JP3746157B2 - 液晶マイクロカプセル分散液及び液晶表示素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶マイクロカプセル分散液及び液晶表示素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
情報機器のディスプレイとして、これまでに多くの液晶表示素子が提案されている。これら液晶表示素子の中で、現在は、特開昭47−11737号で開示されるTNモード(twisted nematic mode)や特開昭60−107020号で開示されるSTNモード(super twisted nematic mode)を代表とする、ネマチック液晶を用いるタイプが多用されている。
【0003】
TNモード及びSTNモードの液晶表示素子においては、液晶分子は、初期状態において、それぞれ90°程度及び260°程度捩じれた配列構造をとる。したがって、素子に入射した光は、液晶分子の捩れた配列構造と複屈折とにより、偏光状態の変化を受けて出射する。
【0004】
液晶層に電圧を印加すると、液晶分子は電界方向に再配列し、上述の捩れ構造が消滅する。その結果、複屈折が失われ、入射光は偏光状態を変えることなく出射する。すなわち、電圧の印加/非印加に応じて液晶層の光学的性質が変化するため、素子を2枚の直線偏光子で挟んだ構造とすることにより、出射光の強度変化が観察されるのである。TNモード及びSTNモードは、この動作原理に基づいて明暗のコントラストを得る表示方式である。
【0005】
これら表示方式の液晶表示素子は、CRT(cathode ray tube)ディスプレイに比べて消費電力が著しく少なく、薄型化が可能であるという利点を有している。そのため、パーソナルコンピュータやワードプロセッサ等のオフィス用情報機器に広く用いられている。
【0006】
しかしながら、上記表示方式の液晶表示素子は、偏光子を用いているため、入射光を有効に利用しているとは言い難い。そのため、上記液晶表示素子の多くにおいては、十分な出射光強度を得るために、液晶表示素子の後方に光源(バックライト)が付設されている。また、カラーフィルタが設けられた液晶表示素子においては、光の透過率がさらに減少するため、より強力な光源が必要となる。
【0007】
ところが、この光源の電力は、駆動回路を含む液晶表示素子の消費電力に匹敵する。そのため、上記表示方式の液晶表示素子は、電池で電力を供給される携帯用情報機器のディスプレイとしては適していない。
【0008】
すなわち、従来の表示方式の液晶表示素子においては、カラーディスプレイであるか白黒ディスプレイであるかに関わらず、明るさの向上と低消費電力化とが二律背反の関係にあった。
【0009】
また、このような液晶表示素子では、通常バックライトとして蛍光灯が用いられている。そのため、長時間ディスプレイを見続けた場合に目に与える疲労が大きく、望ましくない。したがって、バックライトを必要としない反射型液晶表示素子に適用可能な、光の利用効率の高い表示方式の開発が望まれている。
【0010】
また、液晶表示素子を投射型ディスプレイとして使用する場合においても、光透過率を高めることにより、装置の小型化、長寿命化、及び機器全体の節電等を図ることが可能である。したがって、投射型液晶表示素子においても、光の利用効率の高い表示方式の開発が望まれている。
【0011】
このような要望に対し、偏光子を用いない様々な表示方式が提案されている。例えば、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(J. Appl. Phys.)、45巻、4718〜4723頁(1974年)では、White−Taylor型ゲスト・ホスト液晶表示素子が開示されている。この液晶表示素子においては、カイラルネマチック相を示す液晶化合物と二色性色素との混合物が液晶層に用いられ、それらは初期状態において基板面に平行に配列している。
【0012】
この液晶層に電圧を印加すると、液晶分子の配列が変化し、それに伴って二色性色素の向きが変わり、その結果、光の透過率が変化する。また、この素子においては、カイラルネマチック相に起因する捩れ構造のために、色素による光吸収が効率よく起こるので、原理的には偏光子なしでも高い表示コントラストを得ることができる。
【0013】
しかしながら、この液晶表示素子において高いコントラストを達成するためには、カイラルネマチック相を呈する液晶分子配列の螺旋ピッチを光の波長オーダーとすることが必要である。このように螺旋ピッチを短くした場合、ディスクリミネーションラインが数多く発生するため表示品質が損なわれ、同時に、ヒステリシス現象が発生するため電圧印加に対する応答速度が極端に遅くなる。したがって、上述のTNモード及びSTNモードの液晶表示素子に比べて、いまひとつ実用性に乏しい。
【0014】
偏光子を用いない他の表示方式としては、NCAP(Nematic Curvilinear Aligned Phase )或いはPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)と呼ばれる方式が知られている。この表示方式においては、高分子マトリクス中に、正の誘電異方性を有するネマチック液晶材料が直径数μm程度の粒子状に分散されて液晶層が形成される。また、この液晶材料は、常光線屈折率が高分子マトリクスの屈折率とほぼ同じとなり、異常光線屈折率が高分子マトリクスの屈折率と異なるように選ばれる。
【0015】
この表示方式によると、初期状態においては、それぞれの液晶粒子中の液晶分子は歪んだ配列構造をとる。しかも、各液晶粒子間で液晶分子の配列方向が異なるため、大部分の液晶粒子と高分子マトリクスとの間で屈折率の差が生じる。その結果、すりガラスのように光散乱を生ずる。
【0016】
この液晶層に十分な電圧を印加すると、それぞれの液晶粒子中で液晶分子の再配列が生じ、液晶粒子と高分子マトリクスとの間で、液晶層に垂直に入射する光に対する屈折率が等しくなる。その結果、液晶粒子と高分子マトリクスとの間の界面での屈折及び反射がなくなり、透過状態となる。なお、入射光は直線光である必要はない。
【0017】
この表示方式によると、上述の動作原理により表示が行われるため、偏光子は不要であり、入射光を有効に活用することができる。したがって、明るい表示が可能となる。なお、この表示方式においては、液晶中に二色性色素を混合させることにより、着色−消色変化を生じさせることができることも知られている。
【0018】
上述の表示方式は、後述する液晶マイクロカプセルを用いた表示方式とは異なり、媒体中に液晶材料を液滴状に分散させるものである。この表示方式の液晶表示素子は、上記液晶粒子が分散された高分子マトリクスを、一般的な液晶表示素子に用いられるガラスセルに封入すること、或いは基板上に塗布することにより、容易に形成することができる。
【0019】
しかしながら、コントラストを高めるために液晶分子の配向方向を延伸等の後処理で揃える場合、或いは液晶層上に導電性ポリマーフィルムをラミネートする場合、この液晶層は強度が十分であるとはいえない。また、透明−白濁変化を、もしくは黒色の二色性色素を添加することにより白−黒変化を生じさせて表示を行う場合は問題とはならないが、カラー表示を行う場合はカラーフィルタが必要であるため、光の利用効率を高めることができない。
【0020】
高い光の利用効率を有するカラー液晶表示素子を得るために、吸収波長の異なるゲスト・ホスト液晶マイクロカプセルをそれぞれ作製し、それらを混合して液晶層を形成すること(特開昭58−144885号)が知られている。また、ゲスト・ホスト液晶マイクロカプセルを用いて、3色の液晶層をガラスやプラスチック等の中間基板を用いることなく積層すること(特願平7−56086号)が知られている。
【0021】
このように、液晶マイクロカプセルを用いた液晶表示素子においては、偏光子等を用いる必要がない。そのため、光の利用効率が高くなり、高い表示コントラストが期待される。しかしながら、従来の液晶マイクロカプセルを用いた液晶表示素子においては、液晶層中のカプセル間に空隙が生じ、そこに気泡が残留していたため、この空隙部とカプセルとの界面での光の反射及び屈折が著しく大きかった。
【0022】
したがって、上記液晶表示素子においては、光散乱が大きくなり、高いコントラストを得ることができなかった。また、それぞれ吸収波長の異なる3色の液晶層を積層した場合は、カプセル間の空隙部を光が透過してしまうため、均一な光吸収が行われず、良好な混色性を得ることができなかった。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高いコントラストで表示で表示を行うことが可能な液晶表示素子を形成し得る液晶マイクロカプセルを提供することを目的とする。
【0024】
また、本発明は、良好な混色性を有する液晶表示素子を形成することが可能な液晶マイクロカプセルを提供することを目的とする。
【0025】
また、本発明は、高いコントラストで表示を行うことが可能な液晶表示素子を提供することを目的とする。
【0026】
さらに、本発明は、良好な混色性を有する液晶表示素子を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1側面によると、溶媒と、その中に分散された液晶マイクロカプセルとを具備し、前記液晶マイクロカプセルは、液晶材料、及びこの液晶材料を包含し表面に凹部を有する透明被膜を有し、透明被膜の投影の輪郭とこの投影に外接する円との間の、この円の中心を通る直線上での距離の最大値が、上記円の半径の10〜35%である液晶マイクロカプセル分散液が提供される。
【0028】
上記液晶マイクロカプセルにおいて、透明被膜の外側表面は親水基で修飾されることが好ましい。
【0041】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る前記液晶マイクロカプセル分散液を基板の一主面に形成された電極上に塗布して液晶層を形成する工程と、前記液晶層上に対向電極を設ける工程とを含んだことを特徴とする液晶表示素子の製造方法が提供される。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0049】
図1に、第1参考例に係る液晶表示素子の断面図を示す。この図で、参照番号2,3は基板を示しており、基板2,3の対向面には、電極4および対向電極5がそれぞれ設けられている。基板2,3間には、液晶マイクロカプセル7を含む液晶層6が挟持されており、相互に隣接する液晶マイクロカプセル7に囲まれて形成される空隙には、光散乱を防止する透明充填体として透明微粒子8が配置されている。
【0050】
上記液晶表示素子1において、基板2,3としては、ガラスやプラスチック等の透明基板等が用いられる。また、電極4としては、ITO等の透明導電膜やアルミニウム等の金属膜等が用いられる。基板3は必ずしも設ける必要はなく、代わりに透明樹脂等の保護膜を設けてもよい。対向電極5としては、ITO等の透明導電膜が用いられる。
【0051】
液晶マイクロカプセル7は、液晶材料と、液晶材料を包含する透明被膜とで構成される。この液晶材料には、例えば、下記一般式(1)〜(10)に示す液晶化合物を用いることができる。
【0052】
【化1】
【0053】
【化2】
【0054】
なお、上記一般式(1)〜(10)において、置換基R及びXは、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシアルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルシクロヘキシル基、アルコキシアルキルシクロヘキシル基、アルキルシクロヘキシルフェニル基、シアノフェニル基、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロメチル基、フルオロメトキシ基、アルキルフェニルアルキル基、アルコキシアルキルフェニルアルキル基、アルコキシアルキルシクロヘキシルアルキル基、アルキルシクロヘキシルアルキル基、アルコキシアルコキシシクロヘキシルアルキル基、アルコキシフェニルアルキル基、及びアルキルシクロヘキシルフェニルアルキル基から選ばれ、置換基Yは水素原子及びハロゲン原子から選ばれる。
【0055】
上記置換基R及びXは、アルキル鎖及びアルコキシ鎖が光学活性を有するものであってもよく、フェニル基またはフェノキシ基を、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子で置換されたものでもよい。また、上記置換基R及びXは、フェニル基が、水素原子を1個または2個のフッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子で置換されたものであってもよい。
【0056】
第1参考例においては、上記一般式(1)〜(10)に示す液晶化合物を混合して用いることもできる。また、上記一般式(1)〜(10)に示す液晶化合物は、いずれも誘電異方性が正であるが、誘電異方性が負の液晶化合物も、誘電異方性が正の液晶化合物と混合して混合後の誘電異方性を正とすることにより用いることができる。また、適当な素子構成及び駆動方式を用いることにより、誘電異方性が負の液晶化合物も、誘電異方性が正の液晶化合物と混合することなく用いることができる。
【0057】
上記液晶化合物は、二色性色素と混合して用いることができる。二色性色素を用いた液晶表示素子においては、電圧非印加時に光吸収が生じた場合、表示色が白っぽくなるため、特に光散乱の低減が望まれている。
【0058】
この二色性色素としては、下記化学式(11)〜(19)に示すイエロー色素、下記化学式(20)〜(27)に示すマゼンタ色素、及び下記化学式(28)〜(31)に示すシアン色素等を挙げることができる。
【0059】
【化3】
【0060】
【化4】
【0061】
【化5】
【0062】
【化6】
【0063】
【化7】
【0064】
【化8】
【0065】
【化9】
【0066】
これら二色性色素を液晶化合物に混合する場合、液晶化合物に対する混合比は0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがより好ましい。二色性色素の混合比が下限値未満の場合、十分なコントラストが得られないことがある。一方、上限値を超える場合、電圧印加時においても着色が残るためコントラストが低下するおそれがある。
【0067】
上述の液晶化合物からなる液晶材料、或いは上述の液晶化合物と二色性色素との混合物で構成される液晶材料を包含する透明被膜の材料としては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂等の縮合系ポリマーや、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、メチルメタクリレート−ビニルアクリレート共重合体等の三次元架橋ビニルポリマー等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0068】
