JP3747200B2 - 天然ゴムラテックスのアレルゲン性蛋白、その製造法および分析での使用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、実質的に精製された形態の、天然ゴムラテックスのアレルゲン性蛋白;その製造法;および天然ゴムラテックス中またはラテックスで製造された製品中のアレルゲン性蛋白のレベルを定性測定および定量測定するための分析法で、これらアレルゲン性蛋白に対して発生するモノクローナル抗体とともに用いる該蛋白の使用に関する。天然ゴムラテックスによって誘発されるアレルギー反応の発生を仲介する血液中または血液製品中の抗体を同定および/または定量する分析法、ならびに天然ゴムラテックスに対する過敏症を検出し、前記アレルゲン性蛋白を使用する生体内および生体外の診断試験法も提供する。またこの発明は、ラテックス蛋白アレルギーを治療する際の脱感作剤としての前記アレルゲンの使用を提供するものである。さらにこの発明はラテックス製品からアレルゲン性蛋白を除去する方法を提供するものである。
【0002】
なお以後この明細書で使用するいくつかの用語を定義する用語集を以下に示す。
【0003】
全蛋白:試料中に存在するすべての蛋白とそのフラグメント。
【0004】
抗原蛋白:全蛋白中の一つの群。これらの蛋白は動物とヒトの身体内に抗体の産生を起こさせる。誘発される抗体には、アレルギー反応を誘発できるIgEクラスの抗体およびアレルギーを誘発しないIgEクラスの抗体も含まれている。また用語“抗原蛋白”は抗体によって認識される(抗原と反応する)蛋白も意味する。
【0005】
アレルゲン性蛋白:抗原蛋白中の一群(したがって全蛋白中のサブグループである)。これらの蛋白は動物またはヒトの身体中にIgEクラスの抗体の産生を起こさせる。これらの蛋白は、それらに対して特異的なIgEが存在している場合、アレルギー反応を誘発できる。用語“アレルゲン性蛋白”はIgEによって認識される(IgEと反応する)蛋白も意味する。
【0006】
アレルゲン:IgEクラスの抗体の産生を動物またはヒトの身体内で起こさせる物質(蛋白など)。アレルゲンは、それに対して特異的なIgEが存在している場合、アレルギー反応を誘発することができる。用語“アレルゲン”は、IgEによって認識される(IgEと反応する)物質も意味する。
【0007】
ラテックス蛋白アレルギーについては、知られている唯一のアレルゲンは事実上、蛋白質性である。したがって、この明細書では、用語のラテックスアレルゲン、アレルゲン、アレルゲン性蛋白および蛋白アレルゲンは同義語である。
【0008】
抗体:動物の血清中に存在し、抗原に応答して形質細胞によって合成される免疫グロブリン。
IgE:抗体の中の一群。アレルゲンに対して特異的なIgEは、動物または/ヒトの身体をアレルゲンに暴露すると該身体中に誘発される。続いてアレルゲンに暴露するとアレルギー反応を誘発する。
【0009】
ポリクローナル抗体:特定の抗原に対する抗体のコレクションである。ほとんどの抗原は多数のエピトープをもっているので、与えられた一つの抗原に対して多数の異なる抗体がある。
【0010】
モノクローナル抗体:リンパ球の単個クローンによって産生される免疫グロブリン(抗体)。モノクローナル抗体は、抗原の単一のエピトープしか認識しない。
【0011】
エピトープ:抗体の結合部位またはT細胞の抗原受容体によって特異的に認識される分子の抗原決定基。
【0012】
ハイブリドーマ:培養で無限に増殖できる骨髄腫細胞系と、正常な抗体分泌性B細胞とを融合することによって得られる細胞系。得られる細胞系は、両パートナーの特性を有し、正常なB細胞の抗体産物を分泌し続ける。それ自体の免疫グロブリン産物を作ることを停止しているが、その機能を実行する機構を保持している骨髄腫を選択することによって、ハリブリドーマは正常なB細胞抗体のみを分泌する。この細胞系はクローン化されるのでその抗体はモノクローナル抗体である。
【0013】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
アレルゲン性蛋白(アレルゲン)は感作されたヒトにアレルギー反応を誘発することがあり、重症の場合、死に至ることがあるアナフラキシー・ショックを起こす場合がある。ラテックス手袋のようなラテックス製品中に存在する蛋白は、このような製品を使用するヒトの少数に“I型過敏症”として知られている一種のアレルギーを誘発することがある。したがって、ゴム製品特に浸漬ラテックスの製品( dipped latex product )を使用することは、健康管理の観点から注意されかつ心配されている。
【0014】
商業用のゴムノキのヘベア・ブラジリエンシス( Hevea brasiliensis )由来の天然ゴムは、アジアおよびアフリカの多くの国の経済の重要な商品である。天然ゴムは、ベール、シートの形態および濃縮ラテックス( latex concentrate )として取引されている。天然ゴムの濃縮ラテックスは、試験、外科および家庭で用いる手袋のような“浸漬ラテックス”製品を製造するのに大きな需要がある。1993年にマレーシアだけでラテックス浸漬商品を、合計8億8千万USドル輸出した。特にラテックスの試験用手袋に対する全世界の需要が近年、HIVの感染による後天性免疫不全症候群(AIDS)の発生が増大しているため、著しく増大している。
【0015】
天然ゴムラテックス製の手袋などの外科用補助用具は接触じんま疹を起こすことがあり、少数の症例で、以前に感作されたヒトにアナフラキシー反応をもたらしているという近年の報告がある( Nutter の1979年の報告、Turjanmaa らの1984年の報告、 Axelssonらの1987年の報告、Leynadier らの1989年の報告)。アナフラキシーは生命にかかわることがあるので、手袋の製造に用いられる各種の化学化合物によって起こる一般にゆるやかな皮膚の感受性よりはるかに重大である。化学薬剤によっておこる接触皮膚炎は長年にわたって認められているが、手袋およびカテーテルのようなラテックス製品中の蛋白に対するアレルギー応答はユーザーに対して重大な脅威になる可能性がある。この危険に最もさらされているのは、その就業日を通じて多かれ少なかれ連続してラテックス手袋を着用している健康管理職員とその患者である。この危険に実際にさらされているヒトの比率がたとえ非常に小さくても、これらの製品のメーカーとラテックス産業界全体は結局、脅威が認識されたことによる影響を受けるであろう。米国食品医薬品局(FDA)のような取締り当局はすでに、近い将来に、すべての天然ラテックス商品に上記のことを確認するよう要求するであろうとすでに表明している。また米国FDAは、ラテックス製品中の全蛋白の許容レベルの基準もまもなく定めるであろう。この問題が、それにふさわしく緊急に、かつ“安全な製品”と“安全でない製品”を区別するために確立された手段で扱われないと、その後の法制によってすべてのラテックス製品の医療における使用が広範囲にわたって禁止される可能性さえある。
【0016】
したがって、ラテックス蛋白アレルギーについて、特にラテックス製品のメーカーと健康管理に関与している人の関心が近年高まり注目されている。ラテックス中の水で抽出可能な蛋白が、感作されヒトにおいて、アレルゲン性ラテックス蛋白と一群の抗体(IgE)との相互作用で仲介されるラテックス誘発アナフラキシー反応の原因である証拠が示されている。蛋白画分のIgE特異的検定法によって、二つ以上の特異的蛋白が関与していることが示唆されている( Turjanmaaらの1988年の報告; Slater の1991年の報告)。
【0017】
ラテックス蛋白アレルギーの問題が健康管理上の観点およびラテックス製品メーカーの観点の両者からみて重要であることから、これに関連する活発な研究が世界中で各種の研究所にて行われている。これらの研究の主目的は次のとおりである。
【0018】
(a)アレルゲンのレベルが低い濃縮ラテックスを製造することである。濃縮ラテックスの供給者は、ラテックス製品を製造するのに用いられる原料中のアレルゲンを減らすよう努力している。
【0019】
(b)低アレルゲンのラテックス製品を製造することである。ラテックス製品メーカーはその完成品中のアレルゲンを減らすよう努力している。
【0020】
(c)濃縮ラテックス中またはラテックス製品中に存在しているアレルゲンの定量分析法を開発することである。ラテックス供給者とラテックス製品メーカーの両者は、(a)と(b)を補足するための基準化と品質管理を目的とする分析法を要望している。
【0021】
濃縮ラテックスの従来の製造方法では、原ラテックス( field latex )をアンモニアで安定化し(ゴムのフロキュレーションまたは凝結を防止するため)、次に遠心分離によって濃縮してゴム含量を約33%から約60%まで増大させる。現在、低蛋白の濃縮ラテックスを製造するのに二つの主な方法がある( Subramaniam の1992年の報告)。まず第一に、多重遠心分離が行われ、遠心分離の各サイクル毎に新鮮なアンモニア水を添加して希釈し、ラテックスの水性層中に可溶性蛋白を溶出させることができる。第二にラテックスは蛋白分解酵素(プロティナーゼ)で処理することができる。
【0022】
