JP3748573B2 - 医薬用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、活性成分としてサイクロスポリンを含有する製剤(例えば軟質カプセル)に関する。より詳細には、本発明は、活性成分としてサイクロスポリン;プロピレンカーボネートまたはポリエチレングリコールまたはこれらの混合物;オイル成分として、脂肪酸と第一級アルコールのエステル化合物、中級脂肪酸トリグリセリド、及び脂肪酸モノグリセリドよりなる群から選択される1種または2種以上の混合物;並びにHLB(親水親油バランス)値が8〜17の界面活性剤を含有する軟質カプセル製剤に関するものである。
サイクロスポリンは11個のアミノ酸よりなる巨大分子(分子量1202.64)の環状ペプチド化合物であり、広範囲に及ぶ有用な薬理学的作用、特に免疫抑制作用および抗炎症作用を有する。従って、サイクロスポリンは組織および器官の移植時(例えば心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、骨髄、皮膚または角膜の移植時、特に外来組織および器官の移植時)に惹起される生体固有の免疫反応を抑制するのに使用され、さらに貧血等の血液性疾患;全身性紅斑性狼創、突発性吸収障害等の多様な自己免疫疾患;および関節炎、リューマチ性疾患などの炎症の抑制にも有用である。その他、サイクロスポリンはマラリア、住血吸虫症等の原虫性疾患の治療にも有用であり、最近では化学療法にも利用されている。
サイクロスポリンは優れた親油性を示す反面、疎水性が非常に大きいので、水に対する溶解性は非常に低いが、メタノール、エタノール、アセトン、エーテル、クロロホルム等の有機溶媒には良く溶解する。このような物性を有するサイクロスポリンは水溶解度が低いため、経口投与時における生体利用率が非常に低く、患者個々人の状態によって生体利用率にも大きな影響を及ぼすことから、効果的な治療濃度を維持することが困難であった。更にサイクロスポリンは腎臓毒性等の副作用を示すこともある。この様にサイクロスポリンは水に対する溶解性が非常に低いため、経口投与用に剤型化することは非常に困難であった。そこで、一定の適切な投与量で投与でき、しかも生体利用率にも優れた経口投与用サイクロスポリン製剤の研究が広範囲に行われている。
従来技術において、水難溶性サイクロスポリンを経口投与用製剤に剤型化するには、エマルション濃縮液(per-concentrate)形態にする方法が主に用いられてきた。
この様な方法の代表的なものが1983年6月14日発行の米国特許第4,388,307号に教示されており、エタノールを使用したサイクロスポリンの液体製剤が開示されている。この米国特許の方法によると、サイクロスポリンを、共界面活性剤であるエタノール、植物性オイルであるオリーブ油、および界面活性剤として天然植物性オイルのトリグリセリドとポリアルキレンポリオールとのトランスエステル化生成物からなる担体と配合することによって、液体製剤を製造している。
しかしながら、この液体製剤は水に希釈して服用しなければならないため服薬順応度が低く、服用時における投与容量を一定に調節することが困難であるという短所がある。
従って、サイクロスポリン液体製剤を水で希釈してから服用するという不都合を解消する目的で、エマルション濃縮液形態の液体製剤をそのまま軟質カプセル製剤に剤型化したSandimmune(登録商標)が市販されている。この場合、サイクロスポリン軟質カプセル製剤は、サイクロスポリンの溶解度を考慮してエタノールを含有している。しかし、エタノールは常温でもカプセル製剤のゼラチン皮膜を透過して揮発することから、保存中および輸送中にエタノールが軟質カプセル製剤から揮発するのを防止するために、軟質カプセル製剤はアルミニウム箔薄発泡膏包装のような特殊な包装を施さなければならない。
最近になって、保存中に安定であり生物学的利用率および被検体間における該生物学的利用率の差が実質的に変動しないため、サイクロスポリンによる生物学的効果を一定に維持することのできるサイクロスポリン製剤が開発されている。このような目的を達成するために開発された製剤の一つに、大韓民国特許公開公報第93-113号がある。この製剤は、Sandimmun Neoral(登録商標)という商品名で市販されている。しかしながら、この製剤もエタノールを使用するため、既存のエタノール含有製剤と同様、保存中の安定性に問題があるだけでなく、エタノールの含有量が変化するという問題も抱えている。
