JP3748288B2 - 岩盤削孔装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネル掘削などの際、岩盤にスリット状の溝を形成するための削孔装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばトンネルなどの構築のために岩盤を掘削する場合、ダイナマイトなどを用いる発破工法が採られてきた。しかし、爆破の衝撃により、大きな振動や騒音が発生して周辺環境に悪影響を及ぼしたり、周辺岩盤の緩みを招くといった問題があった。
そこで、静的にトンネルなどを掘削する工法が採用されるようになってきている。
この工法ではまず、トンネルなどの断面外周に沿って、また断面を区画する複数の領域の境界に沿って多数の孔が一部重複して連続削孔され、削孔列によるスリット状の溝が形成される。
次に、例えば、溝によって囲まれた領域に多数の割岩孔を形成してゴムチューブ式等の割岩機が挿入され、それを膨張させることにより各領域が破砕される。
このような溝の形成、および溝によって囲まれた領域の破砕を繰り返すことにより、トンネルなどが掘り進められる。
【0003】
この工法で多数の孔を連続削孔するとき、従来は図5(A)、(B)に示すような削孔装置が用いられていた。
101は削孔装置の架台で、架台101の上にはブラケット107が直立して取り付けられ、削孔ロッド104はこのブラケット107を貫通し、ブラケット107によりその長手方向に摺動可能に支持されている。
削孔ロッド104の先端には削孔ビット103が固着されている。
【0004】
架台101上の、ブラケット107より前方の位置には案内ロッドが貫通するロッド・サポート110が設けられ、削孔ロッド104を回転可能に支持している。
ブラケット107よりさらに後方には、これと一体になって架台101上を前後に移動自在なドリフター102が設けられ、削孔ロッド104の他端はドリフター102に取り付けられている。
ブラケット107には、削孔ロッド104と並んで、その上方に案内ロッド106が削孔ロッド104と平行に取り付けられている。案内ロッド106は中空であり、削孔時に水が注入され、それらはロッド106の先端部より噴出する。
【0005】
このような削孔装置により岩盤に削孔する場合には、案内ロッド106の先端を、まず、すでに削孔されている孔に合わせ、削孔ロッド104を所定の動力源(図示せず)によって回転させ、ドリフター102を所定の駆動手段(図示せず)で移動することにより案内ロッド106と共に削孔ビット103を除々に前進させ、案内ロッド106に隣接して削孔が行われる。
削孔の際、案内ロッド106の中空部分に注入された水は、先端から噴出して削孔ビット103を冷却しながら切削粉を洗い流して後方に排除する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来の削孔装置では、案内ロッド106を孔に徐々に挿入してブラケット107とロッドサポート110を介して削孔ロッド104を安定させ、かつ案内ロッド106が挿入されている孔と、新たに削孔する孔との間隔が適切に設定されるようにしている。
しかし、削孔ビット103を前進させると、ロッドサポート110から削孔ビット103までの距離は長くなるため、ロッド104はしだいに隣接する孔の方向、すなわち案内ロッド106の方向に曲りやすくなる。これは、削孔時に削孔ビット103の受ける抵抗が既に孔が開いている側において小さいためである。
そして、岩盤が特に硬質の場合には削孔ロッド104の曲りは大きくなり、削孔ビット103の周辺部が案内ロッド106に接してしまい、削孔ビット103は、その周辺部が案内ロッド106の表面を摺動しつつ回転する。
その結果、案内ロッド106および削孔ビット103周辺部が摩耗し、また案内ロッド106および削孔ビット103が損傷する場合もあり、案内ロッド106や削孔ビット103の頻繁な交換が必要となる。
【0007】