可溶性蛋白を減少させたラテックス浸漬製品を製造するのに、最も簡単な方法は水中で洗浄する方法である。蛋白はラテックスフィルムが乾燥するにつれて該フィルムの表面に移行するので( Shamsul Bahri らの1993年の報告)、フィルムを完全に乾燥させてから洗浄すると最も有効に除去される。
【0023】
上記の処置は、濃縮ラテックス中または完成ラテックス製品中のアレルゲンの量を減らすことを目的としているが、このようなアレルゲンのレベルを評価するための信頼できる方法が現時点では存在していない。特定のラテックスアレルゲン検定法がないので、現在は、試料の全蛋白を測定して全蛋白のレベルが低ければアレルゲンのレベルが低いことを示しているであろうと推定している。このことは極端な蛋白レベルを比較する場合には一般に当てはまる(すなわち非常に高い蛋白レベルは高いアレルゲン性( allergenicity )に関連しそして非常に低い蛋白レベルは低いアレルゲン性に関連している)。しかし、全蛋白のレベルは、蛋白がすべてアレルゲン性である(すなわちアレルギーを誘発できる)わけではなく、多くの蛋白は無害であるので、製品がどの程度に有害である可能性があるのかについて誤解をまねく状況を提供することがある。より優れた分析法は、ラテックスアレルゲンのレベルを特異的に測定する方法である。
【0024】
ラテックスアレルゲンの分析法は市販されており多数の変形があるが、すべて、一つ以上の免疫反応の免疫分析法に基づいている。免疫分析法は、抗体と、これら抗体が結合する特異的なタンパク抗原との相互作用に基づいている。したがって、ラテックスアレルゲンの免疫分析法の場合、その主反応は、ラテックスアレルゲンと、このアレルゲンを認識する抗体とが結合する反応である。
【0025】
ラテックスアレルギーの問題に関連する免疫反応に基づいた分析法には二つの範疇がある。第一の範疇の分析法は、アレルギー反応の発生を仲介する、血液試料中の抗体(IgE)を定量する。特に、このような分析法は、健康管理と医療に用いられ、ラテックスアレルギーの診断試験として役に立つ。第二の範疇の分析法は、ラテックス製品から抽出可能なラテックスアレルゲンを定量する方法である。特にこの分析法は、濃縮ラテックス中および製造されたラテックス製品中のラテックスアレルゲンのレベルを監視し調節するため、ラテックス工業界で使用されている。現在、上記両方の範疇の試験に用いる分析法が少数市販されている。
【0026】
ラスト法(RAST: radioallergosorbent test )およびELISA法( Enzyme - linked immunosorbent assay)の形態の市販分析法は、ラテックス蛋白に対して特異的なIgEが存在しているか否かを決定するために用いられこれに基づいて患者のラテックスアレルギーの試験が行われる。またこのような試験は、ラテックス試料中またはラテックス製品中のアレルゲンの量を定量するための競合分析法(RAST阻害法、競合ELISA法)として実施できる。
【0027】
これらの免疫分析法はすべて、免疫反応に特定のラテックスアレルゲンを使用する必要がある。ラテックスアレルゲンは、今までのところ単離されておらずかつ最終的に同定されていないので、現在入手できる市販の分析法では、粗製(未精製)ラテックスセラム( latex serum )または市販用に製造されたラテックス手袋から溶出させた蛋白がそのアレルゲンの起源として使用される。
【0028】
しかし、粗製のラテックスセラムは、アレルゲン自体以外にたくさんの蛋白類(および他の物質)を含有しているので、アレルゲンの起源として信頼できない。これらの不純物は分析法の精密さを阻害することがある。また、異なる起源や一年の異なる時季から得たラテックス、または異なる条件下で保存もしくは貯蔵されたラテックス中のアレルゲンのレベルまたはコンシステンシーについては全く情報がない。異なるバッチのラテックス中のアレルゲン性蛋白のレベルの変動は研究されていないが、一般にラテックス蛋白および特にラテックス酵素(1群の蛋白類)が、クローン(品種)の起源、季節、ゴムノキの生理状態、樹液採取(ラテックス収穫)のインテンシティー( intensity )、およびラテックスの収量を増大するための化学的刺激剤の使用によって変化することが分かっている。例えば、異なる市販クローンを起源とするラテックス蛋白に差があることは、電気泳動による分離を行った結果明らかになった( Walujono および Suseno の1973年の報告; Yeang らの1977年の報告; Prematillake と Yapa の1985年の報告)。このことは、タンパクの組成がクローン間で変化することを示している。これらの差のいくつかがラテックスのBセラム蛋白(B− serum protein )が原因であることを突き止めることができたということは( Yeangらの1977年の報告)、この発明の発明者が発見したように、主なラテックスアレルゲンのいくつかはBセラムが起源であるということからみて重要である。またラテックス蛋白の組成はゴムノキの生理的状態にも影響される。Prematillakaら(1985年の報告)は、ブラウンバストとして知られている生理病にかかっているゴムノキから収集したラテックス蛋白のいくつかが消失また減少したことを報告した。
【0029】
各種の市販のヘベアのクローン類から得られるラテックスの酵素のイソ型( iso - form )の差も実証されている( Chevallier の1988年の報告)。ある種のラテックス酵素の活性は季節によって著しく変化する( Yeang および Paranjothy の1982年の報告)。さらにラテックス酵素の活性が、ラテックスの収穫のインテンシティー( Yeang および Paranjothy の1982年aの報告)および化学薬剤エセフォンによる収量の促進( Tupy の1969年の報告; Chrestin らの1985年の報告)に応答して著しく変化することが知られている。ミクロヘリックス( microhelix )として知られているラテックス蛋白の複合体のレベルは、エセフォンによって刺激した結果、Bセラムが増大することが報告されている( Gomez と Moir の1979年の報告)。またこのミクロヘリックスは非常に変動し易く、Bセラム中に検出されない場合がある。この変動は、クローン間および同じグループのゴムノキから異なる時季に採取した試料間にも起こる( Gomez および Moir の1979年の報告; Gomez および Tata の1977年の報告)。上記の最後に述べたことは、同定されたラテックスアレルゲンの一つが上記ミクロヘリックス複合体の成分であるという以下に述べる発見からみて重要である。
【0030】
上記のように、市販のラテックス手袋から溶出させた蛋白も、ラテックスアレルギーの診断またはラテックスアレルゲンの定量を行う免疫分析法の蛋白抗原成分として使用されている。この方法の重大な欠点は、異なるブランドの手袋(または同じブランドの異なるバッチの手袋でさえも)がアレルゲン組成に、定性的および定量的な差を示すということである。したがって、ラテックス手袋の蛋白を抗原として利用する分析法から得られる試験結果は、抗原の起源であった。ラテックス手袋の選択によって著しく変化する。
【0031】
予想外のことではないが、市販のラテックスアレルゲン分析法は、感度と特異性を欠いているので、アレルゲン性を検出するのに、不完全にしか成功していない。
【0032】
市販のラテックス抗原の製剤( Stallergenes 社が供給)で試験した結果、その製剤は感受性患者の100%に陽性の結果を与え、かつ非感受性の対照の患者には陰性の結果を与えたと Levy は報告した(1993年の報告)。しかし他の試験( Lagier らの1992年の報告)では、ラテックスに対してアレルギー性であることが分かっていた被検患者(看護婦)の80%が市販の Stallergenes 社のキットで陰性の試験結果を示した。40名のアレルギー患者(皮刺テストによって診断)の試験から、Leynadier 、 Autegard および Levy (1993年の報告)は、Stallergenes社のラテックスアレルゲンならびに Allerbio 社と Bencard社が供給する他の二つの市販アレルゲンによって5〜16%の偽陰性の試験結果がみられたと報告した。したがって偽陰性の試験結果が、現在入手できる市販のラテックスアレルゲンによって起こっている。最も広く使用されているRASTキットは多分、Pharmacia Diagnostics社製のラテックスRAST K82とそのELISA分析法( Pharmacia CAP system )である。 Levy (1993年の報告)は、これら分析法によって、皮刺試験法で陽性のラテックスアレルギー患者の40〜90%の血清中にIgE抗体を検出できると報告した。
【0033】