そこで、本発明者はさまざまな界面活性剤、オイル成分、共界面活性剤などのあらゆる組み合わせについて鋭意研究を行った結果、安定であり、しかも既存のサイクロスポリン製剤に比べて薬物動力学的特性の観点からも高い生体利用率を有し、個人間の血中濃度差も少なくすることのできるサイクロスポリン組成物を見出した。このサイクロスポリン組成物は、以下に記載の成分からなり、上述の要求特性を満たすものである。
この様に本発明の目的の1つは、活性成分としてサイクロスポリン;親水性成分のポリエチレングリコールまたは非親水性成分のプロピレンカーボネートまたはこれらの混合物;以下に記載のオイル成分;および界面活性剤を含有する、軟質カプセルの製剤化に適した組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、活性成分としてサイクロスポリン;親水性成分のポリエチレングリコールまたは非親水性成分のプロピレンカーボネートまたはこれらの混合物;オイル成分として、脂肪酸と第一級アルコールのエステル化合物、(必要であれば)中級脂肪酸トリグリセリド、及び脂肪酸モノグリセリドよりなる群から選択される1種または2種以上の混合物;並びにHLB(親水親油バランス)値が8〜17の界面活性剤を含有する組成物を含む、軟質カプセル製剤を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、上述の軟質ゼラチンカプセル製剤を製造する方法を提供することにある。
この様に本発明は主に軟質ゼラチンカプセル製剤に関するものであるが、例えばSandimmun Neoralのような液体製剤やその他の服用形態で使用される組成物自体も本発明の範囲内に包含される。
まず第一に本発明は、サイクロスポリン含有カプセル製剤に関する。本発明のサイクロスポリン含有カプセル製剤は保存中の安定性に優れるため組成物の経時変化がほとんどなく、また生体利用率が高いものである。本発明のカプセル製剤は、活性成分としてサイクロスポリン;第2の成分として、親水性成分のポリエチレングリコールまたは非親水性成分のプロピレンカーボネートまたはこれらの混合物;以下に記載のオイル成分;および界面活性剤を含有する組成物を含むものである。
サイクロスポリン含有組成物を軟質カプセル製剤に製剤化するには、ゼラチン皮膜を使用する必要がある。しかしながら、可塑剤としてグリセリンを含有するゼラチンカプセル皮膜を使用して軟質カプセルに製剤化する場合、グリセリンがエマルションに流入し、エマルション濃縮液の乳化状態が変化するため、サイクロスポリンの溶解度が著しく低くなってエマルションからサイクロスポリンが沈殿するという不具合が生じる。
従って、本発明では、可塑剤としてグリセリンではなく、プロピレングリコールとポリエチレングリコールの混合物を使用したゼラチン皮膜を選択することが好ましい。これによって、グリセリンの流入に伴なう問題点を解決することができる。
しかしながら、本発明において、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールを含有するカプセル皮膜バンドを、冷却ドラムを用いた従来の水冷方法によって製造しようとすると、上記カプセル皮膜を冷却ドラムから脱離するのが困難である。このような問題を回避するために、冷却ドラムを冷却水で連続して循環させることにより、カプセル皮膜バンドの温度を約17℃まで過冷却してカプセル皮膜バンドが冷却ドラムから脱離するのを改善することもできるが、カプセル封入工程中に過冷却されたカプセル皮膜バンドの密封強度が低下し、生産性が劣るという新たな問題が生じる。
そこで本発明法では、可塑剤としてグリセリンを含まないゼラチン皮膜バンドを製造するために、従来の如く水冷却を行う代わりに風冷却を行う方法を採用している。すなわち、ファンから風量を与えることによってカプセル皮膜バンドを至適温度にまで低下させることにより、冷却ドラムからの脱離を容易にし、約21℃の至通温度に維持することができる結果、カプセル成形工程中の密封強度を高め、生産性を向上させることができる。
この様に本発明の製剤は、グリセリンを含まないゼラチンカプセル皮膜を風冷却法によって製造しており、しかも組成物中には、低沸点の揮発性溶媒であるエタノールを含まないため、経時変化が少なく貯蔵安定性に優れ、しかも生体利用率も著しく向上している。
より詳細には、本発明のサイクロスポリン製剤は、例えば可塑剤としてポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールを含有するゼラチン皮膜内に、
1)活性成分としてサイクロスポリン、
2)ポリエチレングリコールまたはプロピレンカーボネートまたはこれらの混合物、
