JP3746803B2 - 半導体洗浄排水の回収方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は半導体製造工場から排出される半導体洗浄排水の処理方法に関するものであり、更に詳しくは、生物処理した半導体洗浄排水を超純水製造用水として回収再使用するのに好適な半導体洗浄排水の回収方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体の製造工程では、超純水製造設備で製造された多量の超純水が洗浄用水として使用されている。使用された超純水は洗浄排水として排出されるが、最近では水事情の逼迫から、この洗浄排水を回収し、再処理した後循環利用するための効率的方法が望まれている。この洗浄排水中には、半導体製造工程で使用された2−プロパノールやアセトンなどの有機溶媒が有機物として含まれているため、超純水の製造用水として回収再使用するにあたっては、排水中のこれらの有機物を除去することが必要である。
【0003】
通常、半導体洗浄排水には有機物がTOCとして1〜5mg/L程度含まれており、この有機物の除去手段としては生物処理方法が採用されている。
生物処理方法としては、処理水中への微生物の流出が比較的少ない方法、例えば有機物を分解する微生物による生物膜を担体上に形成担持した充填材を充填した生物反応槽中で半導体洗浄排水を処理する方法などが採用されることが多い。しかし、このような処理方法においても充填材より剥離した微量の微生物が処理水中に流出し、これらが超純水製造設備内で増殖してトラブルの原因となることが避けられないため、生物反応槽で処理された処理水は、一旦菌体分離器に導入して菌体等の微生物を除去した後に超純水製造設備に循環再使用されている(特公平6−45036)。
従来、この様な菌体分離方法としては、精密濾過(MF)膜モジュールまたは限外濾過(UF)膜モジュールなどの分離膜モジュールにより構成された菌体分離器に生物反応槽からの処理水を通液して菌体分離を行う方法が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の分離膜を用いた菌体分離器において、生物反応槽より流出する処理水から菌体を分離する半導体洗浄排水の回収方法には、次のような問題点があった。
すなわち、菌体分離器では、精密濾過膜または限外濾過膜などの膜によって菌体を分離するので、装置内で増殖した菌体や菌体が分泌する高分子有機物によって膜が閉塞し、通水流量が安定して得られない欠点があった。
そのため、菌体分離器では、膜の閉塞を極力防止するために、水や空気による頻繁な膜面洗浄が必須である。また、このような機械的な洗浄のほかに、膜モジュール内に増殖した菌体を殺菌するために、殺菌剤による殺菌操作を定期的に行わねばならない。更に、膜を閉塞させている物質を溶解除去するために、アルカリや界面活性剤などによる薬剤洗浄も必要である。
このように、従来の膜を用いた菌体分離方法では、極めて煩雑な作業を要していた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、半導体洗浄排水を生物処理した処理水を回収再利用するにあたり、処理水中に残留する菌体の簡単な分離方法について鋭意検討を行い、本発明に至った。
すなわち、本発明は、半導体洗浄排水を生物処理した後、超純水製造工程に供給するための半導体洗浄排水の回収方法において、該半導体洗浄排水を生物反応槽で生物処理して生成する処理水を、OH形陰イオン交換樹脂と接触処理させることよりなる半導体洗浄排水の回収方法及び該OH形陰イオン交換樹脂として強塩基性であり、またその架橋度が2〜10%のゲル型の陰イオン交換樹脂を使用することを要旨とするものである。
【0006】
本発明を図1に基づいてさらに具体的に説明する。図1は本発明に係わる半導体洗浄排水の回収方法の概略系統図の一例を示す。
