JP3746944B2 - 測距装置 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、アナログ出力形式の測距センサを備えたパッシブ型測距装置に関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】
従来のカメラに搭載されている一般的なパッシブ型測距装置は、測距エリア内の被写体光束を分割光学系で二分割し、それぞれの分割被写体光束を左右一対の測距センサ上に結像させ、左右の測距センサの各光電変換素子で光電変換して、蓄積した電荷を画素信号(電圧)として各光電変換素子毎に出力し、これらの画素信号に基づいて測距演算を実行して被写体距離またはデフォーカス量など合焦に必要なデータを求めている。しかしながら、このパッシブ型測距装置にアナログ出力形式の測距センサを用いた場合には、測距センサから出力されるアナログの画素信号をA/D変換して測距演算に用いただけでは、例えば、低輝度部分は分解能が低いため、測距エリア内の被写体が低輝度または低コントラストである場合は、測距精度が低下し、適正な測距演算値が得られなかった。
【0003】
【発明の目的】
本発明は、測距精度を向上させることができる測距装置を提供することを目的とする。
【0004】
【発明の概要】
本発明は、被写体輝度を測定する測光手段と、それぞれが受光した被写体光を光電変換して積分し、電気的な画素信号として出力する複数の光電変換素子を備えた受光手段と、前記画素信号をA/D変換して画素データを求めるA/D変換手段と、前記測光手段の測光した被写体輝度が所定値以上であれば、前記画素データを前記第1の変換レンジで対数変換して第1のセンサデータを求め、逆に同被写体輝度が所定値未満であれば、前記画素データを少なくとも第1の変換レンジ及び該第1の変換レンジとは異なる変換レンジで対数変換し、前記受光手段の1回の受光で変換レンジの異なるセンサデータを複数求める対数変換手段と、前記第1の変換レンジで対数変換された第1のセンサデータに基づき測距演算を実行する演算手段とを備え、前記演算手段は、前記第1のセンサデータに基づく測距演算で有効な測距演算値が得られず且つ前記測光手段の測光した被写体輝度が所定値未満であった場合には、前記第1の変換レンジとは異なる他の変換レンジで対数変換されたセンサデータに基づいて測距演算を再実行することを特徴としている。
この構成によれば、被写体の存在する輝度範囲の分解能を高くしたセンサデータに基づいて測距演算を行えるので、適正な測距演算値を得ることができる。
【0005】
前記受光手段は、受光した被写体光を各光電変換素子毎に光電変換して積分し、該積分値のそれぞれを画素信号として前記各光電変換素子毎に順番に出力し、前記A/D変換手段は、前記画素信号を入力及びA/D変換して画素データを求め、該画素データを前記対数変換手段が異なる複数の変換レンジで対数変換して変換レンジの異なる複数のセンサデータを求める間に、次の画素信号を入力してA/D変換することが好ましい。
前記受光手段は、積分開始後、いずれかの光電変換素子の積分値が所定値に達したときまたは所定時間経過時のいずれか早いときに全ての光電変換素子の積分を終了させ、前記積分値を前記電気的な画素信号として出力する受光手段であって、前記受光手段による積分開始後積分終了までの積分時間から被写体輝度が所定値以上であるかどうかを判断する判断手段を備え、前記対数変換手段は、前記画素データを、前記第1の変換レンジおよび該第1の変換レンジよりもレンジ幅の狭い第2の変換レンジで対数変換し、前記演算手段は、前記第1の変換レンジで対数変換されたセンサデータに基づく測距演算で有効な測距演算値が得られず、且つ、前記判断手段により被写体輝度が所定値以上であると判断されたときは、前記第2の変換レンジで対数変換されたセンサデータに基づいて測距演算を再実行することが好ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下図面に基づいて本発明を説明する。図1〜図3は、本発明を適用したレンズシャッタ式カメラの一実施の形態を示す外観図である。このレンズシャッタ式カメラ1は、図1に示すように、正面にズームレンズ2を備え、その上方には、AF用補助投光窓3、パッシブAF受光窓4、ファインダ窓5、測光窓6を備えている。なお、これらの窓3〜6の後方カメラボディ1内には、図示しないが公知のように、AF用補助光源、パッシブAFセンサ、ファインダ光学系、測光センサがそれぞれ配置されている。
【0007】