3)オイル成分として、脂肪酸と第一級アルコールのエステル化合物、中級脂肪酸トリグリセリド、及び脂肪酸モノグリセリドよりなる群から選択される1種または2種以上の
混合物、並びに
4)HLB(親水親油バランス)値が8〜17の界面活性剤
を含有する組成物を含むものである。さらに本発明のサイクロスポリン製剤は、
1)活性成分としてサイクロスポリン、および
2)プロピレンカーボネート、
を含有する組成物を含むものであり、当該組成物はポリエチレングリコールを含まない。
本発明の組成物は、必要に応じてさらに本明細書に記載の他の成分を、本明細書に記載の量含有する。
本発明の組成物において薬学的活性成分として使用されるサイクロスポリンは、上述の様に、免疫抑制作用および抗炎症作用を有する環状ペプチド化合物である。本発明で使用することができるサイクロスポリンには、サイクロスポリンA、B、C、D、およびG等が挙げられるが、最も好ましいのは、その臨床的有用性および薬学的特性が最もよく立証されているサイクロスポリンAである。
次に、二番目の必須成分である共界面活性剤としては、プロピレンカーボネートまたはポリエチレングリコールまたはこれらの混合物が使用可能である。
このうち非親水性成分のプロピレンカーボネートは高沸点(約242℃)を有し、非揮発性であり、吸湿性および膜透過性が少なく、サイクロスポリンに対して高い溶解度を示すものである。
また、親水性成分のポリエチレングリコールは高沸点、非揮発性であり、軟質カプセルのゼラチン皮膜に対する膜透過性が少ないだけでなく、サイクロスポリンに対して高い溶解度を示すものである。このポリエチレングリコールは液化できるものであれば全て使用できるが、分子量200〜600のポリエチレングリコール(PEG)が好ましく、特にPEG200が好ましい。
本発明では、上述の非親水性成分と親水性成分の混合物を使用してもよい。ポリエチレングリコールとプロピレンカーボネートの混合物を使用する場合、これらは一般に重量基準で1:(0.1〜5)、好ましくは1:(0.1〜3)、最も好ましくは1:(0.2〜2)である。
本発明では、ポリエチレングリコールおよびプロピレンカーボネートを使用することによって、サイクロスポリン含有組成物の貯蔵安定性が向上するため、組成物の含有量を実質的に均一化することができるという利点がある。
さらに、プロピレンカーボネートを使用することによって、活性成分であるサイクロスポリンの溶解度を著しく高めることができ、さらにゼラチンカプセル皮膜から組成物中への水分の流入が抑制され、さらに安定した組成物を提供することができる。
本発明の組成物では、上記第2の成分はサイクロスポリン1重量部あたり0.1〜10重量部の比で使用することが好ましく、より好ましくは0.5〜8重量部、最も好ましくは1〜5重量部である。
本発明のエマルション濃縮液に使用される第3の成分はオイル成分である。本発明のオイル成分としては、脂肪酸と第一級アルコールのエステル化合物、(存在する場合)中級脂肪酸トリグリセリド、及び脂肪酸モノグリセリドよりなる群から選択される1種または2種以上の混合物を使用することができる。本発明で使用される脂肪酸と第一級アルコールのエステル化合物としては、炭素数8〜20の脂肪酸と、炭素数2〜3の第一級アルコールのエステル化合物、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル、オレイン酸エチル等が挙げられ、なかでもリノール酸とエタノールのエステル化合物が好ましい。さらに、必要に応じて添加される中級脂肪酸トリグリセリドとしては、好ましくは炭素数8〜10の飽和脂肪酸のトリグリセリドが使用され、特に好ましいのは飽和脂肪酸の植物性オイルトリグリセリドであるカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである。さらに、本発明のオイル成分として用いられる脂肪酸モノグリセリドとしては炭素数18〜20の脂肪酸モノグリセリドが挙げられ、特に好ましくはオレイン酸モノグリセリドである。
本発明のマイクロエマルション濃縮液において、オイル成分は、サイクロスポリン1重量部あたり1〜10重量部、好ましくは2〜6重量部の比で配合される。
好ましくは、オイル成分として存在する脂肪酸モノグリセリドと脂肪酸エステルの比は、1:1〜1:2、例えば1:1〜1:1.2である。
必要に応じて、リノール酸エチルに対してカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを1:0.1〜0.2の比で使用してもよい。