案内ロッド106と削孔ビット103との接触を回避するために、案内ロッド106と削孔ビット103との間隔を広くすることも可能であるが、その場合には、隣接して削孔された孔がつながらなくなり、スリット状の溝を形成することが困難となる。
従来はこのような案内ロッドと削孔ロッドとの接触により、施工効率の大幅な低下を招いていた。
一方、削孔ロッド104の曲がりを回避するため、その先端部104aを太くすると、切削粉の排出が非常に困難となり、施工効率が極端に低下する。
【0008】
そこで本出願人は、特願平7ー119300号において、施工効率の向上を図った岩盤削孔装置を提供している。
特願平7ー119300号は、案内ロッドを、軸部材と、この軸部材のほぼ全長にわたりその外周に回転可能に結合された筒状部材とで構成し、さらに、筒状部材の軸部材からの脱落を阻止するキャップ部材を設けたものである。
しかしながら、先の出願では筒状部材とキャップ部材との間から切削粉が、筒状部材の内周面と軸部材の外周面との間に侵入し、筒状部材の回転を阻害したり、また、軸部材の外周面を損傷させる問題を有していた。
また、軸部材の内部の通路から軸部材の外周面に向けて空気または水を注入することで切削粉の侵入を少なくすることができるが、空気または水を供給するための供給装置が必要となり、施工コストが高くつく。
そこで本発明の目的は、筒状部材の内周面と軸部材の外周面の間への切削粉の侵入を阻止でき、軸部材の内部の通路から軸部材の外周面に向けて空気または水を注入しなくとも筒状部材を円滑に回転させることができ、削孔作業の施工効率の更なる向上を可能とした岩盤削孔装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため第1の発明は、架台と、前記架台の先端に支持された案内ロッドと、前記案内ロッドと平行に延在し前記架台により回転可能かつその延在方向に移動可能に支持され前記架台の先端から前方へ突出可能な回転ロッドと、前記回転ロッドの先端に取着された削孔ビットとを備えた岩盤削孔装置において、前記案内ロッドは、前記架台の先端に固定された軸部材と、この軸部材のほぼ全長にわたりその外周に回転可能に結合された筒状部材と、前記軸部材の先端に回転可能に設けられ前記筒状部材の先端に当接して筒状部材の軸部材先端からの抜落を阻止するキャップ部材と、前記筒状部材をキャップ部材側に付勢する付勢手段とで構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記キャップ部材が前記軸部材の先端の外周面に回転可能に支持され、前記筒状部材の先端が当接可能な外周部を有し、この外周部の外周面は前記筒状部材の外周面とほぼ同一の直径で形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記軸部材の先端には、前記キャップ部材よりも硬度の低いブッシュが嵌合され、前記キャップ部材の内周面はこのブッシュの外周面で回転可能に支持されることを特徴とする。
また、本発明は、前記軸部材の先端に取り付け部材が取着され、前記取り付け部材は、前記軸部材の端面に取着される端面部と、前記端面部から軸部材の延在方向に突出する筒部を有し、前記キャップ部材は、この取り付け部材の筒部に臨む内周面を有し、前記取り付け部材が軸部材の先端に取着された状態で、前記ブッシュの外周面と、取り付け部材の外周面との間には、軸部材の長手方向に隙間が確保され、前記キャップ部材の内周部にはこの隙間に介入される鍔部が膨出形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記取り付け部材の外周面とキャップ部材の内周面との間にはOリングが介設されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記付勢手段は、軸部材の架台寄りの部分に巻装されたコイルスプリングにより構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、第2の発明は、架台と、前記架台の先端に支持された案内ロッドと、前記案内ロッドと平行に延在し前記架台により回転可能かつその延在方向に移動可能に支持され前記架台の先端から前方