図中、超純水製造システム(設備)それ自体は公知であり、原水の種類、製造された超純水の用途等に従って若干の違いはあるが、半導体の製造分野では、一般に前処理システム(凝集沈澱、濾過、殺菌剤注入等)、一次純水システム(膜濾過、脱気処理、イオン交換等)、二次純水(サブ)システム(イオン交換、膜濾過、紫外線酸化等)から構成され、これに排水処理システム及び/又は排水回収システムが付設されている。
【0007】
超純水製造システムで製造された超純水は半導体製造工程に供給され、半導体の洗浄に供される。洗浄後に排出される半導体洗浄排水は、生物処理装置に導入して該排水中に含まれている有機物を分解する。
生物処理装置としては、菌体の流出が比較的少ない生物反応槽方式の採用が主流となるが、この生物反応槽には、有機物を分解する菌体による生物膜を担体上に形成担持した粒状又は繊維状の充填材が装填されている。菌体を担持する担体としては、たとえば粒状又は繊維状活性炭、濾過砂、珪藻土などが使用されるが、粒状又は繊維状活性炭が好ましい。
生物反応槽での反応方式としては、固定層或いは流動層方式のいずれでも良いが、一般には固定層方式が採用される。また、生物反応槽への通水は、上向流、下向流、水平流のいずれでもよい。
【0008】
微生物膜を担体上に形成担持させる方法としては、微生物固定化の公知方法を採用することが出来、例えば、予め培養した当該排水中の有機物を効率良く分解する菌体を、必要に応じ栄養塩とともに当該排水に添加し、これを担体の充填層に循環通水し、担体表面に菌体を固定化し、微生物膜を形成させることが出来る。
生物処理の際、菌体の増殖による有機物の分解に必要な栄養塩が排水中に不足している場合には、該排水に栄養塩を添加し、混合した後に、これを生物処理装置に導入する。添加される栄養塩は、有機物の量に応じ、その有機物の炭素を資化するのに必要な量加えればよく、通常塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム等のリン酸塩が用いられ、BOD:N:P=100:5:1程度の割合で添加するのが好ましい。また、有機物の分解に必要な溶存酸素が不足する場合には、酸素を補給するために、生物処理装置の処理水の一部を分岐し、これを空気曝気した後に生物処理装置に供給する。
【0009】
本発明方法では生物処理装置から流出する処理水は、OH形陰イオン交換樹脂によって接触処理され、処理水に同伴する菌体が吸着除去される。
OH形陰イオン交換樹脂としては、強塩基性陰イオン交換樹脂あるいは弱塩基性陰イオン交換樹脂であっても菌体の除去はできるが、OH形強塩基性陰イオン交換樹脂を用いると一層良く菌体を除去できる。
OH形陰イオン交換樹脂として使用する陰イオン交換樹脂は、架橋度2〜10%のゲル型のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂、例えば、三菱化学(株)製:商品名ダイヤイオンSA10A、STA10等が適しているが、望ましくは架橋度2〜8%、更に望ましくは2〜5%のゲル型のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂を用いるのがよい。
また、強塩基性陰イオン交換樹脂はI型でもII型でも使用できるが、II型よりやや化学的安定性が高いI型が好ましい。
【0010】
陰イオン交換樹脂との接触処理は、実際には生物処理装置から流出する生物処理水をOH形強塩基性イオン交換樹脂を充填した充填塔に通水することにより接触処理される。その際、処理水は通常、通水線速度3〜60m/h、空間速度3〜50(L/h)Lー樹脂の条件で下向流に通水される。
本発明方法において生物処理された処理水に含まれる菌体がOH形の陰イオン交換樹脂により吸着、除去されるのは、処理水中の菌体が負のゼータ電位を有するため、正のゼータ電位を有する陰イオン交換樹脂にクーロン力によって付着するメカニズムによるものと考えられる。
【0011】
OH形陰イオン交換樹脂塔から流出する処理水中への菌体のリークの監視は、樹脂塔の処理水の出口付近に菌体を検出できる感度を有する微粒子計を設置することにより行い、処理水中にリークする微粒子数が所定の値に達した時点で通水を停止して、該イオン交換樹脂の再生処理を実施する。