ラテックスアレルゲンのその外の市販免疫分析法は、Guthrie Research Institute ,U.S.A. 社が製造した“ Latex ELISA for Antigenic Proteins ”(LEAP)である( Beezehold の1993年の報告)。この分析法は、ラテックス蛋白に対するポリクローナル抗体を使用する間接的なELISA法( enzyme - linked immunosorbent assay )に基づいている。このような分析法は、ラテックスアレルゲン(すなわち、IgEに特異的に結合する蛋白類)から、一般にラテックス蛋白抗原(すなわちアレルギー誘発抗体(IgE)と非アレルギー誘発抗体の両者に結合する蛋白類)を区別するのに充分に有効ではない。またこの分析法を使用する場合は、測定すべき抗原/アレルゲンを含有する試験試料を、一組の条件を使用してエンドユーザーがELISAプレートに結合させる必要があるから、抗原とアレルゲンがすべてELISAプレートに充分等しく結合すると仮定されている。この仮定は誤っているので、利用される条件下で充分プレートに結合できない抗原とアレルゲンは検出できないか、またはせいぜい次善的に検出できるにすぎない。
【0034】
したがって、ラテックスアレルゲンの改良分析法が要望されている。このような分析法をつくるためには、個々のラテックスアレルゲンに対する抗体を発生させて入手できるようにしなければならない。これを実行するにはまず第一に特定のラテックスアレルゲンを同定しなければならない。
【0035】
各種のラテックスアレルゲン蛋白の発生について報告する多数の刊行物がある。ラテックスアレルゲンに関するすべての引用文献は実際に、ラテックスアレルゲン蛋白を、分子量および/または時にはその等電点で特徴づけている。分子量または等電点だけで特徴づけられたラテックスアレルゲンが、以下の理由から、同定されているとは考えられない。
【0036】
(a)蛋白類はラテックス製品を製造中に分解し、これに基づいて単一のアレルゲン性蛋白が、分子量または等電点を測定するためのゲル濾過法、HPLC、等電点電気泳動法または電気泳動法のような蛋白分離手順中に低分子量のいくつもの蛋白類として出現する。
【0037】
(b)蛋白は凝集して、凝集していない蛋白とは異なる見掛けの分子量と等電点を有する蛋白複合体を生成する。そして
【0038】
(c)いくつもの異なる蛋白類は類似の特性(例えば分子量)をもっているので、互いに区別することは容易にはできない。
【0039】
【課題を解決するための手段】
この発明の発明者らの発見によって、上記の困難は、
(i) 天然ゴムラテックスから特定のラテックスアレルゲン性蛋白を単離し、
(ii)これらの特定のアレルゲン性蛋白に対するモノクローナル抗体を発生させ、その抗体類に標識を付けてそれらの分解蛋白フラグメントとサブユニットを同定する
ことによって克服される。
【0040】
この発明によって、三つの特定のラテックスアレルゲンが同定された。これらのアレルゲン類は、International Union of Immunological Societiesによって承認されかつ Bulletin of the World Health Organisation ( Marshらの1986年の報告; Marsh の1987年の報告)で刊行されたアレルゲン命名法にしたがって、Hev b IV 、Hev b II および Hev b IIIと命名されている。蛋白の Hev b IV は当初、この発明の発明者らによって Hevb Iと命名されたが、Hev b I はゴム粒子の表面に発見されたゴム伸びファクター( Rubber Elongation Factor )として知られているラテックス蛋白に他の研究者らがすでに与えていたので( Czuppon らの報告)、Hev b IV と命名しなおしたのである。
【0041】
これら3種のアレルゲンすべてに対してモノクローナル抗体が生成し、またこれらのモノクローナル抗体のいくらかはアレルゲンの分解産物またはサブユニットを認識する。またこの発明によって分析法も提供され、この分析法は、天然ゴムラテックスから単離された前記の特定のアレルゲン性蛋白類と、これら蛋白類に対して生成したモノクローナル抗体との間の相互作用に基づいている。
【0042】
この発明はさらに、実質的に精製された形態でありそして分子量が24kDaであることを特徴とする天然ゴムラテックスの第三のアレルゲン性蛋白(Hev b III と命名されている);ならびにそのアレルゲン性のサブユニットまたは凝集体を提供するものである。
【0043】
別の態様で、この発明は前記アレルゲン類のHev b III に対して生成するモノクローナル抗体を提供するものである。
【0044】
さらにこの発明は、前記アレルゲン性蛋白類のHev b III の製造方法を提供するものである。
【0045】
さらに別の態様でこの発明は、天然ゴムラテックスまたはゴムノキのヘベア・ブラジリエンシスの他の組織から単離した特定の蛋白アレルゲン類と、これらアレルゲン類に対して生成するモノクローナル抗体との相互作用に基づいた、天然ゴムラテックスのアレルゲン類のレベルの定性測定と定量測定を行う分析法を提供するものである。分析されるアレルゲン類は、ラテックス製品を製造する際に使用されるラテックス中に存在しているかまたは製造されたラテックス製品中に存在している。またこれらの分析法は、乾燥ゴムで製造した製品中のアレルゲン性ラテックス蛋白類を定量するのにも使用できる。
【0046】
この発明はさらに、天然ゴムラテックスによって誘発されるアレルギー反応の発生を仲介する抗体を同定および/または定量するための上記抗体−アレルゲン相互作用のいくつかまたはすべての使用を提供するものである。IgEとして知られている抗体のクラスに属しているこのような抗体は通常、血液または血液製品中に見られる。
【0047】
この発明のさらに他の態様で、ラテックスアレルゲン性蛋白類および/またはこのような蛋白類に対するモノクローナル抗体および/またはその混合物は、それらが分析法に用いられる場合それらの存在が検出できるように例えばビオチンで標識を付ける。
【0048】
またこの発明は、天然ゴムラテックスに対するI型過敏症を決定する生体内もしくは生体外の診断試験(例えば皮刺試験またはヒスタミン放出試験)での前記アレルゲン類の Hev b III の使用を提供するものである。
【0049】
またこの発明は、ラテックス蛋白アレルギーを治療する際の脱感作剤としての前記アレルゲン類の Hev b III の使用を提供するものである。
【0050】
この発明の他の実施態様で、ラテックス製品を、イオン強度が水より大きい塩(例えば塩化ナトリウム)の溶液中または他の溶液中で浸出もしくは洗浄して、イオン強度が水より高い溶液に可溶性であることが知られているラテックスアレルゲン類を選択的に除去する方法が提供される。
【0051】
この発明の発明者らは、我々が、上記三つのラテックス蛋白類の独自性と特性を最初に明確に確認し、新鮮なラテックスから該ラテックス蛋白類を大量に精製する再現性がある方法を初めて報告し、そしてこれら蛋白類のアレルゲン性を実証してそれら蛋白類を分析法に使用することを初めて提案したと信ずるものである。またこの発明の発明者らは、これら蛋白類に対するモノクローナル抗体も生成させた。Hev b II はこの発明以前には完全に未知であったと信ずるものである。Hev b IIIと Hev b IV が存在することはすでに示唆されていたとはいえ、これらはそれらの分子量または等電点のレベルしか確認されていなかった。これらの蛋白類が、ラテックスのどの成分を起源にしているかを知らなくてもおよび他の情報がなくても、それらの分子量に基づいて、理論的には、蛋白類はラテックスから抽出できる。しかし、実際には、所望のアレルゲン性蛋白類と共精製( co - purify )される類似の特性(すなわち分子量)を有する蛋白類による汚染がないという合理的な保証付きで、分子量だけに基づいて特定の蛋白類を抽出および精製することは容易でない。このことから分かるように、定量免疫分析法に必要な純アレルゲン類の正確な量を分取することが困難になる。
【0052】
実施した試験の結果は、Hev b IV 、Hev b II およびHev b IIIと命名され、この発明の発明者らによって同定された三つの特定のアレルゲン性蛋白類;ならびにその分解生成物もしくはサブユニットが、すでに報告されているラテックス蛋白アレルゲン類の非常に大きな部分を占めていることを示唆している。
【0053】
モノクローナル抗体は、特定のアレルゲン類、および該抗体が認識する抗原部位(エピトープ)に対して非常に特異的である。親アレルゲンの分解フラグメントとサブユニット中に存在するエピトープ部位を認識する適正なモノクローナル抗体を用いて、このようなフラグメントとサブユニットの独自性を解明することができる。
【0054】
モノクローナル抗体は、蛋白アレルゲン類、およびその分解フラグメントとサブユニットを同定するのに重要であることに加えて、矛盾しない形態でかつ商業上必要な規模でそれ自体産生を持続する(ポリクローナル抗体と比べて)という点で、商業的アレルゲンを生成させるのにも重要である。
【0055】
モノクローナル抗体のさらに別の利点は、これらの抗体は、“アフィニティー・クロマトグラフィー”として知られている蛋白精製系に組込むことができるということである。このような系を用いると、モノクローナル抗体が認識するアレルゲンを比較的大量に単離・精製することができ、その量は、抗体と抗原の両者が必要である“競合結合検定法”として公知のアレルゲン分析法の一変形に使用するのに充分な量である。また純品のアレルゲンは、血液試料中のラテックス誘発抗体(IgE)を定量する免疫分析法または診断を目的とする皮刺試験にも用いることができる。
【0056】