へ突出可能な回転ロッドと、前記回転ロッドの先端に取着された削孔ビットとを備えた岩盤削孔装置において、前記案内ロッドは、前記架台の先端に固定された軸部材と、この軸部材のほぼ全長にわたりその外周に回転可能に結合された筒状部材とを備え、前記筒状部材の内周部には径方向内方に突出する鍔部が形成され、前記鍔部は軸部材の外周部に形成された凹溝に挿入され、前記鍔部の凹溝への挿入により軸部材の延在方向に沿った筒状部材の動きが規制されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記軸部材の先端に取り付け部材が取着され、前記取り付け部材は、前記軸部材の端面に取着される端面部と、前記端面部から軸部材の延在方向に突出する筒部を有し、前記筒状部材は、この取り付け部材の筒部に臨む内周面を有し、前記取り付け部材が軸部材の先端に取着された状態で、前記軸部材の外周面と、取り付け部材の外周面との間には、軸部材の長手方向に隙間が確保され、前記隙間により前記凹溝が構成されていることを特徴とする。
【0011】
第1の発明では、削孔時に、削孔ロッドが曲り、回転している削孔ビットの周辺部が案内ロッドに接触すると、筒状部材及びキャップ部材が回転する。
第2の発明では、削孔時に、削孔ロッドが曲り、回転している削孔ビットの周辺部が案内ロッドに接触すると、筒状部材が回転する。
その結果、削孔ビットの周辺部と筒状部材表面との間の摩擦は極めて少なくなり、筒状部材表面および削孔ビット周辺部の摩耗はほとんど発生せず、また案内ロッドおよび削孔ビットの破損も回避できる。
そして、第1の発明では、付勢手段により筒状部材はキャップ部材側に付勢され、筒状部材の端部とキャップ部材の端部は当接されているので、これらの間から軸状部材の外周面と筒状部材の内周面との間への切削粉の侵入が阻止され、軸部材の内部に空気または水を供給することなく、筒状部材の回転を阻害したり、また、軸部材の外周面を損傷させる問題が解消される。
また、第2の発明では、キャップ部材をもともと備えていないので、筒状部材の端部とキャップ部材の端部から軸状部材の外周面と筒状部材の内周面との間への切削粉の侵入することがなく、筒状部材の回転を阻害したり、また、軸部材の外周面を損傷させる問題はない。
従って、本発明によれば、軸部材および削孔ビットを頻繁に交換する必要がなくなり、施工効率を大幅に向上させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施例について説明する。
図3において、1は削孔装置の架台で、図中右手側が前部、左手側が後部、架台1は、例えば、この削孔装置を目標位置に位置付けるためのマニピュレータのロボティックアーム(例えばドリルジャンボの多関節アーム)の先部に取り付けられて使用される。
架台1はその先端にブラケット7を有し、ブラケット7には、削孔ビット3が取着された回転ロッド4、案内ロッド6などが設けられている。
前記回転ロッド4の前部はこのブラケット7を貫通し、ブラケット7により回転可能かつその長手方向に移動可能に支持され、回転ロッド4の先端に削孔ビット3が取り付けられている。
回転ロッド4は中空となっており、その中空部分は、削孔ビット3の前面に設けられた複数の開口に接続している。
【0013】
削孔時には回転ロッド4の後端部から上記中空部分に水が注入され、その水は削孔ビット3の上記開口より噴出する。
架台1上の、ブラケット7より後方の位置にはロッド・サポート10が設けられ、回転ロッド4の後部を回転可能に支持している。
ロッド・サポート10よりさらに後方には、ブラケット802、802を介して架台1上に前後に移動自在に取り付けられたドリフター2が設けられ、回転ロッド4の他端はドリフター2に取り付けられ、ドリフター2により回転ロッド4は回転駆動される。
架台1とブラケット802、802との間に油圧シリンダ8が設けられており、前記ドリフター2が油圧シリンダ8の伸縮によりブラケット802、802を介して移動され、これによりドリフター2、回転ロッド4、削孔ビット3が回転ロッド4の長手方向に一体的に移動される。
