JP3745881B2 - 円二色性蛍光励起スペクトル測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は円二色性蛍光励起スペクトル測定装置、特にその信号処理機構の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多くの化学物質において、その絶対構造、立体構造に関する知見は、極めて基本的かつ重要不可欠な情報となっている。特に薬物、毒物、生体物質などの生理活性物質においては、その生理活性が直接にそのキラリティ、すなわち絶対構造、立体構造に依存することから、重要な研究課題とされている。
【0003】
しかしながら、キラリティのみ異なる光学異性体は、化学的性質は実質的に同一であり、各種物理的特性も極めて近似しているため、これら薬物、毒物、生体物質などの生理活性物質のキラリティを解析する手段としては、X線結晶構造解析、円二色性スペクトルくらいに限られてくる。特に円二色性スペクトルは、取り扱いが比較的平易であることから、この研究には重要不可欠な手段として広く用いられている。
従来よりこのような手段として後述する吸収円二色性測定装置、蛍光検出円二色性測定装置が知られている。
【0004】
図1には前記吸収円二色性測定装置の概略構成が示されている。
同図に示す吸収円二色性測定装置10は、光源12と、分光器14と、ピエゾエラスティックモジュレータ(PEM)よりなる円偏光変調器16と、サンプルセル18と、光電子増倍管(PMT)よりなる検知器20と、プリアンプ22と、直流アンプ24と、PMT印加電圧制御回路26と、交流アンプ28と、ロック・インアンプ30と、アンプ32と、A/Dコンバータ34と、PEMドライバ36を備える。
【0005】
そして、光源12から出た光束は、分光器14で波長走査が行われ単色化され、さらに直線偏光となり、この分光器14の後方に設置された円偏光変調器16を通過する。この円偏光変調器16により所定の変調周波数信号s10(図2(a)参照)で変調され交互につくられた左右の円偏光L10は、サンプルセル18内の試料に照射される。
ここで、サンプルセル18内の試料に左右円偏光L10の不等吸収が起こると、円偏光変調器16による変調周波数信号s10に対応して透過光束L12にも強弱の波が生じ、検知器20に到達する。
【0006】
そして、検知器20により出力された電気信号s12のうち、直流信号成分s14はPMT印加電圧制御回路26に入力され、このPMT印加電圧制御回路26により検知器20に入力される直流信号成分s14が一定となるようにPMT印加電圧v10が制御される。そのうえで検出器20により出力された電気信号s12より変調周波数信号s10に同期した交流信号成分s16をロック・インアンプ30で取り出している。
【0007】
こうして取り出された交流信号成分s16は、左の円偏光の透過光強度と右の円偏光の透過光強度との差を左右の円偏光の透過光強度の平均値で割った比に相当する。吸収円二色性、すなわち左の円偏光に対する吸光度と右の円偏光に対する吸光度との差は、まさにこの比として得られる量であり、例えば図2(a),(b)に示されるような吸収円二色性スペクトルを得ることができる。
なお、円偏光変調器16の動作は、PEMドライバ36により管理されている。
【0008】
図3には前記蛍光検出円二色性測定装置の概略構成が示されている。
なお、前記図1と対応する部分には符号100を加えて示し説明を省略する。
同図に示す蛍光検出円二色性測定装置110は、前記図1に示す吸収円二色性測定装置10をそのまま利用したものであり、前記図1に示す吸収円二色性測定装置10では検知器120を透過光束L112の通過コース上に設置しているのに対し、蛍光検出円二色性測定装置110ではこれを円偏光束L110とほぼ直交する方向に設置している。
【0009】
そして、この蛍光検出円二色性測定装置110ではサンプルセル118内の試料に左右円偏光L110の不等吸収が起こると、円偏光変調器116による変調周波数信号s110に対応して試料から放射される蛍光L114にも強弱の波が生じ検知器120に到達するが、サンプルセル118と検知器120との間の光路中に、回折格子などを用いた分光器138を設け、該分光器138により励起光束の散乱光は除去するが、蛍光L114は通過させ検知器120に入射させる。
【0010】
また、この蛍光検出円二色性測定装置110では、検知器120により出力された電気信号s112のうち、直流信号成分s114はPMT印加電圧制御回路126に入力され、このPMT印加電圧制御回路126により直流信号成分s114が一定となるようにPMT印加電圧v10が制御される。そのうえで検出器120により出力された電気信号s112より変調周波数信号s110に同期した交流信号成分s116をロック・インアンプ130で取り出している。
こうして取り出された交流信号成分s116は、左の円偏光の蛍光強度と右の円偏光の蛍光強度との差を左右の円偏光の蛍光強度の平均値で割った比に相当する。蛍光検出円二色性は、まさにこの比として得られる量であり、例えば図4に示されるような蛍光検出円二色性スペクトルを得ることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、生理活性物質は稀少で、特別に幸運な場合を除いて、研究のために十分な量を確保することは、それほど容易なことでない。
