JPH0769925A - 精製ダニアレルゲン - Google Patents

精製ダニアレルゲン

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JPH0769925A
JPH0769925A JP5235622A JP23562293A JPH0769925A JP H0769925 A JPH0769925 A JP H0769925A JP 5235622 A JP5235622 A JP 5235622A JP 23562293 A JP23562293 A JP 23562293A JP H0769925 A JPH0769925 A JP H0769925A
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和久 小埜
Masako Shigeta
征子 重田
Takeshi Wada
武志 和田
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Hiroshima University NUC
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Abstract

(57)【要約】 【構成】ダニ培養中の排泄物抽出液から分離精製された
分子量(セファローズ6Bゲル濾過法)が約150,0
00〜155,000の糖蛋白質である精製ダニアレル
ゲン、これらの精製ダニアレルゲンの製造方法並びにこ
れらの精製ダニアレルゲンを有効成分とするダニアレル
ギー疾患治療剤及びダニアレルギー疾患診断薬。 【効果】本発明の精製ダニアレルゲンは有効性および安
全性の観点から有用な減感作治療用抗原であり、ダニア
レルギー疾患に対する減感作治療剤・予防剤として有用
である。また、本発明の精製ダニアレルゲンは、ダニア
レルギー疾患の迅速かつ正確な診断において有用であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアレルゲン活性を有する
精製ダニアレルゲンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】屋内塵性ダニは、アトピー性気管支喘息
等のアレルギー疾患の主要な原因として重要である。従
来、アレルギー疾患の治療法としては、アレルギーの原
因物質であるアレルゲンを投与して減感作する減感作療
法が、最も重要な根本療法とされ、特に花粉症を始め昆
虫アレルギー等、抗原が特定され易い疾患においては、
その評価は今や確立されたものといえる。しかしなが
ら、この減感作療法ではアレルゲンによるアナフィラキ
シーの危険が伴う為、安全な治療用抗原の投与が必要と
される。
【0003】ダニアレルギー疾患については、屋内塵中
のダニアレルゲンとして、ヤケヒョウヒダニ(Dermatop
hagoides pteronyssinus)及びコナヒョウヒダニ(Derm
atophagoides farinae)の2種が重要であると報告され
ている[ J. Allergy : 42,14-28,(1968)] 。従来、主要
ダニアレルゲンとしては、ダニ排泄物、ダニ虫体中に含
有されている分子量24〜28kDの糖蛋白質(pI 4.6〜7.2)
および分子量14.5〜20kDの蛋白質(pI 5〜8.3)等が報告
されている[J. Immunol. : 125,587-592,(1980)/ J.
Allergy Clin. Immunol. : 76,753-761,(1985)/ Immun
ology : 46,679-687,(1982)/ Int. Arch. Allergy Ap
pl. Immunol. : 81,214-223,(1986)/ J. Allergy Cli
n. Immunol. : 75,686-692,(1985)等] 。
【0004】一方、本発明者らは、前記の主要ダニアレ
ルゲンよりも高分子量の画分及び低分子量の画分に、ダ
ニ喘息患者血清IgG に特異的反応性を示し、ダニ喘息患
者の白血球ヒスタミン遊離を誘発する成分が存在するこ
とを報告した(日本農芸化学会,62:411, 1988)。しか
し、一部を除き、減感作治療用抗原として用いることが
できる程度までの精製は、未だなされていなかった。
【0005】ダニアレルギー疾患の診断方法としては、
従来、問診を主体とし、屋内塵(ハウスダスト)抽出物
またはダニ虫体抽出物を用いる皮内反応試験を併用する
のが殆どであり、まれにRAST法による血清中のIgE 抗体
価の測定値(相対値)をも併用する程度であって、ダニ
アレルギー疾患を直接的に診断するのはかなり困難であ
った。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来、屋内塵性ダニを
特異抗原とする気管支喘息の減感作治療法には、屋内塵
(ハウスダスト) 抽出液が用いられてきているが、化学
的にはその組成が極めて不明確であり、また多種類の不
純物を含み、アナフィラキシー誘発の可能性があるため
に投与量が極度に制限され、治療効果が極めて低いのが
現状である。したがって、有効性及び安全性の観点か
ら、有用な減感作治療用抗原の出現が期待されている。
また、ダニアレルギー疾患の迅速かつ正確な診断は、ダ
ニアレルギー疾患の適切な治療を行う上で重要であり、
診断システムの確立が期待されている。
【0007】本発明の目的は、まさにこの点にあり、ダ
ニアレルギー疾患の治療剤、診断薬として極めて有用な
新規な精製ダニアレルゲンを提供することにある。即
ち、本発明の目的は、ダニ培養中の排泄物から抽出しう
る、アレルゲン活性を有する新規な精製ダニアレルゲン
および当該新規な精製ダニアレルゲンの製造方法を提供
すること、並びに新規なダニアレルギー疾患治療剤およ
び新規なダニアレルギー疾患診断薬を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ダニアレ
ルギー疾患の治療剤、診断薬を開発することを目的とし
て、コナヒョウヒダニ排泄物の抽出液中のアレルゲンに
ついて鋭意研究を重ねた。その結果、各種ゲル濾過、イ
オン交換クロマトグラフィーとダニアレルギー患者血清
中のIgG、IgE等を用いるELISA法とを組合せ