この発明によって、アレルゲン類のHev b III に対して生成したモノクローナル抗体を選択して用いて、アレルゲン類の定量またはラテックス特異的IgEの定量を行う免疫分析法が開発される。ラテックスアレルゲン類:Hev b III を認識するモノクローナル抗体はUSM/RC2である。
【0057】
特異的アレルゲン類の使用を取り入れる免疫分析法は、アレルゲン類が未分画のラテックスセラム中に含有されている免疫分析法より優れている。後者の場合、ラテックスセラム中のアレルゲンの正確なレベルは未知であり、また異なる起源由来のラテックスセラム中のアレルゲンのコンシステンシーも不明確である。
【0058】
さらに、アレルゲン類に対して特異的なモノクローナル抗体の使用を取り入れる免疫分析法は、全ラテックスセラム、アレルゲン富化または半精製の抗原製剤を精製された特定のアレルゲン類の代わりに用いる免疫分析法にポリクローナル抗体を用いる免疫分析法より優れている。
【0059】
この発明の一部を形成する免疫分析法の例は次のとおりである。
(a)標識特異的アレルゲン類が、単一もしくは複数のモノクローナル抗体、またはポリクローナル抗血清もしくはポリクローナル抗体類を保持する固相に結合するのを阻害するのに使用される競合結合分析法。
【0060】
(b)固相に結合させたポリクローナル抗体を用いて特定のアレルゲンを“捕捉し”、次にその捕捉されたアレルゲンの存在を、標識を直接つけてもつけなくてもよいモノクローナル抗体で検出する2サイト分析法(two site - assay )。
【0061】
(c)固相に結合させたモノクローナル抗体を用いて特定のアレルゲンを“捕捉し”、次にその捕捉されたアレルゲンの存在を、標識を直接つけてもつけなくてもよいポリクローナル抗体で検出する2サイト分析法。
【0062】
(d)固相に結合させたモノクローナル抗体を用いて特定のアレルゲンを“捕捉し”、次にその捕捉されたアレルゲンの存在を、標識を直接つけてもつけなくてもよい他のモノクローナル抗体によって検出する2サイト分析法。
【0063】
(e)特定のアレルゲン類のHev b III を、結合させるか溶液で、比濁分析法、ラスト分析法(RAST法)またはラスト阻害法で用いるあらゆる形態の免疫分析法。
【0064】
【発明の実施の形態】
この発明の種々の態様を以下の添付図面を参照してより詳細に説明する。
【0065】
Bセラムに対するマウス抗血清は、Balb/c系マウスに、0.5mlのBセラムを腹腔内投与し次いで3週間後に第二投与を行って免疫化することによって産生させた。これらのマウスは、第二投与を行ってから2週間後に心臓穿刺によって採血し、分離した血清を区分し、凍結して貯蔵した。この血清は、ウェスタンブロット分析によって、蛋白Hev b IV に対して同型であることが発見された。
【0066】
次にラテックス蛋白類に対するモノクローナル抗体を生成させた。ゴムノキのヘベア・ブラジリエンシス由来のラテックス蛋白類で免疫化させたBalb/cマウスから得た脾細胞を、 Kohler と Milstein がすでに報告している(1975年と1976年の報告)プロトコルにしたがってマウス骨髄腫細胞と融合させた。得られたハイブリドーマ細胞を、いくつもの免疫・分析法を用いて、ラテックス蛋白類に対して特異的な抗体について選別した。選択されたハイブリドーマを2回再クローン化し、次に、分泌されたモノクローナル抗体を、ハイブリドーマ細胞の上澄み液中の未精製の形態、またはアフィニティークロマトグラフィーで精製した製剤として使用した。ラテックスアレルゲン類のHev b II 、Hev b IIIおよびHev b IV それぞれを認識するモノクローナル抗体のUSM/RB4、USM/RC2およびUSM/RB3を分泌するハイブリドーマ細胞系の試料は、 International Depository Authority としての資格がある、英国、ウィルトシャー州、ソールズベリー所在の European Collection of Animal Cell Cultures ,Centre for Applied Microbiology & Research に寄託されている。USM/RB4の細胞系は1994年12月7日に寄託され受託番号94120727号が与えられている。USM/RB3とUSM/RC2の細胞系は下記の仮の受託番号を与えられている。
【0067】
【0068】
次にゴムノキ:ヘベア・ブラジリエンシスのラテックスから蛋白類を抽出し、特定のアレルゲンを同定した。これらの蛋白類に対するモノクローナル抗体と同型抗体を用いて特定の蛋白類を同定し、その分子量を測定した。アレルゲン性蛋白類は、ラテックスに対してアレルギー性であることが分かっている患者から得た血漿中のIgE抗体によって認識される蛋白類を測定することによって同定した。この方法で同定されたアレルゲンは、モノクローナル抗体と同型抗体で同定された蛋白とクロスマッチさせた( cross match )。
【0069】
同定されたアレルゲンをいくつもの通常の方法によって精製し、精製された蛋白類の独自性を、モノクローナル抗体と同型抗体で標識をつけることによって確認した。精製されたアレルゲンの等電点(pI)は、pH範囲が3.5〜9.5のプレキャスト Ampholine PAGプレートを備えたLKB Multiphor Model2117等電点電気泳動装置を用い、メーカーの指示( Pharmacia LKB社、スエーデン)にしたがって測定した。1%グリシン中の濃縮試験試料約15μlをポリアクリルアミドゲルに塗布した。Hev b IV 、Hev b II およびHev b IIIと命名された3種のラテックスアレルゲンの分画と精製について説明する。
【0070】
高速遠心分離機にかけると、ラテックスは三つの主な画分すなわち頂部のゴムクリーム、“低部画分”、そして中間に位置するCセラムに分離する。Hev b IIIは小さなゴム粒子(平均の大きさ:約100nmの直径)の表面に位置している。これらの粒子の多くは、特に平均の大きさより小さい粒子は、遠心分離中にゴムクリームとともに分離しないのでCセラム中に残る。
【0071】
Cセラムは、ラテックスを遠心分離にかけたときに得られるラテックスの水性相であるから、Cセラムの蛋白類は一般に水溶性である。それにもかかわらず、Cセラムは決して均一な流体ではなく、ラテックスの遠心分離工程では分離されない主として微細な不溶性物質を少量含有している、これらの不溶性物質の大部分を形成しているのは非常に小さいゴム粒子であり、その存在は電子顕微鏡法で確認されている。Hev b IIIは、Cセラム中に懸濁しているこれらの小ゴム粒子の表面にみとめられるので、技術的にCセラム蛋白である。しかしHev b IIIは、通常Cセラムに関連している可溶性蛋白類のうちの一つではない。Hev b IIIは界面活性剤によって可溶化され、そしてアンモニアによって部分的に可溶化される。
【0072】
Hev b IIIを抽出するため、ラテックスを、刻み目をつけたゴムノキから冷却容器に集めた。そのラテックスを、Sorvall RC高速遠心分離機で19000rpm(43000g)にて2時間遠心分離して、遠心分離されたラテックスの“領域2( Znoe 2)”( Moir の1959年の報告)に位置している小さなゴム粒子を遠心分離管から回収した。領域2のゴムクリームを30%スクロース溶液中に再懸濁させて汚染Cセラムを洗浄除去し、次にその懸濁液を再び遠心分離に付した。そのゴムクリームを0.01% Triton X−100と1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の混合物で処理して膜蛋白類(membrane protein )を抽出した。
【0073】
領域2のゴム抽出物をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)に付してその分子量を測定した。領域2のゴム抽出物の電気泳動図中には、クーマシーブルーによる染色によって検出可能な二つの主要蛋白類がある。すなわち約14kDaの少量の蛋白およびHev b IIIである24kDaの大量の蛋白である。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の基準分子量マーカーで測定したとき、Hev b IIIの見掛けの分子量は24kDaであったが、この蛋白の質量分析の結果は各種の種の分子量22.258,22.533,22.790および23.058kDaを示す。それでもやはり、24kDaの値を、この明細書でHev b IIIの分子量を今後引用する場合に使用する。Hev b IIIをトリプシンで消化したところ下記の内部アミノ酸配列を示した。
【0074】
VSSYLPLLPTEK
GDLSTVSRLK
IVLDVASSVFNTR(K/Q)E(K/Q)K
VTPVYYLGTPTV
上記の配列中の、アミノ酸に対する一アルファベット文字記号は、 Cohn の1984年の報告にしたがっている。
【0075】
Hev b IIIおよびHev b IIIを分解して誘導したポリペプチドフラグメントを認識する(Hev b IIIと該フラグメントと特異的に反応する)モノクローナル抗体のUSM/RC2を生成させた。
【0076】
