JP3746873B2 - 析出硬化型銅合金条の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、極薄で高い強度を有する析出硬化型銅合金条の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、電気製品や電子製品が様々な環境下で使用されるようになるに伴い、電子部品、リードフレーム材、または端子コネクターの導電部品などの使用条件も過酷化する傾向にあり、従来よりも薄くて強度が高く、しかも高い導電性と熱伝導性を有し、かつバネ性、滑り性、めっき性、および耐食性など用途に応じた特性を併せ持つ金属材料が強く要望されている。
【0003】
このような要望に応え得る金属材料として、本願出願人らは、析出硬化型銅合金に注目している。析出硬化型銅合金とは、析出硬化元素を含有する銅合金をいい、材料によって決まる固溶化温度まで加熱することにより析出硬化元素を母相中に過飽和に固溶させた後、固溶度曲線より低い温度に一定時間保持すると、飽和固溶体の結晶に金属間化合物の微粒子が析出し、これにより析出硬化を図ることができるという特徴を有している。例えば、代表的な0.1%Zr−Cu合金の場合には、固溶化温度:940℃まで加熱してZrを過飽和に固溶させた後、400〜500℃程度の温度に3時間ほど保持することにより、ZrCuの微粒子が析出して強度が増加する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この種の析出硬化型銅合金は、極めて高い強度を有するため、薄板として様々な用途が期待されているが、熱処理時に特殊な高温急速加熱を要するうえ、硬度が高く加工が難しいため薄板を得ることが難しく、仮に加工できても強度や品質が十分に確保できないという問題があった。例えば、従来の析出硬化型銅合金材の製造方法では、比較的厚い、例えば2〜15mm程度の析出硬化型銅合金材に固溶化処理を行った後、さらに圧延して製品の厚さとし、その後に析出硬化処理を行っていたのであるが、製品が例えば0.25mmといった極薄いものであると、固溶化処理後に強度の熱間圧延を行う必要が生じ、析出硬化の効果が薄れるという問題が見いだされた。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、極薄で高い強度を有する析出硬化型銅合金条の製造を可能にすることを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る析出硬化型銅合金条の製造方法は、析出硬化型銅合金からなる厚さ0.5mm以下の条材を走行させつつ、この条材を前記析出硬化型銅合金の固溶化温度以上に連続的に急速加熱し、続いて、前記急速加熱された条材を連続的に急速冷却する連続溶体化処理工程と、前記急速冷却された条材を加熱して析出硬化させる析出硬化処理工程とを具備し、前記急速加熱における300℃から前記固溶化温度までの前記条材の昇温速度は40℃/秒以上であり、かつ、600℃以上での保持時間は1〜60秒であり、前記急速冷却における前記固溶化温度から300℃までの降温速度は40℃/秒以上であることを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る析出硬化型銅合金条の製造方法の一実施形態を説明する。この実施形態の方法では、まず、析出硬化型銅合金からなる厚さ0.5mm以下の条材を圧延加工により製造する(圧延工程)。次に、この条材を走行させつつ前記析出硬化型銅合金の固溶化温度以上に連続的に急速加熱し、続いて、急速加熱された条材を連続的に急速冷却して溶体化処理を施す(溶体化処理工程)。さらに、溶体化処理が施された条材を再度加熱して析出硬化させて析出硬化処理を施す(析出硬化処理工程)。本発明が適用可能な析出硬化型銅合金の種類は限定されないが、好ましい合金組成の例を表1に挙げ、それぞれの固溶化温度も併記しておく。
【0008】
【表1】
【0009】
[圧延工程]