て分画することにより、各種の画分に含まれる糖蛋白質
に強いアレルゲン活性を見出し、さらに研究を重ねて本
発明を完成した。
【0009】即ち、本発明の要旨は、下記の理化学的性
質および生物学的性質を有する5種類の精製ダニアレル
ゲン、即ちHM1−2−eff、HM1−2−0.1
B、HM1−2−0.3A、HM1−2−0.3B、お
よびHM1−2−1Mに関するものである。
【0010】(1)精製ダニアレルゲンHM1−2−e
ffの理化学的性質および生物学的性質は、ダニ培養
中の排泄物抽出液に含まれ、ウルトロゲルAcA54で
のゲル濾過(生理食塩水)によりボイドボリュウムおよ
びその直後に溶出する画分(HM1)に含まれ、ついで
セファローズ6Bでのゲル濾過(生理食塩水)によりH
M1−2の画分に含まれ、DEAE−トヨパールのカラ
ムクロマトグラフィーから0.01MのNaClを含む
0.01Mりん酸緩衝液(pH6.0)により溶出され
る画分に含まれる成分であり、約90%の糖質を含む
糖蛋白質であり、分子量(セファローズ6Bゲル濾過
法)が約150,000〜155,000であり、そし
てアレルゲン活性を有する。
【0011】(2)精製ダニアレルゲンHM1−2−
0.1Bの理化学的性質および生物学的性質は、ダニ
培養中の排泄物抽出液に含まれ、ウルトロゲルAcA5
4でのゲル濾過(生理食塩水)によりボイドボリュウム
およびその直後に溶出する画分(HM1)に含まれ、つ
いでセファローズ6Bでのゲル濾過(生理食塩水)によ
りHM1−2の画分に含まれ、DEAE−トヨパールの
カラムクロマトグラフィーから0.1MのNaClを含
む0.01Mりん酸緩衝液(pH6.0)により溶出さ
れる画分に含まれる成分であり、約83%の糖質を含
む糖蛋白質であり、分子量(セファローズ6Bゲル濾
過法)が約150,000〜155,000であり、そ
してアレルゲン活性を有する。
【0012】(3)精製ダニアレルゲンHM1−2−
0.3Aの理化学的性質および生物学的性質は、ダニ
培養中の排泄物抽出液に含まれ、ウルトロゲルAcA5
4でのゲル濾過(生理食塩水)によりボイドボリュウム
およびその直後に溶出する画分(HM1)に含まれ、つ
いでセファローズ6Bでのゲル濾過(生理食塩水)によ
りHM1−2の画分に含まれ、DEAE−トヨパールの
カラムクロマトグラフィーから0.3MのNaClを含
む0.01Mりん酸緩衝液(pH6.0)により溶出さ
れる画分に含まれる成分であり、約76%の糖質を含
む糖蛋白質であり、分子量(セファローズ6Bゲル濾
過法)が約150,000〜155,000であり、そ
してアレルゲン活性を有する。
【0013】(4)精製ダニアレルゲンHM1−2−
0.3Bの理化学的性質および生物学的性質は、ダニ
培養中の排泄物抽出液に含まれ、ウルトロゲルAcA5
4でのゲル濾過(生理食塩水)によりボイドボリュウム
およびその直後に溶出する画分(HM1)に含まれ、つ
いでセファローズ6Bでのゲル濾過(生理食塩水)によ
りHM1−2の画分に含まれ、DEAE−トヨパールの
カラムクロマトグラフィーから0.3MのNaClを含
む0.01Mりん酸緩衝液(pH6.0)により溶出さ
れる画分に含まれる成分であり、約71%の糖質を含
む糖蛋白質であり、分子量(セファローズ6Bゲル濾
過法)が約150,000〜155,000であり、そ
してアレルゲン活性を有する。
【0014】(5)精製ダニアレルゲンHM1−2−1
Mの理化学的性質および生物学的性質は、ダニ培養中
の排泄物抽出液に含まれ、ウルトロゲルAcA54での
ゲル濾過(生理食塩水)によりボイドボリュウムおよび
その直後に溶出する画分(HM1)に含まれ、ついでセ
ファローズ6Bでのゲル濾過(生理食塩水)によりHM
1−2の画分に含まれ、DEAE−トヨパールのカラム
クロマトグラフィーから1.0MのNaClを含む0.
01Mりん酸緩衝液(pH6.0)により溶出される画
分に含まれる成分であり、約48%の糖質を含む糖蛋
白質であり、分子量(セファローズ6Bゲル濾過法)
が約150,000〜155,000であり、そして
アレルゲン活性を有する。
【0015】また、本発明は、ダニ培養中の排泄物を飽
和食塩水および/または中程度イオン強度の緩衝液によ
り抽出処理し、得られた抽出液をゲル濾過、イオン交換
クロマトグラフィー等の手法およびダニアレルギー患者
血清IgG、IgEを用いるELISA法の手法を組合
せて分画することを特徴とする前記の精製ダニアレルゲ
ンの製造方法を提供する。
【0016】さらに、本発明は前記の精製ダニアレルゲ
ンを有効成分とするダニアレルギー疾患治療剤、ダニア
レルギー疾患診断薬を提供する。
【0017】本発明において、各精製ダニアレルゲン
は、それぞれ前記の〜の要件を満足する限り、単一
の精製ダニアレルゲンよりなるもの、また複数のダニア
レルゲンよりなるもの(すなわち、精製ダニアレルゲン
の混合物の態様)のいずれでもよい。
【0018】以下、本発明の精製ダニアレルゲンについ
てより詳細に説明する。即ち、本発明の精製ダニアレル
ゲンの性状は、次のとおりである。 (1)精製ダニアレルゲンHM1−2−eff 色および性状:白色(凍結乾燥物) 水溶性:易溶性 分子量:セファローズ6Bゲル濾過法により約15
0,000〜155,000である。本物質は糖含量の
高い糖蛋白質であるため、実際よりも高い分子量が得ら
れていると思われる。 組成成分:組成成分からの解析では、糖蛋白質であっ
て、糖含量が約90%を占める。またアミノ酸組成は表
6に記載のとおりである。 アレルゲン活性を有する。 アナフィラキシー反応を誘発しない。
【0019】(2)精製ダニアレルゲンHM1−2−
0.1B 色および性状:白色(凍結乾燥物) 水溶性:易溶性 分子量:セファローズ6Bゲル濾過法により約15
0,000〜155,000である。本物質は糖含量の
高い糖蛋白質であるため、実際よりも高い分子量が得ら
れていると思われる。 組成成分:組成成分からの解析では、糖蛋白質であっ
て、糖含量が約83%を占める。またアミノ酸組成は表
6に記載のとおりである。 アレルゲン活性を有する。 アナフィラキシー反応を誘発しない。
【0020】(3)精製ダニアレルゲンHM1−2−
0.3A 色および性状:白色(凍結乾燥物) 水溶性:易溶性 分子量:セファローズ6Bゲル濾過法により約15
