JP3746564B2 - 制振装置のセンサ診断システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、高層建築物などの構造物の制振に利用される振動検出センサの異常を診断する制振装置のセンサ診断システムに関する。
【0002】
【従来技術】
可動マスや構造物の振動信号(変位,速度,加速度)は、制振用の制御信号や作動監視信号として使用されるため、その信号自身に異常があれば、構造物の振動抑制に不具合が生じたり、作動監視判断を誤らせることになる。
【0003】
そのため、建物の振動の固有周期の1/2を目処に振動信号が一定時間異常継続して設定値(閾値)を外れたとき異常と判断して、制振制御を停止する機構を組み込んでいる。
【0004】
また、この異常判定結果は、構造物の防災センター等に送られ、担当者が現場点検を行い、異常が継続されていなければ再起動の処理を行う。
【0005】
一方、上記振動信号を検出するセンサは、構造物の固有周期が高層建築物になるに従い大きくなり、このセンサの低周波域の特性が重要となる。
【0006】
ここで使用されるセンサは、低域までフラットなゲイン特性を要求されるが、基本特性の直流成分は、除去したいとの背反的な要求があり、非常に敏感なセンサ特性となる。
【0007】
この結果、電源投入時や風等による飛来物がセンサ筺体に触れた場合に、センサ出力は、大きく変動し、安定するまでに長い時間を要するセンサを使わざるを得ない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来の制振装置の監視方法にあっては、上記のようにセンサの異常判断を閾値と継続時間について一度だけの条件成立で異常判定としているため、何らかの要因によりセンサが一時的に不安定状態となったときにも、異常判定してしまい、このような異常は担当者が現場に駆けつけた時には既に解消されている原因不明の異常となり、制振装置の動作の信頼性を低下し、振動監視結果に不安感を生むという課題があった。
【0009】
また、センサの特性から見て、センサ出力(振動信号)が不安定な時期が存在するが、時間がたてば安定するという場合にも担当者が現場まで足を運び、点検し再起動させなければならず、手間がかかる保守となる
なお、構造物を有効活用する面から、防災センター等は地下階に設置されるのが一般的であり、一方、制振装置は最上階近辺に設けられるため、上記のように現場へ駆けつけるのにも相当の時間を要する。
【0010】
また、制振装置に設けられているコントローラ内には多くの情報を蓄積する機能がないために、異常原因を究明するのに大がかりな観測体制が要求されているのが現状である。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するものであり、制振装置のコントローラにより外部信号の異常判断結果を自立的に評価して、人間が介在することを最小限に抑えるとともに、センサ出力が不安定なときは、制振制御を一時停止して様子を見て、センサ出力の安定が回復した場合には制振制御を自動再開できる制振装置のセンサ診断システムを提供することを目的とする。
【0012】
また、この発明は、制振制御を停止して様子待ちしている時に、電話回線を利用して外部へその旨を通報し、必要なときは外部から逆にアクセスして、メモリに蓄積している異常情報を外部へ取り出すことができる制振装置のセンサ診断システムを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1の発明にかかる制振装置のセンサ診断システムは、構造物上にアクチュエータを介して相対変位自在に支持され該アクチュエータにより上記構造物の振動を抑制する方向に駆動される可動マスと、該可動マスの振動を検出する可動マス振動検出センサと、上記構造物の可動マス支持位置における振動を検出する構造物振動検出センサとを設けて、異常診断処理部に、上記可動マス振動検出センサおよび構造物振動検出センサの各検出出力が予め定めた閾値を設定時間外れたとき、上記アクチュエータの制御を一時停止させ、指定時間経過後自動的に上記異常の有無を繰り返し診断させ、この異常発生の回数が指定回数を超えたとき異常データを外部へ出力させるようにしたものである。
【0014】
また、請求項2の発明にかかる制振装置のセンサ診断システムは、上記異常診断の結果データを格納する異常情報保存手段を設け、外部通報手段に、上記異常情報保存手段に保存された異常診断の結果データをファクシミリ機能持ったモデムを介して外部へ通報させるようにしたものである。
【0015】
そして、請求項3の発明にかかる制振装置のセンサ診断システムは、上記異常診断の結果データを格納する異常情報保存手段と、該異常情報保存手段に保存された異常診断の結果データをモデムを介して外部へ通報させるようにしたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を図について説明するが、図1は、この発明の制振装置のセンサ診断システムを示すブロック接続図であって、同図において、1は、可動マスの振動を検出する可動マス振動検出センサで、2は、可動マス支持部位における上記構造物の振動を検出する構造物振動検出センサである。
