JPH1123466A - 円二色性蛍光励起スペクトル測定装置 - Google Patents

円二色性蛍光励起スペクトル測定装置

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JPH1123466A
JPH1123466A JP19310997A JP19310997A JPH1123466A JP H1123466 A JPH1123466 A JP H1123466A JP 19310997 A JP19310997 A JP 19310997A JP 19310997 A JP19310997 A JP 19310997A JP H1123466 A JPH1123466 A JP H1123466A
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fluorescence
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明の目的は、検出感度の向上を図るこ
とができる円二色性蛍光励起スペクトル測定装置を提供
することにある。 【解決手段】 波長走査が行われる単色化された左右の
円偏光L210を所定の変調周波数s210で交互に試
料に照射して得られる蛍光L214の強度を測定し電気
信号s212とする円二色性蛍光励起スペクトル測定装
置210において、前記電気信号s212より前記変調
周波数s210に同期した交流信号成分s216を分離
する交流成分分離手段232と、前記交流成分分離手段
232により得られた変調周波数s210に同期した交
流信号成分s216より、左右の円偏光L210で励起
したときの蛍光強度差を求め、これを波長に対し記録し
て円二色性蛍光励起スペクトルとする円二色性蛍光励起
スペクトル取得手段242,244aと、を備えたこと
を特徴とする円二色性蛍光励起スペクトル測定装置21
0。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は円二色性蛍光励起ス
ペクトル測定装置、特にその信号処理機構の改良に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】多くの化学物質において、その絶対構
造、立体構造に関する知見は、極めて基本的かつ重要不
可欠な情報となっている。特に薬物、毒物、生体物質な
どの生理活性物質においては、その生理活性が直接にそ
のキラリティ、すなわち絶対構造、立体構造に依存する
ことから、重要な研究課題とされている。
【0003】しかしながら、キラリティのみ異なる光学
異性体は、化学的性質は実質的に同一であり、各種物理
的特性も極めて近似しているため、これら薬物、毒物、
生体物質などの生理活性物質のキラリティを解析する手
段としては、X線結晶構造解析、円二色性スペクトルく
らいに限られてくる。特に円二色性スペクトルは、取り
扱いが比較的平易であることから、この研究には重要不
可欠な手段として広く用いられている。従来よりこのよ
うな手段として後述する吸収円二色性測定装置、蛍光検
出円二色性測定装置が知られている。
【0004】図1には前記吸収円二色性測定装置の概略
構成が示されている。同図に示す吸収円二色性測定装置
10は、光源12と、分光器14と、ピエゾエラスティ
ックモジュレータ(PEM)よりなる円偏光変調器16
と、サンプルセル18と、光電子増倍管(PMT)より
なる検知器20と、プリアンプ22と、直流アンプ24
と、PMT印加電圧制御回路26と、交流アンプ28
と、ロック・インアンプ30と、アンプ32と、A/D
コンバータ34と、PEMドライバ36を備える。
【0005】そして、光源12から出た光束は、分光器
14で波長走査が行われ単色化され、さらに直線偏光と
なり、この分光器14の後方に設置された円偏光変調器
16を通過する。この円偏光変調器16により所定の変
調周波数信号s10(図2(a)参照)で変調され交互
につくられた左右の円偏光L10は、サンプルセル18
内の試料に照射される。ここで、サンプルセル18内の
試料に左右円偏光L10の不等吸収が起こると、円偏光
変調器16による変調周波数信号s10に対応して透過
光束L12にも強弱の波が生じ、検知器20に到達す
る。
【0006】そして、検知器20により出力された電気
信号s12のうち、直流信号成分s14はPMT印加電
圧制御回路26に入力され、このPMT印加電圧制御回
路26により検知器20に入力される直流信号成分s1
4が一定となるようにPMT印加電圧v10が制御され
る。そのうえで検出器20により出力された電気信号s
12より変調周波数信号s10に同期した交流信号成分
s16をロック・インアンプ30で取り出している。
【0007】こうして取り出された交流信号成分s16
は、左の円偏光の透過光強度と右の円偏光の透過光強度
との差を左右の円偏光の透過光強度の平均値で割った比
に相当する。吸収円二色性、すなわち左の円偏光に対す
る吸光度と右の円偏光に対する吸光度との差は、まさに
この比として得られる量であり、例えば図2(a),
(b)に示されるような吸収円二色性スペクトルを得る
ことができる。なお、円偏光変調器16の動作は、PE
Mドライバ36により管理されている。
【0008】図3には前記蛍光検出円二色性測定装置の
概略構成が示されている。なお、前記図1と対応する部
分には符号100を加えて示し説明を省略する。同図に
示す蛍光検出円二色性測定装置110は、前記図1に示
す吸収円二色性測定装置10をそのまま利用したもので
あり、前記図1に示す吸収円二色性測定装置10では検
知器120を透過光束L112の通過コース上に設置し
ているのに対し、蛍光検出円二色性測定装置110では
これを円偏光束L110とほぼ直交する方向に設置して
