JP3750001B2 - 珪酸二カルシウムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメント鉱物の一種であり、接着剤や補修剤として使用される珪酸二カルシウム(以下、C2 Sと称する。)を、安価に且つ短時間で製造し得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
C2 Sは、ポルトランドセメントの重要な構成化合物であり、セメントの長期強度と密接な関係を持つビーライトの基本組成である。また、水和過程の発熱が低い中庸熱ポルトランドセメントでは、C2 Sの含有比率が高くなっている。
【0003】
このような観点から、C2 Sはポルトランドセメントの性質調節のための添加剤として使用される。また、C2 S自体が水硬性を有しているので、接着剤や補修剤などとして単独に用いられることもある。
【0004】
従来のC2 S製造プロセスは、1400〜1500°Cの高温固相反応で合成したあと、さらに粉砕を経て得るというものである。しかしながら、この方法では粒子が焼結し、水和活性が劣る。また、高温焼成と、後工程としての粉砕工程とが必要となるため、省エネルギーの観点からも好ましくない。
【0005】
前記課題を解決する手段として、特願平6−110464号(特開平7−291618号公報参照)に記載のC2 Sの製造方法が提案されている。これを説明すると、まず、シリカ原料と消石灰とを、シリカ原料に対する消石灰のモル比が1.8〜2.2の範囲となるように混合し、次いで当該混合物を、消石灰が反応して完全に消失するまで乾式磨砕処理する。この乾式磨砕処理により、上記混合物は、非晶質状化合物であるC−S−Hゲルへ変化する。引き続き、生成されたC−S−Hゲルを400〜1000°Cの温度で焼成すると、C−S−Hゲルから水分子が離脱してC2 S粉末を得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記先願に記載されるC2 Sの製造方法(以下、先願方法と言う)では、シリカ原料と消石灰との混合物から非晶質のC−S−Hゲルを生成するために、長時間(実施例によれば約9時間)の乾式磨砕処理を行っている。このように前記先願方法は、磨砕処理工程に多量のエネルギーと処理時間とを要するという欠点を有している。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、長時間の磨砕処理工程を行わずにC 2 Sを製造し得る方法を提供するものであって、その要旨とするところは、珪質原料と石灰質原料とを、Ca/Si のモル比が1.8〜2.2の範囲となるように調整して混合し、この混合原料に原料粉体の単位表面積当たり10〜50mg/m 2 の水を加えて湿式細磨した後、これを500〜1000°Cの温度で焼成することにより、中間のC−S−Hをほとんど経ることなく珪酸二カルシウムを得ることである。
【0008】
なお、本発明方法を実施するにあたり、前記石灰質原料を生石灰とすることができる。
【0009】
また本発明方法によれば、前記混合原料の湿式細磨工程は、原料粒子表面に適当な厚みの水膜が形成される程度で充分であり、短時間で済む。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に基づくC2 Sの製造工程は、以下に説明するようにして実行される。はじめに、珪質原料と石灰質原料とを、Ca/Si のモル比が1.8〜2.2の範囲となるように混合する。Ca/Si のモル比を上記範囲に限定する理由は、C2 Sの組成(Ca/Si =2.0)にできるだけ近くして、製造されるC2 Sの純度を高めるためである。
【0011】
珪質原料としては、珪砂,珪石のような結晶質シリカ原料のほか、コロイダルシリカ,シリカゲル,シリカゾル,シリカヒューム,ホワイトカーボンその他市販の非晶質シリカ原料を用いることができる。なお、シリカ純度がなるべく高いものが望ましい。
【0012】
一方、石灰質原料としては、生石灰,消石灰,水酸化カルシウム,石灰石などを使用できる。特に本発明では、前記先願方法において使用が好ましくないとされている生石灰を、出発原料として用いることが可能である。
【0013】
続いて、珪質原料と石灰質原料との混合物に適量の水を加えて湿式細磨する。湿式細磨の手段は特に制限されないが、粉砕容器に粉砕媒体を充填し、相互の粉砕・摩擦エネルギーで粉砕,細磨を行う粉砕機全般が利用可能である。粉砕機の例としては、転動ミル・振動ミル・遠心ミル・アジテータミル等が挙げられる。
【0014】
また、混合原料に加える水の量は、混合した原料粉体の単位表面積当たり10〜50mg/m 2 とする。10mg/m 2 未満であると、原料粒子の表面全体に均一な水膜を形成するのが困難になる。反対に50mg/m 2 を越えると、水膜が厚くなり過ぎ、珪質原料と石灰質原料との接触を妨げると共に、後述するメカノケミカル的作用が水膜によって吸収されるため、反応の進行が阻害される。