0,000〜155,000である。本物質は糖含量の
高い糖蛋白質であるため、実際よりも高い分子量が得ら
れていると思われる。 組成成分:組成成分からの解析では、糖蛋白質であっ
て、糖含量が約76%を占める。またアミノ酸組成は表
6に記載のとおりである。 アレルゲン活性を有する。 アナフィラキシー反応を誘発しない。
【0021】(4)精製ダニアレルゲンHM1−2−
0.3B 色および性状:白色(凍結乾燥物) 水溶性:易溶性 分子量:セファローズ6Bゲル濾過法により約15
0,000〜155,000である。本物質は糖含量の
高い糖蛋白質であるため、実際よりも高い分子量が得ら
れていると思われる。 組成成分:組成成分からの解析では、糖蛋白質であっ
て、糖含量が約71%を占める。またアミノ酸組成は表
6に記載のとおりである。 アレルゲン活性を有する。 アナフィラキシー反応を誘発しない。
【0022】(5)精製ダニアレルゲンHM1−2−1
M 色および性状:白色(凍結乾燥物) 水溶性:易溶性 分子量:セファローズ6Bゲル濾過法により約15
0,000〜155,000である。本物質は糖含量の
高い糖蛋白質であるため、実際よりも高い分子量が得ら
れていると思われる。 組成成分:組成成分からの解析では、糖蛋白質であっ
て、糖含量が約48%を占める。またアミノ酸組成は表
6に記載のとおりである。 アレルゲン活性を有する。 アナフィラキシー反応を誘発しない。
【0023】本発明の精製ダニアレルゲンの分子量は、
セファローズ6Bゲル濾過法により測定する。糖含量が
高いため、SDS−PAGE法は不適当であった。
【0024】本発明の精製ダニアレルゲンのアミノ酸組
成はすべて、次の操作により得られる。即ち、0.2%サン
プル溶液200μl を12N塩酸200μlと混合し、
2置換をした密封試験管内で、110℃で24時間加
水分解する。乾固させた後、少量の水を加え再び乾固さ
せるという操作を3回繰り返すことによって脱塩酸を行
い、これをアミノ酸アナライザー用の希釈用緩衝液1ml
に溶解し、アミノ酸アナライザー(日立製作所)により
定量する。
【0025】本発明の精製ダニアレルゲンの糖含量は、
全中性糖をGlucose を標準としてフェノール硫酸法で定
量した結果である。
【0026】アレルゲン活性については、ダニアレルギ
ー患者に対する皮内反応活性、HPLCを用いた患者白
血球ヒスタミン遊離試験、ドットブロットテスト等によ
り判断する。アナフィラキシー反応については、常法に
より、モルモットを免疫し、追加免疫時のアナフィラキ
シー反応について観察する。
【0027】本発明の精製ダニアレルゲンの製造方法と
しては、たとえば次のような方法が例示される。 a)粗ダニ排泄物抗原の調製 ダニ抗原の製造原料として、特に制限されるものではな
いが例えばコナヒョウヒダニまたはヤケヒョウヒダニの
いずれを用いてもよい。これらのダニをダニ培養培地で
培養し、これを抽出処理する。抽出処理は飽和食塩水お
よび/またはリン酸緩衝液を加えて攪拌し、室温で30分
間静置した後に、遠心分離(3000 rpm 、30分) を行い上
清をプールする。この際、抽出溶媒としては他に、中程
度イオン強度の緩衝液であればいずれを用いてもよい。
例えば、乳酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ト
リス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等が挙げられる。上清表
面にダニ虫体が浮遊するのでこれを濾過して取り除く。
プールした上清を濾過およびイオン交換水に対して透析
したもの(粗ダニ排泄物抽出液)を出発材料とする。次
に、この粗ダニ排泄物抽出液を、例えば分子量1万カッ
トの限外濾過膜(UF-20CS-10PS) に通し、この膜を通過
しない高分子粗ダニ排泄物抗原と通過する低分子粗ダニ
排泄物抗原に分画し、高分子粗ダニ排泄物抗原について
さらに分画を進める。
【0028】b)高分子粗ダニ排泄物抗原から各精製ダ
ニアレルゲンの調製 高分子粗ダニ排泄物抗原の分画は、(i) ダニアレルギ
ー患者血清中のダニアレルゲンに特異的なIgE 、IgG 、
ウサギ抗ダニ排泄物抗血清、ウサギ抗ダニ排泄物抗体、
排泄物抗原に特異的なマウスモノクローナル抗体等との
反応を酵素免疫測定法(ELISA) により測定することによ
る、各フラクションの抗原活性の測定(Immunochemistr
y: 8, 871,(1971))、(ii) ウサギ抗ダニ排泄物抗血清を
用いたラジオイムノアッセイによる、各フラクションの
抗原活性の測定、(iii) 皮内反応活性による、各フラ
クションのアレルゲン活性の測定、(iv) ダニアレルギ
ー患者白血球ヒスタミン遊離活性による、各フラクショ
ンのアレルゲン活性の測定、等のモニターの下に公知の
精製法、例えばゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾
過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロ
マトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、焦点電気泳
動法、ゲル電気泳動法等を適宜組み合わせて精製するこ
とができる。
【0029】例えば、具体的には高分子粗ダニ排泄物抗
原をウルトロゲルAcA54でゲル濾過する。その時の
溶出液を、ダニアレルギー患者血清中のIgG、IgE
およびウサギ抗高分子粗ダニ排泄物抗原血清中のIgG
に対する反応性をELISA法によりモニターし、蛋白
含量および280nmの吸収をガイドに分画する。強い
皮内反応活性が認められる画分を、更にゲル濾過、イオ
ン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、
デュアルモードクロマトグラフィー、逆相HPLC等の
精製手段を適宜組み合わせることにより本発明の精製ダ
ニアレルゲンである活性成分を精製することができる。
【0030】例えば、まず、ウルトロゲルAcA54で
分画された各種の画分のうち、最も強い皮内反応活性を
示した画分について、セファローズ6Bによるゲル濾過
をさらに行い、溶出液を前記のようにELISA法によ
り幾つかの画分に分画する。これらのうち、最も高い抗