【0017】
また、3は、上記可動マス振動検出センサ1および構造物振動検出センサ2の各出力信号を読み込んで波形整形処理する信号読込手段であり、これは必要に応じて各センサ1,2ごとに設けることもできる。
【0018】
さらに、4は、異常診断処理部であり、これが信号読込手段3により読み込まれた各センサ1,2の出力にもとづいて可動マスおよび構造物の上記振動による変位,速度および加速度を演算し、これらの演算結果を予め実験的にまたは演算によって求めて設定された基準値としての閾値と比較し、上記演算結果がその閾値を超えた時間が一定時間経過したとき、制振のための制御信号の出力を停止して制振制御を一時停止させる。
【0019】
また、この異常診断処理部4では、上記制振制御の一時停止中に指定時間経過ごとに自動的に上記異常診断を再開して、この異常診断の繰り返し回数が設定回数を超えたとき、最終的にセンサ異常信号を外部へ出力するように機能する。
【0020】
なお、上記制振制御の一時停止時には、異常診断処理部4は制御出力演算部5への信号出力を停止するため、アクチュエータ6による可動マス7の制振作動を上記のように停止させることとなる。
【0021】
そして、8は、異常情報保存手段であり、これが上記制振制御の停止の原因となった上記異常内容(情報)およびその異常発生に至るまでのロギングデータを上記異常診断処理部4より取り出して格納する。
【0022】
またCは、上記信号読込手段3,異常診断処理部4,制御出力演算部5,異常情報保存手段8および外部通報手段9を含む制振装置用の制御装置としてのコントローラである。
【0023】
次に、動作について説明すると、まず、可動マスや構造物から振動の変位,速度,加速度などに対応する振動信号が各可動マス振動検出センサ1および構造物振動検出センサ2に入力されると、これを異常診断処理部4が信号読込手段3を通して読み取る。
【0024】
そして、異常診断処理部4は、上記各センサ1,2の出力にもとづいてこれらの各センサ1,2の異常診断を実施し、異常がなければ、各センサ1,2が検出した振動出力信号にもとづいて制御出力演算部5が所期の制振制御信号を出力するように設定されている。
【0025】
このため、アクチュエータ6は、その制御出力演算部5からの制振制御信号を受けて上記可動マス7を制振駆動させることとなり、振動している構造物の制振を行うこととなる。
【0026】
ところで、上記異常診断処理部4は、予め実測値または計算値にもとづいて求めた異常判定の基準となる振動の上下限の閾値継続時間,振動の再現回数をメモリ(記憶手段)に格納してあり、これらと上記可動マス振動検出センサ1および構造物振動検出センサ2から次々に入力される振動のレベル,継続時間,再現回数とを比較し、上記各基準を超えたときは、上記各センサ1,2のいずれかが異常であると診断する。
【0027】
すなわち、この異常診断処理部4では、図2のフローチャートに示す手順に従って、下記のような異常診断を実施する。
【0028】
まず、異常診断処理部4は、可動マスおよび構造物の振動の上下限の閾値,継続時間,振動の再現回数についての基準データをメモリにロードし(ステップS1)、この状態にて上記各センサ1,2からの振動信号の出力を監視し続け、前回異常と判定され再現回数チェックまでの待ち時間中か否かを判定し(ステップS2)、待ち時間中であればプログラムされた次項目の診断処理を実行可能にする(ステップS3)。
【0029】
これに対して、上記待ち時間(ウェイト)中でないと判定された場合には、上記の読み込まれた振動信号が上記の上下限の閾値および継続時間を超えているか否の異常判定をし(ステップS4)、超えていない場合には、ステップS3以下の処理に進む。
【0030】
一方、上記閾値や継続時間を超えている場合には、上記制御出力演算部5からアクチュエータ6への制振制御出力を一時停止し、このときの異常情報の内容、すなわち、異常診断結果を異常情報保存手段8に格納するとともに、外部通報手段9によりその異常データの外部への、例えば、自動着信モードになっているホストセンターへの通報処理を実行する(ステップS5)。
【0031】
次に、上記異常の再現回数をカウントして、この再現回数が上記設定した基準の再現回数を超えたか否かをチェックし(ステップS6)、超えていない場合には、異常なしと判断し異常の内部フラグをクリアして(ステップS7)、ステップS3以下の処理を実行可能にする。
【0032】
そして、異常の再現カウント値が基準の再現回数を超えている判定された場合には、防災センター14への警報信号の出力を行ったり(ステップS8)、外部通報手段8によってファクシミリモデム10,電話回線11およびファクシミリ12を介して遠隔地の指定場所に異常警報を通信する。
【0033】
