JP3747912B2 - 医療用混注ポート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は送液路外部から液を混注したり、逆に送液路内部から液を採取したりする際に、その操作を容易にかつ確実に行うために医療器具に装着される医療用混注ポートに関する。
【0002】
【従来の技術】
患者に輸液や輸血を行う場合に種類の異なる薬液を混注したり、送液路に流れる液をサンプル採取するため、主送液路に側注ラインを設けることが必要である場合が多い。このようなときに、従来は輸液セットの送液路にゴム製の穿刺用混注口(栓)を設けたものを使用し、混注口に注射針等を穿刺して混注していた。
【0003】
しかし、このような方法では混注口の所定の穿刺部位以外から針を穿刺すると、その箇所から液漏れを起こしたり、あるいは作業ミス等により注射針を汚染したりする問題があった。そこで、混注口に挿入するルアー等(以下、「挿入体」という。)を混注口に固定・保持するために、最近では挿入体を保持できる混注口が考えられている。例えば、シリンジ先端の雄ルアー部を混注ポートに挿入すると、ルアーの押し込みによって弁が開放され液が注入できるようになり、混注口からルアーを抜くと弁が独りでに閉じるというような弁を装着した混注口である。
【0004】
しかし、この混注口はルアー(挿入体)の弁への挿入時(弁開放)、抜去時(弁閉止)に関係なく、ルアーを混注口に保持する必要性があるため、以下のような様々な問題を有している。すなわち、第1に混注口のルアー受け部を深くする必要があり、かかる形状では弁からこぼれた液を除去できにくいため、不潔になり易い。また、ルアー受け部の深い混注口では弁にルアーが十分に挿入できていない状態で混注し始める可能性がある。その場合、混注する薬液が少量であると有効な量の薬液投与ができないことになる。第2に弁の構造が複雑になり、コストアップ要因となる。また、複雑な構造になるほど弁は故障し易くなる。
【0005】
一方、従来のような簡単な(例えば、ディスク状の弾性部材にスリットを設けただけの弁を装着した)混注口では、シリンジのルアーを混注口に挿入しにくく、また挿入できたとしてもシリンジを混注口に確実に保持することが困難であった。従来、ディスク状の弁は弾性の大きい材料で形成され、肉厚の本体部に単に切れ込みが形成された簡単な構造であるために挿入時の抵抗が大きく、保持するときの弁の変形も大きいためである。しかし、挿入の際の抵抗を減少させるために、弁の弾性部材の肉厚を減らしたり、弾性の小さい材料を使用すると、今度は弁の逆止効果が低下して液漏れする恐れがある。
【0006】
そこで、かかる問題点を解消すべく、中央部に挿入孔の形成されたディスク状の弁と、当該弁の裏側面の中央部を残して周縁下部を担持する台座と、当該弁の表側面の中央部を残し少なくとも弁の周縁上部を覆う弁を拘持するカバーとを備え、挿入体を挿入孔に差し込むとともに嵌合孔を形成するカバーの縁端部を用いて混注ポートに係止させる係止手段を有するといった、構造が簡単で、かつ挿入体の保持を確実に行うことができる医療用混注ポートが考えられている。
【0007】
例えば、従来の医療用混注ポートの構造図を図1に示す。図1は、従来の医療用混注ポートの三面図であり、図1(a)は混注ポートの縦断面図を、図1(b)は混注ポートの横断面I―Iにおける横断面図を、図1(c)は混注ポートの平面図を、それぞれ示す。
【0008】
図1において、1はディスク状の弁、2はカバー、3は挿入孔を示す。また、5は環状リブ、6は嵌合孔、7は台座、8は流路、9は鉤部を示し、弁1をカバー2の鉤部9と環状リブ5で挟持する構造となっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述したような医療用混注ポートにおいては、混注ポート本体内のプライミングを行うに当たって、混注ポート本体の底面部のくぼみや底面とメインルート開口部との段差部、あるいは混注ポート本体と細径チューブとの接続部等に気泡の滞留部分が生じてしまうという問題点があった。かかる気泡の滞留部分が生じることによって、プライミングを十分に行うことができず、患者への輸血や輸液を安全に行うことができなくなるという問題点が生ずることになる。
