JP3746712B2 - 拡散物質の拡散状況予測方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は拡散物質の拡散状況予測方法に関するものである。本発明は、拡散源(例えば放射性物質使用施設や煙突)から大気中に排出された物質(例えば放射性物質や煙)が、大気中にどのように拡散していくかを予測して、各地点で時々刻々変化していく物質の濃度を予測するようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
放射性物質を扱う施設から、事故により放射性物質が外部に排出された場合には、放射性物質の拡散範囲や各地点での放射性物質の濃度を予測し、放射性物質による危険を受ける恐れがある地域を予測する拡散状況予測方法が開発されつつある。
【0003】
この拡散状況予測方法は、放射性物質の拡散状況を予測する場合のみならず、例えば工場の煙突から排出されたガス体(煙)が大気中を拡散した場合において、各地点におけるガス体濃度を計算する場合や、環境アセスメントの解析における、拡散物質の拡散状況を解析する場合にも適用することができる。
【0004】
大気中に排出された物質の拡散状況を、演算により予測するには、次の2つの演算をする必要がある。
(1)気体状況予測演算
(2)拡散状況予測演算
【0005】
上記(1)の気体状況予測演算とは、気象GPV(Grid Point Value)データやAMEDAS等の気象観測データを基にして、大気現象を解析する偏微分方程式を演算することにより、事象発生(例えば放射性物質の外部排出)時点から所定時間先の時点まで、一定時間刻み毎の時点における、多数の評価地点(格子点位置)の風向・風速を演算により求める、つまり、一定時間刻み毎の風速場データを表す気体状況を求める演算をいう。
【0006】
また、上記(2)の拡散状況予測演算とは、放出された拡散物質の濃度や性状ならびに前記風速場データを、物質(粒子)の拡散状態を演算する拡散方程式に代入することにより、各時間刻み毎の各格子点位置における拡散物質の濃度を求める演算をいう。
【0007】
<気体状況予測演算の説明>
まず、気体状況予測演算の概略を説明する。気象観測データ、例えば気象GPVデータは、気象業務支援センターから12時間ごとに配信される。この気象GPVデータは、地球の表面を南北方向に沿い伸びると共に東西方向の相互の離間距離が規定距離(2Km)となっている複数の緯度仮想線と、地球の表面を東西方向に沿い伸びると共に南北方向の相互の離間距離が規定距離(2Km)となっている複数の経度仮想線とが交差する地点(これを「親格子点位置」と称する)における、気象データ(風速ベクトル(風向,風速),気圧,温度,水分量)を示すものである。しかも、気象GPVデータは、各親格子点位置の気象データとして、配信時点,配信時点から3時間先、6時間先,9時間先,というように3時間間隔の51時間分のデータが一括して配信される。
【0008】
上述した気象GPVデータの親格子点位置の気象データは、空間的には親格子点位置の相互間距離が2Kmと広く、しかも、時間的には3時間間隔と長いため、この親格子点位置の気象データにより示される気体状況(風向,風速)データ即ち風速場データのみでは、拡散物質の拡散濃度を演算することはできない。
【0009】
このため、空間的に粗く、且つ、時間的にも粗い気象観測データから、空間的にも時間的にも密な気体状況(風向,風速等)を、大気現象を解析する偏微分方程式を演算することにより求める必要がある。
【0010】
そこで、計算すべき計算領域(地球の表面のなかで予め設定した特定領域)に設定された親格子点位置の間に、子格子点位置を設定する。子格子点位置は、地球の表面を南北方向に沿い伸びると共に東西方向の相互の離間距離が一定距離(50m)となっている複数の緯度仮想線と、地球の表面を東西方向に沿い伸びると共に南北方向の相互の離間距離が一定距離(50m)となっている複数の経度仮想線とが交差する地点に配置されている。
【0011】
そして、演算開始から一定時間刻み毎(例えば20秒間隔毎)の子格子点位置及び親格子点位置の気象データを、大気現象を解析する偏微分方程式を差分解析演算することにより求める。大気現象を解析する偏微分方程式としては、コロラド州立大学とMission Research社で開発されたRAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードで示されている、風速場解析の基本方程式を用いることができる。
【0012】
このRAMSコードで示されている風速場解析の基本方程式は、運動方程式,熱エネルギ方程式,水分の拡散方程式及び連続の式からなり、次のような式(1)〜(6)で表される。
【0013】
【数1】
Figure 0003746712
【0014】
このようにRAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードで示されている風速場解析の基本方程式を演算して、演算開始から一定時間刻み毎(例えば20秒間隔毎)の、各親格子点位置における気象データと、各子格子点位置における気象データを示す風向ベクトルデータ(風速場データ)が得られる。
【0015】
<拡散状況予測演算の概要説明>
次に拡散状況予測演算について説明する。拡散状況予測演算をするには、コロラド州立大学とMission Research社で開発されたHYPACT(Hybrid Particle Concentration Transport Model )コードに、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の各親格子点位置及び各子格子点位置の風速場データを次々に代入して、拡散状況の予測演算をする。拡散状況の予測演算の具体例としては、Lagrangian粒子拡散モデルを採用している。
【0016】
このLagrangian粒子拡散モデルでは、次に示す式(7)〜(9)を用いて粒子の拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させる。
【0017】
【数2】
Figure 0003746712
【0018】
ここで、HYPACT(Hybrid Particle Concentration Transport Model )コードに、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の各親格子点位置及び各子格子点位置の風速場データを次々に代入して、拡散状況の予測演算をした具体例を説明する。
【0019】
この演算をするためには、排出源から大気中に排出される物質を多数の粒子Pに置換し、排出源の位置から演算周期Δt(ここではΔt=20秒)毎にN個(ここでは20個)の粒子Pが発生すると設定する。
【0020】
つまり、演算開始時点で20個の粒子Pを発生させ、演算開始時点から20秒後に20個の粒子を発生させ、演算開始時点から40秒後に20個の粒子を発生させるというように、演算周期Δt(20秒)毎に20個の粒子を発生させていく。そして演算周期Δt(20秒)毎に、各粒子Pの位置(空間座標)を演算により求める。
【0021】
なお、演算開始時点(時刻0秒)において発生させた20個の粒子Pを、P00 01,P00 02,P00 03,P00 04,P00 05,P00 06,P00 07,P00 08,P00 09,P00 10,P00 11,P00 12,P00 13,P00 14,P00 15,P00 16,P00 17,P00 18,P00 19,P00 20として示し、
演算開始時点から20秒後において発生させた20個の粒子Pを、P20 01,P20 02,P20 03,P20 04,P20 05,P20 06,P20 07,P20 08,P20 09,P20 10,P20 11,P20 12,P20 13,P20 14,P20 15,P20 16,P20 17,P20 18,P20 19,P20 20として示し、
演算開始時点から40秒後において発生させた20個の粒子Pを、P40 01,P40 02,P40 03,P40 04,P40 05,P40 06,P40 07,P40 08,P40 09,P40 10,P40 11,P40 12,P40 13,P40 14,P40 15,P40 16,P40 17,P40 18,P40 19,P40 20として示す。
つまり、符号「P」の後の下段に示した数字が、演算開始時点からの時間であり、符号「P」の後の上段に示した数字が、その時点において発生させた20個の粒子を区別するものである。他の時点において発生させた粒子も同様に表記する。
【0022】
まず、演算開始時点においては、排出源Sから20個の粒子P00 01,P00 02,P00 03,P00 04,P00 05,P00 06,P00 07,P00 08,P00 09,P00 10,P00 11,P00 12,P00 13,P00 14,P00 15,P00 16,P00 17,P00 18,P00 19,P00 20が発生する。
【0023】