通常、試料の採取のために多大な努力を払った上で、その解析、測定には尚微量な試料しか供することができないことが多く、その測定手段において、少しでも高い感度が永遠のテーマとして希求されている。
【0012】
一方、測定手段の側からみると、円二色性スペクトルは左右の円偏光に対する試料物質の吸収の差を観測するものであり、吸収そのもの(紫外可視吸収スペクトル)の測定と比較し、原理的に2桁ないし数桁低い感度しか持ち得ない。
そのことからも、従来より、円二色性スペクトル測定において、少しでも高い感度が得られる技術の開発が強く望まれていたものの、これを解決することのできる適切な技術が存在しなかった。
【0013】
すなわち、前記図3に示す蛍光検出円二色性測定装置110では、前記図1に示す吸収円二色性測定装置10の大部分をそのまま利用したものであり、特に信号処理のための構成は、吸収円二色性測定装置10のものをそのまま踏襲したものに他ならない。
そのために蛍光検出円二色性測定装置110では、蛍光検出という測定感度、測定の選択性の点で利点を有する測定原理を採用しているにも拘わらず、その利点を最大限に生かせる構成、特に信号処理のための構成となっていなかった。
すなわち、一般的に、蛍光検出円二色性測定装置においては蛍光検出円二色性スペクトルを得るため、交流信号成分を直流信号成分で割っている点にある。
【0014】
例えば、前記図3に示す蛍光検出円二色性測定装置110では、交流信号成分s116を直接直流信号成分s114で割っていないものの、直流信号成分s114が一定の大きさで得られるよう検知器120に与える印加電圧がコントロールされているので、交流信号成分s116を直流信号成分s114で割ったことと等価な結果が得られてしまう。
直流信号成分s114もノイズを含まないことはあり得ない。このためにノイズを含んでいる直流信号成分s114で交流信号成分s116を割ると、交流信号成分s116にノイズを増やす結果をもたらす。
【0015】
すなわち、前記図3に示す蛍光検出円二色性測定装置110では、直流信号成分s114のノイズがPMT印加電圧v110にゆらぎを与え、それが検知器120での信号増幅率のゆらぎとなり、得られる電気信号s112のゆらぎとなってそこに含まれる交流信号成分s116にノイズの増加をもたらす。
さらに不利なことは、蛍光強度が小さい波長領域では、直流信号成分s114、すなわち割る分母が小さくなり、割られた結果のノイズを著しく誇張する。極端な場合で蛍光がない波長領域では直流信号成分s114が0となり、交流信号成分s116/直流信号成分s114は0/0の演算を行うこととなってしまうため、その値は不定、すなわち極端に大きなノイズを与える結果となってしまう。
【0016】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は検出感度の向上を図ることができる円二色性蛍光励起スペクトル測定装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
そして、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、波長走査が行われる単色化された左右の円偏光を所定の変調周波数で交互に試料に照射して得られる蛍光の強度を測定し電気信号とする円二色性蛍光励起スペクトル測定装置において、前記電気信号のうち、左右の円偏光に切り換える周波数に同期した交流信号成分のみを単独に用いて、円二色性蛍光励起スペクトルを得ることにより、検出感度の向上を図ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、前記目的を達成するために本発明にかかる円二色性蛍光励起スペクトル測定装置は、波長走査が行われる単色化された左右の円偏光を所定の変調周波数で交互に試料に照射して得られる蛍光の強度を測定し電気信号とする円二色性蛍光励起スペクトル測定装置において、交流成分分離手段と、円二色性蛍光励起スペクトル取得手段と、を備えたことを特徴とする。
前記交流成分分離手段は、前記電気信号より前記変調周波数に同期した交流信号成分を分離する。
【0019】
前記円二色性蛍光励起スペクトル取得手段は、前記交流成分分離手段により得られた変調周波数に同期した交流信号成分より、左右の円偏光で励起したときの蛍光強度差を求め、これを波長に対し記録して円二色性蛍光励起スペクトルとする。
なお、前記装置において、前記電気信号より直流信号成分を分離する直流成分分離手段と、
前記直流成分分離手段により得られた直流信号成分より、左右の円偏光で励起したときの平均の蛍光強度を求め、これを波長に対し記録して全蛍光励起スペクトルとする全蛍光励起スペクトル取得手段と、
を備えることが好適である。
【0020】
また、前記装置において、前記電気信号は、前記直流成分分離手段により得られた直流信号成分に依存しない一定の印加電圧が印加された光電子増倍管により得られることが好適である。
また、前記装置において、前記全蛍光励起スペクトル取得手段により得られた全蛍光励起スペクトルを所定の波長区間で積分して0でない積分値を得る積分値取得手段と、