【0010】
例えば、従来の医療用混注ポートをプライミングすると、図2の断面図に示すように、気泡は領域A、領域Bに滞留しやすい。すなわち、領域Aは混注ポート本体の底面部のくぼみ部分であり、領域Bはメインルート開口部との段差部分を示すものである。
【0011】
さらに、プライミング時には、混注ポート本体を裏向けて、例えば300mmHg程度の圧力でもって行うことになるが、図3のプライミング時における混注ポート本体の縦断面図に示すように、気泡は領域A、領域B、領域Cに滞留しやすい。領域A、領域Bは図2に示すものと同じであり、領域Cは混注ポート本体と細径チューブ10との接続部分を示すものである。なお、プライミング時には混注ポート本体を裏向けて実施することから、図3については上下を反転させて記載している。
【0012】
本発明は、上記問題点を解消するべく、プライミング時においても医療用混注ポート内部に気泡が滞留することなく、患者に輸液や輸血を安全に行うことができる医療用混注ポートを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明にかかる医療用混注ポートは、中央部に挿入孔の形成されたディスク状の弁と、前記弁の裏側面の中央部を残して周縁下部を担持する台座と、前記弁の表側面の中央部を残して少なくとも前記弁の周縁上部を覆って前記弁を拘持するカバーとを備え、前記カバーの内側縁端部が形成する嵌合孔が、挿入体を前記挿入孔へ差し込んだときに前記嵌合孔と前記挿入体が嵌合して前記挿入体を混注ポートに係止させる係止手段として作用するように構成され、さらに、前記台座の内側の底面よりも流路開口部の底面の方が低く、前記台座側面部に2つの突出部が形成され、前記カバーに前記突出部と係合する2つの切欠き部が形成されたことを特徴とする。
【0014】
かかる構成により、混注ポート本体の底面部のくぼみ自体をなくし、かつ流れの主流部分と流路開口部との間に段差が生じることもないので、流れが乱されることなく(乱流が発生せず)、気泡の発生をも未然に防止することができる。また、誤操作等により生じた気泡についても、滞留することができる空間がなくなることから、混注ポート内から容易に排出することが可能となる。さらに、医療用混注ポート本体とカバーを確実に固着することができるとともに、固着に接着剤等の溶媒を使用していないので、注入・採取する液への接着剤等の溶出の可能性を排除できる。
【0015】
好ましくは、前記弁および前記カバーが埋入された凹部をさらに備える。それにより、混注ポート本体とカバーを確実に係止すると共に、ディスク状の弁底面と流路との間に形成されるデッドスペースを小さくすることが可能となる。なお、「デッドスペース」とは、流路の上端とディスク弁底面との間に生じる空間を意味する。
【0016】
また好ましくは、前記カバーの表側面に中央に向かって低くなるテーパーを備える。テーパーにより、ルアー等の挿入体を嵌合孔へ誘導しやすくなるとともに、残液の拭き取りやアルコール綿等による消毒を容易かつ確実に行うことができる。
【0017】
また好ましくは、前記台座上部に有する孔を形成する前記台座の縁端部に沿って、環状に形成された環状リブを備える。それにより、混注ポートへの挿入体の挿入によって弁が変形したときでも、弁と台座との間の液洩れを防止でき、挿入体抜去時の弁の再閉鎖性や弁のめり込みからの復帰性能を向上させることが可能となる。
【0018】
また好ましくは、前記係止手段が、前記カバーの中央に形成された円形の嵌合孔であり、前記嵌合孔を形成する前記カバー縁端部によって前記挿入体を係止する構成とする。それにより、特別な機構を有する係止手段を用いることなく、挿入体を容易に係止することができる。また、挿入体がディスク弁を貫通して係止することができるので、液注入だけではなく液採取も可能となる。
【0020】
前記挿入孔は、直線状のスリットとすることができる。
【0021】
また好ましくは、前記台座の内側の底面に、断面形状が流路開口部の弦弧と同一形状である凹部を有する。それにより、滞留した気泡を抜きやすくなるとともに、挿入体を挿入した際の液注入の流路を確保することができるから。