本発明のオイル成分として使用されるオイル混合物において、脂肪酸モノグリセリド:脂肪酸と第一級アルコールのエステル化合物:(存在する場合)中級脂肪酸トリグリセリドの混合比は一般に重量基準で1:(0.1〜5):(0.1〜10)であり、好ましくは1:(0.1〜3.0):(0.1〜3.0)である。
本発明の組成物に含有される第4の必須成分は界面活性剤である。本発明に使用するのに適した界面活性剤は、薬学的に許容されるHLB(親水親油バランス)値が8〜17の界面活性剤であって、オイル成分およびサイクロスポリンを含有する親油性成分と、共界面活性剤を含有する親水性成分とを水中で安定に乳化させることにより安定したマイクロエマルションを形成することのできるものであればいずれも使用することができる。好ましくは水素化植物性オイルのポリオキシエチレン生成物やポリオキシエチレン−ソルビタン−脂肪酸エステル等が使用され、例えばNIKKOL HCO−50、NIKKOL HCO−40、NIKKOL HCO−60等、TWEEN20、TWEEN21、TWEEN40、TWEEN60、TWEEN80、TWEEN81等が挙げられる。特に好ましくは、酸価が1以下、ケン化価が約48〜56、水酸基価が約45〜55、pH(5%)が4.5〜7.0である商品名NIKKOL HCO−50(NIKKO Chemical CO., Ltd.)で市販されているポリオキシエチレン(50)水素化ひまし油、および商品名TWEEN20(ICI Chemicals)で市販されているモノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンである。
これらの界面活性剤はそれぞれ単独で使用しても良いが、好ましくは2種以上を混合して使用するのが良い。本発明の組成物において、界面活性剤はサイクロスポリン1重量部あたり1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部の比で存在する。
また、2種の界面活性剤、すなわちポリオキシエチレン(50)水素化ひまし油とモノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンの混合物を本発明の組成物に使用する場合は、重量基準でポリオキシエチレン(50)水素化ひまし油:モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンを1:(0.1〜5)の比で、さらに好ましくは1:(0.5〜4)の比で使用することが好ましい。
本発明の組成物において、上記4種の成分は重量基準で、好ましくはサイクロスポリン:第2の成分:オイル成分:界面活性剤=1:(0.1〜10):(1〜10):(1〜10)の比で存在し、より好ましくはサイクロスポリン:第2の成分:オイル成分:界面活性剤=1:(0.5〜8):(2〜6):(2〜8)の比で存在する。
この他に以下の実施例で例示される本発明に従う組成物も好ましい組成例として挙げられる。
上述の成分を含有する本発明の組成物は、経口投与の目的で軟質カプセル製剤の形態に製剤化して使用する。
本発明の軟質カプセル製剤は、低沸点の揮発性溶媒であるエタノールを使用しないので製剤学的に安定であるのみならず、生体利用率の改善といった所期の目的を達成することができる。しかしながら、従来と同様の製造方法によって軟質カプセル皮膜を生産性良く製造することは困難である。可塑剤としてグリセリンを含有する従来のカプセル皮膜を使用して軟質カプセルを製剤化した場合、得られた軟質カプセルにおいて、エマルション中へのグリセリンの流入によりエマルション濃縮液の乳化状態が変化し、サイクロスポリンの溶解度が著しく低下して沈殿が生じるという問題が見られる。
従って本発明の他の側面において、可塑剤としてグリセリンではなく、ポリエチレングリコールとプロピレングリコールの混合物を使用してカプセル皮膜を製造することにより、長期間安定した製剤が得られることがわかった。可塑剤として使用されるポリエチレングリコールは、液化できるものであれば全て使用できるが、好ましくは分子量200〜600のものが好ましい。
特に、ポリエチレングリコール200を使用することが好ましい。本発明の軟質カプセル皮膜において、ポリエチレングリコールとプロピレングリコールの混合物は、カプセル皮膜に使用するゼラチン1重量部あたり0.1〜0.5重量部で使用することが好ましく、より好ましくはゼラチン1重量部あたり0.1〜0.4重量部、最も好ましくはゼラチン1重量部あたり0.2〜0.3重量部の比で使用する。可塑剤として使用される、ポリエチレングリコールとプロピレングリコールの混合物における混合比は、好ましくはポリエチレングリコール1重量部あたりプロピレングリコールを1〜10重量部、より好ましくは3〜8重量部、最も好ましくは3〜6重量部である。