いる。
【0009】そして、この蛍光検出円二色性測定装置1
10ではサンプルセル118内の試料に左右円偏光L1
10の不等吸収が起こると、円偏光変調器116による
変調周波数信号s110に対応して試料から放射される
蛍光L114にも強弱の波が生じ検知器120に到達す
るが、サンプルセル118と検知器120との間の光路
中に、回折格子などを用いた分光器138を設け、該分
光器138により励起光束の散乱光は除去するが、蛍光
L114は通過させ検知器120に入射させる。
【0010】また、この蛍光検出円二色性測定装置11
0では、検知器120により出力された電気信号s11
2のうち、直流信号成分s114はPMT印加電圧制御
回路126に入力され、このPMT印加電圧制御回路1
26により直流信号成分s114が一定となるようにP
MT印加電圧v10が制御される。そのうえで検出器1
20により出力された電気信号s112より変調周波数
信号s110に同期した交流信号成分s116をロック
・インアンプ130で取り出している。こうして取り出
された交流信号成分s116は、左の円偏光の蛍光強度
と右の円偏光の蛍光強度との差を左右の円偏光の蛍光強
度の平均値で割った比に相当する。蛍光検出円二色性
は、まさにこの比として得られる量であり、例えば図4
に示されるような蛍光検出円二色性スペクトルを得るこ
とができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】一般に、生理活性物質
は稀少で、特別に幸運な場合を除いて、研究のために十
分な量を確保することは、それほど容易なことでない。
通常、試料の採取のために多大な努力を払った上で、そ
の解析、測定には尚微量な試料しか供することができな
いことが多く、その測定手段において、少しでも高い感
度が永遠のテーマとして希求されている。
【0012】一方、測定手段の側からみると、円二色性
スペクトルは左右の円偏光に対する試料物質の吸収の差
を観測するものであり、吸収そのもの(紫外可視吸収ス
ペクトル)の測定と比較し、原理的に2桁ないし数桁低
い感度しか持ち得ない。そのことからも、従来より、円
二色性スペクトル測定において、少しでも高い感度が得
られる技術の開発が強く望まれていたものの、これを解
決することのできる適切な技術が存在しなかった。
【0013】すなわち、前記図3に示す蛍光検出円二色
性測定装置110では、前記図1に示す吸収円二色性測
定装置10の大部分をそのまま利用したものであり、特
に信号処理のための構成は、吸収円二色性測定装置10
のものをそのまま踏襲したものに他ならない。そのため
に蛍光検出円二色性測定装置110では、蛍光検出とい
う測定感度、測定の選択性の点で利点を有する測定原理
を採用しているにも拘わらず、その利点を最大限に生か
せる構成、特に信号処理のための構成となっていなかっ
た。すなわち、一般的に、蛍光検出円二色性測定装置に
おいては蛍光検出円二色性スペクトルを得るため、交流
信号成分を直流信号成分で割っている点にある。
【0014】例えば、前記図3に示す蛍光検出円二色性
測定装置110では、交流信号成分s116を直接直流
信号成分s114で割っていないものの、直流信号成分
s114が一定の大きさで得られるよう検知器120に
与える印加電圧がコントロールされているので、交流信
号成分s116を直流信号成分s114で割ったことと
等価な結果が得られてしまう。直流信号成分s114も
ノイズを含まないことはあり得ない。このためにノイズ
を含んでいる直流信号成分s114で交流信号成分s1
16を割ると、交流信号成分s116にノイズを増やす
結果をもたらす。
【0015】すなわち、前記図3に示す蛍光検出円二色
性測定装置110では、直流信号成分s114のノイズ
がPMT印加電圧v110にゆらぎを与え、それが検知
器120での信号増幅率のゆらぎとなり、得られる電気
信号s112のゆらぎとなってそこに含まれる交流信号
成分s116にノイズの増加をもたらす。さらに不利な
ことは、蛍光強度が小さい波長領域では、直流信号成分
s114、すなわち割る分母が小さくなり、割られた結
果のノイズを著しく誇張する。極端な場合で蛍光がない
波長領域では直流信号成分s114が0となり、交流信
号成分s116/直流信号成分s114は0/0の演算
を行うこととなってしまうため、その値は不定、すなわ
ち極端に大きなノイズを与える結果となってしまう。
【0016】本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされ
たものであり、その目的は検出感度の向上を図ることが
できる円二色性蛍光励起スペクトル測定装置を提供する
ことにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】そして、本発明者らが鋭
意検討を重ねた結果、波長走査が行われる単色化された
左右の円偏光を所定の変調周波数で交互に試料に照射し
て得られる蛍光の強度を測定し電気信号とする円二色性
蛍光励起スペクトル測定装置において、前記電気信号の
うち、左右の円偏光に切り換える周波数に同期した交流
信号成分のみを単独に用いて、円二色性蛍光励起スペク
トルを得ることにより、検出感度の向上を図ることがで
きることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】すなわち、前記目的を達成するために本発
明にかかる円二色性蛍光励起スペクトル測定装置は、波
長走査が行われる単色化された左右の円偏光を所定の変
調周波数で交互に試料に照射して得られる蛍光の強度を
測定し電気信号とする円二色性蛍光励起スペクトル測定
装置において、交流成分分離手段と、円二色性蛍光励起
スペクトル取得手段と、を備えたことを特徴とする。前