まず圧延工程では、鋳造により得られた析出硬化型銅合金材を熱間または/および冷間圧延し、最終製品に近い厚さの条材とする。具体的には、この段階で肉厚0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下に圧延する。0.5mmより厚いと、次の溶体化処理工程において、条材の連続急速加熱および連続急速冷却が困難になり、昇温中に結晶が成長して結晶組織が粗くなるおそれがある。同時に、圧延加工後の厚さは最終製品の厚さの2倍以下であることが望ましい。溶体化処理を施す条材の下限厚さは特に限定されないが、実用上は0.07mm程度であると考えられる。圧延条件は特に限定されないが、一般には、800〜980℃程度で熱間圧延、または冷間圧延することが好ましい。圧延後の条材はリコイラなどに巻き取って次工程へ移送してもよいし、連続的に次工程へ流してもよい。
【0010】
[溶体化処理工程]
溶体化処理工程では、前記条材を連続的に走行させつつ、連続加熱炉により条材を析出硬化型銅合金の固溶化温度以上に急速加熱し、析出硬化元素を母相中に過飽和に固溶させたうえ、連続してこの条材を急速冷却し、固溶化した析出硬化元素が析出しないようにする。
【0011】
前記急速加熱は、300℃から固溶化温度までの範囲での条材の昇温速度が40℃/秒以上、より好ましくは60℃/秒以上、さらに好ましくは100℃/秒以上になるように行う。40℃/秒未満では結晶成長により組織が粗大化する問題が生じる。同様に、前記急速冷却は、固溶化温度から300℃までの範囲での条材の降温速度が40℃/秒以上、より好ましくは60℃/秒以上、さらに好ましくは100℃/秒以上となるように行う。40℃/秒未満では組織が粗大化する傾向が生じる。
【0012】
溶体化処理工程中における条材の600℃以上での保持時間は1〜60秒であることが必要で、より好ましくは1〜20秒である。1秒未満では十分に溶体化させることが難しく、60秒より長いと結晶が成長して結晶組織が粗くなるおそれがある。
【0013】
図1は、固溶体処理工程に使用可能な溶体化処理装置の一例を示している。ただし、本発明はこの装置の使用のみに限定されるものではなく、他形式の連続加熱炉も同様に使用可能である。溶体化処理装置1は、圧延により製造された固溶化前の条材T1を、図示しないアンコイラ等から水平に繰り出し、ガイドロール2により上方へ進路変更して加熱室4内に導入する。加熱室4への入口には、図示していないがシール手段が設けられて、加熱室4が気密的に塞がれている。
【0014】
加熱室4内には、加熱ロール6が軸線を水平にして配置されており、この加熱ロール6は、図示しない駆動機構により条材T1の走行速度に合わせて回転される。加熱室4には窒素やアルゴン等の不活性ガス、水素や一酸化炭素等の還元性ガス、もしくはそれらの混合ガスが供給され、不活性または還元性の雰囲気に保たれている。
【0015】
加熱ロール6の内部には電熱または燃焼熱等による加熱手段が設けられ、この加熱手段によって、加熱ロール6の外周面温度が析出硬化型銅合金T1の固溶化温度以上の一定温度に加熱されている。加熱ロール6を条材T1に当接させて加熱する方法によれば、通常の加熱炉に比して伝熱効率が5倍以上もあり、通常の加熱炉では困難なほどの急速加熱が可能であるだけでなく、伝熱が条材T1の全域に亘って均等に行われるため均一加熱が可能であり、さらに加熱中に条材T1にかかる張力を正確に調整しやすい。このため、難加工材の薄板を対象とする本発明の加熱手段として特に好適である。加熱室4内にはまた、バーナーや高周波誘導加熱装置等の補助加熱手段が設けられていてもよい。
【0016】
加熱ロール6の材質は限定されないが、一般には、耐熱性に優れた金属から形成されていることが望ましく、さらにその外周面は、条材T1と密着するように鏡面加工されていることが好ましい。加熱ロール6の外径は本発明では限定されないが、加熱しやすさや、処理すべき条材T1の厚さや走行速度を考慮して一般には50〜100cm程度、より好ましくは60〜90cm程度に設定される。
【0017】