冷却ドラムから軟質カプセル皮膜バンドを効率よく脱離させる為に、本発明のゼラチンカプセル皮膜の製造方法は水冷却法ではなく風冷却法を採用する。本発明の風冷却法によると、カプセル皮膜バンドは過熱されることがないため、成形時の適正温度を約21℃に維持しながら該カプセル皮膜を冷却ドラムから容易に脱離させることができるので、成形工程時の密封強度が高まって生産性が向上し、生産が効率よく行われる。
本発明の軟質カプセル製剤製造工程時にカプセル皮膜を冷却させる冷却ドラムの風量は、5〜15m3/分が好ましく、最も好ましくは約10m3/分である。
本発明の第2成分であるプロピレンカーボネートは単独あるいは主成分として使用される。したがって、サイクロスポリンの溶解度および軟質カプセルの安定性を考慮して、ゼラチン皮膜内に所定の可塑剤を使用することなしに長期間安定なサイクロスポリン含有軟質カプセル製剤を製造することができる。
このようなゼラチン皮膜における可塑剤として、グリセリン、ソルビトール、ヘキサントリオール、プロピレンカーボネート、ヘキサングリコール、ソルビタン、テトラヒドロフリルアルコールエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、ジメチルイソソルバイドなどよりなる群から選択される1種または2種以上が挙げられるが、本発明に使用される可塑剤は上記に制限されることはない。
本発明の組成物を軟質カプセルに製剤化する際、カプセル製剤には上記組成物以外にも、必要に応じて軟質カプセルの製造に通常利用される薬学的に許容される添加剤をさらに含有することができる。このような添加剤としては例えばレシチン、粘土調節剤、芳香剤(例えば薄荷油等)、酸化防止剤(例えばトコフェロール、ビタミンE等)、防腐剤(例えばパラベン類等)、色素、アミノ酸などが挙げられる。
本発明の軟質カプセル製剤を製造するにあたって、共界面活性剤、オイル成分、および界面活性剤を均一に混合した後、約60℃の温度で温和に加熱および撹拌しながらサイクロスポリンを溶解させる。次に、生成した濃縮液をそのまま、または必要に応じて上述した軟質カプセルの製造に通常用いられる薬学的に許容される添加剤を添加して軟質カプセル製造器に注ぎ、可塑剤としてポリエチレングリコールとプロピレングリコールを含有するゼラチン皮膜を使用し、風冷却により所望のサイクロスポリン軟質カプセル製剤を製造する。
本発明の組成物および製剤は、従来のサイクロスポリン組成物と同様の用途に有用であり、必要に応じて後述の犬などの動物、または人間などを用いた標準的な生体利用率実験を基準に投与量を調節しながら、従来と同様の投与方法および投与量で投与できる。
本明細書では、賦形剤または成分の組成について詳細な説明は行わないが、これについては、例えば、H.P.Fiedler, Lexikon der Hilfsstoffe, Edito Cantor Verlag, Aulendorf, Germany第4版、1996年; Handbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Association, Washington ; The Pharmaceutical Society, London, 第2版、1994年、および1994年9月11日出願の韓国特許出願第94-29208号などの文献を参照すれば良い。
本発明は以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、本発明の技術範囲はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
Figure 0003748573
実施例6:
実施例1の組成物を用いて軟質カプセル製剤を製造するに当たり、下記の様なカプセル皮膜組成物を使用し、グリセリンの流入による内容物の性状変化を目視観察した。
6.1(対照群)
成分 重量比
ゼラチン 20
精製水 16
グリセリン 9
6.2(試験群)
成分 重量比
ゼラチン 20
精製水 16
プロピレングリコール 4
ポリエチレングリコール200 1
観察結果を下記表1に示す。
Figure 0003748573
上記表1の結果からわかるように、実施例6.1(対照群)の組成物のように可塑剤としてグリセリンを使用して製造したカプセル製剤は、グリセリンの流入により沈殿生成を含む幾つかの問題が生じたのに対し、実施例6.2(試験群)の組成物のように可塑剤としてポリエチレングリコールとプロピレングリコールを使用して製造したカプセル製剤は安定した状態を維持することができた。