記交流成分分離手段は、前記電気信号より前記変調周波
数に同期した交流信号成分を分離する。
【0019】前記円二色性蛍光励起スペクトル取得手段
は、前記交流成分分離手段により得られた変調周波数に
同期した交流信号成分より、左右の円偏光で励起したと
きの蛍光強度差を求め、これを波長に対し記録して円二
色性蛍光励起スペクトルとする。なお、前記装置におい
て、前記電気信号より直流信号成分を分離する直流成分
分離手段と、前記直流成分分離手段により得られた直流
信号成分より、左右の円偏光で励起したときの平均の蛍
光強度を求め、これを波長に対し記録して全蛍光励起ス
ペクトルとする全蛍光励起スペクトル取得手段と、を備
えることが好適である。
【0020】また、前記装置において、前記電気信号
は、前記直流成分分離手段により得られた直流信号成分
に依存しない一定の印加電圧が印加された光電子増倍管
により得られることが好適である。また、前記装置にお
いて、前記全蛍光励起スペクトル取得手段により得られ
た全蛍光励起スペクトルを所定の波長区間で積分して0
でない積分値を得る積分値取得手段と、前記円二色性蛍
光励起スペクトル取得手段により得られた円二色性蛍光
励起スペクトルを、前記積分値取得手段により得られた
0でない積分値で割算して、前記円二色性蛍光励起スペ
クトルの大きさを規格化する割算手段と、を備えること
が好適である。
【0021】さらに、前記装置において、前記交流成分
分離手段により分離された交流信号成分を増幅する機構
で最終的に得られる交流信号成分が、前記直流成分分離
手段により分離された直流信号成分に対しほぼ3298
0倍となるように増幅率を調節することが可能な増幅率
調節手段を備えることが好適である。
【0022】ところで、試料が光のエネルギを吸収して
励起したあと、そのエネルギの一部を熱などの形で失っ
て最低励起状態に移り、そこから残りのエネルギーを再
び光として放出するのが蛍光である。そして、試料に照
射する光の波長を走査しながら蛍光強度を記録して得ら
れるのが励起スペクトルである。一定波長の光を照射し
ながら検出する光の波長を走査して得られるのが蛍光ス
ペクトルである。放出される蛍光の強度は、吸収された
光エネルギの大きさ、そこから最低励起状態に転換する
効率、最低励起状態から蛍光を発して基底状態に戻る確
率の積に比例する。そのうちの最低励起状態に転換する
効率と、最低励起状態から蛍光を発して基底状態に戻る
確率が同一である状況では、蛍光の強さは吸収の強さに
比例することとなる。この状況は、どれかある特定の励
起状態への遷移に伴う振動構造などを含めた1つの吸収
帯の中では保証されるので、個々の帯(バンド)の形は
吸収スペクトルのそれと相似形となる。
【0023】ここで、励起するのに円偏光を用いて、左
右の円偏光を交互に試料に照射することを考える。前述
のように1つのバンドの中で考える限り、蛍光強度は光
吸収の強度に比例する。もし、試料が左右の円偏光を吸
収するとき、吸収度合いに差があると、それはそのまま
蛍光強度に反映されて検知されることとなる。この左右
の円偏光に対する吸光度合いの差は(吸収)円二色性
(CD)といわれるもので、CDがプラスの吸収帯バン
ドでは、左円偏光で励起しているときの蛍光強度のほう
が、右円偏光で励起しているときの蛍光強度と比較し強
くなる。結論として個々の吸収帯に関する限り、左の円
偏光で励起したときの蛍光強度と右の円偏光で励起した
ときの蛍光強度の差には、吸収で観測する円二色性と同
じ情報が含まれて観測されることとなる。
【0024】
【発明の実施形態】以下、図面に基づき本発明の好適な
実施形態を説明する。図5には本発明の一実施形態にか
かる円二色性蛍光励起スペクトル測定装置が示されてい
る。なお、前記図3と対応する部分には符号100を加
えて示し説明を省略する。同図に示す円二色性蛍光励起
スペクトル測定装置210は、光源212と、分光器2
14と、ピエゾエラスティックモジュレータ(PEM)
よりなる円偏光変調器216と、サンプルセル218
と、光電子増倍管(PMT)よりなる検知器220と、
カットオフフィルタ238と、プリアンプ222と、直
流アンプ224と、PMT印加電圧制御回路226と、
交流アンプゲイン調整回路227と、交流アンプ228
と、ロック・インアンプ230と、アンプ232と、A
/Dコンバータ234と、I/Oインターフェース24
0と、CPU242と、円二色性蛍光励起スペクトル記
憶装置244aと、全蛍光スペクトル記憶装置244b
と、主記憶装置244cを備える。
【0025】そして、光源212から出た光束は、分光
器214で波長走査が行われ単色化され、さらに直線偏
光となり、この分光器214の後方に設置された円偏光
変調器216を通過する。この円偏光変調器216によ
り所定の変調周波数信号s210で変調され交互につく
られた左右の円偏光L210は、サンプルセル218内
の試料に照射される。
【0026】ここで、サンプルセル218内の試料に左
右円偏光L210の不等吸収が起こると、円偏光変調器
216の変調周波数信号s210に対応して蛍光L21
4にも強弱の波が生じ、検知器220に到達するが、試
料から放射された蛍光L214は、カットオフフィルタ
238により励起光束の散乱光が取り除かれ、目的の蛍
光波長域の光L214のみが検出器220に入射する。
そして、入射した蛍光L214は、検知器220により
図6(a)に示されるような電気信号s212に光電変
換される。
【0027】なお、分光器214、円偏光変調器216
の動作は、それぞれ分光器ドライバ246、PEMドラ
イバ236により管理されている。また、カットオフフ
ィルタ238は、測定しようとする試料の示す蛍光バン
ドより少し短い波長の除去機能を有し、励起光の散乱光