演算開始時点から20秒後においては、図19に示す排出源Sから新たに20個の粒子P20 01,P20 02,P20 03,P20 04,P20 05,P20 06,P20 07,P20 08,P20 09,P20 10,P20 11,P20 12,P20 13,P20 14,P20 15,P20 16,P20 17,P20 18,P20 19,P20 20が発生する。
このとき、演算開始時点にて発生した粒子P00 01,P00 02,P00 03,P00 04,P00 05,P00 06,P00 07,P00 08,P00 09,P00 10,P00 11,P00 12,P00 13,P00 14,P00 15,P00 16,P00 17,P00 18,P00 19,P00 20は、排出源Sから離れた位置にまで達すると共に拡散している。
各粒子Pの位置は、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子Pの拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求める。
【0024】
演算開始時点から40秒後においては、図20に示す排出源Sから新たに20個の粒子P40 01,P40 02,P40 03,P40 04,P40 05,P40 06,P40 07,P40 08,P40 09,P40 10,P40 11,P40 12,P40 13,P40 14,P40 15,P40 16,P40 17,P40 18,P40 19,P40 20が発生する。
このとき、演算開始時点にて発生した粒子P00 01,P00 02,P00 03,P00 04,P00 05,P00 06,P00 07,P00 08,P00 09,P00 10,P00 11,P00 12,P00 13,P00 14,P00 15,P00 16,P00 17,P00 18,P00 19,P00 20は、排出源Sから更に離れた位置にまで達すると共に更に拡散している。
また、演算開始時点から20秒後において発生した20個の粒子P20 01,P20 02,P20 03,P20 04,P20 05,P20 06,P20 07,P20 08,P20 09,P20 10,P20 11,P20 12,P20 13,P20 14,P20 15,P20 16,P20 17,P20 18,P20 19,P20 20は、排出源Sから離れた位置にまで達すると共に拡散している。
各粒子Pの位置は、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子Pの拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求める。
【0025】
演算開始時点から60秒後においては、図21に示す排出源Sから新たに20個の粒子P60 01,P60 02,P60 03,P60 04,P60 05,P60 06,P60 07,P60 08,P60 09,P60 10,P60 11,P60 12,P60 13,P60 14,P60 15,P60 16,P60 17,P60 18,P60 19,P60 20が発生する。
このとき、演算開始時点にて発生した粒子P00 01,P00 02,P00 03,P00 04,P00 05,P00 06,P00 07,P00 08,P00 09,P00 10,P00 11,P00 12,P00 13,P00 14,P00 15,P00 16,P00 17,P00 18,P00 19,P00 20は、排出源Sから更に離れた位置にまで達すると共に更に拡散している。
また、演算開始時点から20秒後において発生した20個の粒子P20 01,P20 02,P20 03,P20 04,P20 05,P20 06,P20 07,P20 08,P20 09,P20 10,P20 11,P20 12,P20 13,P20 14,P20 15,P20 16,P20 17,P20 18,P20 19,P20 20は、排出源Sから更に離れた位置にまで達すると共に更に拡散している。
また、演算開始時点から40秒後において発生した20個の粒子P40 01,P40 02,P40 03,P40 04,P40 05,P40 06,P40 07,P40 08,P40 09,P40 10,P40 11,P40 12,P40 13,P40 14,P40 15,P40 16,P40 17,P40 18,P40 19,P40 20は、排出源Sから離れた位置に達すると共に拡散している。
各粒子Pの位置は、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子Pの拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求める。
【0026】
上述したように、演算周期Δt(20秒)毎に20個の粒子を次々と発生させていくと共に、各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求めていく。
【0027】
そして、演算開始から所定時間経過したときにおいて、排出源Sから所定距離離れた単位空間(予測地域の単位体積)に、図22に示すように、粒子Pが存在していた場合、この粒子の数から、この単位空間における物質の濃度を計算することができる。
【0028】
即ち、排出源Sにおいて、1秒間にQ(m3 )の物質が排出されているとすると、粒子Pは20秒間に20個(換算すると1秒間に1個)発生しているので、各粒子Pは、1個につきQ/1(m3 )の排出源強度を有していることになる。そこで、この単位空間に存在する粒子Pの数に排出源強度Q/1(m3 )を掛けることにより、この単位空間における物質の濃度を求めることができる。
【0029】
上述した具体例を一般的に示すと次のようになる。排出源から排出されるガス体などの物質を多数の粒子で置換する。そして、排出源から毎秒N個の粒子を放出する。この場合、計算上での粒子の排出量はN/sec である。実際の排出源から排出される物質の排出量がQ(m3 /sec )である場合、各粒子はQ/N(m3 )の排出源強度を有することになる。
【0030】
各粒子ごとに運動方程式を非定常に数値計算することによって、即ち、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた風速場データを、粒子の運動方程式であるHYPACT(Hybrid Particle Concentration Transport Model )コードに代入し、Lagrangian粒子拡散モデルを用いて各粒子Pの拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることによって、各粒子の座標を非定常的に決定することができる。つまり、各粒子の空間座標を、演算周期Δt毎に決定することができる。なお、Lagrangian粒子モデルにより求めてデータ記録装置に記録される各粒子のデータは、各粒子の空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))だけである。
【0031】
粒子(物質)の運動方程式であるHYPACTコードは、粒子の移流、拡散、重力沈降現象を表現するものである。ここにおいて、粒子の移流現象は、大気の時間平均速度に依存し、拡散現象は、大気の乱流速度に依存し、重力沈降は、粒子の質量、重力加速度、空気の粘性係数などに依存する(図23参照)
【0032】
空気中の単位体積中の粒子個数がn個である場合、この空間中のガス濃度(物質濃度)はn×Q/N(ガスm3 /空気m3 )となる。つまり、この単位空間に存在する粒子数nに、各粒子が有している排出源強度Q/Nを掛けたものとなる。
【0033】
【発明が解決しようとする課題】
この環境濃度(単位体積における物質濃度)は、排出される物質の排出量の時間変化に依存する。このため、排出量が時間と共に変化する条件では、拡散計算は、各排出条件毎に実施する必要がある。したがって、想定される排出条件が多い場合には、排出量ケース分の拡散計算を実施する必要があり、結果として、膨大な計算時間が必要である。
【0034】
即ち、図24に示すように、例えば排出源S(例えば煙突)からガス(物質)が排出されているときに、風下のある地点Fにおけるガス濃度の時間変化は、排出源Sから排出される物質の時間変化に応じて変化する。
【0035】
つまり、図25(a)のように物質の排出量が時間と共に変化する場合には、地点Fにおける物質の濃度は、図25(b)のように時間と共に変化し、図26(a)のように物質の排出量が一定の場合には、地点Fにおける物質の濃度は、図26(b)のように一定値にまで上昇してから一定濃度を維持し、図27(a)のように物質が瞬間的に排出される場合には、地点Fにおける物質の濃度は、図27(b)のように一時的に上昇してから零になる。
【0036】
このように、物質の排出量が時間と共に変化する場合には、粒子の発生個数を物質の排出量に合わせて時間と共に変化させる必要がある。そして、このように時間の経過と共に発生個数を変化させた粒子の移動位置を求め、この粒子の移動位置から物質の濃度計算をすることになる。したがって、排出量の変化が異なる各ケースごとに、拡散計算をしておかなければならず、膨大な計算結果が必要になるのである。