実施例7:
実施例1の組成物を用いて軟質カプセル製剤を製造するにあたり、上記実施例6で使用した6.2(試験群)のカプセル皮膜組成物を使用し、水冷却法(水温約12℃)と風冷却法(風量約10m3/分)により各々成形した。
各カプセル皮膜バンドの冷却ドラムからの脱離性を観察し比較した。観察結果を下記表2に示す。
Figure 0003748573
上記表2の結果からわかるように、本発明法である風冷却法により成形した軟質カプセル製剤は、水冷却法により製造した軟質カプセル製剤に比べ、冷却ドラムからの脱離性が遥かに優れていた。一般に冷却ドラムからのゼラチン皮膜バンドの脱離角度は約70°以上であれば脱離性が不良であり、約70°未満であれば脱離性は良好であると判断される。水冷却法により製造される軟質カプセル製剤は、100°以上の角度で脱離させたとしても、冷却ドラムから十分に脱離されない。
これに対し、風冷却法により製造される本発明の軟質カプセル製剤は50°以下の角度で冷却ドラムから容易に脱離することができるため、密封強度も遥かに良好であり生産性も高かった。
実施例8:
試験製剤として、本発明の実施例1により製造した組成物を、6.2(試験群)の組成を有するゼラチン皮膜に封入した検体を使用し、対照製剤として、エタノール含有市販製剤であるSANDIMMUN Capsuleを使用し、両製剤間の生体利用率を比較することにより、サイクロスポリン製剤の生体利用率および個体差に及ぼす影響を評価した。
本実施例において、試験製剤および対照製剤はすべて兎1kgあたりサイクロスポリンを300mg投与した。
兎は金網ケージの中で同一条件下で4日間以上、通常の兎用固体飼料を定期的に与える。尚、経口製剤の投与時には鉄製拘束ケージ中で48時間絶食させ、絶食時には水分を自由に摂取することができるようにした。表面に摩擦を少なくするためのワセリンを塗った直径5mmのレビン管(Levin's tube)を食道の長さ30cmまで入れた。試験製剤および対照製剤の内容物をそれぞれ水50mlに乳化させ、レビン管に連結した注射器に入れ、連結した注射器を介しておしこんだ。次いで、兎の耳静脈血管をキシレンで拡張させた後、ヘパリン処理した注射器を用い、耳静脈血を投薬前、投薬後0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、10時間、24時間目に採取した。血液1mlあたり、飽和塩化ナトリウム水溶液0.5mlおよびエーテル2mlを加えた後、5分間振蕩した。この混液を5000rpmで10分間遠心分離して上澄液(エーテル層)1mlを分取し、活性化されたシリカセップ−パック(Silica sep-pakR:Waters)に展開した。展開したセップ−パックをn−ヘキサン5mlで洗浄し、メタノール2mlで溶出させた後、この液を窒素ガス中で減圧下で蒸発乾燥させ、残留物をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって分析した。
[HPLC条件:カラムμ−BondapakR C18 (Waters)、移動相CHCN:MeOH:HO=55:15:30、検出器210nm、流速1.0ml/分、カラム温度70℃、感度0.01Aufs、注入量100μl]。
試験製剤と対照製剤の試験結果を下記表3に示す。
Figure 0003748573
上記表の結果からわかるように、試験製剤は対照製剤に比べてAUC値の比が約4倍以上、Cmax値の比が約7倍以上増加しており、試験製剤の生体利用率が対照製剤の生体利用率に比べて顕著に増加することを示した。さらに、本発明の試験製剤は、個体間の偏差(CV%)がAUC値では約2倍以上、Cmax値では約1.5倍程度減少するという効果を示した。
従って、本発明の軟質カプセル製剤を経口投与した場合、その生体利用率は、エタノール含有市販製剤であるSANDIMMUN Capsuleの対照製剤と比較すると、約4倍程度増加しており、個体間におけるサイクロスポリン生体利用率の差も軽減される等の効果を示すと共に、長期間保存しても経時変化がほとんどなく維持されるので、サイクロスポリン軟質カプセル製剤の製造分野での顕著な進歩を示すものである。
実施例9:
以下の組成の軟質ジェルを製造した。
Figure 0003748573
Figure 0003748573
Figure 0003748573
実施例19:
試験製剤として、従来の方法で本発明の実施例10の組成物を用いて製造された軟質カプセル製剤と、対照製剤として、エタノール含有市販製剤であるSANDIMMUN Capsuleを使用し、両製剤間の生体利用率を比較することにより、サイクロスポリン製剤の生体利用率および個体差に及ぼす影響を評価した。