あるいは、Hev b IIIは、Cセラムを、セファデックスG−150クロマトグラフィーカラム(2.6cm×81cm)を通過させ、0.25Mトリス−HCl(pH8.0)を溶離緩衝液として用いて、調製することができる。Cセラムの分画は溶出画分を280nmの波長光の吸光度を監視しながら行った。溶出される第一の主要ピークは、カラムの空隙容量を示しかなりな量の小ゴム粒子を含有している(ピークA、図1)。この画分は透析し、凍結乾燥して濃縮し、次に0.01%の Triton X−100と1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の混合物で抽出した。
【0077】
免疫金標識法(immuno - gold labelling technique )を用いて、USM/RC2が認識する蛋白が、Cセラム中に懸濁している小ゴム粒子の表面に存在していることを実証した。ゲル濾過を行ったCセラムの空隙容量から得た小ゴム粒子(直径が約45nm)を四酸化オスミウム内で簡単に固定し、ホルムバール(Formvar )−カーボンでコートしたニッケルグリッド上に堆積させた。そのグリッドをまず1%ウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝食塩水(PBS−BSA)(pH7.2)で30分間ブロックし、次いでUSM/RC2とともに15分間インキュベートした。すすいだ後、5nmのヤギ抗マウス免疫グロブリン(IgG)金複合体とともにさらに15分間インキュベートし、2%リンタングステン酸(pH6.8)を用いネガティブ染色法でコントラストをつけた。電子顕微鏡で検査したところ、金の粒子が小ゴム粒子の表面上に観察された(図2)。これはUSM/RC2が認識するポリペプチド(Hev b III)が、Cセラム中に懸濁されている小ゴム粒子の表面上にあることを示している。
【0078】
親アレルゲンのHev b IIIは分解されて小さいポリペプチドフラグメントになり易い。この分解反応は、低部画分から抽出された液相である“Bセラム”の存在によって促進される(Bセラムの製造法の下記説明参照)。
【0079】
CセラムとBセラムを5:2の比率で混合すると、モノクローナル抗体USM/RC2とともにインキュベートされたもののウェスタンブロット由来の蛋白バンドは、それらはCセラムなしのUSM/RC2によってピックアップされないのでBセラムから誘導されない。その上に、Cセラムをセファデックスカラムで濾過すると(上記事項参照)、初期に溶出する画分(ゴム粒子を含有する空隙容量)はUSM/RC2と強く反応する(ピークA、図1)。一方、中期および後期に溶出される画分(これらの画分には可溶性蛋白類が見られると予想される)は、モノクローナルUSM/RC2との反応性がはるかに低い。このことはこれらの画分中にはHev b IIIがはるかに少ないことを示している(ピークBとC、図1)。これらの観察結果は、Hev b IIIが初期に溶出される画分にみられる小ゴム粒子に会合しているという説と一致している。
【0080】
ポリペプチド成分を含有するフラクションが回収される分取SDS PAGEを用いて、Bセラムで処理したCセラム蛋白類を分離した後、Hev b IIIから誘導されるポリペプチドのアレイを明確に見ることができる。逐次画分をSDS PAGEに付し、次にこれら蛋白類をニトロセルロース膜に移した(ウェスタンブロット法)。次にこの膜をモノクローナル抗体USM/RC2とともにインキュベートし、そして4−クロロ−1−ナフトールの存在下でその基質と反応すると着色産物を生成する酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ)と複合した二次抗体を用いて、上記の結合を検出した。
【0081】
モノクローナル抗体または同型抗体に結合する蛋白バンドの有無について試験する上記手順の変形では、ニトロセルロース膜を、ラテックスに対してアレルギー性の患者の血清または血漿を含有する溶液中でインキュベートした。該膜に固定化された蛋白類に捕捉される患者のIgEは、ヒトIgEのε−重鎖に対して特異性を有する、酵素複合二次抗体を用いて検出することができる。捕捉された抗体は上記のように着色性基質( colorigenic substrate )を用いて可視化することができる。これらのウェスタンブロットは、分子量が約5kDa〜約24kDaの範囲内にある、Hev b IIIの多数の分解生成物が、モノクローナル抗体USM/RC2によって認識されることを示している(図3(A)、パネルAとB)。分子量が24kDaより大きい蛋白類も認められるが、このことは、蛋白の凝集が起る可能性があることを示唆している。USM/RC2がこれら各種のポリペプチドに結合するということは、これらのポリペプチドはHev b IIIが共通の起源であることを明確に示している。Hev b IIIから誘導される蛋白類のうちの少なくとも一つの分子量が12kDaの蛋白は、ラテックスアレルギーの患者由来のIgEと結合することからアレルゲン性である(図3(A)、パネルC)。遠心分離にかけた新鮮なヘベアラテックスのゴムクリームから調製したHev b IIIのウェスタンブロットを、ラテックスIgE陽性の二分脊椎の患者から集めた血清とともにインキュベートした。IgEがHev b IIIと結合することは、二分脊椎の患者がこの蛋白に対して特にアレルギー性であったことを示している(図3(B))。
【0082】
Hev b IIIに対するモノクローナル抗体についてさらに、BセラムとCセラムを2:5の比率で混合した混合物の二次元(2D)ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって特性決定を行った。等電点電気泳動を一次元に用い次いでSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を二次元に用いた。銀で染色すると、等電点(pI)と分子量が異なるいくつかの蛋白類が現われる。整合している( matching )2Dゲルをニトロセルロース膜上に電気ブロットさせ(ウェスタンブロット)、次にHev b IIIに対するモノクローナル抗体とともにインキュベートした。上記抗体に結合するラテックス蛋白類は、二次酵素複合抗体を用いる酵素反応によって出現する。Hev b IIIに特異的に結合するポリペプチドは主として、分子量が14〜24kDの範囲内でかつpIが約4.4〜4.46の範囲内のものであることが見出されている(図4)。これらポリペプチド類のウェスタンブロットにおける空間分布(spacial distribution )は、二分脊椎がみられる患者がアレルギー性であるラテックス蛋白類と非常に類似している(Alenius の1994年の報告)。
【0083】
Hev b IV とHev b II を抽出するため、上記のように収集して遠心分離に付した。低部画分を遠心分離に付したラテックスから回収し次いで凍結と融解を交互に繰り返して低部画分の主成分であるルトイド( lutoid )を破裂させた( Hsia の1958年の報告)。破裂させたルトイドから放出されるセラム(Bセラム)をさらに遠心分離にかけて回収した。10mlずつのBセラムを、約5℃にて2lの蒸留水中に透析した。得られた沈澱を、20000gで30分間、遠心分離にかけて回収し、10mlの0.35M塩化ナトリウム溶液に再溶解し、得られた溶液はこの操作を通じて氷水浴中に保持した。
【0084】
Hev b IV とHev b II を抽出する別の方法は、BセラムとCセラムを2:5の比率で混合し次いで15分間〜一夜、室温でアレルゲンを沈澱させる方法である。得られた沈澱を遠心分離によって集め次いで0.35M塩化ナトリウム溶液またはリン酸緩衝食塩水に再溶解する。
【0085】
Hev b IV とHev b II の粗抽出液を、0.35M塩化ナトリウム溶液で平衡化させたセファクリルS−200のカラム(70×1.6cm)のカラムクロマトグラフィーに付し、同じ溶媒で溶出させた。5mlずつの画分を集め、各画分の280nmでの光学濃度を測定した。このようなカラムクロマトグラフィーの操作をいくつか行って、カラムから溶出された成分の実質的な量を回収する。
【0086】
六つのピークA〜F由来の画分は上記のカラムクロマトグラフィーによって回収した(図5)。これらの画分は酵素免疫分析法によって試験して、モノクローナル抗体のパネルによって認識される蛋白類の存在の有無およびラテックスアレルギー性患者由来のIgEを捕捉する性能について測定した。これらのデータを表Iに示す。ピークAとBの単一もしくは複数の成分は、ラテックスアレルギー患者13名中11名(84.6%)によって認識され、一方、該患者13名中4名(30.8%)がピークEとFの単一もしくは複数の成分を認識する。
【0087】
【表1】
【0088】
蛋白と抗体の正の結合は、ヒトIgEに対する酵素複合抗体(上記の患者血漿試料の場合)およびマウス免疫グロブリンに対する二次抗体(上記モノクローナル抗体類の場合)によって仲介される酵素(ペルオキシダーゼ)の反応によって検出した。
【0089】
モノクローナル抗体USM/RB3とUSM/RB4はピークAとBおよびピークEとFの成分を識別する(表I)。
【0090】