カメラ1の上飾り板7には、レリーズボタン8が設けられている。レリーズボタン8は、測光スイッチSWSおよびレリーズスイッチSWRと連動していて、半押しで測光スイッチSWSがオンし、全押しでレリーズスイッチSWRがオンする。
【0008】
カメラ1の背面には、その中央部に電源をオン/オフするメインスイッチレバー10が設けられ、その上部にテレ側またはワイド側に倒すとズームレンズ2をテレ方向またはワイド方向にズーミングできるズームレバー9が設けられている。このズームレバー9は、テレスイッチSWTおよびワイドスイッチSWWと連動していて、ズームレバー9がテレ側に倒されるとテレスイッチSWTがオンし、ワイド側に倒されるとワイドスイッチSWWがオンする。
また、カメラ1の背面の接眼窓12近傍には、点灯または点滅により測距結果を報知する緑ランプ11が設けられている。
【0009】
次に、カメラ1の制御系の構成について、図4に示したブロック図を参照してより詳細に説明する。CPU21は、カメラ1の機能に関するプログラム等が書き込まれたROM、制御用または演算用の各種パラメータなどを一時的に記憶するRAM21c、A/D変換器21aおよびカウンタ21bを内蔵しており、カメラ1の動作を総括的に制御する制御手段として機能するほかに、変換手段、演算手段、メモリ手段、判断手段としての機能も有する。
【0010】
CPU21には、スイッチ類として、メインスイッチレバー10に連動するメインスイッチSWM、ズームレバー9に連動するテレスイッチSWTおよびワイドスイッチSWW、レリーズボタン8に連動する測光スイッチSWSおよびレリーズスイッチSWRが接続されている。メインスイッチレバー10がオン操作されてメインスイッチSWMがオンするとCPU21は、電池23を電源として、各入出力ポートに接続されている周辺回路に電力供給を開始し、操作されたスイッチに応じた処理を実行する。
【0011】
ズームレバー9に連動するテレスイッチSWTまたはワイドスイッチSWWがオンするとCPU21は、ズームレンズ駆動回路29を介してズームモータ30を駆動させ、ズームレンズ2をテレズームまたはワイドズームさせる。ズームレンズ2の焦点距離及びレンズ位置は、ズームコード入力回路43によって検知される。CPU21は、電源がオフされたときにはズームレンズ2のレンズ鏡筒がカメラ1の外観内に収まる収納位置までズームモータ30を駆動し、電源がオンされたときにはズームレンズ2がワイド端位置に移動するまでズームモータ30を駆動する。
【0012】
レリーズボタン8が半押しされて測光スイッチSWSがオンすると、先ず、CPU21は測光回路37を介して被写体輝度を求める。測光回路37は、図示しない測光センサを備えていて、測光窓6から入射した被写体光を測光センサで受光し、被写体輝度に応じた測光信号をCPU21に出力する回路である。CPU21は、求めた被写体輝度およびDXコード入力回路45を介して入力したISO感度などに基づいてAE演算を実行し、適正シャッタ速度および適正絞り値を求める。DXコード入力回路45は、カメラ1に装填されたフィルムのパトローネに書き込まれたDXコードを読み込み、ISO感度、撮影枚数などの情報をCPU21に出力する回路である。
【0013】
またCPU21は、測距回路35から入力した画素信号をA/D変換及び対数変換してセンサデータを求め、求めたセンサデータに基づいて測距演算を実行する。この測距演算において、所定条件を満たす有効な測距演算値が得られたときは、フォーカスモータ32のフォーカシングレンズ駆動量を算出し、フォーカス駆動回路31を介して駆動するとともに、緑ランプ11を点灯させる。一方、有効な測距演算値が得られなかったときは、緑ランプ11を点滅させて測距エラーを報知し、使用者に注意を促す。
【0014】
測距回路35は、不図示の撮影画面内の測距ゾーンに含まれる被写体像の焦点状態を検出する回路であり、受光した被写体光束を電気的なアナログの画素信号(電圧)に変換して出力する測距センサ36(図5)を有している。測距センサ36は、フィルム面と光学的に等価な位置にある焦点面EPに形成された被写体像を一対のセパレータレンズ(結像レンズ)36aによって分割して、Aセンサ及びBセンサからなる一対のラインセンサ36b上に再結像する。ラインセンサ36bは、詳細は図示しないが多数の光電変換素子(受光素子)を有している。この各光電変換素子が、それぞれ受光した被写体光束を光電変換して積分(蓄積)し、蓄積電荷を画素単位の画素信号(電圧)として順番に出力する。
また測距回路35は、ラインセンサ36bの積分値をモニタするモニタセンサ(図示せず)を備えている。CPU21は、モニタセンサの出力を検知しながらラインセンサ36bの積分終了を制御する。
【0015】
