JP3746016B2 - ゴキブリ毒餌剤容器 - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、ゴキブリ毒餌剤容器の改良に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、ゴキブリの一般的駆除方法として、殺虫剤を噴霧または塗布する方法、あるいはゴキブリに対する誘引物質を含む捕獲器を使用する方法等が知られている。しかし前者の殺虫剤の施用は積極的な方法であるが、使用面や残効性の点で必ずしも満足できるものではなく、一方、後者の捕獲器を用いる方法は、ゴキブリの発生、増殖に対しては防止効果がないので、家屋内に生息するゴキブリの一部しか退治することができない。
また、近年、毒餌剤、例えばホウ酸やヒドラメチルノンをゴキブリが好む餌に混ぜたものを容器に入れて駆除する方法も一般化し、新しい毒餌剤の開発や容器の改良が種々提案されているが、その使用、駆除効果は未だ十分とはいえない。毒餌剤容器については、安全性の観点から誤食防止の機能や一定の強度が要求され、この課題の解決のために、例えば実公平７−１９８１号や特開２００１−３７３９６号にある種の食毒剤容器が開示されているが、効率的な駆除効果を含めた多角的検討が十分なされていないのが現状である。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ゴキブリ駆除用に供される容器について、誤食防止機能や強度上の性能はもちろん、従来からの提案では未だ十分に果たし得なかったゴキブリの習性に基づく進入・喫食性の向上、使いやすさ、製造コストの低廉性等の要求を全て満足させることを目的としてなされたものである。
【０００４】
【課題を解決するための手段および発明の実施の形態】
上記課題を解決するため、本発明者らは、２個の出入り口と中央に毒餌剤収納部を有するトンネル状の毒餌剤容器について、ゴキブリの習性に基づき改良を加えることによって目的のゴキブリ毒餌剤容器が得られることを知見し、本発明を完成した。
【０００５】
すなわち請求項１の発明は、２個の出入り口と中央に毒餌剤収納部を有するトンネル状のゴキブリ毒餌剤容器において、前記出入り口から毒餌剤収納部に向かって勾配が３〜１５度の上り傾斜となった進入路を形成し、前記毒餌剤収納部に載置された毒餌剤の上端から天面までの空隙を３ｍｍ以上となしたゴキブリ毒餌剤容器に関するものである。
【０００６】
本発明のゴキブリ毒餌剤容器は、開口部が例えば略正方状である２個の出入り口と中央に毒餌剤収納部を有し、細長のトンネル状を呈するものである。ここで、周壁すべてが一体化されていてもよいが、毒餌剤収納部を有する底面と、天面ならびに側壁を含む上蓋から構成される形態が、使いやすく成形上も有利である。容器の大きさも特に限定されないが、高さと幅が１５〜３０ｍｍ、長さが８〜２０ｃｍ程度のものが使いやすい。
また、容器の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネートなどのプラスチック樹脂が好適に用いられ、例えば真空、圧空または射出成形、プレス成形により成形される。
【０００７】
本発明のゴキブリ毒餌剤容器は、出入り口から毒餌剤収納部に向かって勾配が３〜１５度の上り傾斜となった進入路を形成し、毒餌剤収納部に載置された毒餌剤の上端から天面までの空隙を３ｍｍ以上となしたことに特徴を有する。
進入路の形状は、勾配が３〜１５度の上り傾斜ではゴキブリが後戻りしにくく、また空隙の大きさは、ゴキブリが毒餌剤を越えて直進するのを好むという習性に基づいて設けられ、その結果、チャバネゴキブリのような小型のゴキブリはもちろん、ワモンゴキブリやクロゴキブリの大型のゴキブリにおいても進入・喫食成功率を高めることに成功したものである。
なお、上り傾斜の勾配が３度未満では平面と同様さしたる効果が得られず、一方１５度を越えるとゴキブリの進入が抑制される。また、上り傾斜の形状は、３段以上の階段状に形成するのがより好ましいことも認められた。
【０００８】