原活性を示す画分を用いてさらに精製を進める。次に
は、一般に、イオン交換クロマトグラフィーを行うのが
効果的である。本発明においては、アニオン交換樹脂に
よるイオン交換クロマトグラフィーが効果的である。例
えば、DEAE−トヨパールカラム(pH6.0リン酸
緩衝液,10mM−NaCl)に活性画分をチャージ
し、NaCl濃度を変えた同リン酸緩衝液を用いて溶出
する。溶出液の分画は、ELISA法、蛋白質量、糖含
有量等を指標として行う。こうして得られる精製ダニア
レルゲンHM1−2−eff、HM1−2−0.1B、
HM1−2−0.3A、HM1−2−0.3B、HM1
−2−1Mの色および性状はそれぞれ白色(凍結乾燥
物)であり、水には易溶性のものである。また、モルモ
ットを用いたアナフィラキシー反応試験では、アナフィ
ラキシー反応を誘発しないものである。
【0031】本発明の精製ダニアレルゲンはダニアレル
ギー疾患治療剤として適用することができ、例えば減感
作治療剤として有用である。ここでダニアレルギー疾患
とは、アトピー性気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレ
ルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎等、ダニの特異抗原
が原因となるあらゆるアレルギー疾患をいう。
【0032】前記の方法により精製された精製ダニアレ
ルゲンは、濃縮して溶液状又はシロップ状として採取す
るか、更に乾燥して粉末状で採取してダニアレルギー疾
患に対する減感作治療剤として用いられる。本減感作治
療剤はそのままで、又は必要に応じて一般的に用いられ
るアジュバントや各種の添加剤、例えば安定剤、賦形
剤、溶解補助剤、乳濁化剤、緩衝剤、無痛化剤、保存
剤、着色剤等を添加した配合剤として用いることができ
る。
【0033】本減感作治療剤は、通常の投与経路、例え
ば、経口、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内等の投与方法に
より行うことができる。更に、例えばトローチ、舌下
錠、点眼剤、鼻腔内噴霧剤、パップ剤、クリーム剤、ロ
ーション剤等の経皮、経粘膜薬としても使用することが
できる。本減感作治療剤の投与量及び投与回数は、投与
経路、症状等に応じて成人1回当たり約20μg以下の範
囲となるように適宜選択し、毎週1回程度投与される。
また、本減感作治療剤はダニアレルギー疾患に対する治
療剤のみならず予防剤としても有用である。本減感作治
療剤は、アナフィラキシー誘発作用もなく、人体に対し
て安全に用いることができる。
【0034】本発明の精製ダニアレルゲンはダニアレル
ギー疾患の診断薬として有用である。即ち、患者の血
液、及びこの血液から遠心分離により得られた血球画分
を緩衝液に懸濁した血球浮遊液の一定量を、それぞれ精
製ダニアレルゲンを滴定試薬として用いて滴定し、アレ
ルゲン刺激により好塩基球(白血球の一種)から遊離す
るヒスタミン量を測定する[ アレルギー:33,692,(198
4) /アレルギー:33,733,(1984)]。
【0035】このヒスタミン遊離滴定では、最大遊離量
の50%量( 滴定曲線の変曲点) から遊離されるヒスタミ
ン量を求める。この滴定では、 (i) 血球浮遊液の滴定値から患者のアレルゲン感受性
を直接測定することになる。 (ii)血液の滴定値は、通常、血球浮遊液の値より高い
値が得られる。これは、血漿中にアレルゲン中和能を持
つIgG 抗体(遮断抗体)が存在するためである。
【0036】従って、対血液滴定曲線の、対血球浮遊液
滴定曲線からのシフトの大きさから、遮断抗体価が得ら
れる。感受性とこの遮断抗体価から表1のように、ダニ
アレルギーの正確な診断が可能となる。また、減感作治
療効果のモニターとしても有用である。
【0037】
【表1】
【0038】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説
明するが、本発明はこれら実施例により何等限定される
ものではない。なお、以下の実施例において使用される
各種分析方法については、一部を除き、実施例10の末
尾にまとめて記述する。
【0039】実施例1 高分子粗ダニ排泄物抗原の調製:ラット、マウス、ハム
スター用飼料M(オリエンタル酵母社)中で、温度26
±2℃、湿度75%RHの環境で、ダニ密度が2〜3万
匹/g培地になるようにコナヒョウヒダニを飼育し、ダ
ニ培養培地100gに対して、飽和食塩水を1リットル
加えてよく攪拌した。室温で30分間静置した後、30
00rpm、30分遠心分離を行った。この時、ダニ虫
体は上清表面に浮遊するので、これを濾過して取り除い
た。沈澱に再び飽和食塩水を加えて同じ操作を繰り返し
た。さらに沈澱に10mMリン酸緩衝液を1リットル加
えて飽和食塩水の場合と同じ操作を繰り返した(2
回)。得られた抽出液を水道水に対して一夜透析し、分
画分子量1万の限外濾過(膜はUF-20CS-10PS,東ソー)
により分子量10kD以上とそれ以下に分画した。各分
画を濃縮し凍結乾燥して、それぞれ高分子粗ダニ排泄物
抗原および低分子粗ダニ排泄物抗原とした。ダニ培養物
22.5kgから、高分子粗ダニ排泄物抗原(HM)1
24gを得た。これは、低分子粗ダニ排泄物抗原(L
M)を約0.2%含んでいた。
【0040】実施例2 高分子粗ダニ排泄物抗原(HM)のウルトロゲルAcA
54による分画:実施例1で得られた高分子粗ダニ排泄
物抗原(HM)990mg(濃度990mg/30ml
生理食塩水)をウルトロゲルAcA54カラム(IBF, サ
イズ 4.4×70cm)にチャージし、溶出液に生理食塩水
を用いて、流速2ml/分でゲル濾過して32mlずつ
のフラクションに分画した。各フラクションについて、
ダニアレルギー患者血清中のIgG、IgEおよびウサ
ギ抗高分子粗ダニ排泄物抗原血清中のIgGに対する反
応性を測定し、また、フェノール硫酸法により中性糖量
を、フォリンローリー法により蛋白質量を、そして28
0mμにおける吸光度をそれぞれ測定した。これらの結
果から、図1、2に示すように、これらのフラクション
をHM1〜HM4に分画した。HM抗原30gから、H
M1が6.47g、HM2が7.36g、HM3が7.