前記円二色性蛍光励起スペクトル取得手段により得られた円二色性蛍光励起スペクトルを、前記積分値取得手段により得られた0でない積分値で割算して、前記円二色性蛍光励起スペクトルの大きさを規格化する割算手段と、
を備えることが好適である。
【0021】
さらに、前記装置において、前記交流成分分離手段により分離された交流信号成分を増幅する機構で最終的に得られる交流信号成分が、前記直流成分分離手段により分離された直流信号成分に対しほぼ32980倍となるように増幅率を調節することが可能な増幅率調節手段を備えることが好適である。
【0022】
ところで、試料が光のエネルギを吸収して励起したあと、そのエネルギの一部を熱などの形で失って最低励起状態に移り、そこから残りのエネルギーを再び光として放出するのが蛍光である。そして、試料に照射する光の波長を走査しながら蛍光強度を記録して得られるのが励起スペクトルである。一定波長の光を照射しながら検出する光の波長を走査して得られるのが蛍光スペクトルである。
放出される蛍光の強度は、吸収された光エネルギの大きさ、そこから最低励起状態に転換する効率、最低励起状態から蛍光を発して基底状態に戻る確率の積に比例する。そのうちの最低励起状態に転換する効率と、最低励起状態から蛍光を発して基底状態に戻る確率が同一である状況では、蛍光の強さは吸収の強さに比例することとなる。この状況は、どれかある特定の励起状態への遷移に伴う振動構造などを含めた1つの吸収帯の中では保証されるので、個々の帯(バンド)の形は吸収スペクトルのそれと相似形となる。
【0023】
ここで、励起するのに円偏光を用いて、左右の円偏光を交互に試料に照射することを考える。前述のように1つのバンドの中で考える限り、蛍光強度は光吸収の強度に比例する。もし、試料が左右の円偏光を吸収するとき、吸収度合いに差があると、それはそのまま蛍光強度に反映されて検知されることとなる。この左右の円偏光に対する吸光度合いの差は(吸収)円二色性(CD)といわれるもので、CDがプラスの吸収帯バンドでは、左円偏光で励起しているときの蛍光強度のほうが、右円偏光で励起しているときの蛍光強度と比較し強くなる。
結論として個々の吸収帯に関する限り、左の円偏光で励起したときの蛍光強度と右の円偏光で励起したときの蛍光強度の差には、吸収で観測する円二色性と同じ情報が含まれて観測されることとなる。
【0024】
【発明の実施形態】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態を説明する。
図5には本発明の一実施形態にかかる円二色性蛍光励起スペクトル測定装置が示されている。
なお、前記図3と対応する部分には符号100を加えて示し説明を省略する。
同図に示す円二色性蛍光励起スペクトル測定装置210は、光源212と、分光器214と、ピエゾエラスティックモジュレータ(PEM)よりなる円偏光変調器216と、サンプルセル218と、光電子増倍管(PMT)よりなる検知器220と、カットオフフィルタ238と、プリアンプ222と、直流アンプ224と、PMT印加電圧制御回路226と、交流アンプゲイン調整回路227と、交流アンプ228と、ロック・インアンプ230と、アンプ232と、A/Dコンバータ234と、I/Oインターフェース240と、CPU242と、円二色性蛍光励起スペクトル記憶装置244aと、全蛍光スペクトル記憶装置244bと、主記憶装置244cを備える。
【0025】
そして、光源212から出た光束は、分光器214で波長走査が行われ単色化され、さらに直線偏光となり、この分光器214の後方に設置された円偏光変調器216を通過する。この円偏光変調器216により所定の変調周波数信号s210で変調され交互につくられた左右の円偏光L210は、サンプルセル218内の試料に照射される。
【0026】
ここで、サンプルセル218内の試料に左右円偏光L210の不等吸収が起こると、円偏光変調器216の変調周波数信号s210に対応して蛍光L214にも強弱の波が生じ、検知器220に到達するが、試料から放射された蛍光L214は、カットオフフィルタ238により励起光束の散乱光が取り除かれ、目的の蛍光波長域の光L214のみが検出器220に入射する。
そして、入射した蛍光L214は、検知器220により図6(a)に示されるような電気信号s212に光電変換される。
【0027】
なお、分光器214、円偏光変調器216の動作は、それぞれ分光器ドライバ246、PEMドライバ236により管理されている。
また、カットオフフィルタ238は、測定しようとする試料の示す蛍光バンドより少し短い波長の除去機能を有し、励起光の散乱光は除去するが、蛍光は透過させ検知器220に入射させることができるようなものを、試料毎に最適なものを選んで用いることが好適である。
【0028】
以上のようにして本実施形態にかかる円二色性蛍光励起スペクトル測定装置210を構成することにより、例えば図6(a)に示されるような電気信号s212を得ることができる。
【0029】
本発明において特徴的なことは、例えば図6(a)に示されるような電気信号s212より、図6(b)に示されるような変調周波数信号s210に同期した、図6(c)に示されるような交流信号成分s216(交流信号成分の振幅)のみを抽出して、例えば図7に示されるような円二色性蛍光励起スペクトルを得るようにしたことである。
【0030】