また、透明被膜の材料として、ポリエチレン類;塩素化ポリエチレン類;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸・無水マレイン酸共重合体等のエチレン共重合体;ポリブタジエン類;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリプロピレン類;ポリイソブチレン類;ポリ塩化ビニル類;ポリ塩化ビニリデン類;ポリ酢酸ビニル類;ポリビニルアルコール類;ポリビニルアセタール類;ポリビニルブチラール類;四フッ化エチレン樹脂類;三フッ化塩化エチレン樹脂類;フッ化エチレン・プロピレン樹脂類;フッ化ビニリデン樹脂類;フッ化ビニル樹脂類;四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン・エチレン共重合体等の四フッ化エチレン共重合体;含フッ素ポリベンゾオキサゾール等のフッ素樹脂類;アクリル樹脂類;ポリメタクリル酸メチル等のメタクリル樹脂類;ポリアクリロニトリル類;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等のアクリロニトリル共重合体;ポリスチレン類;ハロゲン化ポリスチレン類;スチレン・メタクリル酸共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体等のスチレン共重合体;ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等のイオン性ポリマー;アセタール樹脂類;ナイロン66等のポリアミド類;ゼラチン;アラビアゴム;ポリカーボネート類;ポリエステルカーボネート類;セルロース系樹脂類;フェノール系樹脂類;ユリア樹脂類;エポキシ樹脂類;不飽和ポリエステル樹脂類;アルキド樹脂類;メラミン樹脂類;ポリウレタン類;ジアリールフタレート樹脂類;ポリフェニレンオキサイド類;ポリフェニレンスルフィド類;ポリスルフォン類;ポリフェニルスルフォン類;シリコーン樹脂類;ポリイミド類;ビスマレイミドトリアジン樹脂類;ポリイミドアミド類;ポリエーテルスルフォン類;ポリメチルペンテン類;ポリエーテルエーテルケトン類;ポリエーテルイミド類;ポリビニルカルバゾール類;ノルボルネン系非晶質ポリオレフィン類;ポリフマル酸エステル類等の熱可塑性樹脂も用いることができる。
【0069】
液晶マイクロカプセル7の透明被膜は、上記熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選ばれる2種以上の樹脂を用いて多層膜として形成されてもよい。この場合、液晶マイクロカプセル7の熱安定性を向上させるために、透明被膜の最外殻には熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0070】
以上のように構成される液晶マイクロカプセル7は、界面重合法、in situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液系からの相分離法、有機溶液系からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁法、及びスプレードライング法等を用いて形成することができる。また、液晶マイクロカプセル7は、例えば、平均粒径が3μm〜15μm程度となるように形成される。
【0071】
第1参考例に係る液晶表示素子においては、液晶マイクロカプセルに囲まれて形成される空隙に透明充填体が充填される。この透明充填体は、液晶マイクロカプセルの透明被膜と、空隙に残留する気泡との間の屈折率の差に起因する不所望な光散乱を低減するために設けられる。透明充填体と透明被膜との屈折率の差は小さいほど好ましく、0.1以下である場合に、光散乱を十分に低減することができ、高いコントラストを得ることができる。また、上記屈折率の差が0.02以下の場合、上述した効果がより顕著となる。
【0072】
この透明充填体は様々な形態をとり得る。例えば、図1に示す液晶表示素子1のように、透明充填体として透明微粒子8を用いることができる。
【0073】
この透明微粒子8に用いられる材料は、透明であり、かつ電気的に絶縁性のものであれば特に制限はない。しかしながら、ガラス等は、透明樹脂に比べて、液晶マイクロカプセル7の透明被膜との屈折率の差が大きい。したがって、透明微粒子8には透明樹脂を用いることが好ましい。特に、上記透明被膜に用いた熱可塑性樹脂を透明微粒子8の材料として用いた場合、透明被膜と透明微粒子8との間の屈折率の差を低減することができるだけでなく、透明被膜と透明微粒子8との密着性を高めることができる。したがって、空隙を良好に低減することができる。
【0074】
また、空隙を良好に低減するために、透明微粒子8は、液晶マイクロカプセル7よりも平均粒径が小さい必要がある。特に、透明微粒子8の平均粒径が、液晶マイクロカプセル7の平均粒径の10%以下である場合、透明微粒子8が液晶マイクロカプセル7間の空隙に容易に入り込むことが可能となるため、空隙に残留する気泡を良好に低減することができる。
【0075】
また、透明微粒子8の平均粒径は、液晶マイクロカプセル7の平均粒径の1%以上であることが好ましい。液晶マイクロカプセル7の平均粒径が1%以上の場合、1つの空隙に充填される透明微粒子8が少なくなるため、光反射が生じる界面を低減することができる。したがって、コントラストをより高めることができる。
【0076】
以上説明した透明微粒子8を用いた液晶表示素子1において、液晶層6は、液晶マイクロカプセル7と透明微粒子8とを所定の溶媒中に分散させた液晶マイクロカプセル分散液を、塗布または印刷することにより形成される。
【0077】
一般に、液晶マイクロカプセル分散液を塗布または印刷すると、上記溶媒を蒸発・乾燥させるまでの過程で、液晶マイクロカプセル間に引力が生じ、液晶マイクロカプセルは相互に融着する。しかしながら、従来の液晶表示素子においては、この融着は完全ではなく、液晶マイクロカプセル間に空隙が生じ、そこに気泡が残留する。
【0078】
それに対し、分散液中に上記透明微粒子8を含有させると、透明微粒子8がこの空隙に充填され、さらに透明微粒子8と液晶マイクロカプセル7の透明被膜とが融着する。したがって、液晶マイクロカプセル7間の空隙が低減され、気泡の残留を抑制することができる。
【0079】
以上、透明充填体として透明微粒子8を用いた場合について説明したが、透明充填体は基板表面に設けられるテーパー状の突起部であってもよい。
【0080】
図2に、透明充填体として突起部が用いられた、第1参考例に係る液晶表示素子の断面図を示す。この図で、透明充填体である突起部9は、基板2上に設けられ、テーパー状の形状を有している。
【0081】
この突起部9は、様々な形状に形成され得る。図3に、第1参考例に係る液晶表示素子に用いられる突起部の斜視図を示す。図3において、液晶マイクロカプセル7は、突起部9の側面に接するように配置されている。突起部9は、基板(図示せず)上に設けられており、円錐状、三角錐状、或いは四角錐状等の形状を有している。このように、突起部9は、錘状或いは平らな上面を有する台地状の形状に形成され得る。
【0082】
この突起部9は、側面が曲面で構成されていることが好ましい。図4(a)に、第1参考例に係る液晶表示素子に用いられる突起部の上面図を示し、図4(b)にその4B−4Bに沿った断面図を示す。また、図5(a)に、第1参考例に係る液晶表示素子に用いられる突起部の上面図を示し、図5(b)にその5B−5Bに沿った断面図を示す。なお、図4(a),(b)及び図5(a),(b)において、参照番号2は基板を示し、参照番号9-1及び9-2は突起部を示す。
【0083】
これら図4(a)及び(b)で、突起部9-1は側面が凹状の曲面で構成された三角錐状の形状を有している。このように突起部9-1の側面を凹状の曲面で構成することにより、液晶マイクロカプセル7との密着性が向上し、気泡の残留をより良好に防止することができる。
【0084】
また、図5(a)及び(b)に示すように、側面が凹状の曲面で構成された四角錐状の突起部9-2を設けてもよい。このように、突起部9-2の形状を三角錐状或いは四角錐状とすることにより、液晶マイクロカプセル7の配列を制御することができる。
【0085】
気泡の残留を防止しつつ、液晶マイクロカプセル7の配列を制御するために、突起部9を格子状に形成してもよい。
【0086】
図6(a)及び(b)に、格子状に形成された突起部の上面図及びその一部の斜視図をそれぞれ示す。図6(a)及び(b)に示すように、突起部9-3は、電極4上に形成されており、格子状の形状を有している。格子状の突起部9-3の上部10は平坦であり、底部に比べて幅が狭くなっている。また、突起部9-3の側面は凹状の曲面で構成されている。このように突起部9-3を格子状とし、格子の間隔を適宜選択することにより、突起部9-3で囲まれる空間に配置される液晶マイクロカプセルの数及び配列を制御することができる。
【0087】
以上説明したテーパー状の突起部9は、例えば、電極4上に樹脂層を形成し、この樹脂層を所定のパターンで型押しすることにより形成することができる。
【0088】
また、このテーパー状の突起部9は、以下のようにして形成することもできる。図7(a)及び(b)を参照しながら、図6(a)及び(b)に示す突起部9-3の形成方法を説明する。なお、図7(a)及び(b)は、それぞれ、突起部の形成方法の概略を示す上面図及び斜視図である。
【0089】
まず、テーパー状の突起部を形成するに当り、電極4上に所定のパターンで樹脂膜を形成する。この樹脂膜上に、より体積膨張率の小さい樹脂、すなわち、硬化による収縮がより大きな樹脂膜を形成する。このようにして複数の樹脂膜を、下方において体積膨張率が大きく、上方において小さくなるように積層することにより、図7(a)及び(b)に示す格子状の樹脂層11-1を形成する。このとき、樹脂層11-1の側面は、電極4の表面に対して垂直な平面である。
【0090】
次に、樹脂層11-1を硬化する。樹脂層11-1は、上方と下方とで体積膨張率が異なるため、体積の差が生じる。その結果、図6(a)及び(b)に示すテーパー状の突起部9-3が形成される。
【0091】
上述の突起部9は、基板2,3のいずれに設けてもよいが、液晶マイクロカプセル分散液が塗布される基板上に設けることが好ましい。また、基板2,3の両方に設けてもよい。また、突起部9の高さは、液晶マイクロカプセル7の平均粒径に対し、5〜50%程度であることが好ましい。このように突起部9を形成することにより、液晶マイクロカプセル7の充填密度を低減することなく、空隙を低減することができる。
【0092】
突起部9に用いられる材料としては、上述の透明微粒子8に用いられるのと同様の透明樹脂を挙げることができる。突起部9は、例えば、感光性樹脂を用いて形成する場合、電極4上に複数種の感光性樹脂を用いて樹脂層を積層し、所望のパターンにパターニングすることにより形成することができる。この時、硬化後での体積が、最上層において最も小さく、最下層において最も大きくなるように感光性樹脂をそれぞれ選ぶことにより、テーパー状に形成することができる。
【0093】
以上説明した突起部9は、中央部が窪んだ柱状体であってもよい。
【0094】
図8(a)及び(b)に、第1参考例に係る液晶表示素子に用いられる突起部の斜視図を示す。図8(a)に示す突起部9-4は、中央部が窪んだ三角柱であり、図8(b)に示す突起部9-5は、中央部が窪んだ四角柱である。このような中央部が窪んだ柱状の突起部9-4,9-5を用いると、液晶マイクロカプセル間の空隙をより低減することができる。
【0095】
この突起部9-4,9-5は、以下のようにして形成する。まず、三角柱状或いは四角柱状に樹脂層11-2,11-3を形成する。このとき、樹脂層11-2,11-3は、端部を体積膨張率の大きい樹脂で構成し、中央部を体積膨張率の小さい樹脂で構成する。次に、樹脂層11-2,11-3を硬化する。それにより、樹脂層11-2,11-3の中央部と端部とで体積に差が生じ、中央部が窪んだ柱状の突起部9-4,9-5が形成される。
【0096】
このように、突起部9の少なくとも一部の形状を、基板2または基板3側から液晶層6の中間部へ向けてテーパー状とすることにより、液晶マイクロカプセル7間に形成される空隙を低減し、光散乱を抑制することができる。
【0097】
以上、透明充填体として突起部9を用いた場合について説明したが、透明充填体は、液晶マイクロカプセルの透明被膜と一体化された樹脂であってもよい。
【0098】
図10に、透明充填体として、液晶マイクロカプセルの透明被膜と一体化された樹脂が用いられた、第1参考例に係る液晶表示素子の断面図を示す。この図で、液晶層6は、隣接して配置された液晶マイクロカプセル7と、液晶マイクロカプセル7により形成された空隙を充填し、液晶マイクロカプセル7の透明被膜と一体化された樹脂12とで構成されている。
【0099】
図11(a)〜(c)を参照しながら、図10に示す液晶表示素子1の製造方法を説明する。なお、図11(a)〜(c)は、それぞれ、第1参考例に係る液晶表示素子の製造方法の概略を示す断面図である。
【0100】
まず、図11(a)に示すように、液晶マイクロカプセル7及び上述の透明微粒子8を所定の溶媒13に分散させた液晶マイクロカプセル分散液を、電極4が形成された基板2上に塗布する。このとき、透明微粒子8には、液晶マイクロカプセル7の透明被膜に比べてガラス転移温度の低い樹脂を用いる。
【0101】
次に、図11(b)に示すように、溶媒13を除去する。この時点で、液晶マイクロカプセル7間、及び液晶マイクロカプセル7と透明微粒子8との間で融着が生じる。その結果、液晶マイクロカプセル7により形成される空隙の大部分は透明微粒子8で充填されるが、僅かな空隙が残留している。
【0102】
次に、図11(c)に示すように、液晶層6を透明微粒子8のガラス転移温度よりも高く、かつ液晶マイクロカプセル7の透明被膜のガラス転移温度よりも低い温度に加熱する。これにより、液晶マイクロカプセル7の透明被膜が破壊されることなく、透明微粒子8はガラス化して樹脂12を形成する。この樹脂12は、自由な形状をとり得るため、液晶マイクロカプセル7間に残された僅かな空隙にも浸入し、残留する僅かな空隙をもほぼ完全に充填する。また、透明微粒子8がガラス化することにより、液晶マイクロカプセル7は変形可能となるため、より高い密度で充填される。
【0103】
さらに、樹脂12を冷却して硬化させる。このようにして、液晶マイクロカプセル7の透明被膜と樹脂12とを一体化させる。
【0104】
上述の方法においては、液晶マイクロカプセル7の透明被膜と樹脂12とを一体化させるために、透明被膜と透明微粒子8との間のガラス転移温度の差を利用している。そのため、このガラス転移温度の差が小さいと、透明微粒子8が十分にガラス化しない、或いは透明被膜までガラス化して液晶マイクロカプセル7が破壊されるおそれがある。したがって、上記ガラス転移温度の差が十分に大きくなるように、透明被膜及び透明微粒子8の材料を選定することが好ましい。このガラス転移温度の差は大きいほど好ましいが、20℃以上あれば十分である。
【0105】
また、上述の方法において、透明微粒子8はガラス化される。そのため、透明微粒子8として粒径の小さなものを用いても光散乱が増大するおそれがない。また、透明微粒子8の粒径を小さくすることにより、液晶マイクロカプセル7間の空隙へ均一に分布させることができ、かつ容易にガラス化することができる。したがって、透明微粒子8の平均粒径は小さいほど好ましい。特に、透明微粒子8の平均粒径は液晶マイクロカプセル7の平均粒径以下であることが好ましく、液晶マイクロカプセル7の平均粒径の10%以下であることがより好ましい。
【0106】
以上、透明被膜と樹脂12とを一体化させるために、透明微粒子8を用いる場合について説明したが、透明微粒子8の代わりに上述の突起部9を用いることもできる。すなわち、突起部9に、液晶マイクロカプセル7の透明被膜に比べてガラス転移温度の低い樹脂を用い、透明微粒子8を用いた場合と同様にして、突起部9をガラス化して樹脂12を形成することにより、液晶マイクロカプセル7の透明被膜と樹脂12とを一体化することができる。なお、この場合、突起部9はガラス化することにより自由な形状をとり得るため、必ずしもテーパー状に形成する必要はなく、図7(a)及び(b)に示すような格子状や、図9(a)及び(b)に示すような柱状に形成することができる。
【0107】
また、図10に示す液晶表示素子1は、以下のようにして製造してもよい。
【0108】
図12(a)〜(d)を参照しながら、図10に示す液晶表示素子1の他の製造方法を説明する。なお、図12(a)〜(d)は、それぞれ、第1参考例に係る液晶表示素子の他の製造方法の概略を示す断面図である。
【0109】