【0022】
また好ましくは、前記台座の内側の両側面下部において、内側の側面部と内側の底面部とを曲面で連続的に接合する底面湾曲部が形成されている。それにより、プライミング時の流れをより滑らかにすることができ、乱流の発生をより抑制することができる。
【0023】
また好ましくは、混注ポート本体の流路開口部のいずれか一方において、内径が徐々に細くなる漏斗形状を有するジョイントを介して、前記流路開口部よりも内径の小さいチューブと接続するように構成される。それにより、プライミングの出口における径の相違に起因する乱流の発生を回避できることから、流れの出口付近における気泡の発生を未然に防止することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態にかかる医療用混注ポートについて、図面を参照しながら説明する。図4は、本発明の実施の形態にかかる医療用混注ポートの断面図を示す。図4において、5は環状リブ、7は台座、8は流路、9は鉤部を示し、弁1をカバー2の鉤部9と環状リブ5で挟持する構造となっている点においては図1と共通している。
【0025】
図1と相違しているのは、流路8と台座7の位置関係である。すなわち、従来は台座7の内側の底面よりも上方に流路8の底面があったところ、図4においては流路8の底面が台座7の内側の底面よりも下方に位置している点と、台座7の内側の底面のくぼみを流路8の形状と一致させている点に特徴を有する。
【0026】
流路8の底面が台座7の内側の底面よりも下方に位置するような構造にすることで、混注ポートの底面に存在していたくぼみ部分が消滅することから、くぼみ部分に発生しやすい気泡の滞留を未然に防止することができるようになる。
【0027】
また、流路8の断面形状によって台座7の内側の底面が切り取られたような弦弧形状を断面に有する溝が台座7の内側の底面に形成されることによって、流路8の開口部と台座7の内側の底面との間に段差が生じることもないことから、段差部分に流れが衝突することによって生じる乱流の発生等に起因する気泡の発生自体も未然に回避することが可能となるとともに、挿入体を混注ポートに挿入した場合における液注入の流路を確保できるようになる。
【0028】
また、誤操作等によって気泡が発生した場合であっても、混注ポート本体を上下逆さにしてプライミングした場合は、気泡の滞留できる空間が無いため、プライミングによって容易に混注ポートの外部へ排出することが可能となる。
【0029】
なお、製造コストの観点からは、流路8の断面形状によって台座7の内側の底面がストレートに切り取られたような溝が台座7の内側の底面に形成されることが好ましいが、気泡の滞留を可能な限り抑制するという観点からは、溝が混注ポート本体中央部において台座7の底面と一致し、両側の流路開口部に向かうにつれて傾斜的に深く切り取られるように形成されていることがより好ましい。
【0030】
さらに、台座7の内側の底面において、内側面と底面とをゆるやかな曲面によって連続的に接合させ、角ばった部分を形成しないようにすることも考えられる。このような底面湾曲部4を設けることで、乱流の発生をより効果的に抑制することができ、より効果的に気泡の発生自体を減少させることが可能となるとともに、気泡が滞留できる空間も減じることが可能となる。
【0031】
図5は本発明の実施の形態にかかる医療用混注ポート本体の横断面図である。なお、プライミング時には混注ポート本体を裏向けて実施することから、図5についても上下を反転させて記載している。
【0032】
図5において、流路8の底面(図5では上方)が台座7の内側の底面(図5では上方)よりも下部に存在し、流れのメインルートと流路8の開口部との間に段差も生じていないことが分かる。なお、流路8の上面部(図5では下方)においては、流れのメインルートと流路8の開口部との間に段差が生じているが、混注ポート本体の上下を逆さにして液充填させることから、ここで発生した気泡はプライミングによって容易に外部へ排出することができる。
【0033】
かかる構造とすることで、流路8の底面が台座7の内側の底面よりも下部に存在することから、混注ポート本体底面のくぼみへの気泡の滞留を回避することが可能となる。また、流れのメインルートと流路8の開口部との間に段差が生じることもないことから、より流れが滑らかになり、乱流の発生による気泡の発生自体をも抑制することが可能となる。