【0015】
珪質原料粒子と石灰質原料粒子とに水を加え湿式細磨処理を行うことにより、両原料粒子が均一に混合されると共に、機械的応力によって通常の混合では得られない極めて密な状態で両原料粒子を接触させることが可能となる。また、湿式細磨処理に基づく機械的応力によって、両原料粒子間にメカノケミカル効果が作用すると考えられる。本効果は、外部から受けた機械的エネルギーが、物質の歪みや構造欠陥等の形で蓄積され、化学的反応性を高める効果である。
【0016】
本発明では原料混合物に適量の水を加え、湿式で細磨処理を行う結果、メカノケミカル効果が高まり、化学的反応性が高まる。水の存在によりメカノケミカル反応が促進される理由の詳細は明らかでないが、乾式細磨の場合には機械的応力が主に粒子表面にしか作用しないのに対し、水を添加したことにより適当な厚みの水膜が原料粒子表面に形成され、この水膜を介して機械的応力が原料粒子内部にまで影響するためと推測される。
【0017】
なお、本発明では、水の添加によりメカノケミカル反応が促進されるので、細磨処理工程を短時間(通常30分以内)とすることができる。但し、原料粉体の性状などに応じて、細磨処理時間を適宜延長することを妨げない。
【0018】
次いで、湿式細磨処理を終えた混合原料を、500〜1000°Cの温度で焼成すると、中間のC−S−Hをほとんど経ることなく、C2 Sが製造される。
【0019】
このように、本発明に規定する湿式細磨処理によって得られる混合粉末は、従来の固相反応ではC2 S単相を得ることの困難な500〜1000°Cという低温での焼成によって、また、前記先願方法では必要であった長時間の細磨処理を要することなく、C2 S単相製品の合成が可能である。
【0020】
【実施例】
珪質原料及び石灰質原料として非晶質シリカ(Si O2 )と生石灰(CaO)とを用い、これらの混合原料から、どのような条件であればC2 Sが合成されるかを調べた。実験は、非晶質シリカと生石灰とを、Ca/Si のモル比が1.8〜2.2に調整した混合原料を用い、水の添加量・湿式細磨時間・焼成温度をさまざまに設定して、焼成後に得られる物質の相組成を調べたものである。
【0021】
実験手順の概略を説明すると、まず非晶質シリカと生石灰とを、Ca/Si のモル比が1.8、2.0又は2.2となるように調整して混合し、この混合原料に表1に示す分量の水を添加したのち、振動ミルによって所定時間だけ湿式細磨を行い、引き続き電気炉にて、10°C/分の昇温速度、保持時間60分間の焼成を行う。なお表1において、水の添加量は、原料粉体の表面積1m2 当たりの重量(mg)を表したものである。実験結果を表1に示す。なお、表1中の各略号は、以下の相を意味する。L=CaO P=Ca(OH)2 Q=SiO2
C2S =2CaO・SiO2 C S =CaO・SiO2
【0022】
【表1】
【0023】
表1から分かるように、本発明方法に従って、水を添加して湿式細磨を行ったのち、所定範囲の温度で焼成したものは、単相のC2 S相が生成される。
【0024】
これに対し、水を原料粉体に添加しなかったものは、細磨工程を長時間行い、且つ高温焼成した場合であっても、C2 S相と他の相との混成相となり、単相のC2 S相を得ることができない。
【0025】
また、水を原料に加えたものであっても、細磨工程を省略した場合(細磨時間=0分)には、C2 S相が生成しないか、又は仮にC2 S相が生成したとしても他の相との混成相となる。焼成温度が低い(400°C)場合にはC2 S相は生成されない。
【0026】
このように、本発明が採用する設定条件からはずれた製造方法では、目的とする単相のC2 Sを得るのが困難となることが表1より理解される。
【0027】
【発明の効果】
本発明方法によれば、珪質原料と石灰質原料との混合物との細磨時間を従来よりもはるかに短時間で済ますことができ、しかも焼成温度を比較的低く設定することができる。依って、C2 Sの製造に要するエネルギーコストを格段に引き下げることができると共に、製造時間の短縮化を図ることができる。
Claims (3)
- 珪質原料と石灰質原料とを、Ca/Si のモル比が1.8〜2.2の範囲となるように調整して混合し、この混合原料に原料粉体の単位表面積当たり10〜50mg/m 2 の水を加えて湿式細磨した後、これを500〜1000°Cの温度で焼成することにより、中間のC−S−Hをほとんど経ることなく珪酸二カルシウムを得ることを特徴とする珪酸二カルシウムの製造方法。
- 前記石灰質原料を生石灰とする請求項1に記載の珪酸二カルシウムの製造方法。
- 前記混合原料の湿式細磨時間を30分以内とする請求項1又は2に記載の珪酸二カルシウムの製造方法。
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