ここで採用する微粒子計としては、OH形陰イオン交換樹脂床から流出する処理水中の菌種の寸法に応じて適切な検出感度を有する微粒子計を選定すれば良く、特に制限されるものではない。たとえば、OH形陰イオン交換樹脂床から流出する処理水中に同伴流出する菌種は、通常、直径0.2〜0.3μm、長さ1μm程度のシュードモナス菌が主体であるため、粒径0.2μm以上の微粒子を検出できる微粒子計を採用すれば良い。
超純水を製造するための用水としては、その超純水製造工程の循環する場所によっても異なるが、通常、イオン交換塔からの処理水中の微粒子数は多くとも100個/ml以下であることが望ましい。
【0012】
菌体の吸着能力が低下した陰イオン交換樹脂の再生処理は、通常の再生方法が適用され、例えばアルカリ水溶液(4%苛性ソーダ水溶液、液温40〜50℃)により再生処理を行なう。再生処理は陰イオン交換樹脂塔の中で実施しても、陰イオン交換樹脂を外部に取り出して別途再生処理しても良い。再生処理が終了した後、再びこの陰イオン交換樹脂は生物処理水の処理のために供される。
陰イオン交換樹脂に吸着された菌体が再生処理で脱離されるのは、再生液の苛性ソーダ水溶液にさらされた樹脂層内がアルカリ性となり、菌体の負のゼータ電位の絶対値と陰イオン交換樹脂の正のゼータ電位の絶対値とがともに小さくなり、菌体と陰イオン交換樹脂との間の静電的な吸引力が消失するためと考えられる。
【0013】
なお、OH形陰イオン交換樹脂床で処理する前の生物処理水中に、半導体洗浄排水或いは生物反応槽に添加された栄養塩に由来するアンモニウムイオン等の陽イオンが含まれる場合には、OH形陰イオン交換樹脂、例えば、三菱化学(株)製:商品名ダイヤイオンSA10AとH形陽イオン交換樹脂、例えば、三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK110とを混合して通水する混床式イオン交換樹脂床を用いたり、H形陽イオン交換樹脂塔をOH形陰イオン交換樹脂塔の前に設けてこれらを順に通水する方法を用いれば、陽イオンが除去され、しかも菌体も効率よく除去することができる。この場合、H形陽イオン交換樹脂としてはゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂、例えば、ダイヤイオンSK110、弱酸性陽イオン交換樹脂、例えば、三菱化学(株)製:商品名ダイヤイオンWK20を使用できるが、強酸性陽イオン交換樹脂が有利である。
【0014】
陰イオン交換樹脂で処理して得られた処理水は、TOCが殆ど除去され高純度であるので、そのまま超純水製造システムに循環することができるが、必要に応じ更に逆浸透膜、限外濾過膜等の膜分離処理を施してもよい。
処理水を循環する場合、通常、陰イオン交換樹脂塔は生物反応槽に付設されることが多いので、生物反応槽の設置される場所によって超純水製造システムに循環する場所も異なり、例えば前処理システムの原水入口、又は前処理システムと一次純水システムの間等に処理水を循環することができる。
【0015】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0016】
実施例
図2に従い、半導体洗浄排水を生物処理した後、その処理水をOH形陰イオン交換樹脂塔に通水し、菌体の除去テストを行った。
まず、半導体洗浄排水を、容量2000Lの塩化ビニル樹脂製の被処理水槽に供給し貯槽する。水温20〜25℃の半導体洗浄排水は、被処理水槽から塩化ビニル樹脂製のポンプにより、流量54L/hの割合で生物反応槽に供給する。
生物反応槽は、塩化ビニル樹脂製の直径200mm、高さ1500mmの円筒であり、筒内に層高970mmに30Lの粒状活性炭(三菱化学(株)製:商品名ダイヤホープ006N)を充填し、この充填層にあらかじめ半導体洗浄排水を約1ケ月間通水して充填材の活性炭表面にシュードモナス菌を主体とする生物膜を形成させたものを菌体として使用した。
【0017】
一方、生物反応槽には栄養塩槽から、塩化ビニル樹脂製のポンプにより、栄養塩水溶液を流量6L/hの割合で供給した。