ピークA〜F中の蛋白は、試料にメルカプトエタノールを添加して還元し加熱して、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離した。クーマシーブルーで染色した後に観察された主な蛋白バンドは、ピークAとB由来の大きなバンド:50〜57kDaならびに小さなバンド65,22および18kDaと、ピークEとF由来のバンド:36/37,34/35kDaである(図6、パネルA)。ピークFにおいて、34/35kDaの蛋白は36/37kDa蛋白より顕著であったが、両者の蛋白はピークEでは一般に同様の量で見出された。マッチングゲル(matching gel )をエレクトロブロットさせ、次いでラテックス特異的IgEを含有することが分かっている血漿とともにインキュベートした。アレルゲン性であると観察される蛋白類は、ピークAとB由来の分子量が48〜58kDa,22kDaおよび65kDaの蛋白、ならびにピークEとF由来の34/35kDaと36/37kDaの蛋白である(図6、パネルB)。
【0091】
ピークAとBは、非還元条件下で処理すると高分子量の蛋白を含有し(図7、パネルa)、その蛋白は、見掛けの分子量が50,55および57kDaのポリペプチド連鎖の三つの主要な種で構成されている、分子量が48〜58kDaの範囲内のジスルフィド結合モノマーで形成されている。これらのサブユニットはすべて、Hev b IV に対する同型抗体によって容易に認識される(図7、パネルb)。しかし非還元条件下で処置したアクリルアミドゲルを電気泳動によってニトロセルロースに移すと、Hev b IV に対するこの同じ同型抗体は、分子量が約29kDa,32kDa,40kDa,50kDaおよび75〜80kDaの範囲の小さいポリペプチドを認識するのを見ることができる。またこれらのポリペプチドは、異なるハイブリドーマクローン由来の10個の他のモノクローナル抗体(その一例はUSM/RB3である)によって認識され、その一例を図8に示す。
【0092】
1,3−β−グルカナーゼ活性を、比色法でピークEとF中に検出した。ピークEとF由来の試料をラミナリン(50mM酢酸ナトリウム緩衝液pH5.2中1mg/ml)とともにインキュベートした。還元糖が放出され1,3−β−グルカナーゼ活性が存在していることを示した。ピークEとFは分子量が34/35kDaと36/37Kaである二つのポリペプチド連鎖として存在するアレルゲンHev b II を含有し、そしてこれらポリペプチド連鎖は連鎖間のジスルフィド結合によって結合されていないので、ゲル濾過カラムからはわずかに異なる時間に放出される。これら両方のポリペプチドは二つのモノクローナル抗体で認識され、その抗体の一つはUSM/RB4である(図9)。
【0093】
アレルゲン性蛋白類の特性決定をさらに行うため、Bセラムを分取ゲル電気泳動に付した。そのとき、試料は還元も加熱も行わず、該蛋白類を、7.5%ポリアクリルアミドゲルを通じて泳動させて逐次画分を集めた。これら画分の内容物を、上記のモノクローナル抗体および同型抗体を用いて同定したがHev b IV とHev b II はこの方法で回収可能である。Hev b IV はこれらの条件下、高分子量の蛋白として回収可能であり、そして見掛けの分子量がそれぞれ100,110および115kDaの三つの主要種に明確に分離され、これらは図10のパネルaのレーン2,5および9に見ることができる。これらの画分を還元・変性条件下でSDS PAGEに付し次いでニトロセルロースに移し、得られたウェスタンブロットをHev b IV に対する同型抗血清でプローブしたところ、先に述べたような分子量範囲が48〜58kDaの広いバンド(図7参照)を示すので、上記条件下で分取ゲル電気泳動によって分離した単バンド( single band )は、ゲル濾過で回収可能なピークAとBの蛋白を示すことが証明された。この蛋白もヒトアレルゲンであるということは図10のパネルbに示されている。このパネルbにおいて、上方のパネルは分取ゲル電気泳動で回収されたHev b IV の三つの画分のウェスタンブロットを示し、下方のパネルは前記三つのバンドに結合する、ラテックスアレルギー患者由来のIgEを示す。このアレルゲンHev b IV が3個の主要な種を含有している別の証拠は、三つのピークを示すこれら試料のキャピラリー電気泳動( Beckman Instruments 社)によって示される。この分析の結果は、これらの試料中に他のピークが全く認められないことを示し、この発明の発明者らがHev b IV をその三つの主要形態に精製しそしてこれらの形態がすべてラテックスアレルギー患者由来のIgEによって認識されるという決定的な証拠を提供している。
【0094】
透析によって沈澱し塩化ナトリウム溶液に再溶解可能なHev b IV とHev b II は、ミクロヘリックス(複数のミクロヘリックス)として知られているラテックスBセラム蛋白複合体と同様に挙動する。このミクロヘリックスは、電子顕微鏡で観察されすでにいくらか詳細に特性が決定されている繊維状らせん構造の糖蛋白複合体である( Archer らの1963年の報告;Gomez およびYip の1975年の報告;Gomez および Tata の1977年の報告; Tata およびGomez の1980年の報告)。Gomez と Moir の1979年の報告にまとめられているように、透析されたBセラムから調製したミクロヘリックスは、長さが1μm以上、直径が20nm、繊維幅が約5nmおよびらせんのピッチはオープンアンドホロー形(open and hollow )で約30nmである。個々のミクロヘリックスは会合して束になることが多い(図11)。電子顕微鏡により高分解能で見ると、ミクロヘリックスが、1回転当り3〜4個の粒子でらせん形に配列された、直径が3〜3.5nmの球状粒子で構成されている数珠つなぎ構造をもっていることが分かる。
【0095】
免疫金標識法を用いて、蛋白のHev b IV とHev b II の一方または両方がミクロヘリックス複合体の成分であるかを決定した。ミクロヘリックスは、Bセラムを透析した調製し、次にホルムバール−炭素でコートしたニッケルグリッド上に堆積させた。このグリッドをまず、1%のウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝食塩水pH7.2(PBS−BSA)で30分間ブロックした。15分間のインキュベーションを、モノクローナル抗体USM/RB3(Hev b IV と特異的に結合する)およびUSM/RB4(Hev b II と特異的に結合する)とともにそれぞれ別個に実施した。これらのモノクローナル抗体は、この免疫反応において一次抗体として働く。すすいだ後、ミクロヘリックスとの結合に成功したモノクローナル抗体を、10nmのヤギ抗マウス免疫グロブリン(IgG)金複合体(二次抗体)とともに15分間インキュベートし、2%のリンタングステン酸(pH6.8)を用いてネガティブ染色を行ってコントラストをつけて電子顕微鏡で検査することによって検出した。図11に示すように、金の粒子がUSM/RB3とともにインキュベートされたミクロヘリックス上に濃縮されており、このことは、USM/RB3が認識するポリペプチド(Hev b IV )がミクロヘリックス複合体の成分であることを示している。一方、USM/RB4とともにインキュベートしたミクロヘリックスと、金粒子との会合は全く起こらなかった。このことは、Hev b II が恐らくミクロヘリックス複合体の成分ではないことを示唆している。
【0096】
ミクロヘリックスがアレルゲンであることをさらに実証するため、上記の免疫金標識法を繰返した。但しHev b IV に対して感受性であるが一次抗体源として用いたHev b II に対して感受性でないアレルギー患者由来の血漿を用いた。インキュベーションのpHは8.0であった。IgEに対するモノクローナル抗体は免疫反応の二次抗体として作用したが、ヤギ抗マウス免疫グロブリン(IgG)金複合体は三次抗体として働いた。図12に示すように、金の粒子(5nm)がミクロヘリックスと会合することが観察されたが、これはミクロヘリックスがアレルゲン性蛋白であることを示している。
【0097】
ミクロヘリックスまたはそのポリペプチド誘導体がラテックス手袋から抽出可能な蛋白類中に見出されることを確認するため、ラテックス手袋をリン酸緩衝食塩水中に入れてラテックス手袋の水性溶出液を調製し、これをウサギの皮下に注射して、手袋蛋白の混合物に対するポリクローナル抗体を生成させた( Sunderasan とYeang の1994年の報告)。ミクロヘリックスの免疫金標識付けを、これらのポリクローナル抗体を使って実施したところ、ヤギ抗ウサギIgGに複合した10nmの金の粒子は、ミクロヘリックスと会合していることが明らかに認められた(図13)。このことは、ミクロヘリックス蛋白複合体のポリペプチド成分がラテックス手袋の溶出液中に生成していることを示す。
【0098】