加熱ロール6の回転速度は、限定はされないが、アンコイラ等からの条材T1の繰り出し速度よりも若干大きい速度に設定されていることが望ましく、具体的には0.1〜10%程速くされているとよい。これは、加熱ロール6の外周に条材T1が当接し昇温していく過程で、条材T1が徐々に熱膨張し、加熱ロール6と固溶化前の条材T1との間に弛みによる剥離が生じるおそれがあるからである。そのような剥離が生じると、加熱ロール6から条材T1への熱伝導が阻害されて条材T1の温度が不均一になるため、極力避けなければならない。
【0018】
図示の例では、条材T1が加熱ロール6の外周面に中心角180゜分だけ巻回され、条材T1の他端は鉛直下方へ延ばされている。これにより、条材T1は加熱ロール6と広い面積で密着し、直接的な熱伝導により加熱ロール6の外周面温度とほぼ等しくなるまで急速に加熱されるから、ライン速度が速くても条材T1を均一にかつ高い精度を以て加熱することができる。しかも、このロール当接による加熱方法は、気相加熱方法よりも熱効率が数倍も高いため、加熱コストが安く済むだけでなく、加熱ロール6により加熱過程で条材T1にかかる張力を均一に調整することができるので、薄い条材T1を変形させることなく高温に均一加熱することが可能である。したがって、特に700℃以上の固溶化温度まで急速加熱する本発明には、ロール当接による加熱方法が適している。
【0019】
加熱室4の下方には冷却室10が付設され、条材T1はこの冷却室10を通されている。冷却室10内には、条材T1の表裏面のそれぞれに対向して多数の冷却ノズル12が配列され、図示しない供給機構から送られた冷却水または冷却ガス等の冷却媒体が、これら冷却ノズル12から条材T1に吹き付けられる。この構成によれば、いったん固溶化温度以上に加熱された条材T1を急冷することができ、結晶成長が防止できるので、固溶化済み条材T2中の結晶粒径を十分に微細化(例えば5〜15μm)することが可能である。
【0020】
冷却室10の下端の開口部10Aは冷却水槽14内に配置され、冷却水槽14に循環供給されている冷却液に浸漬されて、気密的に塞がれている。これにより加熱室4および冷却室10内が不活性雰囲気または還元性雰囲気に維持されている。冷却液中には冷却ロール16が浸漬され、冷却液で十分に冷却された後に、固溶化済み条材T2が冷却ロール16により上方へ送り出される。送り出された固溶化済み条材T2は、図示しない酸洗い装置、水洗装置、および乾燥装置等を経て、リコイラでコイル状に巻き取られる。
【0021】
冷却水槽14中の冷却液には、通常の水を使用することもできるが、より好ましくは遊離酸素抑制剤の水溶液が使用される。遊離酸素抑制剤は、水中の酸素を除去するための薬剤であり、一例としてヒドラジンが挙げられる。遊離酸素抑制剤の濃度は5〜30wt%程度でよい。遊離酸素抑制剤を添加することにより、固溶化済み条材T2の表面の酸化を効果的に抑制することが可能である。
【0022】
図2は溶体化処理装置1の変形例を示し、この溶体化処理装置1は、加熱室4内に第1加熱ロール6Aおよび第2加熱ロール6Bを平行に配置し、条材T1を第1加熱ロール6Aの下側および第2加熱ロール6Bの上側に巻いたことを特徴としている。他の構成は図1の装置と同様である。
【0023】
このような図2の溶体化処理装置1によれば、第1加熱ロール6Aで条材T1を予備加熱した後、第2加熱ロール6Bで本加熱することができる。この場合、第1加熱ロール6Aと第2加熱ロール6Bの外周面温度は同一であっても異なっていてもよい。例えば、第1加熱ロール6Aの温度を固溶化温度より低い温度に設定しておく一方、第2加熱ロール6Bの温度を固溶化温度より高く設定しておくことが可能である。このような方法によれば、条材T1とロール6A,6Bとの合計当接面積を広く確保することが可能であるから、条材T1の走行速度を大きくした場合にも十分均一に加熱することが可能である。条材T1の厚さが比較的大きい場合にも、均一加熱が容易であるという利点も有する。
【0024】
図2の装置において、第1ロール6Aで条材T1を固溶化温度以上に加熱する一方、第2ロール6Bにより予備冷却することも可能である。この場合、第2ロール6Bの内部には冷却水等の冷却媒体を循環供給してもよい。冷却ロール6Bを加熱ロールに隣接して配置することにより、溶体化処理が完了した条材T1をより速やかに冷却できる利点がある。