【0037】
例えば放射性物質を扱う施設にて放射性物質が外部に排出された事故が発生した場合には、極めて多数の物質(例えば100種類程度の物質)が排出される。しかも、各物質毎にその排出量が時間に応じてそれぞれ異なっている。したがって、各物質毎に、粒子の発生個数を物質の排出量に合わせて時間と共に変化させ、このように発生個数を変化させた粒子の移動位置を求め、この粒子の移動位置から物質の濃度計算をすることになる。したがって、この場合には、例えば100種類の物質に対応した100種類の拡散計算をしておく必要がある。
【0038】
本発明は、上記従来技術に鑑み、多種類の物質が排出されると共に、各物質の排出量が時間と共に変化する場合であっても、物質の拡散状況を短時間で予測演算することができる拡散物質の拡散状況予測方法及び拡散物質の拡散状況予測システムを提供することを目的とする。
【0039】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の拡散物質の拡散状況予測方法は、拡散物質の拡散状況をコンピュータによる演算処理により求める拡散物質の拡散状況予測方法であって、
前記コンピュータは、
排出源から大気中に排出された物質が大気中を拡散していく状況を予測するため、前記物質を多数の粒子に置換して、排出源の位置から演算周期毎に予め設定した個数の粒子が発生すると設定すると共に、
排出源の位置を含む領域内の多数の地点における、時間の経過に沿って変化する風向・風速を示す風速場データを、粒子の拡散状態を演算する拡散方程式に代入することにより、各粒子の拡散速度を求め、この拡散速度から各粒子が存在する空間位置を示す空間座標を各演算周期毎に求めると共に、前記粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間を計測し、各演算周期における各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間を対応させてデータ記録装置に記録しておき、
排出された物質の排出後経過時間の時間経過に伴う排出量の変化に比例させて、排出後経過時間の時間経過に沿う粒子に対する排出源強度データを設定しておき、
前記データ記録装置に記録していた、各演算周期毎の各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間を読み出すと共に、読み出した排出後経過時間を参照して各粒子が発生した時点を求め、この時点における各粒子の排出源強度を前記排出源強度データから求め、前記データ記録装置に、各演算周期毎の各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間と排出源強度を対応させて再記録させ、
所定の演算周期における所定の領域の前記物質の濃度は、当該所定の演算周期における当該所定の領域に存在する全ての粒子の排出源強度を積算することにより求めることを特徴とする。
【0040】
また本発明の拡散物質の拡散状況予測方法は、拡散物質の拡散状況をコンピュータによる演算処理により求める拡散物質の拡散状況予測方法であって、
前記コンピュータは、
複数の排出源から大気中に排出された物質が大気中を拡散していく状況を予測するため、前記物質を多数の粒子に置換して、各排出源の位置から演算周期毎に予め設定した個数の粒子がそれぞれ発生すると設定すると共に、
排出源の位置を含む領域内の多数の地点における、時間の経過に沿って変化する風向・風速を示す風速場データを、粒子の拡散状態を演算する拡散方程式に代入することにより、各粒子の拡散速度を求め、この拡散速度から各粒子が存在する空間位置を示す空間座標を各演算周期毎に求めると共に、前記粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間を計測し、各演算周期における各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間と排出源を識別する排出源識別情報とを対応させてデータ記録装置に記録しておき、
各排出源から排出された物質の排出後経過時間の時間経過に伴う排出量の変化に比例させて、排出後経過時間の時間経過に沿う粒子に対する排出源強度データを各排出源毎にそれぞれ設定しておき、
前記データ記録装置に記録していた、各演算周期毎の各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間と各粒子の排出源識別情報を読み出すと共に、読み出した排出後経過時間を参照して各粒子が発生した時点を求め、読み出した排出源識別情報を参照して粒子が発生した時点における各粒子の排出源強度をその粒子が発生した排出源に対応した前記排出源強度データから求め、前記データ記録装置に、各演算周期毎の各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間と排出源強度を対応させて再記録させ、
所定の演算周期における所定の領域の前記物質の濃度は、当該所定の演算周期における当該所定の領域に存在する全ての粒子の排出源強度を積算することにより求めることを特徴とする。
【0041】
また本発明の拡散物質の拡散状況予測方法では、
前記排出源強度データは、前記排出源から実際に排出される物質の濃度を実測することにより求めて設定されたり、
前記排出源強度データは、前記排出源の周囲の観測点で実測した物質の濃度の時間変化を基に設定されることを特徴とする。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0044】
<第1の実施の形態(排出源が1つの場合)>
本発明の第1の実施の形態にかかる拡散物質の拡散状況予測方法を、図1〜図10を参照しつつ説明する。
【0045】
第1の実施の形態での第1ステップ(計算フロー図である図1参照)では次のような処理をする。即ち、排出源S(粒子の拡散状況を示す図2〜図4参照)から実際に排出される物質の排出量が一定であっても、時間経過に沿い排出量が変化する場合であっても、まずは物質の排出量Q(m3 /sec )を一定値(=1.0)として、従来のLagrangian粒子拡散モデルを使用して、粒子の挙動を数値計算する。更に、各粒子が有する情報である空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))の他に、粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間Ti(t)を、各演算周期Δt毎に、データ記録装置1に記録する。
【0046】
この第1ステップの処理を、具体的に説明すると次のようになる。この演算では、演算周期Δt(ここではΔt=20秒)毎に、20個の粒子を発生させると共に、演算周期Δt(20秒)毎に粒子Pの位置(空間座標)を演算する。
【0047】
まず、演算開始時点においては、排出源Sから20個の粒子P00 01,P00 02,P00 03,P00 04,P00 05,P00 06,P00 07,P00 08,P00 09,P00 10,P00 11,P00 12,P00 13,P00 14,P00 15,P00 16,P00 17,P00 18,P00 19,P00 20が発生する。
【0048】
演算開始時点から20秒後においては、図2に示す排出源Sから新たに20個の粒子P20 01,P20 02,P20 03,P20 04,P20 05,P20 06,P20 07,P20 08,P20 09,P20 10,P20 11,P20 12,P20 13,P20 14,P20 15,P20 16,P20 17,P20 18,P20 19,P20 20が発生する。
このとき、演算開始時点にて発生した粒子P00 01,P00 02,P00 03,P00 04,P00 05,P00 06,P00 07,P00 08,P00 09,P00 10,P00 11,P00 12,P00 13,P00 14,P00 15,P00 16,P00 17,P00 18,P00 19,P00 20は、排出源Sから離れた位置にまで達すると共に拡散している。
各粒子P00 01〜P00 20の位置は、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子P00 01〜P00 20の拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求める。
【0049】
更に、演算開始時点にて発生した粒子P00 01〜P00 20は、演算開始時点(粒子を最初に発生させた時点)から20秒が経過している。そこで、各粒子P00 01〜P00 20の各空間座標(xi(t=20),yi(t=20),zi(t=20))に、排出後経過時間Ti(t)=20秒をそれぞれ対応させてデータ記録装置1に記録する(図1,図2参照)。
【0050】
演算開始時点から40秒後においては、図3に示す排出源Sから新たに20個の粒子P40 01,P40 02,P40 03,P40 04,P40 05,P40 06,P40 07,P40 08,P40 09,P40 10,P40 11,P40 12,P40 13,P40 14,P40 15,P40 16,P40 17,P40 18,P40 19,P40 20が発生する。