は除去するが、蛍光は透過させ検知器220に入射させ
ることができるようなものを、試料毎に最適なものを選
んで用いることが好適である。
【0028】以上のようにして本実施形態にかかる円二
色性蛍光励起スペクトル測定装置210を構成すること
により、例えば図6(a)に示されるような電気信号s
212を得ることができる。
【0029】本発明において特徴的なことは、例えば図
6(a)に示されるような電気信号s212より、図6
(b)に示されるような変調周波数信号s210に同期
した、図6(c)に示されるような交流信号成分s21
6(交流信号成分の振幅)のみを抽出して、例えば図7
に示されるような円二色性蛍光励起スペクトルを得るよ
うにしたことである。
【0030】すなわち、本実施形態においては、検出感
度の向上を図るためにノイズの点で不利な円二色性蛍光
励起スペクトルの直流信号成分(図6(d)参照)によ
る割り算をなくし、本来の交流信号成分のみを用いて、
図7に示されるような円二色性蛍光励起スペクトルを得
るようにした。これにより、前記図7に示されるような
円二色性蛍光励起スペクトルは、全く同一の試料につい
て測定し得られた前記図2(b)に示されるような(吸
収)円二色性スペクトル、及び図4に示されるような蛍
光検出円二色性と比較し、同一濃度の同一試料につい
て、基本的に同一の条件で測定したものはノイズが大幅
に低減されていることが明らかである。
【0031】また、図7に示されるような円二色性蛍光
励起スペクトルが、図4に示されるような蛍光検出円二
色性スペクトルと比べて、蛍光のある波長領域で約50
%のノイズが低減され、蛍光のない領域ではノイズが1
桁以上低減されていることが明白に示されており、本実
施形態による円二色性蛍光励起スペクトル測定装置がノ
イズの低減において著しい効果を上げていることが容易
に理解できる。さらに、試料に測定しようとするする目
的物質の他に、蛍光を有する夾雑物が含まれた場合を考
える。その夾雑物が光学活性であるときには、その信号
は円二色性蛍光励起スペクトルと蛍光検出円二色性スペ
クトルの両方に表れ、有利、不利については同等であ
る。
【0032】しかしながら、夾雑物が光学活性でないと
きには、その蛍光は直流信号成分s114にのみ表れ、
円二色性蛍光励起スペクトルではその影響を受けず、光
学活性な目的成分の信号のみを選択的に得ることができ
る。このために本実施形態にかかる円二色性蛍光励起ス
ペクトルが実際に利用されるときに含まれる可能性のあ
る夾雑物が光学活性でないことが圧倒的に多いことを考
えると、純粋に交流信号成分s116のみを取り出すこ
ととした本実施形態の効果を容易に理解することができ
る。
【0033】ところで、本実施形態のように円二色性蛍
光励起スペクトルを得た場合の問題点は、その大きさ
(縦軸)が規格化されていなくて、試料間で円二色性蛍
光励起スペクトルを比較するためには試料の濃度、セル
長、スペクトルバンド幅、PMT印加電圧v210等が
スペクトルの縦軸に影響を与えるので、測定パラメータ
を厳密に一致させて測定を行うことが要求される。
【0034】そこで、本実施形態においては、検出感度
を犠牲にしないでこの大きさ(縦軸)を規格化するため
に直流信号成分s214も全蛍光励起スペクトル(図8
(b)参照)として取得する。すなわち、前記図5に示
す直流アンプ224により分離された直流信号成分s2
14も、そのままA/Dコンバータ234、I/Oイン
ターフェース240を介してCPU242に入力され
る。このCPU242に入力された直流信号成分s21
4は、そのまま全蛍光励起スペクトル(図8(b)参
照)として直流成分記憶手段244bに記憶される。
【0035】取得後、CPU242は、この全蛍光励起
スペクトル(図8(b)参照)を適当な波長区間で積分
して0でない積分値を得る。すなわち、図8(b)に示
されるような全蛍光励起スペクトルを、適当な波長区間
(本実施形態においては220nm〜255nm)で積
分して0でない積分値を得る。そして、CPU242
は、得られた積分値で同図(a)に示されるような円二
色性蛍光励起スペクトルを割算してその大きさ(縦軸)
を規格化する。このようにしてCPU242により大き
さの規格化された円二色性蛍光励起スペクトルは、主記
憶手段244cに記憶され、この主記憶手段244cに
記憶された円二色性蛍光励起スペクトルが試料の分析に
用いられる。
【0036】直流成分記憶手段244bに記憶された全
蛍光励起スペクトル(例えば図8(b)参照)を積分し
て得られた積分値は、0でない1つの値であるからノイ
ズとは無縁である。したがって、このノイズとは無縁の
積分値で、交流成分記憶手段244aに記憶された、例
えば図8(a)に示されるような円二色性蛍光励起スペ
クトルを割算しても、得られる円二色性蛍光励起スペク
トルのノイズを増やさずに、その大きさを良好に規格化
することができる。これにより、種々の試料間で円二色
性蛍光励起スペクトルの比較を適正に行うこともでき
る。
【0037】但し、この全蛍光励起スペクトルの区間積
分値による円二色性蛍光励起ススペクトルの縦軸の規格
化も、1台の装置の中では確実にその有用性が保証され
るが、装置間を考えた場合ではまだ十分でない。それは
円二色性蛍光励起スペクトル測定装置210において、
直流信号成分s114の増幅を行う直流アンプ224と
交流信号成分s116の増幅を行う交流アンプ228,
ロック・インアンプ230,アンプ232の増幅率が独
立に設定される機構となっていることに起因する。規格
化の有用性を装置間でも保証するためには、これらのア
ンプの増幅率の比を適切な基準に基づいて校正すること
が必要となる。
【0038】このために本実施形態においては交流アン
プゲイン調節回路227が、この校正機能を付与する。