【0025】
[溶体化処理後の圧延工程]
溶体化処理が完了した条材T2に対して、析出硬化処理の前もしくは後に圧延加工してもよい。実際には、少なくともいずれかの時点で適度な圧延を行ったほうが固溶化済み条材の応力を解放できるので好ましい。析出硬化処理の前に圧延を行う場合には圧延率が4〜90%、より好ましくは20〜60%の冷間圧延であると好ましく、析出硬化処理の後に圧延を行う場合には圧延率が5〜60%、より好ましくは30〜50%の冷間圧延であると好ましい。いずれの場合にも、圧延率が前記下限値未満では応力を解放することができず、割れ限界値が相対的に低下する。一方、圧延率が前記上限値より大では、圧延後の条材に方向性が生じて割れやすくなる。
【0026】
[析出硬化処理工程]
固溶化済み条材T2は次に、析出硬化処理工程に供される。この工程では、固溶化済み条材T2を固溶度曲線より低い温度に一定時間保持し、飽和固溶体の結晶に金属間化合物の微粒子を析出させ、これにより析出硬化を図ることを目的としている。
【0027】
析出硬化処理は、固溶化済み条材T2を250〜600℃、より好ましくは300〜600℃に加熱することにより行い、加熱時間は0.1〜10時間、より好ましくは0.5〜5時間とされる。
【0028】
図3は、析出硬化工程に好適な加熱装置(焼鈍炉)の一例を示している。この焼鈍炉20は、いわゆるベル型焼鈍炉であり、一般的な連続焼鈍炉に比べて加熱温度を高精度に制御できる特徴を有している。ただし、一般的な連続焼鈍炉やその他の加熱炉を用いても、本発明における析出硬化工程は実施可能である。
【0029】
コイル状に巻回された固溶化済み条材T2は同軸状に複数個積層され、気密的な金属製の内容器22に収容されて、内容器22の内部は窒素やアルゴン等の不活性ガスまたは水素や一酸化炭素等の還元性ガスで満たされている。そのなかでも特に、水素ガスを用いることが好ましい。熱伝導性が良好である上に、比重が軽いために循環用の消費電力を削減できるからである。内容器22の下部には循環用ファン28が設けられ、この循環用ファン28により、図中矢印の通りにガスが循環される。内容器22はさらに外容器24に収容されており、この外容器24内には内容器22を外側から加熱するためのバーナー26等の加熱手段が多数設けられている。これらバーナー26で内容器22を加熱すると、内容器22の内部のガスが加熱され、循環用ファン28による循環につれて固溶化済み条材T2が均一に加熱される。
【0030】
以上のような焼鈍炉20を用いて、前述の条件で析出硬化処理を行うことにより、飽和固溶体の結晶に金属間化合物の微粒子を析出させ、これにより析出硬化を図ることが可能である。析出硬化処理が完了したら、外容器24および内容器22を開けて条材T2を取り出し、必要に応じて前述の圧延を施し製品とする。
【0031】
上記のような析出硬化型銅合金条の製造方法によれば、製品の最終肉厚に近い厚さまで圧延を施して析出硬化型銅合金条T1を製造した後、この薄い条材T1を固溶化温度まで急激に加熱し、さらにそれを急冷するため、最終製品の状態においても析出硬化状態が良好に保たれ、析出硬化型銅合金本来の高強度が得られる。
【0032】
特にこの実施形態では、固溶化温度以上の温度に加熱された加熱ロール6を条材T1に当接させ、熱伝導により条材T1を加熱する構成であるから、条材T1の薄さと相まって、条材T1を均一に、かつ加熱ロール6の外周面温度を正確に反映した温度まで加熱することができる。よって、析出硬化状態を正確に制御することが可能であるし、ライン速度の高速化も図れる。さらに、条材T1を加熱ロール6で支持した状態で加熱するため、条材T1に波打ち状等の変形が生じにくく、薄い状態で加熱するにも拘わらず、最終製品の形状精度が高められる。
【0033】
また、固溶化温度まで加熱された条材T1に対し、すぐに冷却ノズル12から冷却水等を吹きかけて冷却するので、条材T1の薄さと相まって、条材T1を急激に冷却することが可能である。したがって、冷却中の結晶成長を抑制することが可能であり、結晶粒径の粗大化が防止できる。この点からも、析出硬化型銅合金本来の高強度が得られる。