このとき、演算開始時点にて発生した粒子P00 01,P00 02,P00 03,P00 04,P00 05,P00 06,P00 07,P00 08,P00 09,P00 10,P00 11,P00 12,P00 13,P00 14,P00 15,P00 16,P00 17,P00 18,P00 19,P00 20は、排出源Sから更に離れた位置にまで達すると共に更に拡散している。
また、演算開始時点から20秒後において発生した20個の粒子P20 01,P20 02,P20 03,P20 04,P20 05,P20 06,P20 07,P20 08,P20 09,P20 10,P20 11,P20 12,P20 13,P20 14,P20 15,P20 16,P20 17,P20 18,P20 19,P20 20は、排出源Sから離れた位置にまで達すると共に拡散している。
各粒子P00 01〜P00 20,P20 01〜P20 20の位置は、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子P00 01〜P00 20,P20 01〜P20 20の拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求める。
【0051】
更に、演算開始時点にて発生した粒子P00 01〜P00 20は、演算開始時点(粒子を最初に発生させた時点)から40秒が経過している。そこで、各粒子P00 01〜P00 20の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))に、排出後経過時間Ti(t)=40秒をそれぞれ対応させてデータ記録装置1に記録する(図1,図3参照)。
また、演算開始時点から20秒後に発生した粒子P20 01〜P20 20は、演算開始時点(粒子を最初に発生させた時点)から20秒が経過している。そこで、各粒子P20 01〜P20 20の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))に、排出後経過時間Ti(t)=20秒をそれぞれ対応させてデータ記録装置1に記録する(図1,図3参照)。
【0052】
演算開始時点から60秒後においては、図4に示す排出源Sから新たに20個の粒子P60 01,P60 02,P60 03,P60 04,P60 05,P60 06,P60 07,P60 08,P60 09,P60 10,P60 11,P60 12,P60 13,P60 14,P60 15,P60 16,P60 17,P60 18,P60 19,P60 20が発生する。
このとき、演算開始時点にて発生した粒子P00 01,P00 02,P00 03,P00 04,P00 05,P00 06,P00 07,P00 08,P00 09,P00 10,P00 11,P00 12,P00 13,P00 14,P00 15,P00 16,P00 17,P00 18,P00 19,P00 20は、排出源Sから更に離れた位置にまで達すると共に更に拡散している。
また、演算開始時点から20秒後において発生した20個の粒子P20 01,P20 02,P20 03,P20 04,P20 05,P20 06,P20 07,P20 08,P20 09,P20 10,P20 11,P20 12,P20 13,P20 14,P20 15,P20 16,P20 17,P20 18,P20 19,P20 20は、排出源Sから更に離れた位置にまで達すると共に更に拡散している。
また、演算開始時点から40秒後において発生した20個の粒子P40 01,P40 02,P40 03,P40 04,P40 05,P40 06,P40 07,P40 08,P40 09,P40 10,P40 11,P40 12,P40 13,P40 14,P40 15,P40 16,P40 17,P40 18,P40 19,P40 20は、排出源Sから離れた位置に達すると共に拡散している。
各粒子P00 01〜P00 20,P20 01〜P20 20,P40 01〜P40 20の位置は、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子P00 01〜P00 20,P20 01〜P20 20,P40 01〜P40 20の拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求める。
【0053】
更に、演算開始時点にて発生した粒子P00 01〜P00 20は、演算開始時点(粒子を最初に発生させた時点)から60秒が経過している。そこで、各粒子P00 01〜P00 20の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))に、排出後経過時間Ti(t)=60秒をそれぞれ対応させてデータ記録装置1に記録する(図1,図4参照)。
また、演算開始時点から20秒後に発生した粒子P20 01〜P20 20は、演算開始時点(粒子を最初に発生させた時点)から40秒が経過している。そこで、各粒子P20 01〜P20 20の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))に、排出後経過時間Ti(t)=40秒をそれぞれ対応させてデータ記録装置1に記録する(図1,図4参照)。
また、演算開始時点から40秒後に発生した粒子P40 01〜P40 20は、演算開始時点(粒子を最初に発生させた時点)から20秒が経過している。そこで、各粒子P40 01〜P40 20の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))に、排出後経過時間Ti(t)=20秒をそれぞれ対応させてデータ記録装置1に記録する(図1,図4参照)。
【0054】
上述したように、演算周期Δt(20秒)毎に20個の粒子を次々と発生させていくと共に、各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求めていく。また、各演算周期Δtにおける排出後経過時間Ti(t)を計測しておき、各演算周期における各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間を対応させて、データ記録装置1に次々と記録していく。
【0055】
次に第2ステップ(図1参照)の処理を、具体的に説明する。前述した第1ステップでは、物質の排出量Q(m3 /sec )を一定値(=1.0)として数値計算を進めていた。しかし、実際の排出源Sから排出される物質の排出量は、図5に示すように排出後経過時間Ti(t)の経過と共に変化することが多い。そこで、このように排出量が時間と共に変化する場合には、この図5に示す物質の排出量変化に応じた、図6に示すような、排出後経過時間Ti(t)の時間経過に沿う粒子に対する排出源強度を示すデータを設定する。
【0056】
図6における排出源強度データでは、例えば、排出後経過時間Ti(t)が0秒,20秒,60秒では、排出源強度はそれぞれ0.3,0.9,0.6となる。
【0057】
次に、データ記録装置1に記録している、各演算周期毎の、各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間Ti(t)を読み出すと共に、各粒子毎にその排出後経過時間Ti(t)を参照してその粒子が発生した時点を求め、この時点における各粒子の排出源強度を図6に示す排出源強度データから求める。更に、各演算周期毎に、各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間Ti(t)と排出源強度とを対応させて、データ記憶装置1に再記録する。
【0058】
具体的に説明すると、排出後経過時間Ti(t)が20秒のとき(第1回目の演算周期)のときのデータとしては、各粒子P00 01〜P00 20の各空間座標(xi(t=20),yi(t=20),zi(t=20))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒が対応してデータ記録装置1に記録されている(図2参照)。
【0059】
そこで、この各粒子P00 01〜P00 20の各空間座標(xi(t=20),yi(t=20),zi(t=20))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒を読み出し、現在の時刻t=20秒から排出後経過時間Ti(t)=20秒を減算することにより、各粒子P00 01〜P00 20が発生した時点である排出後経過時間Ti(t)=0秒を求める。そして、図6に示す排出強度データから、粒子P00 01〜P00 20が発生したときの排出後経過時間Ti(t)=0秒のときの排出源強度0.3を求める。
【0060】