AF補助投光回路39は、被写体輝度が低いとき、または被写体のコントラストが低いとCPU21が判断したときに、CPU21の制御下で被写体に向けてコントラストパターンを照射する回路である。
【0016】
レリーズボタン8が全押しされてレリーズスイッチSWRがオンすると、CPU21は、算出した絞り値に基づいて絞り制御回路25を作動させてズームレンズ2の絞りを絞り込み、シャッタ速度に基づいてシャッタ制御回路33を介してシャッタモータ34を駆動させて露出する。露出が終了すると、CPU21はフィルム給送信号入力回路41によりフィルム給送信号を入力し、フィルム給送回路27を介してフィルム給送モータ28を作動させてフィルムを1コマ分巻き上げるが、フィルム残量がない場合は、フィルム給送回路27を介してフィルム給送モータ28を作動させてフィルムの巻戻しを行う。
【0017】
以上は、本カメラの主要部材であるが、本カメラは、図示しないが、セルフタイマ動作を表示するセルフランプ、CPU21の制御下でストロボを発光させるストロボ装置、各種情報を表示するLCD表示パネルなど、公知の部材を備えている。
【0018】
図6(A)には、ラインセンサ36bの光電変換素子が出力する画素信号Vx(電圧)と時間の関係を示してある。図においてVref は基準電圧である。画素信号Vxは、各光電変換素子が積分した電荷分だけ時間経過とともに基準電圧Vrefから下降する。CPU21は、いずれかの画素信号Vxが0Vに達した時または所定の最大積分時間経過時のいずれか早い時に、ラインセンサ36bの全ての光電変換素子の積分を終了させる。ここで0Vは積分終了値(電圧)であり、被写体輝度が高いほど積分終了値に達するまでの時間は短くなる。つまり、画素信号Vxの傾きは輝度に比例していて、各光電変換素子が受光した被写体光が明るいほど、つまり被写体が高輝度であるほど画素信号Vxの傾きの絶対値が大きいことが分かる。なお、図6(A)では、測距センサ36が受光した最高輝度レベルの画素信号Veを基準(0EV)とし、画素信号Vxのレベルが高い、即ち低輝度ほどEV値が大きくなるように、輝度値EVを画素信号Veに対する相対値で表している。画素信号Va〜Veは、それぞれ1EVの輝度差の場合として示してある。
【0019】
図6(A)において最初に積分終了した画素信号Veの積分時間を時間t1とし、時間t1における各画素信号Va〜Veを0(V)〜Vref レンジで10ビットA/D変換して求めた画素データVa´〜Ve´を図6(B)に棒グラフで示した。図において縦軸は画素データVx´(A/D変換値)を示し、横軸はラインセンサ36bの各光電変換素子に付された符号を示していて、被写体輝度が高いほど棒軸が低くなっている。なお、ΔEVは基準電圧Vrefに対応する輝度と画素データVx´(A/D変換値)に対応する輝度の差分である。基準電圧Vrefの10ビットA/D変換値をVref´とすれば、ΔEVは下記の式で定義される。表1には、ΔEVと画素データVa´〜Ve´の関係を示した。
ΔEV=log2(Vref´−Vx´)
【表1】
【0020】
図6(C)、(D)には、図6(B)に示す各画素データVx´をさらに8ビットの0〜255階調に異なる対数変換レンジで対数変換した結果を棒グラフで示してある。図6(C)は1EVを64分割して対数変換(4EV対数変換)した結果である。図6(D)は1EVを128分割して対数変換(2EV対数変換)した結果である。図において縦軸は対数変換値を示し、横軸はラインセンサ36bの光電変換素子に付された符号を示している。本実施形態では、図6(B)に示す最も高輝度であった画素データVe´を基準0[EV]として、上記の4EV対数変換を画素データVe´との輝度差が4EV以内となる範囲について実行し、同様に、上記の2EV対数変換を画素データVe´との輝度差が2EV以内となる範囲について実行する。
【0021】
図6(B)に示す画素データをそのまま測距演算に用いると、画素データの低輝度部分の分解能が低いため、使用者の所望する被写体が低輝度部分に存在するような場合には適切な測距演算値を得られないことがある。しかしながら、画素データを対数変換して低輝度部分の分解能を高めようとすると、逆に高輝度部分の分解能が低下しすぎるおそれがある。
【0022】