このため、この異常警報を受けた遠隔地の指定場所では、モデム13を介して上記電話回線11を通じて逆の経路で外部通報手段8にアクセスして、上記異常情報手段内の異常に関する各種データを入手し、現地に出向く前に上記各センサ1,2の出力異常の内容を把握検討し、対処方法を決定することができ、したがって、これにより現地にて迅速かつ適切な対応をとることができる。
【0034】
なお、上記センサ1,2の異常が一時的に発生していると判断された場合にあっても、その構造物(ビル)の防災センター14へ警報出力を行うようにすることは任意である。
【0035】
外部通信手段9は、異常情報保存手段8に保存された異常診断結果データをモデム13を介して外部の、例えば、自動着信モードとなっているホストセンターへ通報することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、構造物上にアクチュエータを介して相対変位自在に支持され該アクチュエータにより上記構造物の振動を抑制する方向に駆動される可動マスと、該可動マスの振動を検出する可動マス振動検出センサと、上記構造物の可動マス支持位置における振動を検出する構造物振動検出センサと、を設けて、異常診断処理部に上記可動マス振動検出センサおよび構造物振動検出センサの各検出出力が予め定めた閾値を設定時間外れたとき、上記アクチュエータの制御を一時停止させ、指定時間経過後自動的に上記異常の有無を繰り返し診断させ、この異常発生の回数が指定回数を超えたとき異常データを外部へ出力させるように構成したので、制振装置のコントローラにより各センサ出力信号の異常判断結果を自立的に評価して、人間が介在することを最小限に抑えることができるとともに、センサ出力が不安定なときは、制振制御を停止して様子を見て、再開できる場合は自動再開できるようにし、従って、制振装置の動作の信頼性を向上できるとともに、無用な不安感を取り除けるという効果が得られることになる。
【0037】
また、請求項2に発明によれば、上記異常診断の結果データを格納する異常情報保存手段を設け、外部通報手段に上記異常情報保存手段に保存された異常診断の結果データをファクシミリ機能を持ったモデムを介して外部へ通報させるように構成したので、制振制御を停止して様子待ちしている時間に、外部に電話回線を利用してその旨を通報し、必要なときは外部から逆にアクセスして、コントローラが蓄積している情報を取り出すことができ、従って、警報出力が出る前や保守,点検のために各センサを設置した現場へ行く前に、異常解消のための作業の検討を事前に十分に行うことができ、詳細かつ適正な対応策を現地で迅速にとることができるという効果が得られる。
【0038】
そして、請求項3に発明によれば、上記異常診断の結果データを格納する異常情報保存手段を設け、外部通報手段に上記異常情報保存手段に保存された異常診断の結果データをモデムを介して外部へ通報させるように構成したので、たとえば、予め自動着信モードとなっているホストセンターではその通報を受けて、その通報データをさらに詳細に分析し、異常内容の把握および異常回復指針の決定または処理を迅速,適正に行えるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の一形態による制振装置のセンサ診断システムを示すブロック接続図である。
【図2】図1における異常診断処理部の診断処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 可動マス振動検出センサ
2 構造物振動検出センサ
4 異常診断処理部
6 アクチュエータ
7 可動マス

Claims (3)

  1. 構造物上にアクチュエータを介して相対変位自在に支持され該アクチュエータにより上記構造物の振動を抑制する方向に駆動される可動マスと、該可動マスの振動を検出する可動マス振動検出センサと、上記構造物の可動マス支持位置における振動を検出する構造物振動検出センサと、上記可動マス振動検出センサおよび構造物振動検出センサの各検出出力が予め定めた閾値を設定時間外れたとき上記アクチュエータの制御を一時停止させ指定時間経過後自動的に上記異常の有無を繰り返し診断しこの異常発生の回数が指定回数を超えたとき異常データを外部へ出力する異常診断処理部と、を備えた制振装置のセンサ診断システム。
  2. 上記異常診断の結果データを格納する異常情報保存手段と、該異常情報保存手段に保存された異常診断の結果データをファクシミリ機能を持ったモデムを介して外部へ通報する外部通報手段と、を設けたことを特徴とする請求項1に記載の制振装置のセンサ診断システム。
  3. 上記異常診断の結果データを格納する異常情報保存手段と、該異常情報保存手段に保存された異常診断の結果データをモデムを介して外部へ通報する外部通報手段と、を設けたことを特徴とする請求項1に記載の制振装置のセンサ診断システム。
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