48g、およびHM4が0.22g得られた。この4画
分について、ダニアレルギー患者に対する皮内反応活性
を調べた結果を表2に示した。
【0041】
【表2】
【0042】表2から明らかなように、HM1、HM
2、HM3、およびHM4のすべてがダニ陽性患者に対
し強い皮内反応活性を示したが、患者のIgG、IgE
ともに強い反応をしめしたHM1についてさらに精製を
進めた。
【0043】実施例3 ダニアレルゲンHM1のセファローズ6Bを用いるゲル
濾過による分画:ウルトロゲルAcA54での分画で活
性の高かったHM1(990mg/30ml生理食塩
水)をセファローズ6Bゲルカラム(4.4×70c
m)にチャージし、溶出液として生理食塩水を用いて、
流速2ml/分でゲル濾過して32mlずつのフラクシ
ョンに分けた。各フラクションについて、ダニアレルギ
ー患者血清中のIgG、IgEおよびウサギ抗高分子粗
ダニ排泄物抗原血清中のIgGに対する反応性を測定
し、また、フェノール硫酸法により中性糖量を、フォリ
ンローリー法により蛋白質量を、さらに280mμにお
ける吸光度をもそれぞれ測定した(図3および4)。
【0044】これらの結果より、図3および4の上部に
示すように、HM1(5.6g)からHM1−1(0.
73g)、HM1−2(2.87g)、およびHM1−
3(0.57g)の3つの分画を得た。このうち、主画
分であるHM1−2についてさらに精製を進めた。
【0045】実施例4 DEAEトヨパールを用いるイオン交換クロマトグラフ
ィーによる、HM1−2画分からの精製ダニアレルゲン
HM1−2−eff、HM1−2−0.1A、HM1−
2−0.1B、HM1−2−0.3A、HM1−2−
0.3B、HM1−2−1Mの調製:HM1−2につい
て、DEAEトヨパールとCMトヨパールのいずれに吸
着するかを調べたところ、DEAEトヨパールに吸着す
ることが確認されたので、これを用いてイオン交換クロ
マトグラフィを行った。
【0046】まず、予め10mMのNaClを含む10
mMリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化しておいたD
EAEトヨパールのカラム(3.0×13cm)にHM
1−2(200mg)をチャージし、溶出は、0.1M
のNaCl、0.3MのNaCl、または1.0MのN
aClを含む同一の緩衝液を用いて、流速30ml/時
で行い、素通り画分、0.1M画分、0.3M画分、
1.0M画分に分画した。各フラクションについて、ダ
ニアレルギー患者血清中のIgG、IgEおよびウサギ
抗高分子粗ダニ排泄物抗原血清中のIgGに対する反応
性を測定し、また、フェノール硫酸法により中性糖量
を、フォリンローリー法により蛋白質量、280mμに
おける吸光度をそれぞれ測定した(図5および6)。
【0047】図5のヒストグラムは、ELISA法を用
いて測定したウサギIgGに対する各フラクションの抗
原性を示す。また、図中の各フラクションの総蛋白質量
および中性糖量は、フォリンローリー法およびフェノー
ル硫酸法により測定した。図6のヒストグラムは、EL
ISA法を用いて測定した患者のIgGおよびIgEに
対する各フラクションの抗原性を示す。
【0048】患者IgGおよびIgEおよびウサギIg
Gを用いたELISA法の結果より、同一画分に二つの
ピークをもつ0.1M画分および0.3M画分について
はそれらを各ピークで分け、それぞれAおよびBとし
た。HM1−2の2.67gから素通り画分が0.51
g、0.1A画分が0.27g、0.1B画分が0.2
9g、0.3A画分が0.53g、0.3B画分が0.
37g、1.0M画分が0.16g得られた。
【0049】実施例5 精製ダニアレルゲンHM1−2−eff、HM1−2−
0.1A、HM1−2−0.1B、HM1−2−0.3
A、HM1−2−0.3B、HM1−2−1Mについて
のダニアレルゲン活性およびアナフィラキシー誘発試
験:本発明の精製ダニアレルゲンは、下記の実験により
アレルゲン活性を有し、アナフィラキシー誘発性は無い
ことが判明した。
【0050】実験例1 Balb/Cマウス(4週令)3匹の腹腔内に、精製ダニアレ
ルゲンHM1−2−eff、HM1−2−0.1A、H
M1−2−0.1B、HM1−2−0.3A、HM1−
2−0.3B、またはHM1−2−1Mの各100 μg を
フロイントの完全アジュバンド(Difco)と混合して注入
することにより、0週目に初回免疫をした。追加免疫は
2週目と4週目に行った。マウスの血清中の抗HM1−
2−eff抗体価等は、明らかな上昇が認められ、充分
な免疫原性が認められた。従って、いずれも遮断抗体誘
導能があり、治療用抗原として用いることができると判
断された。
【0051】実験例2 モルモット2匹の腹腔内に、精製ダニアレルゲンHM1
−2−eff、HM1−2−0.1A、HM1−2−
0.1B、HM1−2−0.3A、HM1−2−0.3
B、またはHM1−2−1Mの各水溶液1mgをAlumに加
えて注入することにより、0週目に初回免疫をし、追加
免疫は3週目に行った。対照は、モルモット1匹の腹腔
内にAlumを加えた生理食塩水を同様に注入した。モルモ
ットの血清中の抗HM1−2−eff、HM1−2−
0.1A、HM1−2−0.1B、HM1−2−0.3
A、HM1−2−0.3B、またはHM1−2−1Mの
抗体価は、明らかな上昇を認め、充分な免疫原性が認め
られた。しかし、3週目の追加免疫の直後の観察では、
アナフィラキシー症状は全く認められなかった。このこ
とから、精製ダニアレルゲンHM1−2−eff、HM
1−2−0.1A、HM1−2−0.1B、HM1−2
−0.3A、HM1−2−0.3B、およびHM1−2
−1Mにはアナフィラキシー誘発性はいずれも無いと判
断された。
【0052】実験例3 精製ダニアレルゲンHM1−2−eff、HM1−2−
0.1A、HM1−2−0.1B、HM1−2−0.3
A、HM1−2−0.3B、およびHM1−2−1Mの
アレルゲン活性をダニアレルギー患者に対する皮内反応
試験で検定した。皮内反応試験の方法は、後述のとおり
である。その結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】実験例4 ドットブロットテスト(Dot immunoblot