すなわち、本実施形態においては、検出感度の向上を図るためにノイズの点で不利な円二色性蛍光励起スペクトルの直流信号成分(図6(d)参照)による割り算をなくし、本来の交流信号成分のみを用いて、図7に示されるような円二色性蛍光励起スペクトルを得るようにした。
これにより、前記図7に示されるような円二色性蛍光励起スペクトルは、全く同一の試料について測定し得られた前記図2(b)に示されるような(吸収)円二色性スペクトル、及び図4に示されるような蛍光検出円二色性と比較し、同一濃度の同一試料について、基本的に同一の条件で測定したものはノイズが大幅に低減されていることが明らかである。
【0031】
また、図7に示されるような円二色性蛍光励起スペクトルが、図4に示されるような蛍光検出円二色性スペクトルと比べて、蛍光のある波長領域で約50%のノイズが低減され、蛍光のない領域ではノイズが1桁以上低減されていることが明白に示されており、本実施形態による円二色性蛍光励起スペクトル測定装置がノイズの低減において著しい効果を上げていることが容易に理解できる。
さらに、試料に測定しようとするする目的物質の他に、蛍光を有する夾雑物が含まれた場合を考える。その夾雑物が光学活性であるときには、その信号は円二色性蛍光励起スペクトルと蛍光検出円二色性スペクトルの両方に表れ、有利、不利については同等である。
【0032】
しかしながら、夾雑物が光学活性でないときには、その蛍光は直流信号成分s114にのみ表れ、円二色性蛍光励起スペクトルではその影響を受けず、光学活性な目的成分の信号のみを選択的に得ることができる。
このために本実施形態にかかる円二色性蛍光励起スペクトルが実際に利用されるときに含まれる可能性のある夾雑物が光学活性でないことが圧倒的に多いことを考えると、純粋に交流信号成分s116のみを取り出すこととした本実施形態の効果を容易に理解することができる。
【0033】
ところで、本実施形態のように円二色性蛍光励起スペクトルを得た場合の問題点は、その大きさ(縦軸)が規格化されていなくて、試料間で円二色性蛍光励起スペクトルを比較するためには試料の濃度、セル長、スペクトルバンド幅、PMT印加電圧v210等がスペクトルの縦軸に影響を与えるので、測定パラメータを厳密に一致させて測定を行うことが要求される。
【0034】
そこで、本実施形態においては、検出感度を犠牲にしないでこの大きさ(縦軸)を規格化するために直流信号成分s214も全蛍光励起スペクトル(図8(b)参照)として取得する。
すなわち、前記図5に示す直流アンプ224により分離された直流信号成分s214も、そのままA/Dコンバータ234、I/Oインターフェース240を介してCPU242に入力される。このCPU242に入力された直流信号成分s214は、そのまま全蛍光励起スペクトル(図8(b)参照)として直流成分記憶手段244bに記憶される。
【0035】
取得後、CPU242は、この全蛍光励起スペクトル(図8(b)参照)を適当な波長区間で積分して0でない積分値を得る。
すなわち、図8(b)に示されるような全蛍光励起スペクトルを、適当な波長区間(本実施形態においては220nm〜255nm)で積分して0でない積分値を得る。
そして、CPU242は、得られた積分値で同図(a)に示されるような円二色性蛍光励起スペクトルを割算してその大きさ(縦軸)を規格化する。このようにしてCPU242により大きさの規格化された円二色性蛍光励起スペクトルは、主記憶手段244cに記憶され、この主記憶手段244cに記憶された円二色性蛍光励起スペクトルが試料の分析に用いられる。
【0036】
直流成分記憶手段244bに記憶された全蛍光励起スペクトル(例えば図8(b)参照)を積分して得られた積分値は、0でない1つの値であるからノイズとは無縁である。
したがって、このノイズとは無縁の積分値で、交流成分記憶手段244aに記憶された、例えば図8(a)に示されるような円二色性蛍光励起スペクトルを割算しても、得られる円二色性蛍光励起スペクトルのノイズを増やさずに、その大きさを良好に規格化することができる。これにより、種々の試料間で円二色性蛍光励起スペクトルの比較を適正に行うこともできる。
【0037】
但し、この全蛍光励起スペクトルの区間積分値による円二色性蛍光励起ススペクトルの縦軸の規格化も、1台の装置の中では確実にその有用性が保証されるが、装置間を考えた場合ではまだ十分でない。
それは円二色性蛍光励起スペクトル測定装置210において、直流信号成分s114の増幅を行う直流アンプ224と交流信号成分s116の増幅を行う交流アンプ228,ロック・インアンプ230,アンプ232の増幅率が独立に設定される機構となっていることに起因する。規格化の有用性を装置間でも保証するためには、これらのアンプの増幅率の比を適切な基準に基づいて校正することが必要となる。
【0038】
このために本実施形態においては交流アンプゲイン調節回路227が、この校正機能を付与する。
すなわち、円二色性蛍光励起スペクトルは、本発明によって初めて測定されるようになったものであり、この目的のために適切な基準となる円二色性蛍光励起スペクトル標準物質は定められておらず、別の基準によらなければならない。
この別の基準には(吸収)円二色性スペクトルの標準物質(例えばd−10−カンファースルフォン酸アンモニウム、D−パントラクトン、d−トリスエチレンジアミンコバルト錯体などが利用できる)が値付けされていて適切である。