Hev b IV は分子量が約55kDa(50,55,57kDa)のモノマーポリペプチドで構成されているオリゴマーとして存在し、このモノマーポリペプチドはジスルフィドで連結され、分子量が上記のように約105kDa(100,110,115kDa)の二量体になっている。等電点電気泳動法によって、Hev b IV は、pH4.5の領域にpIを有する酸性蛋白であることが明らかになった。そのN末端アミノ酸配列はELDEYLFSFGDGLYDAGNAと決定した(これらアミノ酸に対する一アルファベット文字の記号は Cohn の1984年の報告にしたがっている)。図14はレーン1〜4にBセラムが負荷されたSDS−PAGEゲルをクーマシーブルーで染色したものを示す。Bセラムの試料は、負荷する前に、還元するかもしくは還元せず、および95℃で3分間加熱するかもしくは加熱しなかった。対応するゲルをニトロセルロース膜にエレクトロトランスファー(electro - transfer)させ、得られたウェスタンブロットを、Hev b IV に対するポリクローナル同型抗体でプローブした。試料を還元し加熱したとき(レーン1)、Hev b IV は約50〜57kDaの間の広いバンドとして存在することを試験結果は示している。しかし試料を加熱したが還元しなかった場合(レーン3)、Hev b IV は約105kDaの高分子量のバンドとして見出され、これはHev b IV のモノマー(分子量50〜57kDa)がジスルフィドで連結されて105kDaの二量体を形成していることを示している。さらに試料を加熱も還元もしなかったとき(レーン4)、その蛋白はゲル中に入らず105kDaにごく弱い反応性のバンドしか与えなかった。これは105kDaの二量体が、加熱されると解離するより大きなオリゴマーを形成していることを示唆している。
【0099】
上記のゲル濾過処理由来の画分AとB中に回収された蛋白も、図15に示すように100〜115kDaの二量体として存在する50〜57kDaの広いバンドを含有しており、図15において上方のゲルは還元条件下で処理され、一方下方のゲルは非還元条件下で処理され、50〜57kDaのバンドと100〜115kDaのバンドとの関係を実証している。
【0100】
ミクロヘリックスは、先に述べたようにすでに報告されているが、この明細書に示す試験結果は、ミクロヘリックスが免疫原性でかつアレルゲン性であることを述べた最初の報告である。蛋白の変性もしくは分解によって生じるHev b IV のポリペプチドフラグメントについてこの明細書で詳細に説明する。
【0101】
蛋白Hev b II を異なる画分中に回収し、そしてその分子量がHev b IV よりはるかに小さい(34/35kDaおよび36/37kDa)ので、両方のポリペプチド連鎖は同じ画分中に回収され、そのクーマシーブルー染色SDS PAGEゲルは他の可視バンドを全く示さなかった。この画分を、非還元条件下で処理したSDS−PAGEゲルからエレクトロトランスファーした後ウェスタンブロット分析に付したとき、モノクローナル抗体USM/RB4に認識される蛋白はラテックスアレルギー患者由来のIgEにも認識されることが明確に示された。このような反応の一例を図10のパネルcに示す。図10のパネルcで、上部パネルは画分15(中央トラック)中の少なくとも四つのバンドおよびBセラムの対照(左トラック)中の二つのバンドに結合するIgEを示す。
【0102】
Hev b II の等電点電気泳動を行ったところ、約9.6のpIの位置に単バンドが出現した。
【0103】
Hev b II は陰極性自然( cathodic native )PAGE系で電気泳動を行うことができた。この蛋白は、 Reisfeld らの1962年の報告の方法にしたがって、酸性pH下で電気泳動を行った後、クーマシーブルー染色を行うことによって、単バンドとして現われた。同様のゲルを、50mM酢酸ナトリウム緩衝液pH5.2中でラミナリン(1.5mg/ml)とともに37℃で3時間インキュベートした。次にそのゲルを、0.05%アニリンブルーを含有する150mMK2 HPO4 、pH8.6の溶液中に1時間入れた( Cote らの1982年の報告)。クーマシーブルーで染色した後に見られるバンドに対応する染色バンドが観察され、このことは1,3−β−グルカナーゼ活性を示す。Hev b II の内部ペプチドフラグメントはアミノ酸配列:FDENNXQPEVEを示し、そしてもう一つのペプチドフラグメントは配列:RNIHDAIRSAGLQを示した。なおアミノ酸に対する一アルファベット文字記号は Cohn の1984年の報告にしたがっている。前者の配列は、タバコの草本およびトマトの草本中に存在するエンド−1,3−β−グルカナーゼのアミノ酸配列と85.2%の相同性を示した。
【0104】
ルトイド膜を界面活性剤で抽出することによって、両方の分子の大きさのHev b II が大量に得られる。このことは、Hev b II がルトイド膜と会合していることを示唆している。
【0105】
ヒトアレルゲンとしてUSM/RB4によって認識される蛋白類の重要なことをさらに測定するため、ラテックスアレルギー性の患者由来のIgEとの反応に、Hev b II 蛋白を含有するニトロセルロースストリップを用いてウェスタンブロットを行ったところ、13名のヒトの血漿試料中8名(61.5%)の試料がHev b II を認識することを示している(図16)。この試験では精製Hev b II を使用したので、Hev b II の患者IgEに対する感受性はこの場合、表Iに示した試験の場合より大きかった。
【0106】
多量のHev b IV 、Hev b II またはHev b IIIが必要な場合は(例えば免疫分析法の市販製剤用)、これらは上記の方法で製造できる。あるいは、モノクローナル抗体のUSM/RC2、USM/RB3およびUSM/RB4またはそれらの均等な抗体は“アフィニティークロマトグラフィー”のカラムまたは他の固相マトリックスに取り入れることができる。ラテックスのCセラム、Bセラムまたは他のラテックス由来製剤を上記のような固相マトリックスと反応させ次いで適応な緩衝液で溶離させることによって、それぞれのアレルゲンを高度に精製された形態で回収することができる。
【0107】
Hev b IV とHev b II が塩化ナトリウムに可溶性であるということは、ラテックス製品を浸出または洗浄してアレルゲン性蛋白類を除去する操作に利用できる。Hev b IV とHev b II (およびこれらのサブユニットおよび分解生成物)は、水よりイオン強度が高い塩(例えば塩化ナトリウム)の溶液または他の溶液を浸出または洗浄に用いると、一層有効に除去される。その効果の一例を表IIに示す。表IIは、天然ゴムラテックスのフィルムから、水および0.35M塩化ナトリウム溶液によって、全蛋白、全抗原(すなわちアレルゲン類と非アレルゲン類)、およびUSM/RB4に結合するアレルゲン性蛋白を抽出した結果を示す。塩化ナトリウム溶液は、全蛋白と全抗原を水より有効に除去するが、塩化ナトリウムの一層大きな効率はUSM/RB4に結合するラテックスアレルゲンの場合に極めて顕著であることは明らかである。すなわち、水で抽出可能な全蛋白と全抗原の量はそれぞれ0.35M塩化ナトリウム溶液で抽出可能な全蛋白と全抗原の量の59.5%と77.7%であるのと比べて、水で抽出可能なアレルゲンの量は0.35M塩化ナトリウム溶液で抽出可能な量の4.5%に過ぎない。したがって、0.35Mの塩化ナトリウム溶液を使用すると、この特別のラテックスアレルゲンを抽出する場合の効率が選択的に増大する。
【0108】
【表2】
【0109】
抗原とアレルゲンは、競合ELISA法で分析した。ラテックス手袋に対してウサギ中に生成したポリクローナル抗体を、全抗原の分析に使用した。百分率は、塩化ナトリウムで溶離させて得た値を100%として算出する。
【0110】
【実施例】
これは、特定のアレルゲン性蛋白類に対して生成するモノクローナル抗体を用いて、ラテックスで製造された製品(手袋)中のアレルゲンのレベルを測定するこの発明の分析法の一実施例である。
【0111】
さきに述べたように、市販のラテックス手袋から溶出させた蛋白類は、ラテックスアレルギーの診断またはラテックスアレルゲンの定量を行うための免疫分析法の蛋白抗原成分としてすでに使用されている。この方法の重大な欠点は、図17と下記表III に示す知見から分かるように、異なるブランドの手袋はそのアレルゲンの組成が定性的および定量的な差を示すということである。USM/RB3とUSM/RB4はこの発明によるモノクローナル抗体である。
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
【0115】
【表6】
【0116】
【表7】
【0117】
【表8】
【0118】
【表9】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、セファデックスG−150でCセラム(C−serum )のゲル濾過を行って得た逐次画分を示す。主ピークA,BおよびCが示されている。ピークAは主として小ゴム粒子(直径が約45nm)および分子量が300000kDaより大きい大きな蛋白類が入っている空隙容量を示す。
【図2】図2は、Cセラムから分画した、小ゴム粒子の表面上のHev b IIIの免疫金検出(immuno−gold detection )の結果を示す。ヤギ抗マウスIgGに複合した金粒子は、Hev b IIIに特異的に結合するモノクローナル抗体USM/RC2が存在することを示す。