すなわち、円二色性蛍光励起スペクトルは、本発明によ
って初めて測定されるようになったものであり、この目
的のために適切な基準となる円二色性蛍光励起スペクト
ル標準物質は定められておらず、別の基準によらなけれ
ばならない。この別の基準には(吸収)円二色性スペク
トルの標準物質(例えばd−10−カンファースルフォ
ン酸アンモニウム、D−パントラクトン、d−トリスエ
チレンジアミンコバルト錯体などが利用できる)が値付
けされていて適切である。校正にあたっては、検知器2
20を移動させて透過光の通過コース上に設置し、(吸
収)円二色性スペクトルの標準物質を測定し、交流信号
成分を直流信号成分で割った結果が値付けされている
(吸収)円二色性値に一致するように、交流アンプゲイ
ン調整回路227を調整する。このときの増幅率は、理
論上交流信号成分s116が直流信号成分s114に対
しほぼ32980倍となる。
【0039】なお、本実施形態においては、この交流ア
ンプゲイン調整回路と227は、交流アンプ228のゲ
インを調整するように構成されているが、勿論、ロック
・インアンプ232、アンプ232のゲインを調整して
も構わない。
【0040】円二色性蛍光励起スペクトルと蛍光検出円
二色性スペクトル、(吸収)円二色性スペクトルの関係 前述のように本実施形態にかかる円二色性蛍光励起スペ
クトルは、左右の円偏光で励起したときの励起スペクト
ルにおける差である。これに対し、従来の蛍光検出円二
色性スペクトルは、蛍光強度で検出した(吸収)円二色
性スペクトルとして扱われてきた。これと(吸収)二色
性スペクトルとの関係は下記数1に表される。
【数1】
【0041】ただし、ΔAは(吸収)円二色性スペクト
ル、Sは蛍光検出円二色性スペクトル、ΔFは円二色性
蛍光励起スペクトル、Aは左右の円偏光に対する試料物
質の吸収係数の平均値である。また、(吸収)円二色性
スペクトルΔAは、通常の円二色性分散計において試料
物質を透過する左右の円偏光の強度の差ΔIと平均値I
から、下記数2で表される。
【数2】
【0042】つぎに応用、実用の観点からこれら2者に
ついてさらに議論する。本実施形態にかかる円二色性蛍
光励起スペクトルを示す図7は、全く同一の試料につい
て測定して得られた従来の吸収円二色性スペクトルを示
す図2(b)、及び従来の蛍光検出円二色性スペクトル
図4(b)の何れのスペクトルと比較しても、高い感度
が得られている。
【0043】これは、例えば通常の紫外可視分光光度計
と分光蛍光光度計とで期待される検出感度の違い、ある
いは、HPLCにおいて紫外可視検出器と蛍光検出器で
期待される感度の違い(至適な試料についてはいずれの
場合も蛍光のほうが1桁ないし3桁高い感度が得られ
る)に匹敵するものであり、微少量しか用意することが
できないような試料の測定に、莫大な恩恵をもたらすも
のである。
【0044】さらに、これら2者を比較すると、円二色
性蛍光励起スペクトルはΔF、蛍光検出円二色性スペク
トルはSを測定することとなる。Sは全蛍光強度(直流
信号成分)で割算している分だけノイズが大きくなる。
さらに蛍光のない波長領域では分母が0(もちろん分子
も0)となり、0/0を演算する結果、ノイズがより拡
大して、スペクトルの質が著しく低下するという宿命を
もっている。これに対し、本実施形態にかかる円二色性
蛍光励起スペクトルは、ΔFは割り算しない分だけノイ
ズが少なく、蛍光のない波長領域でもノイズが拡大する
ことはなく、スペクトルの質が確保され、試料の量に対
する感度の点では、顕著な利点を有する。
【0045】以上のように、本発明の実施形態にかかる
円二色性蛍光励起スペクトル測定装置210によれば、
前述のような円二色性蛍光励起スペクトルを得ることと
したので、至適な試料については従来の(吸収)円二色
性スペクトル測定に比較し、1桁ないし2桁高い感度が
得られる。これは画期的なことである。
【0046】例えば、生物体内に存在する生理活性物質
の構造を研究する例を考える。そのためには現状では多
数、多量の生物を集め、そこから目的の物質を取り出す
必要があったとする。ところが、本実施形態のように感
度が20倍向上すると、必要となる生物の数量が1/2
0で済むこととなって、試料の確保に要求される努力は
飛躍的に軽減されることとなる。また、測定のための試
料量の確保が不可能な生理活性物質の例の数多く存在し
ているが、感度が非常に向上したことにより、そのよう
な物質の分析が実現する可能性も高くなるため、研究の
幅が著しく広がるものと期待される。
【0047】また、蛍光で検出することで選択性も向上
し、化合物の特定の部位に特異的な解析が可能となる。
さらに、生のままでは蛍光をもっていない物質について
も、蛍光の官能基を化学的に導入することにより、高感
度に測定解析する道が開けたことになり、その効果は極
めて大きいと思われる。
【0048】なお、本発明の円二色性蛍光励起スペクト
ル測定装置としては、前記各構成に限定されるものでは
なく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、このような円二色性蛍光励起スペクトル測定装
置210においては、もともと微弱な蛍光をさらに解析
しなければならないため、通常の蛍光測定装置と比較し
ても一層の蛍光集光効率の向上が要求される。
【0049】以下、このような蛍光の集光効率の改善方
法について説明する。サンプルセルと検知器の配置状態 本実施形態においては、サンプルセル218と検知器2
20の間の光路中には集光系を介さず、かつ、サンプル
セル218と検知器220を近接させることが好適であ
る。すなわち、従来より、円二色性(CD)と蛍光検出
円二色性(FDCD)の装置上の互換性を確保するた
め、またサンプルセル218の設置場所に空間を確保し