校正にあたっては、検知器220を移動させて透過光の通過コース上に設置し、(吸収)円二色性スペクトルの標準物質を測定し、交流信号成分を直流信号成分で割った結果が値付けされている(吸収)円二色性値に一致するように、交流アンプゲイン調整回路227を調整する。このときの増幅率は、理論上交流信号成分s116が直流信号成分s114に対しほぼ32980倍となる。
【0039】
なお、本実施形態においては、この交流アンプゲイン調整回路と227は、交流アンプ228のゲインを調整するように構成されているが、勿論、ロック・インアンプ232、アンプ232のゲインを調整しても構わない。
【0040】
円二色性蛍光励起スペクトルと蛍光検出円二色性スペクトル、(吸収)円二色性スペクトルの関係
前述のように本実施形態にかかる円二色性蛍光励起スペクトルは、左右の円偏光で励起したときの励起スペクトルにおける差である。これに対し、従来の蛍光検出円二色性スペクトルは、蛍光強度で検出した(吸収)円二色性スペクトルとして扱われてきた。これと(吸収)二色性スペクトルとの関係は下記数1に表される。
【数1】
【0041】
ただし、ΔAは(吸収)円二色性スペクトル、Sは蛍光検出円二色性スペクトル、ΔFは円二色性蛍光励起スペクトル、Aは左右の円偏光に対する試料物質の吸収係数の平均値である。また、(吸収)円二色性スペクトルΔAは、通常の円二色性分散計において試料物質を透過する左右の円偏光の強度の差ΔIと平均値Iから、下記数2で表される。
【数2】
【0042】
つぎに応用、実用の観点からこれら2者についてさらに議論する。
本実施形態にかかる円二色性蛍光励起スペクトルを示す図7は、全く同一の試料について測定して得られた従来の吸収円二色性スペクトルを示す図2(b)、及び従来の蛍光検出円二色性スペクトル図4(b)の何れのスペクトルと比較しても、高い感度が得られている。
【0043】
これは、例えば通常の紫外可視分光光度計と分光蛍光光度計とで期待される検出感度の違い、あるいは、HPLCにおいて紫外可視検出器と蛍光検出器で期待される感度の違い(至適な試料についてはいずれの場合も蛍光のほうが1桁ないし3桁高い感度が得られる)に匹敵するものであり、微少量しか用意することができないような試料の測定に、莫大な恩恵をもたらすものである。
【0044】
さらに、これら2者を比較すると、円二色性蛍光励起スペクトルはΔF、蛍光検出円二色性スペクトルはSを測定することとなる。Sは全蛍光強度(直流信号成分)で割算している分だけノイズが大きくなる。さらに蛍光のない波長領域では分母が0(もちろん分子も0)となり、0/0を演算する結果、ノイズがより拡大して、スペクトルの質が著しく低下するという宿命をもっている。
これに対し、本実施形態にかかる円二色性蛍光励起スペクトルは、ΔFは割り算しない分だけノイズが少なく、蛍光のない波長領域でもノイズが拡大することはなく、スペクトルの質が確保され、試料の量に対する感度の点では、顕著な利点を有する。
【0045】
以上のように、本発明の実施形態にかかる円二色性蛍光励起スペクトル測定装置210によれば、前述のような円二色性蛍光励起スペクトルを得ることとしたので、至適な試料については従来の(吸収)円二色性スペクトル測定に比較し、1桁ないし2桁高い感度が得られる。これは画期的なことである。
【0046】
例えば、生物体内に存在する生理活性物質の構造を研究する例を考える。そのためには現状では多数、多量の生物を集め、そこから目的の物質を取り出す必要があったとする。
ところが、本実施形態のように感度が20倍向上すると、必要となる生物の数量が1/20で済むこととなって、試料の確保に要求される努力は飛躍的に軽減されることとなる。また、測定のための試料量の確保が不可能な生理活性物質の例の数多く存在しているが、感度が非常に向上したことにより、そのような物質の分析が実現する可能性も高くなるため、研究の幅が著しく広がるものと期待される。
【0047】
また、蛍光で検出することで選択性も向上し、化合物の特定の部位に特異的な解析が可能となる。さらに、生のままでは蛍光をもっていない物質についても、蛍光の官能基を化学的に導入することにより、高感度に測定解析する道が開けたことになり、その効果は極めて大きいと思われる。
【0048】
なお、本発明の円二色性蛍光励起スペクトル測定装置としては、前記各構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、このような円二色性蛍光励起スペクトル測定装置210においては、もともと微弱な蛍光をさらに解析しなければならないため、通常の蛍光測定装置と比較しても一層の蛍光集光効率の向上が要求される。
【0049】
以下、このような蛍光の集光効率の改善方法について説明する。
サンプルセルと検知器の配置状態
本実施形態においては、サンプルセル218と検知器220の間の光路中には集光系を介さず、かつ、サンプルセル218と検知器220を近接させることが好適である。
すなわち、従来より、円二色性(CD)と蛍光検出円二色性(FDCD)の装置上の互換性を確保するため、またサンプルセル218の設置場所に空間を確保してその扱いを容易にするため、図9(a)に示されるように検知器220はサンプルセル218より離して設置し、その間に集光系であるレンズ250,252を設置することが一般的であった。