test) HM1−2−eff、HM1−2−0.1A、HM1−
2−0.1B、HM1−2−0.3A、HM1−2−
0.3B、およびHM1−2−1Mの0.001%、
0.01%または0.1%溶液の各1μlをニトロセル
ロースフィルム(Hybond−C ニトロセルロー
ス、0.4μ、アマシャム社製)にブロットし、5%ス
キムミルク、0.2% Tween 20、0.02%
アジ化ナトリウムを含むPBS溶液に室温で1時間浸漬
した。ついで、IgG染色のために、ダニアレルギー患
者のプール血清の100倍スキムミルク希釈液をシート
上に注ぎ、冷所で一夜インキュベートした。IgE染色
のためには、同血清の10倍希釈液が用いられた。
【0055】このシートを0.2% Tween 20
を含むPBS(PBST)で完全に洗浄したのち、ホー
スラディッシュペルオキシダーゼと結合したヤギ抗ヒト
IgG抗体を含む水溶液またはビオチンと結合したヤギ
抗ヒトIgE抗体を含むPBST溶液中に室温で1時間
反応した。ついで、後者については、ストレプトアビジ
ン−ペルオキシダーゼを含むPBST溶液に室温で1時
間浸漬した。PBSTで完全に洗浄した後、免疫反応を
したスポットは、シートを0.03%の過酸化水素、
0.03%塩化ニッケル、0.06%ジアミノベンジジ
ン(DAB)を含む50mMトリスバッファー(pH
7.6)とともにインキュベートすることにより、検出
した。シートを乾燥した後、着色したスポットをポジテ
ィブの対照およびネガティブの対照として用いたf1
(ダニアレルゲンDer f1)、f2(ダニアレルゲ
ンDer f2)およびBSAと比較した。
【0056】その結果を表4に示す。表中、+、++お
よび+++は、それぞれ着色した抗原濃度が0.1%、
0.01%および0.001%であることを示す。驚く
べきことに、この実験では、代表的なダニアレルゲンで
あるf1、f2よりもはるかに強い抗原性をHM1−2
−eff、HM1−2−0.1A、HM1−2−0.1
B、HM1−2−0.3A、HM1−2−0.3B、お
よびHM1−2−1Mのすべてが示した。
【0057】
【表4】
【0058】実施例6 精製ダニアレルゲンHM1−2−eff、HM1−2−
0.1A、HM1−2−0.1B、HM1−2−0.3
A、HM1−2−0.3B、HM1−2−1Mのアレル
ゲン活性をダニアレルギー患者白血球ヒスタミン遊離試
験により測定した。白血球ヒスタミン遊離試験は、後述
のように公知の方法に準じて行った[ アレルギー:33
692,(1984)] 。その結果を図7に示す。精製ダニアレル
ゲンHM1−2−eff、HM1−2−0.1A、HM
1−2−0.1B、HM1−2−0.3A、HM1−2
−0.3B、およびHM1−2−1Mのいずれにもヒス
タミン遊離活性を認めた。
【0059】実施例7 精製ダニアレルゲンHM1−2−eff、HM1−2−
0.1A、HM1−2−0.1B、HM1−2−0.3
A、HM1−2−0.3B、およびHM1−2−1Mに
ついて、中性糖量はフェノール硫酸法により、また蛋白
質量はフォリンローリー法によりそれぞれグルコース換
算又はウシ血清アルブミン換算で表示し、その重量比を
表5に示す。
【0060】
【表5】
【0061】表5から明らかなように、これらの精製ダ
ニアレルゲンは、HM1−2−1Mを除き、50%以上
の糖を含む点で極めて特徴的である。
【0062】実施例8 精製ダニアレルゲンHM1−2−eff、HM1−2−
0.1A、HM1−2−0.1B、HM1−2−0.3
A、HM1−2−0.3B、およびHM1−2−1Mに
ついてのアミノ酸組成分析:各精製ダニアレルゲンにつ
いて、蛋白質の構成アミノ酸を後述の方法で分析した。
その結果を表6に示す。
【0063】
【表6】
【0064】実施例9 減感作治療用抗原製剤の調製:0.5 %フェノールを添加
した 0.9%食塩水を溶媒とし、実施例4で得られた精製
ダニアレルゲンHM1−2−eff、HM1−2−0.
1A、HM1−2−0.1B、HM1−2−0.3A、
HM1−2−0.3B、またはHM1−2−1Mをそれ
ぞれ1mg/mlの濃度に溶解し、減感作治療用抗原の
原液とした。
【0065】実施例10 ダニアレルギー診断用滴定試薬の調製:ハンクス緩衝液
を溶媒とし、実施例4で得られた精製ダニアレルゲンH
M1−2−eff、HM1−2−0.1A、HM1−2
−0.1B、HM1−2−0.3A、HM1−2−0.
3B、またはHM1−2−1Mをそれぞれ1mg/ml
の濃度に溶解し、ヒスタミン遊離滴定用試薬の原液とし
た。
【0066】以下に、上記実施例で使用した各種分析方
法および特殊な材料について述べる。 (1)ゲルクロマトグラフィー 0.9%NaCl(生理食塩水)溶液で平衡化したウル
トロゲルAcA54(カラムサイズ4.4×70cm)
又はセファローズ6B(カラムサイズ4.4×70c
m)に、遠心分離で不溶物を除いた高分子粗ダニ排泄物
抗原溶液(3.3%)を30ml添加し、生理食塩水を
2ml/分の流速で流し、32mlずつのフラクション
に分画した。溶出液は、UV280nmの吸収でモニタ
ーした。
【0067】(2)イオン交換クロマトグラフィー 1NのHCl、水、1NのNaOH、水、1Nのリン酸
で順次洗浄したDEAE−トヨパール650gを詰めた
カラム(3.0×13cm)を、10mMのNaClを
含む10mMリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化す
る。これに、同緩衝液に溶解したサンプルを加え、素通
りする画分が溶出したのち、NaCl濃度を変えて溶出
を行った。
【0068】(3)ELISA法(酵素免疫測定法) ゲルクロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフ
ィーの際の各フラクションの抗原活性、及びマウス、ウ
サギの抗体価の測定を本法で行った。最初にELISA
用マイクロタイタープレート(96穴)に、ゲル濾過や
イオン交換クロマトグラフィーでの各フラクション50
μl、またはマウス、ウサギの抗体価の測定の時には免
疫抗原を重炭酸塩緩衝液(pH9.2)に溶かしたもの
を、50μlずつ入れ、37℃で1時間インキュベート