さらに、加熱ロール6により伝導加熱する構成であるから、バーナーを多数配置した構成に比して装置全体を小型化することができ、省スペース化が図れ、不活性ガス等のランニングコストも低減できる。
【0034】
【実施例】
次に、本発明の実施例を挙げて効果を実証する。
以下の組成(全てwt%)を有する3種類の析出硬化型銅合金A〜Cを用い、本発明に係る実施例の方法および3種の比較例の方法によりそれぞれ析出硬化型銅合金条を製造し、特性を比較した。
【0035】
合金A(固溶化温度750℃):
2.5%Ni−0.65%Si−0.05%Mg−残部Cu
合金B(固溶化温度750℃):
2.0%Ni−0.5%Si−0.5%Sn−残部Cu
合金C(固溶化温度850℃):
0.02%Si−0.3%Cr−0.1%Zr−0.1%Mg−残部Cu
【0036】
[実施例]
合金A〜Cを用いてそれぞれ厚さ150mm×幅540mmの鋳造塊を作成した。この鋳造塊を900〜960℃×2時間の条件で均質化した後、熱間圧延により溶体化処理を図りつつ厚さ11mmとし、冷却水を用いて冷却した。得られた板材の表面を面削した後、冷間圧延と固溶化温度未満の焼鈍を繰り返し、厚さ0.2mm×幅200mmの条材を作成した。
【0037】
次に、図1の装置を用いて、これら条材をそれぞれの固溶化温度まで急速加熱し、さらに冷却水で急冷して溶体化処理した。その際の300℃から固溶化温度までの昇温速度は約150℃/秒、固溶化温度から300℃までの降温速度は約150℃/秒とした。溶体化処理中の条材走行速度は全て20m/minとした。加熱ロール6としては、外径が750mmの金属製バーナー内蔵型ロールを使用した。
【0038】
溶体化処理後の条材を圧延率20%で冷間圧延して厚さ0.16mmにし、コイル状に巻き取った。巻き取ったコイルを図3に示すようなベル型焼鈍炉20に収容し、450℃×3時間の条件で析出硬化処理を施した。
【0039】
[比較例1]
合金A〜Cを用いてそれぞれ厚さ150mm×幅540mmの鋳造塊を作成した。この鋳造塊を900〜960℃×2時間の条件で均質化した後、熱間圧延により溶体化処理を図りつつ厚さ11mmとし、冷却水を用いて冷却した。得られた板材の表面を面削した後、冷間圧延と固溶化温度未満の焼鈍を繰り返し、厚さ0.16mm×幅200mmの条材を作成した。
【0040】
[比較例2]
合金A〜Cを用いてそれぞれ厚さ150mm×幅540mmの鋳造塊を作成した。この鋳造塊を900〜960℃×2時間の条件で均質化した後、熱間圧延により厚さ11mmとし、冷却水を用いて冷却した。得られた板材の表面を面削した後、冷間圧延と固溶化温度未満の焼鈍を繰り返し、厚さ1.0mmの条材を作成し、コイル状に巻き取った。このコイルを焼鈍炉内において不活性ガス雰囲気下でそれぞれの固溶化温度まで加熱し、加熱後のコイルを不活性ガスにより冷却した。この場合、300℃から固溶化温度までの昇温速度は約0.2℃/秒、固溶化温度から300℃までの降温速度は約0.1℃/秒になる。この条材に冷間圧延を施して厚さ0.16mm×幅200mmの条材を作成し、この条材をコイル状に巻き取った後に、ベル型焼鈍炉20に収容し、450℃×3時間の条件で析出硬化処理を施した。
【0041】
[比較例3]
合金A〜Cを用いてそれぞれ厚さ150mm×幅540mmの鋳造塊を作成した。この鋳造塊を900〜960℃×2時間の条件で均質化した後、熱間圧延により厚さ11mmとし、冷却水を用いて冷却した。得られた板材の表面を面削した後、冷間圧延と固溶化温度未満の焼鈍を繰り返し、厚さ1.0mmの条材を作成し、この条材を走行させつつ連続焼鈍炉を通してそれぞれの固溶化温度まで加熱し、続いて冷却水により条材を連続的に急冷した。この場合、300℃から固溶化温度までの昇温速度は約15℃/秒、固溶化温度から300℃までの降温速度は約15℃/秒になる。その後、この条材に冷間圧延を施して厚さ0.16mmとし、コイル状に巻き取った後にベル型焼鈍炉20に収容し、450℃×3時間の条件で析出硬化処理を行った。
【0042】
[試験方法]