【0034】
また、プライミング実施時の出口部分における細径チューブ10の接続部分における気泡の滞留の発生を回避するべく、径が徐々に細くなっていくような漏斗形状を有するジョイント11を設けることも考えられる。かかるジョイント11を設けることで、流れが滑らかに流れるようにすることができ、出口付近における流れの衝突に起因する乱流が生じにくくなることから、気泡の発生自体を未然に防止することができ、気泡の滞留の発生を回避することが可能となる。
【0035】
そして、気泡の滞留が発生しないことによって、患者に対する輸血や輸液を行うに当たって、気泡が患者の体内へ注入されるといった危険を未然に回避することが可能となり、安全に医療活動を行うことが可能となる。
【0036】
なお、ジョイント11を装着するのは、プライミング時における出口側である方がより好ましい。出口側に段差が存在する場合に気泡が発生しやすく、また混注ポート本体内へ侵入した気泡についても、よりスムーズに排出することができるからである。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明にかかる医療用混注ポートは、プライミング時において気泡の滞留が発生することなく、患者に対して安全に輸血や輸液を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の医療用混注ポートの構造を示す三面図
【図2】 従来の医療用混注ポートの断面図
【図3】 従来の医療用混注ポートの縦断面図
【図4】 本発明の実施の形態にかかる医療用混注ポートの横断面図
【図5】 本発明の実施の形態にかかる医療用混注ポートの縦断面図
【符号の説明】
1 弁(ディスク弁)
2 カバー
3 挿入孔(スリット)
4 底面湾曲部
5 環状リブ
6 嵌合孔
7 台座
8 流路(開口部)
9 鉤部
10 細径チューブ
11 ジョイント

Claims (9)

  1. 中央部に挿入孔の形成されたディスク状の弁と、前記弁の裏側面の中央部を残して周縁下部を担持する台座と、前記弁の表側面の中央部を残して少なくとも前記弁の周縁上部を覆って前記弁を拘持するカバーとを備え、前記カバーの内側縁端部が形成する嵌合孔が、挿入体を前記挿入孔へ差し込んだときに前記嵌合孔と前記挿入体が嵌合して前記挿入体を混注ポートに係止させる係止手段として作用するように構成された医療用混注ポートであって、
    前記台座の内側の底面よりも流路開口部の底面の方が低く、前記台座側面部に2つの突出部が形成され、前記カバーに前記突出部と係合する2つの切欠き部が形成されたことを特徴とする医療用混注ポート。
  2. 前記弁および前記カバーが埋入された凹部をさらに備えた請求項1に記載の医療用混注ポート。
  3. 前記カバーの表側面に中央に向かって低くなるテーパーをさらに備えた請求項1に記載の医療用混注ポート。
  4. 前記台座上部に有する孔を形成する前記台座の縁端部に沿って、環状に形成された環状リブをさらに備えた請求項1に記載の医療用混注ポート。
  5. 前記係止手段が、前記カバーの中央に形成された円形の嵌合孔であり、前記嵌合孔を形成する前記カバー縁端部によって前記挿入体を係止する請求項1に記載の医療用混注ポート。
  6. 前記挿入孔が直線状のスリットである請求項1に記載の医療用混注ポート。
  7. 前記台座の内側の底面に、断面形状が流路開口部の弦弧と同一形状である凹部を有する請求項1記載の医療用混注ポート。
  8. 前記台座の内側の両側面下部において、内側の側面部と内側の底面部とを曲面で連続的に接合する底面湾曲部が形成されている請求項1記載の医療用混注ポート。
  9. 混注ポート本体の流路開口部のいずれか一方において、内径が徐々に細くなる漏斗形状を有するジョイントを介して、前記流路開口部よりも内径の小さいチューブと接続するように構成された請求項1に記載の医療用混注ポート。
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