した。溶液を吸引除去し、ウエルを洗浄用緩衝液で3回
洗浄後、200μlの1%牛血清アルブミン(BSA)
溶液をウエルに入れ、37℃で1時間インキュベートし
た(ブロッキング)。
【0069】ウエルを洗浄後、ELISA用希釈用緩衝
液で適当な濃度に希釈した血清(患者血清、ウサギ抗血
清)を50μl入れ室温で、1時間インキュベートし
た。ウエルを洗浄後、希釈用緩衝液で希釈したペルオキ
シダーゼ標識の第二抗体溶液を50μl入れ、室温で1
時間インキュベートした。ウエルを洗浄後、基質として
0.1%のABTSを含む0.1Mクエン酸緩衝液、
0.3%過酸化水素を100μl加え室温で反応させ
た。反応時間は、1〜40分(発色の度合いで決定)。
続けて、10mMアジ化ナトリウム溶液を100μl加
えることにより反応を停止し、溶液の420nmの吸収
を測定した。
【0070】(4)皮内反応試験 サンプルを0.9%塩化ナトリウム、0.5%フェノー
ル溶液に溶解しツベルクリン用注射器で、20μlをダ
ニアレルギー患者の前腕、屈側皮内に注射し、約15分
後に現れた、赤疹、膨疹の長径、短径を測定し、その平
均値で検定を行った。検定の基準は表7のとおりであ
る。但し、紅斑が19mm以下でも膨疹が8mm以上な
らば、陽性とする。
【0071】
【表7】
【0072】(5)白血球ヒスタミン遊離試験 イオン交換クロマトグラフィーの各フラクションのアレ
ルゲン活性の測定を本法で行った。 1.洗浄全血球浮遊液の調製法 血液サンプル10mlを遠心分離(1400rpm、1
0分)にかけ、血球と血漿に分ける。血球は、50ml
の遠心管に入れ、ハンク緩衝液を40ml加えて遠心洗
浄(1400rpm、10分)を行う。上清はアスピレ
ーターで吸引除去し、得られた血球部分を後二回ハンク
緩衝液で洗浄する。この血球をハンク緩衝液で10ml
に定容し洗浄全血球浮遊液とする。
【0073】2.ヒスタミン遊離試験法 抗原画分をハンク緩衝液に溶かし、用いたい抗原濃度の
4倍濃度の抗原液を調製する。この抗原液100μlに
ハンク緩衝液を100μl、上記1で調製した洗浄全血
球浮遊液を200μl加え、37℃で30分インキュベ
ートする。ヒスタミンが遊離した上清を、1400rp
m、10分の遠心分離によって200μl採取し、この
上清中に60%過塩素酸を10μl加え撹拌後、遠心分
離(3000rpm、10分)によって、除タンパクし
た上清140μlを採取する。これをヒスタミン定量H
PLCにかけ、上清中に含まれるヒスタミンを定量す
る。
【0074】血球中に含まれる全ヒスタミン量測定のた
めに、全血球浮遊液200μlに直接60%過塩素酸4
0μlを加えて、血球を破壊する。これを、3000r
pm、10分の遠心分離にかけ、得られた上清中に含ま
れるヒスタミンをヒスタミン定量HPLCで測定し、総
ヒスタミン量とする。また、非特異的に遊離するヒスタ
ミン量を測定するために、抗原液の代わりにハンク緩衝
液を用いてヒスタミン遊離試験を行い、コントロールと
する。
【0075】(6)フェノール硫酸法(中性糖の定量
法) 常法により、サンプル0.2mlを試験管にとり、7%
フェノール水を0.1ml加え、10分間室温でインキ
ュベートし、これに85%濃硫酸1.2mlを氷冷しつ
つ加えたのち、100℃で10分間加熱し、その後冷水
中に30分放置したのち、OD490nmの吸収を測定
する。
【0076】(7)フォリンローリー法(蛋白質の定量
法) 常法により、サンプル0.2mlを試験管にとり、アル
カリ性銅塩溶液を1ml加え、室温で10分間インキュ
ベートする。これに1Nフェノール試薬液1mlを加
え、撹拌した後、室温で30分間インキュベートし、O
D750nmの吸収を測定する。
【0077】(8)蛋白質のアミノ酸分析 0.2%サンプル溶液200μlを12N塩酸200μ
lと混合し、N2 置換をした密封試験管内で、110
℃、24時間加水分解した。乾固させた後少量の水を加
え再び乾固させるという操作を3回繰り返すことによっ
て脱塩酸を行い、これをアミノ酸アナライザー用の希釈
用緩衝液1mlに溶解しアミノ酸アナライザー((株)
島津製作所製)により定量した。
【0078】(9)ウサギ抗血清 0.2%サンプル溶液500μlとフロイントの完全ア
ジュバント500μlとを混合し乳化したものを、一週
置きに、ウサギの前足の付け根のリンパ節付近に注射し
た。採血は、毎週、耳の静脈から行った。8週間免疫を
続け、ELISA法により抗体価の上昇を確認した後、
最終免疫を行い、その三日後に、耳から吸引により全採
血を行った。
【0079】
【発明の効果】本発明の精製ダニアレルゲンは有効性お
よび安全性の観点から有用な減感作治療用抗原であり、
ダニアレルギー疾患に対する減感作治療剤・予防剤とし
て有用である。また、本発明の精製ダニアレルゲンは、
ダニアレルギー疾患の迅速かつ正確な診断において有用
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例2において得られた、高分子粗
ダニ排泄物抗原のウルトロゲルAcA54でのゲル濾過
による溶出パターンを示す。各フラクションについて、
ELISA法により測定されたウサギ血清IgGに対す
る抗原活性(ヒストグラム)、中性糖、蛋白質、および
280nmにおけるUV吸収の値がプロットしてある。
【図2】図2は、図1と同様に、実施例2において得ら
れた、高分子粗ダニ排泄物抗原のウルトロゲルAcA5
4でのゲル濾過による溶出パターンを示す。各フラクシ
ョンについての患者血清IgGおよびIgEに対する抗
原活性(ヒストグラム)を、280nmにおけるUV吸
収の値と共に示したものである。
【図3】図3は、実施例3において得られた、ダニアレ
ルゲンHM1のセファローズ6Bを用いるゲル濾過によ
る溶出パターンを示したものである。各フラクションに
ついて、ELISA法により測定されたウサギ血清Ig
Gに対する抗原活性(ヒストグラム)、中性糖、蛋白
質、および280nmにおけるUV吸収の値がプロット
してある。
【図4】図4は、図3と同様に、実施例3において得ら
れた、ダニアレルゲンHM1のセファローズ6Bを用い
るゲル濾過による溶出パターンを示したものである。各
フラクションについての患者血清IgGおよびIgEに
対する抗原活性(ヒストグラム)を、280nmにおけ
るUV吸収の値と共に示したものである。
【図5】図5は、実施例4において得られた、ダニアレ
ルゲンHM1−2画分のDEAE−トヨパールを用いる
イオン交換クロマトグラフィーによる溶出パターンを示
したものである。各フラクションについて、ELISA
法により測定されたウサギ血清IgGに対する抗原活性
(ヒストグラム)、中性糖、蛋白質、および280nm
におけるUV吸収の値がプロットしてある。
【図6】図6は、図5と同様に、実施例4において得ら
れた、ダニアレルゲンHM1−2画分のDEAE−トヨ
パールを用いるイオン交換クロマトグラフィーによる溶
出パターンを示したものである。各フラクションについ
ての患者血清IgGおよびIgEに対する抗原活性(ヒ
ストグラム)を、280nmにおけるUV吸収の値と共
に示したものである。
【図7】図7は、実施例6において得られた、精製ダニ
アレルゲンHM1−2−eff、HM1−2−0.1
A、HM1−2−0.1B、HM1−2−0.3A、H
M1−2−0.3B 、およびHM1−2−1Mについ
てのダニアレルギー患者白血球ヒスタミン遊離試験の結
果を示したものである。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の理化学的性質および生物学的性質
    を有する精製ダニアレルゲン。 ダニ培養中の排泄物抽出液に含まれ、ウルトロゲルA
    cA54でのゲル濾過(生理食塩水)によりボイドボリ
    ュウムおよびその直後に溶出する画分(HM1)に含ま
    れ、ついでセファローズ6Bでのゲル濾過(生理食塩
    水)によりHM1−2の画分に含まれ、DEAE−トヨ
    パールのカラムクロマトグラフィーから0.01MのN
    aClを含む0.01Mりん酸緩衝液(pH6.0)に
    より溶出される画分に含まれる成分である、 約90%の糖質を含む糖蛋白質である、 分子量(セファローズ6Bゲル濾過法)が約150,
    000〜155,000である、 アレルゲン活性を有する。
  2. 【請求項2】 下記の理化学的性質および生物学的性質
    を有する精製ダニアレルゲン。 ダニ培養中の排泄物抽出液に含まれ、ウルトロゲルA
    cA54でのゲル濾過(生理食塩水)によりボイドボリ
    ュウムおよびその直後に溶出する画分(HM1)に含ま
    れ、ついでセファローズ6Bでのゲル濾過(生理食塩
    水)によりHM1−2の画分に含まれ、DEAE−トヨ
    パールのカラムクロマトグラフィーから0.1MのNa
    Clを含む0.01Mりん酸緩衝液(pH6.0)によ
    り溶出される画分に含まれる成分である、 約83%の糖質を含む糖蛋白質である、 分子量(セファローズ6Bゲル濾過法)が約150,
    000〜155,000である、 アレルゲン活性を有する。
  3. 【請求項3】 下記の理化学的性質および生物学的性質
    を有する精製ダニアレルゲン。 ダニ培養中の排泄物抽出液に含まれ、ウルトロゲルA
    cA54でのゲル濾過(生理食塩水)によりボイドボリ
    ュウムおよびその直後に溶出する画分(HM1)に含ま
    れ、ついでセファローズ6Bでのゲル濾過(生理食塩
    水)によりHM1−2の画分に含まれ、DEAE−トヨ
    パールのカラムクロマトグラフィーから0.3MのNa
    Clを含む0.01Mりん酸緩衝液(pH6.0)によ
    り溶出される画分に含まれる成分である、約76%の
    糖質を含む糖蛋白質である、 分子量(セファローズ6Bゲル濾過法)が約150,
    000〜155,000である、 アレルゲン活性を有する。
  4. 【請求項4】 下記の理化学的性質および生物学的性質
    を有する精製ダニアレルゲン。 ダニ培養中の排泄物抽出液に含まれ、ウルトロゲルA
    cA54でのゲル濾過(生理食塩水)によりボイドボリ
    ュウムおよびその直後に溶出する画分(HM1)に含ま
    れ、ついでセファローズ6Bでのゲル濾過(生理食塩
    水)によりHM1−2の画分に含まれ、DEAE−トヨ
    パールのカラムクロマトグラフィーから0.3MのNa
    Clを含む0.01Mりん酸緩衝液(pH6.0)によ
    り溶出される画分に含まれる成分である、 約71%の糖質を含む糖蛋白質である、 分子量(セファローズ6Bゲル濾過法)が約150,
    000〜155,000である、 アレルゲン活性を有する。
  5. 【請求項5】 下記の理化学的性質および生物学的性質
    を有する精製ダニアレルゲン。 ダニ培養中の排泄物抽出液に含まれ、ウルトロゲルA
    cA54でのゲル濾過(生理食塩水)によりボイドボリ
    ュウムおよびその直後に溶出する画分(HM1)に含ま
    れ、ついでセファローズ6Bでのゲル濾過(生理食塩
    水)によりHM1−2の画分に含まれ、DEAE−トヨ
    パールのカラムクロマトグラフィーから1.0MのNa
    Clを含む0.01Mりん酸緩衝液(pH6.0)によ
    り溶出される画分に含まれる成分である、 約48%の糖質を含む糖蛋白質である、 分子量(セファローズ6Bゲル濾過法)が約150,
    000〜155,000である、 アレルゲン活性を有する。
  6. 【請求項6】 ダニ培養中の排泄物を飽和食塩水および
    /または中程度イオン強度の緩衝液により抽出処理し、
    得られた抽出液をゲル濾過、イオン交換クロマトグラフ
    ィー等の手法およびダニ患者血清IgG、IgEを用い
    るELISAの手法を組合せて分画することを特徴とす
    る請求項1〜5いずれか記載の精製ダニアレルゲンの製
    造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜5いずれか記載の精製ダニア
    レルゲンを有効成分とするダニアレルギー疾患治療剤。
  8. 【請求項8】 請求項1〜5いずれか記載の精製ダニア
    レルゲンを有効成分とするダニアレルギー疾患診断薬。
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