ブラケット7には、回転ロッド4と並んで、その上方に案内ロッド6が回転ロッド4と平行に取り付けられている。
案内ロッド6も中空であり、削孔時には後端から空気または水が注入され、それらはロッド6の先端部より噴出する。
【0014】
次に、図1、図2を参照して案内ロッド6の要部について説明する。
図1は本発明による岩盤削孔装置の要部側面図、図2は案内ロッドの先部の断面図を示す。
前記案内ロッド6は、軸部材22と、軸部材22に回転可能に嵌合される筒状部材24と、軸部材22の先部に取り付けられたキャップ部材26や取り付け部材28、筒状部材24を付勢するコイルスプリング29(付勢手段)などで構成されている。
軸部材22は例えば鋼材で形成され、筒状部材24とキャップ部材26は、削孔ビット3および軸部材22より硬度の低い鋼材、例えばステンレスや、あるいは合成ゴムや、あるいはポリエチレン等の合成樹脂で形成されている。
【0015】
軸部材22の外周面は、その基部2201(図1における左側)から先部にわたり基部2201よりも若干小径で均一径の軸受面2202に形成されている。
また、軸部材22の先部の外周には、軸受面2202よりも小径の小径部2204が形成され、小径部2204の端面の中央には凸部2206が軸部材22の延在方向に突出形成されている。
前記小径部2204には、キャップ部材26よりも硬度の低い軸受材料(実施例ではMCナイロン)で形成された筒状のブッシュ30が嵌合され、ブッシュ30の外周面30Aは前記軸受面2202と同一の直径で形成されている。
【0016】
軸部材22の基部2201の端部には雄ネジ2210が形成されている。
この雄ネジ2201の外径は基部2210より小さく形成され、従って、基部2201からこの雄ネジ2210に至る部分は円錐部2214になっている。
ブラケット7には、軸部材22を取り付けるための開口702が形成されている。
軸部材22の基部2201の上記雄ネジ2210はこの開口702に挿通され、開口702の左側に突出した雄ネジ2210に、プレーンワッシャ2210Wを介してナット2210A、2210Bが螺着されて締め付けられ、これにより、軸部材22はナット2210A、2210Bと前記円錐部2214とによりブラケット7に締め付け固定される。
【0017】
前記筒状部材24は軸部材22の軸受面2202に回転可能に嵌合されている。
筒状部材24の外径は、軸部材22の基部2201の外周面とほぼ同一の直径で形成されている。
前記コイルスプリング29は、基部2201の段部2213と筒状部材24との間の軸受面2202部分に巻装され、コイルスプリング29が筒状部材24に臨む箇所にはスプリングシート2902が配設され、コイルスプリング29はその弾発力により筒状部材24をキャップ部材26方向に常時付勢している。
【0018】
前記取り付け部材28は、軸部材22の凸部2206の先端にボルト31を介して軸部材22と同軸上に取り付けられている。
前記取り付け部材28は、前端が開放された筒部2802と、この筒部2802の後端に形成され前記凸部2206の端面に当接される端面部2804とからなり、筒部2802の外周面2802Aは前記ブッシュ30の外周面30Aよりも小さい直径で形成され、ブッシュ30の端面と取り付け部材28の端面部2804との間に凸部2206の突出長さに対応した隙間Sが確保される。
前記筒部2802の外周面2802Aには溝が形成され、この溝には、くり粉流入防止用のOリング32が嵌着されている。
【0019】
前記キャップ部材26は、前記ブッシュ30の外側に位置する第1筒部2602と取り付け部材28の外側に位置する第2筒部2604とで構成されている。
前記第1筒部2602の外周面2602Aは筒状部材24と同一の直径で形成され、第1筒部2602の内周面2602Bはブッシュ30の外周面30Aで回転可能に支持される寸法で形成されている。
また、第2筒部2604の外周面2604Aは、基部側が第1筒部2602と同一の直径で、先部側が先細り状のテーパ面で形成され、第2筒部2604の内周面2604Bはキャップ部材28の外周面2802Aに回転可能に遊合される寸法で形成され、第2筒部2604の内周面2604Bには前記Oリング30が弾接している。