そこで本実施形態では、測距センサ36に積分を実行させ、測距センサ36が出力した画素信号をA/D変換して画素データ(図6(B))を求め、求めた画素データを異なる2つのレンジ(4EV、2EV)で対数変換する。そして、4EV対数変換により求めた4EVセンサデータ(図6(C))に基づき測距演算を行う。この測距演算では、低輝度部分の分解能を高くした4EVセンサデータに基づき測距演算するので、所望する被写体が低輝度部分に存在する場合に有利である。しかし、4EVセンサデータに基づく測距演算で有効な測距演算値が得られず、且つ被写体輝度が所定値以上であるときは、2EV対数変換により求めた2EVセンサデータ(図6(D))に基づき測距演算を行うこととする。対数変換の変換レンジを狭くして対数変換を行えば高輝度部分の分解能が高くなるため、被写体輝度が高い場合に有利になる。
【0023】
この、1度の積分で得た画素信号を異なる変換レンジで対数変換し、異なる変換レンジのセンサデータを得ること、及び被写体輝度に応じた適切な変換レンジのセンサデータを測距演算に用いることに本発明は特徴を有している。
本実施形態では、変換レンジを4EVと2EVの2段階に設定しているが、本発明はこれに限定されないのは勿論であり、変換レンジを3段階以上に設定した場合は、測距演算結果から次の測距演算に用いるセンサデータを選択する構成にもできる。なお、画素データ及びセンサデータはRAM21cにメモリされる。
【0024】
次に、カメラ1の動作について、図7〜図10に示したフローチャートを参照してより詳細に説明する。図7は、撮影処理に関するフローチャートであり、この処理は測光スイッチSWSがオンされたときに実行される。
【0025】
この処理に入ると先ず、測光処理を実行して測距エリアの被写体輝度(測光値Bv)を求め、測距処理を実行して測距演算値を求める(S11、S13)。測距処理は、詳細は後述するが、測距センサ36の各光電変換素子から出力された画素信号をA/D変換及び対数変換してセンサデータを求め、求めたセンサデータに基づいて測距演算を実行し、求めた測距演算値に基づいてフォーカシングモータ30を駆動させる処理である。
【0026】
測距処理後、測距エラーフラグがセットされているかどうかをチェックする(S15)。測距エラーフラグがセットされているとき、即ち有効な測距演算値が得られなかったときは、使用者に注意を促すため緑ランプ11を点滅し(S15;Y、S19)、測距エラーフラグがクリアされているときは、緑ランプ11を点灯して(S15;N、S17)、AE演算処理を実行する(S21)。AE演算処理では、測光回路37を介して求めた被写体輝度およびDXコード入力回路45から求めたISO感度などに基づいて適正シャッタ速度および適正絞り値を算出する。
【0027】
そして測光スイッチSWSがオンしているかどうかをチェックする(S23)。測光スイッチSWSがオンしていないときは、緑ランプ11を消灯してリターンする(S23;N、S24)。測光スイッチSWSがオンしているときは、レリーズスイッチSWRがオンしているかどうかをチェックする(S23;Y、S25)。レリーズスイッチSWRがオンしていないときは、S23へ戻り、測光スイッチSWSがオフするかまたはレリーズスイッチSWRがオンするまで待機する(S25;N、S23)。レリーズスイッチSWRがオンしたときは、緑ランプ11を消灯し、算出した絞り値に基づいて絞り制御回路25を作動させてズームレンズ2の絞りを絞り込み、シャッタ速度に基づいてシャッタ制御回路33を介してシャッタモータ34を駆動させて露出する露出制御処理を実行する(S25;Y、S27、S29)。
【0028】
露出制御処理終了後は、フィルム給送回路27を介してフィルム給送モータ28を作動させてフィルムを1コマ分巻き上げるが、1コマ分を巻き上げることができず最終コマの撮影が終了した場合はフィルムをすべて巻戻し、撮影処理を終了する(S31)。
【0029】
次にS13で実行される測距処理について図8に示されるフローチャートを参照してより詳細に説明する。この処理に入ると先ず、S11の測光処理で求めた測光値Bvが所定値a以下かどうかをチェックする(S101)。
【0030】
求めた測光値Bvが所定値aより大きかったときは、被写体輝度が十分に高いため、2EV対数変換フラグをクリアし、測距センサ36の感度を低感度に設定し、測距センサ36の積分を開始してタイムアップリミットBをセットする(S101;N、S102、S103、S105)。2EV対数変換フラグは、後述するセンサデータ入力処理において2EV対数変換を実行するかどうかを設定するフラグであり、タイムアップリミットBは測距センサ36の最大積分時間である。CPU21は、いずれかの画素信号が積分終了値に達した時または最大積分時間経過時のいずれか早い時に測距センサ36の積分を終了させ、画素信号を入力するセンサデータ入力処理を実行する(S107)。