まず、図12(a)に示すように、液晶マイクロカプセル7を適当な溶媒中に分散させた液晶マイクロカプセル分散液を、電極4が形成された基板2上に塗布し、溶媒を除去する。この時点で、液晶マイクロカプセル7間で透明被膜の融着が生じる。しかしながら、この融着は僅かであり、液晶マイクロカプセル7間には多くの空隙が形成される。
【0110】
次に、図12(b)に示すように、加熱して、液晶マイクロカプセル7間での透明被膜の融着を促進する。その結果、液晶マイクロカプセル7間の空隙はやや低減されるが、多くの空隙は残留したままである。
【0111】
さらに、図12(c)に示すように、液晶マイクロカプセル7上にバインダ剤15を塗布する。なお、このバインダ剤15は、所定の処理により硬化して樹脂12を形成する重合性物質を含有する液体である。バインダ剤15は溶媒を含むものであってもよく、含まなくてもよい。
【0112】
次に、図12(d)に示すように、バインダ剤15を、液晶マイクロカプセル7間の空隙に浸透させて、空隙を充填する。空隙に充填されたバインダ剤15に、加熱或いは光照射のような所定の処理を施すことにより、バインダ剤15中の重合性物質を重合させて硬化させる。このようにして、バインダ剤15中の重合性物質を重合させることにより樹脂12が形成され、樹脂12は液晶マイクロカプセル7の透明被膜と一体化される。
【0113】
上述のように、バインダ剤15は、樹脂12を形成する重合性物質を含有している。また、バインダ剤15は任意に溶媒を含有する。一般に、液晶マイクロカプセル7の透明被膜は、耐有機溶剤性が低い。すなわち、溶媒として、極性の低い有機溶媒を用いた場合、液晶マイクロカプセル7から溶媒中に液晶材料が溶出するおそれがある。したがって、溶媒を用いる場合、水等の極性の高いものを使用することが好ましい。
【0114】
また、バインダ剤15に含有される樹脂12を形成する重合性物質は、上記極性の高い溶媒に良好に溶解或いは分散する必要がある。したがって、樹脂12を形成する重合性物質としては、水溶性樹脂や、親水性の樹脂微粒子を用いることができる。
【0115】
バインダ剤15に含有される水溶性樹脂としては、上記液晶マイクロカプセル7の透明被膜に用いられる材料のプレポリマー;メタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、アクリロニトリル等の水溶性モノマー;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
【0116】
また、バインダ剤15に含有される親水性の樹脂微粒子としては、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の親水性置換基で表面修飾された樹脂微粒子を挙げることができる。この樹脂微粒子は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ターシャリブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリレート、イソプレン、イソブチレン、アクリロニトリル、エステル、メラミン、ウレタン、エポキシ、ジビニルベンゼン、TMPTA等を用いて形成することができる。
【0117】
この樹脂微粒子は、表面を上記親水性置換基の他に、メチロール基、エポキシ基、イソシアネート基等で修飾されていてもよい。また、この樹脂微粒子は、液晶マイクロカプセル7間の空隙に容易に浸入する必要があるため、粒径が数十nm〜数百nm程度であることが好ましい。
【0118】
バインダ剤15としては、油性のポリマーも用いることができるが、この場合には溶媒を含まない、例えばエポキシプレポリマーやウレタンプレポリマー等の液状のオリゴマーを用いることが好ましい。
【0119】
上述のように、バインダ剤15は、液晶マイクロカプセル7を積層した後に塗布される。そのため、バインダ剤15は、塗布時には、液晶マイクロカプセル7が形成する空隙に浸透しやすく、硬化時には、空隙を効率的に充填することが好ましい。すなわち、バインダ剤15の粘性が小さいことが好ましく、粘性が500センチポイズ以下のものを用いることにより、塗布時の空隙への浸透を容易にし、硬化時の空隙の充填をより効率的に行うことができる。
【0120】
バインダ剤15は、液晶マイクロカプセル7の粒径や用いるバインダ剤15の種類等によって異なるが、少なくとも空隙を充填できる程度に十分な量を塗布する。また、バインダ剤15を過剰に塗布してもよい。この場合、過剰なバインダ剤15は、液晶層6の上部で硬化して被膜16を形成する。この被膜16は、液晶層6を保護する保護膜として用いることができるため、工程数を増加することなく液晶表示素子1の寿命特性や耐久性を高めることができる。
【0121】
さらに、この被膜16は、平坦化層としても用いることができる。通常、液晶マイクロカプセル7を含む液晶層の表面には凹凸が形成される。そのため、この液晶層上に対向基板等を配置した場合、液晶層と対向基板との間には無数の空隙が生じてしまう。それに対し、上記被膜16を形成した場合、液晶層の表面を平坦化することが可能となる。そのため、対向基板と液晶層との間に空隙が形成されるのを防止することができる。したがって、光散乱をより良好に防止することができる。
【0122】
被膜16を平坦化層として使用する場合、対向基板は、バインダ剤15中の重合性物質が完全に重合する前に液晶層上に配置することが好ましい。この場合、対向基板と液晶層との間に空隙が形成されることが殆どない。
【0123】
また、被膜16を平坦化層として使用する場合、被膜16に接着性を付与してもよい。これにより、対向基板と液晶層とを接着させることが可能となり、その結果、液晶表示素子の強度を向上させることができる。
【0124】
なお、バインダ剤15中の重合性物質が完全に重合する前に液晶層上に対向基板を配置する場合、バインダ剤15は、溶媒を含有しない液状の重合性物質であることが好ましい。この場合、被膜16中に溶媒が残留するおそれがない。
【0125】
上記バインダ剤15が低粘度である場合、基板2上に液晶層を囲むように封止部材を設けることが好ましい。これにより、バインダ剤15の漏出を防止することができ、かつ被膜16を所望の厚さに制御することができる。また、封止部材に接着性を付与することにより、基板2と対向基板との接着を行うことが可能となる。なお、この封止部材については、第2参考例において詳述する。
【0126】
以上説明した第1参考例において、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の屈折率と透明充填体との屈折率の差は、0.1以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。また、透明被膜と透明充填体とを一体化する場合、一体化された透明被膜及び透明充填体の屈折率と、液晶マイクロカプセル7中の液晶材料の常光線屈折率との差が、0.1以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。屈折率の差が上記範囲にある場合、光散乱をより効果的に低減することができる。
【0127】
次に、第2参考例について説明する。上記第1参考例においては、光散乱を低減するために透明充填体を用いることについて説明したが、液晶マイクロカプセル間の空隙を透明な流体で満たすことによっても光散乱を低減することができる。図13(a)及び(b)を参照しながら説明する。
【0128】
図13(a)及び(b)は、それぞれ、第2参考例に係る液晶表示素子の製造方法を概略的に示す断面図である。
【0129】
まず、図12(a)及び12Bに関して説明したのと同様の工程を実施する。すなわち、基板2上に液晶マイクロカプセル7を配置して、液晶層6-1を形成する。カラー表示を行う場合には、液晶層6-1上に透明電極5-1、液晶層6-2、透明電極5-2、及び液晶層6-3を順次積層する。なお、液晶層6-1〜6-3では、液晶マイクロカプセル7の吸収波長がそれぞれ異なる。
【0130】
次に、基板2上に、液晶層6-1〜6-3の周囲を囲むように封止部材17を形成する。この封止部材17に用いられる材料としては、例えば接着性を有する材料を挙げることができる。
【0131】
次に、図13(a)に示すように、液晶マイクロカプセル7間に形成された空隙を透明な流体18で満たす。流体18は、液晶マイクロカプセル7間に形成された空隙を完全に満たすように、及び液晶層6-1〜6-3を覆うように供給する。基板2上には、封止部材17が形成されているため、基板2上からの流体の流出が防止される。なお、通常、透明電極5-1,5-2はパターニングされるため、流体18は液晶層6-3中の液晶マイクロカプセル7間の空隙だけでなく、液晶層6-1,6-2中の液晶マイクロカプセル7間の空隙中にも容易に供給される。
【0132】
さらに、図13(b)に示すように、液晶層6-3上に対向基板3を配置する。なお、対向基板3の一方の主面には透明電極5-3が形成されている。対向基板3を基板2へ向けて押圧することにより、余分な流体18は排出され、液晶マイクロカプセル7間及び液晶層6-3と対向基板3との間には適量の流体18が残留する。このとき、封止部材17と対向基板3との接着を行うことにより、基板2,3間の空隙を流体18で完全に満たすことが可能となる。
【0133】
したがって、流体18として、液晶マイクロカプセル7の透明被膜とほぼ等しい屈折率を有する材料を用いることにより、第1参考例において説明したのと同様の効果を得ることができる。さらに、液晶マイクロカプセル7間の間隙を流体18で満たした場合、以下に示す効果を得ることができる。
【0134】
図13(b)に示す液晶表示素子1-1を加熱すると、液晶マイクロカプセル7の膨張を生ずる。流体18を用いていない場合、液晶マイクロカプセル7が膨張することにより、対向基板3の封止部材17との接着部近傍に局所的に高い圧力が加わる。そのため、対向基板3が封止部材17から剥離するおそれがある。それに対し、流体18を用いた場合、流体18は液晶層6内で移動可能であるので、対向基板は凸状に湾曲することができる。したがって、液晶マイクロカプセル7の膨張により生じる圧力は分散され、上記剥離が防止される。
【0135】
封止部材17は弾力性を有する材料からなることが好ましい。この場合、上述した圧力の集中を緩和し、上記剥離をより良好に防止することができる。
【0136】
液晶層6-3と対向基板3との間の距離は、2μm以下であることが好ましい。この場合、光透過率を90%以上とすることが可能となる。また、液晶層6-3と対向基板3との間の距離は、1μm以上であることが好ましい。この場合、加熱時に、十分な量の流体18を液晶層6内で移動させることができるため、上記剥離をより効果的に防止することができる。
【0137】
上記流体18としては、例えば、シリコーンオイル及びマシーン油等のオイル類;ポリエステルオリゴマー、エチレン系オリゴマー、ポリエーテルオリゴマー、ポリアミド系オリゴマー等の液状のオリゴマー;アセト酢酸エチル、ジブチルケトン、ジメチルオクタン、デカリン、デカン、トリデカン、プロピレングリコール、エチレングリコール等の高沸点液体;ポリマー溶液;及びこれらの混合物等のような透明な液体を挙げることができる。
【0138】
上記流体18の屈折率と液晶マイクロカプセル7の透明被膜の屈折率との差は、0.1以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。屈折率の差が上記範囲にある場合、光散乱をより効果的に低減することができる。
【0139】
また、通常、上記液晶表示素子1-1の製造プロセスにおいては熱工程が存在するため、上記流体18は150℃以上の沸点を有することが好ましい。
【0140】
封止部材17の材料としては、例えば、エポキシ、不飽和ポリエステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリイミド、ジエン系樹脂、アクリル樹脂、及びこれらの前駆体等を挙げることができる。また、封止部材17の材料として、上述した材料にシリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、チタン酸バリウム、クレイ等の無機充填体を混合した混合物;或いはこれらに感光性或いは熱硬化性を付与した物質等も用いることもできる。
【0141】
封止部材17は、図14(a)〜(f)に示すように様々な形状に形成され得る。図14(a)〜(f)は、それぞれ、第2参考例に係る液晶表示素子において用いられる封止部材を概略的に示す平面図である。
【0142】
図14(a)〜(f)において、基板2上には液晶層6が形成され、さらにこれを囲むように封止部材17が形成されている。
【0143】
図14(a)においては、封止部材17は液晶マイクロカプセルからなる層を完全に囲んでいる。したがって、流体18として低粘度の液体を用いた場合においても、流体18が封止部材に囲まれた空間の外部へと流出するおそれがない。
【0144】
図14(b)〜(f)においては、封止部材17は液晶マイクロカプセルからなる層を完全には囲んでいない。封止部材17をこのような形状に形成した場合、例えば、以下に示す方法により液晶表示素子を製造することができる。
【0145】
図15(a)〜(c)は、それぞれ、第2参考例に係る液晶表示素子の製造方法を概略的に示す断面図である。
【0146】
まず、図15(a)に示すように、基板2上に液晶マイクロカプセル7を配置して、液晶層6-1を形成する。カラー表示を行う場合には、液晶層6-1上に透明電極5-1、液晶層6-2、透明電極5-2、及び液晶層6-3を順次積層する。なお、液晶層6-1〜6-3では、液晶マイクロカプセル7の吸収波長がそれぞれ異なる。基板2上には、例えば、図14(b)に示すパターンで封止部材17を形成する。
【0147】
次に、基板2を僅かに傾け、液晶層6-1〜6-3を流体18で覆う。さらに、対向基板3と基板2とを貼り合せる。基板2,3の貼り合せは、封止部材17の開口部へ向けて行う。このとき、例えばローラ等を用いて基板2を基板3に対して押圧することにより、図15(b)に示すように、上記開口部から余分な流体18を排出することができる。
【0148】
余分な流体18を除去した後、図15(c)に示すように、接着剤19を用いて開口部を封止する。以上のようにして液晶表示素子1-1を得る。
【0149】
次に、第3参考例について説明する。本参考例においては、光散乱を低減するために、液晶材料の誘電率異方性及び粒径がそれぞれ異なる液晶マイクロカプセルが用いられる。
【0150】
図16に、第3参考例に係る液晶表示素子の断面図を概略的に示す。図16に示す液晶表示素子1において、液晶層6は、より大きな粒径を有する液晶マイクロカプセル7-4とより小さな粒径を有する液晶マイクロカプセル7-5とで構成されている。このように、粒径の異なる液晶マイクロカプセル7-4,7-5を用いた場合、液晶マイクロカプセル7-4間に形成される間隙を、液晶マイクロカプセル7-5で充填することができる。ここで、液晶マイクロカプセル7-4と液晶マイクロカプセル7-5とで透明被膜の屈折率がほぼ等しい場合、液晶マイクロカプセル7-5と液晶マイクロカプセル7-5との界面における光散乱が防止される。したがって、第3参考例によると、第1参考例において説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0151】
また、第3参考例によると、第1参考例とは異なり、液晶マイクロカプセル7-4間に形成される間隙は、液晶マイクロカプセル7-5で充填される。すなわち、液晶層6中で液晶材料の占める体積比をより高めることができる。したがって、光透過率の制御をより効率的に行うことが可能となる。
【0152】
液晶マイクロカプセル7-4の平均粒径は3〜50μmであることが好ましく、液晶マイクロカプセル7-5の平均粒径は0.1〜30μmであることが好ましい。また、液晶マイクロカプセル7-4の平均粒径R1と液晶マイクロカプセル7-5の平均粒径R2とは下記不等式を満たすことが好ましい。
【0153】
31/2 ・R2≦R1