しかしながら、前記従来の構成では、レンズの開口角は限られていて十分大でなく、その分、集光効率も限られていた。また、集光系は最低2枚のレンズ250,252を用いているため、レンズ表面における反射により20%程度の光をロスしていた。
【0050】
そこで、本実施形態においては、同図(b)に示されるように、前記従来の集光系であるレンズ250,252を介さず、検知器220とサンプルセル218を直近に設置させている。
この結果、サンプルセル218内の試料から放射された蛍光L214の大部分を検出器220に入射させることができる。これにより、蛍光L214の集光効率を最大とすることができるので、検出感度の向上を図ることができる。
【0051】
カットオフフィルタ
また、本実施形態において検知器側の分光器としては、カットオフフィルタ238を用いることが好適である。
すなわち、従来の蛍光分光光度計では、検出する蛍光の波長を選択するために回折格子を用いた分光器を組み込むのが普通であった。これにより、蛍光の波長を可変にできる、蛍光の波長純度をコントロールできる、などの利点を有するものの、光学素子の効率のため光のロスが避けられず、その分、機構が複雑でコストがかかるなどのマイナス面もあった。
【0052】
そこで、本実施形態においては、励起光の散乱さえ取り除くことができれば、それより長い波長の光の全部を用いても何等問題もなく、むしろ光の量が増えて感度の向上のために好都合であることから、検知器側の分光器としてカットオフフィルタ238を用いた。
このカットオフフィルタ238は、試料の蛍光バンドの波長に応じて最適の吸収帯を有するものを選んで用いるが、前記図5に示す円二色性蛍光励起スペクトル測定装置210では、例えば320nm以下の波長を除去している。
また、このカットオフフィルタ238の厚さは数mmと薄く、その後段に設置する検知器220をサンプルセル218に出来る限り近接させて、その開口比を大きく確保することにも役立つ。これにより、集光効率の向上を図ることができるので、検出感度の向上を図ることもできる。
【0053】
光トラップ
また、本実施形態においては、サンプルセル218を透過した透過光束L212を除くために、前記図9(b)に示されるような光トラップ254を設けることが好適である。
すなわち、サンプルセル218に入れられた試料を透過した透過光束L212は、試料室内で反射され迷光となって、測定の妨害となる。また、円偏光は境界面で反射するとき偏光状態が変わり、最悪の場合、逆の円偏光となって試料の励起に関わり折角の信号を小さくしてしまう結果をもたらす。
【0054】
そこで、本実施形態においては、これらの悪影響を取り除くために、前記図9(b)に示されるような、透過光L212を除去することが可能な光トラップ254を設けることが好適である。これにより、ノイズの低減と最大信号の確保を行うことができる。
【0055】
凹面鏡
また、本実施形態においては、前記図9(b)に示されるように、サンプルセル218を間に挟んで検知器220の反対側に凹面鏡256などの反射鏡を設置することが好適である。
すなわち、試料からの蛍光L214は、励起光L210の照射方向に関わらず、全包囲に放射される。そして、検出に用いられるのは、そのうちの1方向である検知器220方向でしかなく、その他は無駄となる。
【0056】
そこで、本実施形態においては、サンプルセル218を間に挟んで検知器220の反対側に凹面鏡256を設置し、その焦点をサンプルセル18のほぼ中央部に位置させる。これにより、検知器220の反対側に放射された蛍光L214も、ここで反射されてサンプルセル218に戻り、そのまま検知器220に入射することができる。
この結果、検出器220に入射する蛍光L214の量を増やすことができるので、検出感度の向上を図ることができる。
【0057】
内面反射型の筒形反射鏡
さらに、本実施形態においては、図10に示されるようにサンプルセル218として円筒形セルを用い、該円筒形セルの周囲を一部除いた内面反射型の円筒形鏡258あるいは楕円筒形鏡260などの反射筒形鏡により囲み、光の利用効率を上げることも好適である。
すなわち、サンプルセル218として円筒形セルを用いたときの光利用効率をさらに上げるためには、図10に示されるようにサンプルセル218である円筒形セルの周りに内面反射型の筒形反射鏡を設置することが好適である。
【0058】
その1つは、同図(a)に示されるような内面反射型の円筒形鏡258の一部(例えば検知器220の口径とほぼ同様)を切り欠いたものである。
もう1つは、同図(b)に示されるような内面反射型の楕円筒形鏡260を用いることもできる。そして、この楕円筒形夾260の切り抜き部分(例えば検知器220の口径とほぼ同様)から遠い方の焦点が、サンプルセル218である円筒形セルの中心に一致するように設置する。これにより、サンプルセル218である円筒形セルから放射された蛍光を、もう1つの焦点に集光した後、効率的に検知器220に導くことができる。
【0059】
この結果、試料から放射された蛍光のうち、検知器220方向のみでなく、実質的に全方位に放射された蛍光を検知器220に入射させることができる。これにより、検知器220に入射する蛍光の量を増やすことができるので、検出感度の向上を図ることができる。
【0060】
サンプルセルの形状