毒餌剤収納部の大きさや形状は、用いられる毒餌剤に応じて適宜決定すればよいが、通常直径又は長径が２０〜３０ｍｍの円形又は卵形が一般的であり、更に毒餌剤が自由に移動しないように幾分凹部に形成し、しかも適当な固定もしくは係止部材を設けるのが好ましい。
また、毒餌剤収納部に載置された毒餌剤の上端から天面までの空隙は３ｍｍ以上とする必要があり、一方、毒餌剤収納部の上端から天面までの空隙は好ましくは８ｍｍ以上、容器の高さを考慮すると１０〜２０ｍｍに設計するのが適当である。毒餌剤収納部に載置された毒餌剤の上端から天面までの空隙が３ｍｍ未満であると、前述したとおり、特にワモンゴキブリやクロゴキブリのような大型のゴキブリが進入・喫食する頻度が極端に低くなる。
【０００９】
本発明で用いられる毒餌剤は、殺虫成分と誘引剤などを配合し、運搬その他取り扱い時の振動に耐え、できうる限り破片や粉の発生が起こらないように留意された固形状ないしジェル状で、通常山型形状の物が好ましい。殺虫成分としては、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、トランスフルトリン、エトフェンプロックスなどのピレスロイド系殺虫剤、フェニトロチオン、マラチオンなどの有機リン剤の他、ホウ酸、ヒドラメチルノン、フィプロニル、シラフルオフェン、ピリプロキシフェンなどがあげられ、これらはマイクロカプセル化されてもよい。
誘引剤としては、さつまいも、コーンスターチなどの澱粉類、チーズ、ハチミツなどの公知の食餌物質や、炭素数４ないし１０のアルデヒド、ケトン、エステル類や食品フレーバーなどを例示できるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【００１０】
本発明のゴキブリ毒餌剤容器には、進入路の上方進行方向に、天面から垂下する庇片を左右一片ずつ設置するのが好ましい。これはゴキブリが触角を触れて探索行動を起こす習性を利用したものであり、この際、庇片を底面から２〜５ｍｍの空隙を設けて形成すれば、大型のゴキブリが羽根を窮屈な体勢にすることなく進行できるのでゴキブリの進入頻度を妨げない。
なお、庇片の形状は何ら限定されず、長方状、逆半円状、逆山形状などを例示でき、長さが１〜４ｃｍ程度のものが適している。庇片の設置方向も、側壁と平行のみならず、ゴキブリの進入に支障をきたさない限りにおいて、幾分斜めに設置することも可能である。
また、天面や側壁に適宜小窓や小孔を開けたり、側壁の出入り口付近に適宜切り欠き部を設けてもよく、更に毒餌剤の移動を防止するための逆円錐状の押え片を天面から垂設しても構わない。
【００１１】
請求項２の発明は、請求項１のゴキブリ毒餌剤容器において、上り傾斜となった進入路を、３段以上の階段状に形成するとともに、毒餌剤収納部上端から天面までの空隙を８ｍｍ以上となしたものである。
【００１２】
また、請求項３の発明は、請求項１又は２のゴキブリ毒餌剤容器において、トンネル状の容器が、毒餌剤収納部を有する底面と、天面ならびに側壁を含む上蓋から構成した形態のものである。
【００１３】
請求項４の発明は、請求項１ないし３のいずれかのゴキブリ毒餌剤容器において、天面から垂下する庇片を、進入路の上方進行方向に、底面から２〜５ｍｍの空隙を設けて形成したものである。
【００１４】
こうして得られた本発明のゴキブリ毒餌剤容器は、ゴキブリの習性を高度に利用し、特にワモンゴキブリやクロゴキブリのような大型のゴキブリに対する進入・喫食頻度を高める工夫が施されているので、高いゴキブリ駆除効果が期待できる。また、コンパクトで使いやすく、誤食防止の点でもすぐれており、台所や冷蔵庫の裏側、洗面所、食堂やレストラン、倉庫などで使用すれば、従来品にはない高い実用性を奏するものである。
【００１５】
【実施例】
次に、具体的実施例ならびに試験例に基づいて、本発明のゴキブリ毒餌剤容器を更に詳細に説明する。
【００１６】
実施例１
図１は本発明のゴキブリ毒餌剤容器（毒餌剤載置せず）の一例の斜視図を、図２はそれの毒餌剤を載置した場合の中央線断面図を示す。