各方法で得られた各3種の析出硬化型銅合金条に対し、電気伝導度測定、引っ張り強度測定、伸び率測定、結晶粒径測定、W曲げ試験、およびめっき性の検査をそれぞれ行った。
【0043】
W曲げ試験は、10mm×60mmの試験片を各合金条から切り出し、各試験片を90゜曲げた場合に、曲げ部の外側面に肌荒れが生じなかった最小内側半径(R)を、試験片の肉厚(T)で除した値(R/T)によって評価した。すなわち、R/T値が小さいほど、曲げ性に優れていることになる。
【0044】
また、めっき性は、条材から切り出した試験片に2μmの厚さで銀を電気めっきした後、これを650℃で5分間加熱した場合にめっき表面に生じた膨れの発生密度(個/100mm2)で評価し、0個/100mm2のものを「◎」、1個/100mm2のものを「○」、2個/100mm2のものを「△」、3個以上/100mm2のものを「×」として評価した。合金Aの結果を表2に、合金Bの結果を表3に、合金Cの結果を表4にそれぞれ示す。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
表2〜4から明らかなように、いずれの合金においても、実施例の方法によって得られた条材は、比較例1〜3の方法で得られた条材より、めっき性、曲げ性、および引張強度が優れていた。また、電気伝導度や伸び率においても遜色がなく、結晶粒径も小さかった。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る析出硬化型銅合金条の製造方法によれば、製品の最終肉厚に近い薄い条材を固溶化温度まで加熱し、さらにそれを急冷するため、最終製品の状態においても析出硬化状態が良好に保たれ、析出硬化型銅合金本来の高強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る析出硬化型銅合金条の製造方法に使用される溶体化処理装置の一例を示す概略図である。
【図2】 溶体化処理装置の変形例を示す概略図である。
【図3】 本発明の方法に使用される析出硬化処理装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 溶体化処理装置
4 加熱室
6 加熱ロール
6A 第1加熱ロール
6B 第2加熱ロール
10 冷却室
12 冷却ノズル
16 冷却ロール
T1 条材
T2 溶体化処理済み条材
Claims (5)
- 析出硬化型銅合金からなる厚さ0.5mm以下の条材を走行させつつ、この条材を前記析出硬化型銅合金の固溶化温度以上に連続的に急速加熱し、続いて、前記急速加熱された条材を連続的に急速冷却する連続溶体化処理工程と、前記急速冷却された条材を加熱して析出硬化させる析出硬化処理工程とを具備し、前記急速加熱における300℃から前記固溶化温度までの前記条材の昇温速度は40℃/秒以上であり、かつ、600℃以上での保持時間は1〜60秒であり、前記急速冷却における前記固溶化温度から300℃までの降温速度は40℃/秒以上であることを特徴とする析出硬化型銅合金条の製造方法。
- 前記急速冷却された条材を4〜90%の圧延率で圧延する圧延工程をさらに具備し、この圧延工程の後に、前記析出硬化処理工程を行うことを特徴とする請求項1記載の析出硬化型銅合金条の製造方法。
- 前記析出硬化処理工程を経た条材を5〜60%の圧延率で圧延する圧延工程をさらに具備することを特徴とする請求項1または2に記載の析出硬化型銅合金条の製造方法。
- 前記溶体化処理工程の前に、析出硬化型銅合金材を圧延して厚さ0.5mm以下の前記条材を得る圧延工程をさらに具備することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の析出硬化型銅合金条の製造方法。
- 前記析出硬化処理工程では、溶体化処理済みの条材を250〜600℃に0.1〜10時間保持することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の析出硬化型銅合金条の製造方法。
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