本実施形態においては、サンプルセル218として例えば4面透過形の角形セルを用いることも可能であるが、円筒形セルを用いることがより好適である。
1つには、放射される蛍光L214の集光効率の改善である。すなわち、試料と空気の屈折率の違いにより、サンプルセル218として角形セルを用いた場合、該角形セルから外に蛍光が出るとき、例えば図11(a)に示されるように蛍光L214が開くように屈折する。
このため、本実施形態において検知器220に導かれる蛍光L214は、その検知器220の口径と、サンプルセル218からの距離で幾何学的に決まる開口立体角に比較し少なくなる。
【0061】
これに対し、同図(b)に示されるようにサンプルセル218として円筒形セルを用いた場合、円筒の回転軸方向は事情は変わらないが、径方向では屈折がないため、その分だけ、高い光の利用効率を確保することができるので、検出感度の向上を図ることができる。
以上のようにしてサンプルセル218、検知器220、カットオフフィルタ238、光トラップ254、凹面鏡256、内面反射型の筒形反射鏡258,260などを適宜用いて蛍光の集光効率の向上を図ることにより、蛍光のように微弱な光を検出する場合でも検出感度の向上を図ることができる。
【0062】
つぎに、試料の利用効率の改善について説明する。
すなわち、図12(a)に示すように、サンプルセル218の励起光束L210の通らない部分(図中黒い部分)は、測定に関与しない部分であり、限られた試料の量から、より濃い試料溶液を調整するためには無駄な部分となる。
【0063】
そこで、本実施形態においては、サンプルセル218として円筒形セルを用い、同図(b)に示すように、励起光束L210とほぼ同じ形状の円形に形成された端部であるセル窓板より励起光束L210を入射させることにより、同図(a)に示すようにサンプルセル218として角形セルを用い、側方のセル窓板より励起光束L210を入射させた場合に比較し、その無駄な部分(図中黒い部分)を低減することができるので、試料の利用効率の改善を図ることができる。
【0064】
また、それ以外にもサンプルセル218として円筒形セルを用いると、つぎのような利点が得られる。
すなわち、円筒形セルの方が角形のものに比較し、前記励起光束L210の入射するセル窓板の歪みを少なく作成することができる。この歪みは、本実施形態において励起円偏光の偏光状態を乱し、ベースラインの曲がりの原因となるものであるため、サンプルセル218としてこの歪みの少ない円筒形セルを用いることにより、得られるスペクトルの質的な向上を図ることもできる。
【0065】
サンプルセルの高低調節機構
また、本実施形態においては、サンプルセル218の高さを調節することが可能な機構を設けることが好適である。
すなわち、生体成分のような試料では、その絶対量を確保することが困難であることが多く、測定には限られた微少量しか用いられないことが一般的である。一方、測定で得られる信号強度は、濃度に依存する。
したがって、感度を確保するためには、利用できる試料を出来るだけ少量の溶媒に溶解して出来る限り濃い溶液とし、測定に供するのが最善である。より具体的には、測定において励起光に照射されない部分を最小にするようにし、それに必要なギリギリの量の試料溶液を調整するのが最善である。
【0066】
このために本実施形態においては、図13に示されるように、その底部262aが高さ調節自在で、該高さ調節が自在の底部262a上にサンプルセル218が設けられたセルホルダ262と、セルホルダ底部262aの高さを調節することが可能な高低調節手段264を備えることも好適である。
そして、高低調節手段264を駆動させて励起光束L210をカバーすることのできるギリギリの高さまでサンプルセル218を持ち上げることにより、サンプルセル218として円筒形セルを用いた場合は勿論、たとえ角形のものを用いた場合でも、試料溶液266を該励起光束L210をカバーすることのできる最低限の試料量で蛍光測定を適正に行うことができるので、試料の利用効率の向上を図ることができる。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかる円二色性蛍光励起スペクトル測定装置によれば、検出器により出力された電気信号より、直流信号成分で割ることなく交流信号成分のみを用いて、円二色性蛍光励起スペクトルを得るので、検出感度の向上を図ることができる。これにより、従来に比較し少ない試料量であっても、従来と同等もしくはそれ以上の検出感度でその試料の絶対構造情報、立体構造情報を得ることもできる。
なお、前記装置において、前記検出器により出力された電気信号より直流信号成分を分離し、該直流信号成分より左右の円偏光で励起したときの蛍光強度の平均値を求め、これを波長に対し記録することにより全蛍光励起スペクトルを得ることができる。
また、前記装置において、前記検出器として、前記直流信号成分に依存しない一定の印加電圧が印加された光電子増倍管を採用することにより、ノイズを大幅に低減することができるので、検出感度の向上を図ることができる。
また、前記装置において、前記全蛍光励起スペクトルを所定の波長区間で積分して0でない積分値を得ることにより、ノイズとは無縁の積分値を得ることができる。そして、このノイズとは無縁の積分値で、前記円二色性蛍光励起スペクトルを割算することにより、ノイズを増やすことなく前記円二色性蛍光励起スペクトルの大きさを規格化することができる。これにより、種々の試料間で円二色性蛍光励起スペクトルを適正に比較することもできる。