てその扱いを容易にするため、図9(a)に示されるよ
うに検知器220はサンプルセル218より離して設置
し、その間に集光系であるレンズ250,252を設置
することが一般的であった。しかしながら、前記従来の
構成では、レンズの開口角は限られていて十分大でな
く、その分、集光効率も限られていた。また、集光系は
最低2枚のレンズ250,252を用いているため、レ
ンズ表面における反射により20%程度の光をロスして
いた。
【0050】そこで、本実施形態においては、同図
(b)に示されるように、前記従来の集光系であるレン
ズ250,252を介さず、検知器220とサンプルセ
ル218を直近に設置させている。この結果、サンプル
セル218内の試料から放射された蛍光L214の大部
分を検出器220に入射させることができる。これによ
り、蛍光L214の集光効率を最大とすることができる
ので、検出感度の向上を図ることができる。
【0051】カットオフフィルタ また、本実施形態において検知器側の分光器としては、
カットオフフィルタ238を用いることが好適である。
すなわち、従来の蛍光分光光度計では、検出する蛍光の
波長を選択するために回折格子を用いた分光器を組み込
むのが普通であった。これにより、蛍光の波長を可変に
できる、蛍光の波長純度をコントロールできる、などの
利点を有するものの、光学素子の効率のため光のロスが
避けられず、その分、機構が複雑でコストがかかるなど
のマイナス面もあった。
【0052】そこで、本実施形態においては、励起光の
散乱さえ取り除くことができれば、それより長い波長の
光の全部を用いても何等問題もなく、むしろ光の量が増
えて感度の向上のために好都合であることから、検知器
側の分光器としてカットオフフィルタ238を用いた。
このカットオフフィルタ238は、試料の蛍光バンドの
波長に応じて最適の吸収帯を有するものを選んで用いる
が、前記図5に示す円二色性蛍光励起スペクトル測定装
置210では、例えば320nm以下の波長を除去して
いる。また、このカットオフフィルタ238の厚さは数
mmと薄く、その後段に設置する検知器220をサンプ
ルセル218に出来る限り近接させて、その開口比を大
きく確保することにも役立つ。これにより、集光効率の
向上を図ることができるので、検出感度の向上を図るこ
ともできる。
【0053】光トラップ また、本実施形態においては、サンプルセル218を透
過した透過光束L212を除くために、前記図9(b)
に示されるような光トラップ254を設けることが好適
である。すなわち、サンプルセル218に入れられた試
料を透過した透過光束L212は、試料室内で反射され
迷光となって、測定の妨害となる。また、円偏光は境界
面で反射するとき偏光状態が変わり、最悪の場合、逆の
円偏光となって試料の励起に関わり折角の信号を小さく
してしまう結果をもたらす。
【0054】そこで、本実施形態においては、これらの
悪影響を取り除くために、前記図9(b)に示されるよ
うな、透過光L212を除去することが可能な光トラッ
プ254を設けることが好適である。これにより、ノイ
ズの低減と最大信号の確保を行うことができる。
【0055】凹面鏡 また、本実施形態においては、前記図9(b)に示され
るように、サンプルセル218を間に挟んで検知器22
0の反対側に凹面鏡256などの反射鏡を設置すること
が好適である。すなわち、試料からの蛍光L214は、
励起光L210の照射方向に関わらず、全包囲に放射さ
れる。そして、検出に用いられるのは、そのうちの1方
向である検知器220方向でしかなく、その他は無駄と
なる。
【0056】そこで、本実施形態においては、サンプル
セル218を間に挟んで検知器220の反対側に凹面鏡
256を設置し、その焦点をサンプルセル18のほぼ中
央部に位置させる。これにより、検知器220の反対側
に放射された蛍光L214も、ここで反射されてサンプ
ルセル218に戻り、そのまま検知器220に入射する
ことができる。この結果、検出器220に入射する蛍光
L214の量を増やすことができるので、検出感度の向
上を図ることができる。
【0057】内面反射型の筒形反射鏡 さらに、本実施形態においては、図10に示されるよう
にサンプルセル218として円筒形セルを用い、該円筒
形セルの周囲を一部除いた内面反射型の円筒形鏡258
あるいは楕円筒形鏡260などの反射筒形鏡により囲
み、光の利用効率を上げることも好適である。すなわ
ち、サンプルセル218として円筒形セルを用いたとき
の光利用効率をさらに上げるためには、図10に示され
るようにサンプルセル218である円筒形セルの周りに
内面反射型の筒形反射鏡を設置することが好適である。
【0058】その1つは、同図(a)に示されるような
内面反射型の円筒形鏡258の一部(例えば検知器22
0の口径とほぼ同様)を切り欠いたものである。もう1
つは、同図(b)に示されるような内面反射型の楕円筒
形鏡260を用いることもできる。そして、この楕円筒
形夾260の切り抜き部分(例えば検知器220の口径
とほぼ同様)から遠い方の焦点が、サンプルセル218
である円筒形セルの中心に一致するように設置する。こ
れにより、サンプルセル218である円筒形セルから放
射された蛍光を、もう1つの焦点に集光した後、効率的
に検知器220に導くことができる。
【0059】この結果、試料から放射された蛍光のう
ち、検知器220方向のみでなく、実質的に全方位に放
射された蛍光を検知器220に入射させることができ
る。これにより、検知器220に入射する蛍光の量を増
やすことができるので、検出感度の向上を図ることがで
きる。
【0060】サンプルセルの形状 本実施形態においては、サンプルセル218として例え
ば4面透過形の角形セルを用いることも可能であるが、