【図3】図3(A)はHev b IIIの分取ゲル電気泳動法による分析結果を示す。分取電気泳動セルからのBセラムとCセラムの混合物の逐次画分のウエスタンブロットである。これらのタンパク質画分はSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(15%ゲル)に付し次いでクーマシーブルーで染色し(パネルA)、モノクローナル抗体USM/RC2とともにインキュベートし(パネルB)、次いで患者の血漿とともにインキュベートして捕捉されたIgEの存在について試験した(CS=Cセラム)。
又図3(B)は、遠心分離したラテックスのゴムクリームから抽出し、次にラテックスアレルギー性の成人患者由来の血清とともにインキュベートした蛋白(左側)、およびラテックスアレルギー性の二分脊椎患者由来の血清とともにインキュベートした蛋白(右側)のウェスタンブロットを示す〔SDS−PAGE(15%ゲル)〕。Hev b IIIのバンドを矢印で示す。
【図4】図4は、BセラムとCセラムの2:5の比率の混合物の二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す。等電点電気泳動法を第一次元で用い次にSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を第二次元で用いた。得られたゲルを、ニトロセルロース膜上に電気ブロットを行い、次にモノクローナル抗体USM/RC2とともにインキュベートした。ある範囲のラテックス蛋白類(主に、推定pIが4.4〜4.46で分子量が約14〜24kDaの範囲のもの)がUSM/RC2と結合する。
【図5】図5は、透析されたBセラムから得た沈澱をセファクリルS200によるゲル濾過に付して得られた逐次蛋白画分を示す。上記沈澱は、0.35M塩化ナトリウム溶液に再溶解してからゲル濾過した。主画分A〜Fが示されている。
【図6】図6は、セファクリルS200によるゲル濾過で得た蛋白類を電気泳動(15%ゲル)によって分離した結果を示す。レーン1:ピークEとFが合体している;レーン2:ピークAとBが合体している;レーン3:分子量マーカー。パネルA:クーマーシーブルーで染色したゲル。パネルB:ラテックスに対してアレルギー性の患者の血漿とともにインキュベートしたゲルのウェスタンブロット。
【図7】図7は、ゲル濾過クロマトグラフィーによるHev b IV の精製結果を示す。種々のピークの蛋白類がSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(15%ゲル)によって分離された。得られたゲルをクーマシーブルーで染色した(a)。マッチングウェスタンブロット(matching western blot )をHev b IV に対する同型抗血清(homotypic antiserum)でプローブした(bとc)。試験試料は還元し加熱するか(b)または還元せずかつ加熱しなかった(c)(M=分子量マーカー、BS=Bセラム)。
【図8】図8は、アレルゲンHev b IV に対する同型抗血清(A)およびHev b IV に対するモノクローナル抗体(USM/RB3)(B)でプローブされたラテックス蛋白類のウェスタンブロットである。レーン1:Bセラム;レーン2:Bセラム+Cセラム;レーン3:Cセラム。試料はすべて非還元条件下加熱なしで試験した。
【図9】図9は、ゲル濾過クロマトグラフィーによるHev b II の精製結果を示す。各種のピークの蛋白類をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(15%ゲル)で分離した。そのゲルをクーマシーブルーで染色した(a)。マッチングウェスタンブロットをモノクローナル抗体USM/RB4でプローブした(b)。(M=分子量マーカー、BS=Bセラム)。
【図10】図10は各種アレルゲンの分取ゲル電気泳動による分析結果を示す。
パネルa:アレルゲンHev b IV の分取ゲル電気泳動分析結果。Bセラムを非還元性でかつ非変性の条件下、7.5%のゲルを用いて分離した。モノクローナル抗体USM/RB3とともにインキュベートした。
パネルb:精製Hev b IV のウェスタンブロット。モノクローナル抗体USM/RB3(上図)およびラテックスに対してアレルギー性の患者の血漿(下図)とともにインキュベートした。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動は12%のゲル上で行った。
パネルc:精製Hev b II のウェスタンブロット。ラテックスに対してアレルギー性の患者の血清(上図)およびモノクローナル抗体USM/RB4(下図)とともにインキュベートした。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動は12%のゲル上で行った。
【図11】図11はBセラムから調製したミクロヘリックス上のHev b IV の免疫金検出を行った結果を示す(束状に存在していることを示す)。ヤギ抗マウスIgGに接合した金粒子は、Hev b IV に特異的に結合するモノクローナル抗体USM/RB3の存在を示す。
【図12】図12は、天然ゴムラテックス由来のHev b IV に対してアレルギー性である(しかしHev b II に対してはアレルギー性でない)患者の血漿から得たIgEによる、ミクロヘリックスの認識を示す。ミクロヘリックスを血漿とともにインキュベートし次いでモノクローナル抗ヒトIgE抗体とともにインキュベートした。次いで、10nmのコロイド金に複合させたヤギ抗マウス抗体で標識付けを行った。
【図13】図13はラテックス手袋の蛋白類に対するポリクローナル抗体の免疫金検出を行った結果を示す。これらの抗体はウサギ中に生成させた。ヤギ抗ウサギIgGに複合された金粒子は、Bセラムから調製したミクロヘリックス(束状に存在しているを示す)上に免疫原性ポリペプチド類が存在することを示す。
【図14】図14は異なる処置を受けたBセラムのSDS−PAGE(15%ゲル)による分離の結果を示す。対応するウェスタンブロットを、Hev b IV に対するポリクローナル同型抗体でプローブした(B)。電気泳動による分離を行う前に、Bセラムの試料を、還元して加熱し(レーン1)、還元して加熱せず(レーン2)、還元せずに加熱し(レーン3)、および還元も加熱もしなかった(レーン4)。ゲルはクーマシーブルーで染色した。M=分子量マーカー
【図15】図15は透析によってBセラムを沈降させて得た分画蛋白類(本明細書に記載されている画分A〜F)のSDS−PAGE(10%ゲル)分離の結果を示す。電気泳動による分離を行う前に、試料は還元して加熱し(上のパネル)および還元せずに加熱した(下のパネル)。これらのゲルはクーマシーブルーで染色した。M=分子量マーカー;BS=Bセラム
【図16】図16は、モノクローナル抗体のUSM/RB3(レーン14)、USM/RB4(レーン15)およびアレルギー患者由来のIgE(レーン1〜13)でプローブしたHev b II のウェスタンブロットストリップである。
【図17】図17は、6種のブランドの手袋(4〜9と表示した)からの蛋白溶出物の電気泳動分離(15%ゲル)のウェスタンブロットを示す。ポリアクリルアミド電気泳動は還元および変性の条件下で行った。ブロットされたニトロセルロース膜は、アレルゲンHev b IV に対する同型抗血清(ブロットA)、およびアレルゲンHev b II に対して特異的なモノクローナル抗体USM/RB4(ブロットB)とともにインキュベートした。
Claims (9)
- 実質的に精製された形態であり、分子量が24kDaであり、pIが約4.4〜4.46であり、内部ペプチドフラグメントとしてアミノ酸配列:VSSYLPLLPTEK、GDLSTVSRLK、IVLDVASSVFNTR(K/Q)E(K/Q)K、及びVTPVYYLGTPTVを有することを特徴とするHev b IIIと命名されたヘベア・ブラジリエンシスのラテックスまたは組織由来のアレルゲン性蛋白。
- 請求項1に記載のアレルゲン性蛋白に対して生成するモノクローナル抗体。
- アレルゲン性蛋白Hev b IIIに対して生成しUSM/RC2と命名された請求項2記載のモノクローナル抗体。
- 高速遠心分離に付した天然ゴムラテックスのBセラムおよび/またはCセラムの画分から抽出し回収することを含んでなる請求項1に記載のアレルゲン性蛋白の製造方法。
- 請求項1記載のアレルゲン性蛋白および請求項2または3のモノクローナル抗体を使用することを含んでなることを特徴とする、濃縮ラテックス、製造されたラテックス製品または乾燥ゴムで製造した製品のなかに存在する天然ゴムラテックスのアレルゲンのレベルを定性測定および/または定量測定する分析法。
- 請求項1記載のアレルゲン性蛋白および請求項2または3記載のモノクローナル抗体を使用することを含んでなることを特徴とする、血液、血清または血液製品のなかに存在する天然ゴムラテックスのアレルゲン性蛋白に対する抗体(IgE)のレベルを定性測定および/または定量測定する分析法。
- 天然ゴムラテックスに対するI型過敏症に対する生体外の診断試験の形態である請求項6記載の分析法。
- アレルゲン性蛋白および/またはモノクローナル抗体にビオチンで標識を付ける請求項5〜7のいずれか一つに記載の分析法。
- ラテックス蛋白アレルギーの治療における脱感作剤として使用するための、請求項1記載のアレルゲン性蛋白。
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