その際、栄養塩水溶液と被処理水とを生物反応槽の入口配管内で混合し、この混合液を生物反応槽に導入した。
栄養塩水溶液は、栄養塩槽において、NH4Cl 200 μg-N/L、K2HPO4 80 μg-P/L、の2種類の塩を超純水に所定の濃度に溶解して調製した。
生物反応槽は、通水量:60L/h、通水線速度:1.9m/h、通水空間速度:2.0(L/h)L−活性炭の条件で操作した。
生物反応槽から流出する生物処理液は、OH形陰イオン交換樹脂塔に供給した。陰イオン交換樹脂塔としては、アクリル樹脂製の直径150mm,高さ1500mmの塔にOH形強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、商品名ダイヤイオンSAT10:ゲル型,I型、架橋度8%)12Lを層高680mmに充填したものを使用した。
【0018】
陰イオン交換樹脂塔での処理操作は、通水流量60L/h、通水線速度3.4m/h、通水空間速度5.0(L/h)L−樹脂で行った。
陰イオン交換樹脂塔の出口近くに微粒子計を設け、流出液中の微粒子数を監視した。通水を開始してから48時間後に100個/mlとなったので、その時点で、陰イオン交換樹脂塔への通水を中断し、イオン交換樹脂を常法により、4%NaOH水溶液29L/回を用いて再生を行った。再生後の樹脂塔に再び生物処理水を通液し、その操作を繰り返し実施した。
【0019】
処理結果を第1表に示す。
なお、MF値は、試料水1.0 L を孔径0.45μm、直径47mmのメンブレンフィルタによって-67 kPaの圧力で吸引濾過するのに要する時間(秒)である。濾過時間は水温の影響を受けるので25℃に換算する。MF値は、菌体を含む水中の微量懸濁物質濃度の指標であり、この値が小さいほど菌体を含む水中の微量懸濁物質の濃度は低いことを意味している。
【0020】
比較例
実施例と同じ半導体洗浄排水の生物処理水を、精密濾過膜モジュールによって処理した。処理に用いた精密濾過膜モジュールの仕様と処理条件を下記に示す。
精密濾過膜モジュール
三菱レイヨン(株)製 ステラポアーG UMF-824WI(商品名)
材質及び形状 ポリエチレン多孔質中空糸膜
孔径 0.1μm
寸法 110 mmφ×830 mmH, 有効膜面積 8 m2
通水流量 60 L/h
逆洗頻度 1回/60 分, 逆洗時間 3 分
処理結果を第1表に示す。
【0021】
【表1】
Figure 0003746803
【0022】
上記実施例及び比較例から明らかなように、本発明方法によれば半導体洗浄排水中の有機物、有機物の分解過程で増殖した菌体を効果的に除去することができる。
【0023】
【発明の効果】
本発明の半導体洗浄排水中の有機物除去方法によれば、半導体洗浄排水中の有機物を生物処理した際に処理水中に残留する剥離した菌体を、繁殖させることなく効率よく除去できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の半導体洗浄排水の回収方法の概略系統図の一例である。
【図2】図2は実施例に用いた生物処理装置の系統図である。

Claims (3)

  1. 半導体洗浄排水を生物処理した後、超純水製造工程に供給するための半導体洗浄排水の回収方法において、該半導体洗浄排水を生物反応槽で生物処理して生成する処理水を、OH形陰イオン交換樹脂と接触処理させることを特徴とする半導体洗浄排水の回収方法。
  2. OH形陰イオン交換樹脂がOH形強塩基性陰イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1記載の半導体洗浄排水の回収方法。
  3. OH形陰イオン交換樹脂として使用する陰イオン交換樹脂が架橋度2〜10%のゲル型のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1記載の半導体洗浄排水の回収方法。
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