円筒形セルを用いることがより好適である。1つには、
放射される蛍光L214の集光効率の改善である。すな
わち、試料と空気の屈折率の違いにより、サンプルセル
218として角形セルを用いた場合、該角形セルから外
に蛍光が出るとき、例えば図11(a)に示されるよう
に蛍光L214が開くように屈折する。このため、本実
施形態において検知器220に導かれる蛍光L214
は、その検知器220の口径と、サンプルセル218か
らの距離で幾何学的に決まる開口立体角に比較し少なく
なる。
【0061】これに対し、同図(b)に示されるように
サンプルセル218として円筒形セルを用いた場合、円
筒の回転軸方向は事情は変わらないが、径方向では屈折
がないため、その分だけ、高い光の利用効率を確保する
ことができるので、検出感度の向上を図ることができ
る。以上のようにしてサンプルセル218、検知器22
0、カットオフフィルタ238、光トラップ254、凹
面鏡256、内面反射型の筒形反射鏡258,260な
どを適宜用いて蛍光の集光効率の向上を図ることによ
り、蛍光のように微弱な光を検出する場合でも検出感度
の向上を図ることができる。
【0062】つぎに、試料の利用効率の改善について説
明する。すなわち、図12(a)に示すように、サンプ
ルセル218の励起光束L210の通らない部分(図中
黒い部分)は、測定に関与しない部分であり、限られた
試料の量から、より濃い試料溶液を調整するためには無
駄な部分となる。
【0063】そこで、本実施形態においては、サンプル
セル218として円筒形セルを用い、同図(b)に示す
ように、励起光束L210とほぼ同じ形状の円形に形成
された端部であるセル窓板より励起光束L210を入射
させることにより、同図(a)に示すようにサンプルセ
ル218として角形セルを用い、側方のセル窓板より励
起光束L210を入射させた場合に比較し、その無駄な
部分(図中黒い部分)を低減することができるので、試
料の利用効率の改善を図ることができる。
【0064】また、それ以外にもサンプルセル218と
して円筒形セルを用いると、つぎのような利点が得られ
る。すなわち、円筒形セルの方が角形のものに比較し、
前記励起光束L210の入射するセル窓板の歪みを少な
く作成することができる。この歪みは、本実施形態にお
いて励起円偏光の偏光状態を乱し、ベースラインの曲が
りの原因となるものであるため、サンプルセル218と
してこの歪みの少ない円筒形セルを用いることにより、
得られるスペクトルの質的な向上を図ることもできる。
【0065】サンプルセルの高低調節機構 また、本実施形態においては、サンプルセル218の高
さを調節することが可能な機構を設けることが好適であ
る。すなわち、生体成分のような試料では、その絶対量
を確保することが困難であることが多く、測定には限ら
れた微少量しか用いられないことが一般的である。一
方、測定で得られる信号強度は、濃度に依存する。した
がって、感度を確保するためには、利用できる試料を出
来るだけ少量の溶媒に溶解して出来る限り濃い溶液と
し、測定に供するのが最善である。より具体的には、測
定において励起光に照射されない部分を最小にするよう
にし、それに必要なギリギリの量の試料溶液を調整する
のが最善である。
【0066】このために本実施形態においては、図13
に示されるように、その底部262aが高さ調節自在
で、該高さ調節が自在の底部262a上にサンプルセル
218が設けられたセルホルダ262と、セルホルダ底
部262aの高さを調節することが可能な高低調節手段
264を備えることも好適である。そして、高低調節手
段264を駆動させて励起光束L210をカバーするこ
とのできるギリギリの高さまでサンプルセル218を持
ち上げることにより、サンプルセル218として円筒形
セルを用いた場合は勿論、たとえ角形のものを用いた場
合でも、試料溶液266を該励起光束L210をカバー
することのできる最低限の試料量で蛍光測定を適正に行
うことができるので、試料の利用効率の向上を図ること
ができる。
【0067】
【発明の効果】以上説明したように本発明にかかる円二
色性蛍光励起スペクトル測定装置によれば、検出器によ
り出力された電気信号より、直流信号成分で割ることな
く交流信号成分のみを用いて、円二色性蛍光励起スペク
トルを得るので、検出感度の向上を図ることができる。
これにより、従来に比較し少ない試料量であっても、従
来と同等もしくはそれ以上の検出感度でその試料の絶対
構造情報、立体構造情報を得ることもできる。なお、前
記装置において、前記検出器により出力された電気信号
より直流信号成分を分離し、該直流信号成分より左右の
円偏光で励起したときの蛍光強度の平均値を求め、これ
を波長に対し記録することにより全蛍光励起スペクトル
を得ることができる。また、前記装置において、前記検
出器として、前記直流信号成分に依存しない一定の印加
電圧が印加された光電子増倍管を採用することにより、
ノイズを大幅に低減することができるので、検出感度の
向上を図ることができる。また、前記装置において、前
記全蛍光励起スペクトルを所定の波長区間で積分して0
でない積分値を得ることにより、ノイズとは無縁の積分
値を得ることができる。そして、このノイズとは無縁の
積分値で、前記円二色性蛍光励起スペクトルを割算する
ことにより、ノイズを増やすことなく前記円二色性蛍光
励起スペクトルの大きさを規格化することができる。こ
れにより、種々の試料間で円二色性蛍光励起スペクトル
を適正に比較することもできる。さらに、前記装置にお
いて、最終的に得られる交流信号成分が、前記直流信号
成分に対しほぼ32980倍となるように増幅率を調節
することが可能な増幅率調節手段を備えることにより、
前記直流信号成分及び交流信号成分の増幅率の比を適切
な基準に基づき校正することができるので、前記円二色