平均粒径R1,R2が上記範囲内にあり、かつ上記不等式に示す関係を満たす場合、高い着色効率を有する液晶層を得ることができる。この場合、R1に対するR2の比は可能な限り大きいことが好ましい。上記比が極端に小さい場合、より高い着色効率を得ることができるが、光散乱が増加するおそれがある。
【0154】
上述のように、第3参考例によると、それぞれ粒径の異なる液晶マイクロカプセル7-4及び7-5が使用される。液晶マイクロカプセル7-4と液晶マイクロカプセル7-5とで粒径のみが異なるとすると、これら液晶マイクロカプセル7-4,7-5間では閾値電圧及び飽和電圧に違いを生ずる。そのため、電気光学特性の低下を生じ、良好な表示特性を得られないことがある。
【0155】
このような場合、液晶マイクロカプセル7-4と液晶マイクロカプセル7-5とで、誘電率異方性の異なる液晶材料を使用することが好ましい。より大きな粒径を有する液晶マイクロカプセル7-4においてより大きな誘電率異方性を有する液晶材料を使用し、より小さな粒径を有する液晶マイクロカプセル7-5においてより小さな誘電率異方性を有する液晶材料を使用することにより、閾値電圧等をほぼ一致させることができる。したがって、より良好な表示特性を得ることができる。
【0156】
液晶マイクロカプセル7-4,7-5間での閾値電圧の差は、0.2V以下であることが好ましい。この場合、良好な表示特性を得ることができる。また、液晶マイクロカプセル7-4,7-5間での誘電率異方性の差は、1.0〜5.0程度であることが好ましい。この場合、上記閾値電圧の差を0.2V以下とすることができる。
【0157】
次に、本発明の第4参考例について説明する。上述したように、第1〜第3参考例においては、液晶マイクロカプセル7間に形成される空隙を透明充填体、透明な流体、或いはより粒径の小さな液晶マイクロカプセルで充填することについて説明した。第4参考例においては、所定の溶媒中において正のゼータ電位を有する液晶マイクロカプセルと、負のゼータ電位を有する液晶マイクロカプセルとを混合して液晶層を形成することにより光散乱を低減する。
【0158】
図17に、第4参考例に係る液晶表示素子の概略を示す。この図で、液晶表示素子1の液晶層6は、所定の溶媒中で正のゼータ電位を有する液晶マイクロカプセル7-1と、負のゼータ電位を有する液晶マイクロカプセル7-2とで構成されている。
【0159】
図17に示す液晶表示素子1は、例えば、以下のようにして製造される。まず、液晶マイクロカプセル7-1と、液晶マイクロカプセル7-2とを、それぞれ別々に作製する。液晶マイクロカプセル7-1、7-2は、所定の溶媒、例えば水等の極性溶媒中で、それぞれ正のゼータ電位及び負のゼータ電位を有するように作製する。なお、液晶マイクロカプセル7-1,7-2のゼータ電位は、それぞれの透明被膜に用いる材料の種類を適宜選択することにより制御することができる。
【0160】
次に、液晶マイクロカプセル7-1,7-2を上記溶媒中に分散させて混合し、液晶マイクロカプセル分散液を調製する。この液晶マイクロカプセル分散液を、電極4が形成された基板2上に塗布する。このとき、液晶マイクロカプセル7-1、7-2はそれぞれ逆符号のゼータ電位を有しているため、一方が他方を囲むように配置された場合に最も安定となる。
【0161】
次に、基板2上に塗布された液晶マイクロカプセル分散液から溶媒を除去する。一方が他方を囲むように配置された液晶マイクロカプセル7-1,7-2は、それぞれの間に介在する溶媒を除去されることにより、接触面積の増加を生ずる。
【0162】
このような現象は、1種の液晶マイクロカプセルを用いた場合においても生ずる。しかしながら、それぞれ逆符号のゼータ電位を有する液晶マイクロカプセル7-1,7-2を用いた場合、1種の液晶マイクロカプセルを用いた場合に比べて、上記溶媒中で相互に接触することにより安定性がより高められるため、液晶マイクロカプセル7-1,7-2間での接触面積の増加がより促進される。その結果、1種の液晶マイクロカプセルを用いた場合に比べて、残留する空隙が低減されるのである。
【0163】
このように、図17に示す液晶表示素子1において、液晶マイクロカプセル7-1,7-2は相互に密着し、液晶層6に形成される空隙は、1種の液晶マイクロカプセルで構成される通常の液晶層に比べて少なくなっている。したがって、液晶表示素子1を図17に示す構成とすることにより、液晶層6の光散乱を低減することができる。
【0164】
液晶マイクロカプセル7-1,7-2の透明被膜は、液晶マイクロカプセル7の透明被膜に関して説明した材料を用いて形成することができる。液晶マイクロカプセル7-1,7-2のゼータ電位を制御するためにいずれの材料を用いるべきかは、用いる溶媒等により異なる。しかしながら、これら材料のうち、一般に、極性置換基がなく炭化水素のみからなるもの、或いはアミノ基、4級アンモニウム基等を有するものを用いることにより、正のゼータ電位を有する液晶マイクロカプセル7-1を作製することができる。また、一般に、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、スルホン酸基、或いは水酸基等を有するものを用いることにより、負のゼータ電位を有する液晶マイクロカプセル7-2を作製することができる。
【0165】
液晶マイクロカプセル7-1,7-2のゼータ電位の差は、100mV以上であることが好ましい。ゼータ電位の差を100mV以上にすることにより、液晶マイクロカプセル7-1,7-2間での密着性が高められ、空隙をより低減することができる。
【0166】
また、液晶マイクロカプセル7-1,7-2のゼータ電位の差は、300mV以下であることが好ましい。ゼータ電位の差が300mVを超えると、液晶マイクロカプセル分散液中で液晶マイクロカプセル7-1,7-2の凝集が生じ、液晶層6を均一に形成することができない場合がある。しかしながら、ゼータ電位の差を300mV以下にすることにより、不所望な凝集を防止することができる。
【0167】
次に、本発明の実施形態について説明する。上記第4参考例においては、光散乱を低減するために、正のゼータ電位を有する液晶マイクロカプセルと、負のゼータ電位を有する液晶マイクロカプセルとを用いる場合について説明した。本実施形態においては、液晶マイクロカプセルの表面積を増加させることによって光散乱を低減する。
【0168】
図18(a)〜(c)に、本発明の実施形態に係る液晶表示素子に用いられる液晶マイクロカプセルの概略を示す。なお、(a)及び(c)は液晶マイクロカプセルの正面図、(b)は(a)に示す液晶マイクロカプセルの側面図である。
【0169】
これら図18(a)〜(c)において、液晶マイクロカプセル7-3は、非球状の透明被膜と透明被膜に包含された液晶材料とで構成されている。図18(a)及び18Bに示す液晶マイクロカプセル7-3の表面には凹部が形成されており、図18(c)に示す液晶マイクロカプセル7-3の表面にはより大きな凹部が溝状に形成されている。
【0170】
また、図19に、上記液晶マイクロカプセル7-3を用いた液晶表示素子の断面図を示す。この図に示すように、液晶層6中で、液晶マイクロカプセル7-3間には殆ど空隙が生じていない。
【0171】
一般に、液晶マイクロカプセルは球状に形成され、このような液晶マイクロカプセルを用いて液晶層を形成する場合、第4参考例で述べたように、隣接する液晶マイクロカプセル間の接触面積を増加させることにより、空隙を低減することができる。
【0172】
しかしながら、隣接する液晶マイクロカプセル間の接触面積を増加させるためには、液晶マイクロカプセルを大きく変形させなければならない。ここで、一定の体積を考えた場合、球は最も表面積の小さな形状である。また、液晶マイクロカプセル中の液晶材料の体積は一定であり、収縮することはない。したがって、液晶マイクロカプセルを変形させるためには、透明被膜が膨張しなければならない。
【0173】
液晶マイクロカプセルの透明被膜は、透明樹脂で構成されるため、ある程度の変形は可能である。しかしながら、その変形は不十分である。また、十分に変形させるために過剰な圧力等を印加した場合は、透明被膜が破壊されるおそれがある。
【0174】
それに対し、図18(a)〜(c)に示す液晶マイクロカプセル7-3は、非球状の形状を有しているため、同じ体積を有する球に比べて表面積が大きい。したがって、液晶マイクロカプセル7-3は、透明被膜の膨張を伴うことなく、図19に示すように様々な形状をとることができる。
【0175】
本発明者らは、液晶マイクロカプセル7-3の形状と形成される空隙との関係を調べたところ、図18(b)に示すように、液晶マイクロカプセル7-3の投影と、その投影に外接する円20との距離の最大値Dが、外接する円20の半径Rの10%以上の場合に、透明被膜を破壊することなく、液晶マイクロカプセル7-3を十分に変形させて空隙を低減することができることを見出した。
【0176】
また、液晶マイクロカプセル7-3の投影と、その投影に外接する円20との距離の最大値Dが、外接する円20の半径Rの35%を超えると、透明被膜の表面積が過剰となり、液晶層形成後にも透明被膜に皺状の凹部が残留するため、光散乱が増加することが明らかになった。
【0177】
したがって、液晶マイクロカプセル7-3の投影と、その投影に外接する円20との距離の最大値Dが、外接する円20の半径Rの10〜35%の範囲内にある場合に、透明被膜を破壊することなく、光散乱を低減することができる。この範囲は、20〜30%であることがより好ましい。
【0178】
この非球状の液晶マイクロカプセル7-3は、従来の球状の液晶マイクロカプセルと混合して用いることができる。その場合、従来の球状の液晶マイクロカプセルは、混合物中で30重量%まで含有され得る。含有率が30重量%以内である場合、上記効果を得ることができる。
【0179】
以上説明した非球状の液晶マイクロカプセル7-3は、in situ重合法や懸濁重合法等により製造され、例えば水溶性モノマーを用いることにより非球状に形成される。
【0180】
すなわち、まず、液晶マイクロカプセル7-3の製造の際に、液晶材料中に水溶性モノマーを含有させる。次に、この水溶性モノマーが混合された液晶材料を、乳化液に粒子状に分散させると、液晶材料から水溶性モノマーの一部が乳化液中に溶出する。溶出した水溶性モノマーは、重合により形成された液晶マイクロカプセルの透明被膜中に浸入し、そこで重合する。その結果、透明被膜の表面積が増加し、非球状の液晶マイクロカプセル7-3が形成されるのである。なお、水溶性モノマーは、液晶材料に混合せずに、乳化液中に添加してもよい。水溶性モノマーを液晶材料と混合した場合、水溶性モノマーの水中への溶出量がカプセル間でばらつくことがある。すなわち、液晶材料に対する透明被膜の体積比がカプセル間でばらつく場合がある。それに対し、水溶性モノマーを乳化液中に添加した場合、上記ばらつきを低減することができる。
【0181】
上記非球状の液晶マイクロカプセル7-3は、モノマーの総量に対して5〜20重量%の架橋剤を使用することによっても形成することができる。この場合、モノマーを加熱により重合することにより、液晶材料が熱的に膨張した球状の液晶マイクロカプセルが形成される。球状の液晶マイクロカプセルは次に室温までに冷却され、それにより液晶材料の体積が減少する。その結果、非球状の液晶マイクロカプセル7-3が得られる。
【0182】
上記架橋剤の量が5重量%未満の場合、十分な強度を有する透明被膜が得られない場合がある。一方、架橋剤の量が20重量%を超える場合、光散乱が増加するおそれがある。
【0183】
また、この液晶マイクロカプセル7-3は、透明被膜の表面が親水性であることが好ましい。一般に、液晶マイクロカプセル分散液を塗布し、水等の溶媒を除去すると、隣接する液晶マイクロカプセル間で透明被膜が融着する。これは、溶媒が蒸発する際に生じる毛管現象、及び水等の溶媒と液晶マイクロカプセルの透明被膜との間の水素結合が関係していると考えられる。
【0184】
したがって、透明被膜の表面に、水素結合し得る親水性置換基を配置することにより、透明被膜の融着が促進され、液晶マイクロカプセル7-3間の空隙をより低減することができる。このような親水性は、例えば以下のようにして付与することができる。
【0185】
表面に親水性置換基が配置された液晶マイクロカプセル7-3を製造するに当り、まず、一方で、液晶材料、疎水性モノマー、及びメチルメタクリレート等を混合して液晶組成物を調製する。また、他方で、所定の溶媒に乳化剤を添加して乳化液を形成する。なお、液晶組成物には、必要に応じて架橋剤及び開始剤を混合する。
【0186】
次に、上記乳化液中に液晶組成物を粒子(液滴)状に分散させ、攪拌する。さらに、この乳化液に水溶性モノマーを添加する。その結果、粒子状に分散された液晶組成物中の疎水性モノマーと、水溶性モノマーとが重合して、粒子状の液晶組成物の表面に透明被膜が形成され、非球状の液晶マイクロカプセル7-3が製造される。
【0187】
このようにして製造される液晶マイクロカプセル7-3は、上述のように水溶性モノマーを乳化液中に添加させて製造される。そのため、水溶性モノマーと疎水性モノマーとの反応の際、粒子状の液晶組成物の表面で、水溶性モノマーはその親水基が乳化液側に向くように配向する。その結果、透明被膜の外側表面に親水基が配置され、液晶マイクロカプセル7-3に高い親水性が付与されるのである。
【0188】
以上説明した方法では、乳化液に液晶組成物を分散させた後に水溶性モノマーを添加したが、乳化液に予め水溶性モノマーを添加した後に液晶組成物を分散させて液晶マイクロカプセル7-3を製造してもよい。
【0189】
親水性の液晶マイクロカプセル7-3を製造するのに用いられる疎水性モノマーとしては、疎水性のアクリル酸エステル;疎水性のメタクリル酸エステル;疎水性のフマル酸エステル;及びイソプレン、クロロプレン、ブタジエン、フルオロプレン等のジエン誘導体を挙げることができる。
【0190】
上記疎水性のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、及びフマル酸エステルとしては、カルボニル基に結合する酸素原子に、−Cn H2n+1で示される直鎖状の飽和炭化水素基;−Cn H2n-1基等で示される環状或いは不飽和結合を有する直鎖状の炭化水素基;−Cn H2n-mFm+1 で示される少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状の炭化水素基;−Cn H2n-mFm-1 で示される少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された環状の炭化水素基;フェニル基、アルキルフェニル基、及びこれらの水素原子の少なくとも1つをフッ素原子で置換した置換基等を有する化合物を用いることができる。なお、式中、nは2以上の整数を示し、mは2以上でありかつ2n以下の整数を示す。
【0191】
また、親水性の液晶マイクロカプセル7-3を製造するのに用いられる水溶性モノマーとしては、水溶性のアクリル酸エステル;水溶性のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル;メタクリロニトリル誘導体及びその誘導体;複素環を有するビニルモノマー等を挙げることができる。
【0192】
上記水溶性のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、カルボニル基に結合する酸素原子に、アミノ基、アミド基、イミド基等のアミン類の置換基;水酸基;及びグリシジルエーテル基等の親水基をエステル部分に有する化合物やメチルメタクリレート等を用いることができる。
【0193】
これら化合物を液晶材料に混合する場合、用いる材料により異なるが、一般に、液晶材料に対し5〜30重量%まで含有させることができる。また、乳化液中に含有させる場合、乳化液に対し0.05〜10重量%まで含有させることができる。
【0194】
以上説明した第1〜第4参考例及び実施形態において、液晶層6には、加熱処理を施すことが好ましい。液晶層6を、液晶マイクロカプセルの透明被膜のガラス転移温度以下の温度で加熱することにより、空隙を低減することができる。