そして、キャップ部材26の内周部には、前記隙間Sに挿入される鍔部2606が形成され、この鍔部2606によりキャップ部材26は軸部材22の軸方向先端から抜け落ちないように構成され、更に、筒状部材24の先部がキャップ部材28の第1筒部2602に当接することで筒状部材24が軸部材22の軸方向先端から抜け落ちないように構成され、上述のように、コイルスプリング29を設けていることから筒状部材24の先端はキャップ部材28の後端に常時当接している。
【0020】
このような構成を有する岩盤削孔装置による削孔は次のようにして行う。
岩盤19にはすでに孔17が形成されており、まずこの孔17に案内ロッド6を図1のように挿入する。
案内ロッド6の孔17への挿入により、案内ロッド6が岩盤19に固定され、従ってブラケット7も岩盤19に固定されることになる。
そして、回転ロッド4を高速回転させ、削孔ビット3を除々に前進させて、案内ロッド6を挿入した孔17に隣接して削孔を行う。
削孔が進行し、ブラケット7から削孔ビット3までの距離がしだいに長くなると、隣接した既設の孔17の方へ向かう力が大きくなって、回転ロッド4は孔17側に曲るようになり、岩盤19が特に硬質の場合にはロッド4の曲りが大きく、削孔ビット3の周辺部3aは案内ロッド6に接触する。
このとき従来の削孔装置では、削孔ビット3の回転により案内ロッド6の表面および削孔ビット3自身の周辺部が摩耗したり、あるいは案内ロッド6および削孔ビット3の破損を引き起こしたりすることになるが、本実施例の削孔装置では、削孔ビット3の周辺部3aが案内ロッド6に接触すると、案内ロッド6の外周部を構成する筒状部材24とキャップ部材26が回転する。
【0021】
そして、削孔ビット3が案内ロッド6の先端に進み、削孔ビット3がキャップ部材26に接触しても、キャップ部材26は、軸部材22に取着されたブッシュ30により回転可能に支持されているので、キャップ部材26は軸部材22の軸心を中心として円滑に回転し、削孔ビット3が接触する案内ロッド6の外周部分はその全長にわたり回転することになる。
従って、案内ロッド6とビット3の周辺部3aとの間の摩擦は極めて少なく、案内ロッド6の表面および削孔ビット3の周辺部3aの摩耗はほとんど発生せず、またそれらの破損も回避できる。
その結果、案内ロッド6および削孔ビット3を頻繁に交換する必要がなくなり、施工効率は大幅に向上する。
【0022】
また、コイルスプリング29により筒状部材24の先端はキャップ部材28の後端に常時当接しており、これら部材24、28の間に隙間がないので、先の出願のように、筒状部材24とキャップ部材28との間から切削粉が、筒状部材24の内周面と軸部材22の軸受面2202との間に侵入し、筒状部材24の回転を阻害したり、また、軸部材22の軸受面2202を損傷させるなど問題を解消できる。
また、先の出願のように、軸部材22の内部の通路から軸部材22の軸受面に向けて空気または水を注入する必要もなくなり、施工コストを低減する上でも有利となる。
また、切削粉の筒状部材24の内側への侵入が阻止されるので、筒状部材24の内周面の摩耗も低減され、筒状部材24の材質を軸部材22の硬度に関係せずに選択でき、その結果、筒状部材24としてステンレスや、合成ゴム、ポリエチレンなどのような材料を用いることも可能となり、これらの材料を用いると、安価であり加工費も安くコストダウンを図る上で有利となる。
【0023】
また、案内ロッド6と削孔ビット3の周辺部3aとの間の摩擦が極めて少ないため、両者が接触しても削孔ビット3の回転力はほとんど失われない。
従って、高速削孔が可能であり、この点でも施工効率が改善される。
さらに、案内ロッド6と削孔ビット3との間の摩擦が極めて少ないことから、削孔ビット3と案内ロッド6とを接近させて配置し、削孔ビット3が案内ロッド6に最初から接触した状態で削孔を行うことも可能である。
そうすることによって、回転ロッド4が案内ロッド6から離れる方向に多少曲ったとしても、新たに削孔された孔は、深部においても必ず、案内ロッド6が挿入された孔に接続されたものとなる。