そして、各粒子P00 01〜P00 20の各空間座標(xi(t=20),yi(t=20),zi(t=20))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒と、各粒子P00 01〜P00 20の排出源強度0.3とを対応させて、データ記録装置1に再記録する。
【0061】
また、排出後経過時間Ti(t)が40秒のとき(第2回目の演算周期)のときのデータとしては、
各粒子P00 01〜P00 20の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))と、排出後経過時間Ti(t)=40秒、並びに、
各粒子P20 01〜P20 20の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒が対応してデータ記録装置1に記録されている(図3参照)。
【0062】
そこで、各粒子P00 01〜P00 20の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))と、排出後経過時間Ti(t)=40秒を読み出し、現在の時刻t=40秒から排出後経過時間Ti(t)=40秒を減算することにより、各粒子P00 01〜P00 20が発生した時点である排出後経過時間Ti(t)=0秒を求める。そして、図6に示す排出強度データから、粒子P00 01〜P00 20が発生したときの排出後経過時間Ti(t)=0秒のときの排出源強度0.3を求める。
同様に、各粒子P20 01〜P20 20の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒を読み出し、現在の時刻t=40秒から排出後経過時間Ti(t)=20秒を減算することにより、各粒子P20 01〜P20 20が発生した時点である排出後経過時間Ti(t)=20秒を求める。そして、図6に示す排出強度データから、粒子P20 01〜P20 20が発生したときの排出後経過時間Ti(t)=20秒のときの排出源強度0.5を求める。
【0063】
そして、各粒子P00 01〜P00 20の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))と、排出後経過時間Ti(t)=40秒と、各粒子P00 01〜P00 20の排出源強度0.3とを対応させて、データ記録装置1に再記録する。
また各粒子P20 01〜P20 20の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒と、各粒子P20 01〜P20 20の排出源強度0.5とを対応させて、データ記録装置1に再記録する。
【0064】
また、排出後経過時間Ti(t)が60秒のとき(第3回目の演算周期)のときのデータとしては、
各粒子P00 01〜P00 20の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=60秒、及び、
各粒子P20 01〜P20 20の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=40秒、並びに、
各粒子P40 01〜P40 20の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒、が対応してデータ記録装置1に記録されている(図4参照)。
【0065】
そこで、各粒子P00 01〜P00 20の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=60秒を読み出し、現在の時刻t=60秒から排出後経過時間Ti(t)=60秒を減算することにより、各粒子P00 01〜P00 20が発生した時点である排出後経過時間Ti(t)=0秒を求める。そして、図6に示す排出強度データから、粒子P00 01〜P00 20が発生したときの排出後経過時間Ti(t)=0秒のときの排出源強度0.3を求める。
同様に、各粒子P20 01〜P20 20の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=40秒を読み出し、現在の時刻t=60秒から排出後経過時間Ti(t)=40秒を減算することにより、各粒子P20 01〜P20 20が発生した時点である排出後経過時間Ti(t)=20秒を求める。そして、図6に示す排出強度データから、粒子P20 01〜P20 20が発生したときの排出後経過時間Ti(t)=20秒のときの排出源強度0.5を求める。
同様に、各粒子P40 01〜P40 20の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒を読み出し、現在の時刻t=60秒から排出後経過時間Ti(t)=20秒を減算することにより、各粒子P40 01〜P40 20が発生した時点である排出後経過時間Ti(t)=40秒を求める。そして、図6に示す排出強度データから、粒子P40 01〜P40 20が発生したときの排出後経過時間Ti(t)=40秒のときの排出源強度0.9を求める。
【0066】
そして、各粒子P00 01〜P00 20の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=60秒と、各粒子P00 01〜P00 20の排出源強度0.3とを対応させて、データ記録装置1に再記録する。
また各粒子P20 01〜P20 20の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=40秒と、各粒子P20 01〜P20 20の排出源強度0.5とを対応させて、データ記録装置1に再記録する。
また各粒子P40 01〜P40 20の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒と、各粒子P40 01〜P40 20の排出源強度0.9とを対応させて、データ記録装置1に再記録する。
【0067】
以降の演算周期においても、同様な処理演算をして、各粒子の各空間座標と、排出後経過時間Ti(t)と、各粒子の排出源強度を対応させて、データ記録装置に再記録する。
【0068】
次に第3ステップ(図1参照)の処理を、具体的に説明する。例えば、排出後経過時間Ti(t)=120秒のときにおいて、図7に示すような排出源Sから所定距離離れた所定の格子領域(単位体積となっている単位空間)I,J,Kでの、物質の濃度を計算するには、データ記録装置1から、排出後経過時間Ti(t)=120秒における、この格子領域に存在する粒子を読み出す。読み出したところ、図7に示すように粒子が存在していた場合、これら各粒子が有している排出源強度を積算することにより、この単位空間における物質の濃度を計算することができる。
【0069】
つまり、図7に示す格子領域には、
強度が0.3となっている4つの粒子P00 01,P00 05,P00 10,P00 20と、
強度が0.5となっている3つの粒子P20 01,P20 07,P20 17
強度が0.9となっている2つの粒子P40 08,P40 10と、
強度が0.6となっている1つの粒子P60 17とが存在している。
このため、これら粒子の排出源強度を次のように積算することにより、この単位空間における物質の濃度を5.1と計算することができる。
(0.3×4)+(0.5×3)+(0.9×2)+(0.6×1)=5.1
【0070】
前述した第1の実施の形態を一般的(数学的)に説明すると次のようになる。第1の実施の形態では、図8に示すように、排出源Sから物質(ガス体等)が排出されているときに、排出源Sの風下のある格子領域I,J,Kにおける物質濃度(ガス濃度)を、時間変化に応じて予測するものである。しかも、図9(a)に示すように物質の排出量Qが一定の場合において、図9(b)に示すように格子領域I,J,Kの濃度時間変化を予測演算することができることは勿論、図10(a)に示すように物質の排出量が時間変化する排出量q(t)であっても、図10(b)に示すように格子領域の濃度時間変化を予測演算することができるようにしたものである。
【0071】
第1の実施の形態ではまず、排出源Sから実際に排出される物質の排出量が一定であっても、時間経過に沿い排出量が変化する場合であっても、まずは物質の排出量Q(m3 /sec )を一定値(=1.0)として、従来のLagrangian粒子拡散モデルを使用して、物質を粒子に置換し、排出源Sから毎秒N個の粒子を発生させ、各粒子の挙動を数値計算して粒子の位置を示す空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求める。更に、各粒子が有する情報である空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))の他に、粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間Ti(t)を、各演算周期Δt毎に、データ記録装置に記録する。これにより、従来のLagrangian粒子拡散モデルを利用して、時間変化するあらゆる排出量q(t)に対応した濃度分布の時間変化を計測することができる。
【0072】