【0195】
また、液晶マイクロカプセル分散液を電極4等に塗布した後、真空下で脱泡処理することが好ましい。このような脱泡処理を施すことにより、液晶層6に残留する気泡を除去し、空隙をより低減することができる。
【0196】
なお、以上説明した第1〜第4参考例及び実施形態において、特に記載がない限り、同一の番号が付された部材には同様の材料を用いることができる。また、同一の参照番号が付された部材について重複する説明は省略されている。
【0197】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0198】
(参考例1)
以下に示す方法により、図1に示す液晶表示素子1を作製した。
【0199】
液晶材料としては、正の誘電異方性を有するネマチック液晶であるメルク社製ZLI−1840を用いた。この液晶材料80重量部、水溶性モノマーであるメチルメタクリレート7重量部、疎水性のモノマーであるイソブチルメタクリレート7重量部、架橋剤であるエチレングリコールジメタクリレート1重量部及びベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合・溶解した。この混合液を、3重量部のポリビニルアルコールとともに300重量部の純水中に投入し、ホモジナイザで乳化した。
【0200】
これを85℃の温度、500rpmの攪拌速度で1時間攪拌して、上記モノマー成分を重合させた。1時間経過後、1μmの孔径のフィルタを用いて、上記混合液を濾過し、純水で3回洗浄することにより、液晶材料が透明被膜で包含された液晶マイクロカプセル7を得た。なお、この液晶マイクロカプセル7は、平均粒径が6μmであった。
【0201】
次に、この液晶マイクロカプセル7と、スチレン−ブタジエン共重合体からなり平均粒径が0.3μmの透明微粒子8とを10:1の重量比で混合し、この混合物を10重量%のイソプロピルアルコール水溶液中に10重量%の濃度で分散させて液晶マイクロカプセル分散液を調製した。
【0202】
この液晶マイクロカプセル分散液を、透明電極4が形成されたガラス基板2上に塗布・乾燥することにより、液晶層6を形成した。液晶層6上に、透明電極5が形成されたガラス基板3を配置し、さらに全体をポリアミド製の袋に入れた。このポリアミド製の袋の内部を減圧し、120℃の温度に加熱・密着することにより、液晶表示素子1を作製した。
【0203】
以上のようにして作製した液晶表示素子1を、顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の白色から透明状態へと変化した。透過吸光度から求めたコントラスト比は30であった。
【0204】
(比較例1)
透明微粒子8を用いなかったこと以外は、参考例1と同様にして液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子について、顕微鏡で観察したところ目立った空隙は見出されなかったが、同条件でのコントラスト比は23に減少していた。これは、透過光強度が減少したためであり、液晶層内に微小な空隙がより多く存在することを示している。
【0205】
(参考例2)
図1に示す液晶表示素子1を、二色性色素を用いて以下に示す方法により作製した。
【0206】
まず、チッソ社製フッ素系液晶LIXON−5065XXに三井東圧社製の黒色二色性色素S−435を1重量%溶解して液晶材料を調製した。この液晶材料80重量部、水溶性モノマーであるアクリロニトリル7重量部、疎水性モノマーである2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート7重量部、架橋剤であるジビニルベンゼン1重量部及びベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合・溶解した。この混合液を、3重量部のポリビニルアルコールとともに300重量部の純水中に投入し、ホモジナイザで乳化した。
【0207】
これを85℃の温度、500rpmの攪拌速度で1時間攪拌して、上記モノマー成分を重合させた。1時間経過後、1μmの孔径のフィルタを用いて、上記混合液を濾過し、純水で3回洗浄することにより、液晶材料が透明被膜で包含された液晶マイクロカプセル7を得た。なお、この液晶マイクロカプセル7は、平均粒径が7μmであった。
【0208】
次に、この液晶マイクロカプセル7と、ポリメチルメタクリレートからなり平均粒径が0.3μmの透明微粒子8とを10:1の重量比で混合し、この混合物を10重量%のイソプロピルアルコール水溶液中に10重量%の濃度で分散させて、液晶マイクロカプセル分散液を調製した。
【0209】
この液晶マイクロカプセル分散液を、アルミニウム反射電極4が形成されたガラス基板2上に塗布・乾燥することにより、液晶層6を形成した。液晶層6上に、透明電極5が形成された高分子フィルム3をヒートローラでラミネートすることにより、液晶表示素子1を作製した。
【0210】
以上のようにして作製した液晶表示素子1を顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の黒色から透明状態へと変化した。反射濃度計から求めたコントラスト比は4.2であった。
【0211】
(比較例2)
透明微粒子8を用いなかったこと以外は、参考例2と同様にして液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子について、顕微鏡で観察したところ目立った空隙は見出されなかったが、同条件でのコントラスト比は3.2に減少していた。これは、黒色の色濃度が減少したためであり、液晶層内に微小の空隙がより多く存在することを示している。
【0212】
(参考例3)
図1に示す液晶表示素子1を、負の誘電異方性を有する液晶化合物を液晶材料として用いて、以下に示す方法により作製した。
【0213】
液晶材料としては、負の誘電異方性を有するネマチック液晶であるメルク社製ZLI−2659を液晶材料として用いた。この液晶材料80重量部、水溶性モノマーであるメチルメタクリレート3重量部、疎水性モノマーであるオクタデシルメタクリレート11重量部、架橋剤であるジビニルベンゼン1重量部、及び架橋剤であるベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合・溶解した。この混合液を、3重量部の界面活性剤とともに300重量部の純水中に投入し、ホモジナイザで乳化した。
【0214】
これを85℃の温度、500rpmの攪拌速度で1時間攪拌して、上記モノマー成分を重合させた。1時間経過後、1μmの孔径のフィルタを用いて、上記混合液を濾過し、純水で3回洗浄することにより、液晶材料が透明被膜で包含された液晶マイクロカプセル7を得た。なお、この液晶マイクロカプセル7は、平均粒径が6μmであった。
【0215】
次に、この液晶マイクロカプセル7と、ポリ塩化ビニルからなり平均粒径が0.5μmの透明微粒子8とを10:1の重量比で混合し、この混合物を10重量%のイソプロピルアルコール水溶液中に10重量%の濃度で分散させて、液晶マイクロカプセル分散液を調製した。
【0216】
この液晶マイクロカプセル分散液を、透明電極4が形成されたガラス基板2上に塗布・乾燥することにより、液晶層6を形成した。液晶層6上に、透明電極5が形成されたガラス基板3を配置し、さらに全体をポリアミド製の袋に入れた。ポリアミド製の袋の内部を減圧し、100℃の温度に加熱・密着することにより、液晶表示素子1を作製した。
【0217】
以上のようにして作製した液晶表示素子1を、顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、10Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の透明状態から白色へと変化した。透過吸光度から求めたコントラスト比は30であった。
【0218】
(比較例3)
透明微粒子8を用いなかったこと以外は、参考例3と同様にして液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子について、顕微鏡で観察したところ目立った空隙は見出されなかったが、同条件でのコントラスト比は23に減少していた。これは、透過光強度が減少したためであり、液晶層内に微小の空隙がより多く存在することを示している。
【0219】
(参考例4)
図20(a)及び(b)に示す3層構造のカラー液晶表示素子1-1を、透明微粒子8を用いて以下に示す方法により製造した。なお、図20(a)及び(b)は、それぞれ、参考例4に係る液晶表示素子を概略的に示す斜視図及び断面図である。
【0220】
3層構造の液晶表示素子1-1を製造するに当り、まず、チッソ社製フッ素系液晶LIXON5035XXに、上記化学式(11)に示すイエロー色のアントラキノン系二色性色素を溶解して液晶材料21-1を調製した。この液晶材料21-1を80重量部、フッ素系メタクリレートを15重量部、ベンゾイルパーオキサイドを0.2重量部の比で混合し、3重量部の界面活性剤を溶解した純水300重量部に滴下・重合した。なお、この滴下・重合は、界面活性剤を含有する純水を65℃に保ち、1000rpmの速度で攪拌しながら行った。
【0221】
1時間重合後、孔径が1μmのフィルタで濾過し、極端に粒径の小さい液晶マイクロカプセルを除去した後、純水で3回洗浄し乾燥することにより、平均粒径5μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0222】
次に、この液晶マイクロカプセル30重量部とエポキシプレポリマー(エピコート)8重量部とを混合し、5重量%のゼラチン水溶液200重量部に滴下・攪拌して微小滴状に分散させた。この分散液の温度を40℃に保ち、さらに、アミン系硬化剤3重量部を純水50重量部に溶解した硬化剤水溶液を滴下しながら、1時間攪拌を続けた。
【0223】
1時間経過後、孔径1μmのフィルタで濾過し、極端に粒径の小さい液晶マイクロカプセルを除去した後、純水で3回洗浄し乾燥することにより、液晶材料21-1がフッ素系ポリメタクリレート膜とエポキシ膜とで包含された2重構造のイエローの液晶マイクロカプセルを得た。なお、このイエローの液晶マイクロカプセルの平均粒径は6μmであった。
【0224】
次に、上記化学式(11)に示す二色性色素の代わりに、化学式(20)に示すマゼンタ色のアントラキノン系二色性色素を用いて液晶材料21-2を調製したこと以外は、イエローの液晶マイクロカプセルと同様にして、マゼンタの液晶マイクロカプセルを作製した。なお、このマゼンタの液晶マイクロカプセルの平均粒径は6μmであった。
【0225】
さらに、上記化学式(11)に示す二色性色素の代わりに、化学式(29)に示すシアン色のアントラキノン系二色性色素を用いて液晶材料21-3を調製したこと以外は、イエローの液晶マイクロカプセルと同様にして、シアンの液晶マイクロカプセルを作製した。なお、このシアンの液晶マイクロカプセルの平均粒径は6μmであった。
【0226】
次に、上記イエローの液晶マイクロカプセルと、ポリ塩化ビニルからなり平均粒径が0.5μmの透明微粒子8とを10:1の重量比で混合し、この混合物を10重量%のイソプロピルアルコール水溶液中に10重量%の濃度で分散させて、液晶マイクロカプセル分散液を調製した。
【0227】
この液晶マイクロカプセル分散液を、ガラス基板2上に塗布・乾燥し、テフロン板を押し付けて、120℃で3時間加熱・密着させることにより、液晶マイクロカプセルの最外層のエポキシ膜をガラス化させた。室温にまで冷却してガラス化したエポキシ膜を硬化させた後、テフロン板をはずして液晶層6-1を形成した。なお、ガラス基板2上には複数系統のTFT30が形成され、その上には絶縁層(図示せず)を介してアルミニウムからなる反射電極4が形成されている。
【0228】
このようにして形成した液晶層6-1上に、透明導電材料をスパッタリングし、これをフォトリソグラフィー及びエッチングによりパターニングして、透明電極5-1を形成した。なお、透明電極5-1は、透明導電材料の粉末を所定の溶媒に分散させた分散液をパターニング印刷することによっても形成することができる。
【0229】
次に、上述の方法を用いて、透明電極5-1上に、マゼンタの液晶層6-2、透明電極5-2、シアンの液晶層6-3、及び透明電極5-3を順次積層することにより、図20(a)及び(b)に示す液晶表示素子1-1を作製した。
【0230】
以上のようにして作製した液晶表示素子1-1において、反射電極4、透明電極5-1、5-2は、それぞれTFT30に電気的に接続されている。透明電極5-3上には、ガラス基板または高分子フィルムを配置してもよい。その場合、予め透明電極5-3が設けられたガラス基板または高分子フィルムを用いて液晶表示素子1-1を作製することができる。また、液晶層5-1、5-2、5-3の積層順に特に制限はない。
【0231】
なお、図20(a)及び(b)において、液晶マイクロカプセル及び透明微粒子は省略して描かれており、図20(a)においては、液晶マイクロカプセル中の液晶材料21-nのみが描かれている。
【0232】
図21(a)〜(h)に、この液晶表示素子1-1の駆動方法の概略を示す。図21(a)〜(h)は、液晶表示素子1-1に印加する電圧の組み合せ、液晶材料の配向、及び表示色の関係を概略的に示す図である。また、図中、Gは基準電位であるGNDを意味し、Vは基準電位とは異なる所定の電位を意味する。液晶層を挟持する一対の電極の電位をそれぞれG及びVとすることにより、液晶層中の液晶材料の配向が一方向へ制御される。
【0233】
上記液晶表示素子1-1でカラー表示を行う場合、図21(a)〜(h)に示すように、印加する電圧のパターンを演算回路で予め決めておく。なお、図中、1つの表示色に対して2通りの電圧パターンが描かれているのは、交流電圧を印加するためである。
【0234】
液晶表示素子1-1を、図21(a)〜(h)に示す電圧パターンで駆動したところ、混色性が良好であり、それぞれの色を良好に表示できることが確認された。また、図21(a)及び(e)に示すように、50Hz、5Vの交流電圧を印加して白色及び黒色表示を行ったところ、コントラスト比は5.0であった。
【0235】
(比較例4)
透明微粒子8を用いないこと以外は、参考例4と同様にして3層構造の液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子を50Hz、5Vの交流電圧を印加して駆動したところ、白黒のコントラスト比が4.3と参考例4の液晶表示素子1-1に比べて低く、混色性も不十分であった。
【0236】
(参考例5)
透明微粒子8を用いずに、基板2上に図8(a)に示す突起部9-4を形成したこと以外は参考例1と同様にして、図2に示す液晶表示素子1を作製した。
【0237】
すなわち、透明電極4が設けられた基板2上に、感光性アクリル樹脂を用いて、図8(a)に示す突起部9-4を形成し、この基板2上に、透明微粒子8を用いないこと以外は参考例1と同様にして、液晶マイクロカプセル分散液の塗布等を行い、液晶表示素子1を作製した。
【0238】
以上のようにして作製した液晶表示素子1を、顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の白色から透明状態へと変化した。透過吸光度から求めたコントラスト比は30であった。
【0239】
(参考例6)
透明微粒子8を用いずに、基板2上に図8(b)に示す突起部9-5を形成したこと以外は参考例2と同様にして、図2に示す液晶表示素子1を作製した。
【0240】
すなわち、反射電極4が設けられた基板2上に、感光性ポリイミドを用いて、図8(b)に示す突起部9-5を形成し、この基板2上に、透明微粒子8を用いないこと以外は参考例1と同様にして、液晶マイクロカプセル分散液の塗布等を行い、液晶表示素子1を作製した。
【0241】