すなわち、岩盤の深部においても正しく溝が形成される。
【0024】
また、長時間の運転により摩耗する箇所は筒状部材24の外周部と、キャップ部材26の外周部と、ブッシュ30の外周部であり、これら部材が摩耗した場合には、これら筒状部材24、キャップ部材26、ブッシュ30を交換すればよく、この交換も、キャップ部材26は取り付け部材28や0リング32を介して取り付けられているので、先の出願のようにネジ山が合わずにキャップ部材の交換が困難となる不具合はなく、ボルト31を外すことで簡単に迅速になされる。
従って、長尺でコストの高い軸部材22は交換する必要がなく経済的である。
【0025】
次に、図4を参照して別実施例について説明する。
図4は別実施例に係る案内ロッド6の先部の断面図である。
前記実施例と同様な箇所、部材に同一の符号を付して説明すると、別実施例では、コイルスプリング29を用いていない点、および、前記実施例の筒状部材24とキャップ部材26が一体化された筒状部材24’を用いている点が前記実施例と異なる。
すなわち、案内ロッド6は、軸部材22と、軸部材22に回転可能に嵌合される筒状部材24と、軸部材22の先部に取り付けられたキャップ部材26や取り付け部材28で構成され、前記実施例と同様に、筒状部材24、キャップ部材26、取り付け部材28が軸部材22に組み付けられた後、筒状部材24の先端とキャップ部材26の後端が接合されている。あるいは、筒状部材24とキャップ部材26は当初から一体化されている。
この場合、筒状部材24の先端とキャップ部材26の後端が接合されるものでは、筒状部材24とキャップ部材26が鋼材製の場合には溶接により接合され、ゴム材や合成樹脂材の場合には接着剤により接合される。
このような実施例によれば、筒状部材24とキャップ部材26との間の隙間が閉塞されており、従って、筒状部材24とキャップ部材28との間から切削粉が軸受面2202側に侵入することが阻止され、前記実施例と同様に、案内ロッド6および削孔ビット3を頻繁に交換する必要がなくなり、施工効率が大幅に向上する等の効果が奏される。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように第1の発明は、架台と、前記架台の先端に支持された案内ロッドと、前記案内ロッドと平行に延在し前記架台により回転可能かつその延在方向に移動可能に支持され前記架台の先端から前方へ突出可能な回転ロッドと、前記回転ロッドの先端に取着された削孔ビットとを備えた岩盤削孔装置において、前記案内ロッドは、前記架台の先端に固定された軸部材と、この軸部材のほぼ全長にわたりその外周に回転可能に結合された筒状部材と、前記軸部材の先端に回転可能に設けられ前記筒状部材の先端に当接して筒状部材の軸部材先端からの抜落を阻止するキャップ部材と、前記筒状部材をキャップ部材側に付勢する付勢手段とで構成されている。
また、第2の発明は、架台と、前記架台の先端に支持された案内ロッドと、前記案内ロッドと平行に延在し前記架台により回転可能かつその延在方向に移動可能に支持され前記架台の先端から前方へ突出可能な回転ロッドと、前記回転ロッドの先端に取着された削孔ビットとを備えた岩盤削孔装置において、前記案内ロッドは、前記架台の先端に固定された軸部材と、この軸部材のほぼ全長にわたりその外周に回転可能に結合された筒状部材とを備え、前記筒状部材の内周部には径方向内方に突出する鍔部が形成され、前記鍔部は軸部材の外周部に形成された凹溝に挿入され、前記鍔部の凹溝への挿入により軸部材の延在方向に沿った筒状部材の動きが規制されている。
そのため、削孔時に、削孔ロッドが曲り、回転している削孔ビットの周辺部が案内ロッドに接触すると、案内ロッドの外周部も回転する。
その結果、削孔ビットの周辺部と案内ロッドの外周部との間の摩擦は極めて少なくなり、また、軸部材と筒状部材との間に切削粉が侵入することもなく、これらにより、案内ロッドおよび削孔ビットを頻繁に交換する必要がなくなり、施工効率を大幅に向上させることができる。