ゴキブリ毒餌剤容器１は、５段の階段状で勾配角度［α］が６度の進入路２ならびに毒餌剤収納部３を備えた底面４と、天面５ならびに側壁６を含む上蓋から構成され、２個の出入り口７を有するトンネル状を呈している。本実施例では、出入り口７は一辺約２ｃｍの方形で、毒餌剤容器１の長さは約１２ｃｍである。また、天面５から、直径約２ｃｍの略逆半円状の庇片８が毒餌剤収納部３を挟み、底面から３ｍｍの空隙を設けて左右に一片ずつ垂下されている。
毒餌剤９として殺虫成分・フィプロニル０．０５％、及び馬鈴薯、コーンスターチ、ハチミツなどの食餌物質や誘引剤を含有する山型形状の錠剤（重さ４．５ｇ、高さ１２ｍｍ）を載置し、毒餌剤収納部３の上端から天面までの空隙［ｐ］を１３ｍｍ、毒餌剤９の上端から天面までの空隙［ｑ］を７ｍｍとなした本発明のゴキブリ毒餌剤容器を得た。
このゴキブリ毒餌剤容器を、クロゴキブリがよく出没する台所に１個設置し経時的に観察したところ、ゴキブリの進入・喫食頻度が高く、１ケ月後にはゴキブリが全く見られないようになり高い駆除効果が認められた。
【００１７】
試験例１
実施例１に準じ、各種ゴキブリ毒餌剤容器を作製して、ワモンゴキブリの侵入頻度ならびに毒餌剤喫食頻度を調べた。試験は、縦３０ｃｍ、横１２０ｃｍ、高さ２０ｃｍの容器の中に、実施例１で用いた毒餌剤（但し、殺虫成分・フィプロニルは未配合で山型形状を適宜変更）をそれぞれ含む供試毒餌剤容器とコントロール毒餌剤容器（市販品：進入路の勾配が０度、進入路の下方進行方向に底面から内壁を立設）を１個ずつと給水用容器を設置後、ワモンゴキブリ♀成虫２０匹を放ち、暗所に置いて午後８時から９時間にわたり、ビデオ撮影によりワモンゴキブリの侵入ならびに毒餌剤喫食状況を観察した。
結果は、供試毒餌剤容器の侵入頻度ならびに毒餌剤喫食頻度をコントロール毒餌剤容器のそれらと比較し、相対比で表１に示した。
【００１８】
【表１】

【００１９】
試験の結果、本発明のゴキブリ毒餌剤容器の侵入頻度ならびに毒餌剤喫食頻度は、市販品のコントロール毒餌剤容器に比べて優れ、進入路を階段状にした形状や天面から庇片を垂下させた形状がゴキブリの習性上より好ましいことが明らかとなった。
これに対し、進入路の勾配が３〜１５度の範囲にないもの（比較例１、３、４）や、毒餌剤の上端から天面までの空隙を３ｍｍ未満にしたもの（比較例２）では侵入頻度ならびに毒餌剤喫食頻度が劣ることが認められた。
【００２０】
【発明の効果】
本発明は、ゴキブリの習性を高度に利用し、特にワモンゴキブリやクロゴキブリのような大型のゴキブリに対する進入・喫食頻度を高めるとともに、使い易さ、製造コストの低廉性や誤食防止の点でもすぐれた実用性の高いゴキブリ毒餌剤容器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明のゴキブリ毒餌剤容器（毒餌剤載置せず）の一例の斜視図を示す。
【図２】それの毒餌剤を載置した場合の中央線断面図を示す。
【符号の説明】
１：ゴキブリ毒餌剤容器、
２：進入路、
３：毒餌剤収納部、
４：底面、
５：天面、
６：側壁、
７：出入り口、
８：庇片、
９：毒餌剤

Claims (4)

1. ２個の出入り口と中央に毒餌剤収納部を有するトンネル状のゴキブリ毒餌剤容器において、前記出入り口から毒餌剤収納部に向かって勾配が３〜１５度の上り傾斜で、かつ３段以上の階段状の進入路を形成し、前記毒餌剤収納部に載置された毒餌剤の上端から天面までの空隙を３ｍｍ以上となしたことを特徴とするゴキブリ毒餌剤容器。
2. 毒餌剤収納部上端から天面までの空隙を８ｍｍ以上となしたことを特徴とする請求項１に記載のゴキブリ毒餌剤容器。
3. トンネル状のゴキブリ毒餌剤容器が、毒餌剤収納部を有する底面と、天面ならびに側壁を含む上蓋から構成されることを特徴とする請求項１又は２に記載のゴキブリ毒餌剤容器。
4. 天面から垂下する庇片を、進入路の上方進行方向に、底面から２〜５ｍｍの空隙を設けて形成したことを特徴とする請求項１ないし３のいずれかに記載のゴキブリ毒餌剤容器。

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