化学分析等の専門知識を要することなく簡単にガス発生量を検出することができる。また、カバー12で検査材料10の表面を覆うことによりガス発生量を検出できるため、検査材料10の切り取りを全く必要とせず、完全な非破壊試験を行うことができるとともに、実際の設置状況でのガス発生量を検出できるため、構築完了後における建物等の現実の環境条件下での建材の正確なガス放散量を検出することができる。勿論、既存建物の建材のみならず、構築以前に材料を切断して検査しても良いことはいうまでもない。
【0023】
また、本実施形態では上記カバー12を、プラスチックやガラス等のそれ自体からガス発生が無い材料で形成した透明カバーとしたので、カバー12内に取り付けたガス検知手段14の発色程度を外から確認することができる。このため、ガス検知手段14の発色程度を、カバー12を開けることなく確認できるため、単位時間毎にガス検知手段14の発色程度を確認しつつ検査を長時間に亘って継続して行うことができるため、検査の作業性を向上することができる。
【0024】
ここで、上記カバー12は半球状に限ることなく、開口部12aの面積とともに任意の形状として形成することができ、特にカバー12の内容積が小さく、かつ、開口部12aの面積が大きい程、より短時間でカバー12内のガス濃度が上昇するので検出感度を高めることができる。また、ガス検知手段14は上記パッシブ・ドジチューブに限ることなく、カバー12内に収納できるものであれば種々のものを採用することができる。
【0025】
更に、本実施形態の試験方法ではホルムアルデヒドの検出結果を例示したが、これに限ることなくアンモニアを検出するためのガス検知手段14を用いることにより、コンクリートを試験材料10としてガス発生量を検出することもでき、また更には、他のガスの検査を行うこともできる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の請求項1に示すガス発生量簡易試験方法にあっては、次の▲1▼から▲6▼に示す優れた効果を奏する。
▲1▼基本的にカバーとガス検知手段とによる極めて簡単な器具で検査材料からのガス発生量を評価できるので、多数の試験を手軽に行うことができる。
▲2▼検査材料を切断する必要がないので、材料の使用前の試験のみならず、材料が建物等に施工された状態で、室内仕上げ面からの有害ガスの放出量をその場で非破壊的に検出することができる。
▲3▼ガス分析のためにガスの捕集や複雑な化学分析装置が不要となるため、化学的な専門知識がなくても試験を行うことができる。
▲4▼ガスや捕集液などの試料を分析機関に持ち込んで分析結果を待つ必要が無く、その場で数時間で結果が得られるので、建材などの製造過程における製品管理や材料の使用現場における受け入れ検査などに簡便に活用することができる。
▲5▼カバーの開口部によって一定面積を覆って試験するため、建物内の有害ガスの濃度が高いような場合に、現地で発生源と目される部位に複数設置して、それぞれから得られたデータを相対的に比較することができ、ガス発生源とその室内環境への影響程度を容易に究明するこができる。
▲6▼試験に必要な消耗品はガス検知手段のみであるため、器具の全体構成を含めても著しく経済的でなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の簡易試験方法を用いて行うガス発生量の試験状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の試験方法に用いられるガス検知手段の一実施形態を示すもので、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【図3】本発明の本試験方法に用いたガス検知手段の発色程度と経過時間との関係の一例を示す特性図である。
【図4】従来のデシケータ法を用いた検査方法を説明するもので、(a)は検査材料の斜視図、(b)はデシケータの概略図である。
【図5】従来のチャンバー法を用いた検査方法を示す概略構成図である。
【符号の説明】
10 検査材料
12 カバー
12a 開口部
14 ガス検知手段
20 温度表示計

Claims (2)

  1. 検査材料の表面に気密状態で密接される開口部を形成したカバーを用い、このカバー内に、検知ガス量に応じて発色程度が変化するガス検知手段を着脱自在に取付け、このガス検知手段を取り付けたカバーで検査材料の表面を覆って、この検査材料から放散されるガスをカバー内に封入し、上記ガス検知手段に現れる発色程度と経過時間との関係によって検査対象ガスの発生量を検出することを特徴とするガス発生量簡易試験方法。
  2. 上記カバーは、それ自体からのガス発生が無い材料で形成した透明カバーであることを特徴とする請求項1に記載のガス発生量簡易試験方法。
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