以上のようにして作製した液晶表示素子1を、顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の黒色から透明状態へと変化した。反射濃度計から求めたコントラスト比は4.2であった。
【0242】
(参考例7)
図8(b)に示す突起部9-5を形成する代わりに、図3に示す突起部9を形成したこと以外は参考例6と同様にして、図2に示す液晶表示素子1を作製した。
【0243】
すなわち、まず、反射電極4が設けられた基板2上に、SiO2層を形成した後、レジストを用いてパターニングすることにより、図3に示すようにSiO2からなる突起部9を形成した。次に、突起部9が形成された基板2上に、透明微粒子8を用いないこと以外は参考例1と同様にして、液晶マイクロカプセル分散液の塗布等を行い、液晶表示素子1を作製した。
【0244】
以上のようにして作製した液晶表示素子1を、顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の黒色から透明状態へと変化した。反射濃度計から求めたコントラスト比は4.2であった。
【0245】
(参考例8)
図8(b)に示す突起部9-5を形成せずに、図4(a)及び(b)に示す突起部9-1を形成したこと以外は参考例6と同様にして、図2に示す液晶表示素子1を作製した。
すなわち、反射電極4上にポリイミド膜を形成し、このポリイミド膜を型押しすることにより、図4(a)及び(b)に示す突起部9-1を形成した。次に、突起部9-1が形成された基板2上に、透明微粒子8を用いないこと以外は参考例1と同様にして、液晶マイクロカプセル分散液の塗布等を行い、液晶表示素子1を作製した。
【0246】
すなわち、反射電極4上にポリイミド膜を形成し、このポリイミド膜を型押しすることにより、図4(a)及び(b)に示す突起部9-1を形成した。次に、突起部9-1が形成された基板2上に、透明微粒子8を用いないこと以外は実施例1と同様にして、液晶マイクロカプセル分散液の塗布等を行い、液晶表示素子1を作製した。
【0247】
以上のようにして作製した液晶表示素子1を顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の黒色から透明状態へと変化した。反射濃度計から求めたコントラスト比は4.5であった。
【0248】
(参考例9)
透明微粒子8を用いずに、中間基板を用い、図6(a)及び(b)に示す突起部9-3を形成したこと以外は参考例4と同様にして、図20(a)及び(b)に示すカラー液晶表示素子1-1を作製した。
【0249】
すなわち、まず、厚さ0.7mmのガラス基板2、及び厚さ0.5mmのガラスからなる2枚の中間基板(図示せず)のそれぞれに、TFT、ゲート配線、及び信号配線を形成した。ガラス基板2のTFTを形成した面に、厚さ2μmのポリイミド膜(図示せず)を形成し、型押しにより表面にディンプル加工を施した。このポリイミド膜上に、アルミニウムからなる反射電極4を1000オングストロームの厚さで蒸着し、基板2に形成されたTFTのソース電極に電気的に接続した。
【0250】
中間基板のそれぞれの両面には、500オングストロームの厚さで電極5-1、5-2としてITO膜を形成し、TFTを形成した面のITO膜をパターニングして、各画素毎にTFTのソース電極に電気的に接続した。
【0251】
次に、基板2及び2枚の中間基板のそれぞれについて、TFTを形成した面に、感光性ポリイミドを用いて図6(a)及び(b)に示す突起部9-3を形成した。これら基板2及び2枚の中間基板のそれぞれの突起部9-3が形成された面に、参考例4と同様にしてそれぞれイエロー、マゼンタ、シアンの液晶層6-1、6-2、6-3を形成した。
【0252】
また、基板2とは別の厚さ0.7mmのガラス基板(図示せず)の一方の主面に、500オングストロームの厚さで電極5-3としてITO膜を形成した。
【0253】
これら基板2及び2枚の中間基板を、液晶層6-1、6-2、6-3が基板2側からイエロー、マゼンタ、シアンの順に配置されるように積層し、さらに液晶層6-3上に、上記ガラス基板を配置し、外周部を周辺シール剤であるエポキシ樹脂で封止した。これを、120℃、真空下で2時間加熱・密着させるとともに、周辺シール剤であるエポキシ樹脂を硬化することにより、液晶表示素子1-1を作製した。
【0254】
以上のようにして作製した液晶表示素子1-1を、図21(a)〜(h)に示す電圧パターンで駆動したところ、混色性が良好であり、それぞれの色を良好に表示できることが確認された。また、図21(a)及び(e)に示すように、50Hz、5Vの交流電圧を印加して白色及び黒色表示を行ったところ、コントラスト比は5.0であり、色調も良好であった。
【0255】
(比較例5)
突起部9-3を設けないこと以外は、参考例9と同様にして3層構造の液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子を50Hz、5Vの交流電圧を印加して駆動したところ、白黒のコントラスト比が4.3と参考例4の液晶表示素子1-1に比べて低く、混色性も不十分であった。
【0256】
(参考例10)
図11(a)〜(c)に示す方法により、図10に示す液晶表示素子1を作製した。
【0257】
液晶材料としては、正の誘電異方性を有するネマチック液晶であるメルク社製LIXON5052を用いた。この液晶材料80重量部、アクリロニトリル9重量部、イソプレン7重量部、架橋剤であるジビニルベンゼン1重量部、及び開始剤であるベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合・溶解した。この混合液を、3重量部のポリビニルアルコールとともに300重量部の純水中に投入し、多孔質ガラスを用いた膜乳化法で乳化した。
【0258】
これを85℃の温度、500rpmの攪拌速度で1時間攪拌して、上記モノマー成分を重合させた。1時間経過後、1μmの孔径のフィルタを用いて上記混合液を濾過し、純水で洗浄することにより、液晶材料が透明被膜で包含された液晶マイクロカプセル7を得た。なお、この液晶マイクロカプセル7は、平均粒径が12μmであった。
【0259】
次に、この液晶マイクロカプセル7と、イソプレンゴムからなる透明微粒子8とを10:1の重量比で混合し、この混合物を、2重量%のポリビニルピロリドン水溶液中に25重量%の濃度で分散させて液晶マイクロカプセル分散液を調製した。
【0260】
次に、図11(a)に示すように、この液晶マイクロカプセル分散液を、アルミニウムからなる反射電極4が形成されたガラス基板2上に、スリットコータにより塗布した。さらに、図11(b)に示すように、乾燥することにより溶媒を除去し、電極4上で液晶マイクロカプセル7と透明微粒子8とからなる層を形成した。
【0261】
次に、透明微粒子8のガラス転移温度以上、液晶マイクロカプセル7の透明被膜のガラス転移温度未満の温度でエージングして、透明微粒子8をガラス化した。これを冷却することにより、図11(c)に示すように、ガラス化した透明微粒子8を硬化させて樹脂12を形成し、液晶マイクロカプセル7間の空隙が透明被膜と一体化した樹脂12で充填された液晶層6を形成した。
【0262】
さらに、液晶層6上に、透明電極5が形成された高分子フィルム3を配置し、ヒートローラでラミネートすることにより、液晶表示素子1を作製した。
【0263】
以上のようにして作製した液晶表示素子1を、顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、12Vの交流電圧を印加した時の、光透過率は90%であり、コントラスト比は3:1と良好であった。
【0264】
(比較例6)
透明微粒子8を用いずに液晶層8を形成したこと以外は、参考例10と同様にして液晶表示素子を作製した。すなわち、液晶層6の空隙を樹脂12で充填せずに液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子を50Hz、12Vの交流電圧を印加して駆動したところ、光透過率は75%であり、液晶層6の空隙を樹脂12で充填した上記参考例10の液晶表示素子1に比べて、コントラストが低下していた。
【0265】
(参考例11)
ポリビニルピロリドン水溶液の代わりに、ヒドロキシメチルエチルセルロース水溶液を用いたこと以外は参考例10と同様にして、図10に示す液晶表示素子1を作製した。
【0266】
この液晶表示素子1を、顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、12Vの交流電圧を印加した時の、光透過率は92%であり、コントラスト比は3:1と良好であった。
【0267】
(比較例7)
透明微粒子8を用いずに液晶層8を形成したこと以外は、参考例11と同様にして液晶表示素子を作製した。すなわち、液晶層6の空隙を樹脂12で充填せずに液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子を50Hz、12Vの交流電圧を印加して駆動したところ、光透過率は75%であり、液晶層6の空隙を樹脂12で充填した上記参考例11の液晶表示素子1に比べて、コントラストが低下していた。
【0268】
(参考例12)
図12(a)〜(d)に示す方法により、図10に示す液晶表示素子1を作製した。
【0269】
液晶材料としては、正の誘電異方性を有するネマチック液晶であるメルク社製LIXON5052を用いた。この液晶材料80重量部、メチルメタクリレート7重量部、ジイソブチルフマル酸7重量部、及び架橋剤であるTMPTA0.5重量部を混合・溶解した。この混合液を、3重量部のポリビニルアルコールとともに300重量部の純水中に投入し、ホモジナイザで乳化した。
【0270】
これを60℃の温度、500rpmの攪拌速度で1時間攪拌して、上記モノマー成分を重合させた。1時間経過後、1μmの孔径のフィルタを用いて上記混合液を濾過し、純水で3回洗浄することにより、液晶材料が透明被膜で包含された液晶マイクロカプセル7を得た。なお、この液晶マイクロカプセル7は、平均粒径が6μmであった。
【0271】
次に、この液晶マイクロカプセル7を、1重量%のヒドロキシメチルセルロース水溶液中に20重量%の濃度で分散させて液晶マイクロカプセル分散液を調製し、減圧下(1Torr)で攪拌して脱泡処理を施した。
【0272】
脱泡処理後の液晶マイクロカプセル分散液を、透明電極4が形成されたガラス基板2上に、ディッピングにより塗布・乾燥して、図12(a)に示すように液晶マイクロカプセル7を積層した。これを加熱して、図12(b)に示すように、それぞれの液晶マイクロカプセル7の透明被膜を融着させた。なお、このとき、液晶マイクロカプセル7間には、空隙が残留している。
【0273】
次に、図12(c)に示すように、積層された液晶マイクロカプセル7上に、常温下で、4重量%のポリビニルアルコール(分子量3000)水溶液をスリットコータを用いてオーバーコートした。なお、ポリビニルアルコール水溶液は、0.05μm(液晶マイクロカプセル7が形成する層の厚さの1%以下程度)の厚さで塗布した。
【0274】
さらに、図12(d)に示すように、このポリビニルアルコール水溶液を液晶マイクロカプセル7間に浸透させ、乾燥することにより、液晶マイクロカプセル7間の空隙が樹脂12で充填された液晶層6を形成した。
【0275】
液晶層6上に、透明電極5が形成されたガラス基板3を配置し、減圧下(1Torr)で封止することにより、液晶表示素子1を作製した。
【0276】
以上のようにして作製した液晶表示素子1を、顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、12Vの交流電圧を印加した時の、光透過率は92%であり、コントラスト比は3:1と良好であった。
【0277】
(比較例8)
液晶層6の形成にポリビニルアルコール水溶液を用いなかったこと以外は、参考例12と同様にして液晶表示素子を作製した。すなわち、液晶層6の空隙を樹脂12で充填せずに液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子を50Hz、12Vの交流電圧を印加して駆動したところ、光透過率は81%であり、液晶層6の空隙を樹脂12で充填した上記参考例12の液晶表示素子1に比べて、コントラストが低下していた。
【0278】
(参考例13)
ジイソブチルフマル酸の代わりにイソプレンを用いて液晶マイクロカプセル7を作製したこと以外は参考例12と同様にして、図10に示す液晶表示素子1を作製した。
【0279】
この液晶表示素子1を、顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、12Vの交流電圧を印加した時の、光透過率は92%であり、コントラスト比は3:1と良好であった。
【0280】
(比較例9)
液晶層6の形成にポリビニルアルコール水溶液を用いなかったこと以外は、参考例13と同様にして液晶表示素子を作製した。すなわち、液晶層6の空隙を樹脂12で充填せずに液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子を50Hz、12Vの交流電圧を印加して駆動したところ、光透過率は81%であり、液晶層6の空隙を樹脂12で充填した上記参考例13の液晶表示素子1に比べて、コントラストが低下していた。
【0281】
(参考例14)
以下に示す方法により、図10に示す液晶表示素子1を作製した。
【0282】
液晶材料としては、正の誘電異方性を有するネマチック液晶であるメルク社製LIXON5052を用いた。この液晶材料80重量部、ジイソブチルフマル酸14重量部、及び架橋剤であるTMPTA0.5重量部を混合・溶解した。この混合液を、3重量部のポリビニルアルコールとともに300重量部の純水中に投入し、ホモジナイザで乳化した。
【0283】
これを60℃の温度、500rpmの攪拌速度で1時間攪拌して、上記モノマー成分を重合させた。1時間経過後、1μmの孔径のフィルタを用いて上記混合液を濾過し、純水で3回洗浄することにより、液晶材料が透明被膜で包含された液晶マイクロカプセル7を得た。なお、この液晶マイクロカプセル7は、平均粒径が6μmであった。
【0284】
次に、この液晶マイクロカプセル7を3重量%のポリエチレングリコール水溶液中に20重量%の濃度で分散させて液晶マイクロカプセル分散液を調製し、減圧下(10-2Torr)で攪拌して脱泡処理を施した。この脱泡処理後の液晶マイクロカプセル分散液について粒度分布測定を行ったところ、サブミクロンオーダーの粒子は観測されなかった。
【0285】
さらに、この液晶マイクロカプセル分散液を、透明電極4が形成されたプラスチック基板2上に、スリットコータにより塗布・乾燥することにより溶媒を除去して、液晶層6を形成した。このとき、液晶マイクロカプセル7間には、ポリエチレングリコールが充填されたが、空隙が残留していた。
【0286】
次に、液晶層6上に、透明電極5が形成されたプラスチック基板3を配置し、減圧下(10-3Torr)でラミネートすることにより、液晶表示素子1を作製した。これにより、液晶マイクロカプセル7間に残留する空隙が低減された。
【0287】
以上のようにして作製した液晶表示素子1を、顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、12Vの交流電圧を印加した時の、光透過率は90%であり、コントラスト比は3.0と良好であった。
【0288】
(参考例15)
プラスチック基板3のラミネートを、減圧下(10-3Torr)で行わなかったこと以外は、参考例14と同様にして液晶表示素子を作製した。すなわち、液晶層6の空隙の樹脂12で完全に充填せずに液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子を50Hz、12Vの交流電圧を印加して駆動したところ、光透過率は80%であり、液晶層6の空隙を樹脂12で完全に充填した上記参考例14の液晶表示素子1に比べて、コントラストが低下していた。
【0289】
(参考例16)