そのためには、時間変化する物質の排出量q(t)に比例した、排出後経過時間Ti(t)の時間経過に沿う粒子に対する排出源強度を示すデータを設定する。そして、ある時刻(t)において、各粒子の位置を示す空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))と排出後経過時間Ti(t)をデータ記憶装置から読み出す。
【0073】
一定排出量(Q=1.0)の場合には、各粒子の排出源強度はQ/N(m3 )=1/Nであるが、時間変化する排出量q(t)の場合には、各粒子の排出源強度はq(t−Ti)/N(m3 )となる。
【0074】
再度、各粒子が有する情報である空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))の他に、排出後経過時間Ti(t)および各粒子の排出源強度qi(t−Ti)/N(m3 )を、各時刻(t)毎に、データ記録装置に再記録させる。
【0075】
Lagrangian粒子モデルと、排出後経過時間と、時間変化する排出量q(t)に対応させた排出源強度q(t−Ti)/N(m3 )を利用した本実施例では、空間中の単位体積中(=空気1m3 )の各粒子が有する排出源強度が異なるので、各粒子の排出源強度qi(t−Ti)/N(m3 )を積算したΣqi(t−Ti)/N(m3 )がこの単位体積中に存在するガス量となる。したがって、この空間中ガス濃度はΣqi(t−Ti)/N(m3 )/N(ガスm3 /空気m3 )となる。
【0076】
<第2の実施の形態(排出源が複数の場合)>
排出源が複数(j個)存在し、それぞれの排出源から、時間変化する異なる排出量(qj(t))で物質が排出されている場合、第1の実施の形態で使用したLagrangian粒子拡散モデルの粒子情報(位置,放出後経過時間)に加えて、各粒子に排出源識別情報(si)を持たせることにより、第1の実施の形態と同じ機能を発揮することが可能となる。
【0077】
例えば図11に示すように、2つの排出源S1,S2がある場合には、排出源S1から排出される粒子には排出源識別情報s1を持たせ、排出源S2から排出される粒子には排出源識別情報s2を持たせる。そして、Lagrangian粒子拡散モデルを使用して、物質を粒子に置換し、両排出源S1,S2からそれぞれ毎秒N個の粒子を発生させ、各粒子の挙動を数値計算して粒子の位置を示す空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求める。更に、各粒子が有する情報である空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))の他に、粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間Ti(t)と、排出源識別情報s1またはs2を持たせる。
【0078】
図12(a)に示すように、排出源S1,S2から排出される排出量Qがそれぞれ一定(=1)として、従来のLagrangian粒子拡散モデルを利用して、図12(b)に示すような格子領域I,J,Kにおける物質の濃度時間変化を求めて記録しておく。
【0079】
次に、排出源S1から排出される物質の排出量が、図13(a)に点線で示すように、時間変化するq1(t)であるとすると、この排出源S1から放出された粒子については、第1の実施の形態と同じ方法で、粒子の排出源強度をq1(t)とする。そして、各粒子毎に、その粒子が発生した時点の排出源強度q1(t)を参照して、排出源強度を設定する。この結果、求める格子領域I,J,Kにおいて、排出源識別情報s1を有する粒子の排出源強度を積算することにより、排出源S1から排出された物質の濃度(求める格子領域I,J,Kにおける物質濃度)の時間変化を求めることができる。
【0080】
同様に、排出源S2から排出される物質の排出量がq2(t)であるとすると、この排出源S2から放出された粒子については、第1の実施の形態と同じ方法で、粒子の排出源強度をq2(t)とする。そして、各粒子毎に、その粒子が発生した時点の排出源強度q2(t)を参照して、排出源強度を設定する。この結果、求める格子領域I,J,Kにおいて、排出源識別情報s2を有する粒子の排出源強度を積算することにより、排出源S2から排出された物質の濃度(求める格子領域I,J,Kにおける物質濃度)の時間変化を求めることができる。
【0081】
このようにして、排出源S1から排出された物質の濃度の時間変化と、排出源S2から排出された物質の濃度の時間変化とを加算することにより、求める格子領域I,J,Kにおける物質の濃度を求めることができる。
【0082】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態では、例えば、ガス漏洩事故が発生した後、ガスの排出量の実測結果に基づいて、短時間で現状および将来の濃度分布を計算する方法である。
【0083】
環境アセスメントなどの拡散計算は、緊急に計算結果が必要ではないので、時間の経過に沿い変化するガスの排出量q(t))を決定してから、数日から数ケ 月の時間をかけてガスの拡散状況の予測演算を実施する。しかし、ガス漏洩事故などのような緊急時には、周辺住民の非難対策を緊急にとる必要があるので、できるだけ短時間に拡散計算結果を出力する必要がある。
【0084】
このような場合、各時刻の3次元空間風速分布に基づいて、図14(a)(b)(c)に示すように、第1の実施の形態と同じLagrangian粒子拡散モデルで、一定放出率(Q=1)の拡散計算を24時間連続して実施しておく。
【0085】
ガス漏洩事故発生後、排出源である煙突の出口に設置されたガス濃度測定装置などから、実測ガス排出量q(t)を測定する。この実測ガス排出量q(t)に応じて、各粒子の排出源強度q(t)を設定することにより、第1の実施の形態と同じ方法で、このガス排出量に対応した濃度時間変化を補正計算することができる(図14(d)(e)参照)。つまり、各粒子毎に、その粒子が発生した時点の排出源強度q(t)を参照して、排出源強度を設定する(図14(d))。そして、求める格子領域I,J,Kにおいて、その領域に存在する粒子の排出源強度を積算することにより、排出源Sから排出された物質の濃度(求める格子領域I,J,Kにおける物質濃度)の時間変化を求めることができる。
【0086】
なお、将来のガス排出量は、現状の実測ガス排出量q(t)と等価とするか、または、別途、設定される予測式に基づいて計算する。
【0087】
現在及び将来の3次元空間風速分布を計算する方法としては、気象庁などから定期的に配信される広域格子(20km)の気象データ(GPV:Grid Point Value)を利用して、広域気象予測モデル(RAMS,MM5など)で詳細格子(数km〜数10m)の気象データ(風向,風速,気温)の時間変化を計算する方法がある。
【0088】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態は、例えば、ガス漏洩事故が発生した後、漏洩箇所周辺の濃度実測結果に基づいて、短時間で現状のガスの排出量を計算する方法である。
【0089】
ガス漏洩事故が発生した場合、図15(a)に示す排出源であるガス漏洩源Sからの排出量q(t)が測定困難な場合が多い。このような場合、漏洩箇所周辺観測点(xk)で実測された濃度(ck(t)観測)の時間変化から、第1の実施の形態のLagrangian粒子拡散モデルを用いて、短時間で排出量q(t)を推定することができる。
【0090】
漏洩事故発生前に、第1の実施の形態のLagrangian粒子拡散モデルを用いて、一定排出量(Q=1)で(図15(b)参照)、ある周辺観測点(xk)の濃度(Ck(t)計算)を計算しておく(図15(c)参照)。
【0091】
この濃度(Ck(t)計算)は、観測点(xk)を中心とする3次元空間体積(Δx×Δy×Δz)中に存在する粒子(n個)から、次の式(10)で計算されたものである。
【0092】
Ck(t)計算=n×ΣQ(t−Ti)/N/(Δx×Δy×Δz)・・(10)
この場合、排出量Q(t−Ti)は一定値(=1)である。
【0093】
次に、観測点(xk)の濃度時間変化(Ck(t)観測)が測定されると、(10)式を利用して(11)式が求まる。
【0094】
Figure 0003746712
【0095】
ここで、n1,n2,n3,及びnlは、放出開始後、0秒前、ΔT秒前、(ΔT×2)秒前、(ΔT×3)秒前及びt秒前に放出された粒子で、観測点(xk)を中心とする3次元空間体積(Δx×Δy×Δz)中に存在する粒子の総数である。
また、C0(t)は、バックグラウンド濃度と呼ばれ、計算対象とする排出源以外から放出され、観測地点に関係なく存在する濃度であり、一定値または時間tによって変化する。
q0,q1,q2,q3およびqlは、t秒時から0秒前、ΔT秒前、(ΔT×2)秒前、(ΔT×3)秒前およびt(=ΔT×1)秒前の放出率である。
【0096】
Ck(t)観測は、24時間連続して測定されているので、漏洩開始時刻から0秒後、ΔT秒後、(ΔT×2)秒後、(ΔT×3)秒後およびt(=ΔT×1)秒後まで(1+l)個以上、測定することが可能である。
また、観測点xkが、k個ある場合は、k×(1+l)個の観測データを求めることができる。