性蛍光励起スペクトルの大きさの規格化の有用性を複数
の装置間でも保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の(吸収)円二色性スペクトル測定装置の
概略構成の説明図である。
【図2】図2(a)は前記図1に示す装置で得られた
(吸収)円二色性スペクトルの1例、図2(b)は1/
100の濃度の試料について得られた(吸収)円二色性
スペクトルの1例である。
【図3】従来の蛍光検出円二色性スペクトル測定装置の
概略構成の説明図である。
【図4】図4は前記図3に示す装置で得られた蛍光検出
円二色性スペクトルの1例である。
【図5】本発明の実施形態にかかる円二色性蛍光励起ス
ペクトル測定装置の概略構成の説明図である。
【図6】図6(a)は図5に示す装置の検出器により出
力された電気信号の説明図、図6(b)は変調周波数信
号の説明図、図6(c)は円二色性蛍光励起スペクトル
の交流信号成分の説明図、図(d)は全蛍光励起スペク
トルの直流信号成分の説明図である。
【図7】図5に示す装置で得られた円二色性蛍光励起ス
ペクトルの交流信号成分の1例である。
【図8】図5に示す装置の割算工程の説明図である。
【図9】図5に示す装置で好適に用いられるサンプルセ
ルと検知器の配置状態の説明図である。
【図10】図5に示す装置で好適に用いられる内面反射
型の筒形反射鏡の説明図である。
【図11】図5に示す装置でのサンプルセルの形状の違
いによる蛍光の集光効率の違いの説明図である。
【図12】図5に示す装置でのサンプルセルの形状の違
いによる試料の利用効率の違いの説明図である。
【図13】図5に示す装置で好適に用いられるサンプル
セルの高低調節手段の説明図である。
【符号の説明】
210 … 円二色性蛍光励起スペクトル測定装置 212 … 光源 214 … 励起側分光器 216 … 円偏光変調器 218 … サンプルセル 220 … 検知器(光電子増倍管) 224 … 直流アンプ(直流成分分離手段) 227 … 交流アンプゲイン調整回路(増幅率調節手
段) 230 … ロック・インアンプ(交流成分分離手段) 238 … カットオフフィルタ(蛍光側分光器) 242 … CPU(積分値取得手段、割算手段) 244a … 交流成分記憶手段 244b … 直流成分記憶手段 266 … 試料溶液(試料) s210 … 変調周波数信号 s212 … 検知器により出力された電気信号 s214 … 直流信号成分 s216 … 交流信号成分

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 波長走査が行われる単色化された左右の
    円偏光を所定の変調周波数で交互に試料に照射して得ら
    れる蛍光の強度を測定し電気信号とする円二色性蛍光励
    起スペクトル測定装置において、 前記電気信号より前記変調周波数に同期した交流信号成
    分を分離する交流成分分離手段と、 前記交流成分分離手段により得られた変調周波数に同期
    した交流信号成分より、左右の円偏光で励起したときの
    蛍光強度差を求め、これを波長に対し記録して円二色性
    蛍光励起スペクトルとする円二色性蛍光励起スペクトル
    取得手段と、 を備えたことを特徴とする円二色性蛍光励起スペクトル
    測定装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の円二色性蛍光励起スペク
    トル測定装置において、前記電気信号より直流信号成分
    を分離する直流成分分離手段と、 前記直流成分分離手段により得られた直流信号成分よ
    り、左右の円偏光で励起したときの平均の蛍光強度を求
    め、これを波長に対し記録して全蛍光励起スペクトルと
    する全蛍光励起スペクトル取得手段と、 を備えたことを特徴とする円二色性蛍光励起スペクトル
    測定装置。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の円二色性蛍光励
    起スペクトル測定装置において、前記電気信号は、前記
    分離手段により得られた直流信号成分に依存しない一定
    の印加電圧が印加された光電子増倍管により得られるこ
    とを特徴とする円二色性蛍光励起スペクトル測定装置。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3の何れかに記載の円二
    色性蛍光励起スペクトル測定装置において、 前記全蛍光励起スペクトル取得手段により得られた全蛍
    光励起スペクトルを所定の波長区間で積分して0でない
    積分値を得る積分値取得手段と、 前記円二色性蛍光励起スペクトル取得手段により得られ
    た円二色性蛍光励起スペクトルを、前記積分値取得手段
    により得られた0でない積分値で割算して、前記円二色
    性蛍光励起スペクトルの大きさを規格化する割算手段
    と、 を備えたことを特徴とする円二色性蛍光励起スペクトル
    測定装置。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4の何れかに記載の円二
    色性蛍光励起スペクトル測定装置において、前記交流成
    分分離手段により分離された交流信号成分を増幅する機
    構で最終的に得られる交流信号成分が、前記直流成分分
    離手段により分離された直流信号成分に対しほぼ329
    80倍となるように増幅率を調節することが可能な増幅
    率調節手段を備えたことを特徴とする円二色性蛍光励起
    スペクトル測定装置。
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