上記実施例の実験方法は、上述した実施例8の実験方法と同じであった。
試験製剤と対照製剤の試験結果を下記表4に示す。
Figure 0003748573
上記表の結果からわかるように、試験製剤は対象製剤に比べてAUC値の比が約4倍以上、Cmax値の比が約7倍以上増加しており、試験製剤の生体利用率が対照製剤の生体利用率に比べて顕著に増加することを示した。さらに、本発明の試験製剤は、個体間の偏差(CV%)がAUC値では約2倍以上、Cmax値では約1.5倍程度減少するという効果を示した。
従って、本発明の軟質カプセル製剤を経口投与した場合、その生体利用率は、エタノール含有市販製剤であるSANDIMMUNR Capsuleの対照製剤と比較すると、約4倍程度増加しており、個体間におけるサイクロスポリン生体利用率の差も軽減される等の効果を示すと共に、長期間保存しても経時変化がほとんどなく安定に維持されるので、サイクロスポリン軟質カプセル製剤の分野での顕著な進歩を示すものである。

Claims (13)

  1. (1)サイクロスポリン、
    (2)プロピレンカーボネート、
    (3)以下の(i)〜(iv)から選ばれる何れか1つのみのオイル成分、
    (i)脂肪酸と第一級アルコールのエステル化合物、
    (ii)中級脂肪酸トリグリセリド、
    (iii)脂肪酸モノグリセリド、または
    (iv)脂肪酸と第一級アルコールのエステル化合物と
    中級脂肪酸トリグリセリドとの混合物、
    及び
    (4)HLB(親水親油バランス)値が8〜17である界面活性剤、
    を含有することを特徴とする経口医薬用組成物。
  2. 前記中級脂肪酸トリグリセリドは、炭素数8〜10の脂肪酸を有するトリグリセリドを含有するものである請求項1に記載の経口医薬用組成物。
  3. 前記中級脂肪酸トリグリセリドはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである請求項2に記載の経口医薬用組成物。
  4. 前記脂肪酸モノグリセリドはオレイン酸モノグリセリドである請求項1〜3のいずれかに記載の経口医薬用組成物。
  5. 前記脂肪酸と第一級アルコールのエステル化合物は、炭素数8〜20の脂肪酸と、炭素数2〜3の第一級アルコールを含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の経口医薬用組成物。
  6. 前記前記脂肪酸と第一級アルコールのエステル化合物は、リノール酸エチルである請求項5に記載の経口医薬用組成物。
  7. 前記界面活性剤は、水素化植物性オイルのポリオキシエチレン生成物及びポリオキシエチレン−ソルビタン−脂肪酸エステルよりなる群から選択されるものである請求項1〜6のいずれかに記載の経口医薬用組成物。
  8. 前記界面活性剤は、ポリオキシエチレン(50)水素化ひまし油とモノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンを重量基準で1:(0.1〜5)の比率で配合した混合物である請求項7に記載の経口医薬用組成物。
  9. 前記サイクロスポリン、前記プロピレンカーボネート、前記オイル成分および前記界面活性剤が重量基準で1:(0.1〜10):(1〜10):(1〜10)の比率で存在するものである請求項1〜8のいずれかに記載の経口医薬用組成物。
  10. 更に分子量200〜600のポリエチレングリコールを含有しており、該ポリエチレングリコールと前記プロピレンカーボネートは重量基準で1:(0.1〜5)の比率で存在するものである請求項1〜9のいずれかに記載の経口医薬用組成物。
  11. ポリエチレングリコールを含まないものである請求項1〜8のいずれかに記載の経口医薬用組成物。
  12. 前記医薬用組成物は、可塑剤として、プロピレングリコールとポリエチレングリコールの混合物を含有するゼラチンカプセルに封入されており、該プロピレングリコールとポリエチレングリコールの混合物は、ゼラチン1重量部あたり0.1〜0.5重量部の比率で存在するものである請求項1〜11のいずれかに記載の経口医薬用組成物。
  13. 前記可塑剤として使用するプロピレングリコールは、ポリエチレングリコール1重量部あたりプロピレングリコールを1〜10重量部の比率で混合するものである請求項12に記載の経口医薬用組成物。
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