【0097】
(11)式の未知数はq0、q1、q2、q3及びqlの(1+l)個、既知数Ck(t)観測は、k×(1+l)個以上あるので、未知数が既知数より少ない。この場合、最小自乗法を用いて、最も、観測濃度Ck(t)観測に対する最小自乗誤差を小さくするように、未知数のq0、q1、q2、q3及びqlを決定することができる。なお、図16は第4の実施の形態の計算状態を示すフロー図である。
【0098】
<第5の実施の形態>
第5の実施の形態は、例えば、ガス漏洩事故が発生した後、漏洩箇所周辺の濃度実測結果に基づいて、短時間で現状のガスの排出量を推定し、濃度分布を計算する方法である。
【0099】
第4の実施の形態により、漏洩箇所周辺観測点(xk)で実測された濃度(Ck(t)観測)の時間変化から、第1の実施の形態のLagrangian粒子拡散モデルを用いて、短時間で排出量q(t)を推定することができる。
【0100】
図17に示すように、漏洩事故発生前に、第1の実施の形態のLagrangian粒子拡散モデルを用いて、一定放出率(Q=1)で、ある周辺観測点(xk)の濃度(Ck(t)計算)を計算しておく。
【0101】
この濃度(Ck(t)計算)は、観測点(xk)を中心とする3次元空間体積(Δx×Δy×Δz)中に存在する粒子(n個)から、次の式(12)で計算されたものである。
Ck(t)計算=n×ΣQ(t−Ti)/N/(Δx×Δy×Δz)・・(12)
この場合、放出率Q(t−Ti)は一定値(=1)である。
【0102】
次に、観測点(xk)の濃度時間変化((Ck(t)観測)が測定されると、(12)式を利用して(13)式が求まる。
【0103】
Figure 0003746712
【0104】
ここで、n1,n2,n3,及びnlは、放出開始後、0秒前、ΔT秒前、(ΔT×2)秒前、(ΔT×3)秒前及びt秒前に放出された粒子で、観測点(xk)を中心とする3次元空間体積(Δx×Δy×Δz)中に存在する粒子の総数である。
また、C0(t)は、バックグラウンド濃度と呼ばれ、計算対象とする排出源以外空放出され、観測地点に関係なく存在する濃度であり、一定値または時間tによって変化する。
q0,q1,q2,q3およびqlは、t秒時から0秒前、ΔT秒前、(ΔT×2)秒前、(ΔT×3)秒前およびt(=ΔT×1)秒前の放出率である。
【0105】
Ck(t)観測は、24時間連続して測定されているので、漏洩開始時刻から0秒後、ΔT秒後、(ΔT×2)秒後、(ΔT×3)秒後およびt(=ΔT×1)秒後まで(1+l)個以上、測定することが可能である。
また、観測点xkが、k個ある場合は、k×(1+l)個の観測データを求めることができる。
【0106】
(13)式の未知数はq0、q1、q2、q3及びqlの(1+l)個、既知数Ck(t)観測は、k×(1+l)個以上あるので、未知数が既知数より少ない。この場合、最小自乗法を用いて、最も、観測濃度Ck(t)観測に対する最小自乗誤差を小さくするように、未知数のq0、q1、q2、q3及びqlを決定することができる。
【0107】
この推定値q0、q1、q2、q3及びqlを用いて、第1の実施の形態の方法で、濃度時間変化の補正計算を行えば、各経過時間毎の濃度分布を計算することができる。
【0108】
<第6の実施の形態>
第6の実施の形態は、ガス漏洩事故が発生した後、放出量実測結果に基づいて、短時間で現状および将来の濃度分布計算結果をインターネットで提供するシステムである。
【0109】
ガス漏洩事故などのような緊急時には、周辺住民の避難対策を緊急にとる必要があるので、できるだけ、短時間に拡散計算結果を出力する必要がある。しかし、このような漏洩事故はいつ発生するか分からないため、監督官庁である消防、警察及び自治体と事業者である各工場では、このための計算機システムを24時間体制で管理運用する必要がある。
【0110】
この管理運用には、多大の労力と費用および高度な計算機運用技術を必要とするので、大規模な危機管理システムを常設する組織以外では、管理運用が困難である。
【0111】
この問題点を補う方法として、最近のインターネットを利用した情報提供システムを案出した。
【0112】
この第6の実施の形態では、図18に示すように、監督官庁である消防、警察及び自治体などの監督官庁10や、事業者である各工場11とは別の場所に、安全解析センター12を設置する。安全解析センター12では、インターネット等の情報伝達手段を介して、気象庁13などの気象データ配信施設から配信される気象観測データを受信し、平常時は大型計算機を用いて計算をすることにより、各時刻の3次元空間風速分布に基づいて、第1の実施の形態と同じLagrangian粒子拡散モデルで、一定放出率(Q=1)の拡散計算を24時間連続して実施しておく。
【0113】
ガス漏洩事故発生後、事業者11の煙突出口に設置されたガス濃度測定装置などから、実測したガス放出量q(t)がわかれば、このガス放出量q(t)をインターネット等の情報伝達手段を介して、安全解析センター12に伝送する。そうすると、安全解析センター12では、第1の実施の形態と同じ方法で、このガス放出率に対応した濃度時間変化を補正計算することができる。
【0114】
安全解析センター12は、計算した濃度計算結果を消防、警察及び自治体などの監督官庁10に送信する。監督官庁10は、濃度に応じて、事業者11や工場周辺住民14に避難勧告をする。
【0115】
なお、将来のガス放出率は、現状の実測したガス放出率q(t)と等価とするか、または、別途、設定される予測式に基づいて計算する。なお、複数の事業者11が存在する場合には、安全解析センター12では、第2の実施の形態に示す演算をして濃度時間変化を予測する。
【0116】
現在及び将来の3次元空間風速分布を計算する方法としては、気象庁13などから定期的に配信される広域格子(20km)の気象観測データ(GPV:Grid Point Value )を利用して、広域気象予測モデル(RAMS,MM5など)で詳細格子(数km〜数10m)の気象データ(風向,風速,気温)の時間変化を計算する方法がある。
【0117】
【発明の効果】
以上実施の形態と共に具体的に説明したように、本発明にかかる拡散物質の拡散状況予測方法では、拡散物質の拡散状況をコンピュータによる演算処理により求める拡散物質の拡散状況予測方法であって、
前記コンピュータは、
排出源から大気中に排出された物質が大気中を拡散していく状況を予測するため、前記物質を多数の粒子に置換して、排出源の位置から演算周期毎に予め設定した個数の粒子が発生すると設定すると共に、
排出源の位置を含む領域内の多数の地点における、時間の経過に沿って変化する風向・風速を示す風速場データを、粒子の拡散状態を演算する拡散方程式に代入することにより、各粒子の拡散速度を求め、この拡散速度から各粒子が存在する空間位置を示す空間座標を各演算周期毎に求めると共に、前記粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間を計測し、各演算周期における各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間を対応させてデータ記録装置に記録しておき、
排出された物質の排出後経過時間の時間経過に伴う排出量の変化に比例させて、排出後経過時間の時間経過に沿う粒子に対する排出源強度データを設定しておき、
前記データ記録装置に記録していた、各演算周期毎の各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間を読み出すと共に、読み出した排出後経過時間を参照して各粒子が発生した時点を求め、この時点における各粒子の排出源強度を前記排出源強度データから求め、前記データ記録装置に、各演算周期毎の各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間と排出源強度を対応させて再記録させ、
所定の演算周期における所定の領域の前記物質の濃度は、当該所定の演算周期における当該所定の領域に存在する全ての粒子の排出源強度を積算することにより求めるようした。
このため、排出源から排出される量が異なっていても、特定領域における物質の濃度を短時間で演算することができ。
【0118】
また本発明の拡散物質の拡散状況予測方法は、拡散物質の拡散状況をコンピュータによる演算処理により求める拡散物質の拡散状況予測方法であって、
前記コンピュータは、
複数の排出源から大気中に排出された物質が大気中を拡散していく状況を予測するため、前記物質を多数の粒子に置換して、各排出源の位置から演算周期毎に予め設定した個数の粒子がそれぞれ発生すると設定すると共に、
排出源の位置を含む領域内の多数の地点における、時間の経過に沿って変化する風向・風速を示す風速場データを、粒子の拡散状態を演算する拡散方程式に代入することにより、各粒子の拡散速度を求め、この拡散速度から各粒子が存在する空間位置を示す空間座標を各演算周期毎に求めると共に、前記粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間を計測し、各演算周期における各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間と排出源を識別する排出源識別情報とを対応させてデータ記録装置に記録しておき、