また、削孔ロッドを特別太くする必要もないため、切削粉の排出がスムーズであり、必要におうじて削孔ロッドだけでなく案内ロッドからも水を噴出できるため、切削粉の排出効率が向上して高速削孔が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の岩盤削孔装置の要部側面図である。
【図2】案内ロッドの先部の拡大図である。
【図3】本発明の岩盤削孔装置を示す斜視図である。
【図4】別実施例に係る案内ロッドの先部の拡大図である。
【図5】(A)は従来の岩盤削孔装置の正面図、(B)は部分拡大図である。
【符号の説明】
3 削孔ビット
6 案内ロッド
7 ブラケット
22 軸部材
24 筒状部材
26 キャップ部材
28 取り付け部材
29 コイルスプリング
30 ブッシュ
Claims (8)
- 架台と、
前記架台の先端に支持された案内ロッドと、
前記案内ロッドと平行に延在し前記架台により回転可能かつその延在方向に移動可能に支持され前記架台の先端から前方へ突出可能な回転ロッドと、
前記回転ロッドの先端に取着された削孔ビットと、
を備えた岩盤削孔装置において、
前記案内ロッドは、前記架台の先端に固定された軸部材と、この軸部材のほぼ全長にわたりその外周に回転可能に結合された筒状部材と、前記軸部材の先端に回転可能に設けられ前記筒状部材の先端に当接して筒状部材の軸部材先端からの抜落を阻止するキャップ部材と、前記筒状部材をキャップ部材側に付勢する付勢手段とで構成されている、
ことを特徴とする岩盤削孔装置。 - 前記キャップ部材は、前記軸部材の先端の外周面に回転可能に支持され、前記筒状部材の先端が当接可能な外周部を有し、この外周部の外周面は前記筒状部材の外周面とほぼ同一の直径で形成されている請求項1記載の岩盤削孔装置。
- 前記軸部材の先端には、前記キャップ部材よりも硬度の低いブッシュが嵌合され、前記キャップ部材の内周面はこのブッシュの外周面で回転可能に支持される請求項2記載の岩盤削孔装置。
- 前記軸部材の先端に取り付け部材が取着され、前記取り付け部材は、前記軸部材の端面に取着される端面部と、前記端面部から軸部材の延在方向に突出する筒部を有し、前記キャップ部材は、この取り付け部材の筒部に臨む内周面を有し、前記取り付け部材が軸部材の先端に取着された状態で、前記ブッシュの外周面と、取り付け部材の外周面との間には、軸部材の長手方向に隙間が確保され、前記キャップ部材の内周部にはこの隙間に介入される鍔部が膨出形成されている請求項3記載の岩盤削孔装置。
- 前記取り付け部材の外周面とキャップ部材の内周面との間にはOリングが介設されている請求項4記載の岩盤削孔装置。
- 前記付勢手段は、軸部材の架台寄りの部分に巻装されたコイルスプリングにより構成されている請求項1乃至5に何れか1項記載の岩盤削孔装置。
- 架台と、
前記架台の先端に支持された案内ロッドと、
前記案内ロッドと平行に延在し前記架台により回転可能かつその延在方向に移動可能に支持され前記架台の先端から前方へ突出可能な回転ロッドと、
前記回転ロッドの先端に取着された削孔ビットと、
を備えた岩盤削孔装置において、
前記案内ロッドは、前記架台の先端に固定された軸部材と、この軸部材のほぼ全長にわたりその外周に回転可能に結合された筒状部材とを備え、
前記筒状部材の内周部には径方向内方に突出する鍔部が形成され、
前記鍔部は軸部材の外周部に形成された凹溝に挿入され、
前記鍔部の凹溝への挿入により軸部材の延在方向に沿った筒状部材の動きが規制されている、
ことを特徴とする岩盤削孔装置。 - 前記軸部材の先端に取り付け部材が取着され、前記取り付け部材は、前記軸部材の端面に取着される端面部と、前記端面部から軸部材の延在方向に突出する筒部を有し、前記筒状部材は、この取り付け部材の筒部に臨む内周面を有し、前記取り付け部材が軸部材の先端に取着された状態で、前記軸部材の外周面と、取り付け部材の外周面との間には、軸部材の長手方向に隙間が確保され、前記隙間により前記凹溝が構成されている請求項7記載の岩盤削孔装置。
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