以下に示す方法により、それぞれ吸収波長の異なる3層の液晶層を積層して、図17に示す液晶表示素子1を作製した。
【0290】
まず、ネマチック液晶であるメルク社製ZLI−1840に、イエロー二色性色素G−232を1重量%の濃度で溶解して液晶材料21-1を調製した。この液晶材料21-1を80重量部、水溶性モノマーであるアクリル酸を7重量部、疎水性モノマーであるイソブチルメタクリレートを13重量部、架橋剤であるエチレングリコールジメタクリレートを1重量部及びベンゾイルパーオキサイドを0.2重量部の比で混合・溶解した。この混合液を、3重量部のポリビニルアルコールとともに300重量部の純水中に投入し、ホモジナイザで乳化した。
【0291】
これを85℃の温度、500rpmの攪拌速度で攪拌して、上記モノマー成分を重合させた。1時間攪拌後、1μmの孔径のフィルタを用いて、上記混合液を濾過し、純水で3回洗浄することにより、負のゼータ電位を有するイエローの液晶マイクロカプセル7-2を得た。なお、上記負のゼータ電位を有するイエローの液晶マイクロカプセル7-2は、平均粒径が6μmであり、純水中でのゼータ電位は−50mVであった。
【0292】
次に、水溶性モノマーとして、アクリル酸の代わりにアミノエチルメタクリレートを用いたこと以外は同様にして、正のゼータ電位を有するイエローの液晶マイクロカプセル7-1を得た。なお、上記正のゼータ電位を有するイエローの液晶マイクロカプセル7-1は、平均粒径が6μmであり、純水中でのゼータ電位は+70mVであった。
【0293】
次に、イエロー二色性色素G−232の代わりに、三井東圧社製のマゼンタ二色性色素M−777を用いて液晶材料21-2を調製したこと以外は同様にして、正及び負のゼータ電位を有するマゼンタの液晶マイクロカプセル7-1、7-2をそれぞれ作製した。
【0294】
さらに、イエロー二色性色素G−232の代わりに、三井東圧社製のシアン二色性色素SI−501を用いて液晶材料21-3を調製したこと以外は同様にして、正及び負のゼータ電位を有するシアンの液晶マイクロカプセル7-1、7-2をそれぞれ作製した。
【0295】
以上のようにして作製した液晶マイクロカプセル7-1、7-2を、各色毎に等重量で混合し、それぞれ純水中に分散させて、イエロー、マゼンタ、シアンの液晶マイクロカプセル分散液を調製した。
【0296】
これら液晶マイクロカプセル分散液を、拡散反射電極4が設けられた基板2上に、順次塗布・乾燥して、液晶層6を形成した。なお、液晶層6は、基板2側から、イエロー、マゼンタ、シアンの液晶層が順次積層された3層構造を有している。
【0297】
次に、液晶層6上に、透明電極5が形成されたガラス基板3を配置し、さらに全体をポリアミド製の袋に入れた。このポリアミド製の袋の内部を減圧し、120℃の温度に加熱・密着することにより、液晶表示素子1を作製した。
【0298】
以上のようにして作製した液晶表示素子1を、顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、25Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の黒色から透明状態へと変化した。反射吸光度から求めたコントラスト比は6であった。
【0299】
(比較例10)
ゼータ電位の異なる液晶マイクロカプセル7-1、7-2を混合して用いずに、正のゼータ電位を有する液晶マイクロカプセル7-1のみを用いて液晶層6を形成したこと以外は、参考例16と同様にして液晶表示素子を作製した。また、同様にして、負のゼータ電位を有する液晶マイクロカプセル7-2のみを用いて、液晶表示素子を作製した。
【0300】
これら液晶表示素子について顕微鏡で観察したところ、いずれの場合も空隙が見出された。また、同条件でのコントラスト比が低下しており、色調はシアン色に偏っていた。すなわち、混色性が低下していた。
【0301】
(実施例1)
以下に示す方法により、図19に示す液晶表示素子1を作製した。
【0302】
まず、乳化の際に、乳化液に1重量部のアクリロニトリルをさらに添加し、モノマー成分の重合を4時間行ったこと以外は参考例1と同様にして、図18(a)〜(c)に示す非球状の液晶マイクロカプセル7-3を製造した。なお、液晶マイクロカプセル7-3の平均粒径は6μmであり、距離Dの平均値はおよそ1.0μmであった。
【0303】
この液晶マイクロカプセル7-3を用い、透明微粒子8を用いなかったこと以外は参考例1と同様にして、液晶表示素子1を作製した。
【0304】
なお、この液晶層形成工程をより詳細に説明するために、図22(a)〜(c)に、表面に凹部を有する液晶マイクロカプセル7-3を用いた液晶層形成工程の概略を示す。図22(a)〜(c)は、それぞれ、本発明の実施例1に係る液晶表示素子の液晶層の上面図である。
【0305】
液晶層6を形成するに当り、まず、図22(a)に示すように、基板2上に、上記液晶マイクロカプセル7-3を含有する液晶マイクロカプセル分散液を塗布する。このとき、液晶マイクロカプセル7-3は、相互に融着せずに分散されており、透明被膜表面の窪みは保たれている。
【0306】
次に、図22(b)に示すように、液晶マイクロカプセル分散液から溶媒の除去を開始する。その結果、液晶マイクロカプセル7-3は、僅かに融着し、透明被膜が引き伸ばされ、表面の窪みは皺状に変化する。
【0307】
さらに、図22(c)に示すように、溶媒を完全に除去する。このようにして形成された液晶層は、液晶マイクロカプセル7-3が相互に融着するため、殆ど空隙が残されていない。また、この融着により、液晶マイクロカプセル7-3の透明被膜はより引き伸ばされるため、透明被膜表面に皺は残留しない。
【0308】
以上のような液晶層形成工程を経て作製した液晶表示素子1を、顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の白色から透明状態へと変化した。透過吸光度から求めたコントラスト比は30であった。
【0309】
(比較例11)
アクリロニトリルを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして液晶マイクロカプセルを製造した。このようにして製造された液晶マイクロカプセルは、表面に凹部を有しておらず、ほぼ球形であった。
【0310】
次に、この球状の液晶マイクロカプセルを用いて、実施例1と同様にして液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子について、顕微鏡で観察したところ目立った空隙は見出されなかったが、同条件でのコントラスト比は23に減少していた。これは、透過光強度が減少したためであり、液晶層内に微小の空隙が存在することを示している。
【0311】
(実施例2)
図19に示す液晶表示素子1を、二色性色素を用いて以下に示す方法により作製した。
【0312】
まず、チッソ社製フッ素系液晶LIXON−5065XXに三井東圧社製の黒色二色性色素S−435を1重量%溶解して液晶材料を調製した。この液晶材料80重量部、疎水性モノマーである2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート13重量部、架橋剤であるジビニルベンゼン1重量部及びベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合・溶解した。この混合液を、1重量部のアクリロニトリル及び3重量部のポリビニルアルコールとともに300重量部の純水中に投入し、ホモジナイザで乳化した。
【0313】
これを85℃の温度、500rpmの攪拌速度で4時間攪拌して、上記モノマー成分を重合させた。4時間経過後、1μmの孔径のフィルタを用いて、上記混合液を濾過し、純水で3回洗浄することにより、図18(a)〜(c)に示す非球状の液晶マイクロカプセル7-3を得た。なお、この液晶マイクロカプセル7-3は、平均粒径が7μmであり、距離Dの平均値はおよそ1.5μmであった。
【0314】
この液晶マイクロカプセル7-3を用い、透明微粒子8を用いなかったこと以外は参考例2と同様にして、液晶表示素子1を作製した。
【0315】
以上のようにして作製した液晶表示素子1を顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7-3の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の黒色から透明状態へと変化した。反射濃度計から求めたコントラスト比は4.2であった。
【0316】
(比較例12)
アクリロニトリルを用いなかったこと以外は、実施例2と同様にして液晶マイクロカプセルを製造した。このようにして製造された液晶マイクロカプセルは、表面に凹部を有しておらず、ほぼ球形であった。
【0317】
次に、この球状の液晶マイクロカプセルを用いて、実施例2と同様にして液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子について、顕微鏡で観察したところ目立った空隙は見出されなかったが、同条件でのコントラスト比は3.2に減少していた。これは、黒色の色濃度が減少したためであり、液晶層内に微小の空隙が存在することを示している。
【0318】
(実施例3)
図19に示す液晶表示素子1を、負の誘電異方性を有する液晶化合物を液晶材料として用いて、以下に示す方法により作製した。
【0319】
まず、乳化の際に、乳化液に1重量部のヒドロキシエチルメタクリレートをさらに添加し、モノマー成分の重合を4時間行ったこと以外は参考例3と同様にして、図18(a)〜(c)に示す非球状の液晶マイクロカプセル7-3を製造した。なお、液晶マイクロカプセル7-3の平均粒径は6μmであり、距離Dの平均値はおよそ1.8μmであった。
【0320】
この液晶マイクロカプセル7-3を用い、透明微粒子8を用いなかったこと以外は参考例3と同様にして、液晶表示素子1を作製した。
【0321】
以上のようにして作製した液晶表示素子1を、顕微鏡で観察したところ、液晶マイクロカプセル7-3の透明被膜の破壊は確認されず、空隙は見出されなかった。また、この液晶表示素子1に50Hz、10Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の透明状態から白色へと変化した。透過吸光度から求めたコントラスト比は30であった。
【0322】
(比較例13)
ヒドロキシエチルメタクリレートを用いなかったこと以外は、実施例3と同様にして液晶マイクロカプセルを製造した。このようにして製造された液晶マイクロカプセルは、表面に凹部を有しておらず、ほぼ球形であった。
【0323】
次に、この球状の液晶マイクロカプセルを用いて、実施例3と同様にして液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子について、顕微鏡で観察したところ目立った空隙は見出されなかったが、同条件でのコントラスト比は23に減少していた。これは、透過光強度が減少したためであり、液晶層内に微小の空隙が存在することを示している。
【0324】
(参考例17)
正の誘電異方性を有するネマチック液晶であるメルク社製ZLI−1840を80重量部、親水性のメチルメタクリレートモノマー7重量部、疎水性のイソブチルメタクリレート7重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート1重量部、架橋剤としてベンゾイルパーオキサイド0.2重量部を混合溶解し、ポリビニルアルコール3重量部、純水300重量部とともにホモジナイザで乳化した後、500rpmで攪拌し、上記液晶組成物を85℃で重合した。1時間重合後、1μmのフィルタで濾過し、3回純粋で洗浄することにより、平均粒径が6μmの液晶マイクロカプセルを得た。
【0325】
この液晶マイクロカプセルを、10重量%のイソプロピルアルコール水溶液に、10重量%の濃度で分散させ、透明電極付ガラス基板に塗布・乾燥した。次に、粘度が500センチポイズのエポキシプレポリマーを、上記ガラス基板上に塗布・乾燥された液晶マイクロカプセル上に、1μmの厚さで塗布した。これを、80℃の温度で30分間加熱処理し、エポキシプレポリマー上に透明電極付ガラス基板を重ね、ポリアミド製の袋に入れた。この袋の内部を減圧し、120℃で加熱・密着させることにより、液晶表示素子を作製した。
【0326】
得られた液晶表示素子を顕微鏡で観察したが、液晶マイクロカプセルの破壊は認められず、気泡も見出されなかった。
【0327】
また、この液晶表示素子に50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、白色から透明へと変化した。なお、透過吸光度から求めたコントラスト比は30であった。
【0328】
(比較例14)
エポキシプレポリマーを塗布しないこと以外は、参考例17と同様にして液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子について顕微鏡で観察したところ、気泡は見出されなかった。しかしながら、この液晶表示素子に50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、透過吸光度から求めたコントラスト比は20に減少していた。これは、透過光強度が減少したためであり、内部に微小の気泡が存在していることを示すものである。
【0329】
(参考例18)
図13(b)に示す液晶表示素子1-1を以下に示す方法により作製した。なお、本参考例においては、液晶層6-2,6-3及び透明電極5-1,5-2は形成しなかった。以下、図13(a)及び(b)を参照しながら説明する。
【0330】
まず、厚さ1.1mmのガラス基板2上に、ITO膜4を蒸着した。次に、ITO膜4上に、レジスト膜を2μmの厚さで形成し、ストライプ状にパターニングした。このようにして得られたレジストパターンをマスクとして用いて、ITO膜4をストライプ状にパターニングした。
【0331】
次に、厚さ1.1mmのガラス基板3上に、ITO膜5を2000オングストロームの厚さで蒸着し、上述したのと同様の方法により、ITO膜5-3をストライプ状にパターニングした。
【0332】
次に、参考例2において作製したのと同様の液晶マイクロカプセル7を、スクリーン印刷法によりガラス基板2のITO膜4が形成された面に塗布して、液晶層6-1を形成した。液晶層6-1を形成した後、基板2上に液晶層6-1を囲むようにして接着剤からなる封止部材17を図14(a)に示す形状に形成した。
【0333】
その後、図13(a)に示すように、液晶層6-1上に十分な量のエチレングリコール18を供給した。
【0334】
さらに、図13(b)に示すように、液晶層6-1上に、ガラス基板3を、そのITO膜5-3が形成された面が液晶層6-1と対向するように、及びITO膜4及びITO膜5-3のストライプ状のパターンが直交するように配置し、真空中で加熱しながら圧着することにより、液晶表示素子1-1を得た。
【0335】
以上のようにして得られた液晶表示素子1-1に、50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の黒色から透明状態へと変化した。また、コントラスト比は5.0であった。
【0336】
(参考例19)
図15(c)に示す液晶表示素子1-1を以下に示す方法により作製した。なお、本参考例においては、液晶層6-2,6-3及び透明電極5-1,5-2は形成しなかった。以下、図15(a)〜(c)を参照しながら説明する。
【0337】
まず、厚さ1.1mmのガラス基板2上に、ITO膜4を蒸着した。次に、ITO膜4上に、レジスト膜を2μmの厚さで形成し、ストライプ状にパターニングした。このようにして得られたレジストパターンをマスクとして用いて、ITO膜4をストライプ状にパターニングした。
【0338】
次に、厚さ1.1mmのガラス基板3上に、ITO膜5を2000オングストロームの厚さで蒸着し、上述したのと同様の方法により、ITO膜5-3をストライプ状にパターニングした。