さらに、前記装置において、最終的に得られる交流信号成分が、前記直流信号成分に対しほぼ32980倍となるように増幅率を調節することが可能な増幅率調節手段を備えることにより、前記直流信号成分及び交流信号成分の増幅率の比を適切な基準に基づき校正することができるので、前記円二色性蛍光励起スペクトルの大きさの規格化の有用性を複数の装置間でも保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の(吸収)円二色性スペクトル測定装置の概略構成の説明図である。
【図2】図2(a)は前記図1に示す装置で得られた(吸収)円二色性スペクトルの1例、図2(b)は1/100の濃度の試料について得られた(吸収)円二色性スペクトルの1例である。
【図3】従来の蛍光検出円二色性スペクトル測定装置の概略構成の説明図である。
【図4】図4は前記図3に示す装置で得られた蛍光検出円二色性スペクトルの1例である。
【図5】本発明の実施形態にかかる円二色性蛍光励起スペクトル測定装置の概略構成の説明図である。
【図6】図6(a)は図5に示す装置の検出器により出力された電気信号の説明図、図6(b)は変調周波数信号の説明図、図6(c)は円二色性蛍光励起スペクトルの交流信号成分の説明図、図(d)は全蛍光励起スペクトルの直流信号成分の説明図である。
【図7】図5に示す装置で得られた円二色性蛍光励起スペクトルの交流信号成分の1例である。
【図8】図5に示す装置の割算工程の説明図である。
【図9】図5に示す装置で好適に用いられるサンプルセルと検知器の配置状態の説明図である。
【図10】図5に示す装置で好適に用いられる内面反射型の筒形反射鏡の説明図である。
【図11】図5に示す装置でのサンプルセルの形状の違いによる蛍光の集光効率の違いの説明図である。
【図12】図5に示す装置でのサンプルセルの形状の違いによる試料の利用効率の違いの説明図である。
【図13】図5に示す装置で好適に用いられるサンプルセルの高低調節手段の説明図である。
【符号の説明】
210 … 円二色性蛍光励起スペクトル測定装置
212 … 光源
214 … 励起側分光器
216 … 円偏光変調器
218 … サンプルセル
220 … 検知器(光電子増倍管)
224 … 直流アンプ(直流成分分離手段)
227 … 交流アンプゲイン調整回路(増幅率調節手段)
230 … ロック・インアンプ(交流成分分離手段)
238 … カットオフフィルタ(蛍光側分光器)
242 … CPU(積分値取得手段、割算手段)
244a … 交流成分記憶手段
244b … 直流成分記憶手段
266 … 試料溶液(試料)
s210 … 変調周波数信号
s212 … 検知器により出力された電気信号
s214 … 直流信号成分
s216 … 交流信号成分
Claims (5)
- 波長走査が行われる単色化された左右の円偏光を所定の変調周波数で交互に試料に照射して得られる蛍光の強度を測定し電気信号とする円二色性蛍光励起スペクトル測定装置において、
前記電気信号より前記変調周波数に同期した交流信号成分を分離する交流成分分離手段と、
前記交流成分分離手段により得られた変調周波数に同期した交流信号成分より、左右の円偏光で励起したときの蛍光強度差を求め、これを波長に対し記録して円二色性蛍光励起スペクトルとする円二色性蛍光励起スペクトル取得手段と、
を備えたことを特徴とする円二色性蛍光励起スペクトル測定装置。 - 請求項1記載の円二色性蛍光励起スペクトル測定装置において、前記電気信号より直流信号成分を分離する直流成分分離手段と、
前記直流成分分離手段により得られた直流信号成分より、左右の円偏光で励起したときの平均の蛍光強度を求め、これを波長に対し記録して全蛍光励起スペクトルとする全蛍光励起スペクトル取得手段と、
を備えたことを特徴とする円二色性蛍光励起スペクトル測定装置。 - 請求項1または2記載の円二色性蛍光励起スペクトル測定装置において、前記電気信号は、前記分離手段により得られた直流信号成分に依存しない一定の印加電圧が印加された光電子増倍管により得られることを特徴とする円二色性蛍光励起スペクトル測定装置。
- 請求項1ないし3の何れかに記載の円二色性蛍光励起スペクトル測定装置において、
前記全蛍光励起スペクトル取得手段により得られた全蛍光励起スペクトルを所定の波長区間で積分して0でない積分値を得る積分値取得手段と、
前記円二色性蛍光励起スペクトル取得手段により得られた円二色性蛍光励起スペクトルを、前記積分値取得手段により得られた0でない積分値で割算して、前記円二色性蛍光励起スペクトルの大きさを規格化する割算手段と、
を備えたことを特徴とする円二色性蛍光励起スペクトル測定装置。 - 請求項1ないし4の何れかに記載の円二色性蛍光励起スペクトル測定装置において、前記交流成分分離手段により分離された交流信号成分を増幅する機構で最終的に得られる交流信号成分が、前記直流成分分離手段により分離された直流信号成分に対しほぼ32980倍となるように増幅率を調節することが可能な増幅率調節手段を備えたことを特徴とする円二色性蛍光励起スペクトル測定装置。
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