各排出源から排出された物質の排出後経過時間の時間経過に伴う排出量の変化に比例させて、排出後経過時間の時間経過に沿う粒子に対する排出源強度データを各排出源毎にそれぞれ設定しておき、
前記データ記録装置に記録していた、各演算周期毎の各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間と各粒子の排出源識別情報を読み出すと共に、読み出した排出後経過時間を参照して各粒子が発生した時点を求め、読み出した排出源識別情報を参照して粒子が発生した時点における各粒子の排出源強度をその粒子が発生した排出源に対応した前記排出源強度データから求め、前記データ記録装置に、各演算周期毎の各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間と排出源強度を対応させて再記録させ、
所定の演算周期における所定の領域の前記物質の濃度は、当該所定の演算周期における当該所定の領域に存在する全ての粒子の排出源強度を積算することにより求めるようにした。
このため、排出源から排出される量が異なっていても、特定領域における物質の濃度を短時間で演算することができる。また、複数の排出源から物質が排出されていても、正確に物質の濃度計算をすることができる。
【0119】
また本発明の拡散物質の拡散状況予測方法では、
前記排出源強度データは、前記排出源から実際に排出される物質の濃度を実測することにより求めて設定されたり、
前記排出源強度データは、前記排出源の周囲の観測点で実測した物質の濃度の時間変化を基に設定される。
このため、排出源から排出される物質の濃度データが予め求まっていなくても、実測データを用いて濃度計算をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における計算フローを示すフローチャートである。
【図2】本発明の第1の実施の形態における粒子の拡散状態を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における粒子の拡散状態を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における粒子の拡散状態を示す説明図である。
【図5】物質の排出量の時間変化を一例を示す特性図である。
【図6】物質の排出量の時間変化に対応する排出源強度の一例を示す特性図である。
【図7】所定の格子領域における粒子分布を示す説明図である。
【図8】排出源と格子領域を示す説明図である。
【図9】排出量が一定の場合の排出量と濃度との関係を示す特性図である。
【図10】排出量が時間変化する場合の排出量と濃度との関係を示す特性図である。
【図11】2つの排出源と格子領域を示す説明図である。
【図12】排出量が一定の場合の排出量と濃度との関係を示す特性図である。
【図13】排出量が時間変化する場合の排出量と濃度との関係を示す特性図である。
【図14】第3の実施の形態を示す説明図である。
【図15】第4の実施の形態を示す説明図である。
【図16】第4の実施の形態における計算フローを示すフローチャートである。
【図17】第5の実施の形態における計算フローを示すフローチャートである。
【図18】第6の実施の形態にかかるシステムを示すシステム構成図である。
【図19】従来技術における粒子の拡散状態を示す説明図である。
【図20】従来技術における粒子の拡散状態を示す説明図である。
【図21】従来技術における粒子の拡散状態を示す説明図である。
【図22】所定の格子領域における粒子分布を示す説明図である。
【図23】粒子拡散モデルの機能を示す説明図である。
【図24】排出源と格子領域を示す説明図である。
【図25】排出量が時間変化する場合の排出量と濃度との関係を示す特性図である。
【図26】排出量が一定の場合の排出量と濃度との関係を示す特性図である。
【図27】排出量が瞬間的な場合の排出量と濃度との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 データ記録装置
10 監督官庁
11 事業者
12 安全解析センター
13 気象庁
14 工場周辺住民
S,S1,S2 排出源

Claims (4)

  1. 拡散物質の拡散状況をコンピュータによる演算処理により求める拡散物質の拡散状況予測方法であって、
    前記コンピュータは、
    排出源から大気中に排出された物質が大気中を拡散していく状況を予測するため、前記物質を多数の粒子に置換して、排出源の位置から演算周期毎に予め設定した個数の粒子が発生すると設定すると共に、
    排出源の位置を含む領域内の多数の地点における、時間の経過に沿って変化する風向・風速を示す風速場データを、粒子の拡散状態を演算する拡散方程式に代入することにより、各粒子の拡散速度を求め、この拡散速度から各粒子が存在する空間位置を示す空間座標を各演算周期毎に求めると共に、前記粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間を計測し、各演算周期における各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間を対応させてデータ記録装置に記録しておき、
    排出された物質の排出後経過時間の時間経過に伴う排出量の変化に比例させて、排出後経過時間の時間経過に沿う粒子に対する排出源強度データを設定しておき、
    前記データ記録装置に記録していた、各演算周期毎の各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間を読み出すと共に、読み出した排出後経過時間を参照して各粒子が発生した時点を求め、この時点における各粒子の排出源強度を前記排出源強度データから求め、前記データ記録装置に、各演算周期毎の各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間と排出源強度を対応させて再記録させ、
    所定の演算周期における所定の領域の前記物質の濃度は、当該所定の演算周期における当該所定の領域に存在する全ての粒子の排出源強度を積算することにより求めることを特徴とする拡散物質の拡散状況予測方法。
  2. 拡散物質の拡散状況をコンピュータによる演算処理により求める拡散物質の拡散状況予測方法であって、
    前記コンピュータは、
    複数の排出源から大気中に排出された物質が大気中を拡散していく状況を予測するため、前記物質を多数の粒子に置換して、各排出源の位置から演算周期毎に予め設定した個数の粒子がそれぞれ発生すると設定すると共に、
    排出源の位置を含む領域内の多数の地点における、時間の経過に沿って変化する風向・風速を示す風速場データを、粒子の拡散状態を演算する拡散方程式に代入することにより、各粒子の拡散速度を求め、この拡散速度から各粒子が存在する空間位置を示す空間座標を各演算周期毎に求めると共に、前記粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間を計測し、各演算周期における各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間と排出源を識別する排出源識別情報とを対応させてデータ記録装置に記録しておき、
    各排出源から排出された物質の排出後経過時間の時間経過に伴う排出量の変化に比例させて、排出後経過時間の時間経過に沿う粒子に対する排出源強度データを各排出源毎にそれぞれ設定しておき、
    前記データ記録装置に記録していた、各演算周期毎の各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間と各粒子の排出源識別情報を読み出すと共に、読み出した排出後経過時間を参照して各粒子が発生した時点を求め、読み出した排出源識別情報を参照して粒子が発生した時点における各粒子の排出源強度をその粒子が発生した排出源に対応した前記排出源強度データから求め、前記データ記録装置に、各演算周期毎の各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間と排出源強度を対応させて再記録させ、
    所定の演算周期における所定の領域の前記物質の濃度は、当該所定の演算周期における当該所定の領域に存在する全ての粒子の排出源強度を積算することにより求めることを特徴とする拡散物質の拡散状況予測方法。
  3. 請求項1または請求項2において、前記排出源強度データは、前記排出源から実際に排出される物質の濃度を実測することにより求めて設定されることを特徴とする拡散物質の拡散状況予測方法。
  4. 請求項1または請求項2において、前記排出源強度データは、前記排出源の周囲の観測点で実測した物質の濃度の時間変化を基に設定されることを特徴とする拡散物質の拡散状況予測方法。
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