【0339】
次に、参考例2において作製したのと同様の液晶マイクロカプセル7を、スクリーン印刷法によりガラス基板2のITO膜4が形成された面に塗布して、液晶層6-1を形成した。液晶層6-1を形成した後、基板2上に液晶層6-1を囲むようにして接着剤からなる封止部材17を図14(b)に示す形状に形成した。
【0340】
その後、図15(a)に示すように、ガラス基板2を僅かに傾け、液晶層6-1上に十分な量のエチレングリコール18を供給した。
【0341】
さらに、図15(b)に示すように、液晶層6-1上に、ガラス基板3を、そのITO膜5-3が形成された面が液晶層6-1と対向するように、及びITO膜4及びITO膜5-3のストライプ状のパターンが直交するように配置した。ガラス基板2,3の貼り合せは、封止部材17が形成された一端から封止部材17の開口部へ向けて、ローラで加圧しながら行った。以上のようにして、図15(b)に示すようにガラス基板2,3を貼り合せた後、余分なエチレングリコール18を除去した。
【0342】
次に、図15(c)に示すように、封止部材17の開口部に接着剤19を供給し、真空下で加熱しながら圧着することにより液晶表示素子1-1を得た。
【0343】
以上のようにして得られた液晶表示素子1-1に、50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の黒色から透明状態へと変化した。また、コントラスト比は5.0であった。
【0344】
(参考例20)
ガラス基板2上に、TFT、ゲート配線、及び信号配線を形成し、ITO膜4をTFTのソース電極に電気的に接続したこと以外は参考例18に示したのと同様にして、図13(b)に示す液晶表示素子1-1を作製した。
【0345】
以上のようにして得られた液晶表示素子1-1に、50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の黒色から透明状態へと変化した。また、コントラスト比は5.0であった。
【0346】
(参考例21)
ガラス基板2上に、TFT、ゲート配線、及び信号配線を形成し、ITO膜4をTFTのソース電極に電気的に接続したこと以外は参考例19に示したのと同様にして、図13(b)に示す液晶表示素子1-1を作製した。
【0347】
以上のようにして得られた液晶表示素子1-1に、50Hz、12Vの交流電圧を印加したところ、非印加時の黒色から透明状態へと変化した。また、コントラスト比は5.0であった。
【0348】
(参考例22)
図23に、参考例22に係る液晶表示素子の断面図を概略的に示す。図23に示す液晶表示素子1-1を以下に示す方法により作製した。
【0349】
まず、チッソ石油工業社製の液晶であるLIXON5052に、BDH社製のイエローの二色性色素D80を加えて、加熱しながら溶解することにより液晶材料を調製した。冷却後、上記液晶材料、ジt−ブチルフマレート、架橋剤であるTMPTA、及び重合開始剤であるBROを混合・溶解した。
【0350】
次に、上記混合液を乳化膜を用いてポリビニルアルコール水溶液中に押し出した。なお、上記混合液の押出しは、ポリビニルアルコール水溶液は磁気攪拌子を用いて常に一定の速度で攪拌しつつ行った。以上のようにして、乳化液を調製した。
【0351】
さらに、乳化液を一定速度で攪拌しながら80℃の温度で6時間加熱して、重合反応を生じさせた。以上のようにして、平均粒径が10μmのイエローの液晶マイクロカプセル7-4を生成した。
【0352】
次に、チッソ石油工業社製の液晶であるLIXON5052の代わりに、チッソ石油工業社製の液晶であるLIXON4033を使用し、重合時の攪拌速度を1.6倍としたこと以外は上述したのと同様の方法により、液晶マイクロカプセル7-5を生成した。このイエローの液晶マイクロカプセル7-5の平均粒径を調べたところ、4μmであった。
【0353】
次に、イエローの二色性色素の代わりに三井化学社製のマゼンタの二色性色素G−176を用いたこと以外は上述したのと同様の方法により、マゼンタの液晶マイクロカプセル7-4,7-5を生成した。さらに、イエローの二色性色素の代わりに三井化学社製のシアンの二色性色素SI−497を用いたこと以外は上述したのと同様の方法により、シアンの液晶マイクロカプセル7-4,7-5を生成した。なお、マゼンタ及びシアンの液晶マイクロカプセル7-4の平均粒径はともに10μmであり、マゼンタ及びシアンの液晶マイクロカプセル7-5の平均粒径はともに4μmであった。
【0354】
次に、上記イエローの液晶マイクロカプセル7-4,7-5を1:1の重量比で混合し、この混合物を純水中に分散させて、イエローの液晶マイクロカプセル分散液を調製した。この液晶マイクロカプセル分散液を、ガラス基板2上に形成されたITOからなる透明電極4上に塗布・乾燥することにより、イエローの液晶層6-1を形成した。
【0355】
このようにして形成した液晶層6-1上に、ITO微粒子を所定の溶媒に分散させた分散液をパターニング印刷することにより透明電極5-1を形成した。
【0356】
次に、上述の方法を用いて、透明電極5-1上に、マゼンタの液晶層6-2、透明電極5-2、及びシアンの液晶層6-3を順次積層した。さらに、液晶層6-3上に、ガラス基板3を、そのITO膜5-3が形成された面が液晶層6-3と対向するように配置し、真空中で加熱しながら圧着することにより、液晶表示素子1-1を得た。なお、以上のようにして作製した液晶表示素子1-1において、透明電極4,5-1,5-2は、ガラス基板2上に形成されたTFT(図示せず)に電気的に接続されている。
【0357】
(比較例15)
平均粒径が10μmの液晶マイクロカプセル7-4のみを用いたこと以外は参考例22に示したのと同様の方法により液晶表示素子を作製した。
【0358】
図24に、以上のようにして作製した参考例22の液晶表示素子1-1及び比較例15の液晶表示素子により表示されるイエロー、マゼンタ、シアン、レッド、ブルー、及びグリーンの色度座標を示す。なお、図中、縦軸と横軸との交差部は黒色及び白色を示している。この図から明らかなように、参考例22の液晶表示素子1-1においては、減法混色が効率よく行われた。それに対し、比較例15の液晶表示素子においては、減法混色が効率よく行われず、液晶層6-1の表示色が強調された。
【0359】
(参考例23)
図25に、参考例23に係る液晶表示素子の断面図を概略的に示す。図25に示す液晶表示素子1-2を以下に示す方法により作製した。
【0360】
まず、参考例22に示したのと同様の方法により、イエロー、マゼンタ、及びシアンの液晶マイクロカプセル7-4をそれぞれ作製した。また、参考例22に示したのと同様の方法により、イエロー、マゼンタ、及びシアンの液晶マイクロカプセル7-5をそれぞれ作製した。
【0361】
次に、イエローの液晶マイクロカプセル7-4,7-5を1:1の重量比で混合した。これをイエローの混合物とする。同様にして、マゼンタの混合物及びシアンの混合物を調製した。
【0362】
さらに、イエローの混合物とマゼンタの混合物とを混合して、レッドの混合物を調製した。また、マゼンタの混合物とシアンの混合物とを混合して、ブルーの混合物を調製し、シアンの混合物とイエローの混合物とを混合して、グリーンの混合物を調製した。
【0363】
次に、ガラス基板2上にITO膜を蒸着し、各画素毎にパターニングした。これにより、透明電極4-1〜4-3を形成した。また、ガラス基板3上に、ITO膜を2000オングストロームの厚さで蒸着し、各画素ごとにパターニングすることにより、透明電極5-2〜5-4を形成した。
【0364】
透明電極4-1,4-2,4-3上に、それぞれ、レッドの混合物、グリーンの混合物、ブルーの混合物をスクリーン印刷法により塗布した。さらに、これを乾燥することにより、液晶層6-1を形成した。また、透明電極5-2,5-3,5-4上に、それぞれ、シアンの混合物、マゼンタの混合物、イエローの混合物をスクリーン印刷法により塗布し、乾燥することにより、液晶層6-2を形成した。
【0365】
次に、液晶層6-1上に、ITO微粒子を所定の溶媒に分散させた分散液を塗布・乾燥することにより透明電極5-1を形成した。
【0366】
さらに、ガラス基板2,3を液晶層6-1,6-2が対向するように配置し、真空中で加熱しながら圧着することにより、液晶表示素子1-2を得た。なお、以上のようにして作製した液晶表示素子1-2において、透明電極4-1〜4-3、透明電極5-2〜5-4は、図示しないTFTにそれぞれ電気的に接続されている。
【0367】
(比較例16)
平均粒径が10μmの液晶マイクロカプセル7-4のみを用いたこと以外は参考例23に示したのと同様の方法により液晶表示素子を作製した。
【0368】
以上のようにして作製した参考例23の液晶表示素子1-2及び比較例16の液晶表示素子により表示される表示色の色相を顕微分光計で測定した。その結果、参考例23の液晶表示素子1-2においては、減法混色が効率よく行われた。それに対し、比較例16の液晶表示素子においては、減法混色が効率よく行われず、液晶層6-1の表示色が強調された。
【0369】
(参考例24)
図26に、参考例24に係る液晶表示素子の断面図を概略的に示す。図26に示す液晶表示素子1-3を以下に示す方法により作製した。
【0370】
まず、蒸着法によりガラス基板2上にITO膜を形成し、各画素毎にパターニングした。これにより、透明電極4-1〜4-3を形成した。また、ガラス基板3上に、蒸着法により厚さ2000オングストロームのITO膜5を形成した。
【0371】
次に、透明電極4-1,4-2,4-3上に、それぞれ、参考例23で用いたのと同様のレッドの混合物、グリーンの混合物、ブルーの混合物をスクリーン印刷法により塗布した。さらに、これを乾燥することにより、液晶層6を形成した。
【0372】
次に、液晶層6上に、ガラス基板3をそのITO膜5が形成された面が液晶層6と接するように配置し、真空中で加熱しながら圧着することにより、液晶表示素子1-3を得た。なお、以上のようにして作製した液晶表示素子1-3において、透明電極4-1〜4-3は、図示しないTFTにそれぞれ電気的に接続されている。
【0373】
(比較例17)
平均粒径が10μmの液晶マイクロカプセル7-4のみを用いたこと以外は参考例24に示したのと同様の方法により液晶表示素子を作製した。
【0374】
以上のようにして作製した参考例24の液晶表示素子1-3及び比較例17の液晶表示素子について、電圧印加時における分光透過率を測定した。その結果、参考例24の液晶表示素子1-3においては、比較例17の液晶表示素子に比べて、極小透過波長における透過率が10%程度小さいことが分かった。これは、参考例24の液晶表示素子1-3においては、光散乱が抑制されこと、及び液晶層中の液晶材料の体積比がより高いために光吸収率が高められていることによると考えられる。
【0375】
また、参考例24の液晶表示素子1-3及び比較例17の液晶表示素子について、コントラスト比を測定した。その結果、比較例17の液晶表示素子のコントラスト比は、参考例24の液晶表示素子1-3に関して得られた値よりも15%程度低かった。
【0376】
【発明の効果】
以上示したように、本発明によると、液晶マイクロカプセルの形状を非球状とすることにより、液晶マイクロカプセルの透明被膜の表面積が増加する。そのため、この液晶マイクロカプセルは、破壊されることなく自由に変形され得る。したがって、このような液晶マイクロカプセルを用いて液晶層を形成することにより、液晶マイクロカプセル間の空隙が低減されるため、光散乱が抑制され、高い表示コントラストを有し、混色性が良好な液晶表示素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1参考例に係る液晶表示素子を概略的に示す断面図。
【図2】 第1参考例に係る液晶表示素子を概略的に示す断面図。
【図3】 第1参考例に係る液晶表示素子に用いられる突起部を概略的に示す斜視図。
【図4】 (a)及び(b)は、それぞれ、第1参考例に係る液晶表示素子に用いられる突起部を概略的に示す上面図及びその4B−4B線に沿った断面図。
【図5】 (a)及び(b)は、それぞれ、第1参考例に係る液晶表示素子に用いられる突起部を概略的に示す上面図及びその5B−5B線に沿った断面図。
【図6】 (a)及び(b)は、それぞれ、第1参考例に係る液晶表示素子に用いられる突起部を概略的に示す上面図及びその一部の斜視図。
【図7】 (a)及び(b)は、それぞれ、第1参考例に係る液晶表示素子に用いられる突起部の形成方法を概略的に示す上面図及び斜視図。
【図8】 (a)及び(b)は、それぞれ、第1参考例に係る液晶表示素子に用いられる突起部を概略的に示す斜視図。
【図9】 (a)及び(b)は、それぞれ、第1参考例に係る液晶表示素子に用いられる突起部の形成方法を概略的に示す斜視図。
【図10】 第1参考例に係る液晶表示素子を概略的に示す断面図。
【図11】 (a)〜(c)は、それぞれ、第1参考例に係る液晶表示素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図12】 (a)〜(d)は、それぞれ、第1参考例に係る液晶表示素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図13】 (a)及び(b)は、それぞれ、第2参考例に係る液晶表示素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図14】 (a)〜(f)は、それぞれ、第2参考例に係る液晶表示素子において用いられる封止部材の形状を概略的に示す平面図。
【図15】 (a)〜(c)は、それぞれ、第2参考例に係る液晶表示素子の製造方法を概略的に示す断面図。
【図16】 第3参考例に係る液晶表示素子を概略的に示す断面図。
【図17】 第4参考例に係る液晶表示素子を概略的に示す断面図。
【図18】 (a)〜(c)は、それぞれ、本発明の実施形態に係る液晶マイクロカプセルを概略的に示す図。
【図19】 本発明の実施形態に係る液晶マイクロカプセルを用いた液晶表示素子を概略的に示す断面図。
【図20】 (a)及び(b)は、それぞれ、参考例4及び9に係る液晶表示素子を概略的に示す斜視図及び断面図。
【図21】 (a)〜(h)は、それぞれ、参考例4及び9に係る液晶表示素子の駆動方法を概略的に示す図。
【図22】 (a)〜(c)は、それぞれ、本発明の実施例1に係る液晶表示素子の液晶層を示す上面図。
【図23】 参考例20に係る液晶表示素子を概略的に示す断面図。
【図24】 参考例22に係る液晶表示素子により表示されるイエロー、マゼンタ、シアン、レッド、ブルー、及びグリーンの色度座標を示すグラフ。
【図25】 参考例23に係る液晶表示素子を概略的に示す断面図。
【図26】 参考例24に係る液晶表示素子を概略的に示す断面図。
【符号の説明】
1,1-n…液晶表示素子、2、3…基板、4-n,5-n…電極、6-n…液晶層、7-n…液晶マイクロカプセル、8…透明微粒子、9…突起部、10…上部、11…樹脂層、12…樹脂、13…溶媒、15…バインダ剤、16…被膜、17…封止部材、18…流体、19…接着剤、20…円、21-n…液晶材料、30…TFT。
Claims (2)
- 溶媒と、その中に分散された液晶マイクロカプセルとを具備し、前記液晶マイクロカプセルは、液晶材料、及び前記液晶材料を包含し表面に凹部を有する透明被膜を具備し、前記透明被膜の投影の輪郭と前記投影に外接する円との間の、前記円の中心を通る直線上での距離の最大値が、前記円の半径の10〜35%であることを特徴とする液晶マイクロカプセル分散液。
- 請求項1に記載の前記液晶マイクロカプセル分散液を基板の一主面に形成された電極上に塗布して液晶層を形成する工程と、前記液晶層上に対向電極を設ける工程とを含んだことを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
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