センサデータ入力処理は、詳細は後述するが、ラインセンサ36bの各光電変換素子が出力した画素信号を10ビットA/D変換するとともに4EV対数変換(4段階の対数変換)して4EVセンサデータを求め、2EV対数変換フラグがセットされているときは、さらに2EV対数変換を実行して2EVセンサデータを求める処理である。本実施形態では、4EVセンサデータ及び2EVセンサデータは8ビットデータである。センサデータ入力処理を実行したら、求めた4EVセンサデータに基づき測距演算を実行し、有効な測距演算値が得られたかどうかをチェックする(S109、S111)。CPU21は測距演算値の信頼性が所定値以上あれば有効であると判断する。有効な測距演算値が得られなかった場合は、測距エラーフラグをセットしてリターンする(S111;N、S113)。有効な測距演算値が得られた場合は、S147へ進む(S111;Y)。
【0031】
求めた測光値Bvが所定値a以下であったときは、被写体輝度が十分ではないため、2eV対数変換フラグをセットし、測距センサ36の感度を低感度に設定してAF補助投光回路39を作動させ、被写体に補助光を照射しながら測距を開始してタイムアップリミットBをセットし、センサデータ入力処理を実行する(S101;Y、S114、S115、S117、S119)。センサデータ入力処理を実行したら、求めた4eVセンサデータに基づき測距演算を実行し、タイムアップリミットBがタイムアップしたかどうかをチェックする(S121、S123)。タイムアップリミットBがタイムアップしていなかったとき、即ち被写体輝度が少しは高いときは、次に有効な測距演算値が得られたかどうかをチェックし(S123;N、S125)、有効な測距演算値が得られたときはS147へ進む(S125;Y)。
【0032】
タイムアップリミットBがタイムアップしておらず、且つ有効な測距演算値が得られなかったときは、S119のセンサデータ入力処理で2EV対数変換した2EVセンサデータに基づき測距演算を実行する(S125;N、S127)。ここで2EVセンサデータを用いて測距演算を再実行するのは、4EVセンサデータよりも変換レンジを狭くして対数変換した2EVセンサデータでは4EVセンサデータに比べて高輝度部分の分解能が高く、被写体が高輝度部分に存在する場合には有効な測距演算値が得られるからである。
【0033】
2EVセンサデータに基づく測距演算を実行したら、有効な測距演算値が得られたか否かをチェックし(S129)、有効な測距演算値が得られたときはS147へ進む(S129;Y)。2EVセンサデータを用いても有効な測距演算値が得られなかったときは、測距エラーフラグをセットしてリターンする(S129;N、S131)。
【0034】
S123でタイムアップリミットBがタイムアップしていたとき、すなわち被写体輝度が低かったときは、4EVセンサデータに基づく測距演算で有効な測距演算値が得られたかどうかをチェックする(S123;Y、S133)。有効な測距演算値が得られたときは、S147へ進む(S133;Y)。
タイムアップリミットBがタイムアップしていて、且つ有効な測距演算値が得られなかったときは(S133;N)、被写体輝度が低すぎるためだと考えられるので、2EV対数変換フラグをクリアし(S134)、測距センサ36の感度を高感度に設定してAF補助投光回路39を作動させ、被写体に補助光を照射しながら測距を開始し(S135)、タイムアップリミットCをセットして(S137)、センサデータ入力処理を実行する(S139)。タイムアップリミットCはタイムアップリミットBよりも長く設定されたタイマーである。
【0035】
センサデータ入力処理を実行したら、求めた4EVセンサデータに基づき測距演算を実行し、有効な測距演算値が得られたかどうかをチェックする(S141、S143)。有効な測距演算値が得られなかったときは、測距エラーフラグをセットしてリターンする(S143;N、S145)。有効な測距演算値が得られたときは、S147へ進み、測距エラーフラグをクリアし(S147)、測距演算値を確定して測距演算値からLLデータを算出し(S149、S151)、求めたLLデータに基づきレンズ駆動処理を実行してリターンする(S153)。
【0036】
本実施形態では、測光処理で求めた測光値Bvが所定値aより大きければ、4EVセンサデータに基づく測距演算で有効な測距演算値が得るのに十分なほど被写体輝度が高いと考えられるから、2EV対数変換は行わずに4EV対数変換のみを実行し、処理の迅速化を図っている。なお、測光値Bvが所定値aより大きくても、測光値Bvが所定値a未満である場合と同様に4EV及び2EV対数変換を実行してもよいのは勿論である。
【0037】
次にS107、S119、S139で実行されるセンサデータ入力処理について図9に示されるフローチャート及び図6(B)を参照して詳細に説明する。本実施形態では、1個の画素信号をA/D変換して対数変換する間に、次の画素信号をA/D変換する構成にしている。この処理に入ると先ず、A/D変換器21aを起動して測距センサ36から出力された最初の画素信号を10ビットA/D変換して画素データを求める(S201)。画素信号及び画素データ(A/D変換値)は被写体輝度が低いほど大きくなる(図6(B)参照)。画素信号のA/D変換が完了したら、求めた画素データと基準電圧Vref のA/D変換値Vref´を比較する(S203;Y、S205)。本実施形態では、電圧0Vを0、基準電圧Vref の10ビットA/D変換値Vref´を1023としている。求めた画素データが基準電圧Vref´よりも小さいときは、基準電圧Vref´から画素データを引いた値をWDATAとしてメモリする(S205;Y、S207)。画素データが基準電圧Vref´以上であるときは、0をWDATAとしてメモリする(S205;N、S209)。したがって、被写体輝度が低い部分ほどWDATAの値は小さくなる。
【0038】
次に、カウンタ21bに測距センサ36から出力される画素信号の総数をセットし、A/D変換器21aを起動して次の画素信号を入力及びA/D変換を開始し、このA/D変換と並行して対数処理を行い、A/D変換が完了するまで待機する(S211、S213、S215、S217;N)。対数処理は、詳細は後述するが、S207またはS209でメモリしたWDATAを8ビットに4EV対数変換及び(または)2EV対数変換する処理である。A/D変換が完了したら、S205〜S209と同様に、求めた画素データ及び基準電圧Vref´からWDATAを求め、RAM21cにメモリする(S217;Y、S219、S221、S223)。WDATAをメモリしたら、カウンタ値を1減算し、カウンタ値が1になるまでS213からS225の処理を繰り返す(S225、S227;N、S213〜S225)。そして、カウンタ値が1になったときは、対数処理を実行し、カウンタ値が2のときに求めた画素データ、すなわち最後の画素データを4EV対数変換及び(または)2EV対数変換してリターンする(S227;Y、S229)。
【0039】
次にS215、S229で実行される対数処理について図10に示されるフローチャート及び図6(B)〜(D)を参照してより詳細に説明する。本実施形態では、この処理により、10ビットA/D変換された各画素データを4EV対数変換および2EV対数変換して、8ビットの4EVセンサデータおよび2EVセンサデータを求める。
【0040】
先ず、WDATAをWDATA2にメモリする(S301)。そして、WDATA値が512以上であるときは、次式;192+(WDATA−512)/8により算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´を減算した値を4EVセンサデータとしてメモリし、S323へ進む(S303;Y、S305、S321)。WDATAが256以上512未満であるときは、次式;128+(WDATA−256)/4により算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値を4EVセンサデータとしてメモリし、S323へ進む(S303;N、S307;Y、S309、S321)。WDATA値が128以上256未満であるときは、次式;64+(WDATA−128)/2により算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値を4EVセンサデータとしてメモリし、S323へ進む(S307;N、S311;Y、S313、S321)。WDATAが64以上128未満であるときは、次式;WDATA−64により算出した値をWDATA´とし、255からWDATA´を減算した値を4EVセンサデータとしてメモリし、S323へ進む(S311;N、S315;Y、S317、S321)。WDATAが64未満であるときは、0をWDATA´とし、255からWDATA´値を減算した値、つまり255を4EVセンサデータとしてメモリし、S323へ進む(S315;N、S319、S321)。
したがって、画素データVe´との輝度差が4EVを超える画素データは4EV対数変換によって全て255となり、画素データVe´との輝度差が4EV以内となる輝度範囲について4EVセンサデータが得られる(図6(C)参照)。
【0041】
以上の4EV対数変換により、低輝度部分の分解能が高くなるため、低輝度部分と高輝度部分の分解能がほぼ等しい状態となり、被写体の焦点状態を容易に判別することができるようになる。したがって、所望する被写体が低輝度部分に存在する場合でもS109、S121、S141の測距演算で適正な測距演算値を得ることができる。
【0042】
S303〜S321の4EV対数変換を実行したら、2EV対数変換フラグがセットされているかどうかをチェックする(S323)。2EV対数変換フラグがセットされていないとき、即ちS107またはS139のセンサデータ入力処理からこの対数処理に入ったときは、2EV対数変換を実行せずにリターンする(S323;N)。2EV対数変換フラグがセットされているとき、即ちS119のセンサデータ入力処理から対数処理に入ったときは、S325〜S335の2EV対数変換を実行する(S323;Y)。
【0043】
2EV対数変換を実行する場合は(S323;Y)、S301でRAM21cにメモリしたWDATA2が512以上であるときは、次式;128+(WDATA2−512)/4より算出した値をWDATA2´とし、255からWDATA2´値を減算した値を2EVセンサデータとしてメモリし、リターンする(S325;Y、S327、S335)。WDATA2が256以上512未満であるときは、次式;(WDATA2−256)/2より算出した値をWDATA2´とし、255からWDATA2´を減算した値を2EVセンサデータとしてメモリし、リターンする(S325;N、S329;Y、S331、S335)。WDATA2値が256未満であるときは、0をWDATA2´にメモリし、255からWDATA2´値を減算した値、すなわち255を2EVセンサデータとしてメモリし、リターンする(S329;N、S333、S335)。
したがって、画素データVe´との輝度差が2EVを超える画素データは2EV対数変換によって全て255となり、画素データVe´との輝度差が2EV以内となる輝度範囲について2EVセンサデータが得られる(図6(D)参照)。
【0044】
S323〜S335の2EV対数変換により、高輝度部分の分解能を高くした2EVセンサデータを得られるので、所望する被写体が高輝度部分に存在する場合でもS127の測距演算で適正な測距演算値を得ることができる。
【0045】
以上のように、本実施形態では、測距センサ36が出力する画素信号を異なるレンジ(2EV、4EV)で対数変換して4EVセンサデータ及び2EVセンサデータを求め、先ずレンジの広い4EVセンサデータを用いることにより低輝度部分の分解能を高くして測距演算を実行するので、低輝度部分に使用者の所望する被写体が存在する場合にも適正な測距演算値を得ることができる。また、4EVセンサデータを用いて測距演算したが適正な有効な測距演算値を得られず且つ被写体輝度が高いと判断できる場合は、4EVセンサデータよりレンジの狭い2EVセンサデータを用いることにより高輝度部分の分解能を高くして測距演算を実行するので、被写体輝度が高くコントラストが低い場合にも適正な測距演算値を得ることができる。
【0046】
本実施形態では、1個の画素信号をA/D変換して4EV対数変換及び2EV対数変換する間に次の画素信号をA/D変換する、すなわち、同一の画素信号を異なる変換レンジで対数変換するので、変換レンジを変える毎に測距センサ36に積分を実行させて画素信号を入力する必要がなくなり、測距センサ36の駆動を少なくして消費電力を抑えることもできる。
【0047】
以上の本発明は複数の測距エリアを備えた多点式測距装置にも適用することができる。その場合は、各測距エリア毎に、画素信号を入力してA/D変換し、さらに異なる変換レンジで対数変換する処理を実行すればよい。
【0048】
以上、レンズシャッタ式カメラに搭載したパッシブ型AF測距装置に適用した実施形態について説明したが、本発明は一眼レフカメラに搭載されるパッシブ型AF測距装置などにも適用できる。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、受光手段が出力した画素信号をA/D変換して画素データを求め、さらに求めた画素データを異なる変換レンジで対数変換し、第1の変換レンジで対数変換して求めたセンサデータを用いて測距演算を実行するが、有効な測距演算値を得られなかったときは、被写体の存在する輝度範囲の分解能を高めるため、第1の変換レンジとは異なる変換レンジで対数変換して求めたセンサデータを用いて測距演算を行うので、適正な測距演算値を得ることができる。特に、有効な測距演算値を得られず、且つ被写体輝度が高かった場合は、第1の変換レンジよりも狭い変換レンジで対数変換すれば、高輝度部分の分解能が高いセンサデータを得られるので、測距精度が向上して適正な測距演算値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の測距装置を搭載したレンズシャッタ式カメラの一実施の形態を示す正面図である。
【図2】 同レンズシャッタ式カメラの上面図である。
【図3】 同レンズシャッタ式カメラの背面図である。
【図4】 同レンズシャッタ式カメラの回路構成の主要部を示すブロック図である。
【図5】 同レンズシャッタ式カメラの測距センサの概要を説明する図である。
【図6】 (A)は同測距センサの画素信号と時間の関係を示す図であり、(B)は時間t1における同測距センサの画素信号をA/D変換して求めた画素データ示す図であり、(C)、(D)は(B)の画素データを4EV、2EV対数変換して求めた4EVセンサデータ、2EVセンサデータを示す図である。
【図7】 同カメラの撮影処理に関するフローチャートを示す図である。
【図8】 同カメラの測距処理に関するフローチャートを示す図である。
【図9】 同カメラのセンサデータ入力処理に関するフローチャートを示す図である。
【図10】 同カメラの対数処理に関するフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
1 カメラ
2 ズームレンズ
21 CPU
21a A/D変換器
21b カウンタ
21c RAM
35 測距回路
36 測距センサ
36a セパレータレンズ
36b ラインセンサ
37 測光回路
Claims (5)
- 被写体輝度を測定する測光手段と、
それぞれが受光した被写体光を光電変換して積分し、電気的な画素信号として出力する複数の光電変換素子を備えた受光手段と、
前記画素信号をA/D変換して画素データを求めるA/D変換手段と、
前記測光手段の測光した被写体輝度が所定値以上であれば、前記画素データを前記第1の変換レンジで対数変換して第1のセンサデータを求め、逆に同被写体輝度が所定値未満であれば、前記画素データを少なくとも第1の変換レンジ及び該第1の変換レンジとは異なる変換レンジで対数変換し、前記受光手段の1回の受光で変換レンジの異なるセンサデータを複数求める対数変換手段と、
前記第1の変換レンジで対数変換された第1のセンサデータに基づき測距演算を実行する演算手段とを備え、
前記演算手段は、前記第1のセンサデータに基づく測距演算で有効な測距演算値が得られず且つ前記測光手段の測光した被写体輝度が所定値未満であった場合には、前記第1の変換レンジとは異なる他の変換レンジで対数変換されたセンサデータに基づいて測距演算を再実行することを特徴とする測距装置。 - 前記受光手段は、受光した被写体光を各光電変換素子毎に光電変換して積分し、該積分値のそれぞれを画素信号として前記各光電変換素子毎に順番に出力し、
前記A/D変換手段は、前記画素信号を入力及びA/D変換して画素データを求め、該画素データを前記対数変換手段が異なる複数の変換レンジで対数変換して変換レンジの異なる複数のセンサデータを求める間に、次の画素信号を入力してA/D変換することを特徴とする請求項1記載の測距装置。 - 前記受光手段は、積分開始後、いずれかの光電変換素子の積分値が所定値に達したときまたは所定時間経過時のいずれか早いときに全ての光電変換素子の積分を終了させ、前記積分値を前記電気的な画素信号として出力する受光手段であって、
前記受光手段による積分開始後積分終了までの積分時間から被写体輝度が所定値以上であるかどうかを判断する判断手段を備え、
前記対数変換手段は、前記画素データを、前記第1の変換レンジおよび該第1の変換レンジよりもレンジ幅の狭い第2の変換レンジで対数変換し、
前記演算手段は、前記第1の変換レンジで対数変換されたセンサデータに基づく測距演算で有効な測距演算値が得られず、且つ、前記判断手段により被写体輝度が所定値以上であると判断されたときは、前記第2の変換レンジで対数変換されたセンサデータに基づいて測距演算を再実行することを特徴とする請求項1または2記載の測距装置。 - 前記対数変換手段は、前記A/D変換手段がA/D変換可能な最高輝度から該最高輝度よりも低い所定輝度までの輝度範囲に相当する画素データ範囲について前記第1の変換レンジ及び前記第2の変換レンジで対数変換し、該輝度範囲は前記変換レンジに応じて異ならせていることを特徴とする請求項3記載の測距装置。
- 前記対数変換手段が前記第2の変換レンジで対数変換を行う輝度範囲は、前記第1の変換レンジで対数変換を行う輝度範囲よりも狭いことを特徴